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anko1854 存亡を賭けた戦い(後篇)
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ankoss
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『存亡を賭けた戦い(後篇)』
D.O
群れは滅亡の危機に瀕していた。
れみりゃの襲撃以前から比較すれば、成体ゆっくりで20分の1、
子ゆっくり・赤ゆっくりまで合わせれば50分の1まで個体数を減らしていたのである。
だが、未だ群れはその結束を失ってはいなかった。
ゆっくりプレイスから脱走したり、無力な幹部を罵倒するゆっくりは一匹も出てこなかった。
と、言うか、群れのゆっくり達はすっかりれみりゃに怯えていたので、
下手に群れから脱走したりして、孤立するのが怖くてしょうがなかっただけであったのだが。
「むきゅぅぅううう!!みんな、これからは、ぱちぇがむれのしきをとるわ!!みんな、まけちゃだめよ!!」
しかし、理由はどうあれ群れは原型を保っており、活力も失われていなかった。
それに、諦めの悪い者も、まだまだ多く生存していたのである。
新たに長に就任した若きぱちゅりー。
無論、群れ内では有能な部類ではあったが、知識や功績ならばもっと上がいた。
だが、幹部の投票では全員一致の結果で、このぱちゅりーが長に担ぎあげられたのである。
「むきゅっ!あきらめたら、このむれはぜんめつよ!
みんな、ぱちぇたちには、もうたたかうか、しぬか、それしかのこされてないのよ!!」
「ゆ、ゆぅぅ。まりさしにだぐないぃぃ。」
「しになさい!!」
「ゆ、ゆぇぇえええ!?」
「れみりゃとたたかえば、あなたたちのおおくはしぬわ!
しぬために、せんしはそんざいするのよ!
だけど、れみりゃをたおせば、ゆっくりぷれいすはえいえんなのよ!!
つまり―――あなたたちもえいえんなのよ!!」
「「「ゆ?ゆ・・・ゆっくりりかいしたよ!!」」」
ぱちゅりーが長に推薦された理由は、たった一つ。
このぱちゅりーが群れ一番の積極戦論者だったからである。
「でも、れみりゃはこわいよぉ・・・」
「むきゅっ!ぱちぇにかんがえがあるわ!」
問題は、やる気だけではどうしようもない戦力差であった。
だが、ぱちゅりーも無策で長を引き受けたわけではない。
「『わな』をつかったのは、しっぱいだったわ・・・くやしいけど、れみりゃに『わな』はきかないのよ。
どうしてかは、ぱちぇにもわからないけど・・・むきゅ。」
「ゆーん。わからないよー。」
群れのゆっくり達は、前回のれみりゃ撃退失敗から、大事な教訓を手にしていた。
れみりゃに罠や堀、柵などは効かないという教訓を。
その理由が、れみりゃが空を飛んでいるから、という事までは理解できていなかったが。
「だから、しょうめんからたたかいをいどむのよ!むきゅん!!」
「で、でも、みょんたちじゃかてないみょん!?」
「だから・・・『これ』をつかうのよ。」
長ぱちゅりーはそう言うと、お帽子から一冊の本を取り出した。
「「「お、おさ!?これって・・・」」」
「そう・・・『まどうしょ』よ。」
このゆっくりプレイスには、太古の昔(ゆっくり視点)から伝わる数冊の書物が、
雨風から守られた洞窟の奥に厳重に保管されていた。
それが『まどうしょ』と呼ばれている物である。
もちろん、どう逆立ちしてもゆっくりにそんなものが作れるはずは無く、
実際は、相当昔に人間が捨てていった本やら雑誌なのであったが。
そして、群れのぱちゅりー種達の仕事の一つに『まどうしょ』の管理と解読があった。
代々の長ぱちゅりー達も、『まどうしょ』から得た知識を生かして群れの拡大や防衛を行ってきたのである。
ちなみに、先々代の長が対れみりゃ対策に使った堀・柵等の工事技術は、
『月刊ゆ虐7月号:ゆっくり牧場の作り方特集号』から得た知識が元になっている。
また、先代の長が考案した罠の数々も、
『週刊ゆ虐8月号:野生のゆっくりを捕まえよう!』の挿絵を元に考えられたものであった。
そして、現長ぱちゅりーが取り出した『まどうしょ』は・・・
ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!
「むきゅっ!れつがみだれてるわ!もういちど!!」
ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!
「むきゅっ!そうよ!ひとりひとりじゃ、れみりゃにはかてないわ!だから、みんなでひとつになるのよ!
ひとりじゃよわいれいむでも、たくさんあつまれば、どすにもかてるわ!・・・たぶんかてるわ!」
「「「ゆっくりりかいしたよっ!!」」」
長ぱちゅりーが群れのゆっくり達に提案した戦術は、集団戦法であった。
横一列に30匹のゆっくりがずらりと並び、その横列を何層にも重ねて巨大な方形の陣形を作る。
陣形を作るゆっくり全員が、先を尖らせた木の枝を構えると、巨大なハリネズミのようになる。
あとは、その陣形を保ったまま、ひと固まりとなってれみりゃに突進するのだ。
長ぱちゅりーはこの戦法を『ふぁらんくす』と名付けた。
『まどうしょ』・・・『週刊ゆ虐10月号:ゆ虐マスゲームの全て』の挿絵に書かれていた言葉から取った名前である。
「みんな!これなら、れみりゃをきっとたおすことができるわ!ぱちぇといっしょに、さいごまでたたかってね!むきゅっ!」
「「「ゆっくりしていってね!!」」」
そして、厳しい訓練の末『ふぁらんくす』の完成を見届けると、長ぱちゅりーは訓練の続きを幹部にまかせ、
幹部達にすら秘密のもう一つの策を準備するため、一匹で森の奥へと向かっていったのだった。
長ぱちゅりーの向かった先は、ゆっくりプレイス内でも空気のよどんだ薄暗い場所の洞窟。
中に住んでいるのは、ゲス・・・とまでは言えないものの、
群れののどかな雰囲気になじめず離れて住むことを選んだ、いわゆる『はみ出し者』達である。
「むきゅう。とってもなつかしいかんじがするわ。」
そしてここは長ぱちゅりーが、幼少時代を過ごした場所でもあった。
ぱちゅりーが長に選ばれた理由である好戦性は、しかし平和な日常では『喧嘩っ早い』という表現が近く、
群れのゆっくり達からはこれまで長い間疎まれていたのである。
恐らく、れみりゃ来襲という非常時でなければ、ぱちゅりーが長に推薦されることなどなかっただろう。
ぱちゅりーは、ここに住み着く『はみ出し者』達同様、群れからは浮いた存在だったのだ。
「・・・おさぱちゅりーさまさまが、なにかごようなのぜ?」
「わかるよー。しゅっせしたんだねー。ぱるぱるだよー。」
長ぱちゅりーが訪ねたのは、
かつての長ぱちゅりー同様、暴力沙汰を起こして群れから半追放状態だった不良ゆっくりコンビ、
不良まりさと不良ちぇん。
そしてこの2匹は、長ぱちゅりーの親友でもあった。
「むきゅ。あなたたちに、やってほしいしごとがあるのよ。」
「まりさたちに、なにをやらせるのぜ?だんったいこうどうは、にがてなのぜ。」
「むきゅきゅ。むずかしいおしごとよ。それに・・・むれのみんなにも、きらわれるかも。」
「それならもんだいなしだよー。とっくにきらわれてるよー。」
「じゃあ、ゆっくりおねがいするわ。むきゅ。」
この、喧嘩慣れして体力に自信があり、そして気性は荒いが信頼できる2匹こそが、長ぱちゅりーの奥の手だった。
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「うーっ!!」
「きたわ!みんな、くんれんのとおりにたたかうのよ!むきゅーん!!」
「「「ゆっくりいくよっ!いっちにー!いっちにー!」」」
そして翌日。
ついにれみりゃとの正面決戦の火ぶたが切って落とされたのであった。
ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!
『ふぁらんくす』は一昼夜の訓練によって、さらに完璧に機能した。
槍を構え、隊列を乱さずに前進する。
単純で、だからこそゆっくり達でも完成させることが出来た。
今ゆっくり達によってつくられた方陣は、横30匹、縦10列で構成された、巨大なハリネズミ。
「うー・・・うー?」
その姿は、れみりゃですら威圧されずにはいられない迫力を持つ、
一匹の巨大なドスの如き効果を発揮していた。
ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!
「うー・・・」
方陣が一歩前進するたび、れみりゃは一歩分後退する。
10歩進めば、10歩分後退する。
陣形を作るゆっくり達の表情にも、いつしかハッキリと自信が生まれ始めていた。
『殺されないかも』から、『勝てるかも』へ、そして『自分達はれみりゃより強い』へと、
その表情はふてぶてしくゆっくりとした、ゆっくり本来の姿を取り戻していったのであった。
「(むきゅ・・・これは、かてるかもしれないわ。)」
それは、決して状況を楽観視していなかった、長ぱちゅりーですら例外ではなかった。
そしてれみりゃは、そんな群れのゆっくり達に押されるように後退しながら、
やれやれ、といった風にため息をついた。
「うー・・・。うっうー。」
かぷっ。
そして、適当な大きさの小石を拾って、口にくわえたまま空を飛び、
「「「ゆゆ?」」」
方陣のど真ん中、5列目中央にいたありすの頭上に飛んでいくと、
ぽいっ。ひゅーん・・・ぐしゃ。
その小石をありすの頭上に落とし、あっさりと叩き潰して見せた。
「うー。」
『ふぁらんくす』の真上で、ニンマリと微笑むれみりゃ。
「ゆ・・・とか・・・いは・・・」
陣のど真ん中で頭を潰され、カスタードを吐きながら命尽きようとしているありす。
・・・・・・。
「「「ど、どうぢでありすがつぶれでるのぉぉおおおおお!?」」」
・・・崩壊は、潰れたありすの後列から始まった。
「ゆひぃ、ゆひぃぃいいい!?わぎゃらないよぉぉおおお!!」
潰されたありすの後列にいたちぇんは、飛び散ったカスタードの匂いによって、
れみりゃの恐怖を思い出し、真っ先に逃げ出した。
「ゆぴぃぃいいい!?ごわいぃぃいい!!」
そのちぇんの叫びが伝染し、ちぇんの左右と、ちぇんの後方にいたゆっくり達も逃げだし、
さらに後ろの騒ぎで慌てた前列のゆっくり達も散り散りに逃げ始める。
ぽゆんっ!ぽゆんっ!・・・「ゆ?」
そして、最前列のゆっくり達が異常に気付き振り返った頃には、
その後方ではすでに、『ふぁらんくす』を構成してたゆっくり達は、一列残らず逃げ散っていたのであった。
「むきゅぅぅぅ・・・やっぱりだめだったわね。」
前線全体を見渡せる大きな石の上で、長ぱちゅりーは残念そうにつぶやく。
さすがにこれまで、2度も長を失った群れの不甲斐なさを知っているので、
長ぱちゅりーもゆっくりらしい楽観的な予想はしていなかった。
というか、長になる程度の頭があれば、この平和慣れした群れを全面的に頼ろうとは思わないだろう。
ただ、できれば賭けの要素が少ない方法でれみりゃを撃退したかったのだった。
やっぱり無理だったが。
「うっうー!!」
そしてその、群れで唯一冷静さを保ち、
落胆3割、決意7割の表情を浮かべている長ぱちゅりーに、れみりゃの熱い視線が向けられる。
「(れみりゃ・・・これがさいごのたたかいよ。むきゅ!)」
「うー?うっうー!」
長ぱちゅりーの最後の戦いが始まった。
「うー!うー!」
「むきゅぅぅううう!!こっちにこないでね!ぱちぇにちかづかないでぇええ!!(棒読み)」
長ぱちゅりーは、れみりゃに追いつかれないように、
だが明らかな目的を持って走り続ける。
れみりゃは、長ぱちゅりーの狙いなど気にしないかのように、
いたぶるようにゆっくりと、その後を追いかける。
それは、長ぱちゅりーには永遠に感じられたであろうが、長い時間は続かなかった。
長ぱちゅりーは、一本の大きな古木の根元にたどり着くと、
その場で立ち止まり、古木を背にするように、れみりゃの方へとゆっくり振り返ったのである。
そこが2匹の戦い、その終着点であった。
「むきゅ・・・れみりゃ!しょうぶよ!」
「うー。」
この、れみりゃと長ぱちゅりーの対決の数時間前。
長ぱちゅりーは、不良コンビのまりさとちぇんを連れて、この古木の下にやって来ていた。
「むきゅ。しょうじきいって、れみりゃはてごわいわ。『ふぁらんくす』でもたぶん・・・。」
「そんなこといったら、まりさたちだって、ふつうにやったらかてっこないのぜ。」
「だから!ぱちぇたちでやるのよ。ここに、れみりゃをさそいこむのよ!むっきゅ!」
長ぱちゅりーの言葉を聞いて、2匹が困惑気味に顔を見合わせる。
「わ、わからないよー?」
「むきゅきゅ!もちろん、しょうめんしょうぶじゃ、かちめはないわ!」
「ますますわからないのぜ?」
「・・・ぱちぇがれみりゃといっきうちして、うごきをとめるわ。
まりさたちは、れみりゃのうしろからちかづいて、ぱちぇごとれみりゃをつきさしてね、むきゅ。」
自分を囮にしてれみりゃを必殺の間合いに引き込む。
それ自体は先代長ぱちゅりーもとった戦法だったが、今回のそれは、囮の死ぬ可能性がさらに高いものだった。
れみりゃが自分を食っている間に背後に近づけ、と言っているようなものである。
「むきゅ・・・きっと、あなたたちいがいじゃ、こわくなってにげだしちゃうわ。だから、おねがいしたいのよ。」
「わかるよー。ちゃんすはいっかいなんだねー。」
「それに、まりさたちだって、きけんはおんなじなのぜ。」
「むきゅ、それにね。おさがころされるのをほおっておいて、しかもれみりゃごと、つきころすのよ。」
「ゆぅー。へたすると、ゆっくりごろしあつかいなのぜ。」
3匹はしばし、無言になった。
・・・だが、まりさとちぇんはすぐにふてぶてしい表情を取り戻す。
「わかるよー。これもぱちぇとしりあったせいなんだねー。」
「ほかにやるゆっくりがいないんじゃ、しょうがないのぜ。いたいおもいしても、うらむんじゃないのぜ?」
「むきゅきゅ!それでこそ、ぱちぇのしんっゆうね!」
そして、3匹は2~3打ち合わせした後、ゆふふと笑いあい、解散していった。
それは命を賭けて戦おうとしているゆっくり達にしては、ひどくあっけらかんとした別れだった・・・
打ち合わせ通りにまりさとちぇんが待機していれば、長ぱちぇが背中をあずけている古木を一つの頂点とした、
れみりゃを囲む正三角形の、残りの2つの頂点にあたる木の根元に、2匹は潜んでいるはずであった。
あとは、れみりゃが長ぱちぇに襲いかかってくるように誘いをかけるだけである。
だがそこで、れみりゃが不可解な行動を取り始めた。
ごそごそごそ・・・
長ぱちゅりーが先を尖らせた木の枝を構え、戦いを挑もうという雰囲気でいるというのに、
れみりゃはそのすぐ前で、自分のお帽子をゴソゴソとあさり始めたのである。
「む、むきゅ?」
そして、れみりゃはお帽子の中から、何か布切れのような物を取り出した。
「うー。」
「むきゅぅう?・・・・・・む、むきゅ・・・!?」
死臭がした。その布切れから、ゆっくりの死臭が。
それと同時に、長ぱちゅりーは、確かに感じ取った。
その布切れから、馴染み深いゆっくりの匂いを・・・
「うっうっうー!」
「むぎゅ・・・」
困惑する長ぱちゅりーの表情を見て、れみりゃはゴキゲンそうにその目の前を飛び回る。
長ぱちゅりーがその姿に視線を向けている内、その視界に、見たくない光景が飛び込んできた。
長ぱちゅりーの斜め前方、左右に一本ずつ見える木の根元、まりさとちぇんが潜んでいるはずの場所に、
それはあった。
そこには、2匹の姿、少なくともゆっくりの形をした物は見当たらず、
そのかわり、隠そうとする気配もなく、大量の餡子とチョコレートが、辺り一面に乱雑にまき散らされていた。
長ぱちゅりーは、この場所にたどり着くのに精いっぱいで、
すぐそばを通ったはずの、木の根元の状況に気づくことができなかったのであった。
れみりゃのお帽子から取り出された布切れは、まぎれもなく、まりさとちぇんのお帽子、その破片だったのである。
れみりゃと長ぱちゅりーの対決の数時間前、
つまり長ぱちゅりーが、まりさやちぇんと、この古木の根元で打ち合わせをしていた頃、
れみりゃはその三匹の姿をすぐ近くで見ていた。
その場所とは、古木の上に作られた、捕食種のおうち。
つまり、れみりゃのおうちである。
『・・・ぱちぇがれみりゃといっきうちして、うごきをとめ・・・』
『・・・・かるよー・・・』
「うー。」
・・・れみりゃ一家は、ゆっくりプレイスのど真ん中に立っている、この古木の上に住んでいたのだ。
れみりゃは狩りの際、おうちから飛び立つと一旦ゆっくりプレイスの外に出て、
外周をぐるりと反対側に回り込んでからゆっくりプレイスに再度侵入、襲撃を行っていたのである。
ゆっくりプレイス内に住む理由は、ゆっくりプレイスの上空から群れの行動を監視しつづけるためだ。
群れが崩壊したり、脱走ゆっくりが出てきてしまったりしないように。
群れのゆっくり達が自分に危険を及ぼしそうな行動をとっていないか、見張るために。
だが、もしも群れが、ゆっくりプレイス内にれみりゃが住みついている事を気づいてしまうと、
さすがに逃げ出すゆっくりは多くなるだろう。
だからこそ、群れには自分の居場所がばれないように、工夫して襲撃していたのであった。
つまり、長ぱちゅりーに限らず、群れのゆっくりの話し合いは、全て聞かれていたのである。
これまで群れが作ってきた罠や行ってきた対策同様、すべて、準備段階から一つ残らず、把握されていたのだ。
「うー。」
まりさとちぇんは、どんな最期だったのだろうか。
それは、長ぱちゅりーにはわかりようもない。
だが、れみりゃに傷一つつけることもできず、自分達の死を長ぱちゅりーに伝える事も出来ずに死んだ無念は、
お帽子の破片から漂う怨念に満ちた死臭から、痛いほどに伝わってきたのだった。
「む・・・・むっぎゅぁぁあああああああああ」
めりっ。
・・・長ぱちゅりーの雄叫びはそこで途切れた。
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長ぱちゅりーの叫びがゆっくりプレイスに響いた時から数十分後。
ゆっくりプレイス中心近くの洞窟には、今ではほんの10匹にも満たない数にまで減らされた、赤ゆっくり達が避難していた。
先日の妊婦ゆっくり全滅以来、すっきりーをしようとするゆっくりはいなくなっていたので、数は減る一方だったのだ。
それはそうだろう。
ただでさえにんっしんすれば逃げ足が遅くなるというのに、
れみりゃは狙い撃ちするかのように、おちびちゃん達ばかりを襲ってくるのだから。
そんな訳で、この洞窟にいる母れいむのおちびちゃん達である、8匹の赤れいむ達が、
この群れに残された最後の赤ゆっくり達になっていたのだ。
「ゆぁーん。みゃみゃー、れいみゅ、きょわいよぉ。」
「れみりゃは、ゆっくちできにゃいよぉ。」
「だいじょうぶだよ、おちびちゃん。おさが、れみりゃをやっつけてくれるからね。」
だが、最近ではそんなごまかしは、赤ゆっくりにも効かなくなってしまっている。
「まりしゃおにぇーしゃんも、ありしゅおにぇーしゃんも、みんにゃたべりゃれ・・・ゆぁぁあぁあん!!」
「れいみゅ、たべられちゃくにゃいぃぃぃいい!!」
「ゆぅぅ。ゆっくりしてよぉ。ぺーろぺーろ。すーりすーり。ゆぅぅ・・・」
こうなると母れいむも、いっしょに泣きたくなる。
もはや長ぱちゅりー達が、れみりゃを倒してくれない限り、この一家に平和がやってくることはないのだから。
どんっ!どんっ!どんっ!
その時洞窟の入り口から、正確に3回、バリケードを棒で叩く音が響いた。
「ゆゆっ!?」
それは、長ぱちゅりーが決めた合図だった。
以前避難所に、先代長ぱちゅりーに変装したれみりゃが侵入して、
中にいた妊婦れいむ達が皆殺しにされた事への、反省があって決めた合図である。
本物の群れのゆっくりなら、バリケードを3回棒で叩く。
その合図がなければ、絶対洞窟から出てきちゃいけない。
と、言うことは・・・
「ゆゆっ!?おちびちゃんたち、おさがかえってきたよ!」
「ゆわーい!れみりゃはやっつけたんだにぇ!」
「ゆっくち!ゆっくちー!」
洞窟の中は、歓喜の渦に包まれた。
母れいむはさすがに、れみりゃを倒したかまでは半信半疑だったが、
少なくとも生きて帰ってきたゆっくりがいるのだ。それは、大きな成果であった。
母れいむは、大急ぎでバリケードの木の枝や石をどかし、入口を開けた。
赤れいむ達は、バリケードに隙間ができたところで、早くも我先に外に飛び出していった。
「「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」」」
「みんな、ゆっくりしていってね!!」
「うー。」
そして、洞窟かられいむ一家全員が飛び出した瞬間、
洞窟の入口を塞ぐように、れみりゃが舞い降りた。
「ど、どうぢでれみりゃがいるのぉぉおおおお!?」
「「「ゆんやぁぁあああ!!れみりゃはゆっくちできにゃいぃいいいい!?」」」
「うっうー。」
れみりゃは、群れの全てを観察し、監視し続けていたのだ。
この程度の合図は、当然把握していた。
ましてやそれが、大好物の赤ゆっくりを誘い出す手段に使えそうなのなら、なおさらである。
そしてこうなると、れいむ一家にできる事は、一つしかない。それは、
「おちびちゃぁああん!!おかーさんのおくちのなかに、はいってぇぇええ!!」
「「「ゆぴゃぁあああ!!ゆっくちはいりゅよぉおお!!」」」
母れいむが開けた口に、ぴょんぴょんと入っていく8匹の赤れいむ達。
その行動は余りにもゆっくりで、その気になればすぐに妨害できそうだったが、
れみりゃはその様子を、ニコニコと楽しげな表情で眺め続けていた。
そして8匹のおちびちゃん全員をお口に隠すと、母れいむはお口をギッと閉ざし、
れみりゃに対して必死に威嚇を始めた。
「おちびちゃんは、れいむがぜったいまもるよ!れみりゃはゆっくりしないで、どっかいってね!」
お口の中からは、自分達の安全を信じて疑わない赤れいむ達の、ゆっくりとした声が聞こえてくる。
「「「ゆぁーい!みゃみゃのおくちのなかは、ゆっくちできりゅにぇ!」」」
・・・それは、全てのゆっくりが本能的に受け継いでいる知恵、おちびちゃんを守り抜く最後の手段であった。
どすっ!
「ゆぎっ!?」
「うー。」
そして、赤れいむをお口に満載する母れいむの眉間に、太い木の枝が貫いた。
もちろん突き刺したのは、れみりゃだ。
「みゃみゃ?どうしちゃの?」
「ゆぁーん、ゆっくちしちぇよー。」
お口の中の赤れいむ達も、異変を感じて鳴きはじめるが、母れいむからは返事は無かった。
「ゆ・・・ゆびぇ・・・・・・」
「うー!」
そしてれみりゃは、母れいむが突き刺さった木の枝を口に咥えたまま、軽々と宙に浮かびあがり、
「うーっ!!」
今日の収穫、成体れいむ一匹と赤れいむ8匹を確保し、自分の可愛いおちびちゃん達が待つおうちへと帰っていったのだった。
最近では、子れみりゃ達もソフトボールサイズにまで成長した。
だから独り立ちの準備のためにも、味の悪い成体ゆっくりに舌を慣らしておかなければならないのだ。
れみりゃの大好物である赤ゆっくりは、小さいので腹を満たす量を狩るのが大変なのである。
赤れみりゃだった頃は母の狩ってくる量で十分足りていたかもしれないが、
独り立ちしてから狩りが上達するまでの期間、普段の食事は成体ゆっくりを我慢して食べることになるだろう。
と言うわけでここ数日、れみりゃ一家の食事は、主食が成体ゆっくり、デザートが赤ゆっくりとなっていた。
そんなれみりゃ達にとって、ゆっくりの『危険が迫ったらおちびちゃんを口の中に隠す』習性は、とても便利なものだった。
バラバラに逃げられると、狩るのは何かと面倒なのに、わざわざひと固まりになってその場に立ち止まっていてくれるのだから。
ぶちぶちぶち・・・
「ゆぁーん、みゃみゃー!どうしちぇおくちあけちゃうにょぉおお!?」
「ゆっくちおへんじしちぇぇええ!!みゃみゃぁぁああ!!」
そして、餡子を吸い尽くされ息絶えた母れいむのお口がこじ開けられ、
デザートである赤れいむ達は一匹づつ、優しく取り出されていった。
「やめちぇぇぇええ!!れいみゅをたべにゃいでぇぇええ!」
「れいみゅ、こんにゃにゆっくちしちぇるのにぃぃいい!!」
「かわいくっちぇ、ごめんにゃしゃいぃぃいい!!」
母れみりゃは、群れのゆっくり達の事が本当に大好きだった。
「うー!あみゃあみゃー!」
「ゆぴぃぃいいいい!!」
こんなにも狩りやすいように行動してくれて、しかも美味しく食べられてくれるなんて、なんて親切なんだろう、と・・・
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群れは今度こそ、滅亡の危機に追い落とされた。
おちびちゃんは文字通り全滅し、成体ゆっくり全てを入れても30匹にもならない。
群れの規模は、ゆっくりプレイス全盛期の1%以下にまで減少したのであった。
・・・だが、それでもなお、群れのゆっくり達は、滅び去る事を良しとしなかった。
「むきゅ・・・みんな。れみりゃをたおすために、ちからをかして・・・」
「みょぉぉん。おちびちゃんのかたきだみょおん・・・」
「ゆるさないわ・・・れみりゃ・・・」
いや、ついに本気になったと言うのが正しいかもしれない。
群れの生き残りたちは、当然と言えば当然だが、全員が親姉妹、つがいやおちびちゃん達をまとめて失っていた。
直接手を下した訳ではない相手も多かったが、れみりゃが来なければありえない犠牲であったのだ。
「むきゅぅぅぅ・・・ゆるさないわ・・・ぜったいにゆるさないわぁああ!!ふくっしゅうよぉおお!!」
「「「えい、えい、ゆーっ!!!」」」
これまでは、群れの中でも命を捨てて戦うゆっくりもいれば、戦う前から腰の引けたゆっくりもいた。
だが、事ここに至り、ついに群れの気持ちは一つになったのだ。
動機が憎悪という、ほめられた物でない代物とは言え、
自分達の全てのゆっくりを賭けて、れみりゃと対決しようという決意を共有したのだ。
群れの新しい長には、群れのぱちゅりー種で唯一の生き残りだった、一匹の若いぱちゅりーが就任した。
もし次の戦いに敗れれば、群れ最期の長になるであろう。
「むきゅ。みんな、これが、ぱちぇがまどうしょをかいどくしてつくった、『さいしゅうへいき』よ。」
「これが、『さいしゅうへいき』さん・・・」
「じかんはないわ。さっそく、くんれんをはじめるわよ!」
「「「ゆっくりりかいしたよっ!!」」」
「みんな!あのくろいいしさんを、れみりゃだとおもって『さいしゅうへいき』をなげるのよ!」
「「「ゆっくりくんれんするよ!!」」」
群れ全員が横一列に並ぶと、広場のど真ん中にあるスイカほどの大きさの黒い石めがけ、
一斉に『さいしゅうへいき』を構えた。
さいしゅうへいき・・・それは、小石にツタを結びつけただけの、シンプルな武器、
陸上競技で使われる『ハンマー』を模したような物だった。
ゆっくり達は、ツタの先端を口に咥え、上半身(ていうか下唇から上あたり)を後方に180度捻る。
後方に捻った上半身を、前方に戻すように勢いよく捻り、
その勢いを殺すことなく、あんよを滑らせるようにしてさらに全身を360度回転させた。
フォンッ!!
それは、これまでゆっくり達が聞いた事もない、空気を切り裂く音。
長ぱちゅりーは、その音に自分達の勝利する姿を見た。
そして、
「「「ゆぅぅぅううう!ゆふぅんっ!!」」」
ぶぉんっ!!・・・ドスッ!ドスドスドスッ!!
5mほど離れた場所にある黒い石に、その手作りハンマーが激しく衝突すると、いくつもの白いキズを残した。
「おさ。これなら、れみりゃにかてるみょん?」
「・・・ぱちぇはきづいたのよ。れみりゃにこれまで、かてなかったりゆうを、むきゅ。」
「それはなんなのー?」
「むきゅ・・・れみりゃはね。おそらをとんでるのよ!」
「「「ゆ・・・?・・・そ、そういえばそうだよぉおお!?」」」
長ぱちゅりーは、先代までの長の失敗から、学ぶだけの高い知性を持っていたのだ。
罠を、守りをあっさりと破られ、陣形を崩され、視界の外から襲われ続けた最大の理由、
それを長ぱちゅりーは、ついに突き止めたのである。
群れは、最期の時を迎えようとする今、ついに一匹の天才を見出すことが出来たのだった。
「むきゅっ!!だかられみりゃは、おそらからおとさないとかてないのよ!」
「「「ゆっ、ゆっくりりかいしたよっ!!」」」
「みんなっ!!ぱちぇたちは、れみりゃとたたかうぶきをてにいれたのよ!!
つぎよ・・・つぎにれみりゃがきたときが、れみりゃのさいごなのよっ!!むっきゅーんっ!!」
「「「えい、えい、ゆーっ!!えい、えい、ゆーっ!!えい、えい、ゆーっ!!」」」
それは、ある意味では限りなく正解に近い結論だった。
小石で作ったハンマーなど、一個や二個当たったところでそこらのれいむ種ですら殺せはしない。
人間なら目玉にでも当らなければかすり傷程度である。
だが、もしもそのハンマーがれみりゃの羽に当たったら・・・
れみりゃは、羽での移動に慣れているので、あんよで跳ねることが苦手だ。
もしも羽が酷く傷つけば、れいむ種やまりさ種であっても、互角以上の勝負に持ち込めるだろう。
長ぱちゅりーの生み出した武器は、自分達が考えている以上に有効な武器だった。
「おさ。この『さいしゅうへいき』さん、おなまえはなんていうの?」
「むきゅ。それじゃあ、このまどうしょにかかれているなまえをつけましょう。」
『さいしゅうへいき』・・・それは、『むろふしさん』と名付けられた。
そしてこれは、群れのゆっくり達が、ついにれみりゃに対抗する力を手に入れた瞬間であった。
なお、長ぱちゅりーの『まどうしょ』の表紙には、『週刊ゆ虐12月号:第一回ゆックリンピック開催!』と書かれていた。
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一方その頃、れみりゃ達は鼻歌交じりに荷造りをしていた。
おうちの中に蓄えた、餡子を吸った後の赤ゆっくり皮、それを天日に干して日持ちするように加工したモノを、
母れみりゃのお帽子にギュウギュウと詰め込んでいる。
これは、次の狩り場に落ち着くまでの、大事な保存食だ。
れみりゃ一家は、引越しの準備をしていた。
母れみりゃも、群れの赤ゆっくり達がついに底をついた事に、気づいていた。
同じ所で長く狩りをすれば、そういう状況になることは、捕食種にとって当たり前の事である。
そのため、れみりゃ種は年に数回引越しをして、新しい狩り場に移動し続けるのだ。
それに、潮時でもあった。
れみりゃは常に余裕で狩りを成功させていたかに見えていたが、捕食種もまた、ゆっくりなのである。
れいむ種等の獲物との差は、空が飛べる・体がやや大きい・牙を持つ・そして遥かに賢いことくらい。
実のところ、ほんの5~6匹のゆっくり達が木の枝で武装し、
パニックを起こすことなく果敢に立ち向かってくれば、れみりゃだって無傷では済まないのだ。
だから巨大な群れよりも、少数の覚悟を決めたゆっくり達の集団の方が危険だったりする。
もはやれみりゃにとって、ここの群れは魅力を失っていたのだ。
栄養たっぷりのご飯ですくすく育った子れみりゃ達は、独り立ちまではまだまだとはいえ、
宙を舞う姿はふらつく様子もなく不安は見られない。
保存食の蓄えも十分だし、この周辺は自然豊かなので、新しい群れもすぐに見つかるだろう。
「うーっ!」
「「「うっうー!!」」」
れみりゃ一家の視線の先には、吸いこまれそうなほど無限の広がりを見せる夜空が広がっていた。
そこに美しく輝く星、一つ一つが、れみりゃ一家の旅を祝福してくれるように、きらきらと煌めく。
その美しさに満足したように、うんうんと頷くと、れみりゃ一家は一斉に羽を広げ、
星の光を受けて青白く光る牙をキラキラと輝かせながら、夜空の彼方へと飛び出した。
暗闇の彼方に、かつてのここよりも、さらに豊穣なゆっくりプレイスを求めて。
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「えいえいゆーっ!」
「「「えい、えい、ゆーっ!!」」」
「れみりゃにかつのよ!むっきゅーん!」
れみりゃは去り、群れは生き残った。
長ぱちゅりーを含めて誰ひとり気づいていなかったが、群れは確かに勝利したのだった。
多くの野生動物同様、種の存続を勝利と考えるならば、これは間違いなく勝利であろう。
そして、れみりゃがいなくなれば、群れはまたすぐに増える。
それがゆっくりなのだ。
こうして半年経ち、一年経ち、群れの規模が以前と同じくらいまで大きくなった頃、れみりゃは再びやってくるだろう。
その頃には、れみりゃと戦った経験のあるゆっくりはいなくなっており、
れみりゃと戦うための方法は完全に忘れられているに違いない。
こうしてれみりゃ達は、いつまでたっても群れを安全に狩り続け、
そして森は、いつまでも豊かで、美しく、そこに住む全ての生命に対しても優しく、
そして平和でありつづけるのであった。
餡小話掲載作品
町れいむ一家の四季シリーズ→休止中につき、Wikiにてご確認あれ
anko238.txt ぱちゅりおばさんの事件簿
anko394.txt ゆっくりちるのの生態
anko970.txt ごく普通のゆっくりショップ
anko989.txt ゆっくり向けの節分
anko1042.txt みんな大好きゆレンタイン
anko1052.txt 暇つぶし
anko1061.txt 軽いイタズラ
anko1136.txt お誕生日おめでとう!
anko1149.txt ゆっくり工作セット
anko1269.txt 愛でたいお姉さん
anko1283.txt ありすの婚活
anko1363.txt 野良も色々
anko1367.txt 労働の意義
anko1374.txt
anko1379.txt ドス対処法
anko1388.txt 赤い風船に乗せて
anko1393.txt ゆっクリニックへようこそ
anko1433.txt 良好な関係
anko1451.txt 余計なお世話
anko1457.txt
anko1467.txt 奇跡の公園
anko1476.txt ゲスゆっくりは捨てられる
anko1485.txt 嘆きあきリスペクト
anko1486.txt 飼われるって幸せなこと
anko1507.txt 楽しい黄金週間
本作品
D.O
群れは滅亡の危機に瀕していた。
れみりゃの襲撃以前から比較すれば、成体ゆっくりで20分の1、
子ゆっくり・赤ゆっくりまで合わせれば50分の1まで個体数を減らしていたのである。
だが、未だ群れはその結束を失ってはいなかった。
ゆっくりプレイスから脱走したり、無力な幹部を罵倒するゆっくりは一匹も出てこなかった。
と、言うか、群れのゆっくり達はすっかりれみりゃに怯えていたので、
下手に群れから脱走したりして、孤立するのが怖くてしょうがなかっただけであったのだが。
「むきゅぅぅううう!!みんな、これからは、ぱちぇがむれのしきをとるわ!!みんな、まけちゃだめよ!!」
しかし、理由はどうあれ群れは原型を保っており、活力も失われていなかった。
それに、諦めの悪い者も、まだまだ多く生存していたのである。
新たに長に就任した若きぱちゅりー。
無論、群れ内では有能な部類ではあったが、知識や功績ならばもっと上がいた。
だが、幹部の投票では全員一致の結果で、このぱちゅりーが長に担ぎあげられたのである。
「むきゅっ!あきらめたら、このむれはぜんめつよ!
みんな、ぱちぇたちには、もうたたかうか、しぬか、それしかのこされてないのよ!!」
「ゆ、ゆぅぅ。まりさしにだぐないぃぃ。」
「しになさい!!」
「ゆ、ゆぇぇえええ!?」
「れみりゃとたたかえば、あなたたちのおおくはしぬわ!
しぬために、せんしはそんざいするのよ!
だけど、れみりゃをたおせば、ゆっくりぷれいすはえいえんなのよ!!
つまり―――あなたたちもえいえんなのよ!!」
「「「ゆ?ゆ・・・ゆっくりりかいしたよ!!」」」
ぱちゅりーが長に推薦された理由は、たった一つ。
このぱちゅりーが群れ一番の積極戦論者だったからである。
「でも、れみりゃはこわいよぉ・・・」
「むきゅっ!ぱちぇにかんがえがあるわ!」
問題は、やる気だけではどうしようもない戦力差であった。
だが、ぱちゅりーも無策で長を引き受けたわけではない。
「『わな』をつかったのは、しっぱいだったわ・・・くやしいけど、れみりゃに『わな』はきかないのよ。
どうしてかは、ぱちぇにもわからないけど・・・むきゅ。」
「ゆーん。わからないよー。」
群れのゆっくり達は、前回のれみりゃ撃退失敗から、大事な教訓を手にしていた。
れみりゃに罠や堀、柵などは効かないという教訓を。
その理由が、れみりゃが空を飛んでいるから、という事までは理解できていなかったが。
「だから、しょうめんからたたかいをいどむのよ!むきゅん!!」
「で、でも、みょんたちじゃかてないみょん!?」
「だから・・・『これ』をつかうのよ。」
長ぱちゅりーはそう言うと、お帽子から一冊の本を取り出した。
「「「お、おさ!?これって・・・」」」
「そう・・・『まどうしょ』よ。」
このゆっくりプレイスには、太古の昔(ゆっくり視点)から伝わる数冊の書物が、
雨風から守られた洞窟の奥に厳重に保管されていた。
それが『まどうしょ』と呼ばれている物である。
もちろん、どう逆立ちしてもゆっくりにそんなものが作れるはずは無く、
実際は、相当昔に人間が捨てていった本やら雑誌なのであったが。
そして、群れのぱちゅりー種達の仕事の一つに『まどうしょ』の管理と解読があった。
代々の長ぱちゅりー達も、『まどうしょ』から得た知識を生かして群れの拡大や防衛を行ってきたのである。
ちなみに、先々代の長が対れみりゃ対策に使った堀・柵等の工事技術は、
『月刊ゆ虐7月号:ゆっくり牧場の作り方特集号』から得た知識が元になっている。
また、先代の長が考案した罠の数々も、
『週刊ゆ虐8月号:野生のゆっくりを捕まえよう!』の挿絵を元に考えられたものであった。
そして、現長ぱちゅりーが取り出した『まどうしょ』は・・・
ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!
「むきゅっ!れつがみだれてるわ!もういちど!!」
ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!
「むきゅっ!そうよ!ひとりひとりじゃ、れみりゃにはかてないわ!だから、みんなでひとつになるのよ!
ひとりじゃよわいれいむでも、たくさんあつまれば、どすにもかてるわ!・・・たぶんかてるわ!」
「「「ゆっくりりかいしたよっ!!」」」
長ぱちゅりーが群れのゆっくり達に提案した戦術は、集団戦法であった。
横一列に30匹のゆっくりがずらりと並び、その横列を何層にも重ねて巨大な方形の陣形を作る。
陣形を作るゆっくり全員が、先を尖らせた木の枝を構えると、巨大なハリネズミのようになる。
あとは、その陣形を保ったまま、ひと固まりとなってれみりゃに突進するのだ。
長ぱちゅりーはこの戦法を『ふぁらんくす』と名付けた。
『まどうしょ』・・・『週刊ゆ虐10月号:ゆ虐マスゲームの全て』の挿絵に書かれていた言葉から取った名前である。
「みんな!これなら、れみりゃをきっとたおすことができるわ!ぱちぇといっしょに、さいごまでたたかってね!むきゅっ!」
「「「ゆっくりしていってね!!」」」
そして、厳しい訓練の末『ふぁらんくす』の完成を見届けると、長ぱちゅりーは訓練の続きを幹部にまかせ、
幹部達にすら秘密のもう一つの策を準備するため、一匹で森の奥へと向かっていったのだった。
長ぱちゅりーの向かった先は、ゆっくりプレイス内でも空気のよどんだ薄暗い場所の洞窟。
中に住んでいるのは、ゲス・・・とまでは言えないものの、
群れののどかな雰囲気になじめず離れて住むことを選んだ、いわゆる『はみ出し者』達である。
「むきゅう。とってもなつかしいかんじがするわ。」
そしてここは長ぱちゅりーが、幼少時代を過ごした場所でもあった。
ぱちゅりーが長に選ばれた理由である好戦性は、しかし平和な日常では『喧嘩っ早い』という表現が近く、
群れのゆっくり達からはこれまで長い間疎まれていたのである。
恐らく、れみりゃ来襲という非常時でなければ、ぱちゅりーが長に推薦されることなどなかっただろう。
ぱちゅりーは、ここに住み着く『はみ出し者』達同様、群れからは浮いた存在だったのだ。
「・・・おさぱちゅりーさまさまが、なにかごようなのぜ?」
「わかるよー。しゅっせしたんだねー。ぱるぱるだよー。」
長ぱちゅりーが訪ねたのは、
かつての長ぱちゅりー同様、暴力沙汰を起こして群れから半追放状態だった不良ゆっくりコンビ、
不良まりさと不良ちぇん。
そしてこの2匹は、長ぱちゅりーの親友でもあった。
「むきゅ。あなたたちに、やってほしいしごとがあるのよ。」
「まりさたちに、なにをやらせるのぜ?だんったいこうどうは、にがてなのぜ。」
「むきゅきゅ。むずかしいおしごとよ。それに・・・むれのみんなにも、きらわれるかも。」
「それならもんだいなしだよー。とっくにきらわれてるよー。」
「じゃあ、ゆっくりおねがいするわ。むきゅ。」
この、喧嘩慣れして体力に自信があり、そして気性は荒いが信頼できる2匹こそが、長ぱちゅりーの奥の手だった。
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「うーっ!!」
「きたわ!みんな、くんれんのとおりにたたかうのよ!むきゅーん!!」
「「「ゆっくりいくよっ!いっちにー!いっちにー!」」」
そして翌日。
ついにれみりゃとの正面決戦の火ぶたが切って落とされたのであった。
ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!
『ふぁらんくす』は一昼夜の訓練によって、さらに完璧に機能した。
槍を構え、隊列を乱さずに前進する。
単純で、だからこそゆっくり達でも完成させることが出来た。
今ゆっくり達によってつくられた方陣は、横30匹、縦10列で構成された、巨大なハリネズミ。
「うー・・・うー?」
その姿は、れみりゃですら威圧されずにはいられない迫力を持つ、
一匹の巨大なドスの如き効果を発揮していた。
ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!ぽゆんっ!
「うー・・・」
方陣が一歩前進するたび、れみりゃは一歩分後退する。
10歩進めば、10歩分後退する。
陣形を作るゆっくり達の表情にも、いつしかハッキリと自信が生まれ始めていた。
『殺されないかも』から、『勝てるかも』へ、そして『自分達はれみりゃより強い』へと、
その表情はふてぶてしくゆっくりとした、ゆっくり本来の姿を取り戻していったのであった。
「(むきゅ・・・これは、かてるかもしれないわ。)」
それは、決して状況を楽観視していなかった、長ぱちゅりーですら例外ではなかった。
そしてれみりゃは、そんな群れのゆっくり達に押されるように後退しながら、
やれやれ、といった風にため息をついた。
「うー・・・。うっうー。」
かぷっ。
そして、適当な大きさの小石を拾って、口にくわえたまま空を飛び、
「「「ゆゆ?」」」
方陣のど真ん中、5列目中央にいたありすの頭上に飛んでいくと、
ぽいっ。ひゅーん・・・ぐしゃ。
その小石をありすの頭上に落とし、あっさりと叩き潰して見せた。
「うー。」
『ふぁらんくす』の真上で、ニンマリと微笑むれみりゃ。
「ゆ・・・とか・・・いは・・・」
陣のど真ん中で頭を潰され、カスタードを吐きながら命尽きようとしているありす。
・・・・・・。
「「「ど、どうぢでありすがつぶれでるのぉぉおおおおお!?」」」
・・・崩壊は、潰れたありすの後列から始まった。
「ゆひぃ、ゆひぃぃいいい!?わぎゃらないよぉぉおおお!!」
潰されたありすの後列にいたちぇんは、飛び散ったカスタードの匂いによって、
れみりゃの恐怖を思い出し、真っ先に逃げ出した。
「ゆぴぃぃいいい!?ごわいぃぃいい!!」
そのちぇんの叫びが伝染し、ちぇんの左右と、ちぇんの後方にいたゆっくり達も逃げだし、
さらに後ろの騒ぎで慌てた前列のゆっくり達も散り散りに逃げ始める。
ぽゆんっ!ぽゆんっ!・・・「ゆ?」
そして、最前列のゆっくり達が異常に気付き振り返った頃には、
その後方ではすでに、『ふぁらんくす』を構成してたゆっくり達は、一列残らず逃げ散っていたのであった。
「むきゅぅぅぅ・・・やっぱりだめだったわね。」
前線全体を見渡せる大きな石の上で、長ぱちゅりーは残念そうにつぶやく。
さすがにこれまで、2度も長を失った群れの不甲斐なさを知っているので、
長ぱちゅりーもゆっくりらしい楽観的な予想はしていなかった。
というか、長になる程度の頭があれば、この平和慣れした群れを全面的に頼ろうとは思わないだろう。
ただ、できれば賭けの要素が少ない方法でれみりゃを撃退したかったのだった。
やっぱり無理だったが。
「うっうー!!」
そしてその、群れで唯一冷静さを保ち、
落胆3割、決意7割の表情を浮かべている長ぱちゅりーに、れみりゃの熱い視線が向けられる。
「(れみりゃ・・・これがさいごのたたかいよ。むきゅ!)」
「うー?うっうー!」
長ぱちゅりーの最後の戦いが始まった。
「うー!うー!」
「むきゅぅぅううう!!こっちにこないでね!ぱちぇにちかづかないでぇええ!!(棒読み)」
長ぱちゅりーは、れみりゃに追いつかれないように、
だが明らかな目的を持って走り続ける。
れみりゃは、長ぱちゅりーの狙いなど気にしないかのように、
いたぶるようにゆっくりと、その後を追いかける。
それは、長ぱちゅりーには永遠に感じられたであろうが、長い時間は続かなかった。
長ぱちゅりーは、一本の大きな古木の根元にたどり着くと、
その場で立ち止まり、古木を背にするように、れみりゃの方へとゆっくり振り返ったのである。
そこが2匹の戦い、その終着点であった。
「むきゅ・・・れみりゃ!しょうぶよ!」
「うー。」
この、れみりゃと長ぱちゅりーの対決の数時間前。
長ぱちゅりーは、不良コンビのまりさとちぇんを連れて、この古木の下にやって来ていた。
「むきゅ。しょうじきいって、れみりゃはてごわいわ。『ふぁらんくす』でもたぶん・・・。」
「そんなこといったら、まりさたちだって、ふつうにやったらかてっこないのぜ。」
「だから!ぱちぇたちでやるのよ。ここに、れみりゃをさそいこむのよ!むっきゅ!」
長ぱちゅりーの言葉を聞いて、2匹が困惑気味に顔を見合わせる。
「わ、わからないよー?」
「むきゅきゅ!もちろん、しょうめんしょうぶじゃ、かちめはないわ!」
「ますますわからないのぜ?」
「・・・ぱちぇがれみりゃといっきうちして、うごきをとめるわ。
まりさたちは、れみりゃのうしろからちかづいて、ぱちぇごとれみりゃをつきさしてね、むきゅ。」
自分を囮にしてれみりゃを必殺の間合いに引き込む。
それ自体は先代長ぱちゅりーもとった戦法だったが、今回のそれは、囮の死ぬ可能性がさらに高いものだった。
れみりゃが自分を食っている間に背後に近づけ、と言っているようなものである。
「むきゅ・・・きっと、あなたたちいがいじゃ、こわくなってにげだしちゃうわ。だから、おねがいしたいのよ。」
「わかるよー。ちゃんすはいっかいなんだねー。」
「それに、まりさたちだって、きけんはおんなじなのぜ。」
「むきゅ、それにね。おさがころされるのをほおっておいて、しかもれみりゃごと、つきころすのよ。」
「ゆぅー。へたすると、ゆっくりごろしあつかいなのぜ。」
3匹はしばし、無言になった。
・・・だが、まりさとちぇんはすぐにふてぶてしい表情を取り戻す。
「わかるよー。これもぱちぇとしりあったせいなんだねー。」
「ほかにやるゆっくりがいないんじゃ、しょうがないのぜ。いたいおもいしても、うらむんじゃないのぜ?」
「むきゅきゅ!それでこそ、ぱちぇのしんっゆうね!」
そして、3匹は2~3打ち合わせした後、ゆふふと笑いあい、解散していった。
それは命を賭けて戦おうとしているゆっくり達にしては、ひどくあっけらかんとした別れだった・・・
打ち合わせ通りにまりさとちぇんが待機していれば、長ぱちぇが背中をあずけている古木を一つの頂点とした、
れみりゃを囲む正三角形の、残りの2つの頂点にあたる木の根元に、2匹は潜んでいるはずであった。
あとは、れみりゃが長ぱちぇに襲いかかってくるように誘いをかけるだけである。
だがそこで、れみりゃが不可解な行動を取り始めた。
ごそごそごそ・・・
長ぱちゅりーが先を尖らせた木の枝を構え、戦いを挑もうという雰囲気でいるというのに、
れみりゃはそのすぐ前で、自分のお帽子をゴソゴソとあさり始めたのである。
「む、むきゅ?」
そして、れみりゃはお帽子の中から、何か布切れのような物を取り出した。
「うー。」
「むきゅぅう?・・・・・・む、むきゅ・・・!?」
死臭がした。その布切れから、ゆっくりの死臭が。
それと同時に、長ぱちゅりーは、確かに感じ取った。
その布切れから、馴染み深いゆっくりの匂いを・・・
「うっうっうー!」
「むぎゅ・・・」
困惑する長ぱちゅりーの表情を見て、れみりゃはゴキゲンそうにその目の前を飛び回る。
長ぱちゅりーがその姿に視線を向けている内、その視界に、見たくない光景が飛び込んできた。
長ぱちゅりーの斜め前方、左右に一本ずつ見える木の根元、まりさとちぇんが潜んでいるはずの場所に、
それはあった。
そこには、2匹の姿、少なくともゆっくりの形をした物は見当たらず、
そのかわり、隠そうとする気配もなく、大量の餡子とチョコレートが、辺り一面に乱雑にまき散らされていた。
長ぱちゅりーは、この場所にたどり着くのに精いっぱいで、
すぐそばを通ったはずの、木の根元の状況に気づくことができなかったのであった。
れみりゃのお帽子から取り出された布切れは、まぎれもなく、まりさとちぇんのお帽子、その破片だったのである。
れみりゃと長ぱちゅりーの対決の数時間前、
つまり長ぱちゅりーが、まりさやちぇんと、この古木の根元で打ち合わせをしていた頃、
れみりゃはその三匹の姿をすぐ近くで見ていた。
その場所とは、古木の上に作られた、捕食種のおうち。
つまり、れみりゃのおうちである。
『・・・ぱちぇがれみりゃといっきうちして、うごきをとめ・・・』
『・・・・かるよー・・・』
「うー。」
・・・れみりゃ一家は、ゆっくりプレイスのど真ん中に立っている、この古木の上に住んでいたのだ。
れみりゃは狩りの際、おうちから飛び立つと一旦ゆっくりプレイスの外に出て、
外周をぐるりと反対側に回り込んでからゆっくりプレイスに再度侵入、襲撃を行っていたのである。
ゆっくりプレイス内に住む理由は、ゆっくりプレイスの上空から群れの行動を監視しつづけるためだ。
群れが崩壊したり、脱走ゆっくりが出てきてしまったりしないように。
群れのゆっくり達が自分に危険を及ぼしそうな行動をとっていないか、見張るために。
だが、もしも群れが、ゆっくりプレイス内にれみりゃが住みついている事を気づいてしまうと、
さすがに逃げ出すゆっくりは多くなるだろう。
だからこそ、群れには自分の居場所がばれないように、工夫して襲撃していたのであった。
つまり、長ぱちゅりーに限らず、群れのゆっくりの話し合いは、全て聞かれていたのである。
これまで群れが作ってきた罠や行ってきた対策同様、すべて、準備段階から一つ残らず、把握されていたのだ。
「うー。」
まりさとちぇんは、どんな最期だったのだろうか。
それは、長ぱちゅりーにはわかりようもない。
だが、れみりゃに傷一つつけることもできず、自分達の死を長ぱちゅりーに伝える事も出来ずに死んだ無念は、
お帽子の破片から漂う怨念に満ちた死臭から、痛いほどに伝わってきたのだった。
「む・・・・むっぎゅぁぁあああああああああ」
めりっ。
・・・長ぱちゅりーの雄叫びはそこで途切れた。
---------------------------------------------------------
長ぱちゅりーの叫びがゆっくりプレイスに響いた時から数十分後。
ゆっくりプレイス中心近くの洞窟には、今ではほんの10匹にも満たない数にまで減らされた、赤ゆっくり達が避難していた。
先日の妊婦ゆっくり全滅以来、すっきりーをしようとするゆっくりはいなくなっていたので、数は減る一方だったのだ。
それはそうだろう。
ただでさえにんっしんすれば逃げ足が遅くなるというのに、
れみりゃは狙い撃ちするかのように、おちびちゃん達ばかりを襲ってくるのだから。
そんな訳で、この洞窟にいる母れいむのおちびちゃん達である、8匹の赤れいむ達が、
この群れに残された最後の赤ゆっくり達になっていたのだ。
「ゆぁーん。みゃみゃー、れいみゅ、きょわいよぉ。」
「れみりゃは、ゆっくちできにゃいよぉ。」
「だいじょうぶだよ、おちびちゃん。おさが、れみりゃをやっつけてくれるからね。」
だが、最近ではそんなごまかしは、赤ゆっくりにも効かなくなってしまっている。
「まりしゃおにぇーしゃんも、ありしゅおにぇーしゃんも、みんにゃたべりゃれ・・・ゆぁぁあぁあん!!」
「れいみゅ、たべられちゃくにゃいぃぃぃいい!!」
「ゆぅぅ。ゆっくりしてよぉ。ぺーろぺーろ。すーりすーり。ゆぅぅ・・・」
こうなると母れいむも、いっしょに泣きたくなる。
もはや長ぱちゅりー達が、れみりゃを倒してくれない限り、この一家に平和がやってくることはないのだから。
どんっ!どんっ!どんっ!
その時洞窟の入り口から、正確に3回、バリケードを棒で叩く音が響いた。
「ゆゆっ!?」
それは、長ぱちゅりーが決めた合図だった。
以前避難所に、先代長ぱちゅりーに変装したれみりゃが侵入して、
中にいた妊婦れいむ達が皆殺しにされた事への、反省があって決めた合図である。
本物の群れのゆっくりなら、バリケードを3回棒で叩く。
その合図がなければ、絶対洞窟から出てきちゃいけない。
と、言うことは・・・
「ゆゆっ!?おちびちゃんたち、おさがかえってきたよ!」
「ゆわーい!れみりゃはやっつけたんだにぇ!」
「ゆっくち!ゆっくちー!」
洞窟の中は、歓喜の渦に包まれた。
母れいむはさすがに、れみりゃを倒したかまでは半信半疑だったが、
少なくとも生きて帰ってきたゆっくりがいるのだ。それは、大きな成果であった。
母れいむは、大急ぎでバリケードの木の枝や石をどかし、入口を開けた。
赤れいむ達は、バリケードに隙間ができたところで、早くも我先に外に飛び出していった。
「「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」」」
「みんな、ゆっくりしていってね!!」
「うー。」
そして、洞窟かられいむ一家全員が飛び出した瞬間、
洞窟の入口を塞ぐように、れみりゃが舞い降りた。
「ど、どうぢでれみりゃがいるのぉぉおおおお!?」
「「「ゆんやぁぁあああ!!れみりゃはゆっくちできにゃいぃいいいい!?」」」
「うっうー。」
れみりゃは、群れの全てを観察し、監視し続けていたのだ。
この程度の合図は、当然把握していた。
ましてやそれが、大好物の赤ゆっくりを誘い出す手段に使えそうなのなら、なおさらである。
そしてこうなると、れいむ一家にできる事は、一つしかない。それは、
「おちびちゃぁああん!!おかーさんのおくちのなかに、はいってぇぇええ!!」
「「「ゆぴゃぁあああ!!ゆっくちはいりゅよぉおお!!」」」
母れいむが開けた口に、ぴょんぴょんと入っていく8匹の赤れいむ達。
その行動は余りにもゆっくりで、その気になればすぐに妨害できそうだったが、
れみりゃはその様子を、ニコニコと楽しげな表情で眺め続けていた。
そして8匹のおちびちゃん全員をお口に隠すと、母れいむはお口をギッと閉ざし、
れみりゃに対して必死に威嚇を始めた。
「おちびちゃんは、れいむがぜったいまもるよ!れみりゃはゆっくりしないで、どっかいってね!」
お口の中からは、自分達の安全を信じて疑わない赤れいむ達の、ゆっくりとした声が聞こえてくる。
「「「ゆぁーい!みゃみゃのおくちのなかは、ゆっくちできりゅにぇ!」」」
・・・それは、全てのゆっくりが本能的に受け継いでいる知恵、おちびちゃんを守り抜く最後の手段であった。
どすっ!
「ゆぎっ!?」
「うー。」
そして、赤れいむをお口に満載する母れいむの眉間に、太い木の枝が貫いた。
もちろん突き刺したのは、れみりゃだ。
「みゃみゃ?どうしちゃの?」
「ゆぁーん、ゆっくちしちぇよー。」
お口の中の赤れいむ達も、異変を感じて鳴きはじめるが、母れいむからは返事は無かった。
「ゆ・・・ゆびぇ・・・・・・」
「うー!」
そしてれみりゃは、母れいむが突き刺さった木の枝を口に咥えたまま、軽々と宙に浮かびあがり、
「うーっ!!」
今日の収穫、成体れいむ一匹と赤れいむ8匹を確保し、自分の可愛いおちびちゃん達が待つおうちへと帰っていったのだった。
最近では、子れみりゃ達もソフトボールサイズにまで成長した。
だから独り立ちの準備のためにも、味の悪い成体ゆっくりに舌を慣らしておかなければならないのだ。
れみりゃの大好物である赤ゆっくりは、小さいので腹を満たす量を狩るのが大変なのである。
赤れみりゃだった頃は母の狩ってくる量で十分足りていたかもしれないが、
独り立ちしてから狩りが上達するまでの期間、普段の食事は成体ゆっくりを我慢して食べることになるだろう。
と言うわけでここ数日、れみりゃ一家の食事は、主食が成体ゆっくり、デザートが赤ゆっくりとなっていた。
そんなれみりゃ達にとって、ゆっくりの『危険が迫ったらおちびちゃんを口の中に隠す』習性は、とても便利なものだった。
バラバラに逃げられると、狩るのは何かと面倒なのに、わざわざひと固まりになってその場に立ち止まっていてくれるのだから。
ぶちぶちぶち・・・
「ゆぁーん、みゃみゃー!どうしちぇおくちあけちゃうにょぉおお!?」
「ゆっくちおへんじしちぇぇええ!!みゃみゃぁぁああ!!」
そして、餡子を吸い尽くされ息絶えた母れいむのお口がこじ開けられ、
デザートである赤れいむ達は一匹づつ、優しく取り出されていった。
「やめちぇぇぇええ!!れいみゅをたべにゃいでぇぇええ!」
「れいみゅ、こんにゃにゆっくちしちぇるのにぃぃいい!!」
「かわいくっちぇ、ごめんにゃしゃいぃぃいい!!」
母れみりゃは、群れのゆっくり達の事が本当に大好きだった。
「うー!あみゃあみゃー!」
「ゆぴぃぃいいいい!!」
こんなにも狩りやすいように行動してくれて、しかも美味しく食べられてくれるなんて、なんて親切なんだろう、と・・・
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群れは今度こそ、滅亡の危機に追い落とされた。
おちびちゃんは文字通り全滅し、成体ゆっくり全てを入れても30匹にもならない。
群れの規模は、ゆっくりプレイス全盛期の1%以下にまで減少したのであった。
・・・だが、それでもなお、群れのゆっくり達は、滅び去る事を良しとしなかった。
「むきゅ・・・みんな。れみりゃをたおすために、ちからをかして・・・」
「みょぉぉん。おちびちゃんのかたきだみょおん・・・」
「ゆるさないわ・・・れみりゃ・・・」
いや、ついに本気になったと言うのが正しいかもしれない。
群れの生き残りたちは、当然と言えば当然だが、全員が親姉妹、つがいやおちびちゃん達をまとめて失っていた。
直接手を下した訳ではない相手も多かったが、れみりゃが来なければありえない犠牲であったのだ。
「むきゅぅぅぅ・・・ゆるさないわ・・・ぜったいにゆるさないわぁああ!!ふくっしゅうよぉおお!!」
「「「えい、えい、ゆーっ!!!」」」
これまでは、群れの中でも命を捨てて戦うゆっくりもいれば、戦う前から腰の引けたゆっくりもいた。
だが、事ここに至り、ついに群れの気持ちは一つになったのだ。
動機が憎悪という、ほめられた物でない代物とは言え、
自分達の全てのゆっくりを賭けて、れみりゃと対決しようという決意を共有したのだ。
群れの新しい長には、群れのぱちゅりー種で唯一の生き残りだった、一匹の若いぱちゅりーが就任した。
もし次の戦いに敗れれば、群れ最期の長になるであろう。
「むきゅ。みんな、これが、ぱちぇがまどうしょをかいどくしてつくった、『さいしゅうへいき』よ。」
「これが、『さいしゅうへいき』さん・・・」
「じかんはないわ。さっそく、くんれんをはじめるわよ!」
「「「ゆっくりりかいしたよっ!!」」」
「みんな!あのくろいいしさんを、れみりゃだとおもって『さいしゅうへいき』をなげるのよ!」
「「「ゆっくりくんれんするよ!!」」」
群れ全員が横一列に並ぶと、広場のど真ん中にあるスイカほどの大きさの黒い石めがけ、
一斉に『さいしゅうへいき』を構えた。
さいしゅうへいき・・・それは、小石にツタを結びつけただけの、シンプルな武器、
陸上競技で使われる『ハンマー』を模したような物だった。
ゆっくり達は、ツタの先端を口に咥え、上半身(ていうか下唇から上あたり)を後方に180度捻る。
後方に捻った上半身を、前方に戻すように勢いよく捻り、
その勢いを殺すことなく、あんよを滑らせるようにしてさらに全身を360度回転させた。
フォンッ!!
それは、これまでゆっくり達が聞いた事もない、空気を切り裂く音。
長ぱちゅりーは、その音に自分達の勝利する姿を見た。
そして、
「「「ゆぅぅぅううう!ゆふぅんっ!!」」」
ぶぉんっ!!・・・ドスッ!ドスドスドスッ!!
5mほど離れた場所にある黒い石に、その手作りハンマーが激しく衝突すると、いくつもの白いキズを残した。
「おさ。これなら、れみりゃにかてるみょん?」
「・・・ぱちぇはきづいたのよ。れみりゃにこれまで、かてなかったりゆうを、むきゅ。」
「それはなんなのー?」
「むきゅ・・・れみりゃはね。おそらをとんでるのよ!」
「「「ゆ・・・?・・・そ、そういえばそうだよぉおお!?」」」
長ぱちゅりーは、先代までの長の失敗から、学ぶだけの高い知性を持っていたのだ。
罠を、守りをあっさりと破られ、陣形を崩され、視界の外から襲われ続けた最大の理由、
それを長ぱちゅりーは、ついに突き止めたのである。
群れは、最期の時を迎えようとする今、ついに一匹の天才を見出すことが出来たのだった。
「むきゅっ!!だかられみりゃは、おそらからおとさないとかてないのよ!」
「「「ゆっ、ゆっくりりかいしたよっ!!」」」
「みんなっ!!ぱちぇたちは、れみりゃとたたかうぶきをてにいれたのよ!!
つぎよ・・・つぎにれみりゃがきたときが、れみりゃのさいごなのよっ!!むっきゅーんっ!!」
「「「えい、えい、ゆーっ!!えい、えい、ゆーっ!!えい、えい、ゆーっ!!」」」
それは、ある意味では限りなく正解に近い結論だった。
小石で作ったハンマーなど、一個や二個当たったところでそこらのれいむ種ですら殺せはしない。
人間なら目玉にでも当らなければかすり傷程度である。
だが、もしもそのハンマーがれみりゃの羽に当たったら・・・
れみりゃは、羽での移動に慣れているので、あんよで跳ねることが苦手だ。
もしも羽が酷く傷つけば、れいむ種やまりさ種であっても、互角以上の勝負に持ち込めるだろう。
長ぱちゅりーの生み出した武器は、自分達が考えている以上に有効な武器だった。
「おさ。この『さいしゅうへいき』さん、おなまえはなんていうの?」
「むきゅ。それじゃあ、このまどうしょにかかれているなまえをつけましょう。」
『さいしゅうへいき』・・・それは、『むろふしさん』と名付けられた。
そしてこれは、群れのゆっくり達が、ついにれみりゃに対抗する力を手に入れた瞬間であった。
なお、長ぱちゅりーの『まどうしょ』の表紙には、『週刊ゆ虐12月号:第一回ゆックリンピック開催!』と書かれていた。
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一方その頃、れみりゃ達は鼻歌交じりに荷造りをしていた。
おうちの中に蓄えた、餡子を吸った後の赤ゆっくり皮、それを天日に干して日持ちするように加工したモノを、
母れみりゃのお帽子にギュウギュウと詰め込んでいる。
これは、次の狩り場に落ち着くまでの、大事な保存食だ。
れみりゃ一家は、引越しの準備をしていた。
母れみりゃも、群れの赤ゆっくり達がついに底をついた事に、気づいていた。
同じ所で長く狩りをすれば、そういう状況になることは、捕食種にとって当たり前の事である。
そのため、れみりゃ種は年に数回引越しをして、新しい狩り場に移動し続けるのだ。
それに、潮時でもあった。
れみりゃは常に余裕で狩りを成功させていたかに見えていたが、捕食種もまた、ゆっくりなのである。
れいむ種等の獲物との差は、空が飛べる・体がやや大きい・牙を持つ・そして遥かに賢いことくらい。
実のところ、ほんの5~6匹のゆっくり達が木の枝で武装し、
パニックを起こすことなく果敢に立ち向かってくれば、れみりゃだって無傷では済まないのだ。
だから巨大な群れよりも、少数の覚悟を決めたゆっくり達の集団の方が危険だったりする。
もはやれみりゃにとって、ここの群れは魅力を失っていたのだ。
栄養たっぷりのご飯ですくすく育った子れみりゃ達は、独り立ちまではまだまだとはいえ、
宙を舞う姿はふらつく様子もなく不安は見られない。
保存食の蓄えも十分だし、この周辺は自然豊かなので、新しい群れもすぐに見つかるだろう。
「うーっ!」
「「「うっうー!!」」」
れみりゃ一家の視線の先には、吸いこまれそうなほど無限の広がりを見せる夜空が広がっていた。
そこに美しく輝く星、一つ一つが、れみりゃ一家の旅を祝福してくれるように、きらきらと煌めく。
その美しさに満足したように、うんうんと頷くと、れみりゃ一家は一斉に羽を広げ、
星の光を受けて青白く光る牙をキラキラと輝かせながら、夜空の彼方へと飛び出した。
暗闇の彼方に、かつてのここよりも、さらに豊穣なゆっくりプレイスを求めて。
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「えいえいゆーっ!」
「「「えい、えい、ゆーっ!!」」」
「れみりゃにかつのよ!むっきゅーん!」
れみりゃは去り、群れは生き残った。
長ぱちゅりーを含めて誰ひとり気づいていなかったが、群れは確かに勝利したのだった。
多くの野生動物同様、種の存続を勝利と考えるならば、これは間違いなく勝利であろう。
そして、れみりゃがいなくなれば、群れはまたすぐに増える。
それがゆっくりなのだ。
こうして半年経ち、一年経ち、群れの規模が以前と同じくらいまで大きくなった頃、れみりゃは再びやってくるだろう。
その頃には、れみりゃと戦った経験のあるゆっくりはいなくなっており、
れみりゃと戦うための方法は完全に忘れられているに違いない。
こうしてれみりゃ達は、いつまでたっても群れを安全に狩り続け、
そして森は、いつまでも豊かで、美しく、そこに住む全ての生命に対しても優しく、
そして平和でありつづけるのであった。
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