ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2529 武装農業地帯(前編)
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『武装農業地帯(前編)』 27KB
虐待 制裁 パロディ 番い 群れ 赤ゆ 子ゆ ドスまりさ 自然界 現代 虐待人間 銃注意 STALKER注意 ウォッカ注意 リハビリ
農業武装地帯(前編) ポマギあき
俺はシドロビッチ。ロシアから、ここ日本へと隠居しにきた老人だ。限界集落の農村で、近くには山なんかの自然がある。大変美しい。
日本も大分寒くなってきた。とはいえ、ロシアほどではない。俺はここで農業を営んでいる。ジャガイモ、人参、キャベツ、白菜。まあ色々だ。
しかし、肝心の出来はというとそれほどでもない。周囲にも農業を営む人達がいる。
しかし、俺が当初ここに来た時は農業をすることを彼等に大反対された。ゆっくりの害が酷い。
作物が出来たかと思えば、すぐに食い漁られる。酷い時には家を荒らされる時もあったという。
俺はゆっくりを殺せばいいと云った。しかし、この地帯にはドスまりさがいるという。
年寄りばかりで何の装備も持たない老人達。猟友会のメンバーはいても、水平二連銃如きじゃ、奴等を駆逐できない。
そしてなにより、農村の村長が頑なだった。事を荒立てず、収穫物の何割かを払えば安全が保証されると言って聞かない。
俺は愕然とした。人間ですらないゆっくりに、無理な要求を立てられた。そして刃向かう事もせずに、事を荒立てたくないが故に要求を受け入れた。
ロシアでは考えられない事だ。外国人がそんな事をすれば、ナーシと呼ばれる組織が暴動を起こす。そしてプーチンが粛正する。
まして相手はゆっくりだ。サイズに拘わらず、全員がシベリア送りにされる。
私は、彼等には装備や体力もさることながら、何よりガッツが足りない気がした。
私が、彼等を何とかしたいのには理由があった。彼等はどれも良い人達だ。作物の育て方がいい加減な私に、根気強く指導してくれた。
朝早くに私を叩き起こし、一緒に農作業をしてくれた。夜になると一緒に酒を煽った。いわば仲間だ。
そんな善良な人達が、ゆっくり如きに蹂躙されるのは許せなかった。気付くと私は国際電話を使い、息子のイワンに電話を掛けていた。
「ダー、イワンダー」
「ふざけている場合ではないぞ、息子よ」
「なんだよ父ちゃん。そっちで元気にやってるんだろ?」
「俺は元気だが、近隣住民が元気ではない」
「なんだよそれ? どういうことだ?」
「お前はありとあらゆる装備を持って、こっちに来るんだ」
「はぁ? 明日、ナーシの集会だぜ?」
「ナーシより、大切な事がある」
「チョルト! 分かったよ、父ちゃんには逆らえねーからな」
「スパシーバ、息子よ」
俺はウォッカとソーセージを煽ると、狩猟用のドラグノフを手に外へと出て行った。
畑を守らなくてはならない。ゆっくりに作物を食い荒らされるからだ。お陰でせっかく学んだ農作業は滞りがちになっている。
畑に来て早々、俺はドラグノフに弾を装填する。こちらに向かってくるまりさに狙いを付けていた。
風もなく、狙撃には絶好の機会。まりさは、意気揚々と地面を跳ねた。帽子には赤まりさが乗っていた。
その跳ねた瞬間。空中を彷徨う間を狙って、俺は引き金を引いた。まりさの帽子と額が弾け飛ぶ。
目玉は飛び、口から餡子が飛び出す。赤まりさは訳が分からぬと言った表情で宙を舞った後、地面に転がった。
「ゆええええええええん! いちゃいよおおおおおおお!! おちょうしゃあああああん! おちょ…ゆううううううううう!!?」
地面に転がった痛みで泣き叫ぶ赤まりさ。親まりさに助けを求めようと、横見をした。
そこにあるのは頭部を破裂させ帽子の残骸を地面に残した、親まりさの残骸。赤まりさは再度、絶叫した。
「ゆんやあああああああああああああ!! おちょうしゃんちっきゃりちちぇえええええええええええええ!!!」
赤まりさは殺さない。悲鳴を聞きつけて、他のゆっくりを誘き出すのだ。誘き出したゆっくりも、殺す。
赤まりさは釣り餌にしか過ぎない。俺はウォッカをチビリと飲むと、ジッと身構えた。
「ぢゃれきゃあああああああああああ!! きゃわいいまりちゃをたちゅけちぇええええええええええええええ!!!」
赤まりさは絶叫し続けた。それから一時間近く経った。日も沈み、夜になる頃になっても助けは来なかった。
「ゆぐぐぐぐぐぐ…じゃぶい…しゃむいよ…ぢゃれか…たちゅけちぇ…たちゅけちぇ…ゆ…ゆ…」
赤まりさはガタガタと震えて助けを乞うた。しかし、相変わらず誰も来ない。
「ゆぐぐぐぐ…もっちょ…ゆっくち…」
結果、凍死した。俺が思っていた以上に赤まりさの体力は弱く、長続きしなかった。
ウォッカの瓶が空っぽになりそうな頃、俺も酔っぱらって凍死するのは御免被るから家に帰った。
部屋を暖かくし、和食を食べると就寝した。ミソスープは赤味噌に限ると、微睡みの中で思った。
「おーい、シドちゃん!」
「ん…んん…」
俺を呼ぶ声がする。農作業を指導してくれた恒彦という老人男性だ。
俺は二日酔いの頭を醒ます為に、ダンボールから新たにウォッカを取り出し、飲んだ。迎え酒は我が国の伝統である。
「まーた、酒ばっかり飲んで…体に悪いぞえ」
「大丈夫、ロシアは白熊!」
「いっつも訳が分からんねぇ」
「今日は何処へ行くんだ?」
「おお、今日は厩舎へ牛の世話に行くんじゃよ。」
「おお、行く行く! 牛肉好き!」
「いやいや、乳牛だよ…」
「じゃあ、カクテルパーティを」
恒彦にジョークを飛ばしていると、厩舎に辿り着いた。厩舎に入ると、多数の牛が居る。
今日は乳搾りだ。俺は搾乳機を手に牛へと近づいた。そこには親れいむと、親まりさ。子れいむ、子まりさがいた。
「なんでここにいるんだ?」
「「「「ゆぅ…ゆぅ…」」」」
藁の片隅で眠っている。気持ちよさそうに暖かそうにしているが、口元には牛乳が乾いた後があった。
「こいつらぁ…わしの花子の乳を飲みよったな!」
恒彦が怒りの表情を浮かべる。俺は恒彦を制止すると、牛を撫でた。
牛は何だお前かという顔になったが、俺がゆっくり達に指さすとそちらへと顔を寄せた。
「「「「ゆぅ…ゆぅ…」」」」
「モーッ!」
「「「「ゆ!?」」」」
一同は、花子の鳴き声で目覚めた。目をぱちくりとさせて、周囲の様子を窺う。
「ゆ! かわいいれいむがねてるんだから、じゃましないでね!」
「くそにんげんは、ここからでていってね! ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだよ!」
「でちぇいけくしょにんぎぇん!」
「ばーきゃばーきゃ!」
初っぱなから口が悪い事に眉をひそめると、俺は花子を叩いて糞袋一家に指さした。
花子はどこぞのチーズのキャラクターロゴよろしく、ニカッと笑みを浮かべると子れいむを食べ始めた。
「ゆっぎゃあああああああああああああ!!!」
「ゆうううううううううううう!! おぢびぢゃああああああああああああああん!」
「ゆっがあああああああああ!! おちびぢゃんにひどいごどずるばがはじねえええええええ!!」
「ゆんやあああああああああああああああああ!!」
親まりさ達が一斉に花子に体当たりするが、まるできかない。花子は美味しそうに子れいむを平らげた。
「モー!」
「ゆ…お、おぢびぢゃん…ゆやああああああああああああ!! れいぶのおぢびぢゃんがえじでええええええええええ!!」
「よぐぼおぢびぢゃんをごろじだなああああああ!! ゆっぐじじないでごろじでやるうううううううう!!」
「ちにぇえええええええええええええ!!」
子れいむ亡き後も体当たりを続ける一家。俺は恒彦に会釈すると、一家を摘み上げた。
「ゆ! はなせええええええええええ!!」
「ぐぞにんげんがぎだないででざわるなあああああああ!!」
「おしょらどんぢぇるみぢゃい!!」
俺は柵の三角に出っ張った部分に親子を突き刺した。
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆぎょおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ゆきゃああああああああああああああ!!!」
親子揃って良い音を聞かせてくれた。あんよを突き刺したので、これで二度と動く事は出来ないだろう。
「いだいいいいいいいいい!! はなぜえええええええええ!!」
「はなぜえええええええ!! ごごがらだぜえええええええええええ!!」
「ゆきいいいいいい!! いちゃいよおおおおおおおおおおおおお!!」
恒彦に代わって、俺が言葉を発した。
「お前ら、どうしてここにいる?」
「ゆぎいいいいいいいいいい!! だまれええええええええ!! じねえええええええええ!!」
親れいむが絶叫した。俺は親れいむの両頬を掴むと、大きく引き千切った。
「ゆっぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「れいぶううううううううううううううううううう!!!?」
「おぎゃあしゃあああああああああああん!!!」
親れいむの千切れた両頬から、餡子がボタボタと落ちてくる。
「いいか、話さないと次は目玉を抉るぞ」
「ゆ゙…」
「ごのぐぞじじいいいいいいい!! ごろじでやるううううううううう!!」
「ゆんやああああああああああああ!! たちゅけちぇええええええええええええ!!」
「話しを理解できていないようだな」
俺は泣き叫ぶ親まりさと赤まりさに向かって云うと、親れいむの両目に指を突き立てた。
クチュっという潰れる音がすると、親れいむは大きく震えて絶叫した。
「ゆっぎゃああああああああああああああああああああああ!! れいぶのおべべがあああああああああああああ!!!!」
「ゆうううううううううううう!!!?」
「おぎゃあしゃああああああああああああああああん!!」
「黙れ、今度こそ殺すぞ」
「おでがいだがらいうごどぎいでええええええええええ!! れいぶのだめにぎいでえええええええええ!!」
「「ゆ゙……」」
「お前ら、もう一度だけ訊くぞ。どうしてここにいるんだ? まりさ、答えろ」
「ゆ…ここは…まりさのおうちだよ…だから…いるんだよ…」
ふざけた回答をしたものだから、俺は思わずまりさを引っぱたいた。
「ゆぎゃっ!」
「おぢょうじゃああああああああああん!」
「まじざああああああああ!! どぼじだのおおおおおおおおお!!?」
「い、いだいいいいいいいいいいいい!!」
「誰に断って、この厩舎がお前らの者になったんだ? ああ?」
「ぞ、ぞれは…ひ、ひどりじめずるじじいがわるいんでじょおおおおおおおおお!!!」
「独り占め?」
「ぞうだよおおおおおおおお!! ごんなゆっぐじじだどごろを、ひどりじめずるのはずるいんだよおおおおおおお!!!」
俺は再びまりさを引っぱたいた。
「ゆぎゃびぃ! いだいいいいいいいいいい!! なにずるのおおおおおおおおお!!?」
「まじざあああああああああああああああ!!」
「ゆんやあああああああああ!! もうおうちかえりゅううううううううう!!」
「そんなにここにいたいなら、いればいいさ」
俺は一家を柵から引き抜くと、花子の足下へと放った。
「「「ゆべっ!!」」」
「いだいいいいいいいいいいい!! なにずるんだあああああああああああ!!」
「びえないよおおおおお!! なにぼびえないよおおおおおおお!!」
「ゆええええええええええええええん! いちゃいよおおおおおおおおおおお!!!」
俺は恒彦と共に、厩舎を後にした。搾乳どころではない。
「いいか、恒彦。今は野菜だけで済んでいる。だけど、こちらが譲歩すればするほど、ゆっくりはつけ上がる」
「ああ…今のを見て分かったよ…」
「だから、最初の要求が何であれ断るんだ。こちらに刃向かった場合は、こちらの力を見せつけてやればいい」
「でも、どうやって…?」
「心配するな。息子のイワンが色々持ってきてくれるさ」
俺は家へと帰った。クソったれの協定の内容とは、以下の通りだ。
ゆっくりが野菜を食べても構わない。そして、野菜を沢山、ゆっくりに上納する事。
ゆっくりを殺した場合は罪とし、ゆっくりがその罪人に罰を与える。ゆっくりが人の家に入っても構わない。
俺が協定の内容を聞かされた時、反吐が出た。そんな協定は、さっさと反故にしてやるべきだ。
俺は電話を手に取ると、村長に電話を掛けた。集会所に村民を集め、先程の出来事を説明するのだ。
集会所に着くと、村民達が既に集まっていた。村長に頼んで集めて貰ったのだ。
俺は先程の出来事を話した。それから、これからゆっくりがつけ上がる事。限界集落のここから、いずれ人々が追い出される事も。
集会所は村民のざわついた声で埋まった。村長も眉をしかめて、何やら考え込んでいる。
やがて村長は皆を制止すると、言葉を発した。
「ええとな、わしらは間違っとったかもしれん。ゆっくりも動物じゃ。
餌を与えていれば、こっちの云う事もある程度は訊いてくれるじゃろう、思うとった。
でも、それは既に破られておった。わしは、この年になって臆病になっとった。
問題があっても、それに目を瞑って蓋をしておった。しかしな、今ようやく気付いたんよ。
臭い物に蓋をしたところで、なんの解決にもならんとな。どうかみんな、今更かもしれんが協力してくれんかのう…」
村長の反省とも取れる言葉に、村民は黙り込んだ。皆がそれぞれの顔色を窺うと、うんうんと頷き始めた。
「おら、鍬しか持っちょらんけど、村長がそこまで言うんだ。戦うべ」
「おらもやるど!」
「あたしは杓文字持っちょ、戦えばいいとかね?」
「何いっちょるんよ、竹槍持って戦うっちゃ」
「うちの爺さんは、若い頃竹槍でB-29を落とした云うちょったけんね。やればできるっさ」
村民がひとつになり、俺は心外だが涙を流してしまった。村民も村長も慌てて、俺を慰めてくれた。
「あんたがなぁ…来なかったらば、この村さどうなっていたことやら…」
「そもそも、饅頭風情に恵んでやるっちゅう考えがおかしかったんのう…」
「すまんのう…露助の考えは強引思っちょっちゃけど、当たり前のことじゃったんのう…」
「なんやかんやで、村の事を考えてくれはったんやのう…すまんのう…」
「すまんのう…すまんのう…」
村民が何故か俺に謝罪を始めた頃になって、車のうるさいエンジン音が聞こえてきた。
村民達と俺は目を合わせると、一斉に外へと出て行った。
そこにはバカでかい装甲車が、一台あった。その隣に、青色のジャージを着た我が息子。イワンがいた。
「おー、ハラショー!」
「なにがハラショーだよ。ナーシの幹部の俺が、集会をサボるなんてプーチンにどやされるぜ…」
「いいや、きっとプーチンも理由を話せば分かってくれるだろう」
「まあ、いいさ。装備はたんまり持ってきたからな」
俺とイワンが会話していると、村民が再びざわつき始めた。
「ありゃりゃ! シドさんの息子かえ?」
「ええ、放蕩息子のイワンです」
「放蕩ってなんだ?」
「あー、わしゃ見た事あるぞ! ゑねみーらいんちゅう映画に出とったな!」
「いや、服装はそうかも知れないけど…」
「わしゃ知っちょるぞ! こーるおぶぢゅーちーってゲィムに出ちょっちゃろ!」
「いや、だから…」
息子が村民の質問攻めにされてる最中に、俺は装甲車の後部の扉を開いた。
中には、これから戦争を始めるとしか思えない装備ばかりであった。
RPG-7。いわずと知れたロケットランチャーだ。この大砲は装甲車にも大穴を開ける。
AK-74。有名なカラシニコフと称されるそれは、モスト・キリングリーなフルオートライフルだ。
クレイモア。対人用地雷として使われるこれは、感知すると対象に数百の鉄球を飛ばす殺傷兵器だ。
モシンナガン。第二次大戦で使われた、やたらと長いボルトアクション・ライフル。
PKM。マシンガンだが、百発以上撃てる汎用機関銃として知られている。蜂の巣になること間違い無しだ。
マカロフPM。ただの拳銃だが、私はこれが大好きだ。グリップの曲線が素晴らしい。ロシア万歳。
PPSh-41。おお、懐かしのバラライカ。私はこれに何度、命を救われた事か。
結局、私はPPSh-41とマカロフを手に取った。息子に詰め寄る村民達に話しをして、それぞれに銃を持たせた。
銃口を覗き込もうとする者もいたが、すぐさま止めさせた。危険だ。
村民達の銃の使い方は、猟友会のメンバーが手伝ってくれた。そのお陰で、スムーズに事は運んだ。
「俺、映画もゲームにも出演した事ないよ…チョルト…チョルト…パマギーチェ…」
息子はブツブツと独り言を言っていた。
「強さがあなたをつくる!」
「は?」
俺はロシア的倒置法にも満たない言葉で息子を励ますと、村民達と作戦会議を始めた。
まず、確認をした。ゆっくりは山に棲んでいる。山から麓まで降りてきて、作物を荒らす。
これは全員一致で確認を取れた。そして、俺が提唱したのは山には絶対に入らない事だった。
猟友会のメンバーはすぐに賛成してくれたが、それ以外は不思議そうな表情を浮かべていた。
山には入らない理由は二つある。まず一つは木々に覆われた地帯で、ゆっくりが360度全方向から襲ってくる可能性がある事。
饅頭といえども、こちらも年寄りばかりだ。油断は出来ない。そして、二つ目の理由は誤射だ。
猟友会のメンバーにもありがちだが、どんなに警戒していても人間を撃ってしまう事がある。
最悪、死亡に至るそれは何としても避けねばならない。以上の事を踏まえて、山に入ってはいけない。
俺はそれだけ言うと、一同頷いて賛成してくれた。
となれば、早速作業に掛かる。まずマップを作成した。農村はバカでかいものの、基本的に正方形で纏められる構図になっていた。
山は北に位置している。ゆっくりが来るとすれば、まずは北からだろう。俺は北にクレイモアを設置するよう息子に頼んだ。
「なんで俺がやらないといけないんだよ…」
「ウォッカと乾パンやるから、行ってこい」
「ここはチェルノブイリじゃないんだぞ…チョルト!」
文句を垂れつつも、息子は北のあぜ道にクレイモアを設置してくれた。村民には間違っても、ここに踏み入らぬように注意した。
そして、ドスまりさが群れにはいる。ドスまりさはある程度、知恵が効くだろうから油断は禁物だ。
北の道以外に、迂回して東西の道から来る可能性が大きい。そこは仕方ないが、村民に警備して貰うほかない。
限界集落という事もあって、基本的に人間が来ないのが幸いした。誤射の可能性を大きく抑えられる。
「それでは皆さん、よろしくお願いします。何かあったら、このバカ息子に言ってください」
「バカってお前…」
「アチェツと呼べ、或いはパーパと」
「分かったよ…パーパ」
放蕩息子の成長に私は思わず涙ぐんだ。年を取ると涙もろくなるのだ。マーマが生きていたならば、私はすぐに彼女の旨に飛び込んだろう。
タイヤのように太い腕。ドラム缶のように膨れあがった巨体でも、私を癒してくれた。
それはともかく、後は待つばかりだ。不審を察知して、ドスまりさが来たら蜂の巣にしてやればいい。ロシア式の外交術をお披露目してやろう。
それから夜になった。私と息子は風呂に入り、ウォッカを嗜む。
「なあ、パーパ」
「うん? どうした息子よ」
「なんで、ゆっくりってこの国にしかいないんだ?」
「ううむ…見ての通りだ。この国の民は、基本的にゆっくりしている」
「そうか? 俺にはパマギーチェって声しか聞こえないぜ。 特に若い奴は」
「若い奴は社会に抑圧されてるからな。若い奴以外もそうだ。そういう奴等から溢れだしたのが、ゆっくりだ」
「は? パーパ、このイワンにも何を言ってるか、分かるようにしてくれ」
「うむ。この国の人間の基本はゆっくりと、和やかに生活している」
「ああ、それは分かるよパーパ」
「しかし、西欧主義の発展により人々はゆっくりできなくなった」
「うーん…近代化ってやつかい?」
「ああ、そうだ。この国には、この国のリズムがあった。人々が殺し合う世界ではない、平和な世界で築き上げたリズムがな」
「そうなのか? ロシアじゃ考えられないな」
「お前もチェルノブイリの周辺住民の事は知っているだろう。あいつらは助け合って生きている。ゆっくりと生活している。常に頭痛に悩まされるが」
「チェルノブイリより先は地獄だがな。石ころ集める奴ばっかりさ」
「それはともかくとして、この国の従来のリズムは破壊された。その壊された歯車が、ゆっくりなんだ」
「分かったような…分からないような…」
「この国の民は、ゆっくりを虐待する者がある。殺した時に、ゆっくりを感じるはずだ。それは失われたゆっくりを…」
「パーパ、酔っぱらってるだろ?」
「パーパは24時間酔っぱらっているぞ」
「ロシアじゃ低アルコールのビールが、推奨されてるってのに…愛国者とは思えねーな」
「うるさいぞ、シベリア送りにするぞ」
私と息子は風呂から上がり、一通りの事をすると就寝した。ベッドではなく、いわゆる煎餅布団。
今の私にとっては、これこそが宝だ。コタツ、鍋料理。寒い故郷を懐かしく思いつつ、平和に過ごす。
哀愁の中に愛情を感じる。これが『わびさび』というものなのか、ヤポンスキーよ。
「ダハハ! あずにゃん、かわいかったなぁ!」
「お前は、わび、さび、萌えだな…」
「あ? パーパ、どうしたんだ?」
_________________________________________________________
|Урааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааа!!!|
|Урааааа Пожалуйста расслабьтесь! ! ! ааааааааааа!!!|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
朝を迎えた。まだ早朝の五時か、そこらだ。イワンはグースカ寝ていて、起きる様子がなかった。
私はまたしても二日酔いに悩まされていた。迎え酒のウォッカを飲むと、乾し肉を口に頬張り外へと出て行った。
「こういう寒い日は寒中水泳が一番なのだが…」
ロシアでは寒い日こそ寒中水泳をする。ロシアでは寒中水泳があなたを強くする。
「ああ、全然倒置してない…普通だ…」
そうこうしていると、爆発音が聞こえた。俺はウォッカが胃から込み上げてくるのを、グッと堪えながら振り返った。
北のあぜ道、クレイモアが爆発したのだ。餡子と土が空中に飛散し、地面に落ちていった。
「良い堆肥になりそうだな。レニングラードにゆっくりがいたら、もしかしたら…」
やめておこう。ゆっくりがいたとして、食糧難は時間の問題だ。死んだ人は戻ってこないし、時間も戻らない。
ほんの少し逡巡させていると、爆発音を聞きつけて村民達が家から飛び出してきた。
「な、なんじゃ!?」
「シドさん、何が起こったんよ!?」
慌てふためく村民達に、俺はクレイモア地雷が爆発した事を説明した。
村民達はホッとした表情を見せると、家へと戻っていった。そしてすぐに出てくると、農作業をポツポツと始めた。
「って、おいおい。農作業もいいですけど、見張りも大事ですよ」
俺が慌てて声を掛けると、村民達はうっかりしていたと云わんばかりに、家へと戻った。
すぐに出てくると肩にはAK74をぶら下げていた。そしてまた農作業へ戻るが、ちらほらと西や東に目を向けている。
俺は異様な光景と思ったが、事態が事態なだけに仕方ないと思った。俺は北のあぜ道の近くまで行くと、れいむが絶叫していた。
「まじざああああああああああああああ!! ゆっぐじいいいいいいいいいいいいい!!!」
タバコを吹かし、その光景をボーッと見ているとれいむがこちらに気付いた。
「じじいいいいいいいい!! まじざをだずげろおおおおおおおおおおおおお!!」
「プリヴェート、れいむ。吹っ飛んだのはまりさだったのか?」
「ぞうだよおおおおおおおお!! だずげでええええええええ!!!」
「そこの切れ端に見覚えはあるか?」
俺は地面に散らばる焼け焦げた布きれを指さした。れいむはそれを見ると、青ざめていった。
「ど、どぼぢでまじざがじんでるのおおおおおおおおおおおおお!!?」
「云いたい事はそれだけか? ヤパショール」
「までえええええええええええええええええええ!!!」
俺が背中を向けてその場を後にすると、れいむの怒声が聞こえてきた。その直後に爆発音。
タバコの灰が爆風でポトリと落ちた。折角携帯灰皿を持ってきたのに、意味がない。
それから数時間が経ち、午後になった。午後と云えばウォッカだ。英国紳士が紅茶を嗜むように、ロシア紳士はウォッカを嗜む。
「パーパ、それはただの古いロシア人だよ…」
「ニェット! 古いものがロシア人にするのだ」
「パーパ、酔っぱらいすぎ…それはそうと、今日辺り荷物来るからな」
「荷物?」
俺が疑問に思っていると、ヘリコプターの音が聞こえてきた。慌てて玄関から外に出ると、カモフが空を飛んでいた。
そのまま通り過ぎるかと思えば、大きな木箱をハッチから放り投げてきた。パラシュートが開いたそれは、ふわりふわりと俺の目の前に落ちてきた。
「なんじゃこりゃ?」
「ランボーだよ」
息子がそういうと、木箱をかなぐり開け始めた。中に見えたのは数台のM-134と大量の弾丸。
「クレイモアだけじゃ不安が過ぎる。だから、ミニガンも要請しといたんだよ。パーパ」
「ナーシ凄すぎだろ…」
俺と息子はM-134を台座に、北に設置すると、農作業を始めた。あとはゆっくりが来たら迎撃してやればいい。
俺は皆よりも一足遅く、農作業を始めた。直後に爆発音。ゆっくりが引っ掛かったのだ。
だが、またしても爆発音。三度目の爆発音。連続する爆発音に、ついにゆっくりの軍勢が押し寄せてきたと思った。
「おーい! ゆっくりが攻めてきたぞ-!」
「総員配置につけ! プリクローイ!」
村民達が慌てて持ち場に就く。北と東と西に、村民が集結した。俺と息子は北で武器を手に待ち構えている。
目の前には煙がもうもうと立ちこめていた。煙の中を突き進むゆっくりがいるようで、爆発音は絶えず聞こえた。
やがて爆発音が止んだ。俺はM-134のグリップを握りしめると、様子を窺った。
ゆっくりがこちらに向かってくる様子はない。煙がやがて立ち消えると、目の前には大勢のゆっくりがいた。
どれも怒りと悲しみに満ちた表情だ。数もさることながら、最前面にぱちゅりーがいた。ぱちゅりーは目に涙を溜めて答えた。
「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおお!!?」
ぱちゅりーの一声に、啖呵を切った様に他のゆっくり達も吠え始めた。
「ぞうだよおおおおおおお!!」
「どぼぢでごんなごどずるのよおおおおおおお!!」
「がわいいれいぶにひどいごどじないでねえええええええ!!」
「ゆっぐじごろじはゆっぐじでぎないいいいいいいいい!!」
「わがらないよおおおおおおお!!」
「どがいはじゃないわあああああああああああああ!!」
「じねええええええええええ!!」
「ゆっぐじじごぐにおぢろおおおおおおおおおおお!!」
「まじざをがえじでえええええええええええ!!」
「おぢびぢゃんもがえじでよおおおおおおおおおおおおおお!!」
思い思いの言葉をゆっくり達が吐いたところで、俺は答えた。
「お前らこそいい加減にしろ。人間を何だと思ってるんだ、クソ野郎」
「ぐぞやろうはぞっぢでじょおおおおおおお!! むぎゅううううううう!!」
「ほう? どうして、こちらがクソ野郎と思うんだ?」
「むぎゅぅ! おやざいざんをひどりじめじで、おうぢざんだっでひどりじめじで…ずるいでじょおおおお!!」
「それは先人達の苦労があったからこそ、できたんだ」
「ぞんなのじらないわよおおおおおおおおおおおおおお!! どうでもいいがら、ゆっぐじごろじはやめでねえええええ!!」
「じゃあ、訊くがな。お前らのいう、オチビチャンとやらは勝手に出来るのか?」
「むぎゅぅ!? ぞ、ぞんなわげないでじょおおおおおおおおおおお!!!」
「それと同じ事だ。野菜だって勝手に生えてくる訳じゃないし、独り占めしてる訳じゃない。
むしろ、山を自らの住まいとして誰の許可も得ずに独り占めしてるのは、どこのどいつだ? お前らじゃないか」
「むっぎょおおおおおおおおおおお!! うるざいいいいいいいいいいい!! みんなぐぞじじいをやっづげでねええええええ!!」
「「「「「「「「「「ゆおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」」」」
ぱちゅりーの合図と共に、大多数のゆっくりが突進してきた。俺は息子と目で合図すると、トリガーを引いた。
爆音と共に射出される弾。排出された薬莢が地面に転がり蒸気を立てている。
「ゆごごっ!」「ゆぎゃばっ!」「ゆげびっ!」「わぎゃっ!」「ぐぎゃっ!」「んぼっ!」
「みぎょぉ!」「ずぎぶらばっ!」「おうぢぶびゃっ!」「ぐげらびぇっ!」「ぐぎゃぎゃっ!」
「ごぼるっ!」「ぢんぼっ!」「ぎぎりゃっ!」「あぎゃぎぃ!」「ぶびびっ!」「あみばっ!」
「あぎゃぎゃぁ゙~!!」「ぼうおうぢぐべりゃっ!」「れいぶぼぼぼぼぼっ!!」「あぎゃりゃああああああ!!」
「びえないいいいいいい!!」「あんよざんぎゃああああああ!!」「おぢびぢゃぶぶぶぶぼっ!!」
「ゆんやあああああああああ!!」「ゆぎょおおおお!!」「がずだーどざんもれないでぇええええ!!」
「わぎゃああああ! ぢぇんのじっぼぎゃあっ!!わぎゃぶ」「あじずうううううう!! へんじじでええええええ!!!」
ゆっくり達が7.62mm弾によって粉砕される。空中に飛散した中身は、ほんの僅かの空中遊泳を楽しんだ後、地面に落下する。
土の地面には餡子や生皮、砕けた目玉やカスタード、チョコレートで満ちていた。帽子やリボンも無残に裂け、黒く焦げている。
やがて土埃が舞うと、ゆっくり達が見えなくなった。そうはいっても今ので数十匹は地獄のシベリアに、送る事が出来ただろう。
俺とイワンは銃撃を止めた。ぼんやりと、薬莢の薫りをつまみにウォッカを飲む事を考えていた。
「む…むぎゅ……なにごれ…ご、ごんなの…まどうしょにはがいでながっだわよ…なんなのよ…」
「ばぢゅりいいいいいい!! びんなじんじゃっだよおおおおおおお!!」
「どぼずればいいのおおおおおおお!!? ばぢゅりーはでんざいなんでじょおおおおおお!! おじえでよおおおおお!!」
「む、むぎょ!? む、むぎゅ! ど、どにがぐでっだいよ! どずにほうごぐよおおおおおおお!」
「ゆやああああああああああああ!! はやぐにげるよおおおおおおお!」
「まっでえええええええええええええええ!!」
土埃の中から声が聞こえてきた。ドスまりさに報告にいくらしい。未だにM-134の弾は切れていないし、村民に至ってはまだ一発も銃撃していない。
「あいつら弱いな」
息子のイワンがボソッと呟いた。確かに、チェルノブイリでは生きていけなさそうだ。
放射能汚染された食料、空気。防護服を身に纏った傭兵達。国を追われたゴロツキ、ミュータント、アノマリー。
アウトローが揃った地では、奴等は新鮮な食料にしかなり得ない。そこでバイヤーを営んでいた頃が懐かしい。
「パーパ、思い出に耽るのもいい加減にしとけ」
「そうだな…村民達には引き続き、警戒が必要な事を伝えておこう」
村民達に顛末を伝えると、あい分かったと返事をして解散した。警戒と云っても、銃を握って東西と北を見張っていればいいのだ。
南に回り込むとしても、東西のどちらかを通らなければならない以上、それは無理な話だろう。
夕方になって、事件は起こった。ドスまりさが北のあぜ道までやって来たのだ。
「ゆゆ! ここで一番偉い人間さんを出してね! ゆっくりはやくだよ!」
「なんじゃなんじゃ!?」
「どうしたのかえ!?」
「村長さんを呼んだ方がいいかえ?」
「いや、私が対処しますので配置に戻って下さい」
「ゆ! ま、待ってね!」
「待たなくていいので、早く戻って下さい」
「んだらば、戻るか…」
村民が北に集まってきたが、俺が配置に戻るよう云うと散った。
「ゆっぎゃあああああああああああ!!」
「れいぶのおべべがああああああああああ!!」
「ゆんやああああああああああああ!!」
「ゆぎょえええええええええ!!」
「ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!」
「ゆぎぎゃあああああああああああああああああ!!」
「わぎゃら…わぎゃあああああああああああ!!」
「おうぢがえるううううううううう!!ぐぎぇええええええ!!!」
村民が配置に戻ったであろう直ぐの時間に、東西から銃撃音が聞こえてきた。
同時に複数のゆっくりの悲鳴がこだました。
「ゆ…」
「ニチェボ、悪くないな。自分を囮に、他のゆっくりを迂回させて攻め入れさせる気だったか」
「…ゆんっ! 糞人間が調子乗るんじゃないよ!」
「調子乗ってんのはどこのどいつだ。ハイソバーキ」
「イワン」
「ああ、分かってるよ」
「ゆぎぎ…」
挑発する息子を制止して、歯を食いしばるドスまりさに話を聞いた。
「お前はどうしたいんだ? 諦めてここから出て行くのが得策だと思うがな」
「出て行く? バカなの? 死ぬの? どうして、ドス達がここから出て行かなくちゃいけないの?」
「どうしてって、ここにいたらお前らは死ぬからだよ」
「ゆぷぷ…死ぬのはそっちだよ! ドススパークの事、知らないの?」
「ああ、勿論知ってるぞ。もっとも、クソスパークの二兆倍はする武器を持ってるがな」
「ゆぎぎ…」
「お前の周りに転がってる糞共は、みんなこいつにやられたんだぜ」
「…調子に乗らないでね…糞人間…」
イワンがM-134をポンポンと手で叩くと、歯ぎしりをしながらドスまりさは山へと帰っていった。
諦めたとは、とてもいえない様子だった。相変わらず警戒を怠る事は出来ない。
「おいー、シドさーん! こいつを捕まえたんぞー」
「ゆぎいいいいいいい!! はなぜええええええええええ!!」
村民が薄汚れたれいむのピコピコを掴んで、こちらまで持ってきた。
俺はドスまりさの一件を話すと、ひとまず集会所に皆を集めることにした。
虐待 制裁 パロディ 番い 群れ 赤ゆ 子ゆ ドスまりさ 自然界 現代 虐待人間 銃注意 STALKER注意 ウォッカ注意 リハビリ
農業武装地帯(前編) ポマギあき
俺はシドロビッチ。ロシアから、ここ日本へと隠居しにきた老人だ。限界集落の農村で、近くには山なんかの自然がある。大変美しい。
日本も大分寒くなってきた。とはいえ、ロシアほどではない。俺はここで農業を営んでいる。ジャガイモ、人参、キャベツ、白菜。まあ色々だ。
しかし、肝心の出来はというとそれほどでもない。周囲にも農業を営む人達がいる。
しかし、俺が当初ここに来た時は農業をすることを彼等に大反対された。ゆっくりの害が酷い。
作物が出来たかと思えば、すぐに食い漁られる。酷い時には家を荒らされる時もあったという。
俺はゆっくりを殺せばいいと云った。しかし、この地帯にはドスまりさがいるという。
年寄りばかりで何の装備も持たない老人達。猟友会のメンバーはいても、水平二連銃如きじゃ、奴等を駆逐できない。
そしてなにより、農村の村長が頑なだった。事を荒立てず、収穫物の何割かを払えば安全が保証されると言って聞かない。
俺は愕然とした。人間ですらないゆっくりに、無理な要求を立てられた。そして刃向かう事もせずに、事を荒立てたくないが故に要求を受け入れた。
ロシアでは考えられない事だ。外国人がそんな事をすれば、ナーシと呼ばれる組織が暴動を起こす。そしてプーチンが粛正する。
まして相手はゆっくりだ。サイズに拘わらず、全員がシベリア送りにされる。
私は、彼等には装備や体力もさることながら、何よりガッツが足りない気がした。
私が、彼等を何とかしたいのには理由があった。彼等はどれも良い人達だ。作物の育て方がいい加減な私に、根気強く指導してくれた。
朝早くに私を叩き起こし、一緒に農作業をしてくれた。夜になると一緒に酒を煽った。いわば仲間だ。
そんな善良な人達が、ゆっくり如きに蹂躙されるのは許せなかった。気付くと私は国際電話を使い、息子のイワンに電話を掛けていた。
「ダー、イワンダー」
「ふざけている場合ではないぞ、息子よ」
「なんだよ父ちゃん。そっちで元気にやってるんだろ?」
「俺は元気だが、近隣住民が元気ではない」
「なんだよそれ? どういうことだ?」
「お前はありとあらゆる装備を持って、こっちに来るんだ」
「はぁ? 明日、ナーシの集会だぜ?」
「ナーシより、大切な事がある」
「チョルト! 分かったよ、父ちゃんには逆らえねーからな」
「スパシーバ、息子よ」
俺はウォッカとソーセージを煽ると、狩猟用のドラグノフを手に外へと出て行った。
畑を守らなくてはならない。ゆっくりに作物を食い荒らされるからだ。お陰でせっかく学んだ農作業は滞りがちになっている。
畑に来て早々、俺はドラグノフに弾を装填する。こちらに向かってくるまりさに狙いを付けていた。
風もなく、狙撃には絶好の機会。まりさは、意気揚々と地面を跳ねた。帽子には赤まりさが乗っていた。
その跳ねた瞬間。空中を彷徨う間を狙って、俺は引き金を引いた。まりさの帽子と額が弾け飛ぶ。
目玉は飛び、口から餡子が飛び出す。赤まりさは訳が分からぬと言った表情で宙を舞った後、地面に転がった。
「ゆええええええええん! いちゃいよおおおおおおお!! おちょうしゃあああああん! おちょ…ゆううううううううう!!?」
地面に転がった痛みで泣き叫ぶ赤まりさ。親まりさに助けを求めようと、横見をした。
そこにあるのは頭部を破裂させ帽子の残骸を地面に残した、親まりさの残骸。赤まりさは再度、絶叫した。
「ゆんやあああああああああああああ!! おちょうしゃんちっきゃりちちぇえええええええええええええ!!!」
赤まりさは殺さない。悲鳴を聞きつけて、他のゆっくりを誘き出すのだ。誘き出したゆっくりも、殺す。
赤まりさは釣り餌にしか過ぎない。俺はウォッカをチビリと飲むと、ジッと身構えた。
「ぢゃれきゃあああああああああああ!! きゃわいいまりちゃをたちゅけちぇええええええええええええええ!!!」
赤まりさは絶叫し続けた。それから一時間近く経った。日も沈み、夜になる頃になっても助けは来なかった。
「ゆぐぐぐぐぐぐ…じゃぶい…しゃむいよ…ぢゃれか…たちゅけちぇ…たちゅけちぇ…ゆ…ゆ…」
赤まりさはガタガタと震えて助けを乞うた。しかし、相変わらず誰も来ない。
「ゆぐぐぐぐ…もっちょ…ゆっくち…」
結果、凍死した。俺が思っていた以上に赤まりさの体力は弱く、長続きしなかった。
ウォッカの瓶が空っぽになりそうな頃、俺も酔っぱらって凍死するのは御免被るから家に帰った。
部屋を暖かくし、和食を食べると就寝した。ミソスープは赤味噌に限ると、微睡みの中で思った。
「おーい、シドちゃん!」
「ん…んん…」
俺を呼ぶ声がする。農作業を指導してくれた恒彦という老人男性だ。
俺は二日酔いの頭を醒ます為に、ダンボールから新たにウォッカを取り出し、飲んだ。迎え酒は我が国の伝統である。
「まーた、酒ばっかり飲んで…体に悪いぞえ」
「大丈夫、ロシアは白熊!」
「いっつも訳が分からんねぇ」
「今日は何処へ行くんだ?」
「おお、今日は厩舎へ牛の世話に行くんじゃよ。」
「おお、行く行く! 牛肉好き!」
「いやいや、乳牛だよ…」
「じゃあ、カクテルパーティを」
恒彦にジョークを飛ばしていると、厩舎に辿り着いた。厩舎に入ると、多数の牛が居る。
今日は乳搾りだ。俺は搾乳機を手に牛へと近づいた。そこには親れいむと、親まりさ。子れいむ、子まりさがいた。
「なんでここにいるんだ?」
「「「「ゆぅ…ゆぅ…」」」」
藁の片隅で眠っている。気持ちよさそうに暖かそうにしているが、口元には牛乳が乾いた後があった。
「こいつらぁ…わしの花子の乳を飲みよったな!」
恒彦が怒りの表情を浮かべる。俺は恒彦を制止すると、牛を撫でた。
牛は何だお前かという顔になったが、俺がゆっくり達に指さすとそちらへと顔を寄せた。
「「「「ゆぅ…ゆぅ…」」」」
「モーッ!」
「「「「ゆ!?」」」」
一同は、花子の鳴き声で目覚めた。目をぱちくりとさせて、周囲の様子を窺う。
「ゆ! かわいいれいむがねてるんだから、じゃましないでね!」
「くそにんげんは、ここからでていってね! ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだよ!」
「でちぇいけくしょにんぎぇん!」
「ばーきゃばーきゃ!」
初っぱなから口が悪い事に眉をひそめると、俺は花子を叩いて糞袋一家に指さした。
花子はどこぞのチーズのキャラクターロゴよろしく、ニカッと笑みを浮かべると子れいむを食べ始めた。
「ゆっぎゃあああああああああああああ!!!」
「ゆうううううううううううう!! おぢびぢゃああああああああああああああん!」
「ゆっがあああああああああ!! おちびぢゃんにひどいごどずるばがはじねえええええええ!!」
「ゆんやあああああああああああああああああ!!」
親まりさ達が一斉に花子に体当たりするが、まるできかない。花子は美味しそうに子れいむを平らげた。
「モー!」
「ゆ…お、おぢびぢゃん…ゆやああああああああああああ!! れいぶのおぢびぢゃんがえじでええええええええええ!!」
「よぐぼおぢびぢゃんをごろじだなああああああ!! ゆっぐじじないでごろじでやるうううううううう!!」
「ちにぇえええええええええええええ!!」
子れいむ亡き後も体当たりを続ける一家。俺は恒彦に会釈すると、一家を摘み上げた。
「ゆ! はなせええええええええええ!!」
「ぐぞにんげんがぎだないででざわるなあああああああ!!」
「おしょらどんぢぇるみぢゃい!!」
俺は柵の三角に出っ張った部分に親子を突き刺した。
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆぎょおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ゆきゃああああああああああああああ!!!」
親子揃って良い音を聞かせてくれた。あんよを突き刺したので、これで二度と動く事は出来ないだろう。
「いだいいいいいいいいい!! はなぜえええええええええ!!」
「はなぜえええええええ!! ごごがらだぜえええええええええええ!!」
「ゆきいいいいいい!! いちゃいよおおおおおおおおおおおおお!!」
恒彦に代わって、俺が言葉を発した。
「お前ら、どうしてここにいる?」
「ゆぎいいいいいいいいいい!! だまれええええええええ!! じねえええええええええ!!」
親れいむが絶叫した。俺は親れいむの両頬を掴むと、大きく引き千切った。
「ゆっぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「れいぶううううううううううううううううううう!!!?」
「おぎゃあしゃあああああああああああん!!!」
親れいむの千切れた両頬から、餡子がボタボタと落ちてくる。
「いいか、話さないと次は目玉を抉るぞ」
「ゆ゙…」
「ごのぐぞじじいいいいいいい!! ごろじでやるううううううううう!!」
「ゆんやああああああああああああ!! たちゅけちぇええええええええええええ!!」
「話しを理解できていないようだな」
俺は泣き叫ぶ親まりさと赤まりさに向かって云うと、親れいむの両目に指を突き立てた。
クチュっという潰れる音がすると、親れいむは大きく震えて絶叫した。
「ゆっぎゃああああああああああああああああああああああ!! れいぶのおべべがあああああああああああああ!!!!」
「ゆうううううううううううう!!!?」
「おぎゃあしゃああああああああああああああああん!!」
「黙れ、今度こそ殺すぞ」
「おでがいだがらいうごどぎいでええええええええええ!! れいぶのだめにぎいでえええええええええ!!」
「「ゆ゙……」」
「お前ら、もう一度だけ訊くぞ。どうしてここにいるんだ? まりさ、答えろ」
「ゆ…ここは…まりさのおうちだよ…だから…いるんだよ…」
ふざけた回答をしたものだから、俺は思わずまりさを引っぱたいた。
「ゆぎゃっ!」
「おぢょうじゃああああああああああん!」
「まじざああああああああ!! どぼじだのおおおおおおおおお!!?」
「い、いだいいいいいいいいいいいい!!」
「誰に断って、この厩舎がお前らの者になったんだ? ああ?」
「ぞ、ぞれは…ひ、ひどりじめずるじじいがわるいんでじょおおおおおおおおお!!!」
「独り占め?」
「ぞうだよおおおおおおおお!! ごんなゆっぐじじだどごろを、ひどりじめずるのはずるいんだよおおおおおおお!!!」
俺は再びまりさを引っぱたいた。
「ゆぎゃびぃ! いだいいいいいいいいいい!! なにずるのおおおおおおおおお!!?」
「まじざあああああああああああああああ!!」
「ゆんやあああああああああ!! もうおうちかえりゅううううううううう!!」
「そんなにここにいたいなら、いればいいさ」
俺は一家を柵から引き抜くと、花子の足下へと放った。
「「「ゆべっ!!」」」
「いだいいいいいいいいいいい!! なにずるんだあああああああああああ!!」
「びえないよおおおおお!! なにぼびえないよおおおおおおお!!」
「ゆええええええええええええええん! いちゃいよおおおおおおおおおおお!!!」
俺は恒彦と共に、厩舎を後にした。搾乳どころではない。
「いいか、恒彦。今は野菜だけで済んでいる。だけど、こちらが譲歩すればするほど、ゆっくりはつけ上がる」
「ああ…今のを見て分かったよ…」
「だから、最初の要求が何であれ断るんだ。こちらに刃向かった場合は、こちらの力を見せつけてやればいい」
「でも、どうやって…?」
「心配するな。息子のイワンが色々持ってきてくれるさ」
俺は家へと帰った。クソったれの協定の内容とは、以下の通りだ。
ゆっくりが野菜を食べても構わない。そして、野菜を沢山、ゆっくりに上納する事。
ゆっくりを殺した場合は罪とし、ゆっくりがその罪人に罰を与える。ゆっくりが人の家に入っても構わない。
俺が協定の内容を聞かされた時、反吐が出た。そんな協定は、さっさと反故にしてやるべきだ。
俺は電話を手に取ると、村長に電話を掛けた。集会所に村民を集め、先程の出来事を説明するのだ。
集会所に着くと、村民達が既に集まっていた。村長に頼んで集めて貰ったのだ。
俺は先程の出来事を話した。それから、これからゆっくりがつけ上がる事。限界集落のここから、いずれ人々が追い出される事も。
集会所は村民のざわついた声で埋まった。村長も眉をしかめて、何やら考え込んでいる。
やがて村長は皆を制止すると、言葉を発した。
「ええとな、わしらは間違っとったかもしれん。ゆっくりも動物じゃ。
餌を与えていれば、こっちの云う事もある程度は訊いてくれるじゃろう、思うとった。
でも、それは既に破られておった。わしは、この年になって臆病になっとった。
問題があっても、それに目を瞑って蓋をしておった。しかしな、今ようやく気付いたんよ。
臭い物に蓋をしたところで、なんの解決にもならんとな。どうかみんな、今更かもしれんが協力してくれんかのう…」
村長の反省とも取れる言葉に、村民は黙り込んだ。皆がそれぞれの顔色を窺うと、うんうんと頷き始めた。
「おら、鍬しか持っちょらんけど、村長がそこまで言うんだ。戦うべ」
「おらもやるど!」
「あたしは杓文字持っちょ、戦えばいいとかね?」
「何いっちょるんよ、竹槍持って戦うっちゃ」
「うちの爺さんは、若い頃竹槍でB-29を落とした云うちょったけんね。やればできるっさ」
村民がひとつになり、俺は心外だが涙を流してしまった。村民も村長も慌てて、俺を慰めてくれた。
「あんたがなぁ…来なかったらば、この村さどうなっていたことやら…」
「そもそも、饅頭風情に恵んでやるっちゅう考えがおかしかったんのう…」
「すまんのう…露助の考えは強引思っちょっちゃけど、当たり前のことじゃったんのう…」
「なんやかんやで、村の事を考えてくれはったんやのう…すまんのう…」
「すまんのう…すまんのう…」
村民が何故か俺に謝罪を始めた頃になって、車のうるさいエンジン音が聞こえてきた。
村民達と俺は目を合わせると、一斉に外へと出て行った。
そこにはバカでかい装甲車が、一台あった。その隣に、青色のジャージを着た我が息子。イワンがいた。
「おー、ハラショー!」
「なにがハラショーだよ。ナーシの幹部の俺が、集会をサボるなんてプーチンにどやされるぜ…」
「いいや、きっとプーチンも理由を話せば分かってくれるだろう」
「まあ、いいさ。装備はたんまり持ってきたからな」
俺とイワンが会話していると、村民が再びざわつき始めた。
「ありゃりゃ! シドさんの息子かえ?」
「ええ、放蕩息子のイワンです」
「放蕩ってなんだ?」
「あー、わしゃ見た事あるぞ! ゑねみーらいんちゅう映画に出とったな!」
「いや、服装はそうかも知れないけど…」
「わしゃ知っちょるぞ! こーるおぶぢゅーちーってゲィムに出ちょっちゃろ!」
「いや、だから…」
息子が村民の質問攻めにされてる最中に、俺は装甲車の後部の扉を開いた。
中には、これから戦争を始めるとしか思えない装備ばかりであった。
RPG-7。いわずと知れたロケットランチャーだ。この大砲は装甲車にも大穴を開ける。
AK-74。有名なカラシニコフと称されるそれは、モスト・キリングリーなフルオートライフルだ。
クレイモア。対人用地雷として使われるこれは、感知すると対象に数百の鉄球を飛ばす殺傷兵器だ。
モシンナガン。第二次大戦で使われた、やたらと長いボルトアクション・ライフル。
PKM。マシンガンだが、百発以上撃てる汎用機関銃として知られている。蜂の巣になること間違い無しだ。
マカロフPM。ただの拳銃だが、私はこれが大好きだ。グリップの曲線が素晴らしい。ロシア万歳。
PPSh-41。おお、懐かしのバラライカ。私はこれに何度、命を救われた事か。
結局、私はPPSh-41とマカロフを手に取った。息子に詰め寄る村民達に話しをして、それぞれに銃を持たせた。
銃口を覗き込もうとする者もいたが、すぐさま止めさせた。危険だ。
村民達の銃の使い方は、猟友会のメンバーが手伝ってくれた。そのお陰で、スムーズに事は運んだ。
「俺、映画もゲームにも出演した事ないよ…チョルト…チョルト…パマギーチェ…」
息子はブツブツと独り言を言っていた。
「強さがあなたをつくる!」
「は?」
俺はロシア的倒置法にも満たない言葉で息子を励ますと、村民達と作戦会議を始めた。
まず、確認をした。ゆっくりは山に棲んでいる。山から麓まで降りてきて、作物を荒らす。
これは全員一致で確認を取れた。そして、俺が提唱したのは山には絶対に入らない事だった。
猟友会のメンバーはすぐに賛成してくれたが、それ以外は不思議そうな表情を浮かべていた。
山には入らない理由は二つある。まず一つは木々に覆われた地帯で、ゆっくりが360度全方向から襲ってくる可能性がある事。
饅頭といえども、こちらも年寄りばかりだ。油断は出来ない。そして、二つ目の理由は誤射だ。
猟友会のメンバーにもありがちだが、どんなに警戒していても人間を撃ってしまう事がある。
最悪、死亡に至るそれは何としても避けねばならない。以上の事を踏まえて、山に入ってはいけない。
俺はそれだけ言うと、一同頷いて賛成してくれた。
となれば、早速作業に掛かる。まずマップを作成した。農村はバカでかいものの、基本的に正方形で纏められる構図になっていた。
山は北に位置している。ゆっくりが来るとすれば、まずは北からだろう。俺は北にクレイモアを設置するよう息子に頼んだ。
「なんで俺がやらないといけないんだよ…」
「ウォッカと乾パンやるから、行ってこい」
「ここはチェルノブイリじゃないんだぞ…チョルト!」
文句を垂れつつも、息子は北のあぜ道にクレイモアを設置してくれた。村民には間違っても、ここに踏み入らぬように注意した。
そして、ドスまりさが群れにはいる。ドスまりさはある程度、知恵が効くだろうから油断は禁物だ。
北の道以外に、迂回して東西の道から来る可能性が大きい。そこは仕方ないが、村民に警備して貰うほかない。
限界集落という事もあって、基本的に人間が来ないのが幸いした。誤射の可能性を大きく抑えられる。
「それでは皆さん、よろしくお願いします。何かあったら、このバカ息子に言ってください」
「バカってお前…」
「アチェツと呼べ、或いはパーパと」
「分かったよ…パーパ」
放蕩息子の成長に私は思わず涙ぐんだ。年を取ると涙もろくなるのだ。マーマが生きていたならば、私はすぐに彼女の旨に飛び込んだろう。
タイヤのように太い腕。ドラム缶のように膨れあがった巨体でも、私を癒してくれた。
それはともかく、後は待つばかりだ。不審を察知して、ドスまりさが来たら蜂の巣にしてやればいい。ロシア式の外交術をお披露目してやろう。
それから夜になった。私と息子は風呂に入り、ウォッカを嗜む。
「なあ、パーパ」
「うん? どうした息子よ」
「なんで、ゆっくりってこの国にしかいないんだ?」
「ううむ…見ての通りだ。この国の民は、基本的にゆっくりしている」
「そうか? 俺にはパマギーチェって声しか聞こえないぜ。 特に若い奴は」
「若い奴は社会に抑圧されてるからな。若い奴以外もそうだ。そういう奴等から溢れだしたのが、ゆっくりだ」
「は? パーパ、このイワンにも何を言ってるか、分かるようにしてくれ」
「うむ。この国の人間の基本はゆっくりと、和やかに生活している」
「ああ、それは分かるよパーパ」
「しかし、西欧主義の発展により人々はゆっくりできなくなった」
「うーん…近代化ってやつかい?」
「ああ、そうだ。この国には、この国のリズムがあった。人々が殺し合う世界ではない、平和な世界で築き上げたリズムがな」
「そうなのか? ロシアじゃ考えられないな」
「お前もチェルノブイリの周辺住民の事は知っているだろう。あいつらは助け合って生きている。ゆっくりと生活している。常に頭痛に悩まされるが」
「チェルノブイリより先は地獄だがな。石ころ集める奴ばっかりさ」
「それはともかくとして、この国の従来のリズムは破壊された。その壊された歯車が、ゆっくりなんだ」
「分かったような…分からないような…」
「この国の民は、ゆっくりを虐待する者がある。殺した時に、ゆっくりを感じるはずだ。それは失われたゆっくりを…」
「パーパ、酔っぱらってるだろ?」
「パーパは24時間酔っぱらっているぞ」
「ロシアじゃ低アルコールのビールが、推奨されてるってのに…愛国者とは思えねーな」
「うるさいぞ、シベリア送りにするぞ」
私と息子は風呂から上がり、一通りの事をすると就寝した。ベッドではなく、いわゆる煎餅布団。
今の私にとっては、これこそが宝だ。コタツ、鍋料理。寒い故郷を懐かしく思いつつ、平和に過ごす。
哀愁の中に愛情を感じる。これが『わびさび』というものなのか、ヤポンスキーよ。
「ダハハ! あずにゃん、かわいかったなぁ!」
「お前は、わび、さび、萌えだな…」
「あ? パーパ、どうしたんだ?」
_________________________________________________________
|Урааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааа!!!|
|Урааааа Пожалуйста расслабьтесь! ! ! ааааааааааа!!!|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
朝を迎えた。まだ早朝の五時か、そこらだ。イワンはグースカ寝ていて、起きる様子がなかった。
私はまたしても二日酔いに悩まされていた。迎え酒のウォッカを飲むと、乾し肉を口に頬張り外へと出て行った。
「こういう寒い日は寒中水泳が一番なのだが…」
ロシアでは寒い日こそ寒中水泳をする。ロシアでは寒中水泳があなたを強くする。
「ああ、全然倒置してない…普通だ…」
そうこうしていると、爆発音が聞こえた。俺はウォッカが胃から込み上げてくるのを、グッと堪えながら振り返った。
北のあぜ道、クレイモアが爆発したのだ。餡子と土が空中に飛散し、地面に落ちていった。
「良い堆肥になりそうだな。レニングラードにゆっくりがいたら、もしかしたら…」
やめておこう。ゆっくりがいたとして、食糧難は時間の問題だ。死んだ人は戻ってこないし、時間も戻らない。
ほんの少し逡巡させていると、爆発音を聞きつけて村民達が家から飛び出してきた。
「な、なんじゃ!?」
「シドさん、何が起こったんよ!?」
慌てふためく村民達に、俺はクレイモア地雷が爆発した事を説明した。
村民達はホッとした表情を見せると、家へと戻っていった。そしてすぐに出てくると、農作業をポツポツと始めた。
「って、おいおい。農作業もいいですけど、見張りも大事ですよ」
俺が慌てて声を掛けると、村民達はうっかりしていたと云わんばかりに、家へと戻った。
すぐに出てくると肩にはAK74をぶら下げていた。そしてまた農作業へ戻るが、ちらほらと西や東に目を向けている。
俺は異様な光景と思ったが、事態が事態なだけに仕方ないと思った。俺は北のあぜ道の近くまで行くと、れいむが絶叫していた。
「まじざああああああああああああああ!! ゆっぐじいいいいいいいいいいいいい!!!」
タバコを吹かし、その光景をボーッと見ているとれいむがこちらに気付いた。
「じじいいいいいいいい!! まじざをだずげろおおおおおおおおおおおおお!!」
「プリヴェート、れいむ。吹っ飛んだのはまりさだったのか?」
「ぞうだよおおおおおおおお!! だずげでええええええええ!!!」
「そこの切れ端に見覚えはあるか?」
俺は地面に散らばる焼け焦げた布きれを指さした。れいむはそれを見ると、青ざめていった。
「ど、どぼぢでまじざがじんでるのおおおおおおおおおおおおお!!?」
「云いたい事はそれだけか? ヤパショール」
「までえええええええええええええええええええ!!!」
俺が背中を向けてその場を後にすると、れいむの怒声が聞こえてきた。その直後に爆発音。
タバコの灰が爆風でポトリと落ちた。折角携帯灰皿を持ってきたのに、意味がない。
それから数時間が経ち、午後になった。午後と云えばウォッカだ。英国紳士が紅茶を嗜むように、ロシア紳士はウォッカを嗜む。
「パーパ、それはただの古いロシア人だよ…」
「ニェット! 古いものがロシア人にするのだ」
「パーパ、酔っぱらいすぎ…それはそうと、今日辺り荷物来るからな」
「荷物?」
俺が疑問に思っていると、ヘリコプターの音が聞こえてきた。慌てて玄関から外に出ると、カモフが空を飛んでいた。
そのまま通り過ぎるかと思えば、大きな木箱をハッチから放り投げてきた。パラシュートが開いたそれは、ふわりふわりと俺の目の前に落ちてきた。
「なんじゃこりゃ?」
「ランボーだよ」
息子がそういうと、木箱をかなぐり開け始めた。中に見えたのは数台のM-134と大量の弾丸。
「クレイモアだけじゃ不安が過ぎる。だから、ミニガンも要請しといたんだよ。パーパ」
「ナーシ凄すぎだろ…」
俺と息子はM-134を台座に、北に設置すると、農作業を始めた。あとはゆっくりが来たら迎撃してやればいい。
俺は皆よりも一足遅く、農作業を始めた。直後に爆発音。ゆっくりが引っ掛かったのだ。
だが、またしても爆発音。三度目の爆発音。連続する爆発音に、ついにゆっくりの軍勢が押し寄せてきたと思った。
「おーい! ゆっくりが攻めてきたぞ-!」
「総員配置につけ! プリクローイ!」
村民達が慌てて持ち場に就く。北と東と西に、村民が集結した。俺と息子は北で武器を手に待ち構えている。
目の前には煙がもうもうと立ちこめていた。煙の中を突き進むゆっくりがいるようで、爆発音は絶えず聞こえた。
やがて爆発音が止んだ。俺はM-134のグリップを握りしめると、様子を窺った。
ゆっくりがこちらに向かってくる様子はない。煙がやがて立ち消えると、目の前には大勢のゆっくりがいた。
どれも怒りと悲しみに満ちた表情だ。数もさることながら、最前面にぱちゅりーがいた。ぱちゅりーは目に涙を溜めて答えた。
「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおお!!?」
ぱちゅりーの一声に、啖呵を切った様に他のゆっくり達も吠え始めた。
「ぞうだよおおおおおおお!!」
「どぼぢでごんなごどずるのよおおおおおおお!!」
「がわいいれいぶにひどいごどじないでねえええええええ!!」
「ゆっぐじごろじはゆっぐじでぎないいいいいいいいい!!」
「わがらないよおおおおおおお!!」
「どがいはじゃないわあああああああああああああ!!」
「じねええええええええええ!!」
「ゆっぐじじごぐにおぢろおおおおおおおおおおお!!」
「まじざをがえじでえええええええええええ!!」
「おぢびぢゃんもがえじでよおおおおおおおおおおおおおお!!」
思い思いの言葉をゆっくり達が吐いたところで、俺は答えた。
「お前らこそいい加減にしろ。人間を何だと思ってるんだ、クソ野郎」
「ぐぞやろうはぞっぢでじょおおおおおおお!! むぎゅううううううう!!」
「ほう? どうして、こちらがクソ野郎と思うんだ?」
「むぎゅぅ! おやざいざんをひどりじめじで、おうぢざんだっでひどりじめじで…ずるいでじょおおおお!!」
「それは先人達の苦労があったからこそ、できたんだ」
「ぞんなのじらないわよおおおおおおおおおおおおおお!! どうでもいいがら、ゆっぐじごろじはやめでねえええええ!!」
「じゃあ、訊くがな。お前らのいう、オチビチャンとやらは勝手に出来るのか?」
「むぎゅぅ!? ぞ、ぞんなわげないでじょおおおおおおおおおおお!!!」
「それと同じ事だ。野菜だって勝手に生えてくる訳じゃないし、独り占めしてる訳じゃない。
むしろ、山を自らの住まいとして誰の許可も得ずに独り占めしてるのは、どこのどいつだ? お前らじゃないか」
「むっぎょおおおおおおおおおおお!! うるざいいいいいいいいいいい!! みんなぐぞじじいをやっづげでねええええええ!!」
「「「「「「「「「「ゆおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」」」」
ぱちゅりーの合図と共に、大多数のゆっくりが突進してきた。俺は息子と目で合図すると、トリガーを引いた。
爆音と共に射出される弾。排出された薬莢が地面に転がり蒸気を立てている。
「ゆごごっ!」「ゆぎゃばっ!」「ゆげびっ!」「わぎゃっ!」「ぐぎゃっ!」「んぼっ!」
「みぎょぉ!」「ずぎぶらばっ!」「おうぢぶびゃっ!」「ぐげらびぇっ!」「ぐぎゃぎゃっ!」
「ごぼるっ!」「ぢんぼっ!」「ぎぎりゃっ!」「あぎゃぎぃ!」「ぶびびっ!」「あみばっ!」
「あぎゃぎゃぁ゙~!!」「ぼうおうぢぐべりゃっ!」「れいぶぼぼぼぼぼっ!!」「あぎゃりゃああああああ!!」
「びえないいいいいいい!!」「あんよざんぎゃああああああ!!」「おぢびぢゃぶぶぶぶぼっ!!」
「ゆんやあああああああああ!!」「ゆぎょおおおお!!」「がずだーどざんもれないでぇええええ!!」
「わぎゃああああ! ぢぇんのじっぼぎゃあっ!!わぎゃぶ」「あじずうううううう!! へんじじでええええええ!!!」
ゆっくり達が7.62mm弾によって粉砕される。空中に飛散した中身は、ほんの僅かの空中遊泳を楽しんだ後、地面に落下する。
土の地面には餡子や生皮、砕けた目玉やカスタード、チョコレートで満ちていた。帽子やリボンも無残に裂け、黒く焦げている。
やがて土埃が舞うと、ゆっくり達が見えなくなった。そうはいっても今ので数十匹は地獄のシベリアに、送る事が出来ただろう。
俺とイワンは銃撃を止めた。ぼんやりと、薬莢の薫りをつまみにウォッカを飲む事を考えていた。
「む…むぎゅ……なにごれ…ご、ごんなの…まどうしょにはがいでながっだわよ…なんなのよ…」
「ばぢゅりいいいいいい!! びんなじんじゃっだよおおおおおおお!!」
「どぼずればいいのおおおおおおお!!? ばぢゅりーはでんざいなんでじょおおおおおお!! おじえでよおおおおお!!」
「む、むぎょ!? む、むぎゅ! ど、どにがぐでっだいよ! どずにほうごぐよおおおおおおお!」
「ゆやああああああああああああ!! はやぐにげるよおおおおおおお!」
「まっでえええええええええええええええ!!」
土埃の中から声が聞こえてきた。ドスまりさに報告にいくらしい。未だにM-134の弾は切れていないし、村民に至ってはまだ一発も銃撃していない。
「あいつら弱いな」
息子のイワンがボソッと呟いた。確かに、チェルノブイリでは生きていけなさそうだ。
放射能汚染された食料、空気。防護服を身に纏った傭兵達。国を追われたゴロツキ、ミュータント、アノマリー。
アウトローが揃った地では、奴等は新鮮な食料にしかなり得ない。そこでバイヤーを営んでいた頃が懐かしい。
「パーパ、思い出に耽るのもいい加減にしとけ」
「そうだな…村民達には引き続き、警戒が必要な事を伝えておこう」
村民達に顛末を伝えると、あい分かったと返事をして解散した。警戒と云っても、銃を握って東西と北を見張っていればいいのだ。
南に回り込むとしても、東西のどちらかを通らなければならない以上、それは無理な話だろう。
夕方になって、事件は起こった。ドスまりさが北のあぜ道までやって来たのだ。
「ゆゆ! ここで一番偉い人間さんを出してね! ゆっくりはやくだよ!」
「なんじゃなんじゃ!?」
「どうしたのかえ!?」
「村長さんを呼んだ方がいいかえ?」
「いや、私が対処しますので配置に戻って下さい」
「ゆ! ま、待ってね!」
「待たなくていいので、早く戻って下さい」
「んだらば、戻るか…」
村民が北に集まってきたが、俺が配置に戻るよう云うと散った。
「ゆっぎゃあああああああああああ!!」
「れいぶのおべべがああああああああああ!!」
「ゆんやああああああああああああ!!」
「ゆぎょえええええええええ!!」
「ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!」
「ゆぎぎゃあああああああああああああああああ!!」
「わぎゃら…わぎゃあああああああああああ!!」
「おうぢがえるううううううううう!!ぐぎぇええええええ!!!」
村民が配置に戻ったであろう直ぐの時間に、東西から銃撃音が聞こえてきた。
同時に複数のゆっくりの悲鳴がこだました。
「ゆ…」
「ニチェボ、悪くないな。自分を囮に、他のゆっくりを迂回させて攻め入れさせる気だったか」
「…ゆんっ! 糞人間が調子乗るんじゃないよ!」
「調子乗ってんのはどこのどいつだ。ハイソバーキ」
「イワン」
「ああ、分かってるよ」
「ゆぎぎ…」
挑発する息子を制止して、歯を食いしばるドスまりさに話を聞いた。
「お前はどうしたいんだ? 諦めてここから出て行くのが得策だと思うがな」
「出て行く? バカなの? 死ぬの? どうして、ドス達がここから出て行かなくちゃいけないの?」
「どうしてって、ここにいたらお前らは死ぬからだよ」
「ゆぷぷ…死ぬのはそっちだよ! ドススパークの事、知らないの?」
「ああ、勿論知ってるぞ。もっとも、クソスパークの二兆倍はする武器を持ってるがな」
「ゆぎぎ…」
「お前の周りに転がってる糞共は、みんなこいつにやられたんだぜ」
「…調子に乗らないでね…糞人間…」
イワンがM-134をポンポンと手で叩くと、歯ぎしりをしながらドスまりさは山へと帰っていった。
諦めたとは、とてもいえない様子だった。相変わらず警戒を怠る事は出来ない。
「おいー、シドさーん! こいつを捕まえたんぞー」
「ゆぎいいいいいいい!! はなぜええええええええええ!!」
村民が薄汚れたれいむのピコピコを掴んで、こちらまで持ってきた。
俺はドスまりさの一件を話すと、ひとまず集会所に皆を集めることにした。