A-05:26-00058-01:多岐川佑華:たけきの藩国 さん

「男の子と星降る夜のお話」



 世界は7の月になると星が降って滅びるんだよ。
 そう言われていた頃がありました。
 その話を聞いていた一人の男の子がいました。
 男の子はその話を「面白い」と思いました。世界が滅びる瞬間に立ち会えるなんて。
 男の子は毎晩空を見上げて星が降るのを待ちました。
 望遠鏡を覗いては、星が降るのを待っていました。


 そんなある夜の事です。
 今日も男の子は星を見ていました。
 何かが光りました。
 男の子はびっくりして光る方向を望遠鏡で覗き込みました。
 望遠鏡から円盤状のものがフラフラと落ちてくるのが見えました。
 男の子はその円盤状のもの何なのか知りたくて、近付いてみる事にしました。
 近くで見る円盤状のものは、ちょうど子供一人分の大きさでした。
 蓋らしいものがぱっくりと割れました。
 中には女の子が入っていました。
 気を失っているようで、女の子は目を閉じていました。
 男の子はこんな狭い所に入っていてはよくないだろうと、女の子を引き摺り出してあげました。
 女の子の目が覚めました。
「君だれ?」
 男の子は女の子に聞きました。
「世界を救いに来たのよ」
 女の子は当然のように言いました。
「世界は星が降って滅びるのよ。それを変えるためにやってきたの」
 女の子は大人ぶった物言いをしました。
 女の子は円盤状のもの(どうも女の子の乗り物のようです)から何かを取り出しました。
 太い太いホースが見えます。
「何をするの?」
 男の子は聞きました。
「世界が星で滅ばないように、星を全部吸い取るの」
 女の子が引っ張り出してきたものは、大きな大きな掃除機でした。
 女の子がスイッチを押すとウィーンと音がしました。
 女の子がこけました。掃除機はうねりをあげて、ひとまず近くにあった岩を吸い込んでいきました。
 女の子はうまく掃除機が扱えないようで、掃除機が勝手にあちこちのものを吸い込み始めました。
 男の子の立てていた望遠鏡も吸い込もうとしだしたので、慌ててスイッチを止めました。
「一人でやったら危ないよ!!」
「でも星を吸い取らないと、世界は滅びるのよ?」
「一緒に持って吸い込めばいいよ」
 男の子は女の子と一緒にホースを持ちました。
 スイッチオン。
 空がキラキラ光り始めました。
 大きな星がたくさん降り始めたのです。
 掃除機はシューシュー音を立てて星を吸い込み始めました。

 こうして一晩かけて、星を全部吸い終えました。
 掃除機はすっかり重くなったので、女の子は掃除機を開けて星くずをばら撒きました。
 辺りはキラキラ瞬き、星くずはハラハラと落ちていきました。
「手伝ってくれてありがとう。おかげで世界は滅びずに済んだわ」
 女の子は男の子にそうお礼を言いました。
 女の子はそのまま円盤に乗って帰っていきました。
「ありがとうさようなら」
 男の子は手を振りました。
 まさか掃除機で世界を救ったなんて、誰も思う事はないでしょう。
 後に残されたたくさんの星くずだけが知っている話です。




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最終更新:2008年06月21日 07:07