「すすす、すごいじゃないの!天下無双と歌われたアルビオンの竜騎士が、
まるで虫みたいに落ちてくわ!」
十騎の竜騎士をあっと言う間に撃墜したゼロ戦に
ルイズが感嘆の声を上げた。
「ああ、そろそろあの親玉を……なっ!」
他の竜騎士を振りきり、雲の隙間に見える戦艦を狙おうとしたマミーモンが
突如として焦ったような声を上げる。
「ど、どうしたのよ?!」
「燃料が切れちまいそうだ! 早く着陸させないと墜落しちまう!」
燃料の残量が少なくなっていることをルーンの力で把握して、
舌打ちと共に悔しげに吐き捨てる。
「な、何よそれ! ちゃんと考えて飛ばしなさいよ!」
「そんな余裕あるかよ! ここに来るまでで必死だったんだ!」
ぎゃあぎゃあと言い争う二人を見てデルフリンガーは
どこだか分からない頭を痛めながら告げる。
「んなことより、上から三騎だ。どーするよ、相棒?」
「げぇっ!」
その声に慌てて上を見上げれば、火竜が三騎、彼らへ向けて
今まさに、ブレスを放たんとしているところだった。
間に合わない、と彼の直感が告げた。
咄嗟にルイズを庇うようにして抱え込む。
目を閉じるその一瞬前に、ちらり、と目の端に黒い物体が映った。
はっとして、目を開いた。
マミーモンはその影が自分達と
竜騎士達の間に立ち塞がったのを視界にとらえた。
「……ガイアフォース!」
凄まじい熱量を持った赤い球体が、一瞬にして火竜とその乗り手達を撃ち落す。
「!!」
「相棒、今の内にコイツを降ろせ!」
「わ、分かった!しっかりつかまってろよルイズ!」
デルフリンガーの声を聞いて操縦桿を握りなおす。
「きゃあっ! もっと丁寧に操りなさいよ!」
無茶言わないでくれ、と叫んで一気に降下すると、
草原だった場所にゼロ戦を着陸させる。
まるで虫みたいに落ちてくわ!」
十騎の竜騎士をあっと言う間に撃墜したゼロ戦に
ルイズが感嘆の声を上げた。
「ああ、そろそろあの親玉を……なっ!」
他の竜騎士を振りきり、雲の隙間に見える戦艦を狙おうとしたマミーモンが
突如として焦ったような声を上げる。
「ど、どうしたのよ?!」
「燃料が切れちまいそうだ! 早く着陸させないと墜落しちまう!」
燃料の残量が少なくなっていることをルーンの力で把握して、
舌打ちと共に悔しげに吐き捨てる。
「な、何よそれ! ちゃんと考えて飛ばしなさいよ!」
「そんな余裕あるかよ! ここに来るまでで必死だったんだ!」
ぎゃあぎゃあと言い争う二人を見てデルフリンガーは
どこだか分からない頭を痛めながら告げる。
「んなことより、上から三騎だ。どーするよ、相棒?」
「げぇっ!」
その声に慌てて上を見上げれば、火竜が三騎、彼らへ向けて
今まさに、ブレスを放たんとしているところだった。
間に合わない、と彼の直感が告げた。
咄嗟にルイズを庇うようにして抱え込む。
目を閉じるその一瞬前に、ちらり、と目の端に黒い物体が映った。
はっとして、目を開いた。
マミーモンはその影が自分達と
竜騎士達の間に立ち塞がったのを視界にとらえた。
「……ガイアフォース!」
凄まじい熱量を持った赤い球体が、一瞬にして火竜とその乗り手達を撃ち落す。
「!!」
「相棒、今の内にコイツを降ろせ!」
「わ、分かった!しっかりつかまってろよルイズ!」
デルフリンガーの声を聞いて操縦桿を握りなおす。
「きゃあっ! もっと丁寧に操りなさいよ!」
無茶言わないでくれ、と叫んで一気に降下すると、
草原だった場所にゼロ戦を着陸させる。
「この辺りに敵はいないようね……」
きょろきょろと辺りを見回しながらルイズがほっと安堵する。
「けど、村の奴らも見当たらない……!」
左手に握ったデルフリンガーに、ぎりり、と力を込める。
「あんたたち、無事かい?」
飛行音と共に降りてきた人物とそのパートナーを見上げる。
「フーケ!」
ルイズが咄嗟に杖を構える。
風になびく緑の長髪を押さえながらフーケは答える。
「今はお嬢ちゃんとケンカしてる場合じゃないよ。
くそっ、アルビオンの奴らめ!
アタシとブラックの居ない間に村を襲うなんて……!」
ラ・ロシェールの遥か上空にあるであろう戦艦を睨むようにして、
フーケは忌々しげに声を荒げる。
「どうする、マチルダ。私ならあの戦艦を吹き飛ばせるかもしれんが……」
「いや、いくらアンタが頑丈でも、無事で居られるとは限らないよ」
案外直情径行にある自身のパートナーをたしなめる。
「マチルダ! マミーモン!」
立ち尽くしていた彼らの下へアルケニモンが姿を現す。
「アル!」
「アルケニモン! よかった!無事だったんだな!」
駆け寄って彼女を抱き締めたマミーモンを殴り飛ばす。
放物線を描いて跳落下した彼のことは無視して、フーケが村人の安否を尋ねる。
「テファや村のみんなは?」
「大丈夫、森へ避難してるよ」
「そう、無事なのね……よかった」
フーケとルイズは胸を撫で下ろす。
「……うぅ」
その後ろで、ひっくり返ったままのマミーモンがピクピクと震えている。
「おーい、相棒ー、大丈夫かー」
飛ばされた拍子に取り落とされたデルフリンガーが呼びかける。
ひらひらと手を振りながら彼は起き上がる。
「あー大丈夫大丈夫。慣れてる慣れてる。ヒヒヒ。
やっぱ、アルケニモンに殴られると胸がときめくなあ」
頬に手を当てて顔を朱に染めながら、
嬉しげに笑うマミーモンに一体と一振りはヒいた。
「なあ、あんた。相棒は、前から……『こう』だったのか?」
「……さぁな」
呆れたように、彼がぐねぐねしているのを見つめるばかりだった。
きょろきょろと辺りを見回しながらルイズがほっと安堵する。
「けど、村の奴らも見当たらない……!」
左手に握ったデルフリンガーに、ぎりり、と力を込める。
「あんたたち、無事かい?」
飛行音と共に降りてきた人物とそのパートナーを見上げる。
「フーケ!」
ルイズが咄嗟に杖を構える。
風になびく緑の長髪を押さえながらフーケは答える。
「今はお嬢ちゃんとケンカしてる場合じゃないよ。
くそっ、アルビオンの奴らめ!
アタシとブラックの居ない間に村を襲うなんて……!」
ラ・ロシェールの遥か上空にあるであろう戦艦を睨むようにして、
フーケは忌々しげに声を荒げる。
「どうする、マチルダ。私ならあの戦艦を吹き飛ばせるかもしれんが……」
「いや、いくらアンタが頑丈でも、無事で居られるとは限らないよ」
案外直情径行にある自身のパートナーをたしなめる。
「マチルダ! マミーモン!」
立ち尽くしていた彼らの下へアルケニモンが姿を現す。
「アル!」
「アルケニモン! よかった!無事だったんだな!」
駆け寄って彼女を抱き締めたマミーモンを殴り飛ばす。
放物線を描いて跳落下した彼のことは無視して、フーケが村人の安否を尋ねる。
「テファや村のみんなは?」
「大丈夫、森へ避難してるよ」
「そう、無事なのね……よかった」
フーケとルイズは胸を撫で下ろす。
「……うぅ」
その後ろで、ひっくり返ったままのマミーモンがピクピクと震えている。
「おーい、相棒ー、大丈夫かー」
飛ばされた拍子に取り落とされたデルフリンガーが呼びかける。
ひらひらと手を振りながら彼は起き上がる。
「あー大丈夫大丈夫。慣れてる慣れてる。ヒヒヒ。
やっぱ、アルケニモンに殴られると胸がときめくなあ」
頬に手を当てて顔を朱に染めながら、
嬉しげに笑うマミーモンに一体と一振りはヒいた。
「なあ、あんた。相棒は、前から……『こう』だったのか?」
「……さぁな」
呆れたように、彼がぐねぐねしているのを見つめるばかりだった。
「それより、どうすんのさコレから」
「ゼロ戦が飛べれば、まだどうにかなったかもしれないけど……、
燃料、切れちまったんだよなぁ……」
「何だって? 肝心な時に役立たずだね、アンタは!」
「ああ、ごめんよぉアルケニモン」
げしげしとアルケニモンに足蹴にされ、情けない、
しかし何処か嬉しそうな声を上げるマミーモンをルイズが冷ややかな目で睨む。
「……この非常時にあんたはー!」
手に持った始祖の祈祷書で殴りかかろうとして、
ルイズは祈祷書と、指にはめていた水のルビーが光を放っていることに気づいた。
「な、何これ?」
思わずパラパラと光るページをめくっていく。
光の中に、文字を見つけた。
それは……古代のルーンで書かれていた。
ルイズは光の中の文字を追った。
「『序文。これより我が知りし真理をこの書に記す。
この世の全ての物質は、小さな粒より為る……』」
ぶつぶつと読み上げ出したルイズをフーケ達は怪訝な顔で見る。
ひょい、と後ろからその本を覗き込んだフーケが叫ぶ。
「ちょっと、何も見えないじゃないかい、一体何を読んで……!」
フーケは、その光景にはっとする。
ルイズには見えるのに、自分には、見えない。
テファには見えるのに、自分には、聞こえない。
「まさか……」
ルイズも、テファも同じように四系統の魔法が使えない。
そして、テファの能力は先住でも四系統のいずれの魔法でもない。
その事実に思い当たって、フーケは息を飲んだ。
「『四にあらざれば零。零はすなわちこれ『虚無』。
我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。』
虚無……虚無、ですって? 伝説じゃないの!
伝説の系統じゃないの!」
ルイズは思わず呟いてページをめくる。鼓動が高鳴った。
声を出すのも惜しくて、必死で目で追うだけに留める。
そこに書かれていたことを信じるのなら、
自分には、虚無を使う『資格』があるのかもしれない。
誰も、自分の魔法が爆発する理由を言えなかった。
それは……誰も知らない、伝説の系統である『虚無』だったからではないか?
信じられないけど、そうなのかもしれない。
だったら、試してみる価値はあるのかもしれない。
だって……そうしなければ、私は何も守れない。
この使い魔達のように、守るために命をかけてみよう。
「ゼロ戦が飛べれば、まだどうにかなったかもしれないけど……、
燃料、切れちまったんだよなぁ……」
「何だって? 肝心な時に役立たずだね、アンタは!」
「ああ、ごめんよぉアルケニモン」
げしげしとアルケニモンに足蹴にされ、情けない、
しかし何処か嬉しそうな声を上げるマミーモンをルイズが冷ややかな目で睨む。
「……この非常時にあんたはー!」
手に持った始祖の祈祷書で殴りかかろうとして、
ルイズは祈祷書と、指にはめていた水のルビーが光を放っていることに気づいた。
「な、何これ?」
思わずパラパラと光るページをめくっていく。
光の中に、文字を見つけた。
それは……古代のルーンで書かれていた。
ルイズは光の中の文字を追った。
「『序文。これより我が知りし真理をこの書に記す。
この世の全ての物質は、小さな粒より為る……』」
ぶつぶつと読み上げ出したルイズをフーケ達は怪訝な顔で見る。
ひょい、と後ろからその本を覗き込んだフーケが叫ぶ。
「ちょっと、何も見えないじゃないかい、一体何を読んで……!」
フーケは、その光景にはっとする。
ルイズには見えるのに、自分には、見えない。
テファには見えるのに、自分には、聞こえない。
「まさか……」
ルイズも、テファも同じように四系統の魔法が使えない。
そして、テファの能力は先住でも四系統のいずれの魔法でもない。
その事実に思い当たって、フーケは息を飲んだ。
「『四にあらざれば零。零はすなわちこれ『虚無』。
我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。』
虚無……虚無、ですって? 伝説じゃないの!
伝説の系統じゃないの!」
ルイズは思わず呟いてページをめくる。鼓動が高鳴った。
声を出すのも惜しくて、必死で目で追うだけに留める。
そこに書かれていたことを信じるのなら、
自分には、虚無を使う『資格』があるのかもしれない。
誰も、自分の魔法が爆発する理由を言えなかった。
それは……誰も知らない、伝説の系統である『虚無』だったからではないか?
信じられないけど、そうなのかもしれない。
だったら、試してみる価値はあるのかもしれない。
だって……そうしなければ、私は何も守れない。
この使い魔達のように、守るために命をかけてみよう。
「どうにか……出来るかも、しれない」
ルイズがそう呟いた時、皆が一斉にルイズを見つめた。
「……どういう、ことだい?あんたが、さっきから読んでるソレは……」
「始祖の祈祷書よ」
「始祖の……!」
フーケが目を見開いて、祈祷書とルイズを交互に見つめる。
「戦艦に近づければ、どうにかなるかもしれない……!」
「近づくって言っても、アレはもう飛べないんだろ?」
「……お前を乗せて、戦艦に近づけばいいんだな?」
「え? きゃあ!」
その大きな竜に似た手で、フーケのパートナーはルイズを抱きかかえる。
ルイズがそう呟いた時、皆が一斉にルイズを見つめた。
「……どういう、ことだい?あんたが、さっきから読んでるソレは……」
「始祖の祈祷書よ」
「始祖の……!」
フーケが目を見開いて、祈祷書とルイズを交互に見つめる。
「戦艦に近づければ、どうにかなるかもしれない……!」
「近づくって言っても、アレはもう飛べないんだろ?」
「……お前を乗せて、戦艦に近づけばいいんだな?」
「え? きゃあ!」
その大きな竜に似た手で、フーケのパートナーはルイズを抱きかかえる。
「ま、待ちな!」
フーケが慌てて彼を制する。
「そいつを抱えてたんじゃ、あんたは攻撃できない!
竜騎士共に狙い撃ちにされるのが関の山だよ!」
フーケが彼と行動を共にする際には、
魔法を使って振り落とされないようにしている。
けれど、ルイズはそういった類の魔法が使えない。
竜騎士は、およそ半数がマミーモンによって撃ち落とされていたが、
残りはまだ戦艦を護衛するために飛んでいる。
「だったら……そいつらを、俺が引き付ける」
「引き付けるって、どうやって……」
「えっとそれは……」
考えなしに叫んだマミーモンの言葉に、アルケニモンが続く。
「アタシがいる。アタシがマミーモンと一緒に竜に乗って操ればいい。
丁度、おあつらえ向きのが一頭来たみたいだしね」
こちらへ向かってくる風竜に乗った騎士を視認し、アルケニモンはニヤリと笑った。
いつの間にか右手に握っていたフルートをその形のいい唇に押し当て、奏でる。
右手のルーンの力が甲高い笛の音に乗って竜の下へと届く。
瞬間、竜が勢いよく体を揺り動かして、乗り手を振り落とすのが見えた。
竜は笛の音に導かれるままに、彼女の傍へ舞い降りた。
グルル……とじゃれつくような声を上げ身を擦り寄せてくる。
「よぉし、いい子だ。私の指示に従うんだよ?」
その竜を撫でてやった後で、アルケニモンは手綱を取る。
「とっとと乗りな!」
「へへっ! 了解」
マミーモンが心底楽しそうに笑った。
ぐにゃり、と体を歪ませると全身に包帯を巻いた怪物めいた姿になる。
右手には愛用の銃『オベリスク』を持ち、
左手にはデルフリンガーを携え、竜の背にまたがる。
「一緒に戦うの、久しぶりだな、へへ」
こんな時だというのに彼は、はずんだ声でアルケニモンに喋りかける。
「……馬鹿言ってんじゃないよ!」
「はは、悪ィ! フーケ、悪いけどゼロ戦を見ててくれねえか?
壊されちまったらコルベール先生が悲しむからよ」
フーケに笑顔を向けた後で、ルイズに向き直る。
「ルイズ、準備はいいか?」
「も、勿論よ! 国家に仇なすアルビオンなんか吹き飛ばしてやるわ!」
少し青白い顔をしながらも、懸命に声を張り上げる。
「それでこそルイズだ! 行くぞ!」
「あいよ!」
マミーモンの号令に合わせ、アルケニモンが手綱を振るう。
風竜が咆哮し、翼を羽ばたかせ空へ舞い上がる。
「使い魔が命令するんじゃないの! とにかく、行くわよ!」
「……分かった」
武装した黒い竜人、とでも形容すべきフーケのパートナーが、
その後を追うようにルイズを抱えて飛び上がる。
「……死ぬんじゃないよ」
彼らを見送りながら、フーケは呟く。
祈るように、胸から下げた奇妙な形のペンダントをしっかりと握り締める。
異なる世界で、『デジヴァイス』と呼ばれていたペンダントには、
使い魔のルーンが刻まれている。
同じものが、彼女のパートナーの翼に良く似た盾の部分にも刻まれていた。
「生きて帰るんだよ。ヴァリエールの嬢ちゃん、
アルケニモン、マミーモン……ブラックウォーグレイモン」
かつて、トリステイン魔法学院の宝物庫に封じられていた、
『破壊神のタマゴ』から姿を現したパートナーの名を最後に呟く。
彼らの無事を祈りながら、フーケは、空を見上げ続けていた。
フーケが慌てて彼を制する。
「そいつを抱えてたんじゃ、あんたは攻撃できない!
竜騎士共に狙い撃ちにされるのが関の山だよ!」
フーケが彼と行動を共にする際には、
魔法を使って振り落とされないようにしている。
けれど、ルイズはそういった類の魔法が使えない。
竜騎士は、およそ半数がマミーモンによって撃ち落とされていたが、
残りはまだ戦艦を護衛するために飛んでいる。
「だったら……そいつらを、俺が引き付ける」
「引き付けるって、どうやって……」
「えっとそれは……」
考えなしに叫んだマミーモンの言葉に、アルケニモンが続く。
「アタシがいる。アタシがマミーモンと一緒に竜に乗って操ればいい。
丁度、おあつらえ向きのが一頭来たみたいだしね」
こちらへ向かってくる風竜に乗った騎士を視認し、アルケニモンはニヤリと笑った。
いつの間にか右手に握っていたフルートをその形のいい唇に押し当て、奏でる。
右手のルーンの力が甲高い笛の音に乗って竜の下へと届く。
瞬間、竜が勢いよく体を揺り動かして、乗り手を振り落とすのが見えた。
竜は笛の音に導かれるままに、彼女の傍へ舞い降りた。
グルル……とじゃれつくような声を上げ身を擦り寄せてくる。
「よぉし、いい子だ。私の指示に従うんだよ?」
その竜を撫でてやった後で、アルケニモンは手綱を取る。
「とっとと乗りな!」
「へへっ! 了解」
マミーモンが心底楽しそうに笑った。
ぐにゃり、と体を歪ませると全身に包帯を巻いた怪物めいた姿になる。
右手には愛用の銃『オベリスク』を持ち、
左手にはデルフリンガーを携え、竜の背にまたがる。
「一緒に戦うの、久しぶりだな、へへ」
こんな時だというのに彼は、はずんだ声でアルケニモンに喋りかける。
「……馬鹿言ってんじゃないよ!」
「はは、悪ィ! フーケ、悪いけどゼロ戦を見ててくれねえか?
壊されちまったらコルベール先生が悲しむからよ」
フーケに笑顔を向けた後で、ルイズに向き直る。
「ルイズ、準備はいいか?」
「も、勿論よ! 国家に仇なすアルビオンなんか吹き飛ばしてやるわ!」
少し青白い顔をしながらも、懸命に声を張り上げる。
「それでこそルイズだ! 行くぞ!」
「あいよ!」
マミーモンの号令に合わせ、アルケニモンが手綱を振るう。
風竜が咆哮し、翼を羽ばたかせ空へ舞い上がる。
「使い魔が命令するんじゃないの! とにかく、行くわよ!」
「……分かった」
武装した黒い竜人、とでも形容すべきフーケのパートナーが、
その後を追うようにルイズを抱えて飛び上がる。
「……死ぬんじゃないよ」
彼らを見送りながら、フーケは呟く。
祈るように、胸から下げた奇妙な形のペンダントをしっかりと握り締める。
異なる世界で、『デジヴァイス』と呼ばれていたペンダントには、
使い魔のルーンが刻まれている。
同じものが、彼女のパートナーの翼に良く似た盾の部分にも刻まれていた。
「生きて帰るんだよ。ヴァリエールの嬢ちゃん、
アルケニモン、マミーモン……ブラックウォーグレイモン」
かつて、トリステイン魔法学院の宝物庫に封じられていた、
『破壊神のタマゴ』から姿を現したパートナーの名を最後に呟く。
彼らの無事を祈りながら、フーケは、空を見上げ続けていた。