総括所見:韓国(第5~6回・2019年)


CRC/C/KOR/CO/5-6(2019年10月24日)
  • 委員会が第82会期(2019年9月9~27日)において採択。
原文:英語(平野裕二仮訳)

I.序

1.委員会は、2019年9月18日および19日に開かれた第2416回および第2417回会合(CRC/C/SR.2416 and 2417参照)において大韓民国の第5回・第6回統合定期報告書(CRC/C/KOR/5-6)を検討し、2019年9月27日に開かれた第2430回会合においてこの総括所見を採択した。
2.委員会は、締約国の第5回・第6回統合定期報告書の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成された締約国の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。

II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下のことを歓迎する。
  • (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准(2015年)。
  • (b) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約への加入(2012年)。
4.委員会は、以下のことに評価の意とともに留意する。
  • (a) 児童虐待犯罪の処罰等に関する特例法、公教育正常化促進および先行教育規制に関する特別法および学校外青少年支援に関する法律の採択(2014年)。
  • (b) 国レベルの子どもの権利センターの設置。
  • (c) 子ども影響評価制度。
  • (d) オンラインの出生登録システム。
  • (e) 7歳未満の子どもを対象とする児童手当の導入。

III.主要な懸念領域および勧告

5.委員会は、条約に掲げられたすべての権利の不可分性および相互依存性を締約国が想起するよう求めるとともに、この総括所見に掲げられたすべての勧告の重要性を強調する。委員会は、緊急の措置がとられなければならない以下の分野に関わる勧告に対し、締約国の注意を喚起したい。その分野とは、差別の禁止(パラ17)、生命、生存および発達に対する権利(パラ20)、子どもに対する暴力(体罰を含む、パラ27)、性的搾取および性的虐待(パラ29)、教育および教育の目的(パラ42)ならびに子ども司法の運営(パラ47)である。

A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6))

留保
6.委員会は、条約第21条(a)に関する締約国の留保の撤回を歓迎するとともに、第40条(2)(b)(v)に関する留保の撤回を速やかに進めるよう奨励する。
立法
7.中絶の禁止を違憲と宣言し、かつ政府に対して中絶に関する法律を2020年までに見直すよう求めた2019年4月11日の憲法裁判所判決を歓迎しながらも、委員会は、締約国に対し、この法律が子どもの最善の利益の原則に合致したものとなることを確保するよう促す。委員会はまた、締約国が、条約に関する裁判官、検察官および弁護士の知識、ならびに、裁判手続で条約を援用しかつ直接適用するこれらの法曹の能力を強化するよう、勧告するものである。
包括的な政策および戦略
8.子ども政策および青年政策に関する基本計画ならびに国家人権政策基本計画が採択されたことには留意しながらも、委員会は、締約国が、子どもに関する政策および戦略において条約のすべての分野が包含されることを確保し、かつ、その実施、監視および評価のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう勧告する。
調整
9.委員会は、締約国が、児童政策調整委員会に十分な人的資源および財源を配分し、常設事務局を設置し、かつ子どもの権利に関する調整機関としての同委員会の地位を高めることによって、同委員会の権限をさらに強化するよう勧告する。委員会は、調整に関する前回の勧告(CRC/C/KOR/CO/3-4、パラ13)を想起するとともに、部分的および全面的重複を回避するため、子どもの権利を扱うすべての公的機関の職務が明確に定められるべきであることをあらためて指摘するものである。
資源配分
10.教育、乳幼児期および児童福祉事業の分野で予算が増額され、かつ子ども・若者参加型の予算編成実践が導入されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国の子ども関連予算が国内総生産(GDP)に比例して増額されていないことを遺憾に思う。子どもの権利実現のための公共予算編成についての一般的意見19号(2016年)を参照し、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 子どもを対象とするすべての政策、計画、プログラムおよび立法措置の実施のための十分な財源、人的資源および技術的資源をすべての行政レベルで配分するとともに、そのような資源の利用を監視するための制度を実施すること。
  • (b) 子どものための予算配分および社会支出全般をGDPに比例する形で増額し、かつ自治体間の格差を縮小させること。
  • (c) 不利な状況にある子どものための予算配分を導入すること。
  • (d) 既存の子ども・若者会議および子ども・若者参加委員会などを通じ、予算編成への子ども参加を増進させること。
  • (e) 子どもの権利実現を支える部門における財およびサービスの利用可能性、アクセス可能性および質を確保するため、腐敗、とくに贈収賄、情実および不正な支払いと闘い、かつ公共調達手続における説明責任を増進させるための努力を強化すること。
データ収集
11.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起しながら、委員会は、締約国が、条約のすべての分野に関する、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的・国民的出身ならびに社会経済的背景および移住者としての背景別に細分化されたデータを収集する、中央集権化されたシステムを設置するよう促す。
独立の監視
12.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)を想起し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 独立性の保障などを目的として、児童権利委員会の法的地位を確立すること。
  • (b) 苦情を受理しかつ調査する児童権利委員会の権限を強化すること。
  • (c) 公的機関の間における韓国国家人権委員会の地位を高めること。
  • (d) 政策提言の実施を調整しかつ監視する国家人権委員会の能力を増進させること。
  • (e) 国家人権委員会に対して十分な資源を提供すること。
普及、意識啓発および研修
13.委員会は、人権教育が学校カリキュラムに含まれていることを歓迎する。条約に関する認識の水準がとくに子どもたちの間で依然として低いことに留意しつつ、委員会は、締約国が、子どもの権利教育および人権教育の実施に関する法的根拠を確立し、かつそのための十分な資源を配分することなどの手段によってこのような教育が全国で行なわれることを確保するとともに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として義務的研修を実施するよう、勧告する。
国際協力
14.締約国が今後10年にわたって政府開発援助(ODA)を増加させる計画である旨の、対話の際に提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、持続可能な開発目標のターゲット17.2に留意し、締約国に対し、国内総所得の0.7パーセントをODAに振り向けるという国際的に合意された目標を達成し、かつそのような援助において条約およびその選択議定書が遵守されることを確保することとともに、国際開発援助に関する政策およびプログラムの立案、実施、監視および評価において、子どもの権利を優先させ、かつ、締約国およびその開発パートナーに宛てられた委員会の総括所見を統合することを奨励する。
子どもの権利とビジネスセクター
15.委員会は、国内外で操業する大韓民国企業による事業活動の結果として子どもの権利侵害が生じている旨の報告について、懸念を覚える。企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、ビジネスと人権に関する指導原則および子どもの権利と企業セクターに関する前回の勧告(CRC/C/KOR/CO/3-4、パラ27)を参照しつつ、委員会は、締約国に対し、国内外で操業する締約国の企業を対象とする、子どもの保護のための枠組みを確立するよう促す。このような枠組みには、子どもの権利侵害の報告およびこれへの対処を目的とする、子どもの権利影響評価の実施のための機構ならびに監視および評価のための機構が含まれるべきであり、かつ、すべての関係者が子どもの権利の充足および保護について責任を有していることがそこで明確にされるべきである。

B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
16.不利な状況に置かれた子どもを支援するためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、2007年以来、反差別法案の採択が妨げられてきていることを依然として懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。
  • (a) 村落部の子ども、経済的に不利な立場に置かれている子ども、障害のある子ども、移住者である子ども、多文化の子どもおよび朝鮮民主主義人民共和国出身の難民である子どもが、出生登録ならびに保育施設、教育、保健ケア、福祉、余暇および国による保護へのアクセスに関して差別を経験していること。
  • (b) 学校で成績差別が広く行なわれていること。
  • (c) ひとり親家族が偏見および差別に直面していること。
  • (d) 性的指向に基づく差別の事案が絶え間なく発生していること。この状況は、締約国も、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである若者についての政策は不十分であると述べて認めている(CRC/C/KOR/5-6、パラ36)。
17.持続可能な開発目標のターゲット10.3(差別的な法律、政策および慣行の撤廃ならびにこの点に関する適切な立法、政策および行動の促進などを通じた機会均等の確保および成果の不平等の縮小)に留意しながら、委員会は、締約国に対し、反差別法を速やかに採択するとともに、そのような法律によって出身、性的指向およびジェンダーアイデンティティに基づく差別が禁じられることを確保するよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) 包括的な反差別法および反差別戦略を策定するとともに、脆弱な状況および不利な状況に置かれている子どもへの差別を解消しかつ防止するための公的キャンペーンを実施すること。
  • (b) 自国の領域内にいるすべての子どもが、出生時に登録され、かつ保育施設、教育、保健ケア、福祉、余暇および国による支援にアクセスすることが平等に可能であることを確保すること。
  • (c) 学校における成績差別を防止しかつ解消すること。
  • (d) すべての家族の平等な取扱い(養育費へのアクセスに関するものを含む)を確保するとともに、法律および実務をしかるべき形で見直すこと。
子どもの最善の利益
18.委員会は、子ども影響評価制度の設置を歓迎する。自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)を想起しつつ、委員会は、関連するすべての手続、決定、政策およびプログラムにおいて子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として統合し、一貫して解釈しかつ適用するべきである旨の、前回の勧告を想起するものである。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置も奨励する。
  • (a) 広範な子どもたちの参加を得ながら、子ども影響評価制度の適用を拡大すること。
  • (b) すべての分野で子どもの最善の利益についての判断を行ない、かつ当該原則を第一次的考慮事項として正当に重視するための手続および基準を策定すること。
生命、生存および発達に対する権利
19.自殺防止のための国家行動計画が確立されていることには留意しながらも、委員会は、とくに家庭問題、抑うつ、学業面のプレッシャーおよびいじめを理由として子どもの自殺率が高く、子どもの死亡原因の筆頭のひとつとなっていることを深刻に懸念する。委員会は、自殺およびその根本的原因に対処するための体系的アプローチおよび専用の予算が存在しないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。
  • (a) 加湿器殺菌剤が引き起こす健康被害について十分に知られていないこと。
  • (b) 学校および保育現場における細塵およびアスベストのモニタリングが不十分であること。
  • (c) 加湿器殺菌剤が原因となって多数の健康被害事案が生じており、かつ被害者に対する救済および賠償が不十分であること。
20.委員会は、締約国に対し、前回勧告されたとおり、子ども、家族および公衆一般を対象とする包括的政策、心理的、教育的および社会的措置ならびに療法を通じて子どもの自殺を効果的に防止しかつその根本的原因に対処するための努力を強化するよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) 加湿器殺菌剤によって引き起こされた可能性のある健康被害事案を調査すること。
  • (b) すべての保育現場および教育現場で、室内空気の質および有害物質への曝露のモニタリングを続けること。
  • (c) 加湿器殺菌剤の被害を受けた子どもに十分な救済および賠償を提供するために引き続き努力し、かつ化学物質の管理および有害物質事件の防止のための努力を強化すること。
子どもの意見の尊重
21.委員会は、家事審判法案(2017年)で、意見を聴かれる権利が13歳未満の子どもにも適用されるとされていることに留意する。しかしながら委員会は、子どもの参加が依然として選択的であり、一部の問題に限定されておりかつ学業成績次第であること、および、子どもの意見が考慮されることは稀であることを、遺憾に思うものである。意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)を想起し、委員会は、締約国に対し、以下のものを含む措置をとることにより、家庭、学校、裁判所および関連するすべての行政手続その他の手続において子どもの意見が正当に考慮されることを確保するよう促す。
  • (a) 学校のすべての子どもが成績にかかわらず意見表明の機会を有することを確保すること。
  • (b) 前回勧告されたように(CRC/C/KOR/3-4、パラ35(a))、児童福祉法で、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明する子どもの権利が規定されることを確保すること。
  • (c) 家事審判法案を速やかに成立させるなどの手段により、自己に関わるすべての問題について意見を表明する子どもの権利についてのいかなる年齢制限も廃止すること。

C.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条)

出生登録
22.委員会は、オンラインの出生登録・届出制度が設置されたことを歓迎する。持続可能な開発目標のターゲット16.9(出生登録を含む、すべての人々への法的身分の提供)に留意しつつ、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 出生登録(オンラインで行なわれるものを含む)が普遍的に行なわれ、かつ、親の法的地位または出身にかかわらずすべての子どもにとって利用可能であることを確保すること。
  • (b) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するため、シングルファーザーが子どもを登録するための手続を簡略化すること。
  • (c) 未登録の出生を特定するため、モニタリングの機構を設置することを含む必要なあらゆる措置をとること。
  • (d) 出生登録の重要性に関する意識啓発キャンペーンを実施すること。
アイデンティティに対する権利
23.委員会は、締約国に対し、宗教団体によって運営され、匿名による子どもの遺棄を可能としている「赤ちゃんボックス」の取り組みを禁止するとともに、病院における秘密出産の可能性を最後の手段として導入することを検討するよう、促す。
表現、結社および平和的集会の自由
24.委員会は、すべての子どもが、学業成績にかかわりなく、かつ報復を恐れることなく、表現の自由に対する権利を全面的に行使できるようにするため、締約国が法律および校則を改正するべきであることをあらためて指摘する。委員会はまた、子ども参加を促進すること、および、投票および政党への加入に関する最低年齢(現在は19歳)の引き下げを検討することも勧告するものである。
プライバシーに対する権利
25.委員会は、学校が生徒の私的情報(成績および懲戒措置に関するものを含む)を開示し、本人の事前の同意を得ることなく所持品検査を行ない、かつ服装規則を課しているとされることに留意する。委員会は、締約国が、条約第16条にしたがい、学校において法律上も実際上も子どものプライバシー(スマートフォンに関連するものを含む)および個人情報の保護を確保するとともに、十分な情報に基づく子どもの同意を得るための子どもにやさしい手続を策定しかつ適用するよう、勧告するものである。

D.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条)

体罰を含む暴力
26.児童虐待犯罪の処罰等に関する特例法が採択されたことならびに児童虐待防止予算、地域児童保護機関、シェルターおよび心理療法士が増加したことは歓迎しながらも、委員会は、以下のことを依然として懸念する。
  • (a) オンラインの暴力および学校における暴力によるものを含む子どもの虐待が広く蔓延していること。
  • (b) 家庭において、再犯を防止する効果的措置がとられないまま子どもの虐待が繰り返される事件が多数発生していること。
  • (c) 一部の場面で体罰がいまなお合法とされていること。
  • (d) 子どもの虐待の報告が過少であること。
  • (e) 子どもの虐待についての信頼できるデータが不足していること。
  • (f) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および虐待に対処するための包括的な政策および戦略が存在しないこと。
  • (g) 地域児童保護機関、シェルター、カウンセラー、心理学者および子どもの虐待を専門とする弁護士が不足していること。
  • (h) 移住者である子どもおよび障害のある子どもであって虐待の被害を受けた者を対象とする専門的支援(シェルターを含む)が不足していること。
27.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)ならびに持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもに対する虐待、搾取、取引ならびにあらゆる形態の暴力および拷問の解消)を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) すべての子どもに対するすべての暴力・虐待事案に関する全国的データベースを設置するとともに、これらの事案の規模、原因および性質に関する包括的評価を行なうこと。
  • (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および虐待(オンラインの暴力を含む)の防止、これとの闘いおよびその監視のための包括的な戦略および行動計画を策定すること。
  • (c) あらゆる場面および締約国のあらゆる地域で、法律上も実際上も、「間接体罰」および「懲戒的体罰」を含む体罰を明示的に禁止すること。
  • (d) あらゆる形態の暴力および虐待に関する意識啓発・教育プログラムを強化し、学校における非暴力的なコミュニケーションおよび紛争調停ならびに積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てを促進し、かつ、暴力および虐待の通報を奨励すること。
  • (e) 関連の専門家を対象として、ジェンダーの視点を考慮しながら暴力および子どもの虐待の事案を特定しかつ十分な対応をとるための研修を実施するとともに、通報ガイドラインを確立すること。
  • (f) 暴力および子どもの虐待の事案について調査および適切な対処が行なわれることを確保すること。
  • (g) 虐待の防止、虐待の被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策の策定を確保すること。そのための手段には、地域児童保護機関およびシェルター、カウンセラー、臨床心理学者ならびに子どもの虐待事案に対応する弁護士の数をさらに増やすこと、被害を受けた子どもに無償の弁護士代理人をつけること、ならびに、移住者である子どもおよび障害のある子どもがシェルターにアクセスできるようにすることが含まれる。
  • (h) 上述の勧告の実施および地域格差の縮小のため、十分な人的資源、財源および技術的資源を配分すること。
性的搾取および性的虐待
28.委員会は、子どもに対する性犯罪の範囲を拡大しかつこのような犯罪に対する処罰を強化する法改正、性暴力の防止および根絶を目的とする政策措置ならびに累犯の減少を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として深刻に懸念するものである。
  • (a) 性暴力および性的虐待が依然として蔓延しており、かつ、オンラインの児童買春およびグルーミング(勧誘)ならびに教員によるセクシュアルハラスメントが急増していること。
  • (b) 13歳以上の子どもは同意能力があると推定され、性的搾取および性的虐待から保護されていないこと。
  • (c) 自発的に買売春に関与したと見なされる子ども(「対象児童」)が犯罪者として扱われ、法的援助および支援サービスを否定され、かつ拘禁に似た「保護処分」の対象とされていて、これらの子どもによる性的搾取の通報が抑制されていること。
  • (d) 子どもの性的搾取および性的虐待で有罪とされた成人犯罪者に対し、保護観察を含む寛大な量刑が用いられていること。
29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもの性的搾取および性的虐待(オンラインの買春およびグルーミングを含む)ならびに教員によるセクシュアルハラスメントのあらゆる事件を防止しかつこれに対応するために必要なあらゆる措置をとること。
  • (b) オンラインのグルーミングを定義しかつ犯罪化すること。
  • (c) 性的活動を行なうことへの同意に関する最低年齢を引き上げること。
  • (d) 買売春および性的虐待に関与したすべての子ども、すなわち18歳未満のすべての者(「対象児童」)が犯罪者であなく被害者として扱われることを確保すること。そのための手段には、これらの子どもを法律で「被害者」と呼ぶこと、「保護処分」を廃止すること、当事者の子どもに支援サービスおよび法的援助を提供すること、ならびに、これらの子どもによる司法(賠償および補償を含む)へのアクセスを確保することが含まれる。
  • (e) 意識啓発(学校におけるものを含む)を強化するとともに、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしくかつ効果的な経路を通じた性的搾取および性的虐待の通報を奨励すること。
  • (f) 性犯罪を行なった者(教員を含む)が強要の証拠の有無にかかわらず訴追され、かつ適正な制裁の対象とされることを確保するとともに、性犯罪に対する刑罰を国際的水準に合致させること。
有害慣行
30.委員会は、親の同意があれば移住者コミュニティ内での児童婚が許可される可能性があり、かつ、移住者および外国人である女子が関与する婚姻の事例が複数報告されていることを懸念する。委員会は、締約国に対し、児童婚を例外なく禁止するとともに、この慣行を防止しかつ根絶するためにあらゆる措置(出身国と協力することおよび移住者・難民が民事登録手続にアクセスできるようにすることを含む)をとるよう促すものである。

E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条ならびに第27条(4))

家庭環境
31.委員会は、無償保育、働く親を対象とする柔軟な勤務体制、父親の育児休業およびひとり親家族への支援が拡大されたこと、ならびに、養育費の履行確保および支援に関する法律が採択されたことを歓迎する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 保育サービスの定員および適切な弾力化の余地をさらに増やすとともに、乳幼児保育法の改正などにより、すべての子どもが、国籍にかかわらず、保育施設および金銭的支援に平等にアクセスできることを確保すること。
  • (b) 父親の育児休業へのアクセスおよびその利用をさらに促進すること。
  • (c) 「面会交流センター」の増設および代替的解決策の提供などにより、離婚家族の子どもの面会交流権を確保すること。
  • (d) 養育費へのアクセスおよび養育費の履行確保を促進しかつ確保するとともに、不履行に対する制裁によって子どもの最善の利益が損なわれないことも確保すること。
  • (e) ひとり親家族へのスティグマおよび差別の防止および根絶のために必要なあらゆる措置をとるとともに、児童手当の受給要件をしかるべき形で改定すること。
家庭環境を奪われた子ども
32.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 可能な場合には常に、すべての子どもを対象として家庭を基盤とする養護を支援しかつ促進するとともに、家族のもとに留まることのできない子どものための里親養育の拡大および質の強化を目的として十分な人的資源、財源および技術的資源を配分し、かつ、具体的な行動計画を通じて段階的に施設措置を終了させること。
  • (b) 家庭内の児童虐待の根本的原因に対処し、子どもが家出をする理由にも対処し、これらの現象の防止および根絶のために焦点化された非懲罰的な措置をとり、かつ、家出をした子どもの保護を強化すること。
  • (c) 代替的養護への子どもの措置をどのような場合に行なうかおよび措置先をどうするかについて判断するための、子どものニーズ、最善の利益および意見に基づいた、かつその年齢および成熟度を正当に考慮した十分な保障措置および基準を確保するとともに、代替的養護の質の定期的審査および苦情申立て手続へのアクセスを確保し、かつ、再統合のための支援および養護下にある子どもが成年に達する際の支援を強化すること。
  • (d) 後見手続を合理化し、かつ後見人の保護能力を強化すること。
養子縁組
33.裁判所による許可等を通じて養子縁組を規制するためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、締約国が以下の措置をとるべきであることをあらためて指摘する。
  • (a) すべての年齢の子どもを対象とする養子縁組手続において子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされること、および、養子縁組のために子どもを解放することに関してシングルマザーの自由な同意が義務づけられることを確保すること。
  • (b) シングルマザーに対する偏見と闘い、かつ養子縁組に関する肯定的イメージを促進するための大規模な公的キャンペーンを実施すること。
  • (c) 手続における不要な遅延を回避し、かつ、養子縁組機関が透明なやり方で活動することおよびその活動が適正に規制されることを確保するために必要な措置をとること。
  • (d) 養子縁組が解消された事案を含め、養子縁組後のモニタリングおよびサービスを強化すること。
  • (e) 養子に対し、実親に関する情報への適切なアクセスを求めかつ認められる権利が告知されることを確保すること。
  • (f) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討し、かつ国際養子縁組法案を起草すること。
不法な移送および不返還
34.委員会は、締約国が、親責任および子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する条約ならびに子およびその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する条約の採択を検討するよう、勧告する。
親が収監されている子ども
35.委員会は、締約国が、親が収監されている子どもおよびこれらの子どもの面会交流権を保護するための政策を採択するよう勧告する。親とともに刑事施設に収容されている子どもはその権利(教育および健康に対する権利を含む)を保障されるべきであり、かつそのニーズを全面的に充足されるべきである。

F.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条)

障害のある子ども
36.委員会は、障害者政策総合計画の採択ならびに教育専門家の増員、研修の増加および障害のある子どものニーズの充足のために配分される予算の増額を歓迎する。障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照し、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 障害について権利を基盤とするアプローチをとり、かつ障害のあるすべての子どものインクルージョンを確保する目的で、法律および政策を見直すこと。
  • (b) 障害のあるすべての子ども(障害のある子どもの庇護希望者および移住者を含む)に対し、早期発見介入プログラム(リハビリテーション治療、適切な福祉支援および医療支援を含む)が全国的に提供されることを確保すること。
  • (c) 学校インフラ、スポーツおよび余暇のための場所、通学のための移動ならびに訓練において合理的配慮が行なわれることを確保し、かつ個別支援を提供するための専門の教員および援助者を配置するなどの手段により、障害のあるすべての子どもを対象としてインクルーシブ教育を提供すること。
  • (d) 障害のある子どもに関する肯定的イメージを促進し、かつスティグマおよび偏見と闘うための意識啓発キャンペーンを行なうこと。
健康および保健ケアサービス
37.委員会は、資格外滞在の子どもに対しても予防接種が行なわれるようになったことを歓迎する。到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)および持続可能な開発目標のターゲット3.8(すべての人々を対象とする財政リスクからの保護、質の高い必須保健サービスへのアクセスならびに安全、効果的、良質かつ負担可能な必須医薬品およびワクチンへのアクセスを含むユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成)を想起しながら、委員会は、保健予算の増額および地方病院の強化を求めた前回の勧告を想起し、かつ締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とりわけ、経済的に脆弱な状況に置かれている集団の子どもおよび移住者である子どもを対象として、国民健康保険へのすべての人によるアクセスを確保すること。
  • (b) 移住者である子どもを対象として予防接種のアクセス可能性を高めること。
  • (c) 保育所および学校で保健ケアの援助(糖尿病および肥満の子どもを対象とするものを含む)を強化すること。
精神保健
38.子どもの自殺に対抗するためにとられた措置には留意しながらも、委員会は、持続可能な開発目標のターゲット3.4(精神的健康およびウェルビーイングの促進)を想起するとともに、締約国が、自殺およびその根本的原因の防止に焦点を当てるなどの手段により、子どもの精神的ウェルビーイングを向上させるための努力を継続的に強化するべきであることをあらためて指摘する。
思春期の健康
39.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)および思春期における子どもの権利の実施についての一般的意見20号(2016年)、ならびに、持続可能な開発目標のターゲット2.2(あらゆる形態の栄養不良の解消)、同目標のターゲット3.5(麻薬の濫用およびアルコールの有害な摂取を含む有害物質濫用の防止および治療の強化)および同目標のターゲット5.6(セクシュアル/リプロダクティブヘルスおよびリプロダクティブライツへのすべての人によるアクセスの確保)を想起しながら、委員会は、肥満、喫煙および飲酒の防止(アルコールの広告に対する規制の厳格化、禁煙空間の数の増加、スポーツおよび運動の促進ならびに有害物質濫用防止に関するライフスキル教育に子どもが参加することの奨励によるものを含む)に関する前回の勧告を想起する。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) リスクの高い状況に置かれている集団をとくに対象とし、かつ、支援および回復のための具体的サービスを提供する「危機青少年社会安全網」の能力構築を図ることにより、スマートフォンの問題のある使用および過剰な使用への対応を強化すること。
  • (b) 学校におけるセクシュアリティ教育、妊娠中および出産時の支援サービスならびに産後ケアを強化し、子育て支援を確保し、かつ子育ての平等な分担を促進することにより、思春期の子どもの妊娠に効果的に対処すること。
生活水準
40.7歳未満の子どもを対象とする児童手当の導入は歓迎しながらも、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国籍にかかわらずすべての子どもが児童手当にアクセスできることを確保すること。
  • (b) すべての子どもの生活水準の向上を目的として貧困下にある子どもを支援するための総合計画の参考とし、このような計画を採択しかつ実施するため、貧困下にある子どもの状況に関する研究を実施し、かつ関連の統計を収集すること。
  • (c) 子どもの居住貧困および子どものアルバイトの広がりを評価し、かつ効果的な対処を図ること。

G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条)

教育および教育の目的
41.委員会は、先行学習(すなわち、就学準備のため就学前段階で私教育を受けること)の慣行の根絶を目的とする公教育正常化促進および先行教育規制に関する特別法の採択、脆弱な状況に置かれている集団の子どもに対して割り当てられる入学定員の拡大、「自由学期制」の導入および学校外青少年に対する支援の提供を歓迎する。しかしながら委員会は、睡眠の剥奪および高水準のストレスをともない、締約国の子どもの自殺の筆頭原因となっている過度な学業上の負担について、依然として深く懸念する。委員会はまた、子どもたちから実質的に子ども時代を奪っている高度に競争的な教育環境に加え、以下のことについても深刻に懸念するものである。
  • (a) 親の所得によって左右され、かつ就学前から始まる私教育への依存が高まり続けていること。
  • (b) 脆弱な状況および不利な立場に置かれている集団の子どもについて、教育へのアクセスが限られており、学校への統合水準が低く、かつ学校中退率が他の子どもよりも高いこと。
  • (c) 大韓民国の子どもに対しては義務教育に対する権利が保障されている一方、難民、移住者および資格外滞在者である子どもは校長の裁量で入学が認められない場合があり、かつ、資格外滞在者である子どもにとって学校サービスへのアクセスが限られていること。
  • (d) 障害のある子どもについて特別学校が優勢であり、障害のある子どものための教育機会および配慮が不足しており、かつ、障害のある子どもが強いスティグマに直面していること。
  • (e) 学校外青少年および代案学校に通っている子どもへの支援が不十分であること。
  • (f) 村落部と都市部との間に教育格差があること。
  • (g) 思春期の子どもの妊娠およびHIV感染拡大という状況のなか、セクシュアリティに関する十分なかつ年齢にふさわしい教育が行なわれていないこと。
  • (h) 進路相談サービスが不十分であって子どもの意見を考慮しておらず、そのため子どもが学校を中退しやすい傾向が強められていること。
  • (i) 学校でいじめおよび差別(学業成績に関連するものを含む)が蔓延していること。
  • (j) 子どもの余暇、遊びおよび運動のための時間および無償のかつ安全な施設が深刻に不足しているため、優れた成績を維持するべきであるという社会的圧力とあいまって、気晴らしのためのスマートフォンの過剰な使用が助長されていること。
42.持続可能な開発目標のターゲット4.5(教育におけるジェンダー格差の解消、ならびに、脆弱な状況にある人々(障害のある人、先住民族および脆弱な状況に置かれている子どもを含む)を対象とする、すべての段階の教育および職業訓練への平等なアクセスの確保)を想起しつつ、委員会は、締約国に対し、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)にのっとって、かつ、国のカリキュラムの多様化、大学入試制度の再検討および進路相談の強化などによって競争を緩和することを目的として、公教育制度を改革するよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 私教育への依存度を低め、公立・私立の学校による公教育正常化促進および先行教育規制に関する特別法の遵守状況を監視し、かつ不遵守の場合に制裁を科すこと。
  • (b) 子どもの出身、居住地、社会経済的背景および移住者としての地位ならびに移住者としての登録の有無にかかわらず、すべての子どもを対象として義務教育を確保するために教育基本法を見直すこと、腐敗および悪用を防止するため、社会統合選考制度に基づく定員割当ての監視を強化すること、および、脆弱な状況および不利な立場に置かれている子ども(社会的・経済的に脆弱な状況に置かれている子ども、村落部の子ども、学校外青少年、障害のある子ども、移住者である子ども、資格外滞在者である子ども、多文化の子どもおよび朝鮮民主主義人民共和国出身の難民である子どもを含む)の一般学校へのアクセスおよび統合を促進しかつ確保するため、これらの子どもに対する教育支援を強化しかつ促進すること。
  • (c) 障害のある子どもに対してインクルーシブ教育および合理的配慮が提供されることを確保し、かつこのような子どもの肯定的イメージを促進すること。
  • (d) 子どもが学校を中退することの根本的原因を特定して効果的対応をとるための努力を強化し、かつこの現象の規模を評価すること、すべての子どもが一般学校で支援されかつ一般学校に留まることを確保するために包括的で調整のとれた措置をとること、ならびに、代案学級および代案学校についての意識啓発を図り、かつ、すべての代案学校が認証されかつその卒業証書が承認されることを確保すること。
  • (e) 地域格差を低減させるため、教職員の養成および研修を強化し(そのような養成および研修の利用可能性を高めることを含む)、学校インフラを改善し、かつ、このことをとくに目的とする予算を増額するなどの措置をとること。
  • (f) 思春期の子どもの妊娠およびHIVにとくに注意を払い、かつ性的指向およびジェンダーアイデンティティを十分に網羅しながら、年齢にふさわしい性教育を促進するとともに、学校性教育に関する国の基準から差別的文言およびジェンダーに関するステレオタイプに基づいた文言を取り除くこと。
  • (g) 学校外青少年にとくに注意を払いながら進路相談および自由学期制の強化および多様化を図るとともに、子どもの意見が進路選択の基礎となることを確保すること。
  • (h) 学校における差別(成績に基づく差別)を防止しかつこれと闘うこと、差別の訴えについて効果的に調査しかつ対応すること、ならびに、ストレス軽減および情緒的安定に関する訓練を提供すること。
  • (i) ネットいじめを含むいじめと闘うための措置を強化するとともに、そのような措置に防止、早期発見のしくみ、子どもおよび専門家のエンパワーメント、標準介入手続ならびに事案関連データの収集に関する調和化されたガイドラインが包含されることを確保すること。
  • (j) 子どもの発達にとって鍵となる要素としての休息、余暇および遊びについての見方および態度を変えるために意識啓発プログラムおよび公的キャンペーンを実施するとともに、すべての子どもが、スポーツを含む休息および余暇にアクセスでき、かつ、安全で、インクルーシブな、禁煙の、年齢にふさわしくかつアクセス(公共交通機関によるアクセスを含む)しやすい遊びおよびレクリエーション活動に従事する十分な時間および便益を有することを確保すること。

H.特別な保護措置(第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)および第38~40条)

庇護希望者、難民および移住者である子ども
43.委員会は、2012年に難民法が採択されたことを歓迎する。国際移住の文脈にある子どもの人権についての合同一般的意見――すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見3号および4号(2017年)/子どもの権利委員会の一般的意見22号および23号(2017年)を参照し、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 出入国管理法の改正等によって子どもの入管収容を禁止し、身柄拘束に代わる解決策を確保し、かつ、庇護および家族再統合に関する事柄において子どもの最善の利益が常に第一次的に考慮されるようにすること。
  • (b) 難民である子どもおよび無国籍の子どもを対象とする地位認定手続を策定し、長期在留移住者である子どもの地位を調整し、かつ、庇護希望者、難民および移住者である子ども(資格外滞在者である子どもを含む)の権利に関する研修を強化すること。
  • (c) 庇護希望者、難民および移住者であるすべての子ども(保護・養育者のいない子どもおよび障害のある子どもを含む)が、出生登録、保育、教育および関連のサービス、精神的・身体的保健ケアサービス、健康保険、金銭的支援および住宅支援、余暇ならびに虐待の場合の保護・支援サービスに、大韓民国国民である子どもとの平等を基礎としてアクセスできることを確保するため、立法上および実際上のあらゆる障壁を取り除くこと。
  • (d) 保護・養育者のいない子どもを保護する必要性にとくに注意を払いながら、条約にしたがった、移住者である子どもの権利に関する法律を採択しかつ実施すること。
  • (e) 庇護希望者および難民(とくに子ども)に対するヘイトスピーチに対抗するためのキャンペーンを発展させること。
  • (f) 移住者である子ども(資格外滞在者である子どもを含む)に関するデータ収集を強化すること。
  • (g) 難民、庇護希望者および移住者である子どもをとくに対象とする予算を配分すること。
経済的搾取(児童労働を含む)
44.委員会は、働く子どもの労働条件および企業の監督を改善するためにとられた政策措置を歓迎する。働く子どもの一貫した多さ、これらの子どもの労働権の侵害およびこれらの子どもに向けられる暴言を考慮し、かつ、持続可能な開発目標のターゲット8.7(強制労働を根絶し、現代的奴隷制および人身取引に終止符を打ち、最悪な形態の児童労働の禁止および撲滅を確保し、かつ2025年までにあらゆる形態の児童労働を解消するための即時的かつ効果的な措置の実施)に留意し、委員会は、締約国が、説明責任の履行および社会復帰のための機構を設置することにより、新たな措置の有効性に関する査察および報告を強化するべきであることをあらためて指摘する。
売買、取引および誘拐
45.国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准は歓迎しながらも、委員会は、締約国が依然として、性的搾取を目的とする子どもの取引(とくにオンラインでの募集を通じて行なわれるもの)の送り出し国、通過国および目的地国であるとされていることに留意する。持続可能な開発目標のターゲット8.7をふたたび想起し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 人身取引の定義を国際法に合致させるため、強制、対価および国境を越えた被害者の移動の要件を取り除くこと。
  • (b) 警察官、出入国管理官、労働関係職員および社会福祉関係職員の研修等の手段により、被害を受けた子ども(とりわけ、脆弱な状況に置かれている集団の子ども)の特定および付託を改善するとともに、被害者特定ガイドラインを実施すること。
  • (c) 子どもの売買、誘拐および取引をともなう事案が効果的に捜査されること、および、加害者が訴追され、かつ犯罪の重大性に応じた刑罰を言い渡されることを確保するとともに、人身取引対策に関する事柄を調整する機関ならびに人身取引事件の捜査および責任者の訴追を担当するチームを設置すること。
  • (d) 売買または取引の対象とされた子どもが犯罪者として扱われまたは刑事上の制裁および退去強制の対象とされず、かつ、閉鎖施設にけっして収容されないことを確保すること。
  • (e) 人身取引の被害を受けた子ども(男児、外国籍の子どもおよび障害のある子どもを含む)に対するシェルターおよび統合的サービスの提供を強化すること。
子ども司法の運営
46.委員会は、少年院で過ごした期間を確定した刑期に算入できるようにした少年法改正を歓迎する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 法律に抵触した子どもの事件を処理しかつ扱う制度が2種類並行して存在すること。
  • (b) 刑事責任年齢を13歳に引き下げる提案が行なわれていること、および、少年法に基づいて10歳の子どもの拘禁も可能であること。
  • (c) 少年法第4条(1)(3)で、実際に犯罪が行なわれていない場合の「虞犯少年」の拘禁について規定されていること。
  • (d) 公正な裁判に対する子どもの権利の侵害が報告されていること。これには、捜査段階から保護者の関与を得ていないこと、強制された自白が用いられていること、証拠および抗告にアクセスできないこと、無罪推定および自己防御権が侵害されていること、裁判が公開されること、ならびに、法的援助に対する権利に条件が付されていることが含まれる。
  • (e) 子どもの拘禁率が成人に比べて高いこと。
  • (f) 拘禁環境が不適切であること。これには、過密であること、医療援助、教育、訓練、余暇および食事がとくに女子にとって不十分であること、通信、情願および屋外運動が制限されていること、マイノリティの背景を有する子どもについて合理的配慮が行なわれていないこと、ならびに、拘禁されているレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもが差別されていることが含まれる。
  • (g) 子どもが成人とともに拘禁されている事例があること。
  • (h) 子どもの被拘禁者に対して不必要かつ義務的なDNA検査およびHIV検査が実施されていること、HIVに感染している子どもの被拘禁者が隔離されていること、子どもの被拘禁者に対して義務的な身体検査および散髪が行なわれていること、ならびに、衛生設備の撮影が継続的に行なわれていること。
  • (i) 独房監禁、家族面会の制限および遠距離懲戒移送のような裁量的懲戒措置が過剰に使用されていること。
  • (j) 手錠、縄その他の道具が用いられていること、および、使用が法律で禁止されているにもかかわらず電気ショックが利用されていること。
  • (k) 身柄拘束をともなわない再犯防止措置が存在しないこと。
47.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 法律に抵触した子どもが関わるすべての事件を対象とする、十分な資源を有する専門の子ども司法裁判所制度を設置するとともに、子どもを担当する専門裁判官および法律に抵触した子どもとともに働く専門家が、子どもの権利に関する適切な教育および継続的研修を受けることを確保すること。
  • (b) 刑事責任に関する最低年齢を14歳のまま維持するとともに、当該年齢に達しない子どもが犯罪者として扱われず、かつけっして拘禁されないことを確保すること。
  • (c) 条約第40条にしたがって公正な裁判のための保障が尊重されることを確保するとともに、子どもが関わる事件の審判から一般人が排除されることおよび子どもの法定保護者がそもそもの始まりから手続に参加することも確保し、違反報告のための秘密が守られる経路を提供しかつ促進し、かつ、子どもが関わる事件を報道するメディア媒体向けのガイドラインを策定すること。
  • (d) 法律に抵触したすべての子どもに対し、捜査段階から有資格者による法的援助が提供されることを法律上も実務上も確保するとともに、法律扶助制度を確立すること。
  • (e) 「虞犯少年」について定めた少年法第4条(1)(3)を廃止すること。
  • (f) ダイバージョンプログラムの法的根拠を確立し、かつ身柄拘束をともなわない刑を促進すること。
  • (g) 少年法で明確な拘禁事由を定め、拘禁は最後の手段としてかつもっとも短い期間で用いることとし、拘禁が取消しの方向で定期的に再審査されることを確保し、「保護処分」期間および「少年分類審査院委託」期間が確定した刑期に算入されることを確保し、かつ、拘禁命令に対して抗告する権利および違法な拘禁について賠償を受ける権利を確立しかつ確保すること。
  • (h) 男女平等の個人的空間、食事へのアクセス、教育、身体的・精神的保健ケアサービス、運動、余暇、家族との連絡および苦情申立て機構などとの関連で拘禁環境(一時的拘禁の場合を含む)が国際基準を遵守したものとなること、自由を奪われた子どもが居住地に近い施設に収容されること、および、拘禁施設(児童福祉施設を含む)が継続的監視の対象とされることを確保すること。
  • (i) 子どもが成人とともに拘禁されるいかなる可能性も解消するため、法律を改正し、かつあらゆる効果的措置をとること。
  • (j) 懲戒措置としての監禁および移送の利用を廃止し、これに代えて修復的措置を促進すること。
  • (k) 子どもに関わる有形力および保護具の使用を規制するとともに、その使用が、特定の状況に限定された、必要かつ比例的なものであることを確保すること。
  • (l) 拘禁されている子どものプライバシーが尊重されることを確保すること、子どもの被拘禁者のDNAの収集およびHIV検査を禁止し、かつその記録が存在する場合には抹消すること、HIV関連の情報を秘密が守られるやり方で扱うこと、HIVに感染している子どもの被拘禁者の隔離を終わらせること、ならびに、義務的な身体検査および散髪ならびに衛生設備における継続的撮影を禁止すること。
  • (m) 身柄拘束をともなわない再犯防止措置を強化すること。
  • (n) 法律に抵触したすべての子どもが、その国籍、障害の有無、性的指向またはジェンダーアイデンティティにかかわらず、平等にかつ差別なく取り扱われることを確保するとともに、適切な場合には常に合理的配慮を提供すること。
子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の実施についての委員会の前回の総括所見のフォローアップ
48.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書に関する2008年の総括所見(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)の実施についての情報が不十分であることを遺憾に思う。したがって委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、以下のことを勧告するものである。
  • (a) 選択議定書に掲げられたすべての行為および活動(旅行および観光における子どもの売買および性的搾取を含む)が国内刑法で全面的に対象とされるべきこと。
  • (b) 選択議定書違反を理由とする犯罪人引渡しの場合の双方可罰性要件および最低重大性要件は廃止されるべきこと。選択議定書は犯罪人引渡しの法的根拠と見なされるべきである。
  • (c) 子どもに対する性犯罪で有罪判決を受けた者に対する、旅券法に基づく国際渡航制限は系統的に適用されるべきであること。
武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の実施についての委員会の前回の総括所見のフォローアップ
49.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書に関する2008年の総括所見(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1)の実施についての情報が不十分であることを遺憾に思う。したがって委員会は、前回の勧告を想起するとともに、とくに締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 18歳未満の子どもを軍隊または非国家武装集団に徴募することおよび敵対行為に関与させることを犯罪化すること。
  • (b) 紛争地域出身の庇護希望者である子どもを早期に特定するための機構を設置し、これらの子どもに関する細分化されたデータを収集し、かつ、これらの子どもに提供される身体的および心理的支援を強化すること。
  • (c) 選択議定書に関する意識を促進しかつ高めるとともに、軍学校のカリキュラムに選択議定書の規定が含まれることを確保すること。

I.通報手続に関する選択議定書の批准

50.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。

J.国際人権文書の批准

51.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約の批准を検討するよう勧告する。

K.地域機関との協力

52.委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。

VI.実施および報告

A.フォローアップおよび普及

53.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回・第6回統合定期報告書およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。

B.次回報告書

54.委員会は、締約国に対し、第7回定期報告書を2024年12月19日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。
55.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。

  • 更新履歴:ページ作成(2021年1月17日)。/パラ41第1文を修正したほか、用語をいくつか修正(1月18日)。/誤字を修正(4月3日)。
最終更新:2021年01月18日 13:55