欧州評議会:18歳未満の子ども・若者の参加についての閣僚委員会勧告


18歳未満の子ども・若者の参加についての加盟国に対する閣僚委員会勧告CM/Rec(2012)2
  • 2012年3月28日、第1138回閣僚代理会合において閣僚委員会が採択。
  • 原文:英語(PDF
  • 日本語訳:平野裕二
  • 活用のためのツール

目次

  • セクションI-定義
  • セクションII-原則
  • セクションIII-措置
    • 参加権の保護
    • 参加の促進および参加に関する情報提供
    • 参加のための空間の創設

 閣僚委員会は、閣僚委員会は、欧州評議会規程第15条bの条項に基づき、
 欧州評議会の目的が、とくに共通規則の採択によって加盟国間のいっそうの統合を達成することにあることを考慮し、
 子どもの権利を保護する、拘束力のある既存の欧州文書および国際文書ならびにとくに以下の文書の効果的実施を確保する必要性を考慮し、
 以下のことを顧慮し、
  • 子どもの権利および若者政策の分野における欧州評議会の目的
  • 第3回欧州評議会国家元首・政府首班サミット(ワルシャワ、2005年)およびそこで表明されたUNCRCの義務を全面的に遵守する旨の誓約
  • 欧州評議会の若者政策についての加盟国に対する閣僚委員会決議CM/Res(2008)23
  • 1985年から2008年にかけて8回開催された欧州評議会若者担当閣僚会議の関連の結論
  • 欧州評議会のプログラム「子どもたちのために、子どもたちとともに構築する欧州」および子ども参加の促進に関する戦略的重点
 欧州評議会の閣僚委員会、議員会議および地方自治体会議が採択した子ども・若者の参加に関連する勧告およびとくに以下の勧告を想起し、
 UNCRCおよびとくに以下のように規定する第12条を想起し、
「1.締約国は、自己の見解をまとめる力のある子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する。その際、子どもの見解が、その年齢および成熟に従い、正当に重視される。
2.この目的のため、子どもは、とくに、国内法の手続規則と一致する方法で、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても、直接にまたは代理人もしくは適当な団体を通じて聴聞される機会を与えられる。」[1]
[1] 国連・子どもの権利委員会(2009)、意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的意見12号も参照。
 以下のことを確信し、
  • 意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられる権利は、すべての子ども・若者の人間の尊厳および健康的な発達にとって基本的重要性を有すること
  • 子ども・若者の声に耳を傾け、かつその意見を年齢および成熟度にしたがって正当に重視することは、自己に影響を与えるすべての事柄において子ども・若者の最善の利益が第一次的に考慮される権利ならびに暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いから保護される権利の効果的実施にとって必要であること
  • 子ども・若者が有している能力および子ども・若者が行ないうる貢献は、欧州社会における人権、民主主義および社会的結束を強化するためのかけがえのない資源であること
 加盟国政府が以下の措置をとるよう勧告する。
  • 1.意見を聴かれる権利、真剣に受けとめられる権利および自己に影響を与えるすべての事柄に関する意思決定に参加する権利をすべての子ども・若者が行使でき、かつその意見が年齢および成熟度にしたがって正当に重視されることを確保すること。
  • 2.地方、広域行政圏、国および欧州の各レベルにおけるならびに市民社会との、この勧告の実施に関する知識および望ましい実践の交流を奨励すること。
  • 3.この勧告の付属文書委掲げられた原則および措置を、自国の立法、政策および実務で考慮すること。
  • 4.この勧告(付属文書を含む)が翻訳され、かつ、子どもおよび若者にやさしい広報手段を活用しながら、子ども・若者も含めて可能なかぎり広く普及されることを確保すること。
 事務局長に対し、本機関の基準設定、協力および評価活動への子ども・若者の参加を奨励すること、ならびに、この勧告を欧州評議会の関連の運営委員会、諮問機関および協議機関ならびに条約機構および監視機構に送達し、それぞれの活動においてこの勧告を考慮するよう慫慂することを指示する。
 事務局長に対し、この勧告を、欧州文化条約(ETS No. 18)の締約国であって欧州評議会加盟国ではないすべての国に送達することを指示する。

付属文書

セクションI-定義

 この勧告の適用上、
  • 「子ども・若者」とは、18歳未満のすべての者をいう。[2]
  • 「参加」とは、個人および個人の集団が、自己の意見を自由に表明し、意見を聴かれ、かつ自己に影響を与える意思決定に貢献する権利、手段、空間および機会を有し、かつ必要な場合には支援を受けられることをいう。その際、これらの者が表明した意見はその年齢および成熟度にしたがって正当に重視されるものとする。
[2] 18歳は、欧州評議会加盟国における通常の成人年齢である。UNCRCは18歳未満の人々を子どもと定義しているものの、日常的言説では、「若者」という言葉は12歳または13歳よりも年長の人々を指して用いられることがしばしばある。また、13~17歳の人々は「子ども」ではなく「若者」と自認しているのが一般的であり、そのように呼んでほしいと考えていることが多い。統計の運用上は、国連は15~24歳の人々を若者と定義している。この定義は、UNCRCおよび他の関連の国際条約で定められた子どもの法的定義を損なうものではない。

セクションII:原則

 自己の意見を自由に表明する子どもまたは若者の権利に、年齢制限はない。就学前の年齢層、学齢層および正規の教育を離れた者を含むすべての子ども・若者は、自己に影響を与えるすべての事柄に関して意見を聴かれる権利を有し、かつその意見は年齢および成熟度にしたがって正当に重視される。
 子ども・若者の参加権は、人種、民族、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的もしくはその他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、障害、出生、性的指向またはその他の地位のようないかなる事由に基づく差別もなく、適用される。
 子ども・若者の発達しつつある能力という概念が考慮されなければならない。子ども・若者の能力が高まるにつれて、大人は、自己に影響を与える事柄に影響力を及ぼす権利をいっそう享受するよう、子ども・若者に対して奨励するべきである。
 より少ない機会しか有していない子ども・若者(脆弱な状況に置かれているまたは複合差別を含む差別の影響を受けている子ども・若者を含む)の参加を可能にするため、特段の努力が行なわれるべきである。
 親・養育者は子どもの養育および発達について第一義的責任を有しており、したがって、子どもの参加権を出生時から擁護しかつ醸成するうえで基本的役割を果たす。
 意味のある形でかつ真正に参加できるようにするため、子ども・若者に対し、その年齢および状況にふさわしいすべての関連情報およびセルフアドボカシーのための十分な支援が提供されるべきである。
 参加が効果的で、意味のある、かつ持続可能なものとなるためには、参加が1回かぎりの出来事ではなくプロセスとして理解されなければならず、かつ、時間および資源に関する継続的コミットメントが必要とされる。
 自己の意見を自由に表明する権利を行使する子ども・若者は、脅迫、報復、被害化およびプライバシー権の侵害を含む危害から保護されなければならない。
 子ども・若者は常に、その参加の範囲(子ども・若者の関与の限界、参加によって生じることが期待される成果および実際の成果、ならびに、子ども・若者の意見が最終的にどのように考慮されたかを含む)について十分に知らされているべきである。
 UNCRC第12条に関する一般的意見にしたがい、子ども・若者の意見が聴かれるすべてのプロセスは、透明かつ情報が豊かであり、任意であり、敬意があり、子どもたちの生活に関連しており、子どもにやさしい環境で進められ、インクルーシブ(非差別的)であり、訓練による支援があり、安全でありかつリスクへの配慮がなされ、かつ説明責任が果たされるようなものであるべきである。加盟国は、この勧告を実施するためのすべての立法上その他の措置にこれらの要件を統合するよう求められる。

セクションIII:措置

参加権の保護
 子どもまたは若者の参加権を保護するため、加盟国は以下の措置をとるべきである。
  • 子ども・若者の参加権を可能なかぎり最大限に法的に保護すること(憲法および法令における保護を含む)。
  • 現行の法律、政策および実務において子ども・若者の意見がどの程度聴かれかつ真剣に受けとめられたかを定期的に検証するとともに、これらの検証において子ども・若者自身の評価が正当に重視されることを確保すること。
  • 子ども・若者に対し、苦情申立てを行なうための子どもにやさしい手段ならびに司法手続および行政手続を通じた効果的な保障措置および救済措置(これらの措置を利用する際の援助および支援へのアクセスを含む)を提供するとともに、子ども・若者がこれらの機構を利用できることを確保すること。
  • 権利侵害の被害をとくに受けやすい子ども・若者(親から分離されている者、マイノリティ集団出身者、障害のある者ならびに保健ケア施設および監護施設または矯正教育施設で暮らしている者を含む)を対象とする安全確保措置が設けられていることを確保すること。
  • 自己に影響を与えるすべての事柄について意見を聴かれる子どもまたは若者の権利を制限する法律上の規定または実務慣行を見直し、かつ取り除くよう努めること。
  • 子ども・若者の参加の強化に対して調整のとれたアプローチをとり、かつ意思決定・政策立案体制において参加が主流化されることを確保すること。
  • 子どもの権利オンブズパーソン/コミッショナーのような適切な独立の人権機関がまだ存在していない場合、パリ原則 [3] にしたがってこのような機関を設置すること。
  • 公式な場面および非公式な場面の両方で子ども・若者の参加を支援するため、十分な財源の配分および有能な人材の確保を図ること。
[3] 1993年12月29日の国連総会決議48/134。

参加の促進および参加に関する情報提供
 子ども・若者の参加に関する情報の普及および知識の増進を図るため、加盟国は以下の措置をとるべきである。
  • 一般公衆、子ども、若者、親および専門家の間で子ども・若者の参加権に関する意識を高めるための広報・教育プログラムを実施すること。
  • 教員、弁護士、裁判官、警察、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカー、心理学者、養育従事者、矯正教育施設・刑事施設職員、保健ケア専門家、公務員、出入国管理官、宗教的指導者およびメディア従事者の間でならびに子ども・若者団体のリーダーを対象として、子ども・若者の参加に関する専門的能力の増進を図ること。可能な場合、このような能力構築活動に、子ども・若者自身が講師および専門家として関与するべきである。
  • 子ども・若者に対し、子ども・若者の権利ならびにとくに子ども・若者の参加権、参加のために利用できる機会およびこれらの機会を活用するための支援が受けられる先に関する、その年齢および状況にふさわしい情報(文字以外の形式によるものおよびソーシャルネットワーキングメディアその他のメディアを通じてのものを含む)を提供すること。
  • 18歳未満の子ども・若者の権利(参加権を含む)を学校カリキュラムの構成要素にすること。
  • 子ども・若者とともに働くすべての専門家の養成カリキュラムで18歳未満の子ども・若者の権利について教えることを提案すること。
  • 子ども・若者の意見および経験に関する理解の向上を可能にし、子ども・若者の参加を妨げる障壁およびその克服方法を特定する目的で、子ども・若者に関する調査研究、子ども・若者とともに行なう調査研究および子ども・若者による調査研究を奨励すること。
  • 参加権の行使に関する子ども・若者の能力構築を図るため、子ども・若者の間で同世代による支援および情報ネットワークを促進すること。

参加のための空間の創設
 自己に影響を与えるすべての事柄に参加するすべての子ども・若者の機会を最大化するため、加盟国は以下の措置をとるべきである。
  • 親・養育者に対し、法律および親訓練プログラムを通じて、子ども・若者の人間の尊厳ならびに権利、気持ちおよび意見を尊重するよう奨励すること。
  • 相互の尊重および協力を奨励する目的で、世代間対話の機会をつくり出すこと。
  • とくに、教育・学習実践および学校環境に影響を及ぼすための公式・非公式の手法を通じてならびに学校共同体の運営に学校児童生徒評議会を統合することを通じて、学校生活のすべての側面への、子ども・若者の積極的参加を確立すること。
  • たとえばインタラクティブな教育方法の活用ならびにノンフォーマル教育および非定型的学習の承認を通じて、子ども・若者の人間の尊厳を尊重し、かつ学校生活における自由な意見表明および参加を可能にするようなやり方で教育を提供すること。
  • 団体生活、コミュニティ生活、異文化間学習、スポーツ、余暇および芸術への子ども・若者の関与を支援するとともに、アクセスしやすい非定型的な参加手法を考案するために子ども・若者と協働すること。
  • 民主主義とシティズンシップの学習および実践のための好ましい空間として、子ども・若者が運営する非政府組織に投資すること。
  • 地域、広域行政圏または国のレベルで、たとえば子ども・若者評議会、議会またはフォーラムのような協議機関を設置すること。
  • 家族および子どもにサービスを提供する機関が、サービスの開発、提供および評価への子ども・若者の参加を支援することを確保すること。
  • 子ども・若者が、メディアを通じて自由に自己表現し、かつ、対面での参加を補足する手段として情報通信技術(ICTs)を通じて安全に参加する機会を増進させるとともに、参加の原則に関する理解をメディアおよびICTsに統合すること。
  • 子ども・若者が公的生活および民主主義機関に参加する機会(代表としての参加を含む)を増加させること。
  • UNCRCの第12条およびその他の関連条項の実施ならびに欧州評議会の関連文書および子どもの権利に関するその他の国際基準のモニタリングへの参加に関して、子ども・若者およびその団体を支援すること。

  • 更新履歴:ページ作成(2021年1月7日)。/冒頭に「活用のためのツール」を追加(2023年2月3日)。/冒頭の「活用のためのツール」に関連資料へのリンクを追加(8月9日)。
最終更新:2023年08月09日 03:22