ちっ…畜生、情けねぇ…。
大体毛利のいつものやり口見てりゃ、どっかで見抜けそうなもんじゃねぇか。
なのに何の疑いも無しにすっかり浮かれて舞い上がっちまうなんざ…俺もヤキが回ったな…。
大体毛利のいつものやり口見てりゃ、どっかで見抜けそうなもんじゃねぇか。
なのに何の疑いも無しにすっかり浮かれて舞い上がっちまうなんざ…俺もヤキが回ったな…。
心を蝕む苦悶に顔を歪め…。
それでもしばらくした後に何とか全力を振り絞ってよろよろ起き上がり、
元親は襖にしなだれかかるようにしながら一歩…そしてまた一歩と、来た道を戻る為歩き出す。
その隻眼で力なく見上げると、冴え冴えとした闇の中にぽっかり浮かぶ月が映る。
地上でも海上でも常日頃見慣れていた筈のそれが、今は果てしなく遠い存在に感じられた。
それでもしばらくした後に何とか全力を振り絞ってよろよろ起き上がり、
元親は襖にしなだれかかるようにしながら一歩…そしてまた一歩と、来た道を戻る為歩き出す。
その隻眼で力なく見上げると、冴え冴えとした闇の中にぽっかり浮かぶ月が映る。
地上でも海上でも常日頃見慣れていた筈のそれが、今は果てしなく遠い存在に感じられた。
そう言やぁ…毛利に想いのたけを告げた日も、確かこんな風にお月さんが妙に眩しかったな。
「…………………」
仕方ねぇじゃねぇか。
どんなに毛利が俺を憎んでたとしても…俺は毛利の事が好きだったんだ。
どんなに毛利が俺を憎んでたとしても…俺は毛利の事が好きだったんだ。
これまで懸命に元就を想い続けてきた自身の姿が走馬灯のように脳裏を過ぎり、
満月の輪郭がふいにぼんやりと滲む。
だがそれでも、元親はただひたすら月を見据え続けた。
満月の輪郭がふいにぼんやりと滲む。
だがそれでも、元親はただひたすら月を見据え続けた。
-やがて睨み合いに根負けした月を庇うかのように、
風によってどこからともなく流されてきた厚い雲が空一面を覆う。
唯一の光源が遮断され周囲が深遠の闇に沈む中、それでも夜空を凝視していた元親は…
その瞳に映る雲のように突如として己の胸によぎった微かな疑念を今一度反すうする。
風によってどこからともなく流されてきた厚い雲が空一面を覆う。
唯一の光源が遮断され周囲が深遠の闇に沈む中、それでも夜空を凝視していた元親は…
その瞳に映る雲のように突如として己の胸によぎった微かな疑念を今一度反すうする。
待て…。
いいだけ俺の心をもてあそんで最後に絶望のどん底に突き落とすのが『毛利の策』…?
そんな半端で甘っちょろい真似、毛利がする訳ねぇだろ。
大体俺が憎いなら酒にでも食事にでも一服盛って、とっとと俺を謀殺すりゃぁ良いだけの話だ。
…いや、そんなまどろっこしい事しなくたって、屋敷に入った時点で丸腰になった俺を
部下に襲わせたり、山道登ってる最中だって、陸路を急いでる最中だって…。
はっきり言って船で四国を出た時点から隙だらけだった俺を消す機会なんざ、山ほど有ったろ。
いいだけ俺の心をもてあそんで最後に絶望のどん底に突き落とすのが『毛利の策』…?
そんな半端で甘っちょろい真似、毛利がする訳ねぇだろ。
大体俺が憎いなら酒にでも食事にでも一服盛って、とっとと俺を謀殺すりゃぁ良いだけの話だ。
…いや、そんなまどろっこしい事しなくたって、屋敷に入った時点で丸腰になった俺を
部下に襲わせたり、山道登ってる最中だって、陸路を急いでる最中だって…。
はっきり言って船で四国を出た時点から隙だらけだった俺を消す機会なんざ、山ほど有ったろ。
なのに殺さねぇって事は…まだ俺に何らかの利用価値が有るからか?
だがもし毛利がはなっから俺の好意を利用するつもりだったら、
むしろ更に俺の期待を煽るような振る舞いをする筈だ。
なんせこの状況下で毛利が本気を出せば、俺を籠絡して四国を奪うくらい訳ねぇんだからな。
…まだ利用してもいねぇ内から、あえて俺の気分を害すような策におとしいれる事自体おかしい。
だがもし毛利がはなっから俺の好意を利用するつもりだったら、
むしろ更に俺の期待を煽るような振る舞いをする筈だ。
なんせこの状況下で毛利が本気を出せば、俺を籠絡して四国を奪うくらい訳ねぇんだからな。
…まだ利用してもいねぇ内から、あえて俺の気分を害すような策におとしいれる事自体おかしい。
何故だ…。
いくら私怨に駆られたって、いつもの毛利ならこんなつじつまの合わない策を練る筈がねぇ。
…なのに、何故だ。
何故…。
いくら私怨に駆られたって、いつもの毛利ならこんなつじつまの合わない策を練る筈がねぇ。
…なのに、何故だ。
何故…。
「……………………」
あぁ…さっぱり解らねぇ。
まぁ当然か、俺が今唯一解ってるのは俺自身の気持ちだけだ。
…毛利の気持ちは、毛利本人にしか解らねぇよ。
まぁ当然か、俺が今唯一解ってるのは俺自身の気持ちだけだ。
…毛利の気持ちは、毛利本人にしか解らねぇよ。
だがな…ここまで来た以上それを確かめねぇと、俺の気が済まねぇ。
元親は覚悟を決めて口元を引き結ぶと、ゆっくりきびすを返す。
そして息を殺し静けさに紛れるように…再び元就の部屋へと歩みを進めた。
そして息を殺し静けさに紛れるように…再び元就の部屋へと歩みを進めた。