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anko2767 ゆっくり公民 ~農奴制~(冬)
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『ゆっくり公民 ~農奴制~(冬)』 32KB
いじめ 群れ 飼いゆ 赤ゆ 希少種 現代 独自設定 4作目-4
ゆっくり公民 ~農奴制~(秋)の続きになります
私はゆうかを抱えて部屋を出た、その瞬間に後悔する。
「足拭きマットを用意しておくべきだった……」
後で廊下掃除をする決意を固める、
「まぁ、これで一応準備はできただろう」
「あら、そうなの、あんなので良いのかしら?」
ゆうかが上を向いて聞いてくる。
恐らく実験的には大丈夫だろう、もし結果が出なければまた赤ゆっくりに成長促進剤を使って世代を交代させるだけだ。
「まぁ、結果待ちかな、どちらにしろ実際にやってみるのは春にならなくては……」
「そうね、楽しみだわ、冬はお花が少ないから……」
そんな風に溜息を付くゆうか、しかし室内の自分のベッドに合わせて鉢植えを運び込まされた私としては文句を言いたい。
「もうすぐ、ゆうかりんも来ることになってるから、まぁ楽しみにしていてよ」
「ふぅ、そうね、楽しみにするわ、私たちの"農場"が完成するのを……」
あの時、村で捕らえたゆっくりの群れ、彼らを使って私がしようと考えていた実験は、ゆっくりを使った農場の運営である。
のうかりん農場というものをご存知だろうか、最近マスコミでも取り上げられるようになってきたゆっくりを使った農場である。
ゆっくりゆうかは植物を育てるという、ゆっくりの中でも珍しい嗜好と能力を持ったゆっくりであるが、その胴付きであるゆうかりん、その亜種であるのうかりんというゆっくりは熟練の農業従事者顔負けの知識の技術を持っていると言われている。
そんなのうかりんやゆうかりんならば農場を運営させても良いのではないか、そんな実験を加工所が行い、設置したのうかりん農場は成功している。
現在胴付き以外のゆっくりゆうかを、農地で働かせる研究をしているとも言われているが、個人レベルではゆっくりゆうかに畑仕事の手伝いをしてもらっている例や、ゆうかに畑を作ってもらっているなど報告されている。
この話を聞いたときふと思った、ゆっくりゆうかとはいえ胴が無ければ普通のゆっくりとサイズは変わらない、希少種とはいえ特別な能力を持っているわけではないし、特別な器官が有るわけでもない。
ならば知識と技術を教えれば、通常種のゆっくりでも畑を作ることが出来るのではないか。
あくまで噂話レベルでは、野生の群れでゆうかを迎え入れ、畑を作ることに成功したドスが居るなどと言う話もある。
もちろん、今までの経験から言って難しいのも分かっている、ゆっくりはゆっくりする事を至上とする生き物であり、金バッジのゆっくりでもゆっくり出来ない事をさせるのは難しい。
質の低いゆっくりを畑に連れて行って「畑で仕事をしろ!」と命令しても、効果は無いだろう。
しかしその反面、政府組織で働くゆっくりや、地方自治体に飼われる形で働くゆっくりも一部には居るのである。
それらも試行錯誤の末に成功したのだと思うが、それならば農作でも同じことが言えるのではないだろうか。
あの村に何度も通い、Iさんと親しくなっていた私は、Iさんから一つの提案を受けていた。
Iさんは少し先の町のグループホームへの入居が決まっており、あの家から出て行く事になっていたのだ、そこで何度もあの村を訪れている私にあの家を借りないかと聞いてきていた。
元々ゆっくりの飼育の為に外の環境も欲しかったところであり、この村ならば今までの取引先にゆっくりを卸に行くのも距離的には多少しか違わない。
野生のゆっくりの入手も容易になるとそれを検討していた私は、家の外に広がる農地を見てそんな実験をしてみようかと考えていたのだ。
あの群れの襲撃が私に決断を促すことになった、Iさんとも話が付き次の年の春からあの家で暮らすことになる。
あの家の横にあるの農地でゆっくりを使った農場を作ってみよう、あの群れのゆっくり達の使い道はそれである。
もちろん農耕の概念を持たない通常種のゆっくりだけでいきなり畑を作ることは出来ない。
私も農業に関しては無知であるし、当然のこととしてゆうか種の手助けが必要になるだろう、急いでブリーダー仲間に連絡をするが基本的に人気の高いゆうか種を手に入れるのは難しかった。
懇意のペットショップに言ってまわしてもらった金バッジのゆうかが一匹手に入ったが、人気ののうかりんやゆうかりん、ゆうかにゃんなどは払底しており、知り合いのブリーダーの協力でゆうかりんが一体と銀バッジゆうかが一匹の予約が付いただけである。
どうも前述の、のうかりん農場がらみで加工所がゆうか種を買いあさっているらしい。
私が今抱えている金バッジゆうかはなかなか優秀であり、私の実験の話を聞くと農地の一部に花畑を自由に作らせることを条件に協力してくれるようになったので、今まであんなことをやらせていたのだ。
通常種のゆっくりに畑を作らせるためには、飼いゆっくりと同じようにゆっくりが人間に従うようにするだけでなく、実際畑作成を指揮するゆうか達に従うようにしなければならない、出来ればそれを教育で教えるのではなく、ゆっくりの餡子に刻み付けたいところである、その為に必要なのはやはり恐怖だろう。
ゆっくりはどのようなメカニズムなのかは不明だが、親や先祖の記憶が子に受け渡される仕組みが存在する。
そのため、赤ゆっくりでも一応人語を喋ることが出来るし、れみりゃなどの捕食種に対する恐怖も持っている。
しかし、何故か生まれながらにして人間に対する恐怖を持っている個体はほぼ存在しない、このことがゆっくり達の人間に対する軽視に繋がっているのだが、同じことが本来捕食種であるゆうかにも言える、同じ捕食種のれみりゃなど経験の少ない赤ゆっくりでも恐れるのに、ゆうか種に対してそういうことはほとんど起きていない。
しかし、町で暮らすゆっくり達が何代も重ねて町ゆっくりというスタイルに変化したように、ゆっくりに人間とゆうかに対する恐怖を刷り込み、その恐怖に従って畑仕事をする、これを何代も繰り返すことでゆうかに従い畑を作る「農業ゆっくり」とでも言うべきゆっくりを作れないだろうか、それが今まで群れのゆっくりにしてきた仕込である。
あの部屋でひたすら私から暴力を受けていたゆっくりは、人間を恐れそれに媚を売ることで生きることを選択した、赤ゆっくりを潰して新しい赤ゆっくりを作らせれば、ちゃんと子供にも人間を怒らせないように教え込んでいた。
同じ事をゆうかでやってみたが、やはり同じゆっくりという意識が邪魔しているのか、群れの半分くらいしかゆうかに恐怖を抱いたゆっくりは居なかった、そこでゆうかに芝居をさせて「ゆうかを恐れていない」ゆっくりを間引いたのだ、残ったゆっくりを繁殖させたので数も回復するだろう。
今生まれた赤ゆっくりが有る程度大きくなり外での作業に耐えられるようになる来年の春、それが実験の開始時期である。
そして次の年の春、村へ拠点を移し終えた私は、生き残ったゆっくりを村へ連れて行ったのである。
元Iさん宅は、Iさんの許しもあって私の自宅用として色々と改造してしまった。
二階には二部屋ゆっくりの飼育・調教用の部屋を作り、もう一室を繁殖室にした、一階を自室と飼いゆっくり用のスペースなどとして使うことにする。
外にあった納屋は、簡単な修理をしてから農業ゆっくり用のお家として使うことにする。
この家から村の方に対しては、簡易的な柵を設置して、家からしか村へ行けないようにしてゆっくりの逃亡を防止する。
そんな形で家を整えた私はゆうかりんと二匹のゆうかを連れ畑にやってきた、元納屋現「ゆっくりのお家」に放り込んできたゆっくり達を畑に出す前にまずゆうか達の意見を聞いてみる必要があったからだ。
「あらあら、これは腕が鳴るわねぇ」
「お花の種は用意してあるの?」
「最初に畑を作らないといけないのでは……」
思い思いの感想を言うゆうか達だが、実際に畑を作る段になると目の輝きが変わった。
私はゆっくり達を畑に出して、脅して「ゆうかの命令に従う事」を徹底させた後はゆっくりの管理と観察に徹し、畑作りに関してはゆうか達に丸投げ使用と思っていたが、それは甘い考えだった。
久しぶりに外に出れたゆっくり達、襲撃してきた群れの生き残り達は感動の声を上げているし、その子供たち――外を知らない世代――も初めての空に感動している。
しかし、一冬の教育の効果は有ったのか、私が近寄ると怯えて静かになった、ゆうか達の命令にも従っているようでまずまず満足のいける結果だろう。
ゆっくり達は、ゆうかの指示に訳が分からないという顔をしながらも実行し畑の中で動き回っている、時々ゆうかの大きな声が飛んでおり、何かを言われたゆっくりが慌てているのが見える。
縁側に座ってそれを観察しようとした私にも、ゆうか達からの声が飛んだ。
「お兄さん、今日はとりあえず耕すだけにするけど、道具が全然足りないわ、すぐに用意してくれる?」
「土作りに必要な物が全然用意されてないわね、それも急いでね」
「実際に何を作るかは夜に話し合うわ、種と苗の用意もね」
こうして暢気に座ってお茶を飲んでいるわけには行かなくなった私は、最終的に鍬まで振らされる事になった。
こうして慌しく始まった畑作りは、さすがに詳しいゆうか達の主導でそれなりの形になってきた、まだこの家に付属した農地の半分ほどだが、ちゃんと耕され畝も作られている、まだまだこれからであるがジャガイモと人参、カブが植えられしばらくすれば畑らしくなるだろう。
ゆうか達は畑を完成すると、私に許しを得て畑の端に自分たちの花畑を作り始め、私は何度もゆうかを抱えて花の種や肥料を買いに行かされることになった。
ゆっくり達――ゆうか達が農奴ゆっくりと呼んでいるのでここではそう呼称する――についても色々な問題が起きた、人間とゆうかに従うように刷り込んだ農奴ゆっくりだがやはりまだ完全とは言えない、逆らったゆっくりについては制裁するようにゆうかに指示たが、少なくない数のゆっくりがゆうかに反抗して永遠にゆっくりさせられている。
また、この場所を知っている、第一世代の生き残りたちが脱走を試みることも多かった、結局あの襲撃ゆっくりの生き残りは全て制裁することになってしまい、一時的にゆっくりの数が半減することにもなったが成長促進剤を与えられていた第二世代はそろそろ成ゆっくりぐらいの大きさになっており、その赤ゆっくりで増えるだろう。
畑が形になり、野菜が生えてくると盗み食いも出始めた、これも厳罰をもって当たるしかなく、さらにゆっくりの数が減ることになった。
そして次の世代の赤ゆが生まれると、その赤ゆを集めて私の飼いぱちゅりーに教育させる事になり、そのぱちゅりーとゆうか達の提案で、農奴ゆっくりの「約束」が作られることになった、赤ゆっくりはこの約束を守らないとゆっくりできないと教育させられることになる。
また畑への侵入者も現れるようになった、あの冬の様に群れ単位での襲撃こそ無いが、一家族単位で畑にやってきてはおうち宣言をしようとする森のゆっくり達、農奴ゆっくりとゆうかに捕らえさせ、制裁させるようにしたが定期的に現れる、森ゆっくりを制裁するゆうかの目が輝いていたのが気になった。
そして、私は昨年の冬に残してしまった宿題に直面させられる事になる、ドスまりさである。
結局あの後、村にドスの襲撃は無かったが、あれは本当にあの群れの強がりだったのだろうか、追い詰められたゆっくりがドスの存在を騙る事は少なくないが、やけに群れ全体で揃って言っていたのが気になる、といってもその時のゆっくりはもう生き残っていないのだが……
こうして私は、今まで放置してきたこの森の調査の必要性に駆られる事になる、私がゆっくり採りで入ったのはせいぜい徒歩で30分の距離であり、森の入り口に過ぎない、この村に住むことになったため時間に余裕は出来たため、少しずつ行動範囲を広げることは勿論、森に住むゆっくりの口からの情報不可欠であるため、私は飼っているまりさを使うことにする。
以前の町で野良ゆっくりの調査で実績のあるまりさは、あの時と同じように大きなスィーとゆっくり懐柔用の食料を私に要求すると意気揚々と森の中へ入って言った。
「まりさに任せておけば安心なのぜ、報酬は前と同じでいいのぜ!」
そんなまりさには森にある群れの調査と、ドスの捜索、そして希少種の調査を言いつけてあった。
まりさの調査はこれから長いこと続けられる様になるが、スィーを使うとはいえ一匹での調査であり進みはゆっくりとしたものになる、いっそきめえ丸を加えようかと考えたが、最初に大きな成果が出たのはその年の夏で有った。
夏に入り緑を増した「ゆうかりん農場」、この頃は少しずつ野菜が作れるようになっており、それを農奴ゆっくりの餌として使うことが出来るようになってきていた。
その日の夕方駆け込んできたまりさが大声を上げた。
「お兄さん、お兄さん!すごいのぜ、希少種が集まっている所があったのぜ!」
希少種の群れを見つけたのか、と驚いてまりさの報告を聞くとどうも違うらしい、まりさの話によれば、森の中にゆっくり達が集まっている地域があり、群れという形ではないがいくつかのグループを作っているという、その中にゆっくりかなこやさなえ、らんと言った希少種のグループがあると言う、どうも群れが出来る前段階の様でこのまま行けば群れになるのでは、との事だった。
ゆっくりブリーダーとして希少種には惹かれる、特にゆっくりかなこは希少で扱いが難しい反面高額で取引がされている。
さっそく採りに行こうと思ったが、しかしまりさの話によればどうも成体らしい、成体でも高く売れるがやはり出来れば赤ゆっくりが欲しい、この森は人間が来るような場所ではないし、ゆっくりかなこほどの希少種であれば通常種のゆっくりによって殺されることも少ない、どうも群れが出来そうではあるし、それならば希少種の群れを作ったところで一網打尽にした方がよさそうである、そのかなこ達についてはまりさに監視を続けさせる事にする、ただし今まりさと接触すると頭のいい希少種であるため、人間の存在に気が付かれるかもしれないので、遠くからの監視に留めさせる。
続いて報告された事は、ある意味希少種より私の興味を引いた、
「その辺りのゆっくりが話してたのぜ、どうも……ドスが居るみたいなのぜ……」
ドス!そう言えばまりさを森に放ったのはドスが主目的でもあった、詳しく聞いてみると先ほどのゆっくりが集まっているのはどうもその地域より奥に住んでいたゆっくり達が逃げてきた事によるらしいのだ。
ゆっくりを襲うドス?ドゲスだろうか、もし森の奥にドゲスの群れが有るとすればいずれ危ない、まりさには慎重な調査を命じる事になった。
そして秋、まりさはその希少種のグループの付いての情報を集めて終わっていた、どうもそのグループのリーダーでもあるかなこが希少種の群れでは無く、希少種を頂点にした群れを創ろうとしているらしい、かなこはゆっくりの種による格差を訴えているらしく、それに反発するゆっくりも多いがかなこが優勢であり、まりさの見立てではいずれかなこを頂点とする群れになるのでは、ということであった。
少なくとも群れになるまでは、ゆうかりん農場に危険は無いだろう、ゆうかりん農場は順調だが、森の入り口に居るような家族単位の襲撃ならともかく、群れ単位での襲撃は危ない、距離も考えてかなこの勢力が群れになった何かしら手を出す必要があるかも知れない。
もう一つ、その地域のゆっくり達の話と実際の調査でドスの群れについても分かってきた、ドスの群れはかなこの群れより奥、山に近い地域に存在し、面白いことに何と「奴隷」を使っている群れらしい。
奴隷といえばゆっくりの悪口でおなじみであり、町で暮らした人なら、町のゆっくりから一度は言われた事があるのではないだろうか、町に住む野良ゆっくりが弱いゆっくりを奴隷として使っているという話は聞いたことがあるし、前に何かの論文で読んだことのある群れも群れの中に奴隷と呼ばれるゆっくりがいたようである、そう考えれば珍しい話だがまったく無いわけではないのだろう。
やはりそのドスまりさはドゲスの様である、位置的に農場に来る可能性は低いが、ドゲスであれば警戒しないわけにはいかない、今年の越冬準備の失敗で来る可能性を警戒し、この群れについても来年以降何かするべきかも知れないと考える。
「お兄さん、ほら茄子が取れたわよ、秋の茄子がどうとかって、この間呟いてたわよねぇ」
ゆうかりんが収穫した茄子を籠に入れて運んでくる、畑は冬に向けて大根が蒔かれ始めている。
農奴ゆっくり達もだいぶ数が減ってしまったが、残ったゆっくりは比較的素直に仕事をしている。
彼らの希望でゆっくりのお家の横に水場を作ってやったし、餌は足りない分こそ私の家の残飯とゆっくりフードを足しているが畑で採れた野菜を食べさせているため、その野菜の為に仕事をしているんだと理解するゆっくりも出始めた。
「おやさいさんはかってにはえてくる」このゆっくりの常識を打ち消すまでには行っていないが、来年彼らの子供世代にはそれを理解するものが出るかも知れない。
このまま行くと冬も畑で働かされる農奴ゆっくりの為に、巣に簡単な暖房くらいは入れてやっても良いかも知れない。
それと、そろそろゆうかを増やす必要があるかも知れない、家の横の花壇に集まって何か相談をしているゆうか達を見てそんな事を思った。
その年の冬、凍りついたような木々の中森に分け入った私は、同じように防寒装備で固めたまりさを伴い例のドスの群れの居る場所に来ていた、既に完全に冬に入りゆっくり達は越冬に入っている。
「お兄さん、ここら辺がそうなのぜ!」
森を歩くこと役1時間半、たどり着いたのは山にも近いなだらかな坂になっている地域だった、所々に平坦な場所もありその一つで一息つく、しばらく調べてみると、奥に大きな洞窟が見つかった、大きな丸太が何本か立てかけられており、その隙間を泥や枯れ草、木の枝が塞いでいる、間違いなくゆっくりの越冬用の巣である。
中をうかがい知ることは出来なかったが、まりさの情報と巣の大きさから見て間違いなくドスの巣であろう。
「中はさすがに分からないな……」
その後は近くを調べると、斜面に掘った穴がいくつも見つかった、これもゆっくりの巣であろう、ところがその巣には結界が張られていない。
「ゆぅ、変なのぜ、間違いなくゆっくりのおうちなのに、中に誰もいないのぜ!」
中に踏み込んで調べたまりさが呟く、ドスの居る野生の群れの中にはドスが作った大きな巣を群れ全体で使って越冬する、そんなスタイルを持つものが居る、この群れもそうなのだろうか。
「とりあえず、この冬の襲撃は無かったな……やはり来年は誰か送り込むか……」
その群れから引き返す途中、まりさの案内で例の希少種達が居た辺りにも寄る。
この辺りのゆっくりは木の下に穴を掘る形で巣を作っており、いくつもの結界を施された巣穴が見つかった。
ここは来年の春の赤ゆっくりを期待しておく。
まりさによれば、かなこの勢力はさらに増大しており、まりさ種みょん種を取り巻きにしているとの事なので、来年には希少種主体の群れになっているだろうとの事である。
「よしよし、じゃあ、金バッジのまりさ一匹、銀バッジのれいむ2匹、銀バッジのちぇん1匹確かに受け取ったよ」
「はい、有難うございました、お前達しっかりやるんだぞ……」
「お兄さん大丈夫だよ、まりさ頑張って飼い主さんにゆっくりしてもらうよ」
「お兄さんありがとう、れいむもがんばるよ!」
「むきゅ、寂しいけど、これが巣立ちなのね……」
翌年、馴染みのペットショップにゆっくりを卸した私は、車をとある店に向けていた。
その店は花屋である、町に出ると言うとうちのゆうか達から様々な注文を出されてしまったのだ。
ゆうかりん農場は順調であり、昨年の冬のには大根も収穫できたが、この時期はさすがに何も植わっておらず、ゆうかたちは来年の準備と、花の話題で忙しい。
国道に隣接した大型の花屋の駐車場に車を停め、ゆうかりんから渡されたメモ通りに買い物をした私は外に並べられたポッド苗を冷やかしていた、するとその売り場の端にゆっくりが居るのに気が付く、汚れた様子から野良ゆっくりであろう、もしかしたら苗を狙っているのかもしれない、思わず店員を呼ぼうかと思うが自分が対処したほうが早い、その影に近寄った私は驚かされた。
「ふぅ……ゆっくりしたお花さんね……」
なんとそのゆっくりはゆうか種だったのだ、汚れから間違いなく野良ゆっくりであろう、ゆうか種の野良とは珍しいものである、こっそりと近づいて摘み上げる。
「きゃ、な、何をするの、お花さんを見ているのよ、邪魔しないで!」
驚いて喚くゆうか、しかし頭の良い個体であるらしく、騒ぐと店員が来ることを説明すると大人しくなった。
掴んで駐車場まで運ぶと、並べられていた花々に名残惜しそうな顔をしたが大人しくしている。
「そ、それで私をどうするつもり、まさか……加工所?」
ビクビクしているゆうかに、私はこちらの事情を話した、私の作っているゆうかりん農場に来ないかと。
最初は怪しんだ目をしていたゆうかだが、他にもゆうか種が居るという話をすると乗り気になった。
ゆうか種は基本的に孤独を好む事が多いのだが、珍しい話である。
「そうね、ゆうかのお花畑さんを作ってもいいなら行ってあげるわ」
ゆっくり達をペットショップまで入れてきたキャリーケースにゆうかを入れて車に乗せる、家に帰るまでの間ゆうかの話を聞いてみると、どうも元々飼いゆっくであったゆうかだそうだ、やけに頭が良さそうな理由もこれで分かった。
金バッジをつけていたらしく、おじいさんの家に花畑を作っていたそうだ、ところがおじいさんは亡くなってしまい、その家は売りに出されてしまった、そうゆうかは語った。
どうやら、庭仕事用のゆうからしい、ゆうかの話以外の情報が無いので不明だが、一人暮らしの老人が庭の手入れのために飼っていたゆうかだが、その老人の死後引き取り手が居なくなったのでは無いだろうか。
その後は野良として町の公園で花壇の世話などをしていたが、その公園が一斉駆除の対象となり、逃げ出したのだそうだ。
家に帰ると、買ってきた物を下ろす、それを受け取りに来たゆうか達と、出てきた飼いゆっくり達の好奇の視線の受け流し
洗面所でゆうかを洗う、騒ぐかと心配したが元飼いゆっくりだけあって大人しくしていた。
拭いてやったゆうかを居間に連れて行き事情を説明すると、さっそくゆうか達に囲まれている。
どうやら上手くやってくれそうだ、ゆうかりん農場は上手く回っているので、私は森のゆっくり対策に考えをめぐらせた。
やはりあのドスの群れには何らかの監視を付けるべきである、まりさが定期的に様子を見ているもののやはり群れの中に入らなければ分からないことも有るだろう、問題はあの群れがドゲスの群れで有ると言う点である、普通の群れと異なり群れに参加するゆっくりは危険が有るだろう。
奴隷を使っている群れなので、奴隷ゆっくりにされる危険性もある。
しかし、おそらくまりさを介して連絡をする事になるため事情を良く飲み込んだゆっくり、うちの飼いゆっくりにやらせるしか無いだろう。
飼いゆっくり達に事情を説明したところ、数匹が「面白そう」と手を上げてくれた(手は無いが)、結局うちで飼っていたぱちゅりーを送る事に決まり、ゆっくりの冬眠明けを狙ってまりさに連れて行って貰う事にした。
春、私の目の前ではゆうか達が畑の割り振りをしている、ゆうかが増えたこともあり今年は農地を拡大する方針で農奴ゆっくり達にもすっきりーを許している、最も増えすぎたらこちらで間引いてやれば良い。
今年生まれる世代は、完全に畑で育ったゆっくりから生まれる事になる、出来れば畑仕事の知識を親から受け継いで欲しいが、それは贅沢というものかも知れない、親がちゃんと教育できれば万々歳だろう。
ゆっくりの妊娠により一時的に農奴ゆっくりが減ってしまうが、ゆっくりの仕事は植えた種が芽吹いてからの方が多いため大丈夫だろう、生まれた赤ゆっくりはまた飼いぱちぇりーに教育させようと思ったがぱちゅりーは森に行ったのであった、農奴ぱちゅりーにやらせて見ることにする。
ぱちゅりーは上手くドスの群れに入り込んだようで心配だがしばらくは連絡が付かないそうだ、ドスの群れから戻ったまりさによると、やはりかなこの群れが作られていたらしい、しかも以前に言っていたゆっくりの種による格差を「カースト」と言う形にしたらしく私を驚かせた。
ゆっくりがそんな事を知っているのも驚きだが、それを群れの制度にするとは、どうも希少種の中にはけーねやえーりんと言った知性のある種が混じっているようだ、この群れにも監視を付けたいところだが……
前回の話し合いで次点になったちぇんがやけに乗り気なので行ってもらう事にする、このちぇんなら大丈夫だろうが、逆に不安でもある。
まりさにちぇんを送らせたが、ちぇんは上手く群れに入り込む事が出来た、この群れには以前にまりさが情報収集をしたゆっくりが居たらしく、まりさの事もばれてしまったが、群れと取引できる様になったらしく堂々と入り込めるようになった。
まりさを通じてちぇんに群れの中を探らせてみるが、希少種達は春なのに未だすっきりーはしていないらしく、私は肩透かしを食わされる事になる。
ちぇんは群れの上層部のらんに求婚されたようで、それによって群れの中枢に入り込むことが出来たようだ、長になったかなこから色々と相談を受けるようになったのは上出来と言えるだろう。
群れの上層部、希少種達がすっきりーをしないのは、どうも群れの問題が絡んでいるようで、ちぇんから報告を受けた私はちぇんを通して助言をしてやる事にした。
ドスの群れに行ったぱちゅりーも、上手く群れの参謀の地位を掴んだようでまりさを通じて連絡が取れるようになった。
ぱちゅりーの報告では、どうもあのドスはかなり人間を恐れているようである、これならば位置関係もあり仮にゆうかりん農場に気が付いても襲撃は無いかも知れない。
かなこの群れとドスの群れ、2つ共に言える事だがどうも群れが存在したほうが農場は安全そうである、監視の手を緩める事は出来ないがちぇんとぱちゅりーには暫く群れで頑張って貰う事にした。
それにどうも、あの森のゆっくり達は人間について無知な様である、ぱちゅりーとちぇんのお飾りには飼いゆっくりの証であるバッジを付けたままにしたが、それについては綺麗で流されたそうだ。
この後、まりさはかなこの群れと同じようにドスの群れにも取引に向ったようだが、群れのゆっくりに襲われたそうだ。
また暫くは遠くからの監視とぱちゅりーとの連絡のみしてもらう事になる。
「ゆふん、なんてとかいはなプレイスなのかしら、とかいはなありすにふさわしいわ!」
「みてみなさい、とかいはなまりさのでむかえもあるわよ!」
「すこしきたないけど、まりさならがまんするわ!」
森へゆっくりを採りに入っていた私が畑に戻ると、ちょうど森から出てきたのか三匹のありすがゆうかりん農場に現れていた、微妙にれいぱー気質のあるありすの様だ。
丁度いいと背後から踏み潰してしまおうかと思ったが、ゆうかがやって来る、ゆうかの号令で農奴ゆっくり達がありすを押さえ込み、ゆうかが止めを刺そうとしている、問題はなさそうである、と一匹が農奴ゆっくりを振り払い森に逃げ込もうとしている。
「むっはー、いなかものにやられるありすじゃないぎぃえ!」
私の方に着たので踏み潰しておく、集まっていた農奴ゆっくり達の視線がこちらに向けられる、その瞳に中に私への恐怖が見えたため、私は満足した。
問題の起きないゆうかりん農場とは異なり、森の群れについては一つ問題があった、どちらの群れも上手くやっているようだが、未だに希少種の赤ゆっくりが生まれたと言う報告が無いのである、二つの群れの間には相互不可侵条約のようなものが結ばれたと、ちぇんとぱちゅりーの両方から報告があったが、その点は気になっていた、ちなみにまりさはドスの群れとも取引が出来るようになったそうだ。
この問題が解決したのは翌年の春にであった、長のかなこが問題にしていた群れのすっきりー制限についてちぇんを通して助言をしておいたが、ちぇんの報告によるとかなこの群れではその後もいろいろと小さな問題は起きていたらしい、それが解決したのが良かったのか、群れの希少種達が番を作りすっきりーに踏み切ったのだ、長く待っていた物が実った瞬間である、タイミングを見計らって採りに行く事にする。
一つ面白いことに、かなこの群れについては例のカーストを使ったゆん口制限の方法を助言したのだが、それが上手く行き群れのゆっくりが対策をし始めたことによって、かなこの群れを訪れたまりさに子供を売るゆっくりが出ているそうである、買い取った赤ゆっくりはまりさがドスの群れに運んでいるそうだ。
もう一つ分かった面白いことは、ドスの群れについてである、ドスの群れがその問題にどう対処しているのか疑問に思っていたが、昨年の冬群れで越冬したぱちゅりーによると、群れの幹部にしか明かされていないが、どうも奴隷ゆっくりを間引いて冬の食料にしているようだ、考えた物である、ゆん口問題と冬の食料問題を一気に解決している、まりさに赤ゆっくりの対価として払っているのも、そのあまあまだそうである。
「おわ、いって!」
木の根に足を引っ掛ける、暗い夜の森を私は進んでいた、ちぇんの報告によりかなこの群れの希少種の赤ゆっくりが生まれたことを知ったためである。
群れのゆっくりに気づかれないよに、ゆっくりの活動時間ではない夜を選択したのだが、夜の森を舐めていた。
懐中電灯の明かりのみで進むには夜の森は危険であった、何度か足元が危うくなり、着いて来ているまりさも苦笑いしている。
やはりネットで見た、玩具とは思えない「夜雀も真っ青、暗視スコープ」を買って来るべきだったか……
道具類は一通り揃えたがそこが惜しまれた、最も昼のうちに夜光塗料で目印でも付けておけば良いのだが。
懐中電灯の光に近くのゆっくりが気が付くかも知れないが、今の私の頭にはれいむのお飾り付き帽子が乗っているため、大きなれいむだと誤解してくれるだろう。
何度か痛い思いをしてかなこの群れの辺りまで来る、場所はGPSを用いているため間違いないだろう、暫くすると奥の木の根元からちぇんが現れた、こちらに向けてしっぽを振っている。
「お兄さん、こっちなんだねー」
私とまりさは小声でちぇんに挨拶をすると、背負ったバッグから道具と一匹のゆっくりを取り出した。
何度か転んだせいで中で痛い目にあったのか、不機嫌そうな赤い目こちらに向けるゆっくり――ゆっくりれいせんである。
道具はラムネスプレーを使う、ちぇんの案内で先ず希少種の巣から巣穴に向けてスプレーし、続いて通常種の巣にも同じ処置を行う、途中で気が付いたゆっくりはれいせんの目の力で記憶を失ってもらい、マスクを付けたまりさが希少種の巣から赤ゆっくりを運び出した。
背中のバッグから赤ゆっくり用のケースを取り出し、希少種の赤ゆっくりを詰め込む、これで帰りは転ぶわけには行かなくなった。
「お兄さん、これで最後なのぜ!」
そう言って赤てんこを咥えてくるまりさ、まさに大量であった赤さなえが6、赤すわこが4、赤らんが6、赤けーねが2、赤もこうが2、赤えーりんが2、赤てんこが2、希少種とは思えない収穫である。
やはり希少種が野生で出生率が高いと言うのは真実なのかも知れない。他にも赤ちぇんが4と足りなかったみょんとぱちゅりーの赤ゆっくりも採って行く。
「お兄さん、おちびちゃんをお願いだよー」
自分の赤ゆっくりを差し出した形になったちぇんも、一応の納得はしているようだ、巣穴の中に戻るちぇんを見送ってから、行きの二倍の時間をかけて私たちは家に戻った。
痛い目にあった分、ゆっくり採りの成果は凄まじい物だった、まりさに森の希少種をチェックさせてはいるが、あれだけの数が手に入るのは稀であり、多大な儲けを弾き出した。
以前ゆうかの入手で無理を言ったショップにも借りを返すことが出来たのである。
かなこの群れはこの赤ゆっくりの失踪を「神隠し」と呼んで大騒ぎをして調査したが、上手く証拠は残らなかったらしく人間の仕業とばれる事は無かった。
何故か群れでの地位が低かったれいむ種が責任を押し付けられたのか、地位を下げられた様である。
希少種の群れは結局梅雨明けにもすっきりーを行い赤ゆっくりを生む事になるので、私としては笑いが止まらなかった。
ゆうか達は農場でブルーベリーやラズベリーと言った果物の栽培もやり始め、そのうち果樹園を作ろう等と盛り上がっている。
最初は村の人にも変わった物を見る目で見られていたゆうかりん農場も最近は受け入れられて来たらしく、たまに村の人が見に来ている。
ゆっくり採りに入った森で、傷ついたゆうかを見つけたのもこの時期であった、このゆうかもしばらくは色々慣れない様だったがなかなか楽しそうにやっている。
この家の農地は全て耕され、ゆうか達が分け合って使っている、畑だけでは無く、家の周りにも花壇が作られだし庭としても非常に美しいものになった。
そんな回想を続けているうちに太陽は西へ進んでいた、日の長い夏でなければそろそろ夕焼けが見える頃だろう。
ふと視界の端に入ってくるもの、それは一台の大型スィーだった、こちらへ向かってくるスィーが私の足元まで来ると、そこから一匹のゆっくりが飛び降りた。
「ただいまなのぜ、おにいさん!」
「お帰り、まりさ」
まりさは私の元へやってくると、早速今日の成果を報告しだす。
「喜ぶのぜお兄さん、新しいゆっくりを見つけたのぜ!」
新しいゆっくりとは、希少種のゆっくりの事である……
「本当かい?」
「もちろんなのぜ、ネズミみたいななずーりんってやつと、もう一匹すこし大きいのが居たのぜ!」
ゆっくりナズーリンか……とすれば、一緒に居た大きいのというのは、ゆっくりしょうかもしれない。
「見せてもらえなかったけど、あれはきっとちびどもがいるのぜ!位置は後で見て欲しいのぜ!」
自分の手柄を自慢するようにまくし立てるまりさ、
「そうそう、あの群れにもちびが生まれてたのぜ!」
「おや、そうなのか、まだ子ゆっくりが居るはずだろう?」
絶滅させないために前回残したため、今回は諦めるつもりだったのだが――後で思えば今回のタイミングで残せば良かった。
「本当なのぜ……いつもよりは少ないかもしれないけど、らんにさなえにけーねにもこうにてんこ、えーりんもいたのぜ!もう全部生まれた見たいなのぜ!」
それならば早めに回収に行った方が良いだろう、前回の赤ゆっくりは全て赤ゆっくりとしてショップに卸してしまったが、そろそろ希少種の育成をやってみても良いだろう。
また、ゆっくりえーりんは育ててこの「農場」で使ってみても良いかもしれない。
「そうだね、じゃあ明日行くことにしよう、まりさ、明日ちぇんに伝えに行ってくれるかい?」
「分かったのぜ!」
大型スィーを手に持ち、まりさを引き連れて家の中に入ると、私は奥で人参を齧っているゆっくりに目をやり呟いた。
「明日は森行きか、虫除けスプレー残ってたかな……?」
真っ暗な森の中を一匹のゆっくりが走っている、何度か木の根に突っかかっては転び傷を増やしながらも、起き上がると再び猛然と走り出す。
「ゆぁぁぁぁ、こないでねぇ、こないでねぇ、れいむはおいしくないよぉ!」
このような時間は本来捕食種の時間であり、通常種のゆっくりが活動することは稀である、しかしこのれいむは今も夜の森を爆走している。
れいむは不満だった、理想のゆっくりプレイスを得るために入った森の中、始めてみる森とその清清しいまでの自由を満喫したれいむは、しばらくしてある問題に直面することになる、ある程度森の奥まで進むがあまあまもお野菜さんも見つからないのだ、近くで出会ったゆっくりに聞いてみると、お野菜があるらしいと指し示されたのはれいむのやってきた元の道、あの畑の方角であった。
おかしいではないか、森にはあまあまやお野菜さんが溢れている筈なのに、そうか本当の森にはもっと奥まで行かなければならないのか、そう決心して森の奥へ奥へと進むれいむ、途中で空腹に耐え切れず、通りかかったゆっくりが食べているのと同じ草を齧って見るが、とても食べられる物では無い。
もしかして、森は理想のゆっくりプレイスでは無いのでは、そんな恐ろしい考えが浮かんでしまったれいむは、体を振ってその考えを追い出す。
「そんなわけないよ、もりはすばらしいところだよ……」
そう言って森の中を進むれいむ、そんな事を続けていると辺りが薄暗くなりだした。
「ゆぅ、そろそろすーやすーやしたいけど、このあたりにはおうちがみつからないよ……」
しばらくその辺をウロウロするが諦めて進むれいむ、森が完全に暗くなると、それまで何度か見つけたゆっくりが姿を見せなくなってしまった。
「ゆぅ、どうして……ゆっくりしていってね!みんな、どこにかくれたの?れいむはここだよ!」
怖くなって叫び声を上げるれいむ、しかしそのゆっくりしていってねに答える声は無い。
「ゆぅ~どうして、どうしてみんないないの?」
寂しさからか恐怖からかキョロキョロ周りを見回す、そんな時小さな声が聞こえる。
「ゆ!なにかきこえたよ、だれかいるんだね!」
「ウーウー」
「ゆぅ、なんだ、れいむしんぱいしちゃったよ、おどかさないでね、ぷんぷん!」
「うーうー、あまあまみつけたんだどー♪」
現れたのは水色の髪にピンクの帽子を被ったゆっくりだった、なんとそのゆっくりは空に浮いているのだ。
「ゆっくりしていってね、ゆ!あまあま!あまあまがあるの、れいむにもちょうだいね!」
空を飛ぶゆっくりに驚きながらも、その口にしたあまあまが気になるれいむ。
なんだやっぱりあまあまが有るんじゃないか、きっと他のゆっくり達はあまあまを食べに行っているのだ。
やはり森は理想のゆっくりプレイスだったのだ、そう考えるれいむの思考はそのゆっくりの言葉で止まる。
「う~あまあまはおまえなんだどぉ♪」
「ゆ、なにをいってるの、ごまかさないであまあまちょうだいね!」
「いただきますなんだど~♪」
そういって大口を開けてれいむに噛み付いてくるゆっくり、
「いた、いたいよやめてね!」
このゆっくりは本当に自分を食べようとしているのだ、そう悟ったれいむは逃げようと体を捻るが、既に頭と目の上辺りに牙が食い込んでおり、逃げ出せない。
「やめてね、れいむはおいしくないよ、はなしてね!」
そんな二匹の声に反応したかの様に、暗闇の中から一筋の光が差し込んだ。
「う~、ゆびぃ、まぶしいんだど、ざぐや~ひがざをもっでくるんだど!」
喚くゆっくりの牙がれいむから外れる、急いで振り解いたため、れいむを浅く切りつけたそれが外れると、れいむは一目散に駆け出した、絶体絶命のれいむを助けた光、それが指した方向から何かゆっくり出来ない大きな物がやってくるのに気が付いたからだ。
そうしてれいむは一心不乱に走り続けることになった、暗闇の中を背後から来るかもしれない恐怖に怯えながら。
「ゆぅぅ、こないでぇ、こないでぇ!」
涙すら流しながら走るれいむは、不安を吹き飛ばすかのように叫んだ。
「もりのおくにいけば、りそうのゆっくりぷれいすがあるよ、ぜったいだよ!!!」
れいむはゆっくり出来たのだろうか。
後書き
CivⅣ労働制度ネタ第三段になります。
人間の社会の制度をネタにしているこのシリーズですが、今回は本来の農奴制と少しずれてしまったかも知れません。
また本作はかなりの独自設定を含んでいますが、このシリーズ内の設定になっております、笑って流していただけると幸いです。
また、これまでに様々な作家さんが作ってきたネタを使っています、その点についてもお礼申し上げます。
また前作のゆっくり公民 ~カースト制~に対して様々な感想、指摘、注意など有難うございました。
掲示板などへの書き込みへの返信などはしていませんが、全て読ませていただき参考にしています。
一応次回で最終回となります、出来るだけ早く書き上げようと思いますので、次回ゆっくり公民 ~奴隷解放~でまたお会いできれば幸いです。
過去作品
anko2700 そして新記録
anko2703 ゆっくり公民 ~奴隷制~
anko2720 ゆっくり公民 ~カースト制~(前編)
anko2721 ゆっくり公民 ~カースト制~(中編)
anko2722 ゆっくり公民 ~カースト制~(後編)
いじめ 群れ 飼いゆ 赤ゆ 希少種 現代 独自設定 4作目-4
ゆっくり公民 ~農奴制~(秋)の続きになります
私はゆうかを抱えて部屋を出た、その瞬間に後悔する。
「足拭きマットを用意しておくべきだった……」
後で廊下掃除をする決意を固める、
「まぁ、これで一応準備はできただろう」
「あら、そうなの、あんなので良いのかしら?」
ゆうかが上を向いて聞いてくる。
恐らく実験的には大丈夫だろう、もし結果が出なければまた赤ゆっくりに成長促進剤を使って世代を交代させるだけだ。
「まぁ、結果待ちかな、どちらにしろ実際にやってみるのは春にならなくては……」
「そうね、楽しみだわ、冬はお花が少ないから……」
そんな風に溜息を付くゆうか、しかし室内の自分のベッドに合わせて鉢植えを運び込まされた私としては文句を言いたい。
「もうすぐ、ゆうかりんも来ることになってるから、まぁ楽しみにしていてよ」
「ふぅ、そうね、楽しみにするわ、私たちの"農場"が完成するのを……」
あの時、村で捕らえたゆっくりの群れ、彼らを使って私がしようと考えていた実験は、ゆっくりを使った農場の運営である。
のうかりん農場というものをご存知だろうか、最近マスコミでも取り上げられるようになってきたゆっくりを使った農場である。
ゆっくりゆうかは植物を育てるという、ゆっくりの中でも珍しい嗜好と能力を持ったゆっくりであるが、その胴付きであるゆうかりん、その亜種であるのうかりんというゆっくりは熟練の農業従事者顔負けの知識の技術を持っていると言われている。
そんなのうかりんやゆうかりんならば農場を運営させても良いのではないか、そんな実験を加工所が行い、設置したのうかりん農場は成功している。
現在胴付き以外のゆっくりゆうかを、農地で働かせる研究をしているとも言われているが、個人レベルではゆっくりゆうかに畑仕事の手伝いをしてもらっている例や、ゆうかに畑を作ってもらっているなど報告されている。
この話を聞いたときふと思った、ゆっくりゆうかとはいえ胴が無ければ普通のゆっくりとサイズは変わらない、希少種とはいえ特別な能力を持っているわけではないし、特別な器官が有るわけでもない。
ならば知識と技術を教えれば、通常種のゆっくりでも畑を作ることが出来るのではないか。
あくまで噂話レベルでは、野生の群れでゆうかを迎え入れ、畑を作ることに成功したドスが居るなどと言う話もある。
もちろん、今までの経験から言って難しいのも分かっている、ゆっくりはゆっくりする事を至上とする生き物であり、金バッジのゆっくりでもゆっくり出来ない事をさせるのは難しい。
質の低いゆっくりを畑に連れて行って「畑で仕事をしろ!」と命令しても、効果は無いだろう。
しかしその反面、政府組織で働くゆっくりや、地方自治体に飼われる形で働くゆっくりも一部には居るのである。
それらも試行錯誤の末に成功したのだと思うが、それならば農作でも同じことが言えるのではないだろうか。
あの村に何度も通い、Iさんと親しくなっていた私は、Iさんから一つの提案を受けていた。
Iさんは少し先の町のグループホームへの入居が決まっており、あの家から出て行く事になっていたのだ、そこで何度もあの村を訪れている私にあの家を借りないかと聞いてきていた。
元々ゆっくりの飼育の為に外の環境も欲しかったところであり、この村ならば今までの取引先にゆっくりを卸に行くのも距離的には多少しか違わない。
野生のゆっくりの入手も容易になるとそれを検討していた私は、家の外に広がる農地を見てそんな実験をしてみようかと考えていたのだ。
あの群れの襲撃が私に決断を促すことになった、Iさんとも話が付き次の年の春からあの家で暮らすことになる。
あの家の横にあるの農地でゆっくりを使った農場を作ってみよう、あの群れのゆっくり達の使い道はそれである。
もちろん農耕の概念を持たない通常種のゆっくりだけでいきなり畑を作ることは出来ない。
私も農業に関しては無知であるし、当然のこととしてゆうか種の手助けが必要になるだろう、急いでブリーダー仲間に連絡をするが基本的に人気の高いゆうか種を手に入れるのは難しかった。
懇意のペットショップに言ってまわしてもらった金バッジのゆうかが一匹手に入ったが、人気ののうかりんやゆうかりん、ゆうかにゃんなどは払底しており、知り合いのブリーダーの協力でゆうかりんが一体と銀バッジゆうかが一匹の予約が付いただけである。
どうも前述の、のうかりん農場がらみで加工所がゆうか種を買いあさっているらしい。
私が今抱えている金バッジゆうかはなかなか優秀であり、私の実験の話を聞くと農地の一部に花畑を自由に作らせることを条件に協力してくれるようになったので、今まであんなことをやらせていたのだ。
通常種のゆっくりに畑を作らせるためには、飼いゆっくりと同じようにゆっくりが人間に従うようにするだけでなく、実際畑作成を指揮するゆうか達に従うようにしなければならない、出来ればそれを教育で教えるのではなく、ゆっくりの餡子に刻み付けたいところである、その為に必要なのはやはり恐怖だろう。
ゆっくりはどのようなメカニズムなのかは不明だが、親や先祖の記憶が子に受け渡される仕組みが存在する。
そのため、赤ゆっくりでも一応人語を喋ることが出来るし、れみりゃなどの捕食種に対する恐怖も持っている。
しかし、何故か生まれながらにして人間に対する恐怖を持っている個体はほぼ存在しない、このことがゆっくり達の人間に対する軽視に繋がっているのだが、同じことが本来捕食種であるゆうかにも言える、同じ捕食種のれみりゃなど経験の少ない赤ゆっくりでも恐れるのに、ゆうか種に対してそういうことはほとんど起きていない。
しかし、町で暮らすゆっくり達が何代も重ねて町ゆっくりというスタイルに変化したように、ゆっくりに人間とゆうかに対する恐怖を刷り込み、その恐怖に従って畑仕事をする、これを何代も繰り返すことでゆうかに従い畑を作る「農業ゆっくり」とでも言うべきゆっくりを作れないだろうか、それが今まで群れのゆっくりにしてきた仕込である。
あの部屋でひたすら私から暴力を受けていたゆっくりは、人間を恐れそれに媚を売ることで生きることを選択した、赤ゆっくりを潰して新しい赤ゆっくりを作らせれば、ちゃんと子供にも人間を怒らせないように教え込んでいた。
同じ事をゆうかでやってみたが、やはり同じゆっくりという意識が邪魔しているのか、群れの半分くらいしかゆうかに恐怖を抱いたゆっくりは居なかった、そこでゆうかに芝居をさせて「ゆうかを恐れていない」ゆっくりを間引いたのだ、残ったゆっくりを繁殖させたので数も回復するだろう。
今生まれた赤ゆっくりが有る程度大きくなり外での作業に耐えられるようになる来年の春、それが実験の開始時期である。
そして次の年の春、村へ拠点を移し終えた私は、生き残ったゆっくりを村へ連れて行ったのである。
元Iさん宅は、Iさんの許しもあって私の自宅用として色々と改造してしまった。
二階には二部屋ゆっくりの飼育・調教用の部屋を作り、もう一室を繁殖室にした、一階を自室と飼いゆっくり用のスペースなどとして使うことにする。
外にあった納屋は、簡単な修理をしてから農業ゆっくり用のお家として使うことにする。
この家から村の方に対しては、簡易的な柵を設置して、家からしか村へ行けないようにしてゆっくりの逃亡を防止する。
そんな形で家を整えた私はゆうかりんと二匹のゆうかを連れ畑にやってきた、元納屋現「ゆっくりのお家」に放り込んできたゆっくり達を畑に出す前にまずゆうか達の意見を聞いてみる必要があったからだ。
「あらあら、これは腕が鳴るわねぇ」
「お花の種は用意してあるの?」
「最初に畑を作らないといけないのでは……」
思い思いの感想を言うゆうか達だが、実際に畑を作る段になると目の輝きが変わった。
私はゆっくり達を畑に出して、脅して「ゆうかの命令に従う事」を徹底させた後はゆっくりの管理と観察に徹し、畑作りに関してはゆうか達に丸投げ使用と思っていたが、それは甘い考えだった。
久しぶりに外に出れたゆっくり達、襲撃してきた群れの生き残り達は感動の声を上げているし、その子供たち――外を知らない世代――も初めての空に感動している。
しかし、一冬の教育の効果は有ったのか、私が近寄ると怯えて静かになった、ゆうか達の命令にも従っているようでまずまず満足のいける結果だろう。
ゆっくり達は、ゆうかの指示に訳が分からないという顔をしながらも実行し畑の中で動き回っている、時々ゆうかの大きな声が飛んでおり、何かを言われたゆっくりが慌てているのが見える。
縁側に座ってそれを観察しようとした私にも、ゆうか達からの声が飛んだ。
「お兄さん、今日はとりあえず耕すだけにするけど、道具が全然足りないわ、すぐに用意してくれる?」
「土作りに必要な物が全然用意されてないわね、それも急いでね」
「実際に何を作るかは夜に話し合うわ、種と苗の用意もね」
こうして暢気に座ってお茶を飲んでいるわけには行かなくなった私は、最終的に鍬まで振らされる事になった。
こうして慌しく始まった畑作りは、さすがに詳しいゆうか達の主導でそれなりの形になってきた、まだこの家に付属した農地の半分ほどだが、ちゃんと耕され畝も作られている、まだまだこれからであるがジャガイモと人参、カブが植えられしばらくすれば畑らしくなるだろう。
ゆうか達は畑を完成すると、私に許しを得て畑の端に自分たちの花畑を作り始め、私は何度もゆうかを抱えて花の種や肥料を買いに行かされることになった。
ゆっくり達――ゆうか達が農奴ゆっくりと呼んでいるのでここではそう呼称する――についても色々な問題が起きた、人間とゆうかに従うように刷り込んだ農奴ゆっくりだがやはりまだ完全とは言えない、逆らったゆっくりについては制裁するようにゆうかに指示たが、少なくない数のゆっくりがゆうかに反抗して永遠にゆっくりさせられている。
また、この場所を知っている、第一世代の生き残りたちが脱走を試みることも多かった、結局あの襲撃ゆっくりの生き残りは全て制裁することになってしまい、一時的にゆっくりの数が半減することにもなったが成長促進剤を与えられていた第二世代はそろそろ成ゆっくりぐらいの大きさになっており、その赤ゆっくりで増えるだろう。
畑が形になり、野菜が生えてくると盗み食いも出始めた、これも厳罰をもって当たるしかなく、さらにゆっくりの数が減ることになった。
そして次の世代の赤ゆが生まれると、その赤ゆを集めて私の飼いぱちゅりーに教育させる事になり、そのぱちゅりーとゆうか達の提案で、農奴ゆっくりの「約束」が作られることになった、赤ゆっくりはこの約束を守らないとゆっくりできないと教育させられることになる。
また畑への侵入者も現れるようになった、あの冬の様に群れ単位での襲撃こそ無いが、一家族単位で畑にやってきてはおうち宣言をしようとする森のゆっくり達、農奴ゆっくりとゆうかに捕らえさせ、制裁させるようにしたが定期的に現れる、森ゆっくりを制裁するゆうかの目が輝いていたのが気になった。
そして、私は昨年の冬に残してしまった宿題に直面させられる事になる、ドスまりさである。
結局あの後、村にドスの襲撃は無かったが、あれは本当にあの群れの強がりだったのだろうか、追い詰められたゆっくりがドスの存在を騙る事は少なくないが、やけに群れ全体で揃って言っていたのが気になる、といってもその時のゆっくりはもう生き残っていないのだが……
こうして私は、今まで放置してきたこの森の調査の必要性に駆られる事になる、私がゆっくり採りで入ったのはせいぜい徒歩で30分の距離であり、森の入り口に過ぎない、この村に住むことになったため時間に余裕は出来たため、少しずつ行動範囲を広げることは勿論、森に住むゆっくりの口からの情報不可欠であるため、私は飼っているまりさを使うことにする。
以前の町で野良ゆっくりの調査で実績のあるまりさは、あの時と同じように大きなスィーとゆっくり懐柔用の食料を私に要求すると意気揚々と森の中へ入って言った。
「まりさに任せておけば安心なのぜ、報酬は前と同じでいいのぜ!」
そんなまりさには森にある群れの調査と、ドスの捜索、そして希少種の調査を言いつけてあった。
まりさの調査はこれから長いこと続けられる様になるが、スィーを使うとはいえ一匹での調査であり進みはゆっくりとしたものになる、いっそきめえ丸を加えようかと考えたが、最初に大きな成果が出たのはその年の夏で有った。
夏に入り緑を増した「ゆうかりん農場」、この頃は少しずつ野菜が作れるようになっており、それを農奴ゆっくりの餌として使うことが出来るようになってきていた。
その日の夕方駆け込んできたまりさが大声を上げた。
「お兄さん、お兄さん!すごいのぜ、希少種が集まっている所があったのぜ!」
希少種の群れを見つけたのか、と驚いてまりさの報告を聞くとどうも違うらしい、まりさの話によれば、森の中にゆっくり達が集まっている地域があり、群れという形ではないがいくつかのグループを作っているという、その中にゆっくりかなこやさなえ、らんと言った希少種のグループがあると言う、どうも群れが出来る前段階の様でこのまま行けば群れになるのでは、との事だった。
ゆっくりブリーダーとして希少種には惹かれる、特にゆっくりかなこは希少で扱いが難しい反面高額で取引がされている。
さっそく採りに行こうと思ったが、しかしまりさの話によればどうも成体らしい、成体でも高く売れるがやはり出来れば赤ゆっくりが欲しい、この森は人間が来るような場所ではないし、ゆっくりかなこほどの希少種であれば通常種のゆっくりによって殺されることも少ない、どうも群れが出来そうではあるし、それならば希少種の群れを作ったところで一網打尽にした方がよさそうである、そのかなこ達についてはまりさに監視を続けさせる事にする、ただし今まりさと接触すると頭のいい希少種であるため、人間の存在に気が付かれるかもしれないので、遠くからの監視に留めさせる。
続いて報告された事は、ある意味希少種より私の興味を引いた、
「その辺りのゆっくりが話してたのぜ、どうも……ドスが居るみたいなのぜ……」
ドス!そう言えばまりさを森に放ったのはドスが主目的でもあった、詳しく聞いてみると先ほどのゆっくりが集まっているのはどうもその地域より奥に住んでいたゆっくり達が逃げてきた事によるらしいのだ。
ゆっくりを襲うドス?ドゲスだろうか、もし森の奥にドゲスの群れが有るとすればいずれ危ない、まりさには慎重な調査を命じる事になった。
そして秋、まりさはその希少種のグループの付いての情報を集めて終わっていた、どうもそのグループのリーダーでもあるかなこが希少種の群れでは無く、希少種を頂点にした群れを創ろうとしているらしい、かなこはゆっくりの種による格差を訴えているらしく、それに反発するゆっくりも多いがかなこが優勢であり、まりさの見立てではいずれかなこを頂点とする群れになるのでは、ということであった。
少なくとも群れになるまでは、ゆうかりん農場に危険は無いだろう、ゆうかりん農場は順調だが、森の入り口に居るような家族単位の襲撃ならともかく、群れ単位での襲撃は危ない、距離も考えてかなこの勢力が群れになった何かしら手を出す必要があるかも知れない。
もう一つ、その地域のゆっくり達の話と実際の調査でドスの群れについても分かってきた、ドスの群れはかなこの群れより奥、山に近い地域に存在し、面白いことに何と「奴隷」を使っている群れらしい。
奴隷といえばゆっくりの悪口でおなじみであり、町で暮らした人なら、町のゆっくりから一度は言われた事があるのではないだろうか、町に住む野良ゆっくりが弱いゆっくりを奴隷として使っているという話は聞いたことがあるし、前に何かの論文で読んだことのある群れも群れの中に奴隷と呼ばれるゆっくりがいたようである、そう考えれば珍しい話だがまったく無いわけではないのだろう。
やはりそのドスまりさはドゲスの様である、位置的に農場に来る可能性は低いが、ドゲスであれば警戒しないわけにはいかない、今年の越冬準備の失敗で来る可能性を警戒し、この群れについても来年以降何かするべきかも知れないと考える。
「お兄さん、ほら茄子が取れたわよ、秋の茄子がどうとかって、この間呟いてたわよねぇ」
ゆうかりんが収穫した茄子を籠に入れて運んでくる、畑は冬に向けて大根が蒔かれ始めている。
農奴ゆっくり達もだいぶ数が減ってしまったが、残ったゆっくりは比較的素直に仕事をしている。
彼らの希望でゆっくりのお家の横に水場を作ってやったし、餌は足りない分こそ私の家の残飯とゆっくりフードを足しているが畑で採れた野菜を食べさせているため、その野菜の為に仕事をしているんだと理解するゆっくりも出始めた。
「おやさいさんはかってにはえてくる」このゆっくりの常識を打ち消すまでには行っていないが、来年彼らの子供世代にはそれを理解するものが出るかも知れない。
このまま行くと冬も畑で働かされる農奴ゆっくりの為に、巣に簡単な暖房くらいは入れてやっても良いかも知れない。
それと、そろそろゆうかを増やす必要があるかも知れない、家の横の花壇に集まって何か相談をしているゆうか達を見てそんな事を思った。
その年の冬、凍りついたような木々の中森に分け入った私は、同じように防寒装備で固めたまりさを伴い例のドスの群れの居る場所に来ていた、既に完全に冬に入りゆっくり達は越冬に入っている。
「お兄さん、ここら辺がそうなのぜ!」
森を歩くこと役1時間半、たどり着いたのは山にも近いなだらかな坂になっている地域だった、所々に平坦な場所もありその一つで一息つく、しばらく調べてみると、奥に大きな洞窟が見つかった、大きな丸太が何本か立てかけられており、その隙間を泥や枯れ草、木の枝が塞いでいる、間違いなくゆっくりの越冬用の巣である。
中をうかがい知ることは出来なかったが、まりさの情報と巣の大きさから見て間違いなくドスの巣であろう。
「中はさすがに分からないな……」
その後は近くを調べると、斜面に掘った穴がいくつも見つかった、これもゆっくりの巣であろう、ところがその巣には結界が張られていない。
「ゆぅ、変なのぜ、間違いなくゆっくりのおうちなのに、中に誰もいないのぜ!」
中に踏み込んで調べたまりさが呟く、ドスの居る野生の群れの中にはドスが作った大きな巣を群れ全体で使って越冬する、そんなスタイルを持つものが居る、この群れもそうなのだろうか。
「とりあえず、この冬の襲撃は無かったな……やはり来年は誰か送り込むか……」
その群れから引き返す途中、まりさの案内で例の希少種達が居た辺りにも寄る。
この辺りのゆっくりは木の下に穴を掘る形で巣を作っており、いくつもの結界を施された巣穴が見つかった。
ここは来年の春の赤ゆっくりを期待しておく。
まりさによれば、かなこの勢力はさらに増大しており、まりさ種みょん種を取り巻きにしているとの事なので、来年には希少種主体の群れになっているだろうとの事である。
「よしよし、じゃあ、金バッジのまりさ一匹、銀バッジのれいむ2匹、銀バッジのちぇん1匹確かに受け取ったよ」
「はい、有難うございました、お前達しっかりやるんだぞ……」
「お兄さん大丈夫だよ、まりさ頑張って飼い主さんにゆっくりしてもらうよ」
「お兄さんありがとう、れいむもがんばるよ!」
「むきゅ、寂しいけど、これが巣立ちなのね……」
翌年、馴染みのペットショップにゆっくりを卸した私は、車をとある店に向けていた。
その店は花屋である、町に出ると言うとうちのゆうか達から様々な注文を出されてしまったのだ。
ゆうかりん農場は順調であり、昨年の冬のには大根も収穫できたが、この時期はさすがに何も植わっておらず、ゆうかたちは来年の準備と、花の話題で忙しい。
国道に隣接した大型の花屋の駐車場に車を停め、ゆうかりんから渡されたメモ通りに買い物をした私は外に並べられたポッド苗を冷やかしていた、するとその売り場の端にゆっくりが居るのに気が付く、汚れた様子から野良ゆっくりであろう、もしかしたら苗を狙っているのかもしれない、思わず店員を呼ぼうかと思うが自分が対処したほうが早い、その影に近寄った私は驚かされた。
「ふぅ……ゆっくりしたお花さんね……」
なんとそのゆっくりはゆうか種だったのだ、汚れから間違いなく野良ゆっくりであろう、ゆうか種の野良とは珍しいものである、こっそりと近づいて摘み上げる。
「きゃ、な、何をするの、お花さんを見ているのよ、邪魔しないで!」
驚いて喚くゆうか、しかし頭の良い個体であるらしく、騒ぐと店員が来ることを説明すると大人しくなった。
掴んで駐車場まで運ぶと、並べられていた花々に名残惜しそうな顔をしたが大人しくしている。
「そ、それで私をどうするつもり、まさか……加工所?」
ビクビクしているゆうかに、私はこちらの事情を話した、私の作っているゆうかりん農場に来ないかと。
最初は怪しんだ目をしていたゆうかだが、他にもゆうか種が居るという話をすると乗り気になった。
ゆうか種は基本的に孤独を好む事が多いのだが、珍しい話である。
「そうね、ゆうかのお花畑さんを作ってもいいなら行ってあげるわ」
ゆっくり達をペットショップまで入れてきたキャリーケースにゆうかを入れて車に乗せる、家に帰るまでの間ゆうかの話を聞いてみると、どうも元々飼いゆっくであったゆうかだそうだ、やけに頭が良さそうな理由もこれで分かった。
金バッジをつけていたらしく、おじいさんの家に花畑を作っていたそうだ、ところがおじいさんは亡くなってしまい、その家は売りに出されてしまった、そうゆうかは語った。
どうやら、庭仕事用のゆうからしい、ゆうかの話以外の情報が無いので不明だが、一人暮らしの老人が庭の手入れのために飼っていたゆうかだが、その老人の死後引き取り手が居なくなったのでは無いだろうか。
その後は野良として町の公園で花壇の世話などをしていたが、その公園が一斉駆除の対象となり、逃げ出したのだそうだ。
家に帰ると、買ってきた物を下ろす、それを受け取りに来たゆうか達と、出てきた飼いゆっくり達の好奇の視線の受け流し
洗面所でゆうかを洗う、騒ぐかと心配したが元飼いゆっくりだけあって大人しくしていた。
拭いてやったゆうかを居間に連れて行き事情を説明すると、さっそくゆうか達に囲まれている。
どうやら上手くやってくれそうだ、ゆうかりん農場は上手く回っているので、私は森のゆっくり対策に考えをめぐらせた。
やはりあのドスの群れには何らかの監視を付けるべきである、まりさが定期的に様子を見ているもののやはり群れの中に入らなければ分からないことも有るだろう、問題はあの群れがドゲスの群れで有ると言う点である、普通の群れと異なり群れに参加するゆっくりは危険が有るだろう。
奴隷を使っている群れなので、奴隷ゆっくりにされる危険性もある。
しかし、おそらくまりさを介して連絡をする事になるため事情を良く飲み込んだゆっくり、うちの飼いゆっくりにやらせるしか無いだろう。
飼いゆっくり達に事情を説明したところ、数匹が「面白そう」と手を上げてくれた(手は無いが)、結局うちで飼っていたぱちゅりーを送る事に決まり、ゆっくりの冬眠明けを狙ってまりさに連れて行って貰う事にした。
春、私の目の前ではゆうか達が畑の割り振りをしている、ゆうかが増えたこともあり今年は農地を拡大する方針で農奴ゆっくり達にもすっきりーを許している、最も増えすぎたらこちらで間引いてやれば良い。
今年生まれる世代は、完全に畑で育ったゆっくりから生まれる事になる、出来れば畑仕事の知識を親から受け継いで欲しいが、それは贅沢というものかも知れない、親がちゃんと教育できれば万々歳だろう。
ゆっくりの妊娠により一時的に農奴ゆっくりが減ってしまうが、ゆっくりの仕事は植えた種が芽吹いてからの方が多いため大丈夫だろう、生まれた赤ゆっくりはまた飼いぱちぇりーに教育させようと思ったがぱちゅりーは森に行ったのであった、農奴ぱちゅりーにやらせて見ることにする。
ぱちゅりーは上手くドスの群れに入り込んだようで心配だがしばらくは連絡が付かないそうだ、ドスの群れから戻ったまりさによると、やはりかなこの群れが作られていたらしい、しかも以前に言っていたゆっくりの種による格差を「カースト」と言う形にしたらしく私を驚かせた。
ゆっくりがそんな事を知っているのも驚きだが、それを群れの制度にするとは、どうも希少種の中にはけーねやえーりんと言った知性のある種が混じっているようだ、この群れにも監視を付けたいところだが……
前回の話し合いで次点になったちぇんがやけに乗り気なので行ってもらう事にする、このちぇんなら大丈夫だろうが、逆に不安でもある。
まりさにちぇんを送らせたが、ちぇんは上手く群れに入り込む事が出来た、この群れには以前にまりさが情報収集をしたゆっくりが居たらしく、まりさの事もばれてしまったが、群れと取引できる様になったらしく堂々と入り込めるようになった。
まりさを通じてちぇんに群れの中を探らせてみるが、希少種達は春なのに未だすっきりーはしていないらしく、私は肩透かしを食わされる事になる。
ちぇんは群れの上層部のらんに求婚されたようで、それによって群れの中枢に入り込むことが出来たようだ、長になったかなこから色々と相談を受けるようになったのは上出来と言えるだろう。
群れの上層部、希少種達がすっきりーをしないのは、どうも群れの問題が絡んでいるようで、ちぇんから報告を受けた私はちぇんを通して助言をしてやる事にした。
ドスの群れに行ったぱちゅりーも、上手く群れの参謀の地位を掴んだようでまりさを通じて連絡が取れるようになった。
ぱちゅりーの報告では、どうもあのドスはかなり人間を恐れているようである、これならば位置関係もあり仮にゆうかりん農場に気が付いても襲撃は無いかも知れない。
かなこの群れとドスの群れ、2つ共に言える事だがどうも群れが存在したほうが農場は安全そうである、監視の手を緩める事は出来ないがちぇんとぱちゅりーには暫く群れで頑張って貰う事にした。
それにどうも、あの森のゆっくり達は人間について無知な様である、ぱちゅりーとちぇんのお飾りには飼いゆっくりの証であるバッジを付けたままにしたが、それについては綺麗で流されたそうだ。
この後、まりさはかなこの群れと同じようにドスの群れにも取引に向ったようだが、群れのゆっくりに襲われたそうだ。
また暫くは遠くからの監視とぱちゅりーとの連絡のみしてもらう事になる。
「ゆふん、なんてとかいはなプレイスなのかしら、とかいはなありすにふさわしいわ!」
「みてみなさい、とかいはなまりさのでむかえもあるわよ!」
「すこしきたないけど、まりさならがまんするわ!」
森へゆっくりを採りに入っていた私が畑に戻ると、ちょうど森から出てきたのか三匹のありすがゆうかりん農場に現れていた、微妙にれいぱー気質のあるありすの様だ。
丁度いいと背後から踏み潰してしまおうかと思ったが、ゆうかがやって来る、ゆうかの号令で農奴ゆっくり達がありすを押さえ込み、ゆうかが止めを刺そうとしている、問題はなさそうである、と一匹が農奴ゆっくりを振り払い森に逃げ込もうとしている。
「むっはー、いなかものにやられるありすじゃないぎぃえ!」
私の方に着たので踏み潰しておく、集まっていた農奴ゆっくり達の視線がこちらに向けられる、その瞳に中に私への恐怖が見えたため、私は満足した。
問題の起きないゆうかりん農場とは異なり、森の群れについては一つ問題があった、どちらの群れも上手くやっているようだが、未だに希少種の赤ゆっくりが生まれたと言う報告が無いのである、二つの群れの間には相互不可侵条約のようなものが結ばれたと、ちぇんとぱちゅりーの両方から報告があったが、その点は気になっていた、ちなみにまりさはドスの群れとも取引が出来るようになったそうだ。
この問題が解決したのは翌年の春にであった、長のかなこが問題にしていた群れのすっきりー制限についてちぇんを通して助言をしておいたが、ちぇんの報告によるとかなこの群れではその後もいろいろと小さな問題は起きていたらしい、それが解決したのが良かったのか、群れの希少種達が番を作りすっきりーに踏み切ったのだ、長く待っていた物が実った瞬間である、タイミングを見計らって採りに行く事にする。
一つ面白いことに、かなこの群れについては例のカーストを使ったゆん口制限の方法を助言したのだが、それが上手く行き群れのゆっくりが対策をし始めたことによって、かなこの群れを訪れたまりさに子供を売るゆっくりが出ているそうである、買い取った赤ゆっくりはまりさがドスの群れに運んでいるそうだ。
もう一つ分かった面白いことは、ドスの群れについてである、ドスの群れがその問題にどう対処しているのか疑問に思っていたが、昨年の冬群れで越冬したぱちゅりーによると、群れの幹部にしか明かされていないが、どうも奴隷ゆっくりを間引いて冬の食料にしているようだ、考えた物である、ゆん口問題と冬の食料問題を一気に解決している、まりさに赤ゆっくりの対価として払っているのも、そのあまあまだそうである。
「おわ、いって!」
木の根に足を引っ掛ける、暗い夜の森を私は進んでいた、ちぇんの報告によりかなこの群れの希少種の赤ゆっくりが生まれたことを知ったためである。
群れのゆっくりに気づかれないよに、ゆっくりの活動時間ではない夜を選択したのだが、夜の森を舐めていた。
懐中電灯の明かりのみで進むには夜の森は危険であった、何度か足元が危うくなり、着いて来ているまりさも苦笑いしている。
やはりネットで見た、玩具とは思えない「夜雀も真っ青、暗視スコープ」を買って来るべきだったか……
道具類は一通り揃えたがそこが惜しまれた、最も昼のうちに夜光塗料で目印でも付けておけば良いのだが。
懐中電灯の光に近くのゆっくりが気が付くかも知れないが、今の私の頭にはれいむのお飾り付き帽子が乗っているため、大きなれいむだと誤解してくれるだろう。
何度か痛い思いをしてかなこの群れの辺りまで来る、場所はGPSを用いているため間違いないだろう、暫くすると奥の木の根元からちぇんが現れた、こちらに向けてしっぽを振っている。
「お兄さん、こっちなんだねー」
私とまりさは小声でちぇんに挨拶をすると、背負ったバッグから道具と一匹のゆっくりを取り出した。
何度か転んだせいで中で痛い目にあったのか、不機嫌そうな赤い目こちらに向けるゆっくり――ゆっくりれいせんである。
道具はラムネスプレーを使う、ちぇんの案内で先ず希少種の巣から巣穴に向けてスプレーし、続いて通常種の巣にも同じ処置を行う、途中で気が付いたゆっくりはれいせんの目の力で記憶を失ってもらい、マスクを付けたまりさが希少種の巣から赤ゆっくりを運び出した。
背中のバッグから赤ゆっくり用のケースを取り出し、希少種の赤ゆっくりを詰め込む、これで帰りは転ぶわけには行かなくなった。
「お兄さん、これで最後なのぜ!」
そう言って赤てんこを咥えてくるまりさ、まさに大量であった赤さなえが6、赤すわこが4、赤らんが6、赤けーねが2、赤もこうが2、赤えーりんが2、赤てんこが2、希少種とは思えない収穫である。
やはり希少種が野生で出生率が高いと言うのは真実なのかも知れない。他にも赤ちぇんが4と足りなかったみょんとぱちゅりーの赤ゆっくりも採って行く。
「お兄さん、おちびちゃんをお願いだよー」
自分の赤ゆっくりを差し出した形になったちぇんも、一応の納得はしているようだ、巣穴の中に戻るちぇんを見送ってから、行きの二倍の時間をかけて私たちは家に戻った。
痛い目にあった分、ゆっくり採りの成果は凄まじい物だった、まりさに森の希少種をチェックさせてはいるが、あれだけの数が手に入るのは稀であり、多大な儲けを弾き出した。
以前ゆうかの入手で無理を言ったショップにも借りを返すことが出来たのである。
かなこの群れはこの赤ゆっくりの失踪を「神隠し」と呼んで大騒ぎをして調査したが、上手く証拠は残らなかったらしく人間の仕業とばれる事は無かった。
何故か群れでの地位が低かったれいむ種が責任を押し付けられたのか、地位を下げられた様である。
希少種の群れは結局梅雨明けにもすっきりーを行い赤ゆっくりを生む事になるので、私としては笑いが止まらなかった。
ゆうか達は農場でブルーベリーやラズベリーと言った果物の栽培もやり始め、そのうち果樹園を作ろう等と盛り上がっている。
最初は村の人にも変わった物を見る目で見られていたゆうかりん農場も最近は受け入れられて来たらしく、たまに村の人が見に来ている。
ゆっくり採りに入った森で、傷ついたゆうかを見つけたのもこの時期であった、このゆうかもしばらくは色々慣れない様だったがなかなか楽しそうにやっている。
この家の農地は全て耕され、ゆうか達が分け合って使っている、畑だけでは無く、家の周りにも花壇が作られだし庭としても非常に美しいものになった。
そんな回想を続けているうちに太陽は西へ進んでいた、日の長い夏でなければそろそろ夕焼けが見える頃だろう。
ふと視界の端に入ってくるもの、それは一台の大型スィーだった、こちらへ向かってくるスィーが私の足元まで来ると、そこから一匹のゆっくりが飛び降りた。
「ただいまなのぜ、おにいさん!」
「お帰り、まりさ」
まりさは私の元へやってくると、早速今日の成果を報告しだす。
「喜ぶのぜお兄さん、新しいゆっくりを見つけたのぜ!」
新しいゆっくりとは、希少種のゆっくりの事である……
「本当かい?」
「もちろんなのぜ、ネズミみたいななずーりんってやつと、もう一匹すこし大きいのが居たのぜ!」
ゆっくりナズーリンか……とすれば、一緒に居た大きいのというのは、ゆっくりしょうかもしれない。
「見せてもらえなかったけど、あれはきっとちびどもがいるのぜ!位置は後で見て欲しいのぜ!」
自分の手柄を自慢するようにまくし立てるまりさ、
「そうそう、あの群れにもちびが生まれてたのぜ!」
「おや、そうなのか、まだ子ゆっくりが居るはずだろう?」
絶滅させないために前回残したため、今回は諦めるつもりだったのだが――後で思えば今回のタイミングで残せば良かった。
「本当なのぜ……いつもよりは少ないかもしれないけど、らんにさなえにけーねにもこうにてんこ、えーりんもいたのぜ!もう全部生まれた見たいなのぜ!」
それならば早めに回収に行った方が良いだろう、前回の赤ゆっくりは全て赤ゆっくりとしてショップに卸してしまったが、そろそろ希少種の育成をやってみても良いだろう。
また、ゆっくりえーりんは育ててこの「農場」で使ってみても良いかもしれない。
「そうだね、じゃあ明日行くことにしよう、まりさ、明日ちぇんに伝えに行ってくれるかい?」
「分かったのぜ!」
大型スィーを手に持ち、まりさを引き連れて家の中に入ると、私は奥で人参を齧っているゆっくりに目をやり呟いた。
「明日は森行きか、虫除けスプレー残ってたかな……?」
真っ暗な森の中を一匹のゆっくりが走っている、何度か木の根に突っかかっては転び傷を増やしながらも、起き上がると再び猛然と走り出す。
「ゆぁぁぁぁ、こないでねぇ、こないでねぇ、れいむはおいしくないよぉ!」
このような時間は本来捕食種の時間であり、通常種のゆっくりが活動することは稀である、しかしこのれいむは今も夜の森を爆走している。
れいむは不満だった、理想のゆっくりプレイスを得るために入った森の中、始めてみる森とその清清しいまでの自由を満喫したれいむは、しばらくしてある問題に直面することになる、ある程度森の奥まで進むがあまあまもお野菜さんも見つからないのだ、近くで出会ったゆっくりに聞いてみると、お野菜があるらしいと指し示されたのはれいむのやってきた元の道、あの畑の方角であった。
おかしいではないか、森にはあまあまやお野菜さんが溢れている筈なのに、そうか本当の森にはもっと奥まで行かなければならないのか、そう決心して森の奥へ奥へと進むれいむ、途中で空腹に耐え切れず、通りかかったゆっくりが食べているのと同じ草を齧って見るが、とても食べられる物では無い。
もしかして、森は理想のゆっくりプレイスでは無いのでは、そんな恐ろしい考えが浮かんでしまったれいむは、体を振ってその考えを追い出す。
「そんなわけないよ、もりはすばらしいところだよ……」
そう言って森の中を進むれいむ、そんな事を続けていると辺りが薄暗くなりだした。
「ゆぅ、そろそろすーやすーやしたいけど、このあたりにはおうちがみつからないよ……」
しばらくその辺をウロウロするが諦めて進むれいむ、森が完全に暗くなると、それまで何度か見つけたゆっくりが姿を見せなくなってしまった。
「ゆぅ、どうして……ゆっくりしていってね!みんな、どこにかくれたの?れいむはここだよ!」
怖くなって叫び声を上げるれいむ、しかしそのゆっくりしていってねに答える声は無い。
「ゆぅ~どうして、どうしてみんないないの?」
寂しさからか恐怖からかキョロキョロ周りを見回す、そんな時小さな声が聞こえる。
「ゆ!なにかきこえたよ、だれかいるんだね!」
「ウーウー」
「ゆぅ、なんだ、れいむしんぱいしちゃったよ、おどかさないでね、ぷんぷん!」
「うーうー、あまあまみつけたんだどー♪」
現れたのは水色の髪にピンクの帽子を被ったゆっくりだった、なんとそのゆっくりは空に浮いているのだ。
「ゆっくりしていってね、ゆ!あまあま!あまあまがあるの、れいむにもちょうだいね!」
空を飛ぶゆっくりに驚きながらも、その口にしたあまあまが気になるれいむ。
なんだやっぱりあまあまが有るんじゃないか、きっと他のゆっくり達はあまあまを食べに行っているのだ。
やはり森は理想のゆっくりプレイスだったのだ、そう考えるれいむの思考はそのゆっくりの言葉で止まる。
「う~あまあまはおまえなんだどぉ♪」
「ゆ、なにをいってるの、ごまかさないであまあまちょうだいね!」
「いただきますなんだど~♪」
そういって大口を開けてれいむに噛み付いてくるゆっくり、
「いた、いたいよやめてね!」
このゆっくりは本当に自分を食べようとしているのだ、そう悟ったれいむは逃げようと体を捻るが、既に頭と目の上辺りに牙が食い込んでおり、逃げ出せない。
「やめてね、れいむはおいしくないよ、はなしてね!」
そんな二匹の声に反応したかの様に、暗闇の中から一筋の光が差し込んだ。
「う~、ゆびぃ、まぶしいんだど、ざぐや~ひがざをもっでくるんだど!」
喚くゆっくりの牙がれいむから外れる、急いで振り解いたため、れいむを浅く切りつけたそれが外れると、れいむは一目散に駆け出した、絶体絶命のれいむを助けた光、それが指した方向から何かゆっくり出来ない大きな物がやってくるのに気が付いたからだ。
そうしてれいむは一心不乱に走り続けることになった、暗闇の中を背後から来るかもしれない恐怖に怯えながら。
「ゆぅぅ、こないでぇ、こないでぇ!」
涙すら流しながら走るれいむは、不安を吹き飛ばすかのように叫んだ。
「もりのおくにいけば、りそうのゆっくりぷれいすがあるよ、ぜったいだよ!!!」
れいむはゆっくり出来たのだろうか。
後書き
CivⅣ労働制度ネタ第三段になります。
人間の社会の制度をネタにしているこのシリーズですが、今回は本来の農奴制と少しずれてしまったかも知れません。
また本作はかなりの独自設定を含んでいますが、このシリーズ内の設定になっております、笑って流していただけると幸いです。
また、これまでに様々な作家さんが作ってきたネタを使っています、その点についてもお礼申し上げます。
また前作のゆっくり公民 ~カースト制~に対して様々な感想、指摘、注意など有難うございました。
掲示板などへの書き込みへの返信などはしていませんが、全て読ませていただき参考にしています。
一応次回で最終回となります、出来るだけ早く書き上げようと思いますので、次回ゆっくり公民 ~奴隷解放~でまたお会いできれば幸いです。
過去作品
anko2700 そして新記録
anko2703 ゆっくり公民 ~奴隷制~
anko2720 ゆっくり公民 ~カースト制~(前編)
anko2721 ゆっくり公民 ~カースト制~(中編)
anko2722 ゆっくり公民 ~カースト制~(後編)