*2:A labyrinth of under*

崩れる音はその内やみ、前方で光が溢れた。
「勝ったんだ。」
やっと出られる。
早足だった足はゆっくりとし、安堵が三人の顔を満たした。
光までもう後100mもないだろう。
アベルとマリアは目を合わせる。
その目には、光が映っていた。
あと90m、80m、70m…
光が次第に大きくなる。
ふと、最後尾だったシグが歩みを止めた。
「どうした?シグ。」
「何か来てないか?」
三人が押し黙る。
確かに来た道から何かを引きずるような…。
「ライト!」
アベルが懐中電灯を受け取り、後方を照らした。
そして、それがもう直ぐそこに居る事に気付いた。
それは…そう、アレだった。
引きずる様な音は、そのへし折れた体を引きずる音だ。
「あの怪物、死んだはずじゃ…!」
生気のない目をこちらに向け、何かに引っ張られてるかの様に来る。
「逃げ切るか?」
三人はクルリと前を向き直し、駆け出した。
が、怪物も駆け出したが如くの速さになる。
シグは振り返ると、猟銃を構えた。
「構わない、先に行け!」
「しかし…!」
「次こそ邪魔するな。穴が半人分の大きさ位になったら言ってくれ!」
最後の言葉はマリアに言ったらしく、マリアは頷くとアベルを引っ張って走った。
アベルは少しシグを睨むとマリアに付いて走った。
穴は右を曲がった奥から光を放って待っていた。
相当崩れた筈なのに、もう二人がやっと通れる位になっている。
何故、シグは穴が縮む事が分かったのだろう。
そんな事はどうでもいい。
アベルはまずマリアを外へ出し、次に自分が出た。
外は一面の銀世界で、一瞬目が眩む。
柔らかい雪が足を縛ったがなんとか姿勢を保ち、穴へと体を向けた。
銃声は相変わらず穴の奥から聞こえる。
一寸先は闇という感じで、全くシグの様子が見えない。
やはり、行くべきか?
アベルは鞄を下ろし、ボウガンを取った。
しかし、行っても又邪魔扱い。
ここはもしもを考えて、マリアを近く置いておくべきか?
「アベルさん、ちょっとそこで待ってて。」
マリアが話しかけたが、気にも止めずにアベルは片手をヒラヒラした。
ただボウガンを見つめる。
なんて判断力がないんだろう。
マリアが視界を通り過ぎる。
「--って、何処行くんだ!」
マリアは構わず穴に入り、ちょうど光がギリギリ入る曲がり角へと走ってしゃが
んだ。
そして何かを見て確信し、それを採った。
「マリア、危ない!」
アベルは中に入れず、手招きを一心不乱にした。
「ちょっとだったのよ、すぐ戻るわ」
マリアが踵を返し、こちらに走って戻って来た。
穴はその間にも縮み、一人がやっと立って通れるぐらいになっている。
そろそろシグを呼ぼうか。
そう思いながら手を差し出すと、銃声はぴたりと止まった。
手を受け取ったマリアが急いで外に出る。
「…な!」
アベルはマリアを引っ張った後、急いでボウガンを握った。
「シグ、穴が小さくなりすぎるわ!」
マリアの声がこだまする。
返事がない。
こだまが絶える頃、何かが来る気配がした。
それは次第に速くなり、猛スピードでこちらを目指している!
アベルはボウガンを構えた。
まだ見えない。
来たなら一発で仕留めてやる!
「弾が切れた!!」
猛スピードで走って来たシグは、片手にもう使えない猟銃を担いでいた。
後ろからは少し遅れて、しかし早い重い足音が続く。
標準を合わせていたアベルは我に帰って、ボウガンを放り出して手を伸ばした。
マリアも力の限り伸ばす。
手は確かにシグの手を掴むと、後方へ力いっぱい投げた。
シグの体が浮く。
穴は先程とは比にならない程早く縮む。
穴の奥からはあの怪物が、恐るべき速さで追い掛けて来ている。
宙に浮いた体は見事に穴を抜け、マットに着地。
口の開けていた穴は最後に怪物の雄叫びだけ放り投げると跡形もなく消えた。

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最終更新:2016年03月27日 19:31