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GO!GO!クルセ子さん!

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GO!GO!クルセ子さん!


アルデバランへの道中、♂ローグ一行は小さい子供を連れている事から時々休んでは行軍を繰り返していた。
しかし、道中は♂ローグが思っていたより遙かに賑やかなものであった。
「まったく……てめぇらと来たらえんえんえんえんわけわかんねー話して、よくもまー飽きねぇもんだな」
♂ローグの苦情に、速攻で♀アーチャーが喰ってかかる。
「わけわかんないって何よー! 大体ローグが世事に疎いだけじゃない!」
「何が世事だ! わけのわかんねぇゴシップ話ばっかじゃねーか!」
しかし反論は多方面から寄せられる。
「♀アーチャー殿の話は人の世に興味のある我には特に興味深い、くだらぬ茶々を入れるでない」
「えー、アーチャーさんのお話おもしろいよ? お兄ちゃんおもしろくない?」
「す、すまん。♂ローグはこういう話嫌いであったか。……で、ゴシップ話とはなんだ?」
仏頂面でそっぽを向く♂ローグ。
「けっ、きゃーきゃー騒ぎやがって、まだロクに口もきかねえ♂BSのがマシだってーの」
♂ローグの言葉に、♀クルセが何のつもりか♂ローグの話題の方に乗ってやる。
「アヤツは一体何者であったのだろうな? ゲームに乗ってるのは間違い無いにしても、あの無言はなんと判断したものか……」
その時の事を思い出す♂ローグ。
「俺も不自然には思ってた。女も何も見境無いってなわかった。だが、それにしても奴の面には人間っぽさっての感じられなかったしな。それは迷宮の森で会った時もそうだった」
「思考内容や行動がモンスターのそれと酷似している……そう思えてならん」
♀クルセの言葉に♂ローグが大きく頷く。
「それだよ。狂墨なんて呼び方あるが、あのBSは正にそれ……にしてもやっぱり不自然だ」
♀クルセは♂ローグが同意してくれたのをいたく喜んだが、その後に続く言葉にきょとんとする。
「不自然とは?」
「俺の知ってるBSってな普段腰は低いし、人当たりはいいが、自分の技術にゃ誇りを持ってる連中が多い」
「ふむ」
「あいつはあの戦闘技術が売りなんだろうが……あのやり口にゃ誇りもクソもねぇだろ」
♂BSの事を思い出し、心から♂ローグに同意する♀クルセ。
「そもそもイカレちまってるってんならしかたがねえが、そうでないってんなら俺は似たような状態見たことがある……」
「心当たりがあるのか?」
♂ローグは地面に向かってつばを吐く。
「いけすかねえ奴らがやる手口さ。薬で判断能力奪ってから、自分達のいいように育て直すんだ。俺達ローグはこの手口を『洗脳』とか『調教』って呼んでる」
♂ローグの話に♀クルセも眉をひそめる。
「……そういった悪行の類は私も聞いた事がある。人の風上にもおけぬ輩だな」
「そう言うと思ったぜ。まあそいつにゃ通常数週間から数ヶ月の時間が必要だが、GMさまさまが絡んでりゃ一瞬でぱーなんて芸当も可能なんじゃねーのって……」
♀クルセは黙り込む。
「ま、そんなぞっとしねぇ話を思いついたってだけだ。別にあいつがそうだとは言わねえぜ」
俯きながら、♀クルセは訊ねる。
「その……洗脳とやらは具体的にどんな効果があるものなのだ?」
「ん? そうだな……誰かに対して絶対服従を刷り込むとか、誰か特定の奴を憎ませるとか、目的によって効果は色々らしいぜ」
♀クルセはその場に立ち止まる。
「副次的な効果も多いらしいがな、そのほとんどの場合で精神的に安定しないから、派手な作戦には使いにくいらしい……っておい、どうした?」
ぶるぶるとその場で震え出す♀クルセ。
「一つ、私にも……心当たりがある。……その洗脳とやらは、処置を施されてから時間が経って効果を発揮したりもするのか?」
「あ、ああ、個人差ってのもあるだろうしな。おい、マジでどうした? 具合でも悪いのか?」
♀クルセの異常に、他の話題をしていた♀アーチャー、子バフォ、アラームも♀クルセを見る。
全員が注目する中、♀クルセは泣き出しそうな顔で言った。
「もしかしたら……私は『洗脳』を受けているかもしれぬ……いや、間違い無い。私は……」
♀クルセの言葉に♂ローグは仰天する。
「おいおい、いきなり何言い出すんだお前は!」
♂ローグの言葉に♀クルセは絞り出すように言う。
「……ここ最近の話だ……その対象の者と関わっていると心が平静を欠く。その一挙手一投足が気になってたまらない」
油断無い視線を♂ローグは♀クルセに注ぐ。
「つまり、特定の相手に殺意を抱いている……そういう事か?」
♀クルセは申し訳なさに誰の顔も見る事が出来ない。
「殺意ではない。殺意ではないが……その洗脳が時と共に効果を発揮するのなら……今の状態から殺意に移る事もあり得るやもしれぬ」
皆、あまりの事に言葉も無い。そんな中で♂ローグが言う。
「相手は誰だ? お前がそこまで言うんだ。この中の誰かなんだろ?」
救いを求めるような顔、こんなすがるような表情の♀クルセを♂ローグは初めて見た。
「……ローグ、相手はお前だ」
全員が一瞬凍り付く。♀クルセは大声を張り上げた。
「そうだ! お前を見ていると胸が痛む! その何気ない言葉一つで私は天に昇り地を這う!」
泣き出しそうな顔で絶叫する♀クルセ。
「そのくせお前を視界に収めておらぬと落ち着かぬ! ありえぬ程お前の事が心配になる!」
全身を恐怖に震わすが、それでも言葉を止めない。
「わ、私がお前を殺す……それだけは、それだけは私には耐えられないっ!」
荷物をその場に落し、後ずさる♀クルセ。
「駄目だ! 私はこの場に居ては駄目なのだっ!」
そう叫んで突然走り出す♀クルセ。
アラームはそんな♀クルセを見て驚き声をかける。
「おねえちゃん!」
そして、♂ローグと♀アーチャーの二人はバカみたいにあんぐりと大口を開けていた。
「……おいあじゃこ。あいつ本気で言ってるのかあれ?」
「アーチャー。真剣そのもの、泣きそうな顔してたわよ♀クルセさん」
「そーだなー。あいつの事だから本気で川に身投げとかしかねねーぞアレ」
突然動き出す♀アーチャー。
「ってばか! 何やってるのよ! 早く後を追いなさいよ!」
「ふざけんな! 俺が後追って何言うってんだよ! 行って事情を説明しろってか!? 死ぬほど気まずいぞそれ!」
その説得力に言葉につまる♀アーチャーは、即座にダッシュで♀クルセを追う。
「ローグ! あんたはここに居なさい! 話がややこしくなるからね!」
「……行けるかっての。何言やいいんだ一体」
アラームと子バフォがおろおろしながら♂ローグを方を見ている。
「別に心配ねーんじゃねーの。単なる勘違い……ああ、最悪の勘違いだが……というかそっちも勘違いであってくれっ!」

♀アーチャーが追いかけると、すぐに♀クルセは見つかった。
絶望に打ちひしがれ、樹木に寄りかかるように立っている♀クルセに、♀アーチャーは声をかける。
「あー、そのー、クルセ……さん?」
「……アーチャーか……あまり私に近づくでない……」
「あのね……その多分、それ……クルセさんの勘違いっていうか……一応、確認したいんだけどいい?」
「……好きにしろ」
全てがどうでも良いとばかりに、あらぬ方を見ながら言う♀クルセ。
「えっと、今さ、もしかして胸が張り裂けそうになってない?」
♀アーチャーの言葉に♀クルセは少し驚く。
「お前も洗脳に詳しいのか? ……ああ、その通りだ。我が身そのものも張り裂けそうな……そんな気分だ」
「じゃあさ、今までクルセさんローグと話していて楽しかった? ローグが喜んだらクルセさんも嬉しかった?」
「うむ、その通りだ……自分の趣味に合う合わない関係無く、ローグと話をしているだけで心が和んだ……だが、時にそれは私を絶望の淵にも追いやった」
「……それはローグがクルセさんの事を何か言った時?」
♀アーチャーの的確な言葉に♀クルセは驚きに目を見開く。
「なんと、まったくその通りだ。奴はああいう男であると理解しておるつもりだが……時に自制が効かなくなる程に、それでも、ローグから私は目を離す事が出来ぬ……」
♀アーチャーは溜息をつく。
「この際趣味の善し悪しはおいといて……えっとね結論から言うと、♀クルセさんローグの事好きでしょ?」
その言葉に意外そうな顔をする♀クルセ。
「当然だ。確かに口は悪いがローグは男の中の男だぞ。嫌う理由なぞある訳がない」
両のこめかみを押さえる♀アーチャー。
「ああそういうんじゃなくって……♀クルセさんは、♂ローグに、恋してるって事」
♀クルセは♀アーチャーをまじまじと見る。
「……恋? 私が? ローグに?」
「うん、今までクルセさんが言った症状、ぜーんぶそう言ってる。クルセさんも他人が恋した話ぐらい聞いた事あるでしょ?」
「ああ……あるにはあるが……ええと……その……う、うぇ?」
頭の中がぐるぐると回る。思考がまとまらない♀クルセ。
そして、時間と共に少しづつだが考えがまとまってくる。
そうして自身が出す答えのどれをとっても、♀アーチャーの言葉を否定出来ない。
加速度的に顔が赤くなっていく。恥ずかしさに口元を両手で覆い隠す。
「待て! 待てアーチャー! しかしっ! そんな私がっ!? ええっ!?」
木に額を当てて、再度考え直す♀クルセ。だが、答えは見つからない。
「あ~。クルセさん、そのね、とりあえず落ち着いて……」
「駄目だ! 全く落ち着けぬ! っと待て! まてまてまて! まさか……ローグもこれをっっっ!?」
頭を掻く♀アーチャー。
「あー、多分ー」
それを聞くなり、脱兎のごとくその場から逃げ出す♀クルセ。
「わー! 待ってってば!」
必死に♀クルセの腰にしがみつく♀アーチャー。
「はーなーせー! 駄目だ! もしローグに見つかりでもしたらどうするというのだ!?」
「見つかるも何も戻るんだってば! お願いだから落ち着いてクルセさーん!」
片手で顔全体を覆う♀クルセ。顔からは湯気が出んばかりだ。
「ど、どんな顔をして会えば良いというのか! 駄目だ! 今ローグの顔を見たら私は絶対どうにかなってしまう!」
そんな♀クルセ達に声をかける当事者のもう一人。
「べっつにいつも通りでいいんじゃねえの?」
その声を聞き忘れるはずもない。それは♂ローグの声であった。
それを聞くなり、♀アーチャーを腰に抱えたまま、凄まじい速さで木の後ろに隠れる♀クルセ。
♂ローグはそんな♀クルセを睨み付ける。
「お前さあ……ご託はいいから、お前の仕事思い出してみろよ」
♀クルセは黙って木の後ろに隠れたままだ。
♂ローグはすたすたとその木に近づき、♀クルセのいる裏側から全力でその木を蹴り飛ばした。
その勢いで木は揺れ、♀クルセは木の反対側に倒れる。
「ク・ル・セ・イ・ダ・ー! お前の仕事は一体なんなんだって聞いてるんだよ!」
♂ローグの怒鳴り声、♀クルセは♂ローグのいきなりの行動に戸惑って言葉も出ない。
「お前はこいつらを守るんだろうが! 正義だかなんだかの為に命張るんだろ! それがそのザマはなんだって言ってんだ!」
言いたい事だけ言うとさっさとその場を離れる♂ローグ。
「少しそこで頭冷やせ!」

子バフォ、アラームを遠ざけて♂ローグは一人不機嫌そうに保存食を囓っていた。
そこに、後ろから♀クルセが声をかける。
「……ローグ」
「…………」
♂ローグは振り向かない。♀クルセはそんなローグの背中に向かって頭を下げた。
「済まなかった、私が未熟であった。今は……もっと他に考えるべき事が」
そこまで言った♀クルセの目の前にローグの手が差し出される。
その手にはやたら堅い保存食が乗っていた。
「……お前も食うか?」
後ろを向いたままそういう♂ローグ。
♀クルセは不意に目尻に浮かんできた涙をぬぐいながら、保存食を手に取る。
「ああ、いただこう……ありがとう」
相変わらず♀クルセに背中を向けたまま、♂ローグは不機嫌そうに言った。
「……お前がどうだろうと俺は変わらねえよ。お前がそう言ったろ、文句あるか?」
少しの残念さと、同じくらい少しの安堵感、そして感謝の念に♀クルセは頷く。
「ああ、お前はそのままが良い。それが一番、良いと私も思う……」
ふと余裕が戻る♀クルセ、そうして♂ローグを見ると、やはりいつものように、♂ローグも照れているのがわかった。
自然に笑みが零れる。そして、すぐにいつも通りの二人に戻れた。
冗談もあり、真面目な話もあり、そんな下らない話をするのは、♀クルセにとって、そして♂ローグにとっても悪い時間ではなかった。

「何よ~。もーちょっとこー……展開とかあってしかるべきじゃない?」
木の陰からぶつぶつ言う♀アーチャー。子バフォも不愉快そうだ。
「うむ、どらまちっくしちゅえーしょん、というのを期待しておったが……」
「でも、仲良くなって良かったぁ」
「もっと仲良くなるチャンスだってのに、バカよねあのアホローグは。生涯無いわよ、あんなビッグチャンス」
「単に度胸が無いだけであろう。腰抜けめが、永久に後悔するが良いわ」
「何が許せないかって、クルセさんがぴゅあすぎて、まだまだチャンスありそうなのがムカツクわ」
「仲良くなったんだからいいよぅ。ケンカしないのが一番だよ」
「まああれだな、こんな所でのぞき見しておる我らが一番惨めな気がしないでもないぞと」
「……それは言わないで、お願いだから」


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