「今すぐに止めなさい」
現在、自分を試用期間中の少女からそう言われて、スコール・レオンハートは閉口した。
「いい?平民はね、どんなに頑張ってもメイジには勝てないのよ」
「それはあんた達の……こちら側での話だろう。俺たちには俺たちの、SeeDのやり方がある」
ライオンハートにマガジンをつっこみつつ答える。
「しーどだかですてぃにーだか知らないけど無理なものは無理よ!早く謝ってきなさい!」
「嫌だ」
あっさりと、断った。
「なっ……!」
「今回の一件、俺の方が間違っているとは言わせない。メイドの彼女への言動は、間違いなくあちらの八つ当たりだ」
「それはそうでしょうけどねぇ!」
「『力ない平民』が逆らうのが間違いだと言うのなら、その考え自体が間違いだ」
『そうそう。あんな失礼な男、やっちゃいましょ、スコール。女の敵だもん』
頭の中、何かがざわめく感じがある。自分にジャンクションされている誰かも同じ思いなのだと思う。
「それに、いい加減あんた達の俺に対しての評価を改めてもらいたいからな」
「評価……?」
本来、スコールは自身の力を見せつけたりするタイプの人間ではない。
だが、スコールの本質は間違いなく戦士であり、そして自身が最強の傭兵たるSeeDであることに少なからぬプライドも持っている。
それが、こちらへ呼ばれてからというものの、明らかにその戦闘力は過小評価されている。
自身の力が評価されないというのは、自分がガーデンに入ってからの10年近くを否定されるに等しい。
(冗談じゃない)
安全装置を外し、弾を装填する。
(ルイズは、自分の努力が実を結ばないことをさっき俺に当たっていた。俺もそうだ。正SeeDに成るまで苦労はあった。それを否定させはしない)
「な、何よ。いきなり睨み付けて……!」
「……別に」
『もう、スコール。悪い癖。前にも言ったでしょ、言いたいこと言わないと、相手に伝わらないよ』
相変わらずのスコールの態度に、リノアは呆れた。彼女の声がスコールへ届く訳ではなかったが。
「も、もう知らないんだから!人の忠告も聞かないで、アンタなんかギーシュにぼっこぼこにやられちゃえばいいのよ!」
仮クライアントの罵倒を背中に浴びつつ、スコールは人で円形のコロシアムのようになっている庭の中へと歩を進めた。
「よく逃げずに来たな、平民!」
薔薇の造花を携え、ギーシュ・ド・グラモンがスコールに向く。
「諸君、決闘だ!僕は貴族だから当然、魔法で戦う」
良いな?という風にこちらを嘲笑うかのような眼を、正面から見返す。
「好きにしろ。俺も俺で、全てを駆使して当たらせてもらう」
(所持魔法、G.F.および各ジャンクション、チェック終了。行くぞ)
右腕一本で×の字に一度ライオンハートを降り、正眼に構える。
「ふっ……薄汚い傭兵風情が。地に這い蹲るが良い!出よワルキューレ!」
薔薇を振るギーシュの前に、剣を持った青銅の像が現れる。
「どうだ、この美しい姿は!まさにこの僕に相応しい戦い方だろう?」
(まずは敵戦力の把握か)
なるだけ手持ちの魔法は使いたく無いので、視線をあちこちに飛ばす。
(あった)
木陰で本を読んでいる眼鏡の少女に、求めるものがあった。
「ドロー ライブラ」
その少女からドローした魔法を、そのままギーシュのゴーレムに放ち、対峙する相手のデータを読み取る。
現在、自分を試用期間中の少女からそう言われて、スコール・レオンハートは閉口した。
「いい?平民はね、どんなに頑張ってもメイジには勝てないのよ」
「それはあんた達の……こちら側での話だろう。俺たちには俺たちの、SeeDのやり方がある」
ライオンハートにマガジンをつっこみつつ答える。
「しーどだかですてぃにーだか知らないけど無理なものは無理よ!早く謝ってきなさい!」
「嫌だ」
あっさりと、断った。
「なっ……!」
「今回の一件、俺の方が間違っているとは言わせない。メイドの彼女への言動は、間違いなくあちらの八つ当たりだ」
「それはそうでしょうけどねぇ!」
「『力ない平民』が逆らうのが間違いだと言うのなら、その考え自体が間違いだ」
『そうそう。あんな失礼な男、やっちゃいましょ、スコール。女の敵だもん』
頭の中、何かがざわめく感じがある。自分にジャンクションされている誰かも同じ思いなのだと思う。
「それに、いい加減あんた達の俺に対しての評価を改めてもらいたいからな」
「評価……?」
本来、スコールは自身の力を見せつけたりするタイプの人間ではない。
だが、スコールの本質は間違いなく戦士であり、そして自身が最強の傭兵たるSeeDであることに少なからぬプライドも持っている。
それが、こちらへ呼ばれてからというものの、明らかにその戦闘力は過小評価されている。
自身の力が評価されないというのは、自分がガーデンに入ってからの10年近くを否定されるに等しい。
(冗談じゃない)
安全装置を外し、弾を装填する。
(ルイズは、自分の努力が実を結ばないことをさっき俺に当たっていた。俺もそうだ。正SeeDに成るまで苦労はあった。それを否定させはしない)
「な、何よ。いきなり睨み付けて……!」
「……別に」
『もう、スコール。悪い癖。前にも言ったでしょ、言いたいこと言わないと、相手に伝わらないよ』
相変わらずのスコールの態度に、リノアは呆れた。彼女の声がスコールへ届く訳ではなかったが。
「も、もう知らないんだから!人の忠告も聞かないで、アンタなんかギーシュにぼっこぼこにやられちゃえばいいのよ!」
仮クライアントの罵倒を背中に浴びつつ、スコールは人で円形のコロシアムのようになっている庭の中へと歩を進めた。
「よく逃げずに来たな、平民!」
薔薇の造花を携え、ギーシュ・ド・グラモンがスコールに向く。
「諸君、決闘だ!僕は貴族だから当然、魔法で戦う」
良いな?という風にこちらを嘲笑うかのような眼を、正面から見返す。
「好きにしろ。俺も俺で、全てを駆使して当たらせてもらう」
(所持魔法、G.F.および各ジャンクション、チェック終了。行くぞ)
右腕一本で×の字に一度ライオンハートを降り、正眼に構える。
「ふっ……薄汚い傭兵風情が。地に這い蹲るが良い!出よワルキューレ!」
薔薇を振るギーシュの前に、剣を持った青銅の像が現れる。
「どうだ、この美しい姿は!まさにこの僕に相応しい戦い方だろう?」
(まずは敵戦力の把握か)
なるだけ手持ちの魔法は使いたく無いので、視線をあちこちに飛ばす。
(あった)
木陰で本を読んでいる眼鏡の少女に、求めるものがあった。
「ドロー ライブラ」
その少女からドローした魔法を、そのままギーシュのゴーレムに放ち、対峙する相手のデータを読み取る。
ワルキューレ
ギーシュ・ド・グラモンが系統魔法により作成したゴーレム。
材質は青銅であり、比較的もろい
「……何だこれは、がらくたじゃないか」
困惑顔で、スコールは呟く。読み取れるステータスはどれもこれも低いものばかりだ。
『がらくた』の一言に辺りがどよめき、ギーシュを嘲笑する笑いがあちこちから上がる。
「が、がらくただとぉ!?僕のワルキューレを!」
『外見は……悪くないけど、これじゃあねぇ』
「僕のワルキューレをおとしめたこと、後悔させてやるっ!」
ギーシュの手の中で薔薇が振られ、ワルキューレがスコールへと突進してくる。
振り下ろされる剣戟を僅かに半歩、身体をずらしてスコールは避ける。そして間髪おかず、避けると同時に振りかぶっていたライオンハートを振り下ろしてトリガーを引き絞った。
轟、と爆音と共に両断されたワルキューレががしゃんと左右に崩れ落ちる。
「なっ何だ今のは!?」
ガンブレード特有の、まるで引き裂かれたような切断面に、冷や汗を浮かべながらギーシュが問う。
周囲にいる生徒達も、目の前で起きた事象にどよめいていた。
『無理も無いかもね。ここの人たちにとっては、ガンブレードの火薬の爆発だって、何かしらの魔法の力に見えるだろうし』
「…………」
ギーシュの問いかけには答えず、スコールは再び正眼にライオンハートを構え直す。
「ふ、ふん!火の秘薬を隠し持っていたとは驚きだが……これぐらいの抵抗は予想のうちさ!」
口の端を引きつらせながらも、薔薇を振りかざすギーシュ。新たに5体のワルキューレが錬金される。
「どうだ!この数は捌き切れまい!行け、ワルキューレ!」
それを見つつ、スコールは思考する。
(またゴーレムを作ってこちらに差し向けた。……昼間の授業内容……土のメイジはゴーレム作成が基本戦術か?)
ハルケギニアでは地火風水の4属性がメジャーだと言うから、クエイク、ファイガ、ウォータ、トルネドを属性防御へジャンクションしていたのだが、クエイクは無意味だったか。
(しかしそれはそれとして、確かに数は厄介だな)
自身のスピードも、ジャンクションの力によって飛躍的に上昇している自信はあるが、流石に5体全てに対して先手を取れるとは思えない。
オートヘイストや、スピードに偏重したジャンクションにしておけばまた違ったかも知れないが。
一斉に襲い掛からんと、半包囲で迫るワルキューレを見ながら思考を巡らせる。
G.F.を召還していたのでは時間がかかる。トルネドなどの全体攻撃可能で有る程度強力な魔法がドロー出来れば良いのだが、と辺りを見回す。
(!なんだと!?)
該当する魔法で真っ先に認識したのは、自身のクライアントからドロー出来るモノだった。それも、禁断魔法『アルテマ』。疑似魔法中、最強とも呼ばれる力だ。
(……いや、あの『失敗魔法』の威力を考えれば、むしろ妥当かも知れない)
ともあれ、手持ちの魔法を消費することなく早急に決着が付けられそうだ。
「ドロー アルテマ」
ルイズより抽出した魔法を、眼前に群がった銅像達に叩き付ける。
午前中のルイズの失敗魔法にも劣らぬ爆発が発生し、ワルキューレが破壊される。
「な、何だこれは!?」
「そこだっ!」
「うわ!?」
爆発に動揺したギーシュの眼前まで一気に距離を詰ると、首筋にライオンハートの輝く切っ先を突きつける。
「まだ、やるか……?」
困惑顔で、スコールは呟く。読み取れるステータスはどれもこれも低いものばかりだ。
『がらくた』の一言に辺りがどよめき、ギーシュを嘲笑する笑いがあちこちから上がる。
「が、がらくただとぉ!?僕のワルキューレを!」
『外見は……悪くないけど、これじゃあねぇ』
「僕のワルキューレをおとしめたこと、後悔させてやるっ!」
ギーシュの手の中で薔薇が振られ、ワルキューレがスコールへと突進してくる。
振り下ろされる剣戟を僅かに半歩、身体をずらしてスコールは避ける。そして間髪おかず、避けると同時に振りかぶっていたライオンハートを振り下ろしてトリガーを引き絞った。
轟、と爆音と共に両断されたワルキューレががしゃんと左右に崩れ落ちる。
「なっ何だ今のは!?」
ガンブレード特有の、まるで引き裂かれたような切断面に、冷や汗を浮かべながらギーシュが問う。
周囲にいる生徒達も、目の前で起きた事象にどよめいていた。
『無理も無いかもね。ここの人たちにとっては、ガンブレードの火薬の爆発だって、何かしらの魔法の力に見えるだろうし』
「…………」
ギーシュの問いかけには答えず、スコールは再び正眼にライオンハートを構え直す。
「ふ、ふん!火の秘薬を隠し持っていたとは驚きだが……これぐらいの抵抗は予想のうちさ!」
口の端を引きつらせながらも、薔薇を振りかざすギーシュ。新たに5体のワルキューレが錬金される。
「どうだ!この数は捌き切れまい!行け、ワルキューレ!」
それを見つつ、スコールは思考する。
(またゴーレムを作ってこちらに差し向けた。……昼間の授業内容……土のメイジはゴーレム作成が基本戦術か?)
ハルケギニアでは地火風水の4属性がメジャーだと言うから、クエイク、ファイガ、ウォータ、トルネドを属性防御へジャンクションしていたのだが、クエイクは無意味だったか。
(しかしそれはそれとして、確かに数は厄介だな)
自身のスピードも、ジャンクションの力によって飛躍的に上昇している自信はあるが、流石に5体全てに対して先手を取れるとは思えない。
オートヘイストや、スピードに偏重したジャンクションにしておけばまた違ったかも知れないが。
一斉に襲い掛からんと、半包囲で迫るワルキューレを見ながら思考を巡らせる。
G.F.を召還していたのでは時間がかかる。トルネドなどの全体攻撃可能で有る程度強力な魔法がドロー出来れば良いのだが、と辺りを見回す。
(!なんだと!?)
該当する魔法で真っ先に認識したのは、自身のクライアントからドロー出来るモノだった。それも、禁断魔法『アルテマ』。疑似魔法中、最強とも呼ばれる力だ。
(……いや、あの『失敗魔法』の威力を考えれば、むしろ妥当かも知れない)
ともあれ、手持ちの魔法を消費することなく早急に決着が付けられそうだ。
「ドロー アルテマ」
ルイズより抽出した魔法を、眼前に群がった銅像達に叩き付ける。
午前中のルイズの失敗魔法にも劣らぬ爆発が発生し、ワルキューレが破壊される。
「な、何だこれは!?」
「そこだっ!」
「うわ!?」
爆発に動揺したギーシュの眼前まで一気に距離を詰ると、首筋にライオンハートの輝く切っ先を突きつける。
「まだ、やるか……?」