311 : 境界線 2006/11/18(土) 12:13:06 ID:???
龍宮「いや、私は最後まで行ってナンボだと思う」
楓「いやいや。深くまで行かずともそう言えるでござるよ」
穏やかな昼下がりに二人は若干剣呑な空気で何やら議論をしている。
そこへふらっと現れたのは我らがでこぴんロケットの面々。
皆一様にその不思議な光景をじぃっと凝視してしまった。
そして、それが失敗だったのだ。
普段からそういった気配を察知する力に優れたこの二人。
ぐりんと頭を巡らせると、でこぴんロケットをロック・オン。
龍宮「あいや、いい所に」
楓「ちょっと来てほしいでござるよ」


312 : 境界線 2006/11/18(土) 12:13:37 ID:???
龍宮「で、今ある事に関してちょっと議論をしていたわけだが」
楓「おっぱいプリンの真名が何もわかっていないから、困っているのでござるよ」
龍宮「なに!? 乳にばかり栄養が行ってるプレイメイツの癖に!」
亜子「ま、まーまー。で、なんでそんなに熱くなってたん?」
龍宮「うん。恋人の境界線についてだ」
亜子「こ、コイビトの境界線て……」
桜子「ちゅーまでいけば恋人なんじゃないの?」
美沙「えー、何言ってるの。子供じゃあるまいしー」
真名「ふむ。柿崎、お前もスポポンヌップンまで言って初めて恋人であると言える派か」
美沙「奇遇ね、真名ちゃん。じゅぽじゅぽビュクンで初めて恋人よね?」
桜子「エロッ! 美沙エロッ!! ちゅーすればもう恋人だよ!」
楓「まったくでござる。接吻で十分でござるよ」
微妙な沈黙
真名「……お前たちとは雌雄を決さなければいけないらしいな」
美沙「力を貸すよ、真名ちゃん……二人に逸脱者の力、見せてあげる」
楓「……ふっ。ピュアラヴの力、見せるでござるよ」
桜子「純愛ポポポ!!」
そして、学園が、戦場と化した。

亜子「はぁー、びっくりしたー……」
円「……いきなり、喧嘩始めるんだもんね。皆」
亜子「……うん……」
手をつないで、二人は世界樹に背を預ける。
円「……恋人なんて、ただ、好き同士が傍にいれば……そう言えるのに、ねぇ?」
円が少しはにかみながらそう言うと、やはり亜子もはにかんでこう返した。
亜子「……円……大好き」
円「ん……亜子、私も」
二人の距離が、ゆっくりと狭まっていき……


313 : 境界線(番外編) 2006/11/18(土) 12:14:24 ID:???
ふーか「お、おおおおい! き、きっき、キスしたぜ!? おい!」
ふみか「……う、ウホッ! 手が、手があんなとこに進入して……!」
ふーか「えーい! この位置からじゃ見えん! 代われ!!」
ふみか「い、いやじゃあ! 姉者はいつもここから楓姉と真名がヌプンジュッポしつつチューしとるのを見とるじゃないか!」
ふーか「クッ! だが、ワシは見たい! あのおぼこな二人がチュッチュッチューしながらクチュるのを見たいんじゃ!」
ふみか「それは横暴じゃ姉者! あっ、ど、どこを触っとるんじゃ姉者! そこはワシの大胸筋」
ふーか「……史の字……お前、いつの間にか女らしい体になりよったのぉ」
ふみか「な、なにを言って……双子なんじゃから姉者も同じじゃぁ……!」
ふーか「ぐ、ぐふ、ぐふふふふ、愛い奴、愛い奴!」
ふみか「止め、アッ――!」


319 : 花嫁修業? 2006/11/18(土) 17:59:28 ID:???
花嫁修業?

休みの日は大体遅くまで寝て起きるものだ。
その日も…

ゴチン

「っ!……何をしますの?」
おたまで頭を叩かれたあやかはベッドの毛布から出てくる。
そこにはエプロン姿の明日菜が朝飯を作っている途中だった。
「エプロンなんて、あなたには随分似つかわしくない格好ですわね」
「うるさい!」
ゴチゴチゴチゴチ

この人はいつもこうだ、男っぽくて乱暴で、だけどすごく面倒見がいい。
裏表のある人と付き合うよりも付き合いやすいし、何よりあやか自身、この人の存在はありがたい。
「…味噌汁随分と濃いですわね」
朝飯の味噌汁は入れる量が分からずに適当にやったせいで濃すぎる。
焼き魚は焼きすぎで真っ黒、卵はガチガチ、辛うじて食べられるご飯もやたら硬い。
「これは…また一から教えなおさないといけませんわね」
「む~。大丈夫だって、晩御飯はミスしないから」
今日は昼から街に出かける予定で昼は外で食べるのが決まっているのだが…
これが今日一日のまともな食事をした時だった。

「…」
言葉が出なかった。
そこにおいてある晩御飯は一つのカップラーメンだからだ。
「アスナさん…晩御飯はどこへ…?」
明日菜を問いただすあやか、明日菜はあたふたして誤魔化す。


320 : 花嫁修業? 2006/11/18(土) 18:00:01 ID:???
「いやーそのー、料理は愛情よ。無理して難しい食事を作るより効果的じゃん」
すでに台所はカオスと化しており、明日菜の両手は絆創膏や包帯だらけ。
どこをどんなにすればこんな風になるのか、ある意味疑問である。
「そ、それじゃあ私お風呂入ってくるねー」
大慌てでバスルームに直行する、完全に逃げた。
「……はぁ」
また失敗してしまった自己嫌悪から、明日菜は頭から湯船につかる。
どっちにしても自分は家事は向かないほうなのかと考えた。
典型的なパワーバカで何事もそつなくこなし、それでいて財閥の令嬢たるあやかと肩を並べるなんて無理なのだ。
なのに彼女は自分を好きでいてくれる。自分もそれを受け入れている。
そう考えるとまた明日菜は湯船に頭まで浸かる。

「ふぅ…」
何となく時間を過ごして見ると、そこにあやかの姿はなかった。
カップラーメンは空っぽでキッチンは綺麗に掃除されていた。
「…本当に、何でも出来るのね」
そう考えていると本人がどこに行ったのか気になった。明日菜は今までのパターンを考える。
「…そうなると、あそこね」
体はしっかり洗ったし心の準備もできた、あとは本人の…と考えたがやめた。
あやかの場合、こちらが準備できる遥か前から準備完了だからだ。
ベッドルームを開けると案の定、あやかはそこにいた。

「明日が休みでよかったですわね」
「そうね」
明日菜はあやかの寝ているベッドに潜り込む、だがその瞬間にあやかは体を翻してマウントを取った。
「…つーか、いつもなんだけど。私ってやっぱり下なんだ」


321 : 花嫁修業? 2006/11/18(土) 18:00:32 ID:???
「冷蔵庫の中が空っぽになったのは誰のせいでしたっけ?」
むぅ…と口を噤む明日菜。されるがままになりまたやられるのかと内心諦めがついていた。
「観念してくださいね」
キスされた。もうこんなことになって何回目だろうか。
こんなイタズラな天使に惚れてしまった。それはもうメロメロに。
身も心も捧げて、もう離さないでと日々を願ってみたり。
「うぅぅ~」
汗だくでぐったりする明日菜。本気で疲れた、体が言うことを利かない。
いろいろと騒動を起こした代償がこれだから、あぁまた腰を壊してバイトが行けなくなる。
これでバイトクビになったらどう責任取る気なのかと明日菜は考えた。

「もし、もしもだよ。私が学園を抜けることになったら…あんたの通い妻になっていい?」
明日菜の言葉にきょとんとするあやか。
「……あなたが…妻?」
「うん」
あやかの顔が極端に歪んだ表情になって悩みだす。
「えぇ!?駄目なの」
もしかして迷惑だったかと思って慌てる明日菜。
「あの、ご飯とか…いろいろとあったし、体払いでもいいから…」
するとあやかは軽く笑って明日菜を抱きしめる。
「そこまでしなくてもいいですわよ。あなたの面倒を見れるのは私くらいですもの、今のはプロポーズ?それともギャグですの?」
「くぅぅぅぅ~~」
駄目だ、あやかのペースにやられて情けない気分だ。
だけどこんなのは日常茶飯事だ。毎日新婚気分で付き合って、周りからはバカップル呼ばわりで。
きっとこんな花嫁修業も悪くない。


325 : マロン名無しさん 2006/11/19(日) 02:57:31 ID:ptHa+MJr
「ライバル出現!?」by千雨

「私の名は長谷川千雨・・・いつもならそれほど悩むことは
少ない・・・ただ、それが私の恋人っ、もとい親友であり
同居人のザジのことなら別だ。」

千雨は悩んでいた、これまでに無いほど悩んでいた。
「よく考えろ・・最近私はあいつに何かしたか・・・?」
千雨は滅多なことでは悩まない、つまらないことにいちいち
悩んでいては3-Aという、超個性的なクラスではやっていけ
ないからだ。
「食べ物・・・いや、それは無いなよな~。」
ただ、千雨は悩んでいる・・・それは
「じゃあ、なんで・・・最近あんなに龍宮と仲いいんだよおおおお!」
それは千雨の今にも声に出しそうな心の叫びだった。

ことの始まりは一週間前程からだった。
いつもようにザジを探しに行くたびに必ず隣に龍宮真名がいたのだ。
最初はただの偶然だと思った。
しかし、この一週間必ずザジの側には龍宮がいたのである。
「なんでだ?なんで龍宮と・・・まさか私のことをす・・。」
その先は考えたくなかった、ザジを裏切るようだったし、もし
本当だったらと言う不安が千雨の心に広まりつつあったからだ。

328 : 五月の超包子繁盛記 2006/11/19(日) 18:00:32 ID:???
五月の超包子繁盛記

今は昼時だけあってとても人が一杯です。
超「ハンバーグ2人前追加ネ」
五月 はい
今日の料理は特性ハンバーグです。
食パンをミキサーで砕いて作ったパン粉、超さんが仕入れてきた特性の牛肉。
無農薬野菜のニンジンと玉ねぎ。塩コショウの調味料も抜群です。
しっかりとこねて熱いフライパンでしっかり焦げ目がつくまで焼きます。


その間に特性デミグラスソースを作成しましょう。
丸一日寝かしこんだソースはとっても絶品で食欲をそそります。

もう一つ食欲をそそる要因として、料理を出すときの鉄板にあります。
普通に皿に置いて出すより、熱い鉄板の上に乗せたまま出すのが効果的です。
今正に焼けましたよと言わん張りのジューっという音。ソースが鉄板に落ちて焼けた時の香ばしい香り。
ハンバーグも行き場を失った肉汁が溢れて食欲をさらにそそっています。
普通はそこにチーズを乗せるのがいいでしょうが、ここはあえて乗せずに具材の質で勝負です。

追加注文があったテーブルは明日菜さんと宮崎さんでした。
宮崎さんはメニューの一番小さな120グラムのサイズを選びました。
とてもおいしそうに食べているのですがご飯も少なめですし、ちゃんと足りているのか心配です。
その逆に明日菜さんは300グラムを選びサラダもライスも山盛りです。
どこにそれだけ入るのか疑問はつきません。


332 : 刹那 そして伝説へ(byDQⅢ) 2006/11/19(日) 21:49:21 ID:???
エヴァ 冬のひととき


風情を理解するにはそれなりの時が必要となる
当然、うら若き我がクラスメートどもはそのようなことが理解できるはずもない
ま、例外もいるようだが・・・


七輪に網を引き、豆炭が赤々と燃えるのを眺めるだけでも食欲をそそられるようになった
エヴァ 「茶々丸、梅のベーコン巻きはまだか?ササミとエノキのホイル包みと厚揚げも忘れるな」
満月が輝く寒空の下、少し暑めの格好でお燗を手に持ちながら下僕に命令するのはたまらない

茶々丸のほうも少しは理解してるようで、持ってくるまでに少しばかりの時間をかける
この待つまでの間、満月を肴に熱燗で体を温めるというのも楽しみ方の一つなのだ

茶々丸 「お待たせいたしました、マスター。長ネギの味噌焼きもいかがでしょうか?」
茶々丸の持ってきた皿の上には、リクエストの肴の他に気を利かせたのだろうか串に刺さった長ネギが乗っている
エヴァ 「貴様・・・私の嫌いなものを持ってきてどうする?誰が食べるんだ?」

千鶴 「あらあらあら、好き嫌いは良くないわね?」

何時のまにやら現れたまかないおば・・・月が綺麗だな
エヴァ 「貴様を呼んだ覚えはないが?」
千鶴 「うふふ・・・月が綺麗だったからちょっと来てみたの。おにぎり持ってきたから焼かないかしら?」
エヴァ 「まあ、座れ。それはそうとおにぎりの中身はなんだ?鮭か梅干しか?」
千鶴 「どっちもあるわよ。特製のタレもあるから好きな量塗ってね」

おにぎりが焼けて香ばしい香りがあたりに漂う。これも私は好きだ



333 : マロン名無しさん 2006/11/19(日) 21:50:08 ID:???
アーッ!!!
名前間違えたorz


343 : マロン名無しさん 2006/11/20(月) 23:01:12 ID:???
「ライバル出現!?」by千雨
その2

「いやっ違う!・・・ザジは、あいつはそんな事をするような奴じゃない。」
だが、必死に頭の中でそう考えても心の中は不安で押しつぶされそうだった。
そして千雨はついに決心する、とにかく謝ろうと思ったのだそして龍宮との
関係も同じく聞き出そうと思ったのであった。
「そうだ、悩んでいても仕方がないか・・・とにかくあいつに会わないと!」

まだ時間は放課後の夕方だったのでザジは校舎の屋上にいるはずだった
そして千雨は部屋から飛び出し、走り出しだした。今までで一番速く、
全力で。
「はあっ、はあっ、はあっ、やっぱ体育祭の時にあのガキの言う通り
少しは練習しといて正解だったな・・。」
そんなことを思いながら、息絶え絶えになりながらも屋上についた。
放課後なので生徒はほとんどいなかった、ザジと龍宮を除いては。
「千雨?どうしたの、そんなに慌てて?」
ザジが少し驚いた様子で千雨に話しかけた、だがすぐに千雨は言葉を
発する・・。

「ごめん!とにかくごめん!ザジ!」
ザジは千雨がなんでそんなに謝っているのかが分からなかった
「私、お前に何か気に障ることとか嫌なことをしたのなら謝るよ・・。
私はザジ、お前がいないとダメなんだ・・・。」
千雨は泣きそうになりながらもこらえて必死に話す
「だから、お前が隣にいる龍宮と一緒にいるだけで嫉妬しちまうんだ。
自分でもバカだって事は分かってる、でもそれくらいお前のことが好・・」
だが、「好き」と言う前にザジが抱きついてきた


344 : マロン名無しさん 2006/11/20(月) 23:04:00 ID:???
「ライバル出現!?」by千雨
その3

「ごめんね千雨、誤解させちゃって・・・ザジも千雨の事大好きだよ。」
「えっ?」
今度は千雨が驚いた、なぜなら誤解という単語が聞こえたからであった
「誤解って・・・へっ?」
まだ状況を理解してない千雨に今まで沈黙を保っていた龍宮が口を開く
「なんだ、ザジまだこいつに言ってなかったのか?」
「うん、最近あのことで忙しかったから・・・。」
そしてザジは千雨の手を握ってどこかにつれていこうとする
「千雨、来てっ。来れば分かるから。」
「あっ・・ああうん、分かった。」
千雨はザジに手を握られてついて行く、その場所へ行く途中で龍宮に話しかけた
「なあ、どこにいくんだこれから?」
「行けば分かるさ。」

数十分歩くと旧校舎がある近くに着いた
「ここに何が・・・あっ!」
千雨は廃校舎の周りに白いフェンスがしてあるのに気付く、そしてその中には
「いぬっ?なんでこんなとこで飼ってるんだ?しかも2匹も。」
その中には2匹の犬がいた、ただまだ生まれて一ヶ月ほどしかたっていないよう
だった。
「もしかしてこいつらの世話をしてのか?お前ら二人で。」



345 : ハルナ 残された時 2006/11/20(月) 23:33:26 ID:???
ハルナ 残された時


あなたは残された時間をどう使いますか?愛する人のため、大切な何かのため、それとも・・・


今、私はある部屋の前に立っています
なんの変哲もない部屋の扉、でも私は・・・ドアノブを握ることが出来ませんでした
握ろうと手を伸ばし、途中で手を引っ込める。そんなことを何度繰り返したでしょうか?
私には勇気がありませんでした。彼女たちに逢いに行く勇気が出なかったのです
残された時間はあとわずか、その間彼女たちとどう接すれよいのかわかりません
手を取って励ましてあげればよいのでしょうか?
おかゆを作って、そっと食べさせてあげればよいのでしょうか?

わかってる
考えている時間は残っている時間を消してゆくということを
早く、一秒でも早く彼女たちに会わなければならないということを

わかっているのに・・・
私には勇気がない。どのような顔で合えばいいのかわからない
ゴメン、わからないよ・・・

夕映 「の、のどか!!!だめっ!!まだハルナが・・・だめぇ!!!」

部屋の中から叫び声が聞こえた瞬間、頭の中が真っ白になりました
時間のことも、勇気のこともどうでも良くなりました。ただ、逢いたい。それだけになりました
そして急いで扉を開けました。そして私を見た夕映が泣きながらこう言ったのです

夕映 「何していたですかハルナ・・・もっと早く、もっと早ければ!!締め切りまで後2時間で4ページですよ!!!」
ハルナ 「ゴメンねぇ・・・コンビニで立ち読みしてたらつい・・・のどか生きてる?」



350 : マロン名無しさん 2006/11/21(火) 01:39:50 ID:???
ことの始まりは2週間前。
学園にある旧校舎で2匹の子犬のラブラドールレトリバーを育てることになった
2匹は学園の近くの道路のわきに捨ててあったらしい。
学園長からそんな話を小耳にはさんだ龍宮は自分が育てたいと言った、そして
さらにこんな提案もする
「この2匹を盲導犬にしてみないか?」
それを聞いた学園長や先生達は快く賛成してくれた。だが犬は2匹しかも別の問題
もあったパピーウォーカーとして育てるため1年しか一緒にはいられないのだ。
たしかにこのことを自分のクラスで言えばみんなやりたいと言うだろう。
しかし、そのぶん別れの悲しみも大きい。

そのことを考えて1週間と3日前、屋上悩んでいる時小鳥と戯れているザジを
見かけたのだ。一瞬戸惑ったが、クラスのみんなには内緒と言うことでザジに
この事を話してみたのだ。
龍宮はなんで、ザジにこの事を話してみようと思ったのか分からなかった、
ただ直感的にザジならば大丈夫と心の中で思ったのだ。
「ザジはね、いぬとか動物が好きだからいいよって言ったの。」
「そうか・・・だから最近龍宮と一緒にいたのか。」
千雨は一安心した・・・だが、同時にふと自分が言った事を龍宮に聞かれた
ことを思い出す。
「もしかして・・・龍宮、私が言ったこと・・・聞いてないわけないか。」
千雨はとても恥ずかしくなった、だがそこで龍宮が
「大丈夫だ、他人のなんとかを詮索するつもりはないからな。」
「そうだよ、千雨、まなまなはそんなことはしないよ。」

352 : マネージャーのプロ? (1/6) 2006/11/21(火) 02:06:13 ID:???
「亜子~、遅~い!」
「あやや、待たせてもうた?」
「10分遅刻……。マネージャーの仕事?」
「大変だねー、サッカー部のマネージャーってのも」
放課後。
それぞれの部活が終ってから揃って買い物に行こう、と約束していた運動部4人組。
珍しく集合に遅れた亜子に、裕奈は拳を振り上げ、アキラは心配し、まき絵は目をパチクリさせる。
「かんにんな。ウチもさっさと終らせたかったんやけど、ミーティング長引いてな~」
「まあ、仕方ないね」
「ウチはマネージャーのプロやからな! 手ぇ抜けんのや!」
「何なのさ、プロのマネージャーって! 給料出るんかい!」
「…………」
遅れた気まずさからか、妙にハイテンションな亜子を、労わるアキラ。ツッコミを入れてあげる裕奈。
そんな中、まき絵はなにやら1人で考え込んでいる様子で。
少しの躊躇いの後に、おずおずと口を開く。
「……ねぇ、ちょっと聞いていい?」
「何、どうしたのまき絵? 真剣な顔して」
「こんなこと聞いて、バカだと思われるかもしれないんだけど……。

……『マネージャー』って、何?」

!?
まき絵の唐突な質問に、他の3人は、一瞬凍りついて。
次の瞬間、大爆笑。
「アッハッハ! まき絵、そりゃないっしょ。いくらバカピンクだからって、それはあまりにも」
「ウチがどんな仕事してるかとか、ちゃんと知っとるやん。それを『何?』とか言われても」
「いや、だから、『部活のマネージャー』が雑用とかしてるのは、もちろん知ってるんだけどぉ……」
笑われたまき絵は、それでも真剣で。質問の真意が伝わってないことに気付き、必死に言葉を補う。


353 : マネージャーのプロ? (2/6) 2006/11/21(火) 02:07:05 ID:???
「だから、何て言えばいいのかなー。
『マネージャー』って、英語だよね? どういう意味? 日本語で何ていえばいいの?
てか、なんで亜子みたいな仕事してる人のことを、『マネージャー』って呼んでるのかなぁ?」
「…………」
「…………」
バカレンジャーの中でもとりわけバカだと見なされているバカピンク・佐々木まき絵。
そんな彼女のシンプルな、しかし案外深い質問に、一同は咄嗟に答えられず、黙り込んで……。

買い物のために麻帆良の街を歩きだしても、4人の頭の中はまき絵の提出した疑問で一杯だった。
「ああもうっ、気になってしょーがないじゃんっ! まき絵のアホー!」
「アホじゃないもんっ! バカかもしれないけどアホじゃないもんっ!」
「でも、言われてみると、ちょっと困るよね……」
「ウチ、自分のことなのに、そんなこと考えたこともあらへんかったわ……
マネージャー……。どういう意味なんやろ……」
あれこれと服を見ながらも、話題はさっきの続きが尾を引いていて。
3人寄れば文殊の知恵、と言うが、4人集まっているのに全然答えが出ない。

と、そんな怪しい4人の集団に、声をかける別のグループが。
「あれ? 亜子?」
「やっほー! なんだみんな一緒なのかな~?」
「珍しいね、こんな所で出くわすのって。何の話してんの?」
同じように服を見に来ていた、美砂・桜子・円。
3人はそして、何やら悩んでいるらしい4人の所に寄ってきた。


358 : マネージャーのプロ? (3/6) 2006/11/21(火) 02:27:58 ID:???
「『マネージャー』、かぁ……
タレントの『付き人』とか裏方とかも、『マネージャー』って言うよね?
業界用語で『ジャーマネ』とか呼んだりしてさー!」
「桜子ォ、それっていつの時代の言葉よ? 思いっきり古いって。那波さんじゃあるまいし……。
コ、コホン、ほ、他には、『ホテルの支配人』とかも『マネージャー』だよね。
何かトラブった時に、『おまえじゃ話にならねー、マネージャー呼んで来い!』って感じで怒鳴ってくれたり」
「……ラブホとかでも支配人って居るの?
それはそうと、介護保険とかの関係で『ケアマネージャー』とかいう仕事もあるよね。
あれって関係あるのかな。い、いや、千鶴の名前と年齢で思い出したんじゃないけどさっ」
3人3様、それぞれに思いついたことを口にする3人。
運動部の4人も、その度に「ああそういえば!」と相槌を打っていたが、しかしはたと困ってしまう。
確かに言われてみればその通りなのだが、かえってワケが分からなくなる。
部活の雑用係も、芸能人の付き人も、ホテルの支配人も、ケアマネージャーも、みな『マネージャー』。
イメージの拡散に、かえって混乱が深まるばかり。

「……うふふ。
誰が今時『ジャーマネ』なんて言葉を使うというのかしらね、柿崎さん?
誰が介護を必要とするようなお歳なのかしらね、釘宮さん?」
「「ひぃッ!?」」(×2)
「あら、奇遇ですわね。みなさんお揃いでどうなされましたの?」
「あー、ちづ姉、やり過ぎないようにね……」
街の中、買い物もそっちのけで混乱する7人に声をかけてきたのは。
こちらも買い物に来ていたのか、あやかに夏美、それに千鶴の3人。
瞬間移動のように背後を取った千鶴の買い物袋からは、『例の野菜』が突き出している。
顔面蒼白の美砂と円を両手に引き摺り物陰に消える千鶴を見送って、あやかと夏美も話の輪に加わる。
元からいた5人も、犠牲者2名が最初から居なかような態度で、2人にコレまでの経緯を説明する。


359 : マネージャーのプロ? (4/6) 2006/11/21(火) 02:29:20 ID:???
「劇団のリーダーとかも、英語じゃ『マネージャー』だよね。うん、言われてみるとよく分からないねー」
「会社などの経営者も、英語では『マネージャー』ですわね。外資系企業では役職名にもなってますし。
『GM』、『ゼネラルマネージャー』という用語は聞いたことのある方もいるはずでは?」
さらに余計な『マネージャー』が出てきた。
さっきまで悩んでいた5人(今まさに葱を刺されているらしい2人を除く)は、さらに頭を抱えてしまう。
悩める彼女らに、あやかは助け舟を出す。
「まあ……名詞形の『 manager 』で考えるから混乱するのではないでしょうか?
元の動詞の『 manage 』で考えれば、自然と分かるはずですわよ」
「お、さすがいいんちょや~。勉強できるだけのことはあるな~」
成績優秀者らしい言葉に、亜子を含めたその場の面々は、一瞬納得しかけたが。
問題のバカピンクの次の言葉で、再び振り出しに戻されてしまった。

「うんうん、分かる分かるー。
……で、いいんちょ、『まねーじ』って、どういう意味?」

「…… manege プラス目的語で経営する・管理する、馬などを御する船などを操船する、などの意味ですし、
manege to do で『~~をする』、同じく動作を表す単語を目的語に取った場合も『~~をする』、ですわね。
さらには自動詞として使われる時には with や without を伴い……」
「ちょっ、いいんちょストップ! 一気に言われてもワケわかんないって!」
「私もそんな感じで覚えているけど、改めて説明しろと言われると、困るわねぇ」
雪広あやかの、頭の中の単語帳を一気に吐き出すような言葉の奔流に、たまらず裕奈は悲鳴を挙げる。
いや多分あやかの言葉は合っているのだろう。辞書的には正しいのだろう。
けれど、それを片端から聞かされる側はたまったものではない。てか説明になってない。
あやかと同様、成績のいい部類に入る千鶴も、どう伝えたものかと首を傾げる。
……あ、ちなみに美砂と円と千鶴の3名も話の輪に戻ってきており、今や総勢10人の大集団。
美砂は蒼ざめた表情でお尻をさすっており、円は虚ろな視線を宙に迷わせている。
千鶴はどこかスッキリした様子の、清々しい微笑。……まあ、誰もあえて突っ込まないわけだが。


360 : マネージャーのプロ? (5/6) 2006/11/21(火) 02:30:01 ID:???
と――
街の真ん中で悩める10人の乙女たちに声をかけたのは。
まさにこの場の救世主。この問題を解決できるはずのプロフェッショナルだった。

「あれ? みなさん、こんなところで集まって、どうしました?」

10人の視線が彼に集中し、一気にその表情がパァッと明るくなる。
彼もまた街に買い物に来ていたのか、手に何やら荷物を抱えた、10歳の少年。
ネギ・スプリングフィールド。
彼女たちの担任にして――英国出身の、ネイティブスピーカーな英語教師だった。

「なるほど、こんな所で英語の勉強ですか。みなさん感心ですね」
「ああっ、ネギ先生! お褒め頂くほどのことではございませんわ!
ただ恥ずかしながらわたくしにもみなさんを教え導くだけの力がなく、是非先生のお力をお借りムガッ!」
「はいはい、いいんちょはしばらく黙ってて。
で、ネギ君、ちょっと整理して教えて欲しいんだけど」
「『マネージャー』って何~? 『まねーじ』ってどういう意味~?」
放っておくといつまでも喋っていそうなあやかの口を裕奈が塞ぎ、まき絵が改めて問い掛ける。
ネギはニッコリ笑うと、頷いた。

「いいんちょさんの、『 manager 』は『 manage 』の名詞形である、という指摘はいいですね。
動詞に『 -er 』という接尾語をつけると、『~~をする人』という意味の名詞になります。
ですから、『 manager 』は、『 manage する人』、という意味で考えればいいわけです」
「「ふむふむ」」(×10)
「それで、問題の『 manage 』という動詞ですけど……
これに綺麗に対応する単語は、実は日本語に無いようなんです。そもそも日本語の概念に無いらしくて。
僕もちょっと困って、色々調べて頭捻って、で、ようやく思いついたのがですね」
「「思いついたのが?」」(×10)


361 : マネージャーのプロ? (6/7) 2006/11/21(火) 02:30:50 ID:???

「 『何とかする』、『何とかやっていく』という訳です」

「なんとか――する?」
「はい。問題が起こったり、簡単には行かなかったりするようなことを、それでも『何とかして、する』。
何を何とかするのか? ってのは、文脈や目的語から読み取って下さい。
例えばですね……
会社を、色んなトラブルや雑事をこなしつつ『何とかやっていく』なら、『経営する』ということになります。
組織を『何とかしてやっていく』なら、『運営する』という日本語が適切でしょう。
馬を『何とかする』なら『御する』でしょうし、船を『何とかする』なら『操船する』でしょう。
To不定詞などをつければ、『何とかして~~をやる』という意味に。
without ~~ とつけば、『~~無しでも何とかやっていく』ということになります」
「「お~~!」」(×10)
思わず感嘆の声を挙げる10人。
これは、分かりやすい。そう考えれば、確かに全部繋がる。
「で、その『 manage 』に『 -er 』をつけた『 manager 』は、『何とかする人』という意味になりますね。
トラブルや問題があっても、何とかする人。何とかできる権限を持つ人、と考えてみて下さい。
カタカナ英語の『マネージャー』も、そう考えれば説明できると思いますよ」
「ほにゃらば、タレントの付き人は……」
「芸能人の日程調整や仕事の管理とかを、『何とかする人』ですね」
「じゃ、じゃあ、ホテルの支配人は?!」
「ホテルの運営を『何とかする人』。どんなトラブルが起きても『何とかできる権限を持つ人』、ですね。
日本語の『支配人』って言い方は、ちょっと偉過ぎる気がしますけど」
「てことは、ケアマネージャーってのは?」
「介護の計画とか保険とかを『何とかしてまとめる人』ですね」
桜子が、美砂が、円が。次々に口にする『マネージャー』が繋がっていく。
劇団を『何とかやっていく』ならそれは主宰や座長だろうし、会社を『何とかやっていく』のは経営者だ。
全員が納得した所で、おずおずと、問題の発端となった最初の1人が、声を挙げる。


362 : マネージャーのプロ? (7/6) 2006/11/21(火) 02:31:28 ID:???
「てことは――ウチは?」
「サッカー部をやっていく上で出てくる色んな問題を、『何とかする』人ですね。
日本の学校の部活を見ていると、『部活のマネージャー』って選手に色々と頼まれますよね?
『マネージャー何とかして!』みたいなこと、よく言っているようですし」
「なるほどー。マネージャー・亜子は『何とかする人』か~」
ネギの言葉に、亜子を取り巻く9人は、合点がいった様子で大きく頷く。

「私らが無茶やるとき、亜子は確かに『何とかしてくれる』んだよねェ。準備とかフォローとかさ」
「私もそうだけど、亜子も裕奈やまき絵をサポートするような立ち位置、多いよね……」
「ネギ君と茶々丸さんの試合の時も、豪華なお弁当作り手伝って『何とかして』くれたよね☆」
「そういえば――でこぴんロケット結成する時に、あたしら3人、ギターもドラムもキーボードもできたけど」
「うんうん、ベース『だけ』居なくて困っていた時だね~☆」
「その時、メンバーに加わってベースの練習して、『何とかしてくれた』のは亜子だったっけ」
「それだけではありませんわ。クラスの各委員を決める時、保健委員だけ決まらなくって……」
「そうだ、亜子がやるって言ってくれて、『何とかなった』んだっけ」
「あらあら……和泉さんって本当に『何とかする』達人ねぇ」

9者9様の納得の仕方に、亜子は目をぱちくりさせて。
ちょっと照れたような笑みで、頭を掻きつつ。
それでも拳を振り上げ、胸を張った。
「そーか、ウチは『何とかする人』かぁ……。ふふふ、ウチに何でも任せとき!
何でもかんでも、言ってくれたら『まねーじ』したるで! ウチはマネージャーのプロやからな~!」
「「お~~!」」(×9)
亜子の宣言に、やや大袈裟な歓声が上がる中。
ちょっと呆れたようなネギの小さな呟きは、どうやら誰にも届かなかったようだった。

「……なるほど、こんな調子で保健委員やベースや部のマネージャーを任されちゃってたわけですか。
亜子さんって『 manager 』というより、『 manageable 』な人ですね~~。
それも、彼女の魅力の1つなんでしょうけど」

(…… manageable の意味は自分で調べましょう。英語の補講・終わり)


366 : 三姉妹7 2006/11/21(火) 06:51:21 ID:???
三姉妹7

1/4

「うんしょ、うんしょ……」
たっぷりの小麦粉を抱えて史伽が歩く。その隣では円がホイップクリームを作っていた。
「やっぱり泡立て器があると楽だね」
「えへへ、折角ケーキ作りの大役を任せてもらいましたからね! 頑張るですっ!!」
リラックスした様子の円とは対照的に、史伽はやる気満々なようだ。早く明日が待ち遠しいのだろう。
その表情はいつにも増してにこにこしていた。
明日は大好きな亜子お姉ちゃんの誕生日。史伽はもう一人の姉である円と一緒にバースディケーキを
任されたのだ。張り切るのも当然である。
「味の方は任せたよ、史伽」
「はいです! 円お姉ちゃんと一緒に亜子お姉ちゃんのケーキを焼けるなんて幸せです~♪」
「生地を作るのは私がやるから。史伽はデコレーション担当かな?」
台所から聞こえてくる幸せそうな会話に、部屋を提供していた裕奈とアキラも目を細めるばかり。
「本当に仲がいいよね……」
「ちょーっと妬けるかにゃ?」
二人が見守る中、姉妹は楽しそうにケーキを焼いていたそうで―――

そして当日。放課後のチャイムと共に、史伽はぱたぱたと亜子の元へ駆け出す。
「亜子お姉ちゃん!! 早く帰るです~」
「あはは。そない慌てんでもええやん」
「ほらほら円お姉ちゃんも早く早く!」
史伽に引っ張られる形で亜子は教室を後にする。苦笑しながら円もその後に続いた。
「なんや史伽が主役みたいやな~」
「そうだね。昨日からずっとあんな調子だもん」
こっそりと亜子と円がひそひそ話をしていると、史伽はにぱっ! と笑顔を輝かせて、
「今日の主役は亜子お姉ちゃんに決まってますです! さあ、ケーキが待ってますよ~」
と言ってぱたぱたと駆け出して行った。


367 : 三姉妹7 2006/11/21(火) 06:51:58 ID:???
2/4

やがて、ぞろぞろと人が集まり出す。料理担当のまき絵やアキラ、裕奈に混じって、
ちゃっかりと史伽も参加していた。
「おっ、史伽もなかなか手際いいじゃん!」
「へへー、いつもかえで姉とお姉ちゃんの食事を作ってますから!」
裕奈に褒められた史伽は自慢気に小さな胸を張る。
「うんうん! ゆーなより上手だよね~」
「一言多いっ!!」
すかさずまき絵に指摘され、突っ込む裕奈。アキラと史伽は顔を見合わせてくすくす笑うばかり。
「なあなあ円お姉ちゃん。ウチもお手伝いしたいんやけど……」
そんな台所の雰囲気にうずうずしたのか、亜子はぽつりと呟く。
「だーめ。今日はみんなで亜子にお世話する日だからね。いつも亜子にはお世話になってるし」
「しゃあないなあ……」
ちょっぴり亜子は恥ずかしそうに答える。けれど、その表情は穏やかな笑顔のまま。そして―――

「さあ、ケーキの登場ですよーっ!!」
史伽は元気良く宣言し、箱詰めされたバースディケーキを運び出そうとした。
しかし―――

「きゃああっ!?」

何かに足を取られたのか、史伽の身体がぐらりと揺れ、ケーキの箱は宙を舞ったのだ。
「危ないっ!!」
咄嗟に円がケーキの箱をキャッチする。史伽は茫然とした表情で立ち竦むばかり。
嫌な沈黙が流れる。そして、中身を確認した円は、やがて小さく首を振った……。
「……ふぇっ」
今にも泣き出しそうになる史伽。けれど、そんな妹を優しく抱きしめたのは亜子であった。
「大丈夫やって、史伽。お姉ちゃんに任しとき!」
そう告げて亜子はケーキを受け取った。


368 : 三姉妹7 2006/11/21(火) 06:52:35 ID:???
3/4

「ありゃりゃ。見事に片寄ってもーたなあ……」
何食わぬ表情で潰れたケーキを取り出すと、亜子はクリームを指に取ってぺろりと口に運ぶ。
「お、やっぱり甘いもんやったら史伽の舌はカンペキやね♪ めっちゃ美味しいやん!」
「亜子お姉ちゃん……?」
史伽は茫然とした表情で姉を見上げる。すると亜子は、こっそりと円にウインクし、
「ほな、もっぺんデコレーションやり直そっか。今度はウチにも手伝わせてえな♪」
そう言ってケーキに残っていたイチゴやネームプレートをひょいひょい、と外したのだ。
「おっけー。またクリームから作り直しだね」
円もすかさず立ち上がり、エプロンを付けて手洗いする。そして、亜子はそのままクリームを伸ばし
デコレーションする前の状態に戻していく。
「えへへ。これがチョコケーキとかやったらお手上げやってんけどな~」
「亜子お姉ちゃん、ごめんなさいです……」
申し訳なさそうに史伽が呟くと、
「あんな、ウチもこーゆーの大好きやから! 昨日は円お姉ちゃんと楽しそーに作っとったそーやん。
ウチだけ仲間ハズレなんは許さへんよー?」
と、亜子はにこにこしながら答えたのだ。これには史伽も一瞬だけきょとんとする。そして、
「はいですっ! 一緒にケーキ作りするです!!」
と、元気一杯に答えたのであった―――

「へー、亜子ってばちゃんとお姉さんしてるんだね♪」
「うん……。ちょっとカッコ良かったかも……」
まき絵もアキラも穏やかな笑顔で三姉妹の後ろ姿を眺めている。そして、この人はというと……、
「あれっ? ゆーなどないしたん?」
「いやっ! ななな、なんでもないよ?」
あまりにうっとりとした表情で見つめていた恋人に、亜子は笑顔で小首を傾げる。すると、ホイップクリームを
仕上げた円が戻って来て、一言呟いた。
「ゆーなの気持ちはよーく分かるよ、うん」


「史伽、羨ましすぎだよ……」


369 : 三姉妹7 2006/11/21(火) 06:53:24 ID:???
4/4

長女と恋人の視線は仲睦まじくデコレーションに励む亜子と史伽に注がれたまま。当の本人達はというと、
「わあ……! 亜子お姉ちゃん上手ですー!」
「史伽程やあらへんよー♪」
それはそれは楽しそうな訳で。裕奈とアキラの部屋の台所はすっかり癒しの空間と変わっていたそうな。

「ゆーな。パーティーの間は私にも亜子との時間ちょうだい!」
「ま、あたしはメインディッシュだもんね……」
何やら不届きな密談を交わす二人。そして、

「あ、史伽。ほっぺんトコにクリーム付いとるで?」
亜子は史伽の頬に付いたクリームを指で掬い、口に運ぶ。
「えへへ……」
ちょっぴり恥ずかしそうに笑う史伽。その光景は完全に長女と恋人の心に火をつけたそうで―――

こうして、ちょっぴり焼きもちを妬く二人を尻目に、亜子の誕生パーティーは幕を開けた。
そして、亜子は円と裕奈から盛大なおもてなしを受けたそうな―――

(おしまい)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年10月26日 02:35