/36/靴の裏を血に染めて、玲音の死体に手を伸ばす。……意外と温かい。「死体って結構あったかいんだ…」「一時間に一℃のペースで室温まで下がるそうですよ」心底どうでもいい九重の雑学を聞かされながら、なんとはなしに首筋に手を伸ばした。「……脈があるんだけど」「一時間に10回のペースで0まで──」「いやそれは嘘だよね!」ていうか生きてるじゃん。と言おうとした瞬間、それまでうずくまっていた玲音の死体が、もとい玲音が起き上がった。周囲を見渡した後、にやりと邪悪な笑みを浮かべる。「く、くはは、くははははは」おおよそそれまで二人が聞いたことのないような邪悪な笑いであった。「ついに蘇ったぞ!我輩は地獄を統べる108の魔神が一人──」統治者多いな。地方分権制なのか地獄。などという突っ込みをしてくれる人はこの場にはいなかった。「おおお、玲音さんの死体を依代に地獄の魔神が復活しましたよ?こいつぁミステリにあるまじき超展開!」セレナちゃん、まだ座ったままの自称魔神の太股を踏んだ。そのまま右手で胸倉を掴んで持ち上げる。足から発せられる下向きのベクトルと手から発せられる上向きのベクトルは反発しあい、腰から下がもげそうな程の激痛が自称魔神の体を走り抜けた。「地獄に帰れ」「はいすいません。死ぬほど痛いんで手か足を離していただけませんでしょうか」先程までの邪悪さはどこへやら。最早そこには半泣きで哀願する血塗れのネコミミメイド(♂)がいるだけであった。「生きてるじゃん!つーか生きてるじゃん!!」ショックの余りか二回言った。「はいすいません。生きててすいません」こっちはこっちで人生まるごと謝罪モードである。ちなみに九重はひたすら笑い転げていた。
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