マジシャン ザ ルイズ (6)行き過ぎた模擬戦
朝。
ルイズとギーシュが朝食をとる為に『女神の杵』亭の二階から一階に降りると、そこには重苦しい気配が充満していた。
既に着席しているウルザ、ワルド、キュルケ、タバサ、終始無言。
たまにキュルケが場を和ませようと口を開くが、会話が続かない。
ウルザとワルド、この二人が一階を包み込む陰の気の中心であるようだ。
ルイズとギーシュが朝食をとる為に『女神の杵』亭の二階から一階に降りると、そこには重苦しい気配が充満していた。
既に着席しているウルザ、ワルド、キュルケ、タバサ、終始無言。
たまにキュルケが場を和ませようと口を開くが、会話が続かない。
ウルザとワルド、この二人が一階を包み込む陰の気の中心であるようだ。
多少、気後れを感じながらもルイズ、ギーシュもテーブルに着席する。
「え、ええと……皆、昨日は、ちゃんと眠れた?」
「ああ」―――ウルザ
「勿論だ」―――ワルド
「……ええ」―――タバサ
「え、ええ、ぐっすりよ。適度な睡眠は美容のために不可欠ですものね!」―――キュルケ
「え、ええと……皆、昨日は、ちゃんと眠れた?」
「ああ」―――ウルザ
「勿論だ」―――ワルド
「……ええ」―――タバサ
「え、ええ、ぐっすりよ。適度な睡眠は美容のために不可欠ですものね!」―――キュルケ
「「「「………………」」」」
再び、沈黙が世界を支配する。
「ちょっと、こっち来なさい」
「え?何よキュルケ」
キュルケがルイズの肩を掴んで立たせ、酒場の隅に連れて行く。
「え?何よキュルケ」
キュルケがルイズの肩を掴んで立たせ、酒場の隅に連れて行く。
「何なのよあれは!まるでタバサが3人いるみたいじゃない!?」
「知らないわよ、そんなこと」
「何かおじさまもワルド子爵もピリピリしちゃってるし、タバサは相変わらずいつもの通りだし」
「知らないわよ、そんなこと」
「何かおじさまもワルド子爵もピリピリしちゃってるし、タバサは相変わらずいつもの通りだし」
二人が視線をテーブルに向けると、テーブルに一人とり取り残されたギーシュが助けを求める視線でこちらを見ていた。
「とにかく、何かあんたが関係してるらしいから、責任持って解決なさいよ」
「そんなこと言っても、あの二人の仲が悪いのは私のせいじゃないわよっ!」
「そんなこと言っても、あの二人の仲が悪いのは私のせいじゃないわよっ!」
「ルイズ、君に介添え人を頼みたい」
「はあ?」と口を開けたまま固まるルイズ。
ウルザとワルドがどうして仲良く出来ないのかを、問いただすつもりで席に戻ってみれば、一番最初にかけられた言葉が、ワルドからのこの台詞である。
「この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備える為の砦だったんだよ。中庭には練兵場がある。
そこで僕とミスタ・ウルザが手合わせをするから、その介添え人を君に頼みたい」
「そういうことらしい、ミス・ルイズ。頼まれてくれるかな?」
「な、な、な…」
何でこんなに突然話が進んじゃってるのよ、と言いたいルイズ。
突然すぎる展開に言葉にならない。
「古きよき時代、貴族達はよくくだらないことで杖を抜きあったものさ。そう、女を取り合ったりね」
「はあ?」と口を開けたまま固まるルイズ。
ウルザとワルドがどうして仲良く出来ないのかを、問いただすつもりで席に戻ってみれば、一番最初にかけられた言葉が、ワルドからのこの台詞である。
「この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備える為の砦だったんだよ。中庭には練兵場がある。
そこで僕とミスタ・ウルザが手合わせをするから、その介添え人を君に頼みたい」
「そういうことらしい、ミス・ルイズ。頼まれてくれるかな?」
「な、な、な…」
何でこんなに突然話が進んじゃってるのよ、と言いたいルイズ。
突然すぎる展開に言葉にならない。
「古きよき時代、貴族達はよくくだらないことで杖を抜きあったものさ。そう、女を取り合ったりね」
中庭の練兵場。
そこには二十歩ほど離れて向かい合っているウルザとワルド。
ウルザは右手にデルフリンガー、左手に杖を持ち構えている。
奇しくも、一方のワルドも右手に剣、左手に杖のスタイル。
そこには二十歩ほど離れて向かい合っているウルザとワルド。
ウルザは右手にデルフリンガー、左手に杖を持ち構えている。
奇しくも、一方のワルドも右手に剣、左手に杖のスタイル。
練兵場にいるのは二人だけではない、ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュも離れた場所で見守っている。
ルイズの手には、かつてキュルケがウルザに贈ったシュペー卿の剣。
「何でおじさまが、あんたの剣なんて持ってるのよ」
「知らないわよ、そんなこと」
呆れてものも言えない、どうにでもなれと不貞腐れているルイズである。
ルイズの手には、かつてキュルケがウルザに贈ったシュペー卿の剣。
「何でおじさまが、あんたの剣なんて持ってるのよ」
「知らないわよ、そんなこと」
呆れてものも言えない、どうにでもなれと不貞腐れているルイズである。
「ふふ、男というのはやっかいなものだね。強いか弱いか、それが気になると、どうにもならなくなる」
体の向きをルイズのほうに変えて、ワルド。
「彼の実力を試してみたくなったのさ」
「どうせ止めてって言ってもやるんでしょ、いいわ、あんた達、死ぬまでやってればいいのよ」
肩を竦めるワルド、嫌味なほどに絵になる。
体の向きをルイズのほうに変えて、ワルド。
「彼の実力を試してみたくなったのさ」
「どうせ止めてって言ってもやるんでしょ、いいわ、あんた達、死ぬまでやってればいいのよ」
肩を竦めるワルド、嫌味なほどに絵になる。
「では、前口上はそんなところでいいのかね?ワルド子爵」
「………ぬかせっ!」
「………ぬかせっ!」
ワルドが素早く歩を詰める。
―――その速さはガンダールヴの力の後押しを受けたウルザにも匹敵。
勢いそのまま、ワルドの剣がウルザを突く。
ウルザ素早く半身後ろに下がり、ねじる様にして体ごと杖を払い、必殺の突きを逸らす。
反撃、ねじった体勢から反動をつけ、右手の剣を逆袈裟に切り上げる。
虚空。
払われた突きから、体勢を立て直すことなく斜めに体勢を沈ませて膝を付き、そのまま転がり距離を離すワルド。
―――その速さはガンダールヴの力の後押しを受けたウルザにも匹敵。
勢いそのまま、ワルドの剣がウルザを突く。
ウルザ素早く半身後ろに下がり、ねじる様にして体ごと杖を払い、必殺の突きを逸らす。
反撃、ねじった体勢から反動をつけ、右手の剣を逆袈裟に切り上げる。
虚空。
払われた突きから、体勢を立て直すことなく斜めに体勢を沈ませて膝を付き、そのまま転がり距離を離すワルド。
立ち上がりを狙ってウルザの雷撃。
先読みしていたワルドがライトニング・クラウドの魔法で迎撃、相殺。
先読みしていたワルドがライトニング・クラウドの魔法で迎撃、相殺。
「す、凄い」
思わず感じたことが口に出るルイズ。
「突きを払って反撃したところまでは見えたんだけど、そこからがよく分からなかったわ」
「僕にはむしろ最初から何が起こっているか、全然分からないんだが」
「………」
思わず感じたことが口に出るルイズ。
「突きを払って反撃したところまでは見えたんだけど、そこからがよく分からなかったわ」
「僕にはむしろ最初から何が起こっているか、全然分からないんだが」
「………」
距離を離した二人は、魔法戦の構えに入る。
呪文を完成させ、先制攻撃。枝分かれした多数の火の流れがワルドを狙う。
冷静に対処、分岐している炎の基点を狙い打つ、エア・ハンマー。
巨大な空気の塊に散らされる火炎、そのまま連続でエア・ハンマーを唱え叩きつけようとするワルド。
「魔力の乱れ/Force Spike!」
打ち消し呪文の連続詠唱によってエア・マンマーの半数を無力化。
残ったいくつか、軌道を予測済みのエア・ハンマーを横っ飛びに回避。
呪文妨害に怯むことなく、平面的な回避が困難な「ウインド・ブレイク」を行使。
ウルザ、素早く最も現在効果的な呪文を判断。
猛る風の瀑布、猛威が到達する直前に現れる熱石の壁。
豪烈なる風に、脆くも破壊される溶岩壁。
しかし、物理法則とは逆方向、ワルドに向かい爆発的に飛び散る。
ワルド、唱えていた呪文を攻撃から防御にとっさに切り替え、再びウインド・ブレイク。
赤熱した溶岩片が吹き散らされる。
呪文を完成させ、先制攻撃。枝分かれした多数の火の流れがワルドを狙う。
冷静に対処、分岐している炎の基点を狙い打つ、エア・ハンマー。
巨大な空気の塊に散らされる火炎、そのまま連続でエア・ハンマーを唱え叩きつけようとするワルド。
「魔力の乱れ/Force Spike!」
打ち消し呪文の連続詠唱によってエア・マンマーの半数を無力化。
残ったいくつか、軌道を予測済みのエア・ハンマーを横っ飛びに回避。
呪文妨害に怯むことなく、平面的な回避が困難な「ウインド・ブレイク」を行使。
ウルザ、素早く最も現在効果的な呪文を判断。
猛る風の瀑布、猛威が到達する直前に現れる熱石の壁。
豪烈なる風に、脆くも破壊される溶岩壁。
しかし、物理法則とは逆方向、ワルドに向かい爆発的に飛び散る。
ワルド、唱えていた呪文を攻撃から防御にとっさに切り替え、再びウインド・ブレイク。
赤熱した溶岩片が吹き散らされる。
ワルドにとって、相手は自身の知識に無い魔法の使い手。
先読みにより、魔法戦を有利に運ぶことは困難。
再び魔法戦から接近戦へとスイッチを決断。
先読みにより、魔法戦を有利に運ぶことは困難。
再び魔法戦から接近戦へとスイッチを決断。
呪文の完成。
ワルドから分離する、もう一人のワルド。
地面スレスレ、極限まで低く、伸ばした体勢での横なぎの一閃。
ウルザ、低威力の赤マナ呪文、ショックによる迎撃。動きが止まればそれで良し。
直撃、掻き消える蜃気楼。
気配―――上。
杖と剣、十字にて防御の体勢。
刹那の洞察。 影が、無い。
ワルドから分離する、もう一人のワルド。
地面スレスレ、極限まで低く、伸ばした体勢での横なぎの一閃。
ウルザ、低威力の赤マナ呪文、ショックによる迎撃。動きが止まればそれで良し。
直撃、掻き消える蜃気楼。
気配―――上。
杖と剣、十字にて防御の体勢。
刹那の洞察。 影が、無い。
背後、冷やりとする感覚。
「そこまでよっ!!!!!!」
制止。その意外なる主……キュルケ。
「それ以上やったら、どちらかが死ぬわ」
ウルザ、その背後に、剣を突きの体勢のまま止めているワルド。
ウルザとワルド、二人の手合わせは、勝者ワルドという形で決着した。
「魔法衛士隊のメイジは戦闘に特化している
これで、分かっただろうルイズ、彼では君を守れない」
ワルドからルイズへ、優劣の宣言がなされる。
これで、分かっただろうルイズ、彼では君を守れない」
ワルドからルイズへ、優劣の宣言がなされる。
手加減が出来ないですって?そりゃ病気ね
―――虚無魔道師見習い ルイズ
―――虚無魔道師見習い ルイズ