ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2841 ゲスの連鎖
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ankoss
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『ゲスの連鎖』 33KB
制裁 野良ゆ 都会 8作目 ネタが被ったらごめんささい
「おねがいぃまずぅ、おちびちゃんがいたいいたいなんですぅ、たすけてください!」
肌寒い町の公園、その一画で散歩に来たと思しき男性の足に縋り付くゆっくり。
汚れきった体を見れば直ぐにそれが野良ゆっくりと分かる。
その背後には二匹の子まりさが横たわっており、苦しそうな息を吐いている。
親であるまりさは通りかかった人間に必死に何かを頼み込んでいる。
「おねがいしますぅ、せめておちびちゃんだけでもかいゆっくりにしてあげてください!」
「けがさんをなおせるあまあまだけでもいいですから、おねがいします!」
町に居ればいくらでも目にする事の出来る、野良ゆっくりの懇願である。
捨てられた飼いゆっくりがもとの場所に戻ろうとしたり、飼いゆっくりに憧れた純野良ゆっくりだったり、食料の足りなくなったものだったりとありふれた理由で野良ゆっくりは人間に縋り付く。
このまりさの懇願の理由も町ではありふれていた。ゆっくりは生きた饅頭である、ある意味ふざけたその生態は多少の傷も舐めて食事をすれば治るほどであるが、今まりさの後ろに居る子ゆっくり達は怪我はそれでは治らないものだ。
一定以上の怪我や、重要な器官の喪失などを癒すにはゆっくりにとってご馳走であるあまあまや、万能薬であるオレンジジュースが必要不可欠である。どちらも町の野良ゆっくりのとって手に入れるのは厳しいものである。
それだけの怪我を負ってしまった子や仲間を持つゆっくりが取る最後の手段が人間への物乞いである。
ゆっくり達に取って宝物であるそれらを簡単に手に入れる人間、そんな人間に頼み込むのだ。
人間によって厳重に保護され、傷一つ無い飼いゆっくりの存在も人間ならばという可能性を教えていた。
しかしこれは非常に危険な方法である、運良くゆっくりしている人間に当たればいいが、それ以外では運が良くても無視、運が悪ければ攻撃されたり、最悪としては虐待を好む人間に当たってしまう。
いや、その可能性はほとんどが不幸に傾いていた。人間に物乞いするゆっくりは多い、前述の理由以外にも自分の力を勘違いしたゆっくりが尊大な態度で要求したり、子ゆっくりの居る母ゆっくりがそれを理由に強請ったりそんな事例はありふれている。
そんなゆっくりがどうなったか、それはこの公園に住んでいる野良達なら皆知っている事である。
公園の広場の片隅で威圧感を放つ巨大な筒――ゆっくり専用ゴミ箱――がその末路を何よりも具体的に教えていた。
そんな中で男性に懇願するまりさ、物陰に隠れそれを見つめる野良ゆっくり達はその結果を具体的に予想していた。
「あぁ、いいよ助けてやるよ!」
その予想は外れる事となった、その男性は急に笑顔になるとまりさに向ってしゃがむ。
「ゆあぁ、おにいさんありがとうございます、ありがとうございます!」
頭を地面に打ち付けるようにするまりさを、取り出した透明な箱に入れる男性、子ゆっくり達を続けて入れた。
箱の蓋を閉めるとそれを片手に下げ公園から去っていく。
驚愕に言葉も無かった野良ゆっくり達が、物陰から出れたのはそれからだいぶ経ってからだった。
「ゆうぅ、おどろいたよ!まりさがかいゆっくりになれたよ!」
「そうねよかったわ、きっとおちびちゃんたちもたすかるわね!」
「わからないよー、ぜったいえいえんにゆっくりさせられるとおもったよー!」
「そうだみょん、かいゆっくりになれるなんてはじめてみたみょん!」
「むきゅ、そうねこんなことははじめてよ!」
野良ゆっくり達の今までのゆん生でも屈指の幸運である、もっとも他ゆんの物であるが。
極々低い確率で物乞いが成功する事はある、公園であるため遊びに来た子供が餌をくれたり、極稀に居る愛でお兄さんが餌をくれたりする事があるのだ。
しかしこれまでも飼いゆっくりにしてもらった事例は無い、子供は親に反対されてしまうし、ゆっくり大好きの愛でお兄さんであっても、自分の飼いゆっくりは大体ペットショップから買い、野良を飼いにすることはほとんど無いのである。
そんな中で元々自分達の仲間の野良であったまりさが飼いゆっくりと言う黄金の椅子を手にしたのだ、野良達としては妬ましいやら悔しいやらである。
「ゆぅ、いいなぁまりさとおちびちゃんは、きっといまごろあまあまをむーしゃむしゃしているよ!」
「きっとからださんやおかざりも、きれいにしてもらってるわね……!」
「わかるよーうらやましいんだよー!」
「べつにみょんたちだってまりさにまけてないみょん、みょんをかいゆっくりにすればよかったみょん!」
たちまち様々な不満が燃え上がる事になる、そんな中一匹だけうつむいて何かを考え込んでいたぱちゅりーがやおら声を上げた。
「……むきゅ!わ、わかったわ、ぱちゅにはわかったわ!」
「ゆぅ、ぱちゅりー、きゅうになんなの?」
「いきなりおおごえをだすなんて、とかいはじゃないわ!」
「わ、わからにゃいよー?」
「いきなりどうしたみょん?」
「なにをいっているのよ、わかったのよ、なんでまりさがかいゆっくりになれたか!」
その言葉に驚愕する野良ゆっくり達、
「ゆぅ、それなられいむもかいゆっくりになれるの!」
「すごいわ、ありすはとかいはなきんばっじさんになりたいわ!」
「わかるよー、かいゆっくりはゆっくりしているんだよー!」
「は、はやくはなすみょん!」
「むっきゃっきゃ、けんじゃのぱちぇがかいせっつしてあげるわ!」
「みんなよくききなさい、あのときまりさはひとりじゃなかったわ、おちびちゃんがいたのよ!」
「ゆあぁ、おちびちゃんだねおちびちゃんがゆっくりできるから、ゆぅそれなられいむにもできるよ!」
「わかったわ、おちびちゃんをつれていけばいいのね!」
「わかるよー、みんなでいくんだよー!」
「それならはなしがはやいみょん!」
「むきゅ、ちょちょっとまちなさい!」
それだけで早合点して、既に自分達が飼いゆっくりであるかのように盛り上がる野良ゆっくり達、慌てるぱちゅりーを置き去りにして自分のおうちへ戻っていく、この野良ゆっくり達は皆町での生活の中で番を失っていたのだが子ゆっくりが居たのである。
そんな彼女達の頭の中からは、昨日子連れで物乞いをしたでいぶがどうなったかは全て抜け落ちていた。
本ゆんはきっと今でもあの筒の中に居るはずなのだが……
「ゆっくりただいま!」
そう言って木の陰に隠されたダンボールのおうちに入るれいむ、直ぐに子ゆっくりが迎えに出てくる。
「おきゃーしゃんおかえりなりなしゃい、おみやげは?」
「れいみゅおにゃかすいちゃよ、はやきゅごはんしゃんにしようね!」
そういえばとれいむは思い出す、今日はあのまりさの事件で狩りが全然出来ずに戻ってきてしまった、れいむのお口の中にもおうちの中にも食べ物は一切無い。
その事を言うと、子れいむ達が騒ぎ始める。
「どうしちぇ、れいみゅおにゃかへっちゃよ、むーしゃむしゃしちゃいよ!」
「ゆあぁ、いくじほうきじゃよ、はやきゅれいみゅにごはんしゃんもっちぇこい!」
それを何とか宥めようとするれいむ。
「ゆ、ゆぅおちびちゃんおちついてね、いいほうほうがあるんだよ、れいむたちはかいゆっくりになるんだよ!」
「ゆ、きゃいゆっくち?」
「ゆぅ、そうしたらむーしゃむしゃできりゅの?」
「そうだよ、おちびちゃん、かいゆっくりになったら、あまあまをいくらでもむーしゃむしゃできるんだよ!」
「ゆぅ、あみゃあみゃ!」
「あみゃあみゃほちいよ!」
喜んで騒ぎ始める子供達を伴い、れいむは再び公園の広場に向った、そして自分を飼いゆっくりにしてくれる人間を物色していたのだ。
その時公園の奥から一人の男が走ってくる。ランニングでもしているのだろうか、ジャージ姿で駆け足である。
先ほどのまりさの一件が頭をよぎるれいむ、そういえばあの時も男の人だった。
子ゆっくり達に合図をすると、人間の目の前に飛び出した。
「ゆぅ、とまってねにんげんさん!」
「「とまっちぇね!」」
「うぉ、危ねぇな!ゆっくりかよ!」
その男は目の前に飛び出したゆっくりに驚くものの、危なげなく停止しれいむ達を見下ろす。
ここからが正念場だよ、れいむはそう思ったしかしれいむの横にはゆっくりしたおちびちゃんが居るのである。
これだけゆっくりしたおちびちゃんを見れば、にんげんさんもメロメロであろう。
直ぐにゆっくりした自分達を飼いゆっくりにするだけでは無く、自分から奴隷になりたいと思うかも知れない。
れいむの未来は薔薇色であった。
「ゆぅ、にんげんさん!れいむのかわいいおちびちゃんだよ、ゆっくりしたおちびちゃんをみたら、れいむたちをかいゆっくりにしてね!」
「「かいゆっくりにするんだじぇ!」」
決まった、れいむの笑顔もおちびちゃんの笑顔も完璧である、これで自分達は飼いゆっくりだ!
上がるれいむのテンションを置き去りにして、男は無言でれいむを見下ろしていた。
「ゆぅ、なにしてるの?はやくかいゆっくりにしてね、いますぐでいいよ!」
いったいにんげんは何をしているのだ、これだけのゆっくりを見たのに。
そう憤慨するれいむに男の手が迫る。
やはりにんげんはれいむを飼いゆっくりにするのだ、これでれいむもおちびちゃんも安泰である。
「はぁ、またでいぶかよ昨日に続いて二度目だぞ……この公園野良が多いのか?」
しかし人間の口から出た言葉はれいむの望んでいたものでは無かった。
「ゆ?なにするのぉ、れいむはでいぶじゃないよぉ、はやくおろしてかいゆっくりにしてね!」
「おきゃあしゃ!」
「なにをするんだじぇじじい、はやくあまあまよしぇ!」
掴み上げられるれいむ、下から子供達の声が響く。
「まったく加工所は仕事してんのか、いや市役所か?」
その言葉と共に空中を移動させられる、子ゆっくりの声が遠くなる。
「ゆがぁはなせ、れいむをはなせ、れいむはかいゆっくりになるんだ!」
背中に硬い感触が感じられる、それに振り向こうと体を捻ると何か暗いところに押し込められる、一瞬の浮遊感そして落下。
声にならない悲鳴を上げるが暗闇の中に吸い込まれて行く、高いところからの落下に身構える、しかし覚悟した衝撃はやって来ず冷たい感触、水音が響く。
「ゆぅ、つめたいよなにこれぇ!?」
体に感じる水とその不快感に呻くれいむ、自分の落ちてきた上を向くが僅かに光が漏れて来ている以外は暗闇である。
「ゆがぁ、はやくだせ、れいむをはやくここからだせ!」
上空の四角い光に向って叫ぶ、しかし何かが答える事は無い。
その時その四角がゆっくりと開き、中に光が差し込んで来るそこから逃げ出そうとのーびのーびををする、しかし遥かに高いその光に届く事は無い。
そこから中に何かが投げ込まれる、れいむの左右で水音がした。
自分にかかった水滴の不快感にそちらを睨む。
「ゆぅ、なにするの、ゆ!こ、これはおちびちゃん!」
それはれいむの子ゆっくり達であった、二匹と何かに潰されて餡子の塊になっている。
しかしそこについたお飾りが何よりも強くその物体がれいむの子供達であると教えていた。
「ゆうぅ、おじびじゃん、ぺーろぺろだよ、だいじょうぶだよすぐになおるからねぇ!」
子供達に近づこうと足に力を入れるが水が染み込み出したのか思うように動かす事が出来ない。
「ゆぅ、あんよさんうごいてね、れいむはおちびちゃんのとこゆびぃ!」
自分の足を確認しようと下を向くれいむは、その時自分の足場になっていたものに気が付いてしまう。
それはゆっくりであった、れいむと同じれいむ、そのれいむが苦悶の表情でれいむの足場になっていたのだ。
既にほとんど水に浸かり永遠にゆっくりしてしまっているのだろうが、その表情は生きているからこそ感じる苦しみが張り付いていた。
「ゆぐぐぐ、ごれはれいぶ……ゆびぃだしてね、ここからだしてね、このなかはゆっくりできないー!」
暗闇の中、れいむに答えるものは何も無かった。
「まったくれいむはいなかものねぇ!」
そんなれいむの様子を隠れてみているゆっくりがいた、あのありすである。
ありすもれいむと同じように人間に飼いゆっくりにして貰おうと様子を覗っていたのだ、そしてれいむ達の失敗を見たのである。
「ふふ、れいむはなんにもわかってないわね!」
しかしありすには怯えは無かった。
ありすはしっかりとまりさが飼いゆっくりになれた理由を理解していたのだ。
にんげんさんに飼いゆっくりにして貰うために必要なのは「とかいは」である。
あのまりさはありすには及ばないものの、この公園の中ではとかいはなゆっくりであった。
やはりにんげんの飼いゆっくりになれるのは、とかいはなゆっくりとそのおちびちゃんなのである。
「ゆ、おちびちゃんわかっているわね、にんげんさんにありすたちがいかにとかいはかしめすのよ!」
「わかってるわおかあさん、ありすはとかいはよ!」
「ゆふふ、おちびちゃんはとかいはねぇ!」
完璧である、これだけとかいはなのだもう飼いゆっくりの座は貰ったも当然である。
自分の計画に自信を持って公園を見回し、自分に相応しい人間を探すありす。
その視界にこちらに近づいてくる、ゆっくりを連れが女性が見えた。
あれだ、決心したありすは隣の子供に目で合図して飛び出した。
「にんげんさん、ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
決まった、都会派なご挨拶である。
しかし女性からも隣のゆっくりからも返事は無い。
ゆっくりの間では挨拶をされたら返すのが常識である、これが出来ないゆっくりはゆっくり出来ないゆっくりと蔑まれるのだ。
しかし女性の連れているまりさからの返事は無かった、その目には冷たい光がありお帽子の金バッジの輝きとあいまってありすに突き刺さった。
「ゆう、ゆっくりできないまりさね、まぁいいわ!」
そのまりさの態度と、そんなゆっくり出来ないまりさのお帽子に金バッジが着いている事に憤慨するものの、元々の計画を思い出し気を取りなおす。
まぁいい、もともと計画では飼いゆっくりにしてくれるように頼むのはにんげんさんだったのだ、あのまりさもありすがあまりにも都会派だったのでテレてしまったのだ、あのまりさには飼いゆっくりになってからしっかり常識を教えればいい。
「さぁ、おちびちゃんいくわよ!」
「ゆぅ、おかあさんわかったよ!」
「にんげんさん、とかいはなありすをかいゆっくりにしてね!」
「そうよ、とかいはなおちびちゃんをありすをかいゆっくりにしてね!」
輝かしいまでの笑顔、ありすもおちびちゃんも都会派である、これを飼いゆっくりにしない訳には行かない。
(うふふ、これできょうからありすたちもとかいはなきんばっじさんね!)
内心笑いが止まらない、しかしそんなありす達に帰ってきたのは金バッジまりさの冷たい視線と、
「うわぁ野良ゆっくりね、まりさ行きましょう野良はばっちいわよ!」
人間のそんな言葉だった。
「……なにをいっでるのぉ、ありすはとかいはでしょう!」
「はりゃくしりょ、このいなかもの!」
その言葉に憤慨するありす達。
「はぁ都会派って……まぁ都会的に汚いけどさぁ……」
そう言って金まりさを伴い踵を返そうとする女性。
まずい、このままではにんげんさんが行ってしまう、なんとしても飼いゆっくりにしてもらわなければ。
そうだおちびちゃんだ、とかいはなおちびちゃんが足りなかったのだ。
「むはぁ、わかったわぁおちびちゃんがもっとほしいのねぇ、さぁまりさぁすっきりーするわよぉ!」
そう言って金まりさににじり寄る、
「ゆあぁ、やめるのぜこっちにくるな!」
金まりさが後ろを向いて逃げ出す。
「おしりをむけてくれるなんて、せっきょくてきねぇ!」
追いかけるありすの背中に何かが押し付けられる。
「ゆぐっ!」
「まったくレイパーが居るなんて、まりさ大丈夫?」
「ゆぅお姉さん大丈夫だよ!」
「なにするのよぉ、はなし……!」
冷静になったありすは気が付いた自分は誰に何を頼もうとしていたんだっけ?
「ゆわぁ、おかあさーん!」
にんげんさんにおちびちゃんが掴み上げられる、
「まったく、この公園も最近野良が増えているのね……」
ありすとそのおちびちゃんはれいむ達と再会する事になった。
「わかるよー、ばかなんだねー!」
そんなありすの様子を隠れてみているゆっくりがいた、あのちぇんである。
ちぇんもありすと同じように人間に飼いゆっくりにして貰おうと様子を覗っていたのだ、そしてありす達の失敗を見たのである。
「だめなんだねー、ありすはなんにもわかってないよー!」
ちぇんには自信があった、ちぇんは人間に飼いゆっくりにしてもらうために必要な物が分かっていたのである。
それは「かわいさ」であった、人間は可愛い物が好きである。よく公園に来る人間の子供達の言動からそれを熟知していたちゃんにとって自分が飼いゆっくりになれるのは確定事項であった。
(とうぜんだよー、だっておちびちゃんはこんなにかわいいんだよー)
にんまりと笑うちぇんの後ろでは二匹の子ゆっくりがしっぽを振っている。
「おちびちゃん、わかってるねーにんげんさんにかわいさをあぴーるするんだよー!」
「わかるよー!」
「だいじょうぶだよーちぇんはかわいいよー!」
「さすがはちぇんのおちびちゃんだよー!」
すると一人の老人がゆっくり公園の中に入ってくる。
あれだ、あのじじいをちぇんの魅力でメロメロにするのだ、後は奴隷にしてしまえばいい。
子ゆっくり達に目で合図をすると飛び出す。
「にんげんさん、ゆっくりしていってね!」
「「ゆっくりしていってね!」」
ちぇんは自分より前に出たおちびちゃんを見て満足した、すばらしいあの尖ったお耳、ぴょこんと伸びた尻尾どちらもちぇんから見れば涙が出るほど可愛いものである。
これでちぇんのおちびちゃんは飼いゆっくりになったも同然だ、そうすればお母さんであるちぇんも飼いゆっくりになれるのだ。
キリッと人間さんに目を向ける三匹、しかしそんなちぇん達に何か言葉が返ってくることは無かった。
その老人はちぇん達に目を向ける事無くゆっくりと公園の広場を進んでいく。
「ゆぅ、にんげんさん……?なにしてるのーちぇんのごあいさつだよー!」
「まってねーにんげんさん!」
「ゆっくりしていってねー!」
人間がちぇん達に目を向ける事は無かった。
「お、おちびちゃんたち、ちぇんたちのかわいさをあぴーるするんだよ!」
「にゃーん、ゆっくりしていってにぇ!」
「ごろにゃーん!」
くねくねころころと動く子ちぇん達、ちぇんが追いすがるがその老人が歩みを止めることは無い。
「ゆがぁ、ちぇんたちをむしするなー!」
尻尾を逆立てたちぇんが怒鳴る。
なんてゆっくりしていないじじいだ、これだけ可愛いちぇんとそのおちびちゃんを無視するなんて。
この可愛さにメロメロになって直ぐに奴隷にしてくださいと言うはずではなかったのか。
「もうゆるせないんだよー、おちびちゃんあのじじいをみんなでぼっこぼこにするよー!」
「「わかったよー!」」
尻尾を逆立てて老人の足に飛び掛るちぇん達、老人の靴やズボンに噛み付く。
「いて、こりゃなにをするんじゃ!」
「ゆびぃ!」
「いじゃ!」
「むぐぅ!」
しかし杖の一振りで吹き払われる。
「まったく何じゃこちつらは……やれやれ、ん、ゆっくりはゆっくりゴミにとな……」
「ゆがぁ、はなせちぇんをはなせよー!」
掴み上げられるちぇん達、結局ありす達と再会する事になった。
「まったく、みていられないみょん!」
そんなちぇんの様子を隠れてみているゆっくりがいた、あのみょんである。
みょんもちぇんと同じように人間に飼いゆっくりにして貰おうと様子を覗っていたのだ、そしてちぇん達の失敗を見たのである。
「まったくちぇんはなにもわかってないみょん!」
みょんには全て分かっていた、何故まりさが飼いゆっくりに成る事が出来たのか。
それは「つよさ」である、あのまりさはこの公園ではみょんと渡り合える唯一のゆっくりであった。
そんな強いまりさだからこそ人間は飼いゆっくりにしてくれたのだ、そうやって考えるとさっきのちぇえ達がいかに愚かかは分かるだろう。
いきなりにんげんに媚を売り始めたのも見苦しいが、その後人間に襲い掛かった手際にしても笑わせてくれる。
弱いちぇんがそんな事をやっても永遠にゆっくりさせられるだけである、やはり自分達の強さをにんげんに見せ付けなくては。
みょんは横に置いてある「はくろーけん」と「ろーかんけん」に目をやる。
これをおちびちゃんに渡して、おちびちゃんの強さをにんげんに見せ付けるのだ。
おちびちゃんの強さににんげんは感動し直ぐに飼いゆっくりにしてくれるだろう、そんな強いおちびちゃんの母である自分も飼いゆっくりになれるのである。
みょんは自分の覇道に酔いしれた。
「おちびちゃん、この"はくろーけん"と"ろーかんけん"をつかうみょん!」
「おかあさんはまえにいたところで、このふたふりでいぬさんにかったこともあるみょん!」
「これをつかえばおちびちゃんもむてきだみょん!」
「わかったみょんおかあさん、この"ろーかんけん"をおかりするみょん!」
「みょんは"はくろーけん"をかりるみょん!」
そう言ってそれぞれ口に咥えるみょん達、これらの正体は以前にみょんが工事現場に落ちていたのを拾ってきた釘である。
ろーかんけんは少し大きめの真鍮釘、はくろーけんは小さな針釘である。
ろーかんけんは子ゆっくりが咥えるには大きいため、少しふらふらしている。
そんな子供達の様子を満足げに見るみょん。
すると公園の広場に一人の男性が入ってくるのが見えた、犬の散歩に来ているのかリードでつながれた犬が先行している。
あれだ、みょんは確信した。普通のゆっくりであれば犬を恐れてそういう人の前には出ないものであるが以前に犬に勝った事もあるみょんに恐怖は無かった。
むしろ弱い犬の後ろから着いていく人間を見下していた、犬に勝ったと言うのも実際は犬が興味を無くしただけだったのだが、そんな事はみょんには分からない。
目で子ゆっくり達に合図を送ると飛び出す。
「ちょっとまつみょん、にんげんさん!」
「ゆうゆううっう!」
「ゆっきゅりしちぇいってね!」
口に釘を咥えて子の言葉が変になっているが、その言葉に人間達がこちらを向く。
(さぁ、おちびちゃんそのつよさをみせつけるみょん!)
そのみょんの内心に反応したのか、剣を咥えた子みょん達が前に進み出た。
「ゆうゆうゆ!」
「ゆぅ、みょんはちゅよいんだよ!」
キリッっと人間達の方へ釘を向け見栄を張る。
(決まったみょん、これでみょん達の飼いゆっくりは決定的だみょん「ワオン!」
みょんの都合のいい妄想は犬の鳴き声で中断させられた、口に何かを咥えて向ってきた子みょんを気にしたのか人間の飼い犬が吼えてきたのだ。
何をする!みょんは怒り心頭になった弱い犬如きがみょん達の邪魔をするんじゃ無い、みょん達はこれから飼いゆっくりになるんだ。
犬に向って飛び掛ろうと足に力を溜める。
しかしその前に子みょんが動いた。
「ゆうゆぐうゆゆゆ!」
「いにゅしゃんはしゃしゃとしにぇ!」
犬の咆哮に竦んでいた子みょん達だが、これまでは母親の武勇伝を聞いていたため犬をそこまでの脅威とは認識しなかった。
何より今の自分達の手(口)には「はくろーけん」と「ろーかんけん」があるのだ、おかあさんの必殺武器を手にした自分達が負けるわけ無い。
剣を前に突き出し犬に飛び掛る。
その目の前に大きなものが飛び出した。
「ゆびぃ!」
「ゆぎ!」
「おいコラ、何しやがる!」
人間の蹴りであった。
「ゆうぅ、おちびちゃんになにをするみょん!」
普段使っているはっくろーけんとろーかんけんは無いが予備にと持ってきた木の枝を咥えたみょんにも蹴りが襲い掛かった。
「ゆびぃ!ゆぐゆぐ……!」
地面に叩き付けられ痛みに呻くみょんに人間が近づく。
リードで犬を押さえながらやって来ると。
「まったく危ねえなぁ、なんだこりゃ釘か?子供でも怪我したらどうすんだよ!」
みょんが掴み上げられる、
「や、やめるみょん、はなせみょん!」
必死に体を振って反抗しようとするものの、髪を掴まれているため体を動かすたびに強い痛みが襲ってくる。
目の前にはあの大きな筒が迫っていた、その上部に作られた四角い投入口の扉に押し当てられる。
「やめろぉ、ここにははいりたくないみょん、みょんはかいゆ……」
ガシャンという扉の金属音を残して消える、こうしてみょんはちぇんと再会する事になった。
「むきゅきゅきゅ、やはりばかばっかりのようね!」
そんなみょんの様子を隠れてみているゆっくりがいた、あのぱちゅりーである。
ぱちゅりーもみょんと同じように人間に飼いゆっくりにして貰おうと様子を覗っていたのだが、ぱちゅりーに関しては最初から全て見ていたのである。
「やはりかいゆっくりのざは、けんじゃのぱちゅりーにこそふさわしいのだわ!」
そう言ってむっきゅきゅきゅと笑っているぱちゅりー、その左右にはそれぞれ子ぱちゅりーが控えておりそんな母親を心配そうな目で見つめていた。
「むきゅう、おかあさんいったいどうしたの?」
「むきゅ、いきなりぱちぇたちをこんなところにつれてくるなんて?」
背が低いため茂みが陰になっており今までの様子を見る事が出来なかった二匹が不審そうである。
「むきゅう、おちびちゃんよろこびなさい、ぱちぇたちはかいゆっくりになるのよ!」
「ゆぅ、ほんとうなのおかあさん?」
「むきゅう、すごいわ!」
野良ゆっくりにとって憧れとも言える飼いゆっくり、それに自分がなれると聞かされた子ぱちゅりー達の顔に喜びが広がる。
「むきゅきゅ、けんじゃのおかあさんにかかれば、にんげんさんにかいゆっくりにしてもらうくらいかんたんよ!」
ぱちゅりーはご機嫌であった。
まったく、せっかくけんじゃの自分が飼いゆっくりにしてもらえる策を授けてあげようと思ったのに、しっかり聞かないからああいうことに成るのだ。
けんじゃのぱちゅりーにしっかりと感謝して、その策の通りに行動していれば今頃皆飼いゆっくりだったのだから。
それにしても愚かなのはあの四人である。
れいむは問題外、おちびちゃんを見せるだけなら今までの物乞いゆっくりが皆やってきた事である、そもそも先日にそんなれいむが人間に永遠にゆっくりさせられたのを忘れたのだろうか、やはりれいむはお馬鹿なゆっくりである。
ありすもダメである、飼いゆっくりの居るにんげんさんは大体愛で派のにんげんさんである。それに目をつけたのは良かったのだが、その後が全然ダメだ。いきなりその飼いゆっくりをれいぽぉしようとしてどうするのだ、それではれいぱーありすでは無いか、やはりありすはいやらしいゆっくりである。
ちぇんはその逆にダメである、にんげんさんに飼ってもらうために、かわいさをあぴーるしようとしたのは良い。しかしその相手が問題だ一度無視されたならその相手は見送って、次の相手にやればよかったものを激昂して襲い掛かるとは、やはりちぇんは単純なゆっくりである。
みょんに至っては何がしたかったのだろう、犬さんを連れている人間の前に出たのも愚かならば、それに襲い掛かったのはもっと愚かである、あれは自殺だろうか。
みょんは確かに強いゆっくりであったが、ゆっくりより遥かに強いにんげんさんだからこそ飼いゆっくりにしてもらおうと考えているのに、その相手に戦いを挑んでどうするのだ、やはりみょんは野蛮なゆっくりである。
やはり飼いゆっくりという至高の座に上れるのはけんじゃであるぱちゅりーだけであろう。
「むきゅ、おちびちゃんしっかりけんじゃのさくをききなさい……」
まりさが飼いゆっくりにしてもらえたのは、おちびちゃんを連れていたからでは無い「怪我をしたおちびちゃんを連れていいたから」なのだ。
にんげんさんはゆっくりをゆっくりさせない恐ろしい生き物である、しかしその中にもゆっくりを可愛がる愛で派のにんげんさんも居るし、にんげんさんを怒らせたゆっくりは優先的に駆除されるのである。
にんげんさんの中にも独特の判断基準があり、それによっていろいろと違う行動する。
大体の場合、おちびちゃんを抱えていたり、怪我をしたゆっくりを連れていると同情してもらえるものなのだ。
あのまりさはその二つを同時に満たしていたのである。だからこそにんげんさんが同情してくれて、飼いゆっくりになれたのだ。
いわゆるにんげんさんの「ぎぜん」すがる方法である、しかし頭のいい方法であるのは確かだ。
もっともまりさのは、偶然だったのだろうが。
「む、むきゅ……!」
「ゆ、お、おかあさん……!」
そう言って一気に語り終えたぱちゅりーに思案顔だった子供達に理解の色が浮かぶ。
さすがはけんじゃの子供達だ。
「さぁ、おちびちゃんわかったわね、やるわよ!」
「「ゆぅ!」」
お帽子の中から細い木の枝を出して咥えると、子ぱちぇりーの顔に恐怖広がる。
「ゆぅ、おかあさんやめてね!」
「い、いやよ、いたいのはいや!」
そう言って逃げようとして見せた背中に木の枝が差し込まれる。
「ゆぎぃ、ゆ、ゆ、ゆ……」
「やめ、ゆびぃ、い、いたいわ、エレエレ……」
「ゆるしてねおちびちゃん……ぱちぇたちがかいゆっくりになるためよ!」
背中の傷から生クリームを流し、泣いたりクリームを吐いている子ゆっくり達を頭に乗せると、茂みから飛び出した。
運良く公園に入ってくる女性が居る、こちらに向ってくる女性の背後からは銀色のバッジを輝かせてぱちゅりーが着いてきていた。
(むきゅきゅきゅ、どうやらめでおねえさんのようね、やはりてんはけんじゃにみかたしているわ!)
一瞬黒く微笑んだぱちゅりーはその表情を隠すと下を向いた。
そして一転泣き顔になって人間の方へ走っていったのである。
「むきゅー、おねがいじますおねえさん、おちびちゃんをたすけてください!」
「きゃ何、え、ぱちゅりー?」
「むきゅ、お姉さん頭の上に怪我をしたおちびちゃんが居るわ!」
銀ぱちぇりーが子ぱちゅりーに気が付いて声を上げる。
「そうなんです、ぱちゅりーのおちびちゃんは、ぎゃくたいおにいさんに、こんなめに!」
目から涙を流して訴える、お姉さんと銀ぱちゅりーの顔に同情の色が浮かんだ。
「むきゅ……お姉さん……」
「分かっているわぱちぇ、えーっとここに入っていたはず……」
そう言ってお姉さんは腰につけたポーチの中を探すと、何か小さなチューブを取り出した。
「えーと、ちょっと御免ね」
ぱちゅりーの頭の上から子供達が持ち上げられる、お姉さんはチューブから何かを取り出すと子ぱちぇりーの体に塗っていた。
「むきゅ大丈夫よ、あれは濃縮オレンジクリームよ、よく効くわ!」
上を見つめているぱちゅりーが心配していると思ったのか、銀ぱちゅりーが教えてくれる。
体の弱いぱちゅりーの事を良く知っているお姉さんは、散歩先で怪我した時の用心に濃縮オレンジクリームを持ち歩いていたのだ。
ぱちゅりーは内心でほくそえんでいた、これは完全に愛で派のにんげんさんだ、これなら飼いゆっくりにしてくれるだろう。
いやダメだ、まだ焦ってはいけない。先ずは治療のお礼を言ってそれから泣きながら野良の苦労話でもしてやろう。
ぱちゅりーのアカデミー賞ものの演技にお姉さんの涙が止まらなくなったところで、おちびちゃんだけでも飼いゆっくりにしてくださいとお願いするのだ。
そこでおちびちゃんが、お母さんと離れたくないと泣く、優しいお姉さんは家族の絆に心を打たれてぱちゅりーも飼いゆっくりに成れる。
完璧な計画である、やはりぱちゅりーは賢者なのだ、まずはお礼を言わなくては。
そんな事を考えているぱちゅりーを尻目に、お姉さんの治療は続いており、怪我を負ってからぐったりとしていた子ぱちぇりー達の目にも生気が戻り始めた。
「ゆ、ゆぅ、むきゅ……」
「う……いたくなくなったわ?」
「大丈夫、おちびちゃん達?怪我はお姉さんが治してあげたからね!」
「むきゅ、良かったわおちびちゃんが無事で!」
「……ゆ!そ、そうねおちびちゃんよかったわ!」
「もう怖くないわよ、おちびちゃんに怪我をさせたゲスは居ないからね」
子ぱちぇ達をゆっくりと地面に下ろし、安心させる様に微笑むお姉さん、銀ぱちぇりーもゆっくりした笑顔だ。
「……ダヨ」
子ぱちぇりーが何かを呟く、
「大丈夫よ、お姉さんは怖くないわ、近くにお母さんもちゃんと居るわ!」
自分を怖がったのかと、母ぱちゅりーの存在を教えてあげるお姉さん、しかしその笑顔が子ぱちぇりーの言葉で凍りついた。
「お、おかあさんよ……ぱちぇをこんなふうにしたのわ!」
「おかあさんが、かいゆっくりになるためにぱちぇたちを……」
「ゆ、ゆがぁ、きさまぁなにをいってるんだぁ、なんてことを!」
いきなりの暴露に動揺し、叫んでしまうぱちぇりー。
「なにをいってるのかわかってるのか、おまえのせいでぱちぇの……けんじゃのけいかくが!」
怒りに任せて子供達に飛び掛ろうとする、その目の前に銀ぱちぇりーが立ちふさがった。
「むきゅ、自分の子供になんて事を、その行動からみるとおちびちゃんの嘘って訳じゃないわね!」
「ゆぎぃ、じゃまをするなぁ……ゆ!」
その時ぱちぇりーは気が付いた、自分に向けられるお姉さんの視線が絶対零度の冷たさを持っている事を。
「むきゅ、おねえさん、えーとこれはね……」
「まったく何て事、こんなゲスがこの公園に居たなんて!」
「むきゅ、ゆ、やめなさい、けんじゃのぱちぇをはなしなさい!」
掴み上げられるぱちぇりー、お姉さんが向う先はもう恒例のあの筒だ。
「やめなさい、ぱちぇはけんじゃなのよ、ぱちぇをそんなところにいれたら、せかいのそんしつよ!」
騒ぎまくるぱちぇりーを気にする事無く、筒の蓋を押すお姉さん。
ぱちぇりーの眼前に吸い込まれるような暗闇が広がる、その奥からは何かゆっくりの声が響いており、とても恐ろしい。
「やめなさい、やめて、いやぱちぇはけん!」
「こんなゲスばっかりの公園なんて問題ね、明日加工所に一斉駆除してもらいましょう!」
無くなってしまう光を惜しむように振り返るぱちぇりー、しかし無慈悲にもその体は暗闇に放り込まれる。
ガシャン、金属の蓋が音を立てて閉まり、差し込んでいる四角い光が遠くなっていく、落下しているのだ。
「むきゅー!」
ぱちぇりーの背中に衝撃が走る、背後からいくつものうめき声があがった。
「むきゅ……いったいなんでけんじゃのぱちぇがこんな事に、ここは?」
周囲を見回すが狭い筒の中に広がるのは暗闇ばかりである。
その時ぱちゅりーの下から声がした、いや、ぱちぇりーの立っている地面が喋り始めたのだ。
「ゆぅ、ぱちぇりーみょん!ぱちぇりーぜんぶおまえのせいみょん!」
「わかるよーぱちぇりーのあたまがわるかったんんだよー」
「ぱちぇりーですって、このいなかもの、おまえのせいでありすのおちびちゃんが!」
「な、なによむきゅうぅぅぅ!」
下を向いたぱちぇりーは悲鳴を上げた、暗闇に慣れてきた目に映ったのは大量のゆっくりであった。
みょんが居た、ちぇんが居た、ありすが居た、虚ろな目をしたれいむが居た。
皆水に浸かってしまい体がグズグズになっている、しかし体は動かせないもののその目でぱちぇりーを睨んでいる。
「なにがけんじゃだ、かいゆっくりなんてなれなかったみょん!」
「ちぇんのおちびちゃんはみずさんにしずんだんだよー!」
「いなかものぉお、せきにんをとれぇ!」
自分達の事を棚上げしてぱちぇりーを罵る仲間たち。
「ゆぅ、ち、ちがうわぱちぇはただしかったのよ、わるいのはにんげんで!」
言い訳するものの、直ぐに足元から怒号が響いた、大きな声が筒の中で反響してぱちぇりーに襲い掛かる。
その時気が付く、この場所に漂うゆっくりしていない匂いに、これは……ゆっくりの死臭であった。
一番下にいるれいむは完全に水に浸かり、ゆっくり出来ない表情で上を見つめている。
その下にあるドロドロした物、それがいったい何なのか、分からない、いや分かりたくないがあふれ出す死臭がそれをぱちぇりーに教えた、それは全てゆっくりの……
自分の足元から責められるぱちぇりー、
「むきゅ、ちがうわちがうわ、ぱちぇはただしいの、けんじゃなのよエレエレ」
ストレスが限界になり、クリームを吐こうとするのを待たず、この場所が仕事を開始した。
一定の高さまで入ったゆっくりを感知したセンサーの報告で命令が下り、天井に当たる場所から水が噴出す。
ゆっくり達は知る由は無いが、最下部に設置してあるファンが回転をはじめ中のものを掻き混ぜ始めた。
クリームを吐いているぱちぇりーも、彼女を責めるゆっくり達も、皆等しくあのドロドロになるのである。
もっとも本ゆん達がそれまで意識を保つことは無いであろう、天井からの水流が皆の上までの水位を作るのだから。
(むふふふ、上手くいったのぜ、やはりまりさ様はてんっさいなのぜ!)
人間に透明なキャリーケースに入れられて運ばれているまりさは内心でほくそえんでいた。
その横には傷を負った子まりさが二匹痛みに呻いている、それをチラリと見て再びまりさは考えに戻った。
(これでまりさ様も飼いゆっくりなのぜ、おちびを犠牲にしたかいがあったのぜ!)
そう、このまりさは自分の子ゆっくり達を、人間の飼いゆっくりにして貰うために傷つけたのであった。
その点ではあのぱちゅりーと同じであったが違う点が一つあった、夜の間、子ゆっくりが寝静まっている時を見計らって木の枝で突き刺したのである。
そのため子ゆっくり達は、今でもまりさは自分達を治すためにプライドを捨てて人間に頼み込んでくれた父だと思っていた。
「ゆぎぃ、おちょうしゃんいちゃいよ!」
「ゆぅ、まじゃにゃの?」
そう言ってまりさに縋り付こうとしてくる子まりさ達、しかし怪我とキャリーケースの揺れがそれを阻む。
「だいじょうぶなのぜ、おちびちゃんもうすぐにんげんさんのおうちにつくのぜ!」
そう言って子供達を励ましながら、まりさは冷たい視線を送っていた。
飼いゆっくりに成れればこんな汚い子ゆっくりは用済みである、しばらくはにんげんの同情を引くために優しくしてやる必要があるだろうが。
ちゃんと人間の飼いゆっくりになってバッジを着けたら事故で永遠にゆっくりしてもうらおう、飼いゆっくりならば可愛いれいむでも美形のありすでも選り取りみどりである、なんなら野良の居る公園に行ってハーレムを築くのも良い。
そうすればおちびちゃんなんて幾らでも作れるのだ。
飼いゆっくりのバッジさえあれば大抵の事は叶うのだから。
自分の輝かしい未来に酔う様に笑みを浮かべたまりさは、思いなおして気を引き締める。
そうだ、馬鹿なにんげんを怪我をしたおちびちゃんで同情させて騙したのは良いが、まだ飼いゆっくりには成っていないのである、それまでは我慢だ。
まぁ、簡単な事だろう、あれ位で同情するような安い人間である、まりさ様のてんっさい的頭脳で立てられた計画と、アカデミー賞物の演技を駆使すれば直ぐに飼いゆっくりにしてくれるだろう。
その時人間が動きを止め、まりさ達の入っているキャリーケースも動きを止めた。
目の前には大きな人間のおうちが建っている、ここが自分のゆっくりプレイスか……その時違和感を感じた。
「ゆぃ、ここがにんげんさんのおうちなのかぜ!」
しかし、このおうちは何かよく分からないがゆっくり出来ないオーラを放っている。
横に居る人間に声をかけると、
「そうだよまりさ、いやぁついてたな、足りなくなってた虐待用のまりさが簡単に手に入ったんだから!」
「ゆぅ!?」
今何と言った、このにんげんさんは何と言ったのだ、あれ、おかしい、まりさは飼いゆっくりに成りに来たのに。
「子ゆっくりの方は直ぐに死んじゃいそうだけど、まぁ親が居ればいくらでも増やせるか!」
嬉しそうに笑顔で語る人間さん、その笑顔はとてもゆっくり出来ない。
「まったく、まりさを補充しようとしたら、ありすがすっきりー殺しちゃうんだもんなぁ」
その時まりさのてんっさい的頭脳がある回答を導き出した。
「ゆぅ、お、おにいさん、おにいさんは"ぎゃくたいおにいさん"なのぜ……?」
嘘であって欲しい、間違いであって欲しいそんな願いを込めた問いに、お兄さんはニッコリと微笑んだ。
「ヒャッハー!!!」
後書き
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
前作ではお目汚しをしてしまい申し訳ありません、勉強させていただきます。
また本作内で別のの作者さんが作られたゆっくりゴミのゴミ箱を使わせて頂きました、この場でお詫びとお礼をさせていただきます。
過去作品
anko2700 そして新記録
anko2703 ゆっくり公民 ~奴隷制~
anko2720 ゆっくり公民 ~カースト制~(前編)
anko2721 ゆっくり公民 ~カースト制~(中編)
anko2722 ゆっくり公民 ~カースト制~(後編)
anko2764 ゆっくり公民 ~農奴制~(春)
anko2765 ゆっくり公民 ~農奴制~(夏)
anko2766 ゆっくり公民 ~農奴制~(秋)
anko2767 ゆっくり公民 ~農奴制~(冬)
anko2802 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(前編)
anko2803 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(中編)
anko2804 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(後編)
anko2814 黒い穴
anko2826 とてもたくさん(300)
制裁 野良ゆ 都会 8作目 ネタが被ったらごめんささい
「おねがいぃまずぅ、おちびちゃんがいたいいたいなんですぅ、たすけてください!」
肌寒い町の公園、その一画で散歩に来たと思しき男性の足に縋り付くゆっくり。
汚れきった体を見れば直ぐにそれが野良ゆっくりと分かる。
その背後には二匹の子まりさが横たわっており、苦しそうな息を吐いている。
親であるまりさは通りかかった人間に必死に何かを頼み込んでいる。
「おねがいしますぅ、せめておちびちゃんだけでもかいゆっくりにしてあげてください!」
「けがさんをなおせるあまあまだけでもいいですから、おねがいします!」
町に居ればいくらでも目にする事の出来る、野良ゆっくりの懇願である。
捨てられた飼いゆっくりがもとの場所に戻ろうとしたり、飼いゆっくりに憧れた純野良ゆっくりだったり、食料の足りなくなったものだったりとありふれた理由で野良ゆっくりは人間に縋り付く。
このまりさの懇願の理由も町ではありふれていた。ゆっくりは生きた饅頭である、ある意味ふざけたその生態は多少の傷も舐めて食事をすれば治るほどであるが、今まりさの後ろに居る子ゆっくり達は怪我はそれでは治らないものだ。
一定以上の怪我や、重要な器官の喪失などを癒すにはゆっくりにとってご馳走であるあまあまや、万能薬であるオレンジジュースが必要不可欠である。どちらも町の野良ゆっくりのとって手に入れるのは厳しいものである。
それだけの怪我を負ってしまった子や仲間を持つゆっくりが取る最後の手段が人間への物乞いである。
ゆっくり達に取って宝物であるそれらを簡単に手に入れる人間、そんな人間に頼み込むのだ。
人間によって厳重に保護され、傷一つ無い飼いゆっくりの存在も人間ならばという可能性を教えていた。
しかしこれは非常に危険な方法である、運良くゆっくりしている人間に当たればいいが、それ以外では運が良くても無視、運が悪ければ攻撃されたり、最悪としては虐待を好む人間に当たってしまう。
いや、その可能性はほとんどが不幸に傾いていた。人間に物乞いするゆっくりは多い、前述の理由以外にも自分の力を勘違いしたゆっくりが尊大な態度で要求したり、子ゆっくりの居る母ゆっくりがそれを理由に強請ったりそんな事例はありふれている。
そんなゆっくりがどうなったか、それはこの公園に住んでいる野良達なら皆知っている事である。
公園の広場の片隅で威圧感を放つ巨大な筒――ゆっくり専用ゴミ箱――がその末路を何よりも具体的に教えていた。
そんな中で男性に懇願するまりさ、物陰に隠れそれを見つめる野良ゆっくり達はその結果を具体的に予想していた。
「あぁ、いいよ助けてやるよ!」
その予想は外れる事となった、その男性は急に笑顔になるとまりさに向ってしゃがむ。
「ゆあぁ、おにいさんありがとうございます、ありがとうございます!」
頭を地面に打ち付けるようにするまりさを、取り出した透明な箱に入れる男性、子ゆっくり達を続けて入れた。
箱の蓋を閉めるとそれを片手に下げ公園から去っていく。
驚愕に言葉も無かった野良ゆっくり達が、物陰から出れたのはそれからだいぶ経ってからだった。
「ゆうぅ、おどろいたよ!まりさがかいゆっくりになれたよ!」
「そうねよかったわ、きっとおちびちゃんたちもたすかるわね!」
「わからないよー、ぜったいえいえんにゆっくりさせられるとおもったよー!」
「そうだみょん、かいゆっくりになれるなんてはじめてみたみょん!」
「むきゅ、そうねこんなことははじめてよ!」
野良ゆっくり達の今までのゆん生でも屈指の幸運である、もっとも他ゆんの物であるが。
極々低い確率で物乞いが成功する事はある、公園であるため遊びに来た子供が餌をくれたり、極稀に居る愛でお兄さんが餌をくれたりする事があるのだ。
しかしこれまでも飼いゆっくりにしてもらった事例は無い、子供は親に反対されてしまうし、ゆっくり大好きの愛でお兄さんであっても、自分の飼いゆっくりは大体ペットショップから買い、野良を飼いにすることはほとんど無いのである。
そんな中で元々自分達の仲間の野良であったまりさが飼いゆっくりと言う黄金の椅子を手にしたのだ、野良達としては妬ましいやら悔しいやらである。
「ゆぅ、いいなぁまりさとおちびちゃんは、きっといまごろあまあまをむーしゃむしゃしているよ!」
「きっとからださんやおかざりも、きれいにしてもらってるわね……!」
「わかるよーうらやましいんだよー!」
「べつにみょんたちだってまりさにまけてないみょん、みょんをかいゆっくりにすればよかったみょん!」
たちまち様々な不満が燃え上がる事になる、そんな中一匹だけうつむいて何かを考え込んでいたぱちゅりーがやおら声を上げた。
「……むきゅ!わ、わかったわ、ぱちゅにはわかったわ!」
「ゆぅ、ぱちゅりー、きゅうになんなの?」
「いきなりおおごえをだすなんて、とかいはじゃないわ!」
「わ、わからにゃいよー?」
「いきなりどうしたみょん?」
「なにをいっているのよ、わかったのよ、なんでまりさがかいゆっくりになれたか!」
その言葉に驚愕する野良ゆっくり達、
「ゆぅ、それなられいむもかいゆっくりになれるの!」
「すごいわ、ありすはとかいはなきんばっじさんになりたいわ!」
「わかるよー、かいゆっくりはゆっくりしているんだよー!」
「は、はやくはなすみょん!」
「むっきゃっきゃ、けんじゃのぱちぇがかいせっつしてあげるわ!」
「みんなよくききなさい、あのときまりさはひとりじゃなかったわ、おちびちゃんがいたのよ!」
「ゆあぁ、おちびちゃんだねおちびちゃんがゆっくりできるから、ゆぅそれなられいむにもできるよ!」
「わかったわ、おちびちゃんをつれていけばいいのね!」
「わかるよー、みんなでいくんだよー!」
「それならはなしがはやいみょん!」
「むきゅ、ちょちょっとまちなさい!」
それだけで早合点して、既に自分達が飼いゆっくりであるかのように盛り上がる野良ゆっくり達、慌てるぱちゅりーを置き去りにして自分のおうちへ戻っていく、この野良ゆっくり達は皆町での生活の中で番を失っていたのだが子ゆっくりが居たのである。
そんな彼女達の頭の中からは、昨日子連れで物乞いをしたでいぶがどうなったかは全て抜け落ちていた。
本ゆんはきっと今でもあの筒の中に居るはずなのだが……
「ゆっくりただいま!」
そう言って木の陰に隠されたダンボールのおうちに入るれいむ、直ぐに子ゆっくりが迎えに出てくる。
「おきゃーしゃんおかえりなりなしゃい、おみやげは?」
「れいみゅおにゃかすいちゃよ、はやきゅごはんしゃんにしようね!」
そういえばとれいむは思い出す、今日はあのまりさの事件で狩りが全然出来ずに戻ってきてしまった、れいむのお口の中にもおうちの中にも食べ物は一切無い。
その事を言うと、子れいむ達が騒ぎ始める。
「どうしちぇ、れいみゅおにゃかへっちゃよ、むーしゃむしゃしちゃいよ!」
「ゆあぁ、いくじほうきじゃよ、はやきゅれいみゅにごはんしゃんもっちぇこい!」
それを何とか宥めようとするれいむ。
「ゆ、ゆぅおちびちゃんおちついてね、いいほうほうがあるんだよ、れいむたちはかいゆっくりになるんだよ!」
「ゆ、きゃいゆっくち?」
「ゆぅ、そうしたらむーしゃむしゃできりゅの?」
「そうだよ、おちびちゃん、かいゆっくりになったら、あまあまをいくらでもむーしゃむしゃできるんだよ!」
「ゆぅ、あみゃあみゃ!」
「あみゃあみゃほちいよ!」
喜んで騒ぎ始める子供達を伴い、れいむは再び公園の広場に向った、そして自分を飼いゆっくりにしてくれる人間を物色していたのだ。
その時公園の奥から一人の男が走ってくる。ランニングでもしているのだろうか、ジャージ姿で駆け足である。
先ほどのまりさの一件が頭をよぎるれいむ、そういえばあの時も男の人だった。
子ゆっくり達に合図をすると、人間の目の前に飛び出した。
「ゆぅ、とまってねにんげんさん!」
「「とまっちぇね!」」
「うぉ、危ねぇな!ゆっくりかよ!」
その男は目の前に飛び出したゆっくりに驚くものの、危なげなく停止しれいむ達を見下ろす。
ここからが正念場だよ、れいむはそう思ったしかしれいむの横にはゆっくりしたおちびちゃんが居るのである。
これだけゆっくりしたおちびちゃんを見れば、にんげんさんもメロメロであろう。
直ぐにゆっくりした自分達を飼いゆっくりにするだけでは無く、自分から奴隷になりたいと思うかも知れない。
れいむの未来は薔薇色であった。
「ゆぅ、にんげんさん!れいむのかわいいおちびちゃんだよ、ゆっくりしたおちびちゃんをみたら、れいむたちをかいゆっくりにしてね!」
「「かいゆっくりにするんだじぇ!」」
決まった、れいむの笑顔もおちびちゃんの笑顔も完璧である、これで自分達は飼いゆっくりだ!
上がるれいむのテンションを置き去りにして、男は無言でれいむを見下ろしていた。
「ゆぅ、なにしてるの?はやくかいゆっくりにしてね、いますぐでいいよ!」
いったいにんげんは何をしているのだ、これだけのゆっくりを見たのに。
そう憤慨するれいむに男の手が迫る。
やはりにんげんはれいむを飼いゆっくりにするのだ、これでれいむもおちびちゃんも安泰である。
「はぁ、またでいぶかよ昨日に続いて二度目だぞ……この公園野良が多いのか?」
しかし人間の口から出た言葉はれいむの望んでいたものでは無かった。
「ゆ?なにするのぉ、れいむはでいぶじゃないよぉ、はやくおろしてかいゆっくりにしてね!」
「おきゃあしゃ!」
「なにをするんだじぇじじい、はやくあまあまよしぇ!」
掴み上げられるれいむ、下から子供達の声が響く。
「まったく加工所は仕事してんのか、いや市役所か?」
その言葉と共に空中を移動させられる、子ゆっくりの声が遠くなる。
「ゆがぁはなせ、れいむをはなせ、れいむはかいゆっくりになるんだ!」
背中に硬い感触が感じられる、それに振り向こうと体を捻ると何か暗いところに押し込められる、一瞬の浮遊感そして落下。
声にならない悲鳴を上げるが暗闇の中に吸い込まれて行く、高いところからの落下に身構える、しかし覚悟した衝撃はやって来ず冷たい感触、水音が響く。
「ゆぅ、つめたいよなにこれぇ!?」
体に感じる水とその不快感に呻くれいむ、自分の落ちてきた上を向くが僅かに光が漏れて来ている以外は暗闇である。
「ゆがぁ、はやくだせ、れいむをはやくここからだせ!」
上空の四角い光に向って叫ぶ、しかし何かが答える事は無い。
その時その四角がゆっくりと開き、中に光が差し込んで来るそこから逃げ出そうとのーびのーびををする、しかし遥かに高いその光に届く事は無い。
そこから中に何かが投げ込まれる、れいむの左右で水音がした。
自分にかかった水滴の不快感にそちらを睨む。
「ゆぅ、なにするの、ゆ!こ、これはおちびちゃん!」
それはれいむの子ゆっくり達であった、二匹と何かに潰されて餡子の塊になっている。
しかしそこについたお飾りが何よりも強くその物体がれいむの子供達であると教えていた。
「ゆうぅ、おじびじゃん、ぺーろぺろだよ、だいじょうぶだよすぐになおるからねぇ!」
子供達に近づこうと足に力を入れるが水が染み込み出したのか思うように動かす事が出来ない。
「ゆぅ、あんよさんうごいてね、れいむはおちびちゃんのとこゆびぃ!」
自分の足を確認しようと下を向くれいむは、その時自分の足場になっていたものに気が付いてしまう。
それはゆっくりであった、れいむと同じれいむ、そのれいむが苦悶の表情でれいむの足場になっていたのだ。
既にほとんど水に浸かり永遠にゆっくりしてしまっているのだろうが、その表情は生きているからこそ感じる苦しみが張り付いていた。
「ゆぐぐぐ、ごれはれいぶ……ゆびぃだしてね、ここからだしてね、このなかはゆっくりできないー!」
暗闇の中、れいむに答えるものは何も無かった。
「まったくれいむはいなかものねぇ!」
そんなれいむの様子を隠れてみているゆっくりがいた、あのありすである。
ありすもれいむと同じように人間に飼いゆっくりにして貰おうと様子を覗っていたのだ、そしてれいむ達の失敗を見たのである。
「ふふ、れいむはなんにもわかってないわね!」
しかしありすには怯えは無かった。
ありすはしっかりとまりさが飼いゆっくりになれた理由を理解していたのだ。
にんげんさんに飼いゆっくりにして貰うために必要なのは「とかいは」である。
あのまりさはありすには及ばないものの、この公園の中ではとかいはなゆっくりであった。
やはりにんげんの飼いゆっくりになれるのは、とかいはなゆっくりとそのおちびちゃんなのである。
「ゆ、おちびちゃんわかっているわね、にんげんさんにありすたちがいかにとかいはかしめすのよ!」
「わかってるわおかあさん、ありすはとかいはよ!」
「ゆふふ、おちびちゃんはとかいはねぇ!」
完璧である、これだけとかいはなのだもう飼いゆっくりの座は貰ったも当然である。
自分の計画に自信を持って公園を見回し、自分に相応しい人間を探すありす。
その視界にこちらに近づいてくる、ゆっくりを連れが女性が見えた。
あれだ、決心したありすは隣の子供に目で合図して飛び出した。
「にんげんさん、ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
決まった、都会派なご挨拶である。
しかし女性からも隣のゆっくりからも返事は無い。
ゆっくりの間では挨拶をされたら返すのが常識である、これが出来ないゆっくりはゆっくり出来ないゆっくりと蔑まれるのだ。
しかし女性の連れているまりさからの返事は無かった、その目には冷たい光がありお帽子の金バッジの輝きとあいまってありすに突き刺さった。
「ゆう、ゆっくりできないまりさね、まぁいいわ!」
そのまりさの態度と、そんなゆっくり出来ないまりさのお帽子に金バッジが着いている事に憤慨するものの、元々の計画を思い出し気を取りなおす。
まぁいい、もともと計画では飼いゆっくりにしてくれるように頼むのはにんげんさんだったのだ、あのまりさもありすがあまりにも都会派だったのでテレてしまったのだ、あのまりさには飼いゆっくりになってからしっかり常識を教えればいい。
「さぁ、おちびちゃんいくわよ!」
「ゆぅ、おかあさんわかったよ!」
「にんげんさん、とかいはなありすをかいゆっくりにしてね!」
「そうよ、とかいはなおちびちゃんをありすをかいゆっくりにしてね!」
輝かしいまでの笑顔、ありすもおちびちゃんも都会派である、これを飼いゆっくりにしない訳には行かない。
(うふふ、これできょうからありすたちもとかいはなきんばっじさんね!)
内心笑いが止まらない、しかしそんなありす達に帰ってきたのは金バッジまりさの冷たい視線と、
「うわぁ野良ゆっくりね、まりさ行きましょう野良はばっちいわよ!」
人間のそんな言葉だった。
「……なにをいっでるのぉ、ありすはとかいはでしょう!」
「はりゃくしりょ、このいなかもの!」
その言葉に憤慨するありす達。
「はぁ都会派って……まぁ都会的に汚いけどさぁ……」
そう言って金まりさを伴い踵を返そうとする女性。
まずい、このままではにんげんさんが行ってしまう、なんとしても飼いゆっくりにしてもらわなければ。
そうだおちびちゃんだ、とかいはなおちびちゃんが足りなかったのだ。
「むはぁ、わかったわぁおちびちゃんがもっとほしいのねぇ、さぁまりさぁすっきりーするわよぉ!」
そう言って金まりさににじり寄る、
「ゆあぁ、やめるのぜこっちにくるな!」
金まりさが後ろを向いて逃げ出す。
「おしりをむけてくれるなんて、せっきょくてきねぇ!」
追いかけるありすの背中に何かが押し付けられる。
「ゆぐっ!」
「まったくレイパーが居るなんて、まりさ大丈夫?」
「ゆぅお姉さん大丈夫だよ!」
「なにするのよぉ、はなし……!」
冷静になったありすは気が付いた自分は誰に何を頼もうとしていたんだっけ?
「ゆわぁ、おかあさーん!」
にんげんさんにおちびちゃんが掴み上げられる、
「まったく、この公園も最近野良が増えているのね……」
ありすとそのおちびちゃんはれいむ達と再会する事になった。
「わかるよー、ばかなんだねー!」
そんなありすの様子を隠れてみているゆっくりがいた、あのちぇんである。
ちぇんもありすと同じように人間に飼いゆっくりにして貰おうと様子を覗っていたのだ、そしてありす達の失敗を見たのである。
「だめなんだねー、ありすはなんにもわかってないよー!」
ちぇんには自信があった、ちぇんは人間に飼いゆっくりにしてもらうために必要な物が分かっていたのである。
それは「かわいさ」であった、人間は可愛い物が好きである。よく公園に来る人間の子供達の言動からそれを熟知していたちゃんにとって自分が飼いゆっくりになれるのは確定事項であった。
(とうぜんだよー、だっておちびちゃんはこんなにかわいいんだよー)
にんまりと笑うちぇんの後ろでは二匹の子ゆっくりがしっぽを振っている。
「おちびちゃん、わかってるねーにんげんさんにかわいさをあぴーるするんだよー!」
「わかるよー!」
「だいじょうぶだよーちぇんはかわいいよー!」
「さすがはちぇんのおちびちゃんだよー!」
すると一人の老人がゆっくり公園の中に入ってくる。
あれだ、あのじじいをちぇんの魅力でメロメロにするのだ、後は奴隷にしてしまえばいい。
子ゆっくり達に目で合図をすると飛び出す。
「にんげんさん、ゆっくりしていってね!」
「「ゆっくりしていってね!」」
ちぇんは自分より前に出たおちびちゃんを見て満足した、すばらしいあの尖ったお耳、ぴょこんと伸びた尻尾どちらもちぇんから見れば涙が出るほど可愛いものである。
これでちぇんのおちびちゃんは飼いゆっくりになったも同然だ、そうすればお母さんであるちぇんも飼いゆっくりになれるのだ。
キリッと人間さんに目を向ける三匹、しかしそんなちぇん達に何か言葉が返ってくることは無かった。
その老人はちぇん達に目を向ける事無くゆっくりと公園の広場を進んでいく。
「ゆぅ、にんげんさん……?なにしてるのーちぇんのごあいさつだよー!」
「まってねーにんげんさん!」
「ゆっくりしていってねー!」
人間がちぇん達に目を向ける事は無かった。
「お、おちびちゃんたち、ちぇんたちのかわいさをあぴーるするんだよ!」
「にゃーん、ゆっくりしていってにぇ!」
「ごろにゃーん!」
くねくねころころと動く子ちぇん達、ちぇんが追いすがるがその老人が歩みを止めることは無い。
「ゆがぁ、ちぇんたちをむしするなー!」
尻尾を逆立てたちぇんが怒鳴る。
なんてゆっくりしていないじじいだ、これだけ可愛いちぇんとそのおちびちゃんを無視するなんて。
この可愛さにメロメロになって直ぐに奴隷にしてくださいと言うはずではなかったのか。
「もうゆるせないんだよー、おちびちゃんあのじじいをみんなでぼっこぼこにするよー!」
「「わかったよー!」」
尻尾を逆立てて老人の足に飛び掛るちぇん達、老人の靴やズボンに噛み付く。
「いて、こりゃなにをするんじゃ!」
「ゆびぃ!」
「いじゃ!」
「むぐぅ!」
しかし杖の一振りで吹き払われる。
「まったく何じゃこちつらは……やれやれ、ん、ゆっくりはゆっくりゴミにとな……」
「ゆがぁ、はなせちぇんをはなせよー!」
掴み上げられるちぇん達、結局ありす達と再会する事になった。
「まったく、みていられないみょん!」
そんなちぇんの様子を隠れてみているゆっくりがいた、あのみょんである。
みょんもちぇんと同じように人間に飼いゆっくりにして貰おうと様子を覗っていたのだ、そしてちぇん達の失敗を見たのである。
「まったくちぇんはなにもわかってないみょん!」
みょんには全て分かっていた、何故まりさが飼いゆっくりに成る事が出来たのか。
それは「つよさ」である、あのまりさはこの公園ではみょんと渡り合える唯一のゆっくりであった。
そんな強いまりさだからこそ人間は飼いゆっくりにしてくれたのだ、そうやって考えるとさっきのちぇえ達がいかに愚かかは分かるだろう。
いきなりにんげんに媚を売り始めたのも見苦しいが、その後人間に襲い掛かった手際にしても笑わせてくれる。
弱いちぇんがそんな事をやっても永遠にゆっくりさせられるだけである、やはり自分達の強さをにんげんに見せ付けなくては。
みょんは横に置いてある「はくろーけん」と「ろーかんけん」に目をやる。
これをおちびちゃんに渡して、おちびちゃんの強さをにんげんに見せ付けるのだ。
おちびちゃんの強さににんげんは感動し直ぐに飼いゆっくりにしてくれるだろう、そんな強いおちびちゃんの母である自分も飼いゆっくりになれるのである。
みょんは自分の覇道に酔いしれた。
「おちびちゃん、この"はくろーけん"と"ろーかんけん"をつかうみょん!」
「おかあさんはまえにいたところで、このふたふりでいぬさんにかったこともあるみょん!」
「これをつかえばおちびちゃんもむてきだみょん!」
「わかったみょんおかあさん、この"ろーかんけん"をおかりするみょん!」
「みょんは"はくろーけん"をかりるみょん!」
そう言ってそれぞれ口に咥えるみょん達、これらの正体は以前にみょんが工事現場に落ちていたのを拾ってきた釘である。
ろーかんけんは少し大きめの真鍮釘、はくろーけんは小さな針釘である。
ろーかんけんは子ゆっくりが咥えるには大きいため、少しふらふらしている。
そんな子供達の様子を満足げに見るみょん。
すると公園の広場に一人の男性が入ってくるのが見えた、犬の散歩に来ているのかリードでつながれた犬が先行している。
あれだ、みょんは確信した。普通のゆっくりであれば犬を恐れてそういう人の前には出ないものであるが以前に犬に勝った事もあるみょんに恐怖は無かった。
むしろ弱い犬の後ろから着いていく人間を見下していた、犬に勝ったと言うのも実際は犬が興味を無くしただけだったのだが、そんな事はみょんには分からない。
目で子ゆっくり達に合図を送ると飛び出す。
「ちょっとまつみょん、にんげんさん!」
「ゆうゆううっう!」
「ゆっきゅりしちぇいってね!」
口に釘を咥えて子の言葉が変になっているが、その言葉に人間達がこちらを向く。
(さぁ、おちびちゃんそのつよさをみせつけるみょん!)
そのみょんの内心に反応したのか、剣を咥えた子みょん達が前に進み出た。
「ゆうゆうゆ!」
「ゆぅ、みょんはちゅよいんだよ!」
キリッっと人間達の方へ釘を向け見栄を張る。
(決まったみょん、これでみょん達の飼いゆっくりは決定的だみょん「ワオン!」
みょんの都合のいい妄想は犬の鳴き声で中断させられた、口に何かを咥えて向ってきた子みょんを気にしたのか人間の飼い犬が吼えてきたのだ。
何をする!みょんは怒り心頭になった弱い犬如きがみょん達の邪魔をするんじゃ無い、みょん達はこれから飼いゆっくりになるんだ。
犬に向って飛び掛ろうと足に力を溜める。
しかしその前に子みょんが動いた。
「ゆうゆぐうゆゆゆ!」
「いにゅしゃんはしゃしゃとしにぇ!」
犬の咆哮に竦んでいた子みょん達だが、これまでは母親の武勇伝を聞いていたため犬をそこまでの脅威とは認識しなかった。
何より今の自分達の手(口)には「はくろーけん」と「ろーかんけん」があるのだ、おかあさんの必殺武器を手にした自分達が負けるわけ無い。
剣を前に突き出し犬に飛び掛る。
その目の前に大きなものが飛び出した。
「ゆびぃ!」
「ゆぎ!」
「おいコラ、何しやがる!」
人間の蹴りであった。
「ゆうぅ、おちびちゃんになにをするみょん!」
普段使っているはっくろーけんとろーかんけんは無いが予備にと持ってきた木の枝を咥えたみょんにも蹴りが襲い掛かった。
「ゆびぃ!ゆぐゆぐ……!」
地面に叩き付けられ痛みに呻くみょんに人間が近づく。
リードで犬を押さえながらやって来ると。
「まったく危ねえなぁ、なんだこりゃ釘か?子供でも怪我したらどうすんだよ!」
みょんが掴み上げられる、
「や、やめるみょん、はなせみょん!」
必死に体を振って反抗しようとするものの、髪を掴まれているため体を動かすたびに強い痛みが襲ってくる。
目の前にはあの大きな筒が迫っていた、その上部に作られた四角い投入口の扉に押し当てられる。
「やめろぉ、ここにははいりたくないみょん、みょんはかいゆ……」
ガシャンという扉の金属音を残して消える、こうしてみょんはちぇんと再会する事になった。
「むきゅきゅきゅ、やはりばかばっかりのようね!」
そんなみょんの様子を隠れてみているゆっくりがいた、あのぱちゅりーである。
ぱちゅりーもみょんと同じように人間に飼いゆっくりにして貰おうと様子を覗っていたのだが、ぱちゅりーに関しては最初から全て見ていたのである。
「やはりかいゆっくりのざは、けんじゃのぱちゅりーにこそふさわしいのだわ!」
そう言ってむっきゅきゅきゅと笑っているぱちゅりー、その左右にはそれぞれ子ぱちゅりーが控えておりそんな母親を心配そうな目で見つめていた。
「むきゅう、おかあさんいったいどうしたの?」
「むきゅ、いきなりぱちぇたちをこんなところにつれてくるなんて?」
背が低いため茂みが陰になっており今までの様子を見る事が出来なかった二匹が不審そうである。
「むきゅう、おちびちゃんよろこびなさい、ぱちぇたちはかいゆっくりになるのよ!」
「ゆぅ、ほんとうなのおかあさん?」
「むきゅう、すごいわ!」
野良ゆっくりにとって憧れとも言える飼いゆっくり、それに自分がなれると聞かされた子ぱちゅりー達の顔に喜びが広がる。
「むきゅきゅ、けんじゃのおかあさんにかかれば、にんげんさんにかいゆっくりにしてもらうくらいかんたんよ!」
ぱちゅりーはご機嫌であった。
まったく、せっかくけんじゃの自分が飼いゆっくりにしてもらえる策を授けてあげようと思ったのに、しっかり聞かないからああいうことに成るのだ。
けんじゃのぱちゅりーにしっかりと感謝して、その策の通りに行動していれば今頃皆飼いゆっくりだったのだから。
それにしても愚かなのはあの四人である。
れいむは問題外、おちびちゃんを見せるだけなら今までの物乞いゆっくりが皆やってきた事である、そもそも先日にそんなれいむが人間に永遠にゆっくりさせられたのを忘れたのだろうか、やはりれいむはお馬鹿なゆっくりである。
ありすもダメである、飼いゆっくりの居るにんげんさんは大体愛で派のにんげんさんである。それに目をつけたのは良かったのだが、その後が全然ダメだ。いきなりその飼いゆっくりをれいぽぉしようとしてどうするのだ、それではれいぱーありすでは無いか、やはりありすはいやらしいゆっくりである。
ちぇんはその逆にダメである、にんげんさんに飼ってもらうために、かわいさをあぴーるしようとしたのは良い。しかしその相手が問題だ一度無視されたならその相手は見送って、次の相手にやればよかったものを激昂して襲い掛かるとは、やはりちぇんは単純なゆっくりである。
みょんに至っては何がしたかったのだろう、犬さんを連れている人間の前に出たのも愚かならば、それに襲い掛かったのはもっと愚かである、あれは自殺だろうか。
みょんは確かに強いゆっくりであったが、ゆっくりより遥かに強いにんげんさんだからこそ飼いゆっくりにしてもらおうと考えているのに、その相手に戦いを挑んでどうするのだ、やはりみょんは野蛮なゆっくりである。
やはり飼いゆっくりという至高の座に上れるのはけんじゃであるぱちゅりーだけであろう。
「むきゅ、おちびちゃんしっかりけんじゃのさくをききなさい……」
まりさが飼いゆっくりにしてもらえたのは、おちびちゃんを連れていたからでは無い「怪我をしたおちびちゃんを連れていいたから」なのだ。
にんげんさんはゆっくりをゆっくりさせない恐ろしい生き物である、しかしその中にもゆっくりを可愛がる愛で派のにんげんさんも居るし、にんげんさんを怒らせたゆっくりは優先的に駆除されるのである。
にんげんさんの中にも独特の判断基準があり、それによっていろいろと違う行動する。
大体の場合、おちびちゃんを抱えていたり、怪我をしたゆっくりを連れていると同情してもらえるものなのだ。
あのまりさはその二つを同時に満たしていたのである。だからこそにんげんさんが同情してくれて、飼いゆっくりになれたのだ。
いわゆるにんげんさんの「ぎぜん」すがる方法である、しかし頭のいい方法であるのは確かだ。
もっともまりさのは、偶然だったのだろうが。
「む、むきゅ……!」
「ゆ、お、おかあさん……!」
そう言って一気に語り終えたぱちゅりーに思案顔だった子供達に理解の色が浮かぶ。
さすがはけんじゃの子供達だ。
「さぁ、おちびちゃんわかったわね、やるわよ!」
「「ゆぅ!」」
お帽子の中から細い木の枝を出して咥えると、子ぱちぇりーの顔に恐怖広がる。
「ゆぅ、おかあさんやめてね!」
「い、いやよ、いたいのはいや!」
そう言って逃げようとして見せた背中に木の枝が差し込まれる。
「ゆぎぃ、ゆ、ゆ、ゆ……」
「やめ、ゆびぃ、い、いたいわ、エレエレ……」
「ゆるしてねおちびちゃん……ぱちぇたちがかいゆっくりになるためよ!」
背中の傷から生クリームを流し、泣いたりクリームを吐いている子ゆっくり達を頭に乗せると、茂みから飛び出した。
運良く公園に入ってくる女性が居る、こちらに向ってくる女性の背後からは銀色のバッジを輝かせてぱちゅりーが着いてきていた。
(むきゅきゅきゅ、どうやらめでおねえさんのようね、やはりてんはけんじゃにみかたしているわ!)
一瞬黒く微笑んだぱちゅりーはその表情を隠すと下を向いた。
そして一転泣き顔になって人間の方へ走っていったのである。
「むきゅー、おねがいじますおねえさん、おちびちゃんをたすけてください!」
「きゃ何、え、ぱちゅりー?」
「むきゅ、お姉さん頭の上に怪我をしたおちびちゃんが居るわ!」
銀ぱちぇりーが子ぱちゅりーに気が付いて声を上げる。
「そうなんです、ぱちゅりーのおちびちゃんは、ぎゃくたいおにいさんに、こんなめに!」
目から涙を流して訴える、お姉さんと銀ぱちゅりーの顔に同情の色が浮かんだ。
「むきゅ……お姉さん……」
「分かっているわぱちぇ、えーっとここに入っていたはず……」
そう言ってお姉さんは腰につけたポーチの中を探すと、何か小さなチューブを取り出した。
「えーと、ちょっと御免ね」
ぱちゅりーの頭の上から子供達が持ち上げられる、お姉さんはチューブから何かを取り出すと子ぱちぇりーの体に塗っていた。
「むきゅ大丈夫よ、あれは濃縮オレンジクリームよ、よく効くわ!」
上を見つめているぱちゅりーが心配していると思ったのか、銀ぱちゅりーが教えてくれる。
体の弱いぱちゅりーの事を良く知っているお姉さんは、散歩先で怪我した時の用心に濃縮オレンジクリームを持ち歩いていたのだ。
ぱちゅりーは内心でほくそえんでいた、これは完全に愛で派のにんげんさんだ、これなら飼いゆっくりにしてくれるだろう。
いやダメだ、まだ焦ってはいけない。先ずは治療のお礼を言ってそれから泣きながら野良の苦労話でもしてやろう。
ぱちゅりーのアカデミー賞ものの演技にお姉さんの涙が止まらなくなったところで、おちびちゃんだけでも飼いゆっくりにしてくださいとお願いするのだ。
そこでおちびちゃんが、お母さんと離れたくないと泣く、優しいお姉さんは家族の絆に心を打たれてぱちゅりーも飼いゆっくりに成れる。
完璧な計画である、やはりぱちゅりーは賢者なのだ、まずはお礼を言わなくては。
そんな事を考えているぱちゅりーを尻目に、お姉さんの治療は続いており、怪我を負ってからぐったりとしていた子ぱちぇりー達の目にも生気が戻り始めた。
「ゆ、ゆぅ、むきゅ……」
「う……いたくなくなったわ?」
「大丈夫、おちびちゃん達?怪我はお姉さんが治してあげたからね!」
「むきゅ、良かったわおちびちゃんが無事で!」
「……ゆ!そ、そうねおちびちゃんよかったわ!」
「もう怖くないわよ、おちびちゃんに怪我をさせたゲスは居ないからね」
子ぱちぇ達をゆっくりと地面に下ろし、安心させる様に微笑むお姉さん、銀ぱちぇりーもゆっくりした笑顔だ。
「……ダヨ」
子ぱちぇりーが何かを呟く、
「大丈夫よ、お姉さんは怖くないわ、近くにお母さんもちゃんと居るわ!」
自分を怖がったのかと、母ぱちゅりーの存在を教えてあげるお姉さん、しかしその笑顔が子ぱちぇりーの言葉で凍りついた。
「お、おかあさんよ……ぱちぇをこんなふうにしたのわ!」
「おかあさんが、かいゆっくりになるためにぱちぇたちを……」
「ゆ、ゆがぁ、きさまぁなにをいってるんだぁ、なんてことを!」
いきなりの暴露に動揺し、叫んでしまうぱちぇりー。
「なにをいってるのかわかってるのか、おまえのせいでぱちぇの……けんじゃのけいかくが!」
怒りに任せて子供達に飛び掛ろうとする、その目の前に銀ぱちぇりーが立ちふさがった。
「むきゅ、自分の子供になんて事を、その行動からみるとおちびちゃんの嘘って訳じゃないわね!」
「ゆぎぃ、じゃまをするなぁ……ゆ!」
その時ぱちぇりーは気が付いた、自分に向けられるお姉さんの視線が絶対零度の冷たさを持っている事を。
「むきゅ、おねえさん、えーとこれはね……」
「まったく何て事、こんなゲスがこの公園に居たなんて!」
「むきゅ、ゆ、やめなさい、けんじゃのぱちぇをはなしなさい!」
掴み上げられるぱちぇりー、お姉さんが向う先はもう恒例のあの筒だ。
「やめなさい、ぱちぇはけんじゃなのよ、ぱちぇをそんなところにいれたら、せかいのそんしつよ!」
騒ぎまくるぱちぇりーを気にする事無く、筒の蓋を押すお姉さん。
ぱちぇりーの眼前に吸い込まれるような暗闇が広がる、その奥からは何かゆっくりの声が響いており、とても恐ろしい。
「やめなさい、やめて、いやぱちぇはけん!」
「こんなゲスばっかりの公園なんて問題ね、明日加工所に一斉駆除してもらいましょう!」
無くなってしまう光を惜しむように振り返るぱちぇりー、しかし無慈悲にもその体は暗闇に放り込まれる。
ガシャン、金属の蓋が音を立てて閉まり、差し込んでいる四角い光が遠くなっていく、落下しているのだ。
「むきゅー!」
ぱちぇりーの背中に衝撃が走る、背後からいくつものうめき声があがった。
「むきゅ……いったいなんでけんじゃのぱちぇがこんな事に、ここは?」
周囲を見回すが狭い筒の中に広がるのは暗闇ばかりである。
その時ぱちゅりーの下から声がした、いや、ぱちぇりーの立っている地面が喋り始めたのだ。
「ゆぅ、ぱちぇりーみょん!ぱちぇりーぜんぶおまえのせいみょん!」
「わかるよーぱちぇりーのあたまがわるかったんんだよー」
「ぱちぇりーですって、このいなかもの、おまえのせいでありすのおちびちゃんが!」
「な、なによむきゅうぅぅぅ!」
下を向いたぱちぇりーは悲鳴を上げた、暗闇に慣れてきた目に映ったのは大量のゆっくりであった。
みょんが居た、ちぇんが居た、ありすが居た、虚ろな目をしたれいむが居た。
皆水に浸かってしまい体がグズグズになっている、しかし体は動かせないもののその目でぱちぇりーを睨んでいる。
「なにがけんじゃだ、かいゆっくりなんてなれなかったみょん!」
「ちぇんのおちびちゃんはみずさんにしずんだんだよー!」
「いなかものぉお、せきにんをとれぇ!」
自分達の事を棚上げしてぱちぇりーを罵る仲間たち。
「ゆぅ、ち、ちがうわぱちぇはただしかったのよ、わるいのはにんげんで!」
言い訳するものの、直ぐに足元から怒号が響いた、大きな声が筒の中で反響してぱちぇりーに襲い掛かる。
その時気が付く、この場所に漂うゆっくりしていない匂いに、これは……ゆっくりの死臭であった。
一番下にいるれいむは完全に水に浸かり、ゆっくり出来ない表情で上を見つめている。
その下にあるドロドロした物、それがいったい何なのか、分からない、いや分かりたくないがあふれ出す死臭がそれをぱちぇりーに教えた、それは全てゆっくりの……
自分の足元から責められるぱちぇりー、
「むきゅ、ちがうわちがうわ、ぱちぇはただしいの、けんじゃなのよエレエレ」
ストレスが限界になり、クリームを吐こうとするのを待たず、この場所が仕事を開始した。
一定の高さまで入ったゆっくりを感知したセンサーの報告で命令が下り、天井に当たる場所から水が噴出す。
ゆっくり達は知る由は無いが、最下部に設置してあるファンが回転をはじめ中のものを掻き混ぜ始めた。
クリームを吐いているぱちぇりーも、彼女を責めるゆっくり達も、皆等しくあのドロドロになるのである。
もっとも本ゆん達がそれまで意識を保つことは無いであろう、天井からの水流が皆の上までの水位を作るのだから。
(むふふふ、上手くいったのぜ、やはりまりさ様はてんっさいなのぜ!)
人間に透明なキャリーケースに入れられて運ばれているまりさは内心でほくそえんでいた。
その横には傷を負った子まりさが二匹痛みに呻いている、それをチラリと見て再びまりさは考えに戻った。
(これでまりさ様も飼いゆっくりなのぜ、おちびを犠牲にしたかいがあったのぜ!)
そう、このまりさは自分の子ゆっくり達を、人間の飼いゆっくりにして貰うために傷つけたのであった。
その点ではあのぱちゅりーと同じであったが違う点が一つあった、夜の間、子ゆっくりが寝静まっている時を見計らって木の枝で突き刺したのである。
そのため子ゆっくり達は、今でもまりさは自分達を治すためにプライドを捨てて人間に頼み込んでくれた父だと思っていた。
「ゆぎぃ、おちょうしゃんいちゃいよ!」
「ゆぅ、まじゃにゃの?」
そう言ってまりさに縋り付こうとしてくる子まりさ達、しかし怪我とキャリーケースの揺れがそれを阻む。
「だいじょうぶなのぜ、おちびちゃんもうすぐにんげんさんのおうちにつくのぜ!」
そう言って子供達を励ましながら、まりさは冷たい視線を送っていた。
飼いゆっくりに成れればこんな汚い子ゆっくりは用済みである、しばらくはにんげんの同情を引くために優しくしてやる必要があるだろうが。
ちゃんと人間の飼いゆっくりになってバッジを着けたら事故で永遠にゆっくりしてもうらおう、飼いゆっくりならば可愛いれいむでも美形のありすでも選り取りみどりである、なんなら野良の居る公園に行ってハーレムを築くのも良い。
そうすればおちびちゃんなんて幾らでも作れるのだ。
飼いゆっくりのバッジさえあれば大抵の事は叶うのだから。
自分の輝かしい未来に酔う様に笑みを浮かべたまりさは、思いなおして気を引き締める。
そうだ、馬鹿なにんげんを怪我をしたおちびちゃんで同情させて騙したのは良いが、まだ飼いゆっくりには成っていないのである、それまでは我慢だ。
まぁ、簡単な事だろう、あれ位で同情するような安い人間である、まりさ様のてんっさい的頭脳で立てられた計画と、アカデミー賞物の演技を駆使すれば直ぐに飼いゆっくりにしてくれるだろう。
その時人間が動きを止め、まりさ達の入っているキャリーケースも動きを止めた。
目の前には大きな人間のおうちが建っている、ここが自分のゆっくりプレイスか……その時違和感を感じた。
「ゆぃ、ここがにんげんさんのおうちなのかぜ!」
しかし、このおうちは何かよく分からないがゆっくり出来ないオーラを放っている。
横に居る人間に声をかけると、
「そうだよまりさ、いやぁついてたな、足りなくなってた虐待用のまりさが簡単に手に入ったんだから!」
「ゆぅ!?」
今何と言った、このにんげんさんは何と言ったのだ、あれ、おかしい、まりさは飼いゆっくりに成りに来たのに。
「子ゆっくりの方は直ぐに死んじゃいそうだけど、まぁ親が居ればいくらでも増やせるか!」
嬉しそうに笑顔で語る人間さん、その笑顔はとてもゆっくり出来ない。
「まったく、まりさを補充しようとしたら、ありすがすっきりー殺しちゃうんだもんなぁ」
その時まりさのてんっさい的頭脳がある回答を導き出した。
「ゆぅ、お、おにいさん、おにいさんは"ぎゃくたいおにいさん"なのぜ……?」
嘘であって欲しい、間違いであって欲しいそんな願いを込めた問いに、お兄さんはニッコリと微笑んだ。
「ヒャッハー!!!」
後書き
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
前作ではお目汚しをしてしまい申し訳ありません、勉強させていただきます。
また本作内で別のの作者さんが作られたゆっくりゴミのゴミ箱を使わせて頂きました、この場でお詫びとお礼をさせていただきます。
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