バトルROワイアル@Wiki

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276. 嘘 [3日目午前]

♀商人は激しくえずき、背を丸めて全身を震わせた。
「どうしたんですか!?」
「どいてっ」
驚く♀ケミを半ば突き飛ばすようにして淫徒プリが少女の傍らに膝をつき、丸まった体を無理矢理引き起こす。
「吐いて!早く!」
そう言って少女の顔をのけぞらせると有無を言わせず喉に指を突っ込んだ。
さらにみぞおちへ膝を当てて強く押す。
「ぇうっ、うぶぇえええぇぇぇっ」
少女の口から食べたものと胃液があふれ出した。
さらに彼女の口に水筒を押し付けて強引に水を流し込み、もう一度吐かせる。
毒物に対する素早い処置。
♀ケミへの疑いを完全には捨てていなかったからこその反応だろう。
次いで自分も吐こうとする様子を一瞬見せるが途中でやめる。
食べた順序と時間経過からして、同じ毒が入っていたならとっくに効果が出ていなければおかしい。
代わりに淫徒プリは周囲に問いかけた。
「緑ポーションかそれに類するもの、ありませんか!?」
即座に悪ケミが答える。
「したぼくがもってたはず」
「そうですか」
淫徒プリは激しく咳き込む♀商人を背負おうとした。
「追います」
毒薬を飲まされたのだとすれば助かる可能性は低いが、見捨てるわけにも行かない。
それを悪ケミが呼び止める。
「これに乗っけて」
悪ケミはひっくり返った♀商人のカートを起こし、しっかり握った。
「おんぶするより早いと思う」
「お願いします」
ひとつ頷き、淫徒プリは少女の体をカートに押し上げた。


「いったいどうして…」
今回に限り本当に心当たりがない♀ケミは狼狽する。
だが彼女に向けられる視線は厳しかった。
「まだしらを切るっ!?毒入れれたのはキミしか居ないだろっ」
♀マジはその手を♀ケミへ向けまっすぐ伸ばす。
疑っていたのに防ぎきれなかったという後悔が頭に血をのぼらせている。
「ま、待ってください。毒なんて」
「だまれ」
♀マジはファイアーボルトの詠唱をはじめた。
その表情に本気を感じて♀ケミは身を翻す。
ヒュドドドドドドンッ
木の後ろへ隠れるのに一拍遅れて炎の弾丸が着弾した。
細めの木では止めきれず、2発ほど肩先をかすめる。手加減はまったく感じられない。
「やめてくださいっ」
呼びかけながら鞄をさぐり、彼女はクロスボウを取り出した。
濡れ衣で命を落とすなんて馬鹿らしすぎる。
一戦して逃げるか。あの2人ならうまくすれば殺せるかも。
クロスボウを構えて様子をうかがうと、♀アコが♀マジの背をつついていた。
「あの人何かやったの?」
いささかのん気な質問が聞こえる。事態の急変についてこれてないらしい。
♀ケミは思わず少し期待した。なんとか♀マジを止めてくれないだろうか。
撃つのはやめて声を掛けようとする。
「私はなにも――」
「♀商人のお菓子に毒仕込んだんだよっ。あれ見て、ボク達に矢を撃ったのもきっとアイツ!」
説得しようとした言葉は♀マジの早口にさえぎられた。
しかも後半は事実なので思わず詰まる。
その間に♀アコは説明を要約した。
「つまり悪者ってことね」
「そう。わかった?」
「わかった」
♀アコはうなずき、そして♀ケミへ向けてびしりと指を突きつけた。
「正々堂々と勝負しなさいこの卑怯者っ」


「ちょっ…まっ…」
ガタガタとゆれるカートの上で♀商人は細い声を絞り出した。
「動かないでよっバランス悪いんだから」
カートを引く悪ケミが文句を言い、後ろで支える淫徒プリも彼女を寝かそうとする。
「じっとして、少しでも毒の回りを抑えてください」
「ちが…」
ひどい揺れで吐き気が止まらない。
胃にほとんど何も入ってない状態で無理矢理吐かされたために喉も痛い。
それでも♀商人は淫徒プリの手を押し切って体を起こした。
「うわ、ちょっとっ」
その動きで一気にバランスが崩れ、カートがかしぐ。
なんとか支えようとする2人の努力もむなしく、カートはそのまま横転して♀商人の体が投げ出された。
「♀商人さんっ」
淫徒プリは慌てて彼女の元に駆け寄る。
「大丈夫ですか」
「ごめんなさい…」
あちこちに擦り傷を作り、少女は泣いていた。
「謝んなくていいから。早く乗りなさいよ」
「揺れるかもしれませんけど我慢してくださいね」
悪ケミと淫徒プリはもう一度彼女をカートへ乗せようとする。
その優しい声に♀商人の嗚咽が深くなった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんさい…」
首を左右に振って謝罪を続ける。
「それはもういいですから」
「ちがうの」
なだめる淫徒プリの言葉にさらに強く首を振る。
悪ケミはだだっこを叱るように腰へ両手を当てて言った。
「今はいいとか悪いとか――」
「毒じゃないの」
「……え?」
小さな声だったので聞き間違いかと2人は顔を見合わせる。
だが♀商人は続けてはっきりした声で言った。
「みんなをびっくりさせようと思っておなかが痛いふりしただけなの。毒なんて入ってなかったのっ」
淫徒プリと悪ケミの顔から一瞬表情が消えた。
それが理解と同時に驚愕の表情に変わる。
「あんた、どうして」
「あの人♂セージさんに色目使ってたし、みんな怪しんでたから…」
「ドッキリはすぐネタばらさないとシャレにならないのよっ」
悪ケミが思わず声を高くすると♀商人はぽろぽろ涙を流した。
「言おうと、思ったけど、苦しくて…」
「…そうでしたね」
有無を言わせず処置した淫徒プリは唇をかんだ。
胃の内容物がない状態での嘔吐は胃が痙攣するため非常に苦しい。
しかも飲ませた水か逆流した胃液が気管に入ったらしく、ついさっきまで激しく咳き込んでいた。
しゃべれという方が無理だ。
そこまで考えて淫徒プリは首を振った。
「彼女を責めても仕方ありません。それより急いで戻らないと」
「そうね。罪をにくんでイタズラにくまずって言うし。…あんた、自分で歩けるわよね」
悪ケミの確認に♀商人はこっくりとうなずく。
それを見て淫徒プリは即座に歩き出した。
「急ぎましょう」
来た道を戻る足取りはすぐに小走りになる。
残された♀商人はしばらくぐすぐすと鼻を鳴らしていたが、やがて残されたカートを握った。
そして来た方角と向かっていた方角を見比べ…、トボトボと歩き出した。


♀アコに非難された♀ケミは顔をしかめる。
(冗談じゃない)
卑怯者呼ばわりは別にかまわない。だが非力な彼女が真っ向勝負なんてありえないし、ましてや今度のことは完全な濡れ衣だ。
「2人がかりは卑怯じゃないんですか」
思わず言い返してしまった。
「どの口が言うっ」
案の定逆上した声と地を蹴る音が聞こえ、盾にした木がズドンと鳴る。
「きゃっ」
♀アコの掌打で揺さぶられた木に♀ケミは弾き飛ばされ、地面に転がった。
すかさず幹を回り込んできた少女へ倒れたままクロスボウを向けて牽制。
だが距離が近すぎて発射前に先端を蹴り払われた。矢は見当違いの方向へ飛ぶ。
「こないでっ」
♀ケミには実戦経験が圧倒的に足りない。
とっさにグラディウスを抜くことも思いつかず、次の矢を探しながらクロスボウを振り回した。もちろん♀アコはやすやすと避ける。
がつ、と肩口を蹴り飛ばされてまた地に這う。
そうやって♀アコが動きを封じている間に♀マジの詠唱が進んでいた。
小さな赤い魔法陣が彼女を捉える。
「やめて!助けて!」
パニックに襲われた♀ケミは演技ではない悲鳴を上げた。
その声は怒れる少女達には届かず、だが別の男に届く。
「ちょ、なに?うわっ」
「ながま……助ける」
突然背後から腰に組み付かれて♀マジは狼狽の声を上げた。
急いで振り払おうとするが、凄まじいまでの力で強引に引きずり倒される。
体格、腕力の差が大きすぎてまるで勝負にならない。
うつぶせに頭を押さえつけられ、背中に体重を掛けられた。息がまともにできない。
(――しまった、♂スパノビ!?)
必死にあがく彼女は相手の正体に気付いた。


「どうしたの!」
いきなり声を上げて詠唱を中断した♀マジに気を取られ、♀アコはつい振り返る。
その瞬間、♀ケミが必死の反撃に出た。
「痛っ」
何かを脚に突き刺されて♀アコは跳び退る。
そのときにはもう♀ケミは転げるように逃げ出していた。
「逃がさ…あれっ?」
すかさず追おうとした♀アコの視界がかすむ。
刺された傷はそれほど深くないのに。
不思議に思って見下ろすと腿に矢が刺さっていた。
矢尻へ結び付けられた変色した布に見覚えがある。
「って、これも毒!?もー絶対許さないんだからっ」
刺さった毒矢を急いで抜き、傷口を絞って♀ケミの背をにらんだ。
よほど慌てているのかあちらも足がもつれている。まだ追いつけない距離ではない。
だが♀マジもピンチらしい。
彼女はどっちを優先するか一瞬だけ考えた。


そして、騒ぎにもう1人の男が目を覚ました。
「う…」
もともとの強面にさらに傷が増え、凄みの増した男はうっすらと目を開く。
空が狭い。密度の濃い茂みの中に寝かされているらしい。
彼はゆっくり全身の調子を確かめ始めた。
(どう…やら生きてやがるか。案外死なねえもんだ)
自分が死んだことにされ、墓まで作られているとは夢にも思わない。
と言っても彼が死んだと思っているのは♀ケミだけである。
♀ケミの本心を確かめるためと、さらには身動きの取れない彼の安全のため、♂セージがそういう嘘を提案したのだ。
とはいえその結果、手厚い看護を受けたとは言いがたい状態になったのは間違いない。
傷口はふさいであるようだが、かなりあちこちが痛む。
しばらくは動くのもやっとだろう。
(それでも寝てるわけにゃいきそうにねえな)
にやりと笑い、♂プリーストは動き出した。


<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:HPSP共にレッドゾーン

<♀アルケミスト>
現在地:E-6
所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食
外 見:絶世の美女
性 格:策略家
備 考:製薬型 悪女 毒疑惑により♀マジ達から逃走
状 態:脇腹に貫通創(治療済) 寄生虫ロシアンルーレット状態

<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている 仲間を襲う奴を止める
状 態:HPレッドゾーン脱出?

<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 馬牌×1 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
備 考:サバイバル・危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミをやっつける ♀マジも助けたい
状 態:多少の傷 SPほぼ枯渇 寄生虫ロシアンルーレット状態 毒状態

<♀マジ>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
   首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに敵意 ♂スパノビに押さえられている
状 態:足に軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し 寄生虫ロシアンルーレット状態

<♀商人>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
    悪ケミ・淫徒プリと同行 嘘が大騒ぎになり自己嫌悪中

<淫徒プリ>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱 食料二食
容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人
備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる
    ♀商人・悪ケミと同行 ♀ケミを信じるべきか?
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態 SPほぼ枯渇

<残り15名>

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