ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4008 ゆか PIECE
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ankoss
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『ゆか PIECE』 26KB
制裁 戦闘 群れ ドスまりさ 希少種 人間なし 失礼します
制裁 戦闘 群れ ドスまりさ 希少種 人間なし 失礼します
※ ゆかりん無双
※ 少年漫画的なパワーインフレあり
※ 少年漫画的なパワーインフレあり
「ありったけの~♪ しょうじょしゅう♪ かきあつめ~♪」
小高い山の頂上へと向かう道を、一匹のゆかりが跳ねていた。
よく晴れた秋の日である。
よく晴れた秋の日である。
「たからもの、さがしにゆくのっさ~♪」
頭に銀バッジを付けた飼いゆっくり。
実力的には金バッジを取れるのだが、飼い主もゆかり自身も面倒くさがって金バッジ試
験は受けていない。ともあれ、かなり優秀なゆっくりであることは事実だった。
実力的には金バッジを取れるのだが、飼い主もゆかり自身も面倒くさがって金バッジ試
験は受けていない。ともあれ、かなり優秀なゆっくりであることは事実だった。
「ゆかぴーす♪」
足を止めて、ポーズを決める。
「ゆん。なにものなのぜ?」
それを狙ったように、周囲の藪からゆっくりが現われた。まりさ、れいむ、ありすの三匹。
タイミングがあったのは偶然ではなく、三匹が出てくる場所に見当を付けていたゆかりが、
その場所で終わるように歌っていたのだが。
タイミングがあったのは偶然ではなく、三匹が出てくる場所に見当を付けていたゆかりが、
その場所で終わるように歌っていたのだが。
「ここはドスのおやまだよ。かってにはいってこないでね。はいるなら、つうこうりょうをも
らうよ。あまあまでいいよ。たくさんでいいよ! さっさとよこしてね!」
らうよ。あまあまでいいよ。たくさんでいいよ! さっさとよこしてね!」
ゆかりの前に立ちはだかるれいむ。威嚇するようにゆかりを睨んでいた。一目でゲスと
分かる顔立ちである。この山に住むゆっくりはほとんどがゲスである。近々大規模な一斉
駆除が入るらしいが、それはゆかりの気にするところではなかった。
分かる顔立ちである。この山に住むゆっくりはほとんどがゲスである。近々大規模な一斉
駆除が入るらしいが、それはゆかりの気にするところではなかった。
「ゆかりんのいきさきは、ゆかりんがきめるのよ。あなたたち、おにいさんたからものをぬ
すんだでしょう? それをとりかえしにきたわ」
すんだでしょう? それをとりかえしにきたわ」
家を留守にしていた時に山のゆっくりに侵入され、大事なものを取られた。自分の不注
意に落ち込む飼い主を見て、ゆかりはその宝物の奪還に乗り出したのである。
意に落ち込む飼い主を見て、ゆかりはその宝物の奪還に乗り出したのである。
「げらげらげら。なにばかなこといってるのぜ?」
下品に笑うまりさ。
「まりさたちのものは、まりさたちのものなんだぜ」
「いなかものはさっさとおうちにかえりなさい!」
「いなかものはさっさとおうちにかえりなさい!」
ぽいん。
ありすの体当たりを受け、ゆかりは後ろに転がった。
「……ふぅ」
ひっくり返ったまま、ため息をつく。ゲスな連中が素直にゆかりの言う事を聞くわけがな
い。予想通りだった。予想通り過ぎて、少し呆れるくらい。
い。予想通りだった。予想通り過ぎて、少し呆れるくらい。
「ゆっへっへ」
ゲスな顔でゆかりを見下している三匹。
ゆかりはその場に跳ね起き、ぐるりと身体を捻った。三百六十度ほど。普段の平穏な生
活で鈍った身体をほぐすように一回転させてから元に戻り、まりさを見る。
ゆかりはその場に跳ね起き、ぐるりと身体を捻った。三百六十度ほど。普段の平穏な生
活で鈍った身体をほぐすように一回転させてから元に戻り、まりさを見る。
「ゆかゆかのピストル!」
「ゆがっ!」
「ゆがっ!」
勢いよく伸びたゆかりの頭突きが、まりさを吹っ飛ばした。
ゆかり種の特徴である、どんな隙間にでも入り込める異様な柔軟性。全身をゴムのよう
に伸縮変形させ、相手を攻撃する。これがゆかりの持つ技だった。
ゆかり種の特徴である、どんな隙間にでも入り込める異様な柔軟性。全身をゴムのよう
に伸縮変形させ、相手を攻撃する。これがゆかりの持つ技だった。
「あ、が、が……」
歯を砕かれ、餡子を吐き出し、まりさが悶えている。
大抵のゆっくりは一発くらうだけで行動不能だ。
大抵のゆっくりは一発くらうだけで行動不能だ。
「れいむたちにはむかうき!?」
「ゆかゆかの、ムチッ」
「ゆべっ」
「ゆかゆかの、ムチッ」
「ゆべっ」
鞭のように細く伸びたゆかりが、れいむを真横から一撃する。三メートルほどに伸びて
いたゆかりが元に戻った時には、れいむは餡子を吐いて気絶していた。飛び出した右目
が地面に転がる。
いたゆかりが元に戻った時には、れいむは餡子を吐いて気絶していた。飛び出した右目
が地面に転がる。
「おほおお! このいなかものおおお!」
ぺにぺにをフルボッキさせ、レイパーモードに変身するありす。
だが、ゆかりの敵では無かった。
だが、ゆかりの敵では無かった。
「ゆかゆかのバズーカァ!」
身体を前後に伸ばしながら、ありすへと接近する。ありすへと体当たりをする直前に、伸
びた身体が勢いよく縮み、体当たりの破壊力を何倍にも跳ね上げる。
びた身体が勢いよく縮み、体当たりの破壊力を何倍にも跳ね上げる。
「ごばぁ!」
顔面が潰れ、後頭部が裂け、カスタードクリームをぶちまけるありす。ぺにぺには根元
から折れていた。どっちにしろもう使う事はないだろう。
数秒で壊滅した見張り三匹を眺めてから、ゆかりは山頂へと向かった。
から折れていた。どっちにしろもう使う事はないだろう。
数秒で壊滅した見張り三匹を眺めてから、ゆかりは山頂へと向かった。
「しねみょん――」
枝を咥えて突っ込んでくるみょん。
「あたらないわ。ゆっくりしすぎよ」
ゆかりは枝を躱しながら、みょんの頭上へと跳び上がる。全身の伸縮を利用すれば、ゆ
っくりの頭上へと跳び上がることも造作ない。
空中で身体の上下を入れ換え、ゆかりは脚を空へと伸ばす。
っくりの頭上へと跳び上がることも造作ない。
空中で身体の上下を入れ換え、ゆかりは脚を空へと伸ばす。
「ゆかゆかのおのッ!」
「みょおおん!」
「みょおおん!」
ホワイトチョコをぶちまけ、みょんが潰れた。
その勢いで少し離れた地面に着地する。
そこへ突っ込んでくるちぇん。
その勢いで少し離れた地面に着地する。
そこへ突っ込んでくるちぇん。
「ゆっくりしね。わかれよー」
「ゆかゆかのかね!」
「に゙あ゙あ゙!」
「ゆかゆかのかね!」
「に゙あ゙あ゙!」
後ろに伸びてから縮む強烈な頭突きをくらい、ちぇんは一回転して地面に落ちた。上下
逆さまのまま目を回し、口からチョコを吐き出している。
逆さまのまま目を回し、口からチョコを吐き出している。
「こんなのがうちのちぇんとおなじちぇんなんて、ふしぎだわ……」
家のちぇんを思い出しながら、ゆかりはため息をついた。
山の中腹にある広場。右側は森、左側は小さな崖になっている。崖と言っても渓谷で
はなく、二メートルくらいの段差だ。落ちて死ぬ高さではないが、無事でも済まない。
はなく、二メートルくらいの段差だ。落ちて死ぬ高さではないが、無事でも済まない。
「ゆかゆかの――」
まるでそういう仕掛けのようにわらわらと涌いてくるゆっくりたち。ゆかりの前には十数
匹のゆっくりがいた。全員眼に殺意を浮かべて。
匹のゆっくりがいた。全員眼に殺意を浮かべて。
「ガトリング!」
ズガガガガガガ!
「ゆばぁ!」
「いぢゃいいい!」
「ゆやあああ!」
「いぢゃいいい!」
「ゆやあああ!」
連続で繰り出される頭突きの連打。伸びると縮むを連続で繰り返し、居並ぶゆっくりを
片っ端からなぎ倒していく。ガトリング砲の掃射のように。
およそ五十発の頭突きを放った時には、ゆっくりは全滅していた。
片っ端からなぎ倒していく。ガトリング砲の掃射のように。
およそ五十発の頭突きを放った時には、ゆっくりは全滅していた。
ヒュンヒュン!
「おお、つよいつよい」
聞こえてきた音と声に、ゆかりは振り返った。
山伏が被るような頭巾と、そこから伸びる白いぽんぽん。斜めに構えているためか元
々なのか、微妙に高さの違う赤い眼、薄く開かれた口元。芸術的なまでに人を見下した
顔立ち。
山伏が被るような頭巾と、そこから伸びる白いぽんぽん。斜めに構えているためか元
々なのか、微妙に高さの違う赤い眼、薄く開かれた口元。芸術的なまでに人を見下した
顔立ち。
「どうも。キモくてウゼぇきめぇまるです」
ヒュンヒュンヒュン !!
「……きめぇまる」
ゆかりは微かに目蓋を落とした。声に映る緊張感。
こいつは今までの雑魚ゆっくりとは違う。
きめぇ丸。割合よく見かける希少種である。キモイ、ウザイ。どんな相手でも見下すふざ
けた態度。色々悪評はあるが、それはどうでもいい。その特徴は速さである。ゆっくり離
れした速度。そして、強い。
こいつは今までの雑魚ゆっくりとは違う。
きめぇ丸。割合よく見かける希少種である。キモイ、ウザイ。どんな相手でも見下すふざ
けた態度。色々悪評はあるが、それはどうでもいい。その特徴は速さである。ゆっくり離
れした速度。そして、強い。
「さすがゆかり。そこらのつうじょうしゅとはちがいますね」
ヒュンヒュンと首を振り、ゆかりに倒されたゆっくりを見る。
それからゆかりに視線を戻し、
それからゆかりに視線を戻し、
「だがしかし。このきめぇまるはおやまのゆっくりさいそくッ! このうごきに――」
ヒュヒュヒュヒュヒュン !!
「ついてこられるかな!」
「ゆかゆかのピストルッ!」
「ゆかゆかのピストルッ!」
相手が動くよりも速く、ゆかりが頭突きを放つ。
しかし、きめぇ丸は余裕で反応していた。
ゆかりの攻撃をあっさり躱し、じぐざぐに蛇行しながら、ゆかりの真横に回り込む。時折
首を高速シェイクしつつ。その速度のまま、突っ込んできた。
しかし、きめぇ丸は余裕で反応していた。
ゆかりの攻撃をあっさり躱し、じぐざぐに蛇行しながら、ゆかりの真横に回り込む。時折
首を高速シェイクしつつ。その速度のまま、突っ込んできた。
「ゆかぁ!」
真上に跳ね上げられるゆかり。速さとは破壊力である。高速で移動するきめぇ丸の体
当たりは、それだけで強力な攻撃だった。
一回地面でバウンドしてから起き上がり、ゆかりはすぐにきめぇ丸に向き直る。
当たりは、それだけで強力な攻撃だった。
一回地面でバウンドしてから起き上がり、ゆかりはすぐにきめぇ丸に向き直る。
ヒュヒュヒュヒュ !!
真正面から突進してくるきめぇ丸。
「ゆかゆかのバズーカ!」
しかし、当たらない。
「おお、おそいおそい」
ヒュンヒュン!
あっさり避けられ、真後ろから体当たりを喰らい、地面とキスをする。
「ゆかゆかのガトリングッ!」
跳ね起きたゆかりは、すぐさま攻撃に移る。ゆかりの速さではきめぇ丸には届かない。
一発では確実に避けられてしまう。ならば、手数を以て当てる!
一発では確実に避けられてしまう。ならば、手数を以て当てる!
「かみえ――」
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!
風に吹かれる紙のように。
ゆかりの頭突きをことごとく躱していく。
きめぇ丸が後退し、ゆかりは攻撃を止めた。
きめぇ丸はゆかりを見つめ、頷いた。
ゆかりの頭突きをことごとく躱していく。
きめぇ丸が後退し、ゆかりは攻撃を止めた。
きめぇ丸はゆかりを見つめ、頷いた。
「これはこれは、うっかりしていました。たいあたりはきかないのですね」
全身を自在に伸ばし縮めるゆかり。その無節操ぶりをスライムに例えるものもいる。そ
の柔らかな身体は、大抵の衝撃を吸収し、受け流してしまう。ゆっくりレベルの体当たり
はゆかりには全く効果が無いのだ。たとえきめぇ丸でも。
の柔らかな身体は、大抵の衝撃を吸収し、受け流してしまう。ゆっくりレベルの体当たり
はゆかりには全く効果が無いのだ。たとえきめぇ丸でも。
「でも、これはきくでしょう?」
きめぇ丸が取り出したのは、カッターナイフだった。
打撃は効かない。しかし、斬撃は効く。
打撃は効かない。しかし、斬撃は効く。
「きられるのはゆっかりできないわね」
ヒュン!
カッターナイフを咥え、きめぇ丸が突っ込んでくる。顔面シェイクしながら。左右じぐざぐに
動き、距離感と位置を狂わせる。それはきめぇ丸のゆっくりさせない性質を、如実に現わ
した移動方だった。
薄い刃がゆかりの頬に刺さる。
その瞬間。
動き、距離感と位置を狂わせる。それはきめぇ丸のゆっくりさせない性質を、如実に現わ
した移動方だった。
薄い刃がゆかりの頬に刺さる。
その瞬間。
「ゆかゆかの……かねぇぇ!」
「おおおおぅ」
「おおおおぅ」
頭突きを顔面に喰らい、きめぇ丸が吹っ飛んだ。
だが、あまり効いていない。
すぐに跳ね起き、カッターナイフを構え直す。
だが、あまり効いていない。
すぐに跳ね起き、カッターナイフを構え直す。
「おお、いたいいたい。こうげきのしゅんかんにあわせるとは、さすがゆかり。おお、つよい
つよい。しかし、このきめぇまるに、にどめはないですよ?」
つよい。しかし、このきめぇまるに、にどめはないですよ?」
ゆかりは舌を伸ばして、頬を舐めた。横一文字の傷跡。中身の納豆の汁が少し漏れて
いる。納豆の粘りで傷口はすぐに塞がった。
いる。納豆の粘りで傷口はすぐに塞がった。
「きめぇまる。よくもゆかりんのかれんなおかおに、きずをつけてくれたわね……。すこし
はんせいしなさい」
はんせいしなさい」
ゆかりの身体が縦に伸びた。一メートルほどに伸びてから、一気に縮む。今度はせん
べいのように真っ平らに。そして、元に戻った。
べいのように真っ平らに。そして、元に戻った。
「ギア・2〈セカンド〉!」
しぅぅぅ……
ゆかりの身体から薄く湯気が立ち上っている。肌はピンク色に染まっていた。それはで
きたての饅頭を思わせる。
きめぇ丸が珍しそうにその様子を眺めている。
きたての饅頭を思わせる。
きめぇ丸が珍しそうにその様子を眺めている。
「ゆかゆかの――」
ゆかりの瞳がきめぇ丸に狙いを定めた。
ヒュン!
それを合図にきめぇ丸が走る。
「JETピストル!」
ドゴンッ!
空気を引き裂き伸びるゆかりの身体。
きめぇ丸の赤い瞳が驚愕に見開かれる。反応はぎりぎりできた。だが、避けることはで
きない。きめぇ丸の思考よりも速く、ゆかりの頭突きが顔面に打ち込まれる。
吹っ飛んだきめぇ丸が、後ろに木に激突して地面に倒れた。
きめぇ丸の赤い瞳が驚愕に見開かれる。反応はぎりぎりできた。だが、避けることはで
きない。きめぇ丸の思考よりも速く、ゆかりの頭突きが顔面に打ち込まれる。
吹っ飛んだきめぇ丸が、後ろに木に激突して地面に倒れた。
「おお、なにごとなにごと?」
顔を上げたきめぇ丸がゆかりのいた場所を見る。
カッターナイフは落ち、口元から中身の練り胡麻が垂れていた。その顔から今までの余
裕は消えている。それどころか、はっきりと焦りが浮かんでいた。
ゆかりの速度はゆっくりとして非常識なレベルまで強化されていた。お山最速を自負す
るきめぇ丸をも上回っている。しかも、その速さに合わせて、破壊力も増していた。具体的
に言うと、人間の全力の蹴りくらいに。
カッターナイフは落ち、口元から中身の練り胡麻が垂れていた。その顔から今までの余
裕は消えている。それどころか、はっきりと焦りが浮かんでいた。
ゆかりの速度はゆっくりとして非常識なレベルまで強化されていた。お山最速を自負す
るきめぇ丸をも上回っている。しかも、その速さに合わせて、破壊力も増していた。具体的
に言うと、人間の全力の蹴りくらいに。
「JETライフル!」
ドン!
高速回転頭突きがきめぇ丸を真横から打ち倒した。
なすすべなく地面を転がるきめぇ丸。
なすすべなく地面を転がるきめぇ丸。
「おお、お……?」
眼を回し、激しく息をしながら、きめぇ丸は跳ね起きた。口から吐き出される練り胡麻。ダ
メージに身体が震えている。瞳に焦燥を浮かべ、周囲を睨む。
その頭上にゆかりがいた。跳び上がっていたのだ。
メージに身体が震えている。瞳に焦燥を浮かべ、周囲を睨む。
その頭上にゆかりがいた。跳び上がっていたのだ。
「JETスタンプ!」
ズドン!
勢いよく伸びたゆかりの脚が、きめぇ丸の後頭部を直撃する。
「やりィッ!」
再び伸びた脚が、きめぇ丸を襲う。衝撃に身体を仰け反らせ、声にならない悲鳴をあげ
るきめぇ丸。口から吐き出された練り胡麻が、地面を少し黒く染める。
攻撃内容が同じなのに、技名が違う事は気にしてはいけない。
顔を伸ばし、ゆかりがきめぇ丸の髪の毛に噛み付いた。
るきめぇ丸。口から吐き出された練り胡麻が、地面を少し黒く染める。
攻撃内容が同じなのに、技名が違う事は気にしてはいけない。
顔を伸ばし、ゆかりがきめぇ丸の髪の毛に噛み付いた。
「JETミサイル!」
勢いよく縮んだゆかりが、きめぇ丸の身体をさらに地面にめり込ませる。普通のゆっくり
なら既に身体がばらばらに爆ぜているだろう。これほどの猛攻を受けてなお原型を止め
ているのは、きめぇ丸はきめぇ丸種としても強いからだった。
きめぇ丸から二メートルほど離れた所に着地するゆかり。
なら既に身体がばらばらに爆ぜているだろう。これほどの猛攻を受けてなお原型を止め
ているのは、きめぇ丸はきめぇ丸種としても強いからだった。
きめぇ丸から二メートルほど離れた所に着地するゆかり。
「おお……お……」
咳き込み練り胡麻を吐き出し、きめぇ丸が起き上がった。
「なんという、はやさ。おどろき、おどろき」
帽子はどこかに吹き飛び、髪の毛はぐしゃぐしゃ。左目は潰れているようで、目を開けて
いない。吐き出された練り胡麻で顔は黒く汚れていた。あちこち皮が裂け、中身をこぼし
ている。呼吸も酷く乱れていた。痙攣も収まらないらしい。瀕死であった。
しかし、その顔から闘志は消えていない。
いない。吐き出された練り胡麻で顔は黒く汚れていた。あちこち皮が裂け、中身をこぼし
ている。呼吸も酷く乱れていた。痙攣も収まらないらしい。瀕死であった。
しかし、その顔から闘志は消えていない。
「だが、このきめぇまる。てきにせはむけない!」
今までと同じ速度で突っ込んでくる。燃え尽きる前のロウソクが一瞬激しく燃えるように。
消えかかった命を燃やし、きめぇ丸は最後の意地を見せた。
同時にゆかりも前へ出る。
消えかかった命を燃やし、きめぇ丸は最後の意地を見せた。
同時にゆかりも前へ出る。
「ゆかゆかのJETバズーカァ!」
身体を前後に伸ばし、一気に縮める体当たり。
「おおお……おお……!」
きめぇ丸は全身から練り胡麻を吹き出し、宙を舞う。
そして、声もなく崖下へと落ちていった。
そして、声もなく崖下へと落ちていった。
そこから少し昇った木陰で、ゆかりは帽子を地面に起く。
「ちょっとつかれたわ。ごはんにしましょう」
中に入っていたのは、パックの納豆だった。スーパーなどで売っている普通の納豆であ
る。あれほどの戦闘を行ったのに中身はこぼれていないし、パックも破れていない。
細かい事は気にしてはいけない。
ゆかりは蓋を開け、匂いを嗅ぐ。
る。あれほどの戦闘を行ったのに中身はこぼれていないし、パックも破れていない。
細かい事は気にしてはいけない。
ゆかりは蓋を開け、匂いを嗅ぐ。
「すばらしいしょうじょしゅうね」
満足げに頷いた。
それから、中身の納豆を食べ始める。
それから、中身の納豆を食べ始める。
「むーしゃむーしゃ、おいしいわー」
山頂にある広場に、ドスはいた。
「あなたがこのおやまのドスね」
ドスを睨み付けるゆかり。大きさは二メートル半ほどだ。ドスとしては標準的だろう。ドス
としては標準的だが、普通のゆっくりに比べれば充分に大きい。
としては標準的だが、普通のゆっくりに比べれば充分に大きい。
「ゆーん?」
広場の奥に作られた玉座に、ドスは座っていた。大量の葉っぱとゆっくりから奪ったお
飾りを組み合わせ、どこかから持ってきた光ものを置いたもの。大きな鳥の巣と表現した
方が的確だが、ドス視点では玉座である。
飾りを組み合わせ、どこかから持ってきた光ものを置いたもの。大きな鳥の巣と表現した
方が的確だが、ドス視点では玉座である。
「おにいさんのおうちからぬすんだおたからをかえしなさい」
ゆかりが見ているのは、ドスの後方にあるガラクタの山だった。二本の木の間に枝を通
して、簡単な荷物置き場が作ってある。粗大ゴミからステンレス製の食器、箱に入ったお
菓子やレトルトパックまで。山や人里で拾ったり盗んだりしたものが、乱雑に積んである。
お兄さんのお宝もそこにあるだろう。
ドスはそこを宝物庫と呼んでいる。
玉座から降り、ドスは哀れみの視線を向けた。
して、簡単な荷物置き場が作ってある。粗大ゴミからステンレス製の食器、箱に入ったお
菓子やレトルトパックまで。山や人里で拾ったり盗んだりしたものが、乱雑に積んである。
お兄さんのお宝もそこにあるだろう。
ドスはそこを宝物庫と呼んでいる。
玉座から降り、ドスは哀れみの視線を向けた。
「ゆーん。なにいってるの? ドスのものはドスのもの、みんなのものはドスのもの、にん
げんのものもドスのもの。このせかいはドスのもになんだよ。おにいさんがどこのおにい
さんかしらないけど、ドスのものはあげないよ」
「なら、じつりょくこうしよ」
げんのものもドスのもの。このせかいはドスのもになんだよ。おにいさんがどこのおにい
さんかしらないけど、ドスのものはあげないよ」
「なら、じつりょくこうしよ」
ゆかりは走った。
ドスは動かない。
ドスは動かない。
「ゆかゆかのブレッド!」
一度頭を後ろに伸ばし、ドスの顎の辺りに叩き付ける。普通のゆっくりなら一発で行動
不能になる豪打だ。
不能になる豪打だ。
「ゆん。かぜがふいたよ?」
ドスはお下げで打たれた辺りを撫でている。
「ゆかゆかのガトリングゥゥゥ!」
「ゆーん、きもちいいよー」
「ゆーん、きもちいいよー」
連続頭突きを喰らいながら、ドスはくすぐったそうに笑っていた。
ドスから距離を取るゆかり。
ドスから距離を取るゆかり。
「さすが、ドス。ぜんぜんきいていないわね。ちょっとこころがおれそうよ」
単純な体格差。巨大な身体は相応に頑丈である。普通のゆっくりが全力で体当たりし
ても通じない。普通のゆっくりがダメージを与えるには、硬い枝などを咥えて思い切り体
当たりしなけれなならない。それでもダメージはたかが知れている。
ても通じない。普通のゆっくりがダメージを与えるには、硬い枝などを咥えて思い切り体
当たりしなけれなならない。それでもダメージはたかが知れている。
「もうおわり?」
小馬鹿にするようなドスの呟きに。
ゆかりは身体を縦に伸ばした。そして、一気に縮める。
ゆかりは身体を縦に伸ばした。そして、一気に縮める。
「ギア・2〈セカンド〉!」
しぅぅぅ……
ゆかりの身体から薄く湯気が立ち上る。ピンク色に染まる肌。体内の納豆を勢いよく混
ぜ合わせることにより、少女成分を異常活性化させ、限界を超えた力を生み出す。ゆかり
の切り札のひとつだ。
ぜ合わせることにより、少女成分を異常活性化させ、限界を超えた力を生み出す。ゆかり
の切り札のひとつだ。
「ゆかゆかのJETバズーカァ!」
「ゆあっ」
「ゆあっ」
全力の体当たりに、ドスは思わず声を上げた。それは人間が思いきり蹴るほどの威力
である。普通のゆっくりの体当たりとは比べものにならない。
さすがのドスにもダメージが入る。
ドスの身体を蹴って距離を取るゆかり。
である。普通のゆっくりの体当たりとは比べものにならない。
さすがのドスにもダメージが入る。
ドスの身体を蹴って距離を取るゆかり。
「ゆぅぅ。いまのはちょっといたかったよ! いたかったよ!」
眼に怒りを灯し、ドスがゆかりを睨む。ダメージは入ったが、大きくはない。人間の蹴り
のように力を一点に集めれば穴も開くが、ゆかりは全身を使った体当たりである。薄い痣
ができる程度だ。
のように力を一点に集めれば穴も開くが、ゆかりは全身を使った体当たりである。薄い痣
ができる程度だ。
「JETガトリングゥゥゥゥ!」
「ゆああああッ!」
「ゆああああッ!」
超高速の頭突き連打に、ドスが蹌踉めく。
しかし、決定打には届かない。
しかし、決定打には届かない。
「じょうぶね、ほんとうに」
ゆかりはドスから距離を取り、ギア2を解除した。
ぎりと歯を噛み締め、殺気に満ちた視線を向けるドス。普通のゆっくりはドスには絶対
に敵わない。ドスと普通ゆっくりは住む世界が違う。だからドスはこの世界の王である。
それがドスの信条だった。
ゆかりは、ドスのプライドに小さなヒビを入れた。
ぎりと歯を噛み締め、殺気に満ちた視線を向けるドス。普通のゆっくりはドスには絶対
に敵わない。ドスと普通ゆっくりは住む世界が違う。だからドスはこの世界の王である。
それがドスの信条だった。
ゆかりは、ドスのプライドに小さなヒビを入れた。
「ゲスはゆっくりしねええ!」
「ギア・3〈サード〉――ぷくううううううううっ」
「ギア・3〈サード〉――ぷくううううううううっ」
ゆかりの身体が膨れ上がる。ぷくーは頬を膨らませる威嚇だが、ゆかりは自分の全て
を膨らませていた。まるで風船のように。帽子から髪の毛、眼や歯も膨らんでいく。
を膨らませていた。まるで風船のように。帽子から髪の毛、眼や歯も膨らんでいく。
「なにこれ? ドスゆかり……?」
いきなりの巨大化に、眼を丸くするドス。
ゆかりはドス並の大きさになっていた。人間の背丈よりも大きな身体。大量の空気を取
込み、身体を膨らませることでドスの大きさとパワーを作り出す。
ゆかりの切り札の二枚目だった。
ゆかりはドス並の大きさになっていた。人間の背丈よりも大きな身体。大量の空気を取
込み、身体を膨らませることでドスの大きさとパワーを作り出す。
ゆかりの切り札の二枚目だった。
「ゆかゆかのギガントピストル!」
勢いよく伸びた頭突きが、ドスを打ち倒した。
一度地面に叩き付けられ、玉座に転がるドス。ドスの巨体に薙ぎ払われ、玉座はあっ
さりと壊れた。辺りに枯れ葉やお飾りが跳び散る。普通のゆっくりではドスにダメージを与
えることはできない。だが、ドスが体当たりをすれば、ドスでもダメージを受けるのだ。
目を白黒させながら起き上がるドス。
前後に身体を伸ばしたゆかりが、ドスに突撃する。
一度地面に叩き付けられ、玉座に転がるドス。ドスの巨体に薙ぎ払われ、玉座はあっ
さりと壊れた。辺りに枯れ葉やお飾りが跳び散る。普通のゆっくりではドスにダメージを与
えることはできない。だが、ドスが体当たりをすれば、ドスでもダメージを受けるのだ。
目を白黒させながら起き上がるドス。
前後に身体を伸ばしたゆかりが、ドスに突撃する。
「ギガントバズーカ!」
「ゆああああッ!」
「ゆああああッ!」
吹っ飛ばされたドスが、広場の奥にあった宝物庫に突っ込んだ。詰んであったガラクタ
が辺りに飛び散り、木に跳ね返ったドスが地面に倒れる。
ゆかりは地面を蹴ってドスの真上に跳び上がった。空中で逆立ちしながら、脚を真上に
伸ばす。そして、一気に縮める。
が辺りに飛び散り、木に跳ね返ったドスが地面に倒れる。
ゆかりは地面を蹴ってドスの真上に跳び上がった。空中で逆立ちしながら、脚を真上に
伸ばす。そして、一気に縮める。
「ギガントアックス!」
ドン!
地面に穿たれる丸い凹み。
ドスは直前で横に転がり、攻撃を躱していた。
ドスは直前で横に転がり、攻撃を躱していた。
「ゲスが、ちょうしにのるなあああ!」
「ゆあ」
「ゆあ」
全力の体当たりがゆかりに炸裂する。
(あら。やばい)
ゆかりは身体の中で、何かが外れる感触を覚えた。
プヒュー。
ひゅるひゅるひゅる……。
ひゅるひゅるひゅる……。
次の瞬間、口から凄まじい勢いで空気を吐き出し、ゆかりは宙を待っていた。巨大な風
船のように、口から空気を吐き出しながら縮んでいく。
十数秒空中をでたらめに飛び回ってから、ゆかりは広場の横の草陰に落ちた。
船のように、口から空気を吐き出しながら縮んでいく。
十数秒空中をでたらめに飛び回ってから、ゆかりは広場の横の草陰に落ちた。
「ゆぅ。ゆかりん、ようじょになっちゃたわ」
その身体は子ゆっくりほどの大きさになっていた。
ドス並の体格を作り出す反動で、しばらく子ゆっくりサイズまで縮んでしまう。それがギ
ア3の欠点だった。子ゆっくりでは普通のゆっくりも相手にできないので、元に戻るまで隠
れている必要がある。
ゆかりは草陰から広場を眺めた。
ドス並の体格を作り出す反動で、しばらく子ゆっくりサイズまで縮んでしまう。それがギ
ア3の欠点だった。子ゆっくりでは普通のゆっくりも相手にできないので、元に戻るまで隠
れている必要がある。
ゆかりは草陰から広場を眺めた。
「ゆっかりしていたわ」
ドスの周りに飛び散ったガラクタ。勢いに任せてドスを吹っ飛ばした結果、盗まれたお
宝があるはずの倉庫を壊してしまった。壊れたガラクタも見える。お兄さんのお宝も一緒
に壊れているかもしれない。
宝があるはずの倉庫を壊してしまった。壊れたガラクタも見える。お兄さんのお宝も一緒
に壊れているかもしれない。
お宝を壊していたら、お兄さんに謝ろう。
ゆかりはそう決めた。
目に殺気を燃やしながら、ドスは周囲を睨んでいた。ゆかりを探しているのだが、ゆかり
は子ゆっくりサイズになり、草陰に隠れているので見つけるのは難しい。
広場を移動し、ぎょろぎょろとあちこちを睨み付けるドス。
目に殺気を燃やしながら、ドスは周囲を睨んでいた。ゆかりを探しているのだが、ゆかり
は子ゆっくりサイズになり、草陰に隠れているので見つけるのは難しい。
広場を移動し、ぎょろぎょろとあちこちを睨み付けるドス。
「あのクソババァ! どこにいたの! ゆっくりしないででてきてね!」
「あ゙? ババァ?」
「あ゙? ババァ?」
みしりと、ゆかりの額に怒りのマークが浮かんだ。
ふと足を止めるドス。
ふと足を止めるドス。
「ゆん。なにこれ?」
その足元に、小さな箱が落ちていた。白い木の箱だった。人間が片手で持てるくらいの
小さい木の箱。蓋が少し開いている。
ゆかりは目を見開く。それはお兄さんのお宝だった。
ドスはお下げでその箱を持ち上げ、直後に思い切り顔を強張らせる。
小さい木の箱。蓋が少し開いている。
ゆかりは目を見開く。それはお兄さんのお宝だった。
ドスはお下げでその箱を持ち上げ、直後に思い切り顔を強張らせる。
「ゆああっ。くさい、なにこれめっちゃくさいッ! あっちいけえっ」
泣きながら、箱を放り投げた。
放物線を画いて宙を舞う箱。
そして、ゆかりの潜んでいる茂みに落ちた。
蓋が外れ、中身が転がり出てくる。
放物線を画いて宙を舞う箱。
そして、ゆかりの潜んでいる茂みに落ちた。
蓋が外れ、中身が転がり出てくる。
「これは」
納豆だった。麦藁にくるまれた納豆。辺りに漂う高級な少女臭。一本二千円もする超高
級納豆だ。味も粘りも匂いも、並の納豆とは違う。ドスが驚いたのもこの匂いが理由だ。
箱を開けた事で、中身の匂いが漏れ出したのである。
だが、ゆかりが見たのは納豆では無かった。
級納豆だ。味も粘りも匂いも、並の納豆とは違う。ドスが驚いたのもこの匂いが理由だ。
箱を開けた事で、中身の匂いが漏れ出したのである。
だが、ゆかりが見たのは納豆では無かった。
『たんじょうびおめでとう ゆかりへ』
平仮名でそう書かれた紙だった。
「おにいさん」
目元からこぼれる一筋の涙。
ゆかりはぴょんぴょんと納豆藁に近づき、舌で器用に藁を開いた。
ゆかりはぴょんぴょんと納豆藁に近づき、舌で器用に藁を開いた。
「むーしゃむーしゃ。しあわせ――」
「おい、ドス」
声を掛けられ、ドスが振り向いた。
そこにはゆかりがいた。普通のサイズに戻ったゆかり。
ゲスな笑みを浮かべ、ドスはゆかりを見下ろす。
そこにはゆかりがいた。普通のサイズに戻ったゆかり。
ゲスな笑みを浮かべ、ドスはゆかりを見下ろす。
「ゆ、でてきたね。ゲスなゆかりは、ゆっくりころされて――ゆん?」
そこで気付いた。
殺気。息ができなくなるほどに濃い殺気。
ゆかりがドスを見上げている。口元に薄い笑みを貼り付けて。
殺気。息ができなくなるほどに濃い殺気。
ゆかりがドスを見上げている。口元に薄い笑みを貼り付けて。
「しーしーははすませたか? かみさまにおいのりは? どうくつのスミでガッタガタふる
えて、いのちごいするこころのじゅんびはOK?」
「ゆ? ゆん」
えて、いのちごいするこころのじゅんびはOK?」
「ゆ? ゆん」
ただならぬ雰囲気に、ドスは半歩後退する。
ゆかり。希少種であるが、身体能力は普通である。火を吹いたり凍らせたり、そういう
能力も持たない。知恵比べをするならともかく、真正面からの戦いでドスが負ける相手
ではない。だが、勝てる気がしない。戦ったら負ける。情け容赦なく殺される。
赤ゆっくりが成体ふらんと戦うように。
絶対に勝てない。目の前のゆかりにはそう思わせる凄みがあった。
ゆかり。希少種であるが、身体能力は普通である。火を吹いたり凍らせたり、そういう
能力も持たない。知恵比べをするならともかく、真正面からの戦いでドスが負ける相手
ではない。だが、勝てる気がしない。戦ったら負ける。情け容赦なく殺される。
赤ゆっくりが成体ふらんと戦うように。
絶対に勝てない。目の前のゆかりにはそう思わせる凄みがあった。
「おまえがおかしたつみはみっつ」
ドスを睨め上げ、ゆかりは叫んだ。
「ひとつ、おにいさんのたからものをぬすんだこと!
ふたつ、しょうじょしゅうをくさいとぶじょくしたこと!
みっつ、このゆかりんをババァといったことォ!」
ふたつ、しょうじょしゅうをくさいとぶじょくしたこと!
みっつ、このゆかりんをババァといったことォ!」
ゆかりが跳んだ。ドスの頭を越えるほどに。
余談だが、ゆかりの実年齢は飼い主の納豆大好きお兄さん(26歳)より上である。
余談だが、ゆかりの実年齢は飼い主の納豆大好きお兄さん(26歳)より上である。
「あ、あ……」
ドスは大口を開けてゆかりを見上げた。飛行能力を持たないゆっくりを、ドスが見上げる
ことはない。ドスは他のゆっくりを見下ろすことしかしない。だが、ドスは無力に空を飛ぶ
ゆかりを見上げていた。見上げるしかなかった。
ゆかりは自分の頭を勢いよく伸ばし。
ことはない。ドスは他のゆっくりを見下ろすことしかしない。だが、ドスは無力に空を飛ぶ
ゆかりを見上げていた。見上げるしかなかった。
ゆかりは自分の頭を勢いよく伸ばし。
「ゆかゆかの、ブレッドォ!」
ゴン。
「いっだあああい!」
額から中枢餡まで突き抜ける激痛に、ドスは叫んだ。その場に倒れ、ごろごろと地面を
転がる。普通のゆっくりの攻撃はドスには効かない。そんな事を言う暇すらない、問答無
用の豪打だった。
その威力は、人間が思いきり振り回したハンマーに匹敵する。
超高級納豆とお兄さんへの感謝、そして様々な怒りが相乗効果を生み出し、ゆかりに
ゆっくりの限界を遙かに超えた力を与えていた。
転がる。普通のゆっくりの攻撃はドスには効かない。そんな事を言う暇すらない、問答無
用の豪打だった。
その威力は、人間が思いきり振り回したハンマーに匹敵する。
超高級納豆とお兄さんへの感謝、そして様々な怒りが相乗効果を生み出し、ゆかりに
ゆっくりの限界を遙かに超えた力を与えていた。
「ゆかゆかのバズーカ!」
「ゆがああああ!」
「ゆがああああ!」
大きく腹を凹ませ、ドスが悲鳴を上げる。目から涙を流し、尻を振り回しながら無様に地
面をのたうちまわる。皮が裂けていないのは、ゆかりが柔らかかったからだ。だが、柔ら
かな身体は、衝撃を損失なくドスの体内まで浸透させる。
ドスから距離を取るゆかり。
一度息を吸い込み、勢いよく縦に伸びた。およそ二メートル。まるで丸い柱のように変
形してから、一転して縮む。今度はぺらぺらの紙のように。
そして、元に戻る。
面をのたうちまわる。皮が裂けていないのは、ゆかりが柔らかかったからだ。だが、柔ら
かな身体は、衝撃を損失なくドスの体内まで浸透させる。
ドスから距離を取るゆかり。
一度息を吸い込み、勢いよく縦に伸びた。およそ二メートル。まるで丸い柱のように変
形してから、一転して縮む。今度はぺらぺらの紙のように。
そして、元に戻る。
「ギア・2〈セカンド〉!」
全身から立ち上る湯気。ピンク色に上気した肌。
ドスが起き上がる。
ドスが起き上がる。
「ゆかゆかのJETピストル!」
ドゴォン!
弾丸のような速度で撃ち放たれた頭突きが、ドスの腹に叩き込まれた。それはもはや
砲撃である。ドスは自分の身に何が起こったかも理解できなかった。限界まで口を開き、
目を剥き、声も上げられず、数メートル吹っ飛ぶ。
のたうつ事もできず、激痛に固まるドス。
砲撃である。ドスは自分の身に何が起こったかも理解できなかった。限界まで口を開き、
目を剥き、声も上げられず、数メートル吹っ飛ぶ。
のたうつ事もできず、激痛に固まるドス。
「JETウィップ!」
「あべし」
「あべし」
鞭のように伸びたゆかりが、ドスを薙ぎ払った。身体をくの字に折り曲げ、十メートルほ
ど宙を舞い、頭から地面に落ちる。
上下逆さまで地面に直立するドスに、ゆかりは突っ込んだ。
ど宙を舞い、頭から地面に落ちる。
上下逆さまで地面に直立するドスに、ゆかりは突っ込んだ。
「JETバズーカ!」
「おぼあぁ!」
「おぼあぁ!」
腹にめり込んだゆかりとともに、再び十メートルほど宙を舞い、ドスは杉の木に激突した。
幹が激しく揺れ、枯れ枝や枯れ葉が落ちてくる。
ゆかりはドスの腹を蹴って、少し離れた場所に着地した。
上下逆さまのまま、杉の木に寄り掛かっているドス。ぐるぐると目を回し、意識をどこか
に飛ばしている。口から少し餡子を吐き出し、おそろしーしーを漏らしていた。ゆかりの体
当たりを受けた腹は、大きく凹んで痣になっている。
しかし、ゆかりは止まらない。
幹が激しく揺れ、枯れ枝や枯れ葉が落ちてくる。
ゆかりはドスの腹を蹴って、少し離れた場所に着地した。
上下逆さまのまま、杉の木に寄り掛かっているドス。ぐるぐると目を回し、意識をどこか
に飛ばしている。口から少し餡子を吐き出し、おそろしーしーを漏らしていた。ゆかりの体
当たりを受けた腹は、大きく凹んで痣になっている。
しかし、ゆかりは止まらない。
「JETガトリング!」
「ゆばばばばばばっっ」
「ゆばばばばばばっっ」
超高速連続頭突きが、ドスへと襲いかかった。
ドスは普通のゆっくりとは違う。住む世界が違うのだ。だから、ドスはゆっくりを支配する
王なのだ。そんなドスの信条を嘲笑うかのように、ゆかりの連打がドスを壊していく。圧
倒的だった。武器を持った人間がゆっくりを蹂躙するような圧倒的な力。
ふと攻撃を止めたゆかり。
ヒュン! ときめぇ丸のような高速で地面を走り、ドスとの間合いを開く。
そして、言った。
ドスは普通のゆっくりとは違う。住む世界が違うのだ。だから、ドスはゆっくりを支配する
王なのだ。そんなドスの信条を嘲笑うかのように、ゆかりの連打がドスを壊していく。圧
倒的だった。武器を持った人間がゆっくりを蹂躙するような圧倒的な力。
ふと攻撃を止めたゆかり。
ヒュン! ときめぇ丸のような高速で地面を走り、ドスとの間合いを開く。
そして、言った。
「ドススパークをうちなさい」
「ゆん?」
「ゆん?」
ドスの意識が少し戻る。
全身が腫れ、自慢の帽子もボロボロ、歯も半分欠けたドス。
冷たい視線を向け、ゆかりは口を動かす。
全身が腫れ、自慢の帽子もボロボロ、歯も半分欠けたドス。
冷たい視線を向け、ゆかりは口を動かす。
「まだえいえんにゆっくりするのははやいわよ? ぜんぶだしなさい。おまえのすべてをひ
ていしてあげるわ。ゆっかりまってあげるから、はやくおきなさい」
ていしてあげるわ。ゆっかりまってあげるから、はやくおきなさい」
言った通り、待つ。
ドスは地面に倒れ、のろのろと起き上がった。何もしていないのに、身体が左右に揺れ
ている。目もそれぞれ別の方向を向いている。口元から流れ落ちる餡子。
数分掛けて意識を引き戻し、ドスはゆかりを睨み付けた。
ドスは地面に倒れ、のろのろと起き上がった。何もしていないのに、身体が左右に揺れ
ている。目もそれぞれ別の方向を向いている。口元から流れ落ちる餡子。
数分掛けて意識を引き戻し、ドスはゆかりを睨み付けた。
「ぞ、ぞのぜりふ、ごうかいずるよ! こうがいざぜて、やるよおお!」
地面に落ちていたキノコを口に入れ咀嚼。
その様子をじっと見つめるゆかり。
距離はおよそ三十メートル。
その様子をじっと見つめるゆかり。
距離はおよそ三十メートル。
「ドススパークッ!」
大きく開かれたドスの口から、閃光が迸る。小さな稲妻を伴った、光の渦。ドスの持つ
最強の攻撃。ゆっくりを消し去る閃光。
その閃光に向かい、ゆかりが跳んだ。
最強の攻撃。ゆっくりを消し去る閃光。
その閃光に向かい、ゆかりが跳んだ。
「ゆかゆかのJET暴風雨〈ストーム〉――!」
ボッ。
回転しながら空中を走り、目にも留まらぬ速度で放たれる頭突き。嵐のような連打が、
ドススパークの閃光を引き裂き、霧に変えていた。全てを否定する。その台詞通り、ゆか
りはドスの最終兵器を真正面から粉砕する。
それだけでは終わらない。
ドススパークの閃光を引き裂き、霧に変えていた。全てを否定する。その台詞通り、ゆか
りはドスの最終兵器を真正面から粉砕する。
それだけでは終わらない。
「JET攻城砲〈キャノン〉!」
ズンッ!
ゆかりは草の上に着地し、振り返った。
ばきばきと耳障りな音を響かせ、幹を削り取られた杉の木が倒れていく。数秒して、轟
音とともに杉の木が倒れた。驚いた鳥が木々から跳び上がり、動物が逃げていく。風と共
に舞い上がる土煙。
ドスの身体に穴が空いている。
正面から背中まで。
ばきばきと耳障りな音を響かせ、幹を削り取られた杉の木が倒れていく。数秒して、轟
音とともに杉の木が倒れた。驚いた鳥が木々から跳び上がり、動物が逃げていく。風と共
に舞い上がる土煙。
ドスの身体に穴が空いている。
正面から背中まで。
「あ……あ……」
呻き声を上げ、ドスがゆかりに向き直る。
身体の中心に風穴を開けられながらも、割と元気に生きている。中枢餡さえ無事なら、
ゆっくりは早々死なないものだ。ついでに、何となく口があれば喋ったりもできる。
プライドも何もかも粉々に粉砕され、ドスは泣いた。
身体の中心に風穴を開けられながらも、割と元気に生きている。中枢餡さえ無事なら、
ゆっくりは早々死なないものだ。ついでに、何となく口があれば喋ったりもできる。
プライドも何もかも粉々に粉砕され、ドスは泣いた。
「ゆるじてね……。おにいざんの、おだからがえずから、ドスをゆるじてね」
「あ。おたからはもういいわ」
「あ。おたからはもういいわ」
ドスを見つめ、ゆかりはにっこりと笑った。無垢な少女のような可憐な笑顔で。
あっさり告げる。
あっさり告げる。
「ゆかりんがたべちゃったから」
「どぼじでたべぢゃうのおおお!?」
「どぼじでたべぢゃうのおおお!?」
漫画のように涙を流しながら、ドスが叫ぶ。
軽くのーびのーびしながら、ゆかりは楽しそうに微笑んでいた。
軽くのーびのーびしながら、ゆかりは楽しそうに微笑んでいた。
「おにいさんからゆかりへのプレゼントだったから。ありがたくいただいたわ。でも、おたか
らはなくなっちゃったけど――」
らはなくなっちゃったけど――」
ふっと、その顔に影が差す。
「ゆかりをババァっていったことはゆるさないわよ。ぜったいに」
ドスが固まる。
「ギア・3〈サード〉! ぷっくううううううっ、うううううううう!」
周囲の空気がゆかりの身体に吸い込まれていく。普通サイズの身体が、大きく膨らみ
始めた。風船を膨らませるように、全身の部位がまんべんなく大きくなっていく。その身体
はドスサイズを越え、さらに巨大になっていく。
始めた。風船を膨らませるように、全身の部位がまんべんなく大きくなっていく。その身体
はドスサイズを越え、さらに巨大になっていく。
「いやだああああ! じにだぐないいいい!」
ドスは逃げた。穴の開いた身体で。
裂けた皮や身体の穴から餡子をこぼし、両目から涙を溢れさせながら。ついでにうんう
んとしーしーを垂れ流しながら。とにかく走る。ドスのプライドなど残っていなかった。死に
たくない。ただその一心で走る。
行き先は自分でも分かっていない。
裂けた皮や身体の穴から餡子をこぼし、両目から涙を溢れさせながら。ついでにうんう
んとしーしーを垂れ流しながら。とにかく走る。ドスのプライドなど残っていなかった。死に
たくない。ただその一心で走る。
行き先は自分でも分かっていない。
「だずげでえええ! だれがだずげでえええ!」
一回跳ねるごとに身体が壊れていくが、それを気にしている余裕は無い。
怖かった。
目の前に現われた絶対的な死が。
怖かった。
目の前に現われた絶対的な死が。
「ゆかゆかの――」
ゆかりが跳んだ。
およそ六メートルの巨大ドスサイズ。それが高々と宙を舞う。
およそ六メートルの巨大ドスサイズ。それが高々と宙を舞う。
「ギガント――」
その身体を勢いよく真上に伸ばした。ゆうに数十メートル。山頂の広場の上空を飛ぶ、
巨大な円柱のような巨大物体。それがゆっくりゆかりだと言われても、信じる者はいない
だろう。不気味で奇怪な未確認飛行物体だった。
巨大な円柱のような巨大物体。それがゆっくりゆかりだと言われても、信じる者はいない
だろう。不気味で奇怪な未確認飛行物体だった。
「JET――」
その照準が、逃げるドスへと向けられる。
「メテオ!」
ひゅぅ。
風が吹き抜ける。
山頂の広場。ドス。ドスの玉座。宝物庫のガラクタ。全部消えていた。
そこには巨大なクレーターだけが残っていた。えぐれ跳んだ地面が、丸く広がっている。
直径五十メートルはあるだろう。周囲の木々は放射状になぎ倒されている。まるで隕石
が衝突したような跡だった。
山頂の広場。ドス。ドスの玉座。宝物庫のガラクタ。全部消えていた。
そこには巨大なクレーターだけが残っていた。えぐれ跳んだ地面が、丸く広がっている。
直径五十メートルはあるだろう。周囲の木々は放射状になぎ倒されている。まるで隕石
が衝突したような跡だった。
「ゆかりんったらゆっかりものね。ちょっとやりすぎちゃったわ」
クレーターの縁でゆかりは笑っていた。暢気な笑顔。
笑顔のまま数秒大穴を見つめ、
笑顔のまま数秒大穴を見つめ、
「あー。ぜったいまずいわよね、これ……」
目を逸らし、囁くように唸る。
だが、すぐに元の笑顔に戻ると、空に浮かぶ太陽を見上げた。風がゆかりの頬を撫で、
金色の髪を揺らす。空はどこまでも青く、太陽はいつもと変らず明るく輝いていた。
だが、すぐに元の笑顔に戻ると、空に浮かぶ太陽を見上げた。風がゆかりの頬を撫で、
金色の髪を揺らす。空はどこまでも青く、太陽はいつもと変らず明るく輝いていた。
「はやくかえらないと、ばんごはんのじかんにおくれちゃうわ」
くるりと身体の向きを変え、ゆかりは歩き出した。
あとがき
ドスは色々とイジめ甲斐があります。
ドスは色々とイジめ甲斐があります。