A-45:06-00147-01:霰矢蝶子:レンジャー連邦

「ションボリーナのお話」



いまはむかし、ここはどこか。
きんいろのかみをした、ションボリーナというおひめさまがおりました。

ションボリーナのくには、うみのむこうにあるくにとけんかをしていました。
くにとくにとのけんかを、せんそうといいます。
まいにちたくさんのひとが、せんそうのためにおもいよろいをつけて、
おおきなけんやゆみをもって、うみのむこうへたびだっていきました。

せんそうでは、たくさんのひとがしぬそうです。
しぬということは、もうにどとあえなくなるということです。
ションボリーナは、しょんぼり、しょんぼり。
どうしてけんかなんかするんだろう、はやくなかなおりすればいいのに、と、
まいにちぽろぽろないていました。


(応援絵:ヤガミ・ユマ:鍋の国)

せんそうがはじまって2かいめのなつがきて、
ションボリーナのきんいろのかみがかたからむねまでのびたころ、
ションボリーナとなかよしの、にわしのおにいさんもせんそうにいくことになりました。
ションボリーナは、しょんぼり、しょんぼり。
いかないで、とおねがいしても、おにいさんはわらってションボリーナのきんいろのかみをなでるだけです。

 なかないでションボリーナ。
 そうだ、きみにこのかみかざりをあげる。
 きみのきれいなかみにきっとにあうよ。
 わらっていればきっともっとにあうよ。

そしておにいさんはわらいながら、
おもいよろいをつけて、ふねにのって、せんそうにいってしまいました。

せんそうでは、たくさんのひとがしぬそうです。
しぬということは、もうにどとあえなくなるということです。
ションボリーナは、しょんぼり、しょんぼり。
おにいさんにもうにどとあえなくなったらどうしよう、と、
なみだがぽろぽろとまらなくなってしまいました。

なきっぱなしではひからびてしまいます。
おにいさんがたびだって3かめ、ションボリーナはからからのぱさぱさになっていました。
きんいろのかみもぱさぱさして、ちっともきれいじゃありません。

このままではおにいさんのくれたかみかざりがにあわなくなってしまう。
そうおもったションボリーナは、なみだをとめようと、ぎゅっとめをつぶりました。
すると、めをとじたまっくらやみのなかに、おにいさんのわらったかおがうかびました。
なかないでションボリーナ、というこえが、きこえたきがしました。

ションボリーナはなみだをもうひとつぶだけながすと、ごしごしかおをふいてはしりだしました。
おにいさんにもうにどとあえないなんていやだ、いやだ、いやだ。
ションボリーナはしょんぼりすることもわすれて、せんそうをおわらせようとどりょくをはじめました。

ションボリーナはまずおとうさんであるおうさまに、どうやったらせんそうがおわるかききました。
おうさまはむずかしいかおで、それはとてもむずかしいことだよションボリーナ、といいました。
あんまりむずかしくて、おうさまはせんそうをおわらせるのをすこしあきらめているようにもみえました。
でも、ションボリーナはあきらめませんでした。

 おうさま、むずかしいとかそんなことはかんけいないの。
 わたしはせんそうをおわらせたいの。
 わたしといっしょに、がんばってください。

それからおうさまとションボリーナはがんばって、がんばって、
4かいめのなつにやっとせんそうをおわらせることができました。
むねまであったションボリーナのきんいろのかみは、こしよりながくなっていました。
でも、おにいさんはかえってきませんでした。

ションボリーナはおにいさんをむかえにいくために、ふねにのってとなりのくにへとやってきました。
ずっとせんそうをしていたとなりのくにはさばくのくにで、
いつかのションボリーナのように、からからでぱさぱさのくにでした。

ションボリーナはおにいさんをいっしょうけんめいさがしました。
けれどもおにいさんはどこにもいません。
それでもションボリーナはいっしょうけんめいさがしました。
でも、みつかったのは、おにいさんのなまえのはいったちいさなおはかだけでした。

ションボリーナは、しょんぼり、しょんぼり。
また、なみだがぽろぽろとまらなくなってしまいました。
いつかのようにめをぎゅうっとつぶっても、もうなみだはとまりません。
おにいさんはかわらず、めをとじたまっくらやみのなかでわらっていましたが、
ションボリーナはおにいさんのおはかのまえから、もうはしりだすことはできませんでした。


ションボリーナはないて、ないて、そのままみずになってさばくのなかにしみこんでしまいました。
おにいさんのおはかのまえには、あのかみかざりと、ちいさなみずたまりがのこりました。

みずたまりはふしぎなことにすこしずつすこしずつおおきくなって、いつしかみずうみのようになりました。
そのみずうみはいま、レンジャーれんぽうというくにのオアシスとなって
みんなにみずとしあわせをあたえているということです。


おしまい。

(応援絵:矢上ミサ:鍋の国)


作品への投票・ひと言コメント

【テンプレート】
○国民番号:名前:藩国
○支払い口座:投票マイル数
○作品へのコメントをひとこと


  • ○020003201:忌闇装介:akiharu国
    ○個人口座:1
    ○作品へのコメントをひとこと
    こういう話にとても弱いです。天国でションボリーナとお兄さんが笑っていてくれることを祈ります。 -- (忌闇装介@akiharu国) 2008-06-21 15:47:07
  • ○26-00500-01:月光ほろほろ:たけきの藩国
    ○個人口座:1
    ○毎日泣いているだけのお姫様が、運命に戦いを挑む物語。
    涙のオアシスが今も人々を潤してくれる事に救われます。
    -- (月光ほろほろ@たけきの藩国) 2008-06-29 12:27:36
  • ○22-00422-01:yuzuki:ビギナーズ王国
    ○個人口座:1
    ○優しくて可愛いいションボリーナが好きです。
    いつかそのオアシスに行ってみたいと思いました。 -- (yuzuki@ビギナーズ王国) 2008-06-30 23:20:59
  • ○43-00406-01:榊遊:愛鳴之藩国
    ○個人口座:1
    ○「ションボリーナは、しょんぼり、しょんぼり。」というフレーズの繰り返しが
    読んでて童話っぽくてよいなぁと思いました。
    お話の中ではハッピーエンドと行かなかったけど天国でも来世でも良いので
    何処かでお兄さんと再会出来る事を願っています。 -- (榊遊@愛鳴之藩国) 2008-06-30 23:45:49
  • ○05-00129-01:田鍋 とよたろう:鍋の国
    ○個人口座:1
    ○可愛かったので

    -- (05-00129-01:田鍋 とよたろう:鍋の国) 2008-07-01 00:02:47
  • ○27-00518-01:od:ヲチ藩国
    ○個人口座:1マイル
    ○言葉遊びの面白さと、ストーリーのもの哀しさと。 -- (27-00518-01:od:ヲチ藩国) 2008-07-03 23:33:47
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

-
最終更新:2008年07月04日 08:43