36-34

36-34 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 16:38:32 ID:???
31人終わったところで明日菜といいんちょ投下
1/4

「ほらアスナさん、またここ間違ってますわよ」
「えぇ?」
いいんちょが今日何回目かの間違いを指摘してくる。
まったく、返す返事も嫌になってくるというものだ。
わざわざ休日に自室で勉強会なんてやっているのだから。
「何度言えば分かるんですの?前置詞くらい理解してくださらないと」
「はいはい、分かったって」
適当に返事をしながら、前置詞ってなんだっけと考える。
質問するわけにはいかない。
きっといいんちょ、怒るだろうし。
「アスナ、また間違えたん?」
台所から木乃香が顔を出してくる。
「そうなんです、まったくアスナさんは本当におサルなんだから」
「おサルとか言うな!木乃香は黙って夕飯の支度をする!」
「りょーかいやー」
呑気な声を上げ、木乃香は台所へ引っ込んだ。
どうも上機嫌に鍋をかき混ぜてるらしく、歌まで聞こえてくる。
「ぐつぐつにゃーにゃー、にゃーにゃーぐつぐつ♪」
……何を煮込んでいるんだろう。
「アスナさん、余所見をしない!」
「いやだって、気にならない?アレ」
「私は食べませんから」
そうですか。
「それより、この問題をしっかり解いて下さい」
「やだー、やる気出ないー」
ついに本音を言ってみる。
怒るかと思ったが、違った。
36-35 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 16:39:06 ID:???
2/4

いいんちょは呆れてた。
なんか尚更ムカつく。
「……で、どうすればやる気は出るんですの?」
「勉強を止めればいいと思うよ」
「却下ですわ」
取り付く島もない。
うーん、でも私が勉強のやる気を出す方法なんてあるかなぁ。
……あ、そうだ。
私は口の端が持ち上がるのを感じた。
「ねぇ、良い事思いついたんだけど」
「なんですの?」
「やる気を出すにはさ、やっぱりご褒美が必要だと思わない?」
「……小学生に勉強させる親みたいな気分ですわ」
うるさい。
「まぁそれでアスナさんがやる気を出すなら良いですけど。そのご褒美は?」
「問題一つ解いたら、――キス一つ」
がたーん。
いいんちょが勢いよく立ち上がった。
テーブルに手をついた時大きな音が立ち、木乃香がこちらを覗いてくる。
「どないしたん?」
「ななな、なんでもないですわ!」
「うん、なんでもない。木乃香は気にしないで料理続けてよ」
「りょーかいや」
再び台所へ戻る木乃香。
それを見届けると、いいんちょが声を潜め、それでいて叫んできた。
「こ、木乃香さんもいるのになんて事を言うのですか……!」
「いいじゃん、騒がなきゃ木乃香は台所に引っ込んでるよ」
「し、しかし……!」
36-36 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 16:39:43 ID:???
3/4

「ご褒美がないとやる気出ないなー」
にやにや笑いながら言ってみると、いいんちょはプルプルと体を震わし、
「――いいでしょう!おサルなアスナさんに解ける問題を出さなければ良いのですから!」
そう叫んだ。
てかいいんちょ、それって趣旨変わってない?
「それではこの問題を解いて御覧なさい!」
どれどれ。
問1 ( )に適当な前置詞を入れなさい。
…………えーと。
問題を見て止まった私に、いいんちょは高笑いする。
「おほほほ、アスナさんに分かるわけありませんわ!この私がいくら教えても一向に学習しないのですから!」
「えっと、(on)?」
「え?」
いいんちょは私の前の問題集を引ったくると凝視し、震える声で言った。
「……正解ですわ」
「やった!」
「ぐ、偶然に決まってます!次はこの問題ですわ!」
「うーん、(in)かなぁ」
「……これとこれとこの問題はどうです!?」
「(of)と(to)と(on)じゃない?」
明快に答えると、いいんちょはすっかり固まってしまった。
このまま眺めるのも面白そうだけど、約束は守ってもらわなきゃ。
「いいんちょ?五問解いたけど?」
しかし返事がない。
屍にでもなってしまったのかな?
確かめるため、そして約束を守ってもらおうと、私はいいんちょと唇を合わせた。
「……ん?んー!?むー!」
あ、復活した。
36-37 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 16:40:17 ID:???
4/4

でも気にせずに舌を絡める。
五問分を一気にやってしまおうという作戦だ。
「んー!むぅ、ふぅん!…………ぅん」
お、抵抗しなくなった。
じゃあもうちょっと続けちゃえ。
そのまま30秒ほどディープキスをして、
「ぷはぁ、美味しかった」
やっと唇を離すと、コテンといいんちょは机に突っ伏した。
「いいんちょー、次の問題はー?」
「…………」
返事がない、今度こそ屍になったようだ。
これで今日はもう勉強する必要ないな。
そう確信すると、私は床に転がった。
「アスナ、ご飯できたえー」
丁度木乃香が台所から鍋を持って出てくる。
鍋って、もう夏なんだけど。寒い日もあるけどさ。
「で、アスナ、何であの問題答えられたん?」
聞いてたのかよ。
というか見てたのか?キスシーンまで?
いいんちょが知ったら恥ずかしさで悶死しそうだ。
「教えてなー、魔法でも使ったん?」
そんな都合の良い魔法使えないって。まぁ真面目に考えてはないけど。
「どういう事?」
不思議がってる木乃香には答えず、私はピクリとも動かないいいんちょに目を向けた。

まったくいいんちょってば、キスくらいでパニくりすぎなんだって
だからあんなミスしちゃうんだよ。
あの問題、最初にやった奴じゃん。

36-44

36-44 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 20:46:08 ID:???
刹那は、大きな山を見上げて立っていた。
「材料と言っても、鬼を寄せ付けない特殊な材料を必要な分持ってきてくれるだけで構わん。基本の材木や鉄は、村で何とかするらしい」
「鬼を寄せ付けない特殊な材料・・・」
 鬼という存在すら、噂で聞いた程度の物であり、鬼が本当にいるのかすら解らない。刹那には、様々な事が架空の出来事のように思えていた。
「そういえば、まだ御主の意思を聞いていなかったな。いくら村人がやる気になったところで、御主は所詮余所者。ここで逃げ出すやも知れん」
 真名が、意地悪く目を細めた。
「私は風来人です。困っている人を助けるのが勤め。無論やらせて頂きます」
「その意気込みが何時まで続くか、
 刹那は一瞬、真名と仲良くなれそうにはないと思った。
「刹那ちゃん。シュテン山への道は、『不思議のダンジョン』になっとるから・・・気ぃつけてや?」
「不思議のダンジョン?この村にそんなもんがあったのかよ」
 カモミールが木乃香に尋ねると、木乃香は頷いて刹那の方を見た。
「入る毎に形や落ちている物が変わって、本当は平坦な道なのに、何故か登るためだけの階段が無数にある、名前の通りの『不思議のダンジョン』や。頑張ってな」
 刹那は、腰元の短剣に手をそえて木乃香を見た。
「頑張ります」
 すぐに山を見上げ、山の上に着ていた太陽に目を顰めた。
「行こうぜ、刹那。急すぎる成り行きだが、風来人を続けるには『不思議のダンジョン』に慣れるって事は必須条件の一つだ」
「はい・・・」
 今まで聞かないようにしていた村人達の歓声を背後に、刹那は不思議のダンジョンへ足を踏み入れた。
36-45 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 20:47:37 ID:???

 幼い少女の体が、不思議のダンジョン内に入り、消えた。
「さて・・・どうなる事やら」
「巫女様。それは無責任すぎるんちゃう?」
 欠伸をしながら呟いた真名に、木乃香は即座に突っ込みを入れた。
「だるま様のお告げが下ったのは確かだが・・・信憑性がいまいち・・・」
「え?それどういう事やの?」
「正直、私は『巫女見習い』だからな。正確なお告げが出来たかどうか自分でも解らん」
「そんなんで法外なお布施をふっかけようとしてたん?」
「一々気にしてたらハゲるぞ。何にせよ、城を造る事で鬼達を止める壁を作ることが出来るのは確かだ。城の配置によっては、村に鬼達を入れないようにする事が可能になるかも知れん」
「全部仮定の話やないの」
 他の村人達に聞かれないようにしながら、二人は議論を組んでいた。
「何にせよ、村人が一致団結するのは良い事だ」
「さっき刹那ちゃんが言うまで、自分が村人だって事忘れてたんやないの?」
「忘れてたフリさ」
 真実か虚実かは解らないが、今自分が心配するべきなのは、知らない事が多いままで不思議のダンジョンに潜った刹那という少女の事だ。シュテン山を見上げ、木乃香は手を胸の前で組んだ。
「二人とも、何してんのや?」
 急に背後から声をかけられ、二人は肩をすくめて口を塞いだ。真名が振り返る。
「・・・なんだ、小太郎ではないか」
 二人に声をかけたのは、木乃香の弟である小太郎だった。
「驚かさんといてや小太郎!(真名の『お告げ』に信憑性がないなんて、皆に知られたら大変やからな・・・)」
「?どうかしたんか?」
「別になんでもあらへんよ」
「・・・そうか?怪しいな〜」
 小太郎は疑うような顔つきで、木乃香と真名の顔を交互に見た。
36-46 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 20:49:40 ID:???
「深く考えるな。一々気にしてたらハゲるぞ」
「まだこんな年でハゲたくないわ。それは置いといて・・・本当に行ったんか?噂の風来人は」
「ああ。お前とは大違いだろうな」
「真名!」
 見下すように小太郎を突き放した真名を、木乃香が強い口調を以って諌めた。
「私は間違った事を言ってはいないぞ。現に小太郎は、一度シュテン山に登ろうとして、すぐにモンスターにやられて帰ってきたではないか」
「真・・・・・・真名」
「良いんや姉ちゃん・・・本当の事や。わいは弱いし、他人の期待背負ってダンジョンに潜るような勇気もない」
「小太郎・・・」
「それも、訪れたばかりの村を助けるために、単なる成り行きでや・・・風来人ってのは、皆そんなもんなんか?」
 小太郎は声を低くし、真名を見上げた。
「風来人・・・全てが一概にそうとは言えんが、最高の風来人である『シレン』という青年が、今回の刹那のように行動する人物だったらしい。恐らく、刹那という少女も、その『シレン』を目指しているのかも知れんな」
「『シレン』・・・風来人・・・か」
 小太郎は、静かにシュテン山を見上げた。心配そうに、木乃香は二人の会話を聞いていた。
「ほら、風来人は置いといて、私達村人は城の基本材料を確保するぞ。男共を駆り立てろ!」
 巫女様の掛け声を合図に、村人達は動き出した。
36-47 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 20:51:30 ID:???
 其の頃。
 不思議のダンジョンに入った瞬間、刹那は怪異と対峙していた。青い頭部と白い腹部の、御玉杓子のようなモンスターだ。
「こいつはマムル。決して勝てない相手じゃねぇ」
「は、はい」
 落ち着いて目の焦点を定め、怪異の腹部に鋭く手刀を打ち込んだ。小さい悲鳴を上げ、怪異が消滅した。
「ふう、行けそうですね」
「おう・・・でもよ、刹那」
「どうかしましたか?」
「鬼を退ける特殊な材料ってのが具体的に何なのか・・・聞いてきたか?」
「・・・・・・あ」
 前途は多難である。

〜風来の刹那〜続く

36-48

36-48 名前:美空5/5(5ぶんの5)[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 21:31:00 ID:???
なんと春日美空は5つの人格を持つ女の子になってしまった!?
あやか「それで、あなたたちのせいなのですね。」
葉加瀬「コンピュータが暴走してしまいまして(笑」
超「理論上は完璧だたけド(笑」
朝倉「これからどうするのさ?」
葉加瀬たちのせいで誕生した美空の5つの人格とは

1.春日美空
地味で存在感が無いけどとってもボーイッシュな女の子だぞ!
2.春日みそら
精神年齢が小学校3年生のとってもやんちゃな女の子だぞ!
3.春日ミソラ
年齢は変わらないが不良女子中学生だぞ!
4.カスガ−ミソラ
ぶっちゃけ外国人だぞ!
5.かすがみそら
あれだ、幼児くらいだぞ!

5人の美空と31人の女子中学生が送るドタバタ学園コメディ
美空5/5ハチャメチャ路線で



誰かが書いてくれるはず
美空「え?」

36-58

36-58 名前:真名ちゃんもっこり日記87[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 22:08:56 ID:???
真名ちゃんもっこり日記87

私が日記を書くのをサボっている間にもう夏休みだ。
しばらく学校に行かなくていい、一日中アキラとベッタリいられる&hearts
ちなみにもうすでに私の横ではアキラが寝ている、もちろん全裸だ。

前日のデート帰りに雨が降ったせいでびしょ濡れ、そのまま洗濯機行きだ。
ちなみに私はこの日記をアキラの乾いたばかりの下着を頭に装備して書いている。
乾燥機から出したてでほんのりと暖かい所がまた快感だったりする。
そっとアキラに近づくとその吐息がまたすごく刺激的だ。
もにゅもにゅ
「んんっ…」
アキラは寝てるときに胸をこうやって揉むと可愛い声を出す。
ついでに口も塞いでやれ。
むちゅーーーーーーーーーー
「むーーーーーーー!!」
あ、起きた。
「真名、止めてよ。起こすたびにこんなことされたら…」
されたら?
「…また、真名が欲しくなっちゃう」

はい、理性の防波堤決壊V−MAX起動!!
「アキラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー&hearts&hearts&hearts&hearts&hearts」
翌日、二人そろって腰痛になった。

36-76

36-76 名前:『One More Sweet』 With-you[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 07:25:06 ID:???
『One More Sweet』 With-you

1/6

「ゆーなゆーな! 今度の日曜、デートせえへん?」
 そう言って亜子は裕奈の腕にしがみついてくる。唐突なおねだりであったが、裕奈はあっさり了承した。
「いーよー。んで、どっか行きたいトコあんの?」
「えへへ……、ココなんやけど」
 亜子は手にしていた雑誌を広げ、お店の紹介記事を見せる。
「史伽に聞いたんやけど、めっちゃ美味しかったらしいんよ」
「ほほう、海沿いのオープンカフェですか。史伽ジャッジも合格……。なら行くしかないねっ!」
 と、裕奈もすっかり乗り気である。
「じゃあさ、あたし昼過ぎまで部活あるから、三時頃に現地集合にしない?」
「三時やね。りょーかいや!」
 こうして二人はわくわくしながら日曜を待つのであった。

「うーっ、ちょい遅れてもーた……」
 亜子は息を弾ませながら待ち合わせ場所に到着した。時刻は午後三時五分前。亜子にしては遅れた方である。
ああ見えて裕奈も時間はきっちり守るタイプなので、恐らく先に到着している筈だ。
「えっと、ゆーなは……」
 きょろきょろと恋人の姿を探していると、亜子の視界に一人の女性が映った。
「わあ……」
 思わず声に出てしまう。その女性は品のあるスーツ姿で颯爽と歩いていた。けれど、その大人びた雰囲気とは裏腹に、
ルックスにはやや幼さが残っている。どこかの大学生なのだろうか?
(綺麗な人やな〜)
 ついつい亜子はその女性を目で追ってしまう。すると、その人はベンチに腰を下ろすと携帯を取り出した。
「へっ!?」
 思わず亜子は目が点になってしまった。その携帯には見覚えがあったから。
「ゆ、ゆーな?」
 亜子が駆け寄ると、その女性は途端に表情を崩し、元気一杯な笑顔を見せたのだ。
36-77 名前:『One More Sweet』 With-you[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 07:25:39 ID:???
2/6

「やっほー、今日はあたしの方が早かったね!」
 裕奈が嬉しそうに手を振ると、先程まで抱いていた綺麗な女性というイメージはガラガラと音を立てて崩壊する。
そこにいたのはいつもの裕奈であった。髪を下ろしていても、人懐っこい笑顔は変わらない。
「えっへへ〜、今日は久しぶりのデートだから化けてみました♪」
「うそやろ……?」
 亜子はぽかーんとしたまま固まっている。確かに裕奈は美人な類に入るのだが、普段の言動と行動のせいで
すっかり騙されてしまった。
「ううっ、ゆーなが髪下ろしただけでこない化けるやなんて思わんかった……」
「おーい、すっごく失礼なコト言ってますよ〜?」
 裕奈は苦笑しながら亜子の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ま、亜子をびっくりさせる為に表情とか作ってたからね」
「はぁ……。ホンマにびっくりしたわ……。ゆーなって大人っぽい恰好も似合うんやね……」
「こんな風に?」
 裕奈はきりっ、と表情を引き締め、亜子に流し目を送った。思わず亜子はどきりとしてしまう。
「ゆ、ゆーなの百面相には慣れてたハズやってんけど、それは反則やって……!」
 亜子はそう答えるのが精一杯であった。その顔はすっかり赤くなっており、亜子は恥ずかしそうに目を背けた。
当然、その反応を見逃す裕奈ではない。
「じゃあ、行こうか」
 表情を変えないまま、裕奈は亜子の手を取って歩き出したのだ。
「ちょっ、ゆーな……!」
 どきどきが止まらない。まるで、二人がまだ付き合う前の頃のように。
(アカン、めっちゃ緊張してまうやん……!)
 亜子は顔を伏せ、裕奈に引かれるままに歩き出す。どれだけ自分がどきどきしているのか、
掌越しに裕奈に伝わっていると思うと、とても顔を上げられない。
 ちょっぴり意地悪な裕奈。すっかり舞い上がった亜子。
 こうして、二人のデートは始まった―――
36-78 名前:『One More Sweet』 With-you[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 07:26:13 ID:???
3/6

 休日のデートスポットとあって、すれ違う男女の殆どはぴったりと寄り添っている。そんな空間において、
女同士の二人は明らかに異端であった。先程からちらちらと視線が注がれているのが分かる。
それでも、裕奈は亜子の手を握ったままで、亜子も離そうとはしなかった。
「取り合えずお目当てのスイーツは後回しにしてさ、少しぶらぶらしよっか」
「う、うん……」
 いつもと変わらない裕奈の口調に、亜子は小さく頷く。その様子を見て、裕奈はくすりと微笑んだ。
「ふふ。なんかさ、新鮮なカンジだよね」
「えっ―――?」
 やや驚いた表情で亜子が顔を上げると、そこにあったのは裕奈の温かな眼差しであった。裕奈がたまに見せる、
不思議と大人びた笑顔。髪を下ろした今は、それがより一層際立っている。
「あたしたちが付き合い始めた頃を思い出しちゃうなあ……。ちょっぴり恥ずかしくて、でもそれ以上に嬉しくて、
すっごくどきどきしちゃってさ……」
 淡々と思いを紡ぐ裕奈に、亜子はうっとりと見蕩れていた。次第に亜子は周囲の視線が気にならなくなる。
今はずっと裕奈を見つめていたい。そう、思ったから。
「ウチも―――」
 一旦手を離し、亜子は改めて裕奈の腕にしがみつく。
「ウチも一緒や……。どきどきが止まらへん……」
「亜子……」
「今日のゆーな、めっちゃかっこええんやもん……」
 ちょこん、と亜子は裕奈の肩にもたれかかる。そして、ほんのり頬を染めながら目を閉じた。
こうなると裕奈の方が人目を気にしてしまう。
「あはは……」
 気恥ずかしそうに裕奈は頬を掻いた。亜子の思わぬ大胆な行動に、驚きを隠せないでいる。
「うん、まあ、あの頃とは違うよね―――」
 裕奈はふっ、と表情を緩ませ、優しく亜子の頭を撫でた。
「亜子も随分と積極的になったよね。だから、あの頃より嬉しいよ……」
「えへへ……。ウチかてめっちゃ嬉しいんやで」
 ゆっくりと二人だけの世界が広がっていく。二人はしばし、穏やかな時間を過ごしていった。
36-79 名前:『One More Sweet』 With-you[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 07:26:50 ID:???
4/6

 時間は駆け足で過ぎていく。
 ウインドーショッピングにアミューズメントスポット、と楽しい一時を過ごし、二人がお目当ての
オープンカフェにつく頃には、既に夕陽が辺りを赤く染め上げていた。
 オレンジ色の世界で、亜子が笑う。
「えへへ、さすがは史伽のオススメや。ホンマ美味しいわ〜♪」
 幸せ一杯といった表情で、亜子はストロベリーパフェを口に運ぶ。対して裕奈の方はというと、
そんな恋人の様子をにこにこと見守っていた。
「ありがと、亜子……」
 穏やかに、そっと裕奈が語り掛ける。
「あたし、幸せすぎて怖いくらいだよ……」
 しんみりと裕奈が呟くと、亜子はくすりとはにかんだ。
「ほな、もっともっと幸せのおすそ分けしたるわ。あーんして♪」
 言われるままに裕奈が口を開くと、亜子は嬉しそうに自分のパフェを差し出した。甘酸っぱい味が広がり、
幸せと共にゆっくりと溶け、裕奈の心に沁み込んでいく。
「美味しい?」
「うん―――!」
 無邪気な亜子の問い掛けに、ゆっくりと裕奈は頷いた。
 いつもの裕奈ならお返しとばかりに何か仕掛けてくるのだが、今日はずっと大人しいままである。
くすくすと亜子は冗談交じりに切り出した。
「ゆーな、そろそろキャラ作るんも疲れたんとちゃう?」
「あのね……。たまにはあたしだってゆったりしたいの」
 やんわりと抗議すると、裕奈は夕陽にも負けないくらい顔を赤くする。
「それに、亜子が可愛すぎるから自制してんの! 今すぐにでも食べちゃいたいくらいなんだよ?」
「そ、それは失礼しました……」
 照れくさそうに裕奈が吐き捨てると、思わず亜子も恐縮してしまう。
 一瞬だけ、二人は無言で見つめ合う。そして、軽く吹き出してしまった。
36-80 名前:『One More Sweet』 With-you[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 07:29:12 ID:???
5/6

「ま、やっぱりあたしらしくないよね。大人の女、ってのはさ」
 あはは、と笑いながら裕奈はレモンスカッシュを口にする。すると、
「ウチはありやと思うよー? 今日のゆーな、惚れ直してまうくらい綺麗やもん!」
 亜子は真顔で力説したのだ。これには裕奈も苦笑するしかない。
「なんかさあ、それじゃ普段のあたしはダメダメみたいじゃん」
「そ、そないなコトあらへんよっ!」
 ぼそりと裕奈が指摘すると、慌てて亜子は口を挟んでくる。
「いつもの元気一杯なゆーなも大好きやで! ゆーなはウチの太陽や!」
「亜子……。ものすごく恥ずいんですけど……」
 軽くからかったつもりの裕奈であったが、思わぬ亜子の逆襲をまともに被弾してしまった。
「うう……、完全にのろけられちゃったよ……」
「えへへ。いっつもゆーなにやられとるんやし、たまには反撃せんとな♪」
 裕奈が真っ赤になりながら呟くと、亜子はしてやったりの表情で笑うのであった―――

 ゆっくりと夜の世界が広がると、二人は海沿いのベンチに移動した。
 潮風が二人を包み、時が止まる。
「ゆーな……」
 裕奈の肩に頭を預けた恰好で、亜子が呟く。
「今日は最高の一日や……」
「だね……」
 亜子の小さな肩を抱きながら、裕奈は相槌をうつ。
「ずっとこうしてたいわ……」
「そうだね……」
 心なしか、亜子はどことなくそわそわしているが、裕奈は敢えて頷くばかり。
どうやら亜子も裕奈の意図を理解したようで、きゅっ、と裕奈の袖を掴んだ。
「ゆーなのいけず……」
「ふふ。今日は亜子がリードしてたんだから、最後までやり遂げてね♪」
 意地悪な笑みを浮かべると、頬を染めた亜子は俯きがちに切り出した。
36-81 名前:『One More Sweet』 With-you[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 07:29:47 ID:???
6/6

「ゆーな……、キス、してもええ……?」
 縋るような目で亜子が訴えると、裕奈はくるりと亜子と向かい合う。そして、
「いいよ。来て―――!」
 全てを受け入れるように、裕奈は手を広げた―――

「ゆーな……」

 ゆっくりと、亜子の腕が裕奈の首筋に回り、

「亜子……」

 包み込むように裕奈は亜子を抱きしめ、

「愛しとるで―――!」
「大好きだよ―――!」

 二人の唇が重なった―――

 長い長いキス。二人は貪り合うように舌を絡め、お互いに愛を求めていく。甘い吐息がこぼれ、
微かに唾液の音が響く。
 温もりが、カラダが、心が溶けていく。まるで二つの螺旋が重なるように……。

 やがて、二人はどちらからともなく離れ、笑顔を交わした。
「続きは寮に帰ってから、だね―――!」
「うん―――!」
 手を繋ぎ、二人は歩き出す。
 より強くなった絆を確かめるように―――
(おしまい)

36-102

36-102 名前:禁断の果実 夏祭り[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 17:31:26 ID:???
ようやく梅雨明けも近づき、晴れの日が増えてきていた
夏休みに入ってクラスメイトのほとんどは里帰り、だが美空、シャークティ、ココネは教会にいた
魔法生徒持ち回りの警備の仕事である
美空は仕事に入る前の数日里帰りをし、この仕事の後は戻らないと決めていた
理由はもちろんシャークティ、教会の留守をココネとするからだ
「さてと、今夜は別の組だしどうしようかなー」
夕方、洗濯物を取り込む美空は楽しげなリズムを聞いた
太鼓と笛の音、祭り囃子だ
「お祭りかぁ、毎年帰ってたから知らなかったなー」
その時
「よっ、美空」
円が後ろから抱き着いてくる、びっくりして美空は飛び上がる
「もう、何驚いてんのよ。どう、みんなで夏祭り行かない?」
見ると円は浴衣姿で大きな袋を抱えている
「円、帰ってなかったの?」
「まあね、実際近いし。それに美空とおんなじ理由で残ってるし」
美空はやれやれと肩をすくめる、円は袋の中に美空とシャークティとココネの浴衣も準備していた
シャークティもここまで準備がいいと断れない、かくして夏祭りに向かう事となった
浴衣姿のシャークティは褐色の肌と金髪が妙にマッチしていて、エキゾチックな雰囲気を醸し出していた
ココネも実にかわいい、いつになくはしゃいでいる
「シャークティ、きれいだなー」
「美空・・・」
腕を組んで歩く二人、前をココネと円が歩く
金魚すくい、露店の食べ物、小さいながら楽しい祭り
そして花火が上がる、きらきらと輝く火の粉
「日本の花火をじっくり見たのは初めてです、ありがとう円」
「どういたしまして、せっかくだし」
肩車する美空の上でココネはただぼんやり花火を眺めている
花火に照らされ、この時がいつまでも続いて欲しいと皆思っていた

36-105

36-105 名前:続・早乙女ハルナの憂鬱[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 21:11:16 ID:???
麻帆良学園…初等部から高等部までそろう有名私立(?)学園。
今日も麻帆良学園は平和だった。

…中等部、早乙女ハルナの周囲をのぞいては。


続・早乙女ハルナの受難 第1戦
『早乙女ハルナvs龍宮真名』


どどどどどど……

真名「…待て早乙女っ!
   私のワルサーP38をうずめさせろっ!」
ハルナ「うるさいこの浮気モノッ!
    いーかげんアキラ一本でイッちゃいなさいよ!」
真名「何を言う!不倫は文化だ!浮気も文化だ!
   あの早乙女好きの神絵師様も許してくれる!さぁ!」
ハルナ「お前はどこぞの石○純一だ!
    っていうかこの局面で某神絵師さんは関係ないっ!
    むしろ許すはずがないって!」
真名「ゴタクはどうでもいい、さっさと止まって私にヤラせろ!」
ハルナ「絶対嫌だ!逃げ切ってみせるっ!
    パルリンモードG、発動!」

にゅにゅにゅにゅにゅ…シャキーン!
ハルナ「ゴキニトロ、発動!」

ゴゴゴゴゴゴ…きゅぃぃぃぃぃぃぃぃ…ゴゥゥ!!

真名「クッ、待て早乙女ぇぇぇぇぇぇぇ!!」
36-106 名前:続・早乙女ハルナの憂鬱[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 21:12:07 ID:???

105

ハルナ「フゥ…ここまでくれば大丈夫よね…
    …!?何このラブ臭!?
    久々のラブ臭ネタktkr!!」

木乃香「せっちゃん……もう誰もおらへんで。
    さぁ、さっきの続きやろか?」
刹那「い、いけませんお嬢様…!」
ハルナ「ムホッ!久々のこのせつキタ----------(AA略)----------!!」
木乃香「ん〜?そんなこと言うても、カラダは正直やえ?
    ほら、ココもこんなんなって…」
刹那「あぁっ、いけません!そんなところ…。」

ハルナ「ヒャッホウ!これで夏コミのネタは決ま…
   (プスッ)
    りぃぃぃぃぃぃ…Zzzzz」

真名「フン、残念だったな早乙女。
   まぁこのシロサイ用麻酔じゃ、当分起きないだろうな。
   …おい、もういいぞ刹那…刹那?」
刹那「ハァ…ハァ…ハァ…んっ…」
木乃香「ふふ、せっちゃんいいイキっぷりやったえ?」
真名「……」


(その後パルは、せっちゃんと一緒においしく頂かれてしまったそうな。)


刹那&ハルナ「汚れちゃった…。」

36-111

36-111 名前:さよ 小さな知識[sage] 投稿日:2006/07/28(金) 23:35:44 ID:???
さよ 小さな知識


さよ 「ろうそくの炎をじっと見つめていると、時間を忘れてしまうさよです」
真名 「ふふっ・・・ありとあらゆる物をハントする真名さんだ」
さよ 「あの・・・抵抗はしませんから・・・優しくしてくださいね」
真名 「いい覚悟だ。さあ、こっちにおい・・・ぐぼぅぁ!!」
さよ 「あわわわわ・・・」
千鶴 「さあ、困ったちゃんは遠いところに逝ったから・・・小さな知識ね」
さよ 「あうう・・・やっぱり盗られるんだ」


千鶴 「さて、今日は長ネギについてよ」
さよ 「お化けのお払い効果はないみたいですね」
千鶴 「実は関西では細く葉の部分が多い青ネギが主流、関東では白い部分が長く太い白ネギが主流なのよ」
さよ 「どう違うんですか?」
千鶴 「白ネギの匂いと辛味が特徴。青ネギはほのかな甘みと香りが楽しめるわ」
さよ 「まあ、どうでもいいです」
千鶴 「投げやりね」
さよ 「だって、だってぇ〜」
千鶴 「わがままはいけないわ。長ネギの霊ってあるのかしら?」
さよ 「い、いやぁ!!!」
千鶴 「ああん、逃げなくてもいいじゃない。それに、逃げられないのに・・・」

36-125

36-125 名前:コイノハジマリ[sage] 投稿日:2006/07/29(土) 16:42:30 ID:???
コイノハジマリ

「ふぁ…うっ…」
千雨はザジに唇を奪われていた。
「千雨…かわいい」
ザジはヤル気満々だ。
いつしか受け一方に回って理不尽のような気がするけど、そういうことの相性はいいみたい。
それだけの関係――それだけでいいと思っていた。

それはまだ二人が恋に落ちる少し前の話。

「…?」
ザジがもう一回キスをしようとすると千雨は手でザジの顔を覆って引き剥がした。
「もう終わり?」
「あぁ」
ザジはその返事に何も答えずにじっと千雨を見つめる。
まるで行かないでとでも言っているみたいに…
「…っ」
少しうろたえる千雨。
千雨はそんなザジの表情が苦手だった。
無表情のせいか、何もかも見透かされているようなその顔がどうしても嫌に思えてくる。
「千雨…行かないで」
ザジは千雨の手を取る。その瞬間、千雨は顔が赤くなり心音が上がる。
だがそれを千雨は認めない、認めるわけにはいかない。
今もこれからも自分一人だけで生きていこうと決めていた、他人の力など借りたくない。
ザジにそれを許してしまったら今までの自分を否定してしまう。

パシン
36-126 名前:コイノハジマリ[sage] 投稿日:2006/07/29(土) 16:43:05 ID:???
乾いた音とともにザジの手がはらわれた。
「…痛い」
ザジの仕草一つ一つが気になる。こいつはこんなに表現豊かだったんだなと。
「千雨、今日も連絡なかったね」
千雨はザジに携帯の番号とメールアドレスを教えていた。
別に教えたくて教えたわけでなく、ザジが教えてほしいとせがまれて仕方なくやったことだ。
しかし教えて以来、ザジは頻繁に電話とメールをするようになった。
今日一日あったこと、どうでもいいこと、千雨のことでも頻繁にやってくる。
初めのうちは一言ながら返信はしていた、だが次第にうざく感じるようになり最近は全く返信していない。
それどころかメールの内容を見る前に削除することもあったり、電話は留守電サービスに繋ぎっぱなしだったりもする。
「付き合っていると思ってたのは私だけ?」
「う、うぬぼれてんじゃねぇよ!誰が誰と付き合ってんだ!!」
半ば怒り気味にザジにぶつけた。
「電話もメールもお前が一方的にしてきて!」
ザジがまた無口になった。悲しんでいるような言葉に詰まっているような顔。
「………もしかして迷惑だった?」
「そうだよ!迷惑なんだよ!!!」
―どうして私はこんな言葉の返し方しかできない。
ザジを受け入れてしまいそうな自分を否定しようと必死になって、ザジに厳しい言葉を浴びせた。

「分かった、さよなら千雨」

ザジはそのまま立ち上がり千雨を見ずにそのまま部屋を去る。
あまりにもあっさりと、そしてあまりにも切り捨てるように。
「…マジ…かよ」

それっきりザジからの連絡はなくなった。
校舎内、教室、授業中、昼休み、放課後、寮とすべての場所でザジからの声すらも聞かなくなった。
36-127 名前:コイノハジマリ[sage] 投稿日:2006/07/29(土) 16:43:42 ID:???
どこかで千雨と出会っても避けるように去っていく。
「…何が分かったってんだ」
帰り道、千雨は公園のベンチで一休みしていた。
これまでも付き合っているとか付き合っていないとか明確な答えは出ていない。
千雨は携帯を取り出す。誰からもかかってこない電話。
「…一人で勝手に決めんなよ。私の気持ちとか全部無視してたくせに」
誰かに言うでも無く悪態をつく。
ザジから連絡がなくなってもう3日。教室では頻繁に会うが会話はない。
「…ちっ」
仕方なく千雨はザジに連絡をした。
ボタンを押す緊張感、一体どんな反応が来るか正直怖かった。しかしどうしてもハッキリさせたかった。
このままの関係が続くのも耐えられない。

『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないためかかりません』

「え…」
電話口から聞こえた音声。ザジに繋がらない。
数える程度だが、千雨からの電話には飛びつくように必ず出ていたザジ。今まで1度たりともなかった。
「くそっ!」
もう一度ザジに電話をかける。しかし電話口からの返答は相変わらずだ。
電話の繋がらない所にいるのかとはじめは考えた。なぜなら今まで繋がらないということはなかったからだ。
―それとも
千雨の頭に描いたもう一つの可能性。
もう千雨との関係は終わったから。もう千雨はザジにとってどうでもいい存在だから?
「そういう…ことなのかよ……」
力なくベンチに腰掛けた。もう一度リダイヤルする、しかし結果は同じ。
何度かけても同じ音声の繰り返し。
便利になったと言われている携帯だが、繋がらなければ役立たず。
36-128 名前:コイノハジマリ[sage] 投稿日:2006/07/29(土) 16:44:26 ID:???
『そうだよ!迷惑なんだよ!!!』

あんなこと言わなければよかった。
途端に目の奥が熱くなって涙が落ちる。
「ち…くしょぉ…!」
泣くな、こんなことで泣いてしまったらいけない。
千雨が恐れていたのはザジの目に射抜かれそうになる自分が嫌だったから。
純粋にこんな自分を好きになってくれるザジが心の底では嬉しく思えたから。
だから欲情してしまいそうになる自分を抑えることに必死だった。
今まで以上の関係ももってしまいそうな自分がいると、それが最後だと思ってしまったから。
「うぅ…ううぅぅ……」
ベンチで一人で泣き崩れる千雨。メガネは涙で溜まり、先が見えなくなってしまっていた。
相手を望む思いが強かったのは自分だった。だがそれを認めたら自分が自分でいられなくなるから。
つまらない意地を張って他人を平気で傷つける最低な自分の末路を思い知った。
「ザジぃ……」

その瞬間。一人の少女が千雨を抱きしめた。
「誰が…千雨を泣かしたの」
ザジが、ザジが駆けつけてきてくれた。
あまりにも唐突に、都合が良すぎると言っていいほどのタイミングで。
「お前、何で…」
「千雨を泣かしたのは誰。私、千雨を泣かした人許さない」
ザジが怒っている、自分のために。あれほど酷いことを言ったはずなのに。
たまらずザジに抱きつく千雨。
「心配して泣いてくれてたの?」
「うぬぼれるなバカ」
いきない悪態をつく千雨。
「そうだね…うぬぼれかもね」
36-129 名前:コイノハジマリ[sage] 投稿日:2006/07/29(土) 16:44:59 ID:???
ザジは千雨を抱きしめる。

「私、千雨が好き。私と付き合って」
いきなりの告白、千雨は驚いた。
「バカ野郎…何言ってやがる」
「千雨が素直に『うん』って言わないのは分かってる。そんな千雨が好き、どうしようもなく大好き」
この女は自分のものだ。
「どうすれば千雨は私を好きになってくれるか一人でずっと考えてたの、その整理がつくまで…千雨の声を聞かないようにしてたの
 じゃないと、私また千雨を怒らせそうだから」
一生懸命に自分自身を好きになってくれる人物がそこにいる。
「だからもう一度言うね。千雨、私と付き合って」
気が狂いそうになるほどこの女に溺れているんだ、自分はそれすら否定しようとした。
もうそんな劣等感は捨ててしまおう。
心地よければそれに委ねるのも悪くない。望めば欲しくなる、千雨がザジをザジが千雨を求めるように。
だからこれからもこのままで…
「考えてやるよ、バーカ」

それはまだ二人が恋に落ちる少し前の話。
そして二人が恋に落ちた瞬間。



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最終更新:2007年08月07日 22:57