アルビオン軍七万を前に、ルイズは自身の使い魔と隣り合い、トリステイン軍の殿を務めていた。
「はぁ……」
よくここまでやって来れた。胸に抱いていた様々な感情を、溜息と共に吐き出し、ルイズは迫り来る七万を、どこか他人事の様に見ていた。
どうせ何時もの様に、隣の使い魔が勝手に解決する。そう思っているからだ。
何もかもが茶番だ。虚無も、メイジも、戦争も。
ルイズは今までの使い魔の行動を逐一脳裏に浮かばせ、物思いに耽った。
どうせ何時もの様に、隣の使い魔が勝手に解決する。そう思っているからだ。
何もかもが茶番だ。虚無も、メイジも、戦争も。
ルイズは今までの使い魔の行動を逐一脳裏に浮かばせ、物思いに耽った。
――――この白い衣服に全身を固めた男は、自らを違う星から来た王子と名乗った。
召喚した時、なんのためらいも無くそう言い切った男を前に、顎を外しそうになるくらいの驚愕を覚えたのは記憶に新しい。
違う星と言うのは良く分からないし、王子と呼ぶにはあまりにも怪しい格好である。
言動とその姿を目にした他の者達は、大いにそれを冷やかし、常の如くゼロのルイズと囃し立てては二人を笑った。
無論、それを黙って聞いているルイズではない。
口々に反論を返すも、他の者達はヒートアップこそすれど、落ち着く気配が見られなかった。
いい加減に騒ぎを収めようと、教員のコルベールが口を開こうとした時、いち早くそれに取って代わったのはルイズの呼び出した男だった。
ただ、男が何をしたという訳でもなかった。
生徒達が沈静化したのは、相好を崩して周りの少年少女達を眺める視線に、誰もが得体の知れぬ怖気を感じたからに他ならない。
違う星と言うのは良く分からないし、王子と呼ぶにはあまりにも怪しい格好である。
言動とその姿を目にした他の者達は、大いにそれを冷やかし、常の如くゼロのルイズと囃し立てては二人を笑った。
無論、それを黙って聞いているルイズではない。
口々に反論を返すも、他の者達はヒートアップこそすれど、落ち着く気配が見られなかった。
いい加減に騒ぎを収めようと、教員のコルベールが口を開こうとした時、いち早くそれに取って代わったのはルイズの呼び出した男だった。
ただ、男が何をしたという訳でもなかった。
生徒達が沈静化したのは、相好を崩して周りの少年少女達を眺める視線に、誰もが得体の知れぬ怖気を感じたからに他ならない。
「今にして思うと、あの時から始まってたのよね」
少しばかり意識を外界に戻し、ルイズは隣の男の姿を見た。
相も変わらず、彼は自然体のままだ。最も、彼にとっての自然体という前置きはつくが。
忙しなく身体を動かしながら、ひたすらに何か良く分からない言葉を呟く男の姿は、不審者そのものである。
もうこれも慣れた光景だった。
相も変わらず、彼は自然体のままだ。最も、彼にとっての自然体という前置きはつくが。
忙しなく身体を動かしながら、ひたすらに何か良く分からない言葉を呟く男の姿は、不審者そのものである。
もうこれも慣れた光景だった。
――――誰が信じよう。この男が、ただの蹴り一発で風のスクウェアメイジであるワルド子爵を打倒し得た等と。
思い返すのも馬鹿馬鹿しい。
伝説はいくつもある。
三十メイルもあるゴーレムをブーメランの様にして投げた帽子で切り崩したり、自らを鉄のゴーレムと化してタルブの村上空に並んだ艦隊を、怪しげな魔法で殲滅したり。
いつしか男はスーパースターとなっていた。
得体の知れない不思議な力を持つ男に、トリステインは夢中になったのだ。
彼に対し、国民より集められた基金により、トリステイン魔法学院には新たに敷地を得て、一つの庭園を作り上げてもいる。
ネバーランドと名づけられたそれは、一般の平民にも開放され、今では大人気のテーマパークとして君臨していた。
しかし、輝かしい経歴を得た使い魔を従えながらも、ルイズの心は明るくはならなかった。
彼女は知っている。彼はスーパーヒーローでもスターでもない。
もっとおぞましい何かだ。
魔法学院にいる生徒の何人もの菊を散らしたという事実をしっているのは、当事者とルイズのみである。
油断できぬ火種だと思いつつも、その力は確かなだけに頼らざるを得ない現状に、ルイズは改めて頭を抱えた。
伝説はいくつもある。
三十メイルもあるゴーレムをブーメランの様にして投げた帽子で切り崩したり、自らを鉄のゴーレムと化してタルブの村上空に並んだ艦隊を、怪しげな魔法で殲滅したり。
いつしか男はスーパースターとなっていた。
得体の知れない不思議な力を持つ男に、トリステインは夢中になったのだ。
彼に対し、国民より集められた基金により、トリステイン魔法学院には新たに敷地を得て、一つの庭園を作り上げてもいる。
ネバーランドと名づけられたそれは、一般の平民にも開放され、今では大人気のテーマパークとして君臨していた。
しかし、輝かしい経歴を得た使い魔を従えながらも、ルイズの心は明るくはならなかった。
彼女は知っている。彼はスーパーヒーローでもスターでもない。
もっとおぞましい何かだ。
魔法学院にいる生徒の何人もの菊を散らしたという事実をしっているのは、当事者とルイズのみである。
油断できぬ火種だと思いつつも、その力は確かなだけに頼らざるを得ない現状に、ルイズは改めて頭を抱えた。
「……そろそろ行くわよ」
そう言って、今度はしっかりと七万の兵を見据え、隣の男の肩を叩いた。
甲高い声でそれに応え、男は雄雄しく、悠然と歩みを進める。
そして、最前線まで向かった途端、男が声高らかに叫んだ。
甲高い声でそれに応え、男は雄雄しく、悠然と歩みを進める。
そして、最前線まで向かった途端、男が声高らかに叫んだ。
「POOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOH!!!」
First dance から始まる 二人の恋のヒストリー♪
「って、何よこの音楽!?」
何も無い中空より流れ出たメロディに、ルイズは思わず唸り声を上げた。
この場に於いて、正気なのはルイズだけらしい。
音楽に魅せられたのか、男の不思議な力によるものか分からない。っていうか、音楽も男が何かしたのだろう。
男を先頭に、七万の兵士達が一寸の狂いも無いダンスを披露し始めた。
この場に於いて、正気なのはルイズだけらしい。
音楽に魅せられたのか、男の不思議な力によるものか分からない。っていうか、音楽も男が何かしたのだろう。
男を先頭に、七万の兵士達が一寸の狂いも無いダンスを披露し始めた。
「悪夢だわ……」
こいつなら七万相手でも何とかする、とは思っていたが、よもやこんな事になろうとは夢にも思わなかった。
踊りによって、アルビオン大陸を揺るがす七万の兵の姿は、ルイズの呟きの通り、性質の悪い悪夢に他ならない。
数分後、辺りに広がるのはいつも通りの決めポーズで悠然と佇む男の姿と、踊りによって魂でも抜かれたのか、地に倒れ伏した兵士達。
そして、その光景をバックに、男はいつもの甲高い声でこう言った。
踊りによって、アルビオン大陸を揺るがす七万の兵の姿は、ルイズの呟きの通り、性質の悪い悪夢に他ならない。
数分後、辺りに広がるのはいつも通りの決めポーズで悠然と佇む男の姿と、踊りによって魂でも抜かれたのか、地に倒れ伏した兵士達。
そして、その光景をバックに、男はいつもの甲高い声でこう言った。
「Who's bad?」
「あんたよ!」
「あんたよ!」