ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4147 ぐんまりさ迷子になる
最終更新:
ankoss
-
view
『ぐんまりさ迷子になる』 18KB
観察 希少種 失礼します
観察 希少種 失礼します
※ でたらめに強いゆっくりが出ます
※ 人間が酷い目に遭います。
※ 人間が酷い目に遭います。
チートあきです
利根川河川敷の草むら。
「ゆわ~ぁ……む……?」
一匹のまりさが目を覚ました。どこにでもいるようなまりさである。大きな傷があるとか
帽子の形が違うとか、そのような目立つ特徴もない。
まりさはお下げで頭をかきつつ、周囲を見る。
自分を囲むように貼られた銀色の線。ステンレス製の格子。
帽子の形が違うとか、そのような目立つ特徴もない。
まりさはお下げで頭をかきつつ、周囲を見る。
自分を囲むように貼られた銀色の線。ステンレス製の格子。
「これは、おり……なのぜ?」
それはゆっくりを入れておくケージだった。
青い草の生えた川辺に横向きに落ちている。まりさはそこに閉じ込められていた。普通
のゆっくりなら、ステンレスの格子を壊すことなどできない。
が。
青い草の生えた川辺に横向きに落ちている。まりさはそこに閉じ込められていた。普通
のゆっくりなら、ステンレスの格子を壊すことなどできない。
が。
ガシュ、ボリッ。
まりさはケージを噛み千切り、外へと飛び出した。
噛み潰された金網を横に吐き捨て、首を傾げる。
噛み潰された金網を横に吐き捨て、首を傾げる。
「ゆーん……?」
空は青く晴れ渡り、風が心地よい。まだ気温は上がっていない。太陽もさほど高くなか
った。時間は朝の九時くらいだろう。生い茂った青草が風に揺れている。
すぐ近くに大きな河川橋が見えた。
った。時間は朝の九時くらいだろう。生い茂った青草が風に揺れている。
すぐ近くに大きな河川橋が見えた。
「ここはどこなのぜ? よくわからないのぜ。まりさはなんでこんなところにいるのぜ?
きのうはおふとんでぐっすりねむったはずなのぜ?」
きのうはおふとんでぐっすりねむったはずなのぜ?」
まりさは前橋加工所で飼われている研究用のゆっくりである。普通に一日を終え、早め
に眠ったのだが、何故かこんな場所にいた。
に眠ったのだが、何故かこんな場所にいた。
「こまったのぜ、みんなしんぱいしているのぜ……」
ちくちく。
頬をつつかれる。
「ゆん、くすぐったいのぜ」
どうやって帰ろうか思索しながら、まりさはお下げでそれを払った。
ちくちく。
再び頬をつつかれる。
「ゆん?」
さすがに無視できず、まりさは意識をそちらに向けた。
「まりさのはなしをきけえええ! このげすまりさああああ!」
そこにいたのは一匹のまりさだった。身体が汚れており、帽子も所々切れている。絵に
描いたような野良だった。河川敷は大雨で水没するので地域ゆっくりを置けず、時折野
良が増殖する。
野良まりさは口に大きな釘を咥えていた。N150釘。いわゆる五寸釘である。
描いたような野良だった。河川敷は大雨で水没するので地域ゆっくりを置けず、時折野
良が増殖する。
野良まりさは口に大きな釘を咥えていた。N150釘。いわゆる五寸釘である。
「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすなのぜ! よそものはたちいりきんしなのぜ! は
りたかったら、つうこうりょうのあまあまだすんだぜ!」
りたかったら、つうこうりょうのあまあまだすんだぜ!」
まりさの周囲には、れいむ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょんなど基本種が十匹くら
い佇んでいる。全員がまりさに殺気立った眼差しを向けていた。
い佇んでいる。全員がまりさに殺気立った眼差しを向けていた。
「だせないなら、せいさいするのぜええ! ゆっくりしねえええ!」
突進してくる野良まりさ。
さっきのちくちくは釘による体当たりだろう。
さっきのちくちくは釘による体当たりだろう。
「ゆん」
まりさはあっさりと釘を躱し、お下げを咥えた。
ゴウッ。
野良まりさが飛んだ。空高く。地上数十メートルの高さまで。
「まりさはつばさをてにいれたよおぉぉぉ……」
そんな感動の声が聞こえてくる。
が、その命は残り数秒だった。川面に落ちるにしろ、地面に落ちるにしろ、落下の衝撃
に耐えられるはずがない。
が、その命は残り数秒だった。川面に落ちるにしろ、地面に落ちるにしろ、落下の衝撃
に耐えられるはずがない。
「このいなかものおおお!」
続いて突っ込んでくるありすに、まりさは正面から体当たりを返した。
ドッ。
回転しながら、ありすが吹っ飛ぶ。二十メートルほど。
パァン!
橋脚に激突してカスタードを飛び散らせた。
一瞬にして長と幹部一匹をオーバーキルしたまりさ。まりさに攻撃したら自分も死ぬ。
他のゆっくりはすぐさま理解した。このまりさは恐ろしく危険だと。
しかし、まりさは普通に訊き返してきた。世間話でもするように。
一瞬にして長と幹部一匹をオーバーキルしたまりさ。まりさに攻撃したら自分も死ぬ。
他のゆっくりはすぐさま理解した。このまりさは恐ろしく危険だと。
しかし、まりさは普通に訊き返してきた。世間話でもするように。
「なんのようなのぜ?」
問いに答えたのはぱちゅりーである。恐怖に震えながら、えれえれを我慢して。
「こここ、こっ、ここはぱちぇたちのむれよ……。むきゅぅぅ……あああ、あなたはふほうし
んにゅうしゃだから、で、でていきなさ――でていって、ください。むきゅ……。でていって
くれると、ぱちぇたちはうれしいです。とっても」
んにゅうしゃだから、で、でていきなさ――でていって、ください。むきゅ……。でていって
くれると、ぱちぇたちはうれしいです。とっても」
さきほどまでの余裕は消えている。
まりさはあっさりと頷いた。
まりさはあっさりと頷いた。
「わかったのぜ、ぱちゅりー。まりさはいくところがあるから、すぐにでていくのぜ。めいわ
くかけてすまなかったのぜ」
「い、いえいえ」
くかけてすまなかったのぜ」
「い、いえいえ」
ぴょんぴょんと遠ざかっていくまりさの背に、ぱちゅりーはとにかく安堵していた。
どこにでもいるようなまりさである。
しかし、その出身地は秘境グンマーだった。グンマーで生まれ一年ほど経ったある日、
まりさは川に落ちて群馬に流れ着いた。それから人間に捕獲され、現在は前橋加工所
で研究用ゆっくりとして割とゆっくりした日々を過ごしている。
しかし、その出身地は秘境グンマーだった。グンマーで生まれ一年ほど経ったある日、
まりさは川に落ちて群馬に流れ着いた。それから人間に捕獲され、現在は前橋加工所
で研究用ゆっくりとして割とゆっくりした日々を過ごしている。
「おなかすいたのぜ」
まりさは道ばたに生えていた草に噛み付いた。
「むーしゃむーしゃ。ごくん、いまいちー……」
眉を寄せて息を吐く。
不味い美味しい以前にこちらの食事はパンチが足りない。それがまりさの感想だった。
食べているのに食べた気がしない。まりさの普段の食事は、加工所内で栽培されている
グンマー産の植物だ。それならとりあえず満足できる。
不味い美味しい以前にこちらの食事はパンチが足りない。それがまりさの感想だった。
食べているのに食べた気がしない。まりさの普段の食事は、加工所内で栽培されている
グンマー産の植物だ。それならとりあえず満足できる。
「こきょうのあじがこいしいのぜ……。かえりたいのぜ……」
青い空を見上げ、一筋の涙をこぼす。
まりさが今住んでいる場所は群馬県。名前が似ているがグンマーではない。まりさは
グンマーに帰りたかった。機会が訪れたらグンマーに帰すという約束で、まりさは加工所
の研究用ゆっくりを勤めている。しかし、グンマーへ行く方法はいまだ多くが謎に包まれ
ていた。入るのも出るのも、ほとんど運任せである。
まりさが今住んでいる場所は群馬県。名前が似ているがグンマーではない。まりさは
グンマーに帰りたかった。機会が訪れたらグンマーに帰すという約束で、まりさは加工所
の研究用ゆっくりを勤めている。しかし、グンマーへ行く方法はいまだ多くが謎に包まれ
ていた。入るのも出るのも、ほとんど運任せである。
「とりあえず、まちにいくんだぜ」
ぴょんぴょんと人気の少ない道を跳ねる。
周囲には空き地や森、畑や田んぼ、古い民家などが並んでいる。
周囲には空き地や森、畑や田んぼ、古い民家などが並んでいる。
「ゆんやあああ!」
ゆっくりの悲鳴が響く。
まりさは横を見た。
まりさは横を見た。
「だれがだずげでえええ!」
「おらおら、糞饅頭。逃げろ逃げろー。逃げないと撲殺だぞー」
「おらおら、糞饅頭。逃げろ逃げろー。逃げないと撲殺だぞー」
泣きながら跳ねるれいむと、金属バットを持ってそれを追い掛けている男。虐待お兄さ
んに追い掛けられる野良ゆっくりの図だった。
んに追い掛けられる野良ゆっくりの図だった。
「そこまでなんだぜ、おにいさん!」
まりさは男の前へと飛び出した。
足を止める男。
足を止める男。
「おう?」
「よわいものいじめはゆっくりできないのぜ。おにいさんのあいては、まりさがするのぜ。
だから、れいむをいじめるのはやめるのぜ!」
「よわいものいじめはゆっくりできないのぜ。おにいさんのあいては、まりさがするのぜ。
だから、れいむをいじめるのはやめるのぜ!」
男を見上げ、宣言する。
まりさは正義感が強かった。
まりさは正義感が強かった。
「なら、さっさと死ねぇ!」
まりさの頭に振下ろされる金属バット。普通のゆっくりならば、なすすべなく潰されてい
ただろう。普通のゆっくりだったならば。
ただろう。普通のゆっくりだったならば。
ベギュン。
まりさは金属バットを口で受け止め、噛み砕いた。
「へ……?」
中身が丸見えになったバットを、呆然と男が見つめる。
まりさは食いちぎったバットの先端を咀嚼した。
まりさは食いちぎったバットの先端を咀嚼した。
ゴリバリゴキュ……
ごくん。
ごくん。
「ゆげぇ。おもったよりまずいのぜ……」
舌を出して、顔をしかめている。
振下ろされたバットをゆっくりが食い千切り、あまつさえそれを噛み砕いて食べてしまっ
た。常識を置き去りにした光景である。
振下ろされたバットをゆっくりが食い千切り、あまつさえそれを噛み砕いて食べてしまっ
た。常識を置き去りにした光景である。
「…………」
「つぎはなにをするのぜ?」
「つぎはなにをするのぜ?」
男を見上げるまりさ。
威嚇するでもなく、余裕を見せるでもなく、ただ淡々と質問している。人間が野良ゆっく
りの攻撃を適当にあしらった後のような適当さ。
威嚇するでもなく、余裕を見せるでもなく、ただ淡々と質問している。人間が野良ゆっく
りの攻撃を適当にあしらった後のような適当さ。
「あ、そうだ、忘れてた忘れてたー」
突然そう言うと、男はまりさに背を向け、早足に来た道を戻って行った。理解不能な相
手に、とりあえず逃避を選んだらしい。
まりさは追うこともせず、その背中を見つめる。
男は適当な角を曲がり、見えなくなった。
手に、とりあえず逃避を選んだらしい。
まりさは追うこともせず、その背中を見つめる。
男は適当な角を曲がり、見えなくなった。
「ゆふん! まりさはすごいね!」
振り向くと、追い掛けられていたれいむが目を輝かせていた。
「これくらいとうぜんなのぜ」
まりさはそう答える。グンマーゆっくりと普通の人間との実力差は、人間と普通のゆっく
り並である。それほどの力を持つまりさが大人しくしているのは、単純に根が真面目であ
るからと、まりさをも圧倒する人間の存在だった。ゆっくり特殊技能者と呼ばれている人
間たち。加工所でもそれなりの地位を持つ人たち。
ゆっくり業界、色々と人間を辞めている人は多い。
り並である。それほどの力を持つまりさが大人しくしているのは、単純に根が真面目であ
るからと、まりさをも圧倒する人間の存在だった。ゆっくり特殊技能者と呼ばれている人
間たち。加工所でもそれなりの地位を持つ人たち。
ゆっくり業界、色々と人間を辞めている人は多い。
閑話休題。
「れいむもきをつけるんだぜ。まちはあぶないにんげんがおおいのぜ。しずかなばしょにく
らすか、ちいきゆっくりになるのがあんぜんなんだぜ」
らすか、ちいきゆっくりになるのがあんぜんなんだぜ」
野良ゆっくりの大変さは、まりさも知っている。
野良ゆっくりが安全に暮らすのは、人気のない場所に住むか、地域ゆっくりになって人
間の管理下に置かれれるか。どちらかである。
野良ゆっくりが安全に暮らすのは、人気のない場所に住むか、地域ゆっくりになって人
間の管理下に置かれれるか。どちらかである。
「だいじょうぶだよ。れいむにはまりさがついているからね」
「ゆん?」
「ゆん?」
れいむの目に映る不敵な光に、まりさは身を竦めた。
口元にイヤらしい笑みを浮かべ、れいむは宣言する。
口元にイヤらしい笑みを浮かべ、れいむは宣言する。
「れいむはまりさをおむこさ――」
ひゅん!
お下げ一閃。
上下ふたつに分かれたれいむが、道路に落ちた。
ぎょろぎょろと目を動かす上半分のれいむ。
上下ふたつに分かれたれいむが、道路に落ちた。
ぎょろぎょろと目を動かす上半分のれいむ。
「………!」
数秒固まってから、なにが起ったかを理解したらしい。涙を溢れさせながらまりさを見つ
める。口が意味もない呻き声を漏らしていた。もう助からないだろう。
める。口が意味もない呻き声を漏らしていた。もう助からないだろう。
「そういうゲスはゆるさないのぜ……!」
冷たい瞳でれいむを見下ろし、まりさは言い切った。自分で努力をせず、他者にくっつ
いて身勝手に生きる。そういう相手がまりさは大嫌いだった。
ふっと息を吐き、空を見上げる。
いて身勝手に生きる。そういう相手がまりさは大嫌いだった。
ふっと息を吐き、空を見上げる。
「それに、まりさにはこころにきめたあいてがいるんだぜ……。ゆん、れいむ……」
頬を赤く染め、帽子を少し下ろす。
まりさと同じ研究用ゆっくりのれいむ。まりさが加工所で暮らし始めてから半月ほどして
やってきた。美ゆっくりではないが、朴訥とした可愛さのあるれいむである。一目惚れだ
った。しかし、奥手のまりさはいまだ告白できず、半年が経っている。
恋愛面に関しては、まりさはヘタレだった。
まりさと同じ研究用ゆっくりのれいむ。まりさが加工所で暮らし始めてから半月ほどして
やってきた。美ゆっくりではないが、朴訥とした可愛さのあるれいむである。一目惚れだ
った。しかし、奥手のまりさはいまだ告白できず、半年が経っている。
恋愛面に関しては、まりさはヘタレだった。
「っ……っ……」
切られたれいむが痙攣しながらまりさを見つめている。
シュッ……!
街中を薄い影が走る。
通りを歩いている人間は気付かない。
街中を歩くにあたって、まりさはすてるすを全身に施していた。頭に木の枝をくっつける
レベルではない。全身にアスファルトの粉を纏い、さらに完全に気配と存在感を消してい
る。フィクションのようなほぼ完璧な都市迷彩だ。よく見れば気がつくだろうが、注意して
見なければまず気付かない。
通りを歩いている人間は気付かない。
街中を歩くにあたって、まりさはすてるすを全身に施していた。頭に木の枝をくっつける
レベルではない。全身にアスファルトの粉を纏い、さらに完全に気配と存在感を消してい
る。フィクションのようなほぼ完璧な都市迷彩だ。よく見れば気がつくだろうが、注意して
見なければまず気付かない。
シュン……!
きめぇ丸以上の速度で、地面を走るまりさ。
もっとも、このレベルの迷彩を行っても、加工所のゆっくり特殊技能者たちはまりさをあ
っさり見つけてくる。地下十メートルまで潜った時も掘り出されてしまった。
足を止めるまりさ。
もっとも、このレベルの迷彩を行っても、加工所のゆっくり特殊技能者たちはまりさをあ
っさり見つけてくる。地下十メートルまで潜った時も掘り出されてしまった。
足を止めるまりさ。
「ようやくみつけたのぜ」
見つけたのは、電話ボックスだった。
ガラス張りの四角い箱で、緑色の電話が設置されている。
下の隙間からボックス内に入り込むまりさ。
ガラス張りの四角い箱で、緑色の電話が設置されている。
下の隙間からボックス内に入り込むまりさ。
「これがあれば、おにいさんにれんらくできるのぜ。でも、まりさはおかねさんもってないん
だぜ……。テレホンカードももってないんだぜ――」
だぜ……。テレホンカードももってないんだぜ――」
公衆電話を見上げ、頭を捻った。加工所で暮らしているためか、まりさはきっちりと教育
が施されている。緊急時にかける加工所のお兄さんの電話番号も覚えていた。まりさ自
体頭がいいのか、グンマー産が全部このレベルかはわからない。
が施されている。緊急時にかける加工所のお兄さんの電話番号も覚えていた。まりさ自
体頭がいいのか、グンマー産が全部このレベルかはわからない。
「うーむ、こまったのぜ……」
電話はある。電話番号も覚えている。
しかし、電話機を動かす手段がない。
餡子脳をこね回して記憶を掘り起こす。
しかし、電話機を動かす手段がない。
餡子脳をこね回して記憶を掘り起こす。
「ゆん!」
まりさの頭に電球が点った。
イタリアンマフィアな童顔の少年が、小さなプロペラ飛行機で公衆電話を破壊して小銭
を取り出す場面が浮かぶ。つまり、小銭は電話機の中にも入っているのだ。
まりさは荷物台へと飛び乗り、
イタリアンマフィアな童顔の少年が、小さなプロペラ飛行機で公衆電話を破壊して小銭
を取り出す場面が浮かぶ。つまり、小銭は電話機の中にも入っているのだ。
まりさは荷物台へと飛び乗り、
「きんきゅうじたいだから、しかたないのぜ!」
ザギュン!
お下げで公衆電話の下を切断する。
こぼれ落ちてくる百円と十円。数は多くない。携帯電話が普及しているため、公衆電話
はあまり使われなくなってしまったのだろう。
幸い、それほど大金が欲しいわけではない。
まりさは百円玉を咥え、コイン投入口へと放り込んだ。
続けて舌でプッシュボタンを押す。
荷物台に乗ったまま、受話器を前に待つこと数秒。
こぼれ落ちてくる百円と十円。数は多くない。携帯電話が普及しているため、公衆電話
はあまり使われなくなってしまったのだろう。
幸い、それほど大金が欲しいわけではない。
まりさは百円玉を咥え、コイン投入口へと放り込んだ。
続けて舌でプッシュボタンを押す。
荷物台に乗ったまま、受話器を前に待つこと数秒。
「はい。前橋加工所研究一課です」
「もしもし、まりさはまりさなのぜ」
「もしもし、まりさはまりさなのぜ」
受話器の向こうから聞こえてきた声に、まりさは返事をした。
加工所の研究員である。まりさよりも強い人間の一人だった。地中に潜ったまりさをあ
っさり見つけて掘り返した人間でもある。
加工所の研究員である。まりさよりも強い人間の一人だった。地中に潜ったまりさをあ
っさり見つけて掘り返した人間でもある。
「まりさ、今どこにいる!」
「ちいさなぎんこうのよこにある、こうしゅうでんわのなかなのぜ。おかねさんがなかった
から、でんわきこわしちゃったのぜ。ごめんなさいなのぜ」
「分かった。逆探知して、その場所を調べる」
「ちいさなぎんこうのよこにある、こうしゅうでんわのなかなのぜ。おかねさんがなかった
から、でんわきこわしちゃったのぜ。ごめんなさいなのぜ」
「分かった。逆探知して、その場所を調べる」
男が落ち着いて答える。行方不明になったまりさが公衆電話を見つけ、電話を壊して
小銭を取り出し、その小銭で自分に電話を掛けてきた。手早くそれを理解する。
まりさは眉を寄せて尋ねた。
小銭を取り出し、その小銭で自分に電話を掛けてきた。手早くそれを理解する。
まりさは眉を寄せて尋ねた。
「それにしても、なにがあったのぜ? きがついたら、まりさおりにいれられてかわべでね
てたのぜ。だれがこんなイタズラしたのぜ……」
てたのぜ。だれがこんなイタズラしたのぜ……」
昨日の夜は加工所で眠った。今朝起きたら、川縁でケージに入れられていた。まさか
加工所の人間がやったわけではないだろう。
加工所の人間がやったわけではないだろう。
「昨日の夜、加工所に泥棒が入ってな……。金品と稀少なゆっくりを盗んだんだよ。闇市
場に高値で流せると思ったんだろうな。まりさは上手く逃げられたみたいだけど。れいむ
は一緒じゃないのか?」
「まりさはひとりだけなのぜ。ゆん、れいむ……?」
場に高値で流せると思ったんだろうな。まりさは上手く逃げられたみたいだけど。れいむ
は一緒じゃないのか?」
「まりさはひとりだけなのぜ。ゆん、れいむ……?」
出てきた名前に、まりさは息を呑む。
「泥棒が盗んだゆっくりは、お前とれいむだ」
れいむ。
まりさと同じ研究用ゆっくり。いつも明るい笑顔を見せてくれたれいむ。そのれいむがま
りさと一緒に攫われていた。今、れいむは悪い人間の所にいる。
りさと一緒に攫われていた。今、れいむは悪い人間の所にいる。
「それをはやくいってほしいのぜえええ! ゆっくりなんかしてられないのぜ! すぐにれ
いむつれもどしにいくんだぜ! すぐにてきのばしょをおおしえるのぜええ! まりさのれ
いむは、ぜったいまりさがすくいだしてやるんだぜえええッ!」
いむつれもどしにいくんだぜ! すぐにてきのばしょをおおしえるのぜええ! まりさのれ
いむは、ぜったいまりさがすくいだしてやるんだぜえええッ!」
瞳に炎を灯し、まりさが咆える。グンマーまりさ。一匹でもその戦闘能力は凄まじい。普
通の人間が相手にするばらば、最低限銃器を使う必要がある。
通の人間が相手にするばらば、最低限銃器を使う必要がある。
「落ち着け、まりさ。お前が心配するほどれいむは軟弱じゃない」
「ゆん?」
「ゆん?」
冷静な男の声に、まりさは我に返る。
受話器の向こから大きなため息が聞こえた。
受話器の向こから大きなため息が聞こえた。
「それに……俺が心配しているのは、盗んだ連中だ……」
「あー。たしかにすっごくヤバいのぜ……」
「あー。たしかにすっごくヤバいのぜ……」
冷や汗を流し、まりさは呟いた。
れいむはシズオカ産である。
れいむはシズオカ産である。
時は少し遡る。
草木も眠る丑三つ時。群馬県から埼玉県に向かう国道を、自動車が走っている。加工
所に忍び込んだ窃盗団の車だった。運転席に一人、助手席に一人。痩せた男と背の高
い男。目付きの悪い二人が乗っている。
草木も眠る丑三つ時。群馬県から埼玉県に向かう国道を、自動車が走っている。加工
所に忍び込んだ窃盗団の車だった。運転席に一人、助手席に一人。痩せた男と背の高
い男。目付きの悪い二人が乗っている。
「こいつら、稀少なんかな? 普通のれいむとまりさに見えるが」
「多分な……。おれらには分からんけど。安かったら潰せばいいだろ」
「多分な……。おれらには分からんけど。安かったら潰せばいいだろ」
二人がそんなやり取りをする。
後部座席に置かれたケージ。一方にはれいむ、もう一方にはまりさが入れられていた。
その横には札束や貴金属類の入った袋が置いてある。戦利品だった。れいむとまりさは
素人にはよく分からないが、二人は珍しいタイプの基本種と認識していた。
後部座席に置かれたケージ。一方にはれいむ、もう一方にはまりさが入れられていた。
その横には札束や貴金属類の入った袋が置いてある。戦利品だった。れいむとまりさは
素人にはよく分からないが、二人は珍しいタイプの基本種と認識していた。
「ゆぴー……」
ラムネスプレーをかけられ、ぐっすり眠っている二匹。
前触れなく、れいむの右目が開いた。
前触れなく、れいむの右目が開いた。
「………」
無言の車内。明かりも無いため暗い。
れいむの閉じた口の端から餡子が漏れ出てくる。暗い小豆色の餡子。闇に紛れて、そ
の動きは見えにくい。前に座っている男二人も気付いていない。
餡子は不気味に蠢きながら、横のまりさのケージの真下に広がる。
れいむの閉じた口の端から餡子が漏れ出てくる。暗い小豆色の餡子。闇に紛れて、そ
の動きは見えにくい。前に座っている男二人も気付いていない。
餡子は不気味に蠢きながら、横のまりさのケージの真下に広がる。
「ゆふー」
眠っているまりさ。
ズズズズ……
水面に沈むように、まりさのケージが餡子に沈み込んだ。
まりさを呑み込んだ餡子が、音もなくドアの隙間から外に出る。そして、呑み込んでい
たまりさとケージを表面に浮かび上がらせた。ドアを動かすこともなく、まりさを起こすこと
もなく、誰にも気付かれず、蠢く餡子がまりさを車外へと移動させている。
アメーバのように動く餡子が、ケージごとまりさを投げ捨てた。
利根川を渡る橋の上から、河川敷へと。
まりさを呑み込んだ餡子が、音もなくドアの隙間から外に出る。そして、呑み込んでい
たまりさとケージを表面に浮かび上がらせた。ドアを動かすこともなく、まりさを起こすこと
もなく、誰にも気付かれず、蠢く餡子がまりさを車外へと移動させている。
アメーバのように動く餡子が、ケージごとまりさを投げ捨てた。
利根川を渡る橋の上から、河川敷へと。
カシャン。
微かに響く金属音。しかし、音が小さすぎて誰も気にしない。
この高さから落ちてもまりさなら平気である。死にもしないしケガもしない。まりさがゆっ
くり離れした性能を持つ事はれいむも熟知している。
まりさを外へと逃がした餡子が、れいむの口元に戻ってきた。
この高さから落ちてもまりさなら平気である。死にもしないしケガもしない。まりさがゆっ
くり離れした性能を持つ事はれいむも熟知している。
まりさを外へと逃がした餡子が、れいむの口元に戻ってきた。
ズズズ……
餡子がれいむの口に消える。それで終わりだった。なにも変わらない車内。男たちも気
付いていない。ただ、まりさだけが消えている。
付いていない。ただ、まりさだけが消えている。
「すーぱーしずおかたーいむ……はじまるよー……」
小さく、本当に小さく、れいむが宣言した。
午前十時。
まりさは近くの公園にいた。
まりさは近くの公園にいた。
「こんなところでなにしているみょん?」
声を掛けられ、まりさはそちらに目をやった。
公園のベンチの横に、まりさは座っていた。
まりさに声を掛けたのは一匹のみょんである。黒いリボンに付けられた緑と白の四角い
地域ゆっくりバッジ。白い部分には星のシールが二枚貼られている。この公園のリーダ
ーのようだった。
公園のベンチの横に、まりさは座っていた。
まりさに声を掛けたのは一匹のみょんである。黒いリボンに付けられた緑と白の四角い
地域ゆっくりバッジ。白い部分には星のシールが二枚貼られている。この公園のリーダ
ーのようだった。
「ここはのらゆっくりたちいりきんしみょん。のらゆっくりはでていくみょん」
「めいわくかけてすまないのぜ。まりさはおにいさんとまちあわせしてるんだぜ。おとなし
くしているから、おにいさんがむかえにくるまで、ここでまたせてほしいのぜ」
「めいわくかけてすまないのぜ。まりさはおにいさんとまちあわせしてるんだぜ。おとなし
くしているから、おにいさんがむかえにくるまで、ここでまたせてほしいのぜ」
礼儀正しくまりさが告げる。電話で大体の事情を教えられてから、まりさは男にこの公
園の場所を告げられ、そこで待っているように言われた。今は言われた通りに大人しくし
ている。ここで待っていれば迎えが来るだろう。
園の場所を告げられ、そこで待っているように言われた。今は言われた通りに大人しくし
ている。ここで待っていれば迎えが来るだろう。
「わかったみょん」
そう頷き、みょんは去っていった。
「れいむ……」
まりさはれいむの姿を思い浮かべながら、空を見上げた。
どこかの建物の中で。
「おおおおっ!」
ドアを蹴破り、痩せた男が部屋に転がり込んだ。左手に懐中電灯を持ち、右手に鉄パ
イプを構えて。電気は消え、室内は暗い。窓から見える空は血のように赤かった。
赤と黒の異様な世界。
イプを構えて。電気は消え、室内は暗い。窓から見える空は血のように赤かった。
赤と黒の異様な世界。
「っ!」
部屋にいた小太りの男がびくりと肩を跳ねさせる。
「おどかすな!」
痩せた男に叫び返す。
一方痩せた男はすぐさまドアを締め、鍵を掛けている。散らかった室内に、乾いた音が
響く。二人の心臓の音が、やけにうるさく響いていた。
一方痩せた男はすぐさまドアを締め、鍵を掛けている。散らかった室内に、乾いた音が
響く。二人の心臓の音が、やけにうるさく響いていた。
「おい、相方ののっぽはどうした。何で一人なんたよ?」
「あいつは……」
「あいつは……」
痩せた男が目を伏せる。
「言うな」
そう呻いてから、小太りの男はポケットから黒いものを取り出した。短い筒に取っ手が
ついたような外見で、全体が黒く塗装されている。日本では持つのも違法な道具。
痩せた男が唾を飲む。鉄パイプを下ろし、
ついたような外見で、全体が黒く塗装されている。日本では持つのも違法な道具。
痩せた男が唾を飲む。鉄パイプを下ろし、
「拳銃か?」
「ボスの部屋から盗んできた。緊急事態だから仕方ねえだろ」
「ボスの部屋から盗んできた。緊急事態だから仕方ねえだろ」
両手でぎこちなく拳銃を構える小太りの男。口元に浮かぶ笑み。だが、余裕はない。人
間相手には十分過ぎる武器だか、今自分たちが相手にしているバケモノには通じるかど
うかもわからない。
間相手には十分過ぎる武器だか、今自分たちが相手にしているバケモノには通じるかど
うかもわからない。
「ったく、どうなってるんだよ、これは!」
痩せた男が八つ当たりのように鉄パイプを机に叩き付けた。
三階建ての雑居ビルなのに、内部は異様に広くなっている。まるで空間が歪んだかの
ように。無数に増えた部屋、無限に続く廊下。窓から下を見れば、遙か遠くに漆黒の地
面。空は血のように赤く、音は聞こえない。
異様な世界がそこに広がっていた。
三階建ての雑居ビルなのに、内部は異様に広くなっている。まるで空間が歪んだかの
ように。無数に増えた部屋、無限に続く廊下。窓から下を見れば、遙か遠くに漆黒の地
面。空は血のように赤く、音は聞こえない。
異様な世界がそこに広がっていた。
「誰だよ! 加工所から希少種盗みだそうとか言ったバカは!」
比較的警備の浅い加工所に忍び込んで、金品と稀少なゆっくりを盗む。誰が言い出し
たかは覚えていないが、計画は実行され、加工所から金品とゆっくり二匹を盗み出した。
本命は金品であり、ゆっくりの方はおまけであるが。
ただのゆっくりだと思っていた。好事家に高く売れる程度の考えだった。
それがこのざまである。
たかは覚えていないが、計画は実行され、加工所から金品とゆっくり二匹を盗み出した。
本命は金品であり、ゆっくりの方はおまけであるが。
ただのゆっくりだと思っていた。好事家に高く売れる程度の考えだった。
それがこのざまである。
「あー。もー。ちくしょー、おうちかえるー!」
痩せた男がヤケ気味に叫び。
無言が返ってくる。
無言が返ってくる。
「おい、返事しろよ?」
視線を向けた先。小太りの男が床に倒れていた。蠢く餡子にまみれて。
「おい――!」
「れいむはれいむだよ!」
「れいむはれいむだよ!」
聞こえてきた脳天気な声。
すとんと血液の落ちる音が聞こえる。思考の許容量を遙かに超える出来事に、しかし
身体は勝手に動いていた。床に落ちていた拳銃を拾い、声の主へと銃口を向ける。
すとんと血液の落ちる音が聞こえる。思考の許容量を遙かに超える出来事に、しかし
身体は勝手に動いていた。床に落ちていた拳銃を拾い、声の主へと銃口を向ける。
「くたばれぇぇぇ、糞饅頭がああああ!」
振り向いた先、天井に一匹のれいむが立っている。上下逆さまのまま。
「ゆっくりして――」
パンパンパンパンパンッ! カチカチカチ……
銃弾を撃ちきり、空打ちの音が響く。
鉛弾をその身に受け、れいむは粉々になっていた。床に飛び散った餡子や皮、髪の毛
やリボン。天井板が砕けて、埃と木の破片が辺りに落ちてくる。
鉛弾をその身に受け、れいむは粉々になっていた。床に飛び散った餡子や皮、髪の毛
やリボン。天井板が砕けて、埃と木の破片が辺りに落ちてくる。
「どうだ、くそったれ!」
「おにいざんは、ゆっぐりでぎないひどだね?」
「おにいざんは、ゆっぐりでぎないひどだね?」
飛び散った目玉が男を捉えた。床に落ちたれいむの口が言葉を発している。
「う……ぁ……」
黒目のついた白玉と目が合い、男は拳銃を落として後退った。ばらばらにした。銃弾を
撃ち込んで破壊した。それなのに死なない。
撃ち込んで破壊した。それなのに死なない。
ズズズズ……
飛び散った餡子や皮が蠢き、その場で何匹ものれいむを生み出していく。
「れいむは、れいむだよ!」
「れいむは、れいむだよ!」
「れいむは、れいむだよ!」
「れいむは、れいむだよ!」
『ゆっくりしていってね!』
「れいむは、れいむだよ!」
「れいむは、れいむだよ!」
「れいむは、れいむだよ!」
『ゆっくりしていってね!』
十数匹に増えたれいむが、元気に挨拶をする。
「うああああああああ!」
男は逃げ出した。
その日の夕方、窃盗団は全員意識不明の状態で発見され、警察に身柄を確保された。
過去SS
anko4144 いたさなえ
anko4128 ちぇん CV:若本規夫
anko4109 ゆっくり・ボール・ラン 2nd STAGE
anko4108 ぱちゅりーの居場所
anko4104 続・どMとどS
anko4090 BGM 天国と地獄
anko4086 HENTAI ありす
anko4077 幽霊の正体見たり?
anko4061 勝利条件
anko4058 まちょりーになりたい
anko4052 とっても餡子脳
anko4051 どMとどS
以下略
anko4144 いたさなえ
anko4128 ちぇん CV:若本規夫
anko4109 ゆっくり・ボール・ラン 2nd STAGE
anko4108 ぱちゅりーの居場所
anko4104 続・どMとどS
anko4090 BGM 天国と地獄
anko4086 HENTAI ありす
anko4077 幽霊の正体見たり?
anko4061 勝利条件
anko4058 まちょりーになりたい
anko4052 とっても餡子脳
anko4051 どMとどS
以下略