こんな笑い声、聞いた事がなかった。
「あはははははははは」
単調で、けれど深い闇を内包し、聞くだけで心が蝕まれるような。
ルイズは逃げ出したい衝動に駆られながらも、恐る恐るコルベールへと視線を向ける。
右腕の肘から上を失い、そこから多量の血をこぼしながら、悲鳴ひとつ上げぬコルベール。
そんな彼に、言葉は再び、ノコギリを。
「――駄目ッ」
だからルイズは、咄嗟に言葉とコルベールの間に割り込む。
言葉の黒く黒く深く深く暗く暗く淀んだ淀んだ瞳にルイズが映る唇が弧を描く。
「あなたも、私から誠君を奪おうっていうんですか?」
「ち、違う。そうじゃ、ないの」
「大丈夫ですよ。私は寛容ですから、誠君が他の女の子に目を向けても構いません。
でも、誠君は言ってくれたんです。これからは私だけを見てくれるって。
けれど西園寺さんみたいに誠君を傷つけようとするなら、私は」
「あの、あのね、ミスタ・コルベールは悪気があった訳じゃなくて。
別に、あなたと、そ、その、マコト君を引き離そうとなんて……。
で、ですよね!? ミスタ・コルベール!」
半泣きになりながらルイズは叫んだ。
そして、その後ろで、コルベールがか細い声で答える。
「……その通りだ。すまない、思慮に欠ける発言をしてしまった。
コトノハ君……とにかく、ここは人目がある。
ミス・ヴァリエールと一緒に、治療室まで来てくれないか?」
人形のような感情の無い表情で、言葉はコルベールを見つめていた。
嘘か本当か、見極めようとしているのだろうか。
けれど、ルイズは早く今の状況を何とかしたい一心で言う。
「だ、大丈夫。あんたは私の使い魔なんだから、あんたの大事なモノを奪わせたりしない」
「……本当ですか?」
「本当よ。だから、ミスタ・コルベールを運ぶのを手伝って。早く手当てしないと」
「……解りました。それじゃ、行きましょう、誠君」
「あはははははははは」
単調で、けれど深い闇を内包し、聞くだけで心が蝕まれるような。
ルイズは逃げ出したい衝動に駆られながらも、恐る恐るコルベールへと視線を向ける。
右腕の肘から上を失い、そこから多量の血をこぼしながら、悲鳴ひとつ上げぬコルベール。
そんな彼に、言葉は再び、ノコギリを。
「――駄目ッ」
だからルイズは、咄嗟に言葉とコルベールの間に割り込む。
言葉の黒く黒く深く深く暗く暗く淀んだ淀んだ瞳にルイズが映る唇が弧を描く。
「あなたも、私から誠君を奪おうっていうんですか?」
「ち、違う。そうじゃ、ないの」
「大丈夫ですよ。私は寛容ですから、誠君が他の女の子に目を向けても構いません。
でも、誠君は言ってくれたんです。これからは私だけを見てくれるって。
けれど西園寺さんみたいに誠君を傷つけようとするなら、私は」
「あの、あのね、ミスタ・コルベールは悪気があった訳じゃなくて。
別に、あなたと、そ、その、マコト君を引き離そうとなんて……。
で、ですよね!? ミスタ・コルベール!」
半泣きになりながらルイズは叫んだ。
そして、その後ろで、コルベールがか細い声で答える。
「……その通りだ。すまない、思慮に欠ける発言をしてしまった。
コトノハ君……とにかく、ここは人目がある。
ミス・ヴァリエールと一緒に、治療室まで来てくれないか?」
人形のような感情の無い表情で、言葉はコルベールを見つめていた。
嘘か本当か、見極めようとしているのだろうか。
けれど、ルイズは早く今の状況を何とかしたい一心で言う。
「だ、大丈夫。あんたは私の使い魔なんだから、あんたの大事なモノを奪わせたりしない」
「……本当ですか?」
「本当よ。だから、ミスタ・コルベールを運ぶのを手伝って。早く手当てしないと」
「……解りました。それじゃ、行きましょう、誠君」
その後、キュルケがコルベールに、タバサがコルベールの右腕にレビテーションをかけ、
治療室まで運んでくれた。そこでコルベールは治癒の魔法を受ける。
治療を受ける直前にコルベールはキュルケとタバサを寮に帰し、
使用人のメイドに言葉の着替えを用意させると、
血で服を汚しているルイズと言葉に着替えるよう指示する。
ルイズは自分の部屋から着替えを持ってきてもらった。
着替え終えた二人は、コルベールの治療が終わるのを待つ。
その間、ルイズは使い魔の言葉と顔を合わせようとしなかったが、
ふいに言葉はルイズに話しかけてきた。誠の首を持ったままで。
「ここは、魔法の国なんですか?」
「え? え、と、魔法なら私達貴族は使えるわ」
「そうなんですか、素敵ですね」
「ま、まあね」
「ねえ、ルイズさん。私はあなたの使い魔になってしまったんですか?」
「う、うん。いや?」
いやなら、やめてもいいわよ。なんて。
「いいえ。少し嬉しいです」
何で!? ルイズは泣きたくなった。
「ルイズさんは、私と誠君を守ろうとしてくれました。
私達を祝福してくれる人がいるなんて……ほら、誠君も喜んでます」
と、顔を、見せられた。死体の顔を。
もちろん直視などしない。
唇を引きつらせながらルイズは、視線をあっちこっちに泳がせる。
「あ~……そう。どうも」
逃げ出したい逃げ出したい逃げ出したい。ルイズは心の中で連呼した。
そこに、コルベールの大怪我を聞いたオールド・オスマンがやって来る。
治療室まで運んでくれた。そこでコルベールは治癒の魔法を受ける。
治療を受ける直前にコルベールはキュルケとタバサを寮に帰し、
使用人のメイドに言葉の着替えを用意させると、
血で服を汚しているルイズと言葉に着替えるよう指示する。
ルイズは自分の部屋から着替えを持ってきてもらった。
着替え終えた二人は、コルベールの治療が終わるのを待つ。
その間、ルイズは使い魔の言葉と顔を合わせようとしなかったが、
ふいに言葉はルイズに話しかけてきた。誠の首を持ったままで。
「ここは、魔法の国なんですか?」
「え? え、と、魔法なら私達貴族は使えるわ」
「そうなんですか、素敵ですね」
「ま、まあね」
「ねえ、ルイズさん。私はあなたの使い魔になってしまったんですか?」
「う、うん。いや?」
いやなら、やめてもいいわよ。なんて。
「いいえ。少し嬉しいです」
何で!? ルイズは泣きたくなった。
「ルイズさんは、私と誠君を守ろうとしてくれました。
私達を祝福してくれる人がいるなんて……ほら、誠君も喜んでます」
と、顔を、見せられた。死体の顔を。
もちろん直視などしない。
唇を引きつらせながらルイズは、視線をあっちこっちに泳がせる。
「あ~……そう。どうも」
逃げ出したい逃げ出したい逃げ出したい。ルイズは心の中で連呼した。
そこに、コルベールの大怪我を聞いたオールド・オスマンがやって来る。
オスマンは言葉と、誠を、見て、顔をしかめたが、無言で治療室の奥へ向かった。
そこでは右腕を何とか元通りつなごうと苦心する水のメイジの姿があり、
コルベールは酷い汗をかきながら痛みをこらえていた。
「ミスタ・コルベール。災難じゃったな」
「オールド・オスマン……」
「ちょっと内緒話でもしようかの」
オスマンは杖を取り出すと、素早い口調でサイレントを唱えた。
風系統の魔法で、外界の音を遮断する魔法だ。
オスマンは自分とコルベールの周囲のみ魔法で包み、
治療を続ける水のメイジだけは魔法の外という絶妙なコントロールをやってのける。
「さて、これで誰にも話は聞かれまい」
「ええ」
「まず何から話せばいいのやら……。のう? ミスタ・コルベール。
とりあえず、怪我の具合はどうかね」
「大丈夫。腕は元通りくっつくでしょう」
「本当に『元通り』ならいいがね」
どうやらお見通しらしいとコルベールは苦笑した。
かつてとある部隊に所属し、数多の戦場を焼き払ったコルベールは、
こういった傷がどうなるものかを重々承知していた。
例え腕がくっついても、その腕は握力を失い、言う事を聞かず、杖すら持てなくなる。
腕があるか無いかの違いがあるだけで、実質的には片腕を失ったも同然だ。
「あの胸の大きな少女を、ミス・ヴァリエールの使い魔にしたそうじゃな」
「……使い魔の召喚は神聖な儀式。彼女が召喚したのだから、当然でしょう」
「しかしあの娘はお前さんの腕を」
「あの娘は被害者です、心を病んでいるのだから。罰などは与えないでください」
「首を抱えとる者が相手でもか?」
「私は、心の壊れてしまった人間というものを、何度か目撃しております。
それは水の魔法薬を使ってなどと生易しいものではありません。
人は、真に恐怖し、絶望し、喪失した時、壊れる事で己を守る。
壊れた心を治すには、長い、長い時間と、優しさが必要なのです」
「贖罪のつもりかね」
厳しい口調でオスマンが訊ねると、コルベールはゆっくりとうなずいた。
「……あの娘は、お前さんのせいでああなった訳ではあるまい。
なのに背負い込もうというのかね? いや、背負わせようというのかね?
償う罪など犯しておらぬ、ミス・ヴァリエールにまで」
「傲慢だと言ってくださって構いません」
「ほっ! では言おう、傲慢じゃなミスタ・コルベール!」
温厚で、いつもふざけていて、怠け者で、怒るという行為を知らないような老人。
しかし今、オスマンは怒っていた。
ミス・ヴァリエールに途方も無い重荷を背負わせようとするコルベールに。
「……コトノハといったか。同情しておるのだな、あの娘に」
「ええ」
「聞けば、彼女の持っている首は、恋人のものだとか」
「ええ。恐らく何者かに目の前で恋人を惨殺され、心が壊れたのでしょう」
「しかし首を切断したのはあの娘かもしれぬぞ」
ドクンと、コルベールの心臓が跳ねる。
(さすがはオールド・オスマン、そこまで見抜きましたか。
私しか気づいていないと思っていたのですが……)
彼女の彼氏、誠という男の首の切り口を見れば、どのように切断されたか想像はつく。
鋭利な刃物で刎ねられたのではない。
あの傷口は、そう、ノコギリのようなもので切り裂いた傷だ。
ならば、血濡れのノコギリを持っている言葉こそが、誠という少年を。
そこでは右腕を何とか元通りつなごうと苦心する水のメイジの姿があり、
コルベールは酷い汗をかきながら痛みをこらえていた。
「ミスタ・コルベール。災難じゃったな」
「オールド・オスマン……」
「ちょっと内緒話でもしようかの」
オスマンは杖を取り出すと、素早い口調でサイレントを唱えた。
風系統の魔法で、外界の音を遮断する魔法だ。
オスマンは自分とコルベールの周囲のみ魔法で包み、
治療を続ける水のメイジだけは魔法の外という絶妙なコントロールをやってのける。
「さて、これで誰にも話は聞かれまい」
「ええ」
「まず何から話せばいいのやら……。のう? ミスタ・コルベール。
とりあえず、怪我の具合はどうかね」
「大丈夫。腕は元通りくっつくでしょう」
「本当に『元通り』ならいいがね」
どうやらお見通しらしいとコルベールは苦笑した。
かつてとある部隊に所属し、数多の戦場を焼き払ったコルベールは、
こういった傷がどうなるものかを重々承知していた。
例え腕がくっついても、その腕は握力を失い、言う事を聞かず、杖すら持てなくなる。
腕があるか無いかの違いがあるだけで、実質的には片腕を失ったも同然だ。
「あの胸の大きな少女を、ミス・ヴァリエールの使い魔にしたそうじゃな」
「……使い魔の召喚は神聖な儀式。彼女が召喚したのだから、当然でしょう」
「しかしあの娘はお前さんの腕を」
「あの娘は被害者です、心を病んでいるのだから。罰などは与えないでください」
「首を抱えとる者が相手でもか?」
「私は、心の壊れてしまった人間というものを、何度か目撃しております。
それは水の魔法薬を使ってなどと生易しいものではありません。
人は、真に恐怖し、絶望し、喪失した時、壊れる事で己を守る。
壊れた心を治すには、長い、長い時間と、優しさが必要なのです」
「贖罪のつもりかね」
厳しい口調でオスマンが訊ねると、コルベールはゆっくりとうなずいた。
「……あの娘は、お前さんのせいでああなった訳ではあるまい。
なのに背負い込もうというのかね? いや、背負わせようというのかね?
償う罪など犯しておらぬ、ミス・ヴァリエールにまで」
「傲慢だと言ってくださって構いません」
「ほっ! では言おう、傲慢じゃなミスタ・コルベール!」
温厚で、いつもふざけていて、怠け者で、怒るという行為を知らないような老人。
しかし今、オスマンは怒っていた。
ミス・ヴァリエールに途方も無い重荷を背負わせようとするコルベールに。
「……コトノハといったか。同情しておるのだな、あの娘に」
「ええ」
「聞けば、彼女の持っている首は、恋人のものだとか」
「ええ。恐らく何者かに目の前で恋人を惨殺され、心が壊れたのでしょう」
「しかし首を切断したのはあの娘かもしれぬぞ」
ドクンと、コルベールの心臓が跳ねる。
(さすがはオールド・オスマン、そこまで見抜きましたか。
私しか気づいていないと思っていたのですが……)
彼女の彼氏、誠という男の首の切り口を見れば、どのように切断されたか想像はつく。
鋭利な刃物で刎ねられたのではない。
あの傷口は、そう、ノコギリのようなもので切り裂いた傷だ。
ならば、血濡れのノコギリを持っている言葉こそが、誠という少年を。
「まあ断言はできんのじゃがな。それともうひとつ、その腕を切断したノコギリじゃが」
「……血が付着したままで、特に手入れした様子もない、普通のノコギリに見えました。
ノコギリは何度も刃を押し引きして物を切る……」
「私は『ノコギリで腕を切断された』としか聞いておらん、
まさか木の枝を切り落とすようにノコギリを押し引きされていた訳ではあるまい」
「……彼女の左手に刻まれた見慣れぬ使い魔のルーンが光ったと思った次の瞬間、
すでに私の腕は切り落とされていました。とても、人間業では」
「あのノコギリがマジックアイテム、という訳でもなさそうだしのう」
「そうですね。……うぐっ」
「おっと、長話しすぎたようじゃな」
オスマンはサイレントを解いて会話を打ち切ったが、その瞬間咳き込む声を聞いた。
「何じゃ?」
「ミス・ヴァリエールが咳き込んでいるようです。この臭いじゃ仕方ないでしょう」
サイレントの外にいた水のメイジが言い、オスマンとコルベールは納得する。
言葉の抱いている誠、いつ死んだのかいつ首を切断されたのかは解らないが、
すでに死臭が漂い始めている。嗅ぎ慣れぬ者にとってはつらいだろう。
「オールド・オスマン。あの少年はあの娘の心の拠り所のようです。
無理に引き離してしまっては、どうなるか解りません。……頼めますか?」
「やれやれ。どうなっても知らんぞ」
オスマンはがっくりとうなだれながら、ルイズと言葉の前に移動した。
「あー、コトノハといったか」
「はい」
「私はオールド・オスマン。このトリステイン魔法学院の学院長をしておる者じゃ。
いきなりで不躾ではあるが、その、この臭いを何とかしたいんじゃが」
「臭い……? ああ、ごめんなさい。誠君、お風呂に入れて上げないと」
「まあ、そうじゃな。お風呂に入れて上げなさい。その後『固定化』をかけて上げよう」
「固定化?」
「彼が、これ以上崩れていかぬようにする魔法じゃよ」
彼女が凶行にでないか、オスマンはわずかに身構えながら訊ねた。
が、言葉はすんなりとオスマンの申し出を受けて頭を下げる。
「ありがとうございます。では、誠君をお願いしますね」
「うむ」
どうやら、言葉という少女は誠が死んでいる事を理解しているらしい。
その上で、まだ誠が生きていると信じている。
だから『崩れていかぬように』という話も通じるのだ。
人間の心など元から矛盾を抱えているものだが、
心が壊れてしまった人間は常人以上の矛盾を抱えられるものという事だろうか。
治療室にあった水で誠を綺麗に洗い、水を拭った言葉は、
オスマンから固定化の魔法を誠にかけてもらい、嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔を、コルベールは哀れみ、ルイズは恐怖を覚える。
「……血が付着したままで、特に手入れした様子もない、普通のノコギリに見えました。
ノコギリは何度も刃を押し引きして物を切る……」
「私は『ノコギリで腕を切断された』としか聞いておらん、
まさか木の枝を切り落とすようにノコギリを押し引きされていた訳ではあるまい」
「……彼女の左手に刻まれた見慣れぬ使い魔のルーンが光ったと思った次の瞬間、
すでに私の腕は切り落とされていました。とても、人間業では」
「あのノコギリがマジックアイテム、という訳でもなさそうだしのう」
「そうですね。……うぐっ」
「おっと、長話しすぎたようじゃな」
オスマンはサイレントを解いて会話を打ち切ったが、その瞬間咳き込む声を聞いた。
「何じゃ?」
「ミス・ヴァリエールが咳き込んでいるようです。この臭いじゃ仕方ないでしょう」
サイレントの外にいた水のメイジが言い、オスマンとコルベールは納得する。
言葉の抱いている誠、いつ死んだのかいつ首を切断されたのかは解らないが、
すでに死臭が漂い始めている。嗅ぎ慣れぬ者にとってはつらいだろう。
「オールド・オスマン。あの少年はあの娘の心の拠り所のようです。
無理に引き離してしまっては、どうなるか解りません。……頼めますか?」
「やれやれ。どうなっても知らんぞ」
オスマンはがっくりとうなだれながら、ルイズと言葉の前に移動した。
「あー、コトノハといったか」
「はい」
「私はオールド・オスマン。このトリステイン魔法学院の学院長をしておる者じゃ。
いきなりで不躾ではあるが、その、この臭いを何とかしたいんじゃが」
「臭い……? ああ、ごめんなさい。誠君、お風呂に入れて上げないと」
「まあ、そうじゃな。お風呂に入れて上げなさい。その後『固定化』をかけて上げよう」
「固定化?」
「彼が、これ以上崩れていかぬようにする魔法じゃよ」
彼女が凶行にでないか、オスマンはわずかに身構えながら訊ねた。
が、言葉はすんなりとオスマンの申し出を受けて頭を下げる。
「ありがとうございます。では、誠君をお願いしますね」
「うむ」
どうやら、言葉という少女は誠が死んでいる事を理解しているらしい。
その上で、まだ誠が生きていると信じている。
だから『崩れていかぬように』という話も通じるのだ。
人間の心など元から矛盾を抱えているものだが、
心が壊れてしまった人間は常人以上の矛盾を抱えられるものという事だろうか。
治療室にあった水で誠を綺麗に洗い、水を拭った言葉は、
オスマンから固定化の魔法を誠にかけてもらい、嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔を、コルベールは哀れみ、ルイズは恐怖を覚える。
こんなのと一緒にいたら、自分の精神がどうにかなってしまう。
そう思いながらも、この哀れな少女を救えるのならという優しさもあって、
結局コルベールに頼まれるがまま、少女を使い魔として扱わざるえないルイズ。
「今日から誠君と一緒にお世話になります、ルイズさん」
「え、ええ。あの、嫌なら使い魔なんてやめてもいいから」
「いいえ。邪魔者ばかりの"世界"から解放してくれたルイズさんには感謝してますから。
大丈夫、ルイズさんが私達を守ってくれるように、私もルイズさんを守って上げます。
誠君のように」
狂気は正気を蝕んでいく。果たしてルイズと言葉の行き着く未来は――?
結局コルベールに頼まれるがまま、少女を使い魔として扱わざるえないルイズ。
「今日から誠君と一緒にお世話になります、ルイズさん」
「え、ええ。あの、嫌なら使い魔なんてやめてもいいから」
「いいえ。邪魔者ばかりの"世界"から解放してくれたルイズさんには感謝してますから。
大丈夫、ルイズさんが私達を守ってくれるように、私もルイズさんを守って上げます。
誠君のように」
狂気は正気を蝕んでいく。果たしてルイズと言葉の行き着く未来は――?