ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4193 BGM 真ゲッターロボ
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ankoss
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『BGM 真ゲッターロボ』 25KB
ギャグ パロディ 愛情 変態 戦闘 希少種 失礼します
ギャグ パロディ 愛情 変態 戦闘 希少種 失礼します
※ 「anko4090 BGM 天国と地獄」と「anko4128 ちぇん CV:若本規夫」の続きです。
※ ほぼ全員チート。
※ まぁ、あれだ。細かい事は気にするんじゃないぞ。
※ ほぼ全員チート。
※ まぁ、あれだ。細かい事は気にするんじゃないぞ。
チートあきです。
空は青く。雲は白い。
遠くの海から吹き上がる風が草木をなびかせる。
人里離れた森の中にすむ野生のゆっくり。森の地形から四つの群れを作り、ゆっくり
したりしなかったりと平穏な日々を送っている。
森の中に響く声。
遠くの海から吹き上がる風が草木をなびかせる。
人里離れた森の中にすむ野生のゆっくり。森の地形から四つの群れを作り、ゆっくり
したりしなかったりと平穏な日々を送っている。
森の中に響く声。
「きめぇまる、おそいわよ! もっとはやく、おいつかれるわ!」
北の群れの長であるゆかりのものだ。叫び声というより、悲鳴に近い。
草を蹴散らし、落ち葉を払い、枯れ枝をはね除け、森の中を突き進む一匹のゆっくり。
凹凸のある地面を人間の全力疾走以上の超高速で走るきめぇ丸。帽子についている
古びた地域ゆっくりバッジ。その頭の上にゆかりが乗っていた。
草を蹴散らし、落ち葉を払い、枯れ枝をはね除け、森の中を突き進む一匹のゆっくり。
凹凸のある地面を人間の全力疾走以上の超高速で走るきめぇ丸。帽子についている
古びた地域ゆっくりバッジ。その頭の上にゆかりが乗っていた。
「おお……、あれはもうむりですよ」
速度とは対照的に、きめぇ丸が気弱に答える。
「じぶんはかんけいないからって、なによわきなこといってるのおおおお!? いつもみ
たいに『このきめぇまるがおそい?』とかいってちょうだいいい!」
たいに『このきめぇまるがおそい?』とかいってちょうだいいい!」
ゆかりの涙が後ろへと流れていた。
色々あって野生ゆっくりになった元地域ゆっくりのきめぇ丸。この森では伝言からゆっ
くりまで何でも運ぶ、デリバリーサービスを営んでいる。そして森最速を自負し、実際に
速い。遅いと言われると普段は怒るのだが、今は諦め気味である。
色々あって野生ゆっくりになった元地域ゆっくりのきめぇ丸。この森では伝言からゆっ
くりまで何でも運ぶ、デリバリーサービスを営んでいる。そして森最速を自負し、実際に
速い。遅いと言われると普段は怒るのだが、今は諦め気味である。
「ゆかりいんん、俺だあああああ! 結婚してくれえええ!」
きめぇ丸を追い掛けるのは、一人の人間である。パンツ一丁の姿で。程よく日焼けし
た肌と鍛え抜かれた筋肉。頭に罪と書かれた白い袋を被っている。
両手両足を指先爪先まで伸ばし、森の中を全力疾走していた。
人間の限界など、とうに突破している。
た肌と鍛え抜かれた筋肉。頭に罪と書かれた白い袋を被っている。
両手両足を指先爪先まで伸ばし、森の中を全力疾走していた。
人間の限界など、とうに突破している。
「きもいいい! おもにぜんしんがあますところなくきもいいいい!」
ゆかりが泣いていた。
男ときめぇ丸の距離は徐々に縮みつつある。きめぇ丸は帽子に付いた加速用ぽんぽ
んを六個全部消費し、自動車並の速度を出していた。人間の素の全速力より速い。男は
それに平然と追い付いている。追い付かれるのはそう遠くないだろう。
男ときめぇ丸の距離は徐々に縮みつつある。きめぇ丸は帽子に付いた加速用ぽんぽ
んを六個全部消費し、自動車並の速度を出していた。人間の素の全速力より速い。男は
それに平然と追い付いている。追い付かれるのはそう遠くないだろう。
「むぁてええええええぃ!」
声が響いた。独特の抑揚を持つ、渋く甘い声。
大気を引き裂き、雲をかき消し、空の彼方から小さな何かが飛び来る。
大気を引き裂き、雲をかき消し、空の彼方から小さな何かが飛び来る。
「おとうさん!?」
ゆかりが頭上を見上げた。
逃げるきめぇ丸と、その頭に乗ったゆかり。その二匹を追い掛ける男。
逃げるきめぇ丸と、その頭に乗ったゆかり。その二匹を追い掛ける男。
ドォォン!
爆音とともに土砂が舞い上がる。
丸い影が男の頭上に突き刺さり、男を吹き飛ばした。地面が丸く削り取られ、土や小
石が周囲に降り注ぐ。それはまさに隕石だった。
丸い影が男の頭上に突き刺さり、男を吹き飛ばした。地面が丸く削り取られ、土や小
石が周囲に降り注ぐ。それはまさに隕石だった。
「おお?」
きめぇ丸が足を止め、振り向く。
「ちぇぇんのむすめに、なにをしている? わかってるかぁ?」
ちぇんだった。
緑色の帽子、猫耳、耳の小さな金色の輪っか、尻尾が二本。おおむね普通のちぇん
であるが、声がとっても渋く厚みがあり、目によく分かない凄みがあった。目はさとりの
サードアイに似ているかもしれない。
緑色の帽子、猫耳、耳の小さな金色の輪っか、尻尾が二本。おおむね普通のちぇん
であるが、声がとっても渋く厚みがあり、目によく分かない凄みがあった。目はさとりの
サードアイに似ているかもしれない。
「ゆかりさん、いまおとうさんといいましたか?」
「………」
「………」
ゆかりが沈黙で肯定する。ちぇん。ゆかりの父だった。普段はあちこちを旅をしており、
この森に姿を見せることはまずない。年齢不詳。
大きな穴の向こうで男がうつ伏せになっている。
が、いきなり跳ね起き、ちぇんの前に土下座した。
この森に姿を見せることはまずない。年齢不詳。
大きな穴の向こうで男がうつ伏せになっている。
が、いきなり跳ね起き、ちぇんの前に土下座した。
「御義父さん! 娘さんを僕にください!」
「いいよ」
「そんな! あっさり!」
「いいよ」
「そんな! あっさり!」
即答するちぇん、慌てるゆかり。
顔を上げる男に、だがちぇんは続けた。
顔を上げる男に、だがちぇんは続けた。
「ただし。このちぇぇんをたおせたらな」
男を見つめたまま、その身体が色を変える。赤く白く、青く紫色に。澄んだ音を響かせ
ながら。燃えるように揺らめくように蠢くように。
ながら。燃えるように揺らめくように蠢くように。
「このちぇぇんが、おまえのまえにたちはだかる、たかぁいかべだ! おまえのあいをちぇ
んのむこうにてっしたければ、このちぇんをむかえ、なおたってからだっ!」
んのむこうにてっしたければ、このちぇんをむかえ、なおたってからだっ!」
謎の振動が地響きとともに世界を揺らす。
男が無言で立ち上がった。
男が無言で立ち上がった。
「ところで」
くるりときめぇ丸に向き直るちぇん。
ぺこりと頭を下げて、
ぺこりと頭を下げて、
「はじめまして。ゆかりのちちです。むすめがいつもおせわになっております」
「どうもどうも。はじめまして。きもくてうざい、おやまさいそくきめぇまるです。ゆかりさん
にはごひいきにさせていただいています」
「どうもどうも。はじめまして。きもくてうざい、おやまさいそくきめぇまるです。ゆかりさん
にはごひいきにさせていただいています」
頭にゆかりを乗せたまま、きめぇ丸は平然と挨拶を返した。
ちぇんが帽子を地面に置く。
ちぇんが帽子を地面に置く。
「これはつまらぬものですが、どうぞ。あかくはないですが、おいしいですよ?」
中に入っていたのは胡麻団子だった。胡麻餡を生地で包み、周りに白ごまをまぶし
た団子である。それがみっつ。美味しそうだった。
た団子である。それがみっつ。美味しそうだった。
「おお、いただきます」
ぱくりと胡麻団子を食べるきめぇ丸。
その瞬間。
その瞬間。
「おおおおおおお! うーまーいーぞーぉぉ!」
口から光が溢れる。
そして、宣言した。
そして、宣言した。
「もーど、せっとあっぷ」
蒸気音を上げ、足から胴体が生える。ライオンのようながっしりした四肢と蛇の尻尾。
頭から伸びる鹿のような角。胴の背から広がる翼。それらの付け根からゆっくりと湯
気が立ち上っている。きめら丸だ。帽子のぽんぽんも六個に復活している。
きめら丸の背に飛び乗るちぇん。
頭から伸びる鹿のような角。胴の背から広がる翼。それらの付け根からゆっくりと湯
気が立ち上っている。きめら丸だ。帽子のぽんぽんも六個に復活している。
きめら丸の背に飛び乗るちぇん。
「まずは、きめらまる。ごぉぅ!」
「おおおおおお!」
「おおおおおお!」
きめら丸が凄まじい速度で走り出す。頭にゆかりを、背にちぇんを乗せたまま。
太い足が力強く大地を蹴った。
太い足が力強く大地を蹴った。
「このよのことわりとは、すなわちはやさとだとはおもいませんかぁ? ものごとをはやく
なしとげれば、そのぶんじかんがゆうこうにつかえます」
なしとげれば、そのぶんじかんがゆうこうにつかえます」
咆えるように語りかけるように、きめら丸が異様な早口で語りかける。もっとも、ゆか
りは思考停止中でちぇんは答えない。だが、きめら丸は言葉を続ける。
りは思考停止中でちぇんは答えない。だが、きめら丸は言葉を続ける。
「おそいことなら、だれでもできる! 20ねんかければ、ばかでもけっさくSSがかける!
ゆうのうなのは、げっかんまんがかより、しゅうかんまんがか! しゅうかんよりもにっ
かんです! つまり、はやさこそゆうのうなのです!」
「ふははははは! 人間〈HENTAI〉を舐めるなあああ!」
ゆうのうなのは、げっかんまんがかより、しゅうかんまんがか! しゅうかんよりもにっ
かんです! つまり、はやさこそゆうのうなのです!」
「ふははははは! 人間〈HENTAI〉を舐めるなあああ!」
走り来る影。
男だった。
両手を腰に伸ばした気をつけの姿勢で、足だけを高速で動かし走っている。足はそ
の形を捉えられないほどだ。一方、上半身は揺れもしない。地面を蹴るごとに土砂が
跳ね、爆音が轟く。それほどの速度だ。
木々の隙間を駆け抜け、枝を蹴散らし、落ちている岩を飛び越え。
時速は百キロほど。
その速度に男は平然とついてくる。
男だった。
両手を腰に伸ばした気をつけの姿勢で、足だけを高速で動かし走っている。足はそ
の形を捉えられないほどだ。一方、上半身は揺れもしない。地面を蹴るごとに土砂が
跳ね、爆音が轟く。それほどの速度だ。
木々の隙間を駆け抜け、枝を蹴散らし、落ちている岩を飛び越え。
時速は百キロほど。
その速度に男は平然とついてくる。
「まずは、こてしらべだ!」
ちぇんがきめら丸の背から飛び降りた。
一度地面を蹴り、回転しながら男に突っ込む。
一度地面を蹴り、回転しながら男に突っ込む。
「望むところ!」
男の拳がちぇんを横に払った。木の幹にぶつかるが、ボールのように跳ね返って体
勢を立て直すちぇん。ダメージは見えない。
地面を蹴り、違う木の幹で弾み、再び男へと突っ込む。
勢を立て直すちぇん。ダメージは見えない。
地面を蹴り、違う木の幹で弾み、再び男へと突っ込む。
ボンッ!
男の拳がぶつかった。
衝撃波に木々がざわめく。
二度、三度と激突してから、お互いに飛退く男とちぇん。
衝撃波に木々がざわめく。
二度、三度と激突してから、お互いに飛退く男とちぇん。
「なかなかやるな?」
「お褒めいただき、光栄です」
「お褒めいただき、光栄です」
疾走するきめら丸の左右に、距離を取って対峙する。どちらもゆっくりどころか人間の
常識を超越した動きだった。地面を吹き飛ばしながら走る男と、跳弾のように木の枝を
飛び移るちぇん。
常識を超越した動きだった。地面を吹き飛ばしながら走る男と、跳弾のように木の枝を
飛び移るちぇん。
「だが、まだこんなもんじゃあないんだろう?」
ちぇんの黒い瞳が、男を見据える。
「無論!」
男は両手を頭の袋に突っ込んだ。
引き出された手には、巨大なライフルがふたつ握られている。全長は百五十センチ
近くあるだろう。無骨で重厚な外見。
引き出された手には、巨大なライフルがふたつ握られている。全長は百五十センチ
近くあるだろう。無骨で重厚な外見。
「それ、どおなってるのおおお!?」
思わず叫ぶゆかり。明らかに不条理な収納だった。
地面を駆け抜けながら、ライフルふたつを構える男。
地面を駆け抜けながら、ライフルふたつを構える男。
「貫け俺のビッグマグナム! みんな大好きバレットM82A!」
地面が消える。
ゆかりたちは森の中央を走る崖から飛び出していた。
大昔の地殻変動によってできた崖で、地層が剥き出しになった場所。時折人間がや
ってきて、観察したり勉強したりしている。高さは十メートル以上。落ちたら人間でもゆ
っくりでも無事では済まない。
ゆかりたちは森の中央を走る崖から飛び出していた。
大昔の地殻変動によってできた崖で、地層が剥き出しになった場所。時折人間がや
ってきて、観察したり勉強したりしている。高さは十メートル以上。落ちたら人間でもゆ
っくりでも無事では済まない。
「おおおおおお……! どらまちーっく! えすせてぃーっく! ふぁんたすてぃーっく!
らーんでぃーんぐ!」
らーんでぃーんぐ!」
前足を伸ばし、跳躍するきめら丸。
男が両手でライフルを腰溜めに構えていた。旋条を刻まれた銃口がちぇんを狙う。そ
の奥は暗い。ちぇんは平然とそれを見つめ返していた。
音のない世界で。
男が両手でライフルを腰溜めに構えていた。旋条を刻まれた銃口がちぇんを狙う。そ
の奥は暗い。ちぇんは平然とそれを見つめ返していた。
音のない世界で。
ドン!
トリガーが引かれた。爆音と硝煙が爆ぜる。
撃ち出される12.7mm徹甲弾。ゆっくりが喰らえば一発で消滅。人間でも身体が砕け
るレベルの銃撃だった。並の鉄板やコンクリートの壁でも耐えられない。超音速で空気
を引き裂きながら、ちぇんへと迫る。
撃ち出される12.7mm徹甲弾。ゆっくりが喰らえば一発で消滅。人間でも身体が砕け
るレベルの銃撃だった。並の鉄板やコンクリートの壁でも耐えられない。超音速で空気
を引き裂きながら、ちぇんへと迫る。
「ぬううんッ!」
ガゴッ、ガギン、ガッゴン!
ちぇんは徹甲弾を全て跳ね返した。跳弾が崖にめり込み、地面を抉り、落ちた岩を砕く。
小型の爆弾を爆発させたような破壊力。幹を砕かれた木が倒れていく。
小型の爆弾を爆発させたような破壊力。幹を砕かれた木が倒れていく。
「きさまのいじは、こんなものかあああ!」
ちぇんが咆えた。
きめら丸が着地する。
遅れて、ちぇんと男が地面に下りた。
男がライフルを頭の袋にしまう。
きめら丸が着地する。
遅れて、ちぇんと男が地面に下りた。
男がライフルを頭の袋にしまう。
「まだまだ序の口ぃ! 準備運動ぅ!」
そして、刀を三本取り出した。
南の森の小さな広場。木陰に二匹のゆっくりが座っている。
「きょうはおしいきのみがとれましたみょん」
南の森の長であるゆゆこと、副長のみょんだった。二匹の前に置かれた大きな葉っ
ぱには木の実と草が盛られている。みょんが集めてきた食事だった。
ぱには木の実と草が盛られている。みょんが集めてきた食事だった。
「こぼねー」
褒めるようにすーりすーりをするゆゆこ。
「ありがとうございますみょん」
二匹は食事に向き直り、
「こぼねー」
「それじゃ、いただきますみょ――」
「それじゃ、いただきますみょ――」
木の枝が舞った。木の葉が散る。土煙が烈風とともに吹き抜けた。
木々の間を突っ切り、一人の人間が姿を現わす。頭に罪と書かれた袋をかぶり、パ
ンツ一丁のがっしりした男だった。両手に二本の刀を持ち、袋の上から口に一本の刀
を咥えている。白刃が日の光を受けてきらめいた。
両腕を胸の前で交差させ、男が身体を傾ける。
木々の間を突っ切り、一人の人間が姿を現わす。頭に罪と書かれた袋をかぶり、パ
ンツ一丁のがっしりした男だった。両手に二本の刀を持ち、袋の上から口に一本の刀
を咥えている。白刃が日の光を受けてきらめいた。
両腕を胸の前で交差させ、男が身体を傾ける。
「三刀流――」
「あー。みょんくん、ちょっとはくろうけんをかりるよ」
「みょ?」
「あー。みょんくん、ちょっとはくろうけんをかりるよ」
「みょ?」
振り向いた先に一匹のちぇんがいた。声の渋いちぇん。
みょんの返事も聞かず、ちぇんはリボンに刺さったはくろうけんを抜き取った。二十セ
ンチくらいの木の棒。森で拾った堅い木の枝を加工したものだった。
みょんの返事も聞かず、ちぇんはリボンに刺さったはくろうけんを抜き取った。二十セ
ンチくらいの木の棒。森で拾った堅い木の枝を加工したものだった。
「鬼斬り」
空気が割れる。
走る男と、跳ぶちぇん。
走る男と、跳ぶちぇん。
ギィン!
振り抜かれる三刀を、ちぇんが枝で弾き返した。
「みょおおおん!」
振り抜かれる三本の鋼と、それを弾く木の枝にみょんは悲鳴を上げた。はくろうけん
は堅いが、ただの木である。鋼鉄とぶつければ結果は容易に想像が付く。
は堅いが、ただの木である。鋼鉄とぶつければ結果は容易に想像が付く。
「かえしてみょん、かえしてみょん! みょんのはくろうけん、かえしてみょん! らんぼ
うにあつかっちゃだめみょん、おれちゃうみょん!」
うにあつかっちゃだめみょん、おれちゃうみょん!」
ぴょんぴょんと跳ねながら、みょんは泣いていた。良い具合の木と良い具合の出来。
大事なはくろうけんである。それを失うわけにはいかない。
男は刀を背負うように構え。
大事なはくろうけんである。それを失うわけにはいかない。
男は刀を背負うように構え。
「虎狩り!」
振り抜かれる三刀を、ちぇんは枝で打ち払う。
真剣の一閃を捌き、何故かはくろうけんは無事だった。
男は止まらない。
真剣の一閃を捌き、何故かはくろうけんは無事だった。
男は止まらない。
「牛針!」
突きだされる刃を、ちぇんは舞うように枝を動かし捌き切った。裂帛の気合いとともに
突きだされる切先を枝で弾き、刃の側面を叩き、枝の腹で刃先を受け流す。
突きだされる切先を枝で弾き、刃の側面を叩き、枝の腹で刃先を受け流す。
「みょ、みょん……」
目の前で行われた想像を超えた剣戟に、みょんは動けない。
一度距離を取るちぇんと男。
一度距離を取るちぇんと男。
「いやあ、ゆゆこくん。ひさしぶり。げんきそうでなにより」
「こぼね……」
「こぼね……」
隣に下りたちぇんを、ゆゆこが冷や汗混じりに見つめる。
顔を合わせた機会はそう多くないものの、ゆゆこはちぇんの事を知っていた。子ゆっく
りだった頃から、よくからわれている。今でも苦手なゆっくりの一匹だ。
葉っぱの上に乗った草や木の実を見つめるちぇん。
顔を合わせた機会はそう多くないものの、ゆゆこはちぇんの事を知っていた。子ゆっく
りだった頃から、よくからわれている。今でも苦手なゆっくりの一匹だ。
葉っぱの上に乗った草や木の実を見つめるちぇん。
「おいしそうなごはんだねー。おひるごはんかい? わかるよー。ちぇんはあさからなに
もたべていないから、こばらがすいている。すこし、いただくよ?」
「こぼねぇぇぇ!」
もたべていないから、こばらがすいている。すこし、いただくよ?」
「こぼねぇぇぇ!」
ゆゆこが悲鳴を上げた時には、既にちぇんが食べ終わっている。少しどころでない。
というか何も残っていない。一口でお皿の葉っぱごと丸呑みだった。
腹ごしらえをすまし、ちぇんが男に向き直る。
というか何も残っていない。一口でお皿の葉っぱごと丸呑みだった。
腹ごしらえをすまし、ちぇんが男に向き直る。
「ううおおおおおおお!」
男が咆える。
広場を走る衝撃。物理的な圧力を感じるほどの気迫が、男の身体から迸った。頭が
みっつに増え、腕が六本に増える。気迫に作られた実体ある錯覚。
広場を走る衝撃。物理的な圧力を感じるほどの気迫が、男の身体から迸った。頭が
みっつに増え、腕が六本に増える。気迫に作られた実体ある錯覚。
「鬼気九刀流!」
三面六手の鬼となり、男は九本の刀を構える。
「おわびといってはなんだが、トマトをあげよう。とってもあかいよ」
「こぼね!」
「こぼね!」
ちぇんが尻尾で帽子からトマトを取り出した。赤くみずみずしいトマトだ。たった今畑
から取ってきたような、そんな新鮮さである。
から取ってきたような、そんな新鮮さである。
「ほい」
ちぇんは男に向かって、トマトを放り投げた。
シュッ。
閃く刃が、トマトを八つに切り分ける。
そこにゆゆこの舌が伸びた。ゆゆこ種の中には舌を数メートル伸ばせる者がいる。こ
のゆゆこもそのタイプだった。ピンク色の舌が空中に散ったトマトを捕らえた。触手のよ
うにうねりながら赤い実を捕らえ、一瞬で縮み口へと収める。
赤く輝きながらゆゆこを見つめるちぇん。
そこにゆゆこの舌が伸びた。ゆゆこ種の中には舌を数メートル伸ばせる者がいる。こ
のゆゆこもそのタイプだった。ピンク色の舌が空中に散ったトマトを捕らえた。触手のよ
うにうねりながら赤い実を捕らえ、一瞬で縮み口へと収める。
赤く輝きながらゆゆこを見つめるちぇん。
「うまいか。トマトが、うまいのか?」
「こぼねー!」
「こぼねー!」
元気な返事。
男が地面を蹴った。
男が地面を蹴った。
「阿修羅・弌霧銀!」
「ぬぅん」
「ぬぅん」
ちぇんが跳び上がり、枝を振り抜く。
一瞬暗くなる広場。
一瞬暗くなる広場。
キン……。
軋む音を響かせ、火花が散った。鍛え上げられ研ぎ澄まされた鋼鉄の刃。それを何
故か受け止める木の枝。地面に下りたちぇんと、刀を振り抜いた男。
舞い上がった木の葉が落ちる。
故か受け止める木の枝。地面に下りたちぇんと、刀を振り抜いた男。
舞い上がった木の葉が落ちる。
「なかなかいいたちすじだ」
枝の先端を動かし、とちぇんが振り向く。
「だがしぁし、このちぇぇんをたおすのはひゃくねんはやい! ついてこい!」
真後ろへと跳んだ。
刀を頭の袋にしまい、男が後を追って跳び上がる。
刀を頭の袋にしまい、男が後を追って跳び上がる。
「苦難上等。好むものなり修羅の道!」
音もなく。
飛んできたはくろうけんが、地面に刺さった。
森の木々がざわめき、風が唸る。鳥の飛び立つ羽尾が聞こえた。まるで一陣の突風
のように。もう男の姿もちぇんの姿もない。地面にははくろうけんが刺さっている。
後に残ったのは動けなくなったみょんと、トマトを咀嚼しているゆゆこだけだった。
飛んできたはくろうけんが、地面に刺さった。
森の木々がざわめき、風が唸る。鳥の飛び立つ羽尾が聞こえた。まるで一陣の突風
のように。もう男の姿もちぇんの姿もない。地面にははくろうけんが刺さっている。
後に残ったのは動けなくなったみょんと、トマトを咀嚼しているゆゆこだけだった。
ちぇんと男が空を飛ぶ。
木々の梢を蹴りながら、森の上を移動していた。
木々の梢を蹴りながら、森の上を移動していた。
「お前が壁となって俺の前に立ち塞がるなら、いつだって……風穴開けて突き破る!」
男が両手を左右に広げ、斜め上に掲げた。両手の手を平を真下に向け、片足を持ち
上げ身体を捻る。そこから勢いよく身体を回転させた。
まるで小さな竜巻のように。白い渦と化して跳ぶ。
上げ身体を捻る。そこから勢いよく身体を回転させた。
まるで小さな竜巻のように。白い渦と化して跳ぶ。
「超級覇王電影弾!」
「きさまのからだに、かざあなをあけてやる。おもうぞんぶん、あじわうがいい!」
「きさまのからだに、かざあなをあけてやる。おもうぞんぶん、あじわうがいい!」
ちぇんの尻尾が伸びた。猫のような黒い尻尾。それが数十メートルもの黒い紐となっ
て身体に巻き付く。周囲の風を巻き込み唸る、竜巻のような尻尾の螺旋。そこから円
錐形の巨大なドリルが形成された。
て身体に巻き付く。周囲の風を巻き込み唸る、竜巻のような尻尾の螺旋。そこから円
錐形の巨大なドリルが形成された。
「おうぎ・むそうらせんはんてん!」
ふたつの渦がぶつかり合う。
東の森を大きなゆっくりが歩いていた。
東の森の長であるドスまりさである。日課の見回りの最中だった。
東の森の長であるドスまりさである。日課の見回りの最中だった。
「きょうもいじょうなーし」
その笑顔は次の瞬間凍り付いた。
「うおおおおおおおお!」
「ふううううううんっ!」
「ふううううううんっ!」
ガゴゴゴゴ!
上空を飛ぶふたつの渦。岩が削りあうような音を響かせ、火花を散らしている。何が
起っているのか、一目では分からなかった。じっくり眺めても分からないだろうが。台
風のように突風が荒れ狂い、土埃と木の葉を空へと舞い上げた。
起っているのか、一目では分からなかった。じっくり眺めても分からないだろうが。台
風のように突風が荒れ狂い、土埃と木の葉を空へと舞い上げた。
「………」
大口を開けて動けなくなるドス。
ガキン!
ふたつの渦が弾かれるように離れた。
そのひとつがドスに向かってくる。白い円錐の上に乗っかったちぇん。一度見れば忘
れないような容姿だが、見覚えはない。黒塗りのような瞳がドスを見据えている。
そのひとつがドスに向かってくる。白い円錐の上に乗っかったちぇん。一度見れば忘
れないような容姿だが、見覚えはない。黒塗りのような瞳がドスを見据えている。
「いやああああ! こっちこないでええええ!」
お下げを振りながら、ドスは叫んだ。
「ハワユー、ドスゥ? アァイム、ゆかりズファーザー。あー、キミとあうのははじめてだ
ったかな? おはつにしてさっそくだが、アレをやるぞ!」
ったかな? おはつにしてさっそくだが、アレをやるぞ!」
ドスの頭上に移動するちぇん。
「アレってなにいいい!? しらないよおおお!」
「きまってるだろう? がったいだ!」
「きまってるだろう? がったいだ!」
ちぇんがドスの頭に突き刺さった。帽子が吹っ飛ばされ落ちる。
そして足が爆発し、巨大な胴が生えた。
全長二十メートルほどの胴付ドスまりさ。周囲の木々の三倍はある巨大な体躯。帽
子の無い頭の上に、ちぇんがちょこんと乗っている。ちぇんのエネルギーがドスの身体
を一時的に組み替えていた。その身体はまちょりーのように雄々しく逞しい。
そして足が爆発し、巨大な胴が生えた。
全長二十メートルほどの胴付ドスまりさ。周囲の木々の三倍はある巨大な体躯。帽
子の無い頭の上に、ちぇんがちょこんと乗っている。ちぇんのエネルギーがドスの身体
を一時的に組み替えていた。その身体はまちょりーのように雄々しく逞しい。
「これどおなっでるのおおおお!?」
叫ぶが、意味がない。
杉の木の梢に佇む男が、頭上に右手を掲げる。手の平が、白く輝く。
杉の木の梢に佇む男が、頭上に右手を掲げる。手の平が、白く輝く。
「俺のこの手が真っ赤に燃える! ゆかりん掴めと轟き叫ぶ!」
「いくぞ! じくうれつだん」
「いくぞ! じくうれつだん」
ドスが右腕を後ろに引いた。ドスの意志ではない。そもそも胴が生えた事がないの
で、胴体の動かし方は知らない。今はちぇんが勝手に動かしているようだった。
で、胴体の動かし方は知らない。今はちぇんが勝手に動かしているようだった。
「ばーすとすぴにんぐ、ぱぁんち!」
「衝撃のファーストブリットォ!」
「衝撃のファーストブリットォ!」
ドン!
「ああ……」
ドスの涙が散る。
ふたつの拳がぶつかりあい、砕けたのはドスだった。指が千切れ、皮が裂ける。黒
い餡子が四散した。それだけでは終わらない。終わってくれない。
輝く男の拳がドスの腕を縦に引き裂いた。肩までばらばらに砕ける巨大な腕。
ふたつの拳がぶつかりあい、砕けたのはドスだった。指が千切れ、皮が裂ける。黒
い餡子が四散した。それだけでは終わらない。終わってくれない。
輝く男の拳がドスの腕を縦に引き裂いた。肩までばらばらに砕ける巨大な腕。
「あああ……」
痛みが無いのは幸いだっただろう。
男がドスの肩を蹴る。
ドスの頭の上で、ちぇんが不敵に笑った。
男がドスの肩を蹴る。
ドスの頭の上で、ちぇんが不敵に笑った。
「撃滅のセカンドブリットォ!」
振り上げた拳がちぇんを捕らえ、殴り飛ばす。拳の勢いでドスの頭からちぇんが引っ
こ抜け、回転しながら空高く飛んでいった。引き千切られた黄色い髪の毛。伸びていた
ちぇんの尻尾が元に戻る。
こ抜け、回転しながら空高く飛んでいった。引き千切られた黄色い髪の毛。伸びていた
ちぇんの尻尾が元に戻る。
「なにこれええ! わからないよおおお!」
身体が引っ込み、支えを失ったドスが涙と共に落ちていった。
何もない空中を蹴って、男が上空のちぇんを追い掛ける。まるで空を飛んでいるよう
な動きだ。人間は生身で空を飛べない。そんな常識をあっさりと踏み越え。
何もない空中を蹴って、男が上空のちぇんを追い掛ける。まるで空を飛んでいるよう
な動きだ。人間は生身で空を飛べない。そんな常識をあっさりと踏み越え。
「抹殺のラストブリットォォォ!」
振り抜かれた拳が、ちぇんを吹っ飛ばした。
再び空中を蹴ってちぇんを追い掛けどこかに消える男。
再び空中を蹴ってちぇんを追い掛けどこかに消える男。
「ドスはおそらをとんでるよぉぉ……」
涙を散らしながらドスは落ちていく。地上二十メートルほどからの自由落下。それに
耐えられるゆっくりは少ない。頑丈なもこうやてんこ、柔らかいゆかりくらいだろう。ドス
では無理だ。よくて致命傷である。
耐えられるゆっくりは少ない。頑丈なもこうやてんこ、柔らかいゆかりくらいだろう。ドス
では無理だ。よくて致命傷である。
(ごめんね。みんなごめんね。さきにえいえんにゆっくりしちゃうけど、ドスがいなくなっ
てもみんななかよくしてね……)
てもみんななかよくしてね……)
緩慢な時間の中でドスは群れの仲間に別れの挨拶を言った。
だが。
だが。
「どうも」
きめら丸が、ドスの目に入る。
鳥のような翼を広げ、空を飛んでいた。
鳥のような翼を広げ、空を飛んでいた。
「きもくてはやい、きめらまるです」
「とらんすふぉーむ・きょだいふうせんっ!」
「とらんすふぉーむ・きょだいふうせんっ!」
気球のように膨らんだ北の長のゆかりが、ドスを受け止めた。
「んー。きょうもいいてんきだぞー」
日当たりのいい草地で一匹のらんが微睡んでいた。西の群れの長であり、ゆかりの
弟子である。肌に触れる心地よい午後の日差し。
ふと見上げた空に、黒い点が映った。
弟子である。肌に触れる心地よい午後の日差し。
ふと見上げた空に、黒い点が映った。
「ん?」
それは迷わずらんのいる方向へと飛んでくる。
らんは目を剥いて、飛んでくるものを凝視した。
らんは目を剥いて、飛んでくるものを凝視した。
ドッ!
「ひぅ!」
すぐ近くに落ちる。緑色の帽子に猫耳。ちぇんだった。
草地をを五メートルほど削って横向きに突き刺さっている。どう考えても粉々になって
いる状況だが、見た限り転んだ程度の認識らしい。さとりのサードアイのような無機質な
目がらんに向けられた。半分地面に埋まっているため左目だけであるが。
草地をを五メートルほど削って横向きに突き刺さっている。どう考えても粉々になって
いる状況だが、見た限り転んだ程度の認識らしい。さとりのサードアイのような無機質な
目がらんに向けられた。半分地面に埋まっているため左目だけであるが。
「いやぁ、らんしゃま。ごきげんよう」
「………」
「………」
真っ白になるらん。
意識が身体から半分はみ出した。知っているちぇんである。いつぞや出会ったゆかり
の父だ。あれは全部夢だったとして片付けたが、夢ではないらしい。
意識が身体から半分はみ出した。知っているちぇんである。いつぞや出会ったゆかり
の父だ。あれは全部夢だったとして片付けたが、夢ではないらしい。
ドンッ!
「俺、参上!」
「………」
「………」
反対側に目を向け、らんはぴしりとひび割れる。
残りの半分の意識も身体から抜け落ちた。
こちらも見覚えのある人間だった。頭に罪と書かれた袋をかぶった、ほぼ全裸の人間。
前にうっかり捕まって色々酷い目にあった気がするが、よく覚えていない。帽子も身体も
無傷なので、多分問題は無かったのだろう。
残りの半分の意識も身体から抜け落ちた。
こちらも見覚えのある人間だった。頭に罪と書かれた袋をかぶった、ほぼ全裸の人間。
前にうっかり捕まって色々酷い目にあった気がするが、よく覚えていない。帽子も身体も
無傷なので、多分問題は無かったのだろう。
「ところで、らんしゃま」
背中をつつかれ振り向くと、ちぇんの顔が間近にあった。光の映らない黒い瞳。全てを吸
い込むような漆黒。世界を揺らすような迫力がそこにあった。
身体からこぼれ落ちたらんの意識が、一回転して元の位置に納まる。
い込むような漆黒。世界を揺らすような迫力がそこにあった。
身体からこぼれ落ちたらんの意識が、一回転して元の位置に納まる。
「らんしゃまのしっぽを、かしてほしいのだけど。いいかね?」
「はい?」
「はい?」
らんとはしてはどういう意味と聞き返したのだが。
ちぇんは肯定と受け取ったらしい。
ちぇんは肯定と受け取ったらしい。
「ではいくぞ。ついてこい、こぞう!」
「あああああああ!」
「あああああああ!」
涙で軌跡を描きながら、らんは空に落ちていった。
真上に広がる緑色の森。黒い山肌。遠くに見える灰色の街。その無効に広がる青く
白い大海原。真下にはどこまでも遠い青空と、白い雲が見える。幻想的な風景だった。
これが夢だと思うほどに。夢だったらどんなに幸せだろう。
真上に広がる緑色の森。黒い山肌。遠くに見える灰色の街。その無効に広がる青く
白い大海原。真下にはどこまでも遠い青空と、白い雲が見える。幻想的な風景だった。
これが夢だと思うほどに。夢だったらどんなに幸せだろう。
「らんはおそらをとんでるんだぞおおお!?」
涙が真上に流れていく。
上にある大地、下に広がる空。
らんは頭から無限遠の虚空へと落ちていった。
上にある大地、下に広がる空。
らんは頭から無限遠の虚空へと落ちていった。
「らんしゃまがたのしそうでなによりだ」
尻尾を動かしながら、脳天気に呟くちぇん。
あまりの事に上下の認識が逆転してのは、らんも理解していた。理解していたがどう
にもならないし、どうでもいい。ちぇんの頭に乗せられ、らんは遙か上空へと飛んでいる。
地上数百メートルへと。ちぇんの飛行原理はわからない。
あまりの事に上下の認識が逆転してのは、らんも理解していた。理解していたがどう
にもならないし、どうでもいい。ちぇんの頭に乗せられ、らんは遙か上空へと飛んでいる。
地上数百メートルへと。ちぇんの飛行原理はわからない。
「ふははは! ゆかりいいいん! 俺は……お前が、お前が……お前が好きだー!
お前が欲しいーッ! 愛してるううう、ゆかりいいん!!」
お前が欲しいーッ! 愛してるううう、ゆかりいいん!!」
男が空へと落ちてくる。
こちらも飛んでいる原理は不明だが、道具も無しにちぇんを追い掛けてきた。
こちらも飛んでいる原理は不明だが、道具も無しにちぇんを追い掛けてきた。
「そうだ。そうでなくては! ちぇぇんのむすめがほしいのなら、これくらいはやってもら
わないとこまるぞ! いけぇい、らんしゃまのしっぽ!」
わないとこまるぞ! いけぇい、らんしゃまのしっぽ!」
バシュン。
ちぇんの叫びに応え、らんの尻尾が外れた。
上下逆さまの世界。だが、この高度では向きは意味をなさない。
らんを中心に展開される九本の尻尾。白い先端を真上に向け、直角的な軌跡を描い
て自在に空を躍る。尻尾ファンネル。尻尾を飛ばして米粒を発射する、らん種の中でも
希少性の高い能力だ。当然だが、らんは使えない。
上下逆さまの世界。だが、この高度では向きは意味をなさない。
らんを中心に展開される九本の尻尾。白い先端を真上に向け、直角的な軌跡を描い
て自在に空を躍る。尻尾ファンネル。尻尾を飛ばして米粒を発射する、らん種の中でも
希少性の高い能力だ。当然だが、らんは使えない。
「わからないぞおおお!? ぜんぜんわからないぞおおお! なんでだあああ!」
「だいじょうぶだ。もんだいない」
「だいじょうぶだ。もんだいない」
らんの全力の叫びを、ちぇんは一蹴した。
炸裂音。
尻尾の先端から米粒が機関銃のように発射される。赤熱した米粒が空中に複雑な軌
跡を画いた。九本の尻尾から撃ち出される無数の米粒弾。文字通り弾幕である。空中
では体勢を変えられず、普通なら避けられない。
炸裂音。
尻尾の先端から米粒が機関銃のように発射される。赤熱した米粒が空中に複雑な軌
跡を画いた。九本の尻尾から撃ち出される無数の米粒弾。文字通り弾幕である。空中
では体勢を変えられず、普通なら避けられない。
「とりゃあ!」
空中を叩き、男が後ろに飛び米粒を躱した。
続いて右に。左に。
何もない場所を手で殴りつけ、その反動を利用して。
両足を抱いて丸くなって前に。
弾幕の隙間をくぐり抜け、男がちぇんに向かう。
そして、右手を握り締める。
続いて右に。左に。
何もない場所を手で殴りつけ、その反動を利用して。
両足を抱いて丸くなって前に。
弾幕の隙間をくぐり抜け、男がちぇんに向かう。
そして、右手を握り締める。
「飛ぶ拳撃を見たことはあるか!」
ちぇんがらんの下から抜け出し、横に移動していく。旗のようになびく二本の尻尾と髪
の毛、緑色の帽子のフリル。何もない空中を滑るように横に走る。
正確には、らんがちぇんの頭上から真横に放り投げられていた。
男が拳を突き出す。
の毛、緑色の帽子のフリル。何もない空中を滑るように横に走る。
正確には、らんがちぇんの頭上から真横に放り投げられていた。
男が拳を突き出す。
バォン!
ちぇんがひしゃげた。
見えない何かが顔面に撃ち込まれる。
さらに左の拳を振り、右の拳。左、右、左右左右。
不可視の打撃を連続で喰らい、ちぇんが青空へと落ちていく。
が。
見えない何かが顔面に撃ち込まれる。
さらに左の拳を振り、右の拳。左、右、左右左右。
不可視の打撃を連続で喰らい、ちぇんが青空へと落ちていく。
が。
「ちぇぇぇぇんすぱぁぁぁぁく!」
ちぇんの口から放たれた光が、男を一文字に薙ぎ払った。太陽よりも白く熱く輝く破
壊の閃光。爆発とともに、男が真上の地面に向かって跳び上がっていく。
そこへ撃ち込まれる尻尾ファンネルによる一斉射撃。
壊の閃光。爆発とともに、男が真上の地面に向かって跳び上がっていく。
そこへ撃ち込まれる尻尾ファンネルによる一斉射撃。
「まだだ。まだ終わらんよ」
しかし、男は空中を蹴って縦に一回転。見えない蹴りがちぇんを吹っ飛ばした。
ちぇんと男が、空へと落ちていく。
ちぇんと男が、空へと落ちていく。
「あ」
ではない。
ちぇんの頭から離れた事で、らんが地面に落ちていた。逆さまだった上下の認識が
正常に戻る。引力に引かれ、らんは物凄い速度で地上に向かっていた。飛べないらん
では、抗うこともできない。
ちぇんの頭から離れた事で、らんが地面に落ちていた。逆さまだった上下の認識が
正常に戻る。引力に引かれ、らんは物凄い速度で地上に向かっていた。飛べないらん
では、抗うこともできない。
「いやああああ! おちるうううううう!」
「どうもー」
「とらんすふぉーむ・とくだいしーとっ!」
「どうもー」
「とらんすふぉーむ・とくだいしーとっ!」
目の前に大きな四角形が広がった。
大きく翼を広げ、空を飛ぶ四つ足の獣。鳥のような翼できめら丸が空を走っていた。
その背に乗っているのはゆかりと、助けられたらんである。
その背に乗っているのはゆかりと、助けられたらんである。
「あんぜんあんしん、ちょうこうそく。まいどおなじみきめぇまる、あらためきめらまるで
りばりーさーびすです。あと、ごあんしんください、らんさん。こんかいのうんそうりょう
は、ぜんぶさーびすですよ」
「なんですかあれ! なんですかあれ! なんですかあれえええ!?」
「ゆかりんにきかないで……」
りばりーさーびすです。あと、ごあんしんください、らんさん。こんかいのうんそうりょう
は、ぜんぶさーびすですよ」
「なんですかあれ! なんですかあれ! なんですかあれえええ!?」
「ゆかりんにきかないで……」
マイペースなきめら丸、泣きながら質問するらんと、諦めムードのゆかり。
いつの間にか尻尾はらんの元に戻っていた。
いつの間にか尻尾はらんの元に戻っていた。
「ちぇぇんすぱぁぁく! すぱぁぁく! すぱぁぁくぅ!」
空を裂く閃光の連打。
青い空を背景に白い線が空中に引かれる。爆風を伴った熱線と飛び散る光の粒子。
規模は小さいもののドススパークとは比べものにならない破壊力。高熱に晒され瞬間
的に膨張した空気が、雷鳴のような轟きを上げる。
青い空を背景に白い線が空中に引かれる。爆風を伴った熱線と飛び散る光の粒子。
規模は小さいもののドススパークとは比べものにならない破壊力。高熱に晒され瞬間
的に膨張した空気が、雷鳴のような轟きを上げる。
「なんのこれしき。あたらなければ、どうということはない!」
男は空中を蹴り、弾き、身を翻し、スパークを躱していく。
右へ。左へ。上へ。下へ。
時折上下逆さまになり。
避けられないスパークは殴って軌道を変える。
右へ。左へ。上へ。下へ。
時折上下逆さまになり。
避けられないスパークは殴って軌道を変える。
「オラオラオラオラ!」
拳の連打と、飛翔する打撃。
超音速で空を殴り衝撃波を飛ばす。人智を越えた力と技術のなせる技だ。その威力
は徹甲弾をも上回っている。残像を残して動く腕が機関砲のような連射を見せた。
目に見えない打撃。
超音速で空を殴り衝撃波を飛ばす。人智を越えた力と技術のなせる技だ。その威力
は徹甲弾をも上回っている。残像を残して動く腕が機関砲のような連射を見せた。
目に見えない打撃。
「ぬるいわ!」
それを見切り、ちぇんは躍るように躱していく。
跳ねて回って、沈んで浮いて。
生身で行われる空中戦。まき散らされる閃光と衝撃の弾幕。
跳ねて回って、沈んで浮いて。
生身で行われる空中戦。まき散らされる閃光と衝撃の弾幕。
「しゃくねつのばーんすとらいくぅ!」
「三百煩悩攻城砲!」
「三百煩悩攻城砲!」
閃光と衝撃がぶつかり、周囲に白い輪を作り出す。
きめら丸の背に乗ったゆかりとらんが見守る中、ちぇんと男は空を舞いながら互いに
打ち合い避けあっていた。飛んでいる原理も弾幕の仕組みも置き去りにして。
きめら丸の背に乗ったゆかりとらんが見守る中、ちぇんと男は空を舞いながら互いに
打ち合い避けあっていた。飛んでいる原理も弾幕の仕組みも置き去りにして。
「おまえはぁ!」
ちぇんが咆える。
「おまえは、ゆかりがすきなのか? ちぇぇんのむすめがすきなのかああ! すきなのか
あああ! あいしているというのかああああ!」
あああ! あいしているというのかああああ!」
大きく開かれた口に光の粒子が集まり、爆音と共に撃ち出される。薄い稲妻を纏った
閃光の渦が、空を切り裂き、男へと伸びる。
男がきめら丸の背に乗るゆかりに目を向けた。
一瞬目が合い、ゆかりが慌てて目を逸らす。
閃光の渦が、空を切り裂き、男へと伸びる。
男がきめら丸の背に乗るゆかりに目を向けた。
一瞬目が合い、ゆかりが慌てて目を逸らす。
「そうだ。どうせ聞こえるんなら聞かせてやるさ。ゆかりん! 好きだぁぁー! ゆかりん、
愛してるんだー! この森で出会う前から、好きだったんだ!」
愛してるんだー! この森で出会う前から、好きだったんだ!」
森全体に届くような大音声。
素足で空気そのものを蹴り抜き、男がちぇん目掛けて飛んだ。
迫り来る閃光に向け、左手を振り抜く。拳が光の奔流を引き裂いた。幾筋にも別れ、
白い粒子となってスパークが空に散る。
素足で空気そのものを蹴り抜き、男がちぇん目掛けて飛んだ。
迫り来る閃光に向け、左手を振り抜く。拳が光の奔流を引き裂いた。幾筋にも別れ、
白い粒子となってスパークが空に散る。
「好きなんてもんじゃない! ゆかりんのことはもっと知りたいんだ! ゆかりんのこと
はぜーんぶ知っておきたい! ゆかりんを抱きしめたいんだァ!」
はぜーんぶ知っておきたい! ゆかりんを抱きしめたいんだァ!」
男は罪と書かれた袋の上から顔に右手を当てた。
罪という字が、愛という字に変わる。
スパークを切り裂き、男は右手を引き絞った。手を伸ばせば届く距離。目の前まで迫
ったちぇんに狙いを定め、腕を思い切り振り抜く。
罪という字が、愛という字に変わる。
スパークを切り裂き、男は右手を引き絞った。手を伸ばせば届く距離。目の前まで迫
ったちぇんに狙いを定め、腕を思い切り振り抜く。
「ゆかりん、結婚してくれええ!」
「ふぅむ」
「ふぅむ」
拳が。
ちぇんの顔にめり込んだ。
が。
ちぇんの顔にめり込んだ。
が。
「ならばよし!」
殴られたまま、ちぇんが男の顔面に体当たりをした。
今までとは比較にならない勢いで。
今までとは比較にならない勢いで。
「ぬううううううん!」
自由落下を数倍に上回る速度で、男がちぇん諸共地上へと向かう。遠く離れていた
緑色の大地が瞬く間に近付いていった。流れる風にちぇんの尻尾がはためく。
緑色の大地が瞬く間に近付いていった。流れる風にちぇんの尻尾がはためく。
ドンッ!
土砂をぶちまけ、ちぇんと男が地面に激突する。
隕石が衝突したようなクレーターが、そこに作られていた。雨のように降り注ぐ土砂。
周りに生えていた木が何本か、外に向かってなぎ倒されている。生身の人間なら跡形
もないだろう破壊力に、男は穴の中心で意識を失っているだけだった。
クレーターの縁に下りるちぇん。
尻尾でずれた帽子を直してから、気絶した男に向き直り、ぺこりと頭を下げる。
隕石が衝突したようなクレーターが、そこに作られていた。雨のように降り注ぐ土砂。
周りに生えていた木が何本か、外に向かってなぎ倒されている。生身の人間なら跡形
もないだろう破壊力に、男は穴の中心で意識を失っているだけだった。
クレーターの縁に下りるちぇん。
尻尾でずれた帽子を直してから、気絶した男に向き直り、ぺこりと頭を下げる。
「しかし、こんかいはおひきとりください」
あとがき
空を飛ぶ原理はONE PIECEの月歩的なものです。あと、気合いと愛です。
空を飛ぶ原理はONE PIECEの月歩的なものです。あと、気合いと愛です。
過去SS
anko4158 お帽子さん、外れてね
anko4147 ぐんまりさ迷子になる
anko4144 いたさなえ
anko4128 ちぇん CV:若本規夫
anko4109 ゆっくり・ボール・ラン 2nd STAGE
anko4108 ぱちゅりーの居場所
anko4104 続・どMとどS
anko4090 BGM 天国と地獄
anko4086 HENTAI ありす
以下略
anko4158 お帽子さん、外れてね
anko4147 ぐんまりさ迷子になる
anko4144 いたさなえ
anko4128 ちぇん CV:若本規夫
anko4109 ゆっくり・ボール・ラン 2nd STAGE
anko4108 ぱちゅりーの居場所
anko4104 続・どMとどS
anko4090 BGM 天国と地獄
anko4086 HENTAI ありす
以下略
挿絵: