ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-45

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匿名ユーザー

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さて、日の出前の一見平穏そうな学院を眺める二つの視線。
当然、元暗殺者とそれに半分脅されている現役盗賊である。
一見静かそうに見えるが、よく見ると死体が転がっていたりもする。
遠目だが、あの装備は銃士隊の物だ。
つーまーり、隊長であるアニエスが居る可能性が高い。
まぁ、居たからっつっても特に関係無いのだが。
戦争がおっ始まったこの時期になれば、後はどんだけ早くアルビオンに向かいクロムウェルを始末するかなので
見知った顔にバレても特に問題ないのである。

問題は、どうするかだ。
どうするにしろ、いきなり広域老化ブチ込んで学院側に余計な死者が出たら交渉にもならんだろうというぐらいは分かる。
関係なけりゃあ纏めて老化させるとこだが。
少なくとも、まずは探りを入れ接触する必要があるのだが、そういう事に向く能力ではない。
そういうわけで、横のフーケに話を振る。

「よぉ…オメー、ゴーレムとか出せよ」
「あんなバカデカイもん出したら一発でバレるよ」
「じゃあ派手に魔法ブッ放せ」
「わたし一人であれだけの人数相手にできるはずないじゃないか。あんたがやりな」
「ちッ…使えねーな」

プッツン

―き…切れた…わたしの中の決定的な何かが…!

必要最小限のモーションで杖を取り出しゴーレムを瞬時に練成ッ!
「あんたが無理矢理手伝えって言ってるから付き合ってるんだ…」
背後に練成させたゴーレムの親指を目の中に突っ込んで殴りぬけるッ!
「それを、よくも!このクソがッ!このフーケ様を『使えない』などと抜かしたなァああっ----ッ!」
今のフーケに美貌というものは一切存在しないッ!今のこいつの心はドス黒い真っ黒な闇のクレパスだッ!

「この…ド畜生がァーーーーーーーーーーーーーッ!!」
その叫びと共にゴーレムがプロシュートに無数の蹴りを放つッ!
「ゴーレムで踏み潰すのは一瞬だッ!それではわたしの怒りがおさまらんッ!」
鉄のゴーレムがッ!プロシュートの全身を満遍なく蹴り付けるッ!
「お前が悪いんだ!お前がッ!わたしを怒らせたのはお前だッ!お前が悪いんだ!」

その形相たるや鬼か悪魔か、まさにオーガの如し。
今ならば奇声をあげながら飛び蹴りを放っても全く違和感がございません。
フーケ改め、サウスゴータ海王お得意のゴーレム練成による渾身の打岩にございます。
「思い知れッ!どうだッ!思い知れッ!どうだッ!どうだッ!」
黒曜石も砕けよといわんばかりの音がその場に流れ続けていた。
遂に、本体であるサウスゴータ海王も蹴り始めました。
もう誰も止めようがないのであります。

一頻り蹴り終えると、大きく息を吸い込み虚空に向け思いっきりシャウト。
それと共に、WRYYYYYYYY!という叫びが最も似合うサウスゴータ海王渾身のポージングにございます。
「勝った!ゼロの兄貴完!!」



………………ってやれたらいいのになぁ。

軽く現実から逃避していたが、どんなに辛くても現実から目を背けていられないので戻ってきた。
一人なら酒瓶に塗れて、酒と目から流れ出る水分の混合物に長い髪を濡らしている所である。
魔法を使うには呪文が必要であり、唱える際に時間が掛かる。
コモンマジックならともかく、ゴーレムなんぞを作るとなると、それなりの呪文が必要だ。
対してスタンドは即時発動可能である。
装填済みの銃相手に未装填の大砲で相手にするようなもので、この場合分が非常に悪い。
おまけに、相手の銃の射程はとんでもなく長い上に効果も最悪ときたもんだ。

こいつとエンカウントしてから、妙な幻覚に悩まされるのも頭が痛くなる種の一つだ。
妙なフード被った、目の色が妙な男と何か良い感じになっている自分という幻覚を何回か見た。
そんな幻覚を見た事自体がアレでナニでシャウトしたい気分にさせてくれたが、現実はかーなーりーシビアである。

ああ、それにしても、こいつに捕まえられてから不幸続きだ。脱獄させて貰ったとはいえワルドに脅され、そしてこいつに脅される。
ひょっとして、わたしの人生これから常に誰かに脅され続けられるのか。それなんてイジメ?
いくら貴族から盗みをしてきたとはいえ、あんまりじゃないですか始祖ブリミル。誰でもいいから誰かたーすーけーてー。
ぶっちゃけまだ現実世界に戻りきれていない。逃げれるものなら逃げているのだが、逃げれない。

「ま…オメーを頼りにしてんだからよ。何考えてるのか知らないがしっかり頼むぜ」
そんな思いをよそに横からかかる兄貴のお声。
「嬉しくて涙が出るよ」
本当に涙が出そうだ。
左手で肩を掴んで右手で木の幹を触って、木だけを恐ろしい程の速度で枯らしてさえいなければ。
言葉で言わなくても分かる。
目がマジだ。
明らかに裏切ったら、『なにがあろうと、例えどんな障害があろうと必ず排除してオメーをババァにする』
そう言っている目だ。
不言実行。そう思った時、スデに行動は終わっているッ!って感じの!
アルビオン軍全てを敵に回しても、こいつはヤる。
直感だがそう感じた。
ボスを斃すという目的のためにパッショーネを離反したという暗殺チームの意地の片鱗を確かに感じ取っているッ!

なるべく目を合わさないように空を見上げると、懐かしい顔が笑顔で手を振っている姿を幻視した。
思わず目から冷たいものが流れ出る。

―畜生、汗が冷たいや。…………泣いてなんかいないやい。泣いてたまるか、絶対に泣くもんか。

もう一人の自分にそう言い聞かせるが、精神的に大分参っている。
今、DISCがINすれば、確実にハイウェウイ・トゥ・ヘルが発現するだろう。

ぶっちゃけこいつ連れて行きたくないが、生きてアルビオンに着いたら一度孤児院に戻ろう。
戻ってあの笑顔で癒されよう。そう堅く決意する。

「なに呆けてやがる」
「…なんでもないよ」
またしても現実に引き戻されたが、ここで死ぬわけにもいかないし、老化して孤児院を養老院にするつもりもない。
なんというか、後者の方が嫌だ。
あの子達からフーケおばあちゃんなどと言われる所を想像したら寒気がした。
おばちゃんを通り越して一気におばあちゃんというのはキツイ。いやまぁ、おばちゃんも嫌だけど。
つまり、前進するしか無いわけだ。後退すれば最悪な結果が待っている。
後退するより前に出た方が良い結果が出るという、ある特定世界の法則もある。
しかしながら、死者を蘇えさせる事のできる虚無の使い手(とフーケは思っている)と
もんのスゴイ勢いで老化させる訳の分からん能力を持つプロシュートのどちらを相手にした方がマシかとまだ大分悩んではいるのだが。

虚無と言えば、伝説のアレであり、えげつない魔法を使うので相手にしたくないのだが
グレイトフル・デッドもアレな能力なので相手にしたくない。
ぶっちゃけストレスで胃が痛い。よくこんなのを使い魔にできたなとルイズの事を思わんでもない。

(火薬樽の近くで火遊びするようなもんだよ、まったく…)
使い方次第では強力な武器になるが、一歩間違えば自爆する。
暗殺チームとしては抱く感想としては間違った感想ではない。

「そういや、クロムウェルの系統は何だ?」
唐突にそう訊かれたフーケだが、思わずコケそうになった。
こいつ知らないで暗殺しようとしてたんかい!と突っ込みそうになったが、ギリギリ耐える。だってまだ老化したくない。
「虚無だよ、虚無。わたしの前で死人を生き返らせたんだ」
「?ありゃあアンドバリだったか、その指輪の効果じゃねーのか?」
「わたしには分からないよ。本人は虚無は生命を操る系統だった言ってるけど」
顔に手を当てて少し考えたが、答えはすぐに出た。
「成程…大したタマだな」
「どういう事さ」
フーケは訝しそうにしていたが、実際に虚無を見ている側としては違う事が分かる。
まだあるだろうが、確認した『エクスプロージョン』と『ディスペル』は生命を操る魔法ではない。
中にはそういうのもあるかもしれないが、それだけで『生命を操る系統』などとは言いはしない。

「ま…死人生き返らせたってのは指輪で間違いないだろ。…オレの直を食らっても動こうとしてたヤツなんざ死人以外の何モンでもねー」
ただ、虚無ではないにしろ、指輪の効果がまだ他にあるかもしれないので迂闊には接近できない。
死人といえど自在に操っていたからには、洗脳という効果も考慮に入れておいた方がいいと判断した。
「要は国を巻き込んだペテンだ。皇帝より盗賊のが向いてんぜ。そいつはよ」
「ふーん、そうか…そういう事か」
フーケ自身、レコンキスタに特に興味が無かったし、誰が皇帝になろうが知ったこっちゃあないが
ただ一つ、守る物がある。
死人を生き返らせた事から、クロムウェルにビビッっていたが、それが虚無ではないと知ると途端にムカついてきた。
別段、騙されたからという事ではない。
クロムウェル自身が言っていた事だが『忌まわしきエルフから聖地を取り戻す』などとほざいていたのである。
そうなると万が一だが、あの娘の身が危ない。
あの人一倍世間知らずで、自分が唯一守るべき者が。
平時ならともかく、戦争となればあの場所に敗残兵などが雪崩れ込む可能性すらあるのだ。
トリステインであれ、アルビオンであれ、軍となればどちらであろうとそれは拙い。
なら、このエルフなんぞどうでもよさそうで、ある意味『全ての生命を終わらせる』という
クロムウェルに相反する力を持つこの男に乗ってみるのも悪くない。

「気が変わった。しばらくだけど、あんたに付き合わせてもらうよ。ただし、わたしと、その周りに危害を加えない事。これが条件」
「ふん。まぁいいだろ。頼んだぜフーケよ」
前と同じ『頼む』という言葉だが、意味は異なる。
さっきのは、グレイトフル・デッドで半分脅しながらだったが、今回は違う。
マジに、言葉のままだ。

何故に変わったかというと、フーケが変わったからである。
グレイトフル・デッドで脅していただけあって、それで従っているような感じだったが、今は違う。
こちらに条件を要求してくるあたり、フーケ自身がそう自分で判断した結果だ。

無論、完全に信用したわけではないが、無理矢理従わせた10人より、自分自身でそう行動すると決めた一人の方が余程信用するに足りるのである。
なにより、余計な気やスタンドパワーを回さずに済むので楽で良い。

「それじゃあ行くか。マンモーニどもはついでだがな」
「…メンヌヴィルは任せたからね」
フーケとプロシュートが二手に別れる。
まだフーケが、こちらに付いたという事は知られていないので単独行動させた方がいいと判断しての事だ。

フーケは、手筈どうりなら人質が集められているであろう食堂に。
プロシュートはしばらく状況を探るために人の居なさそうな場所へと身を隠すために。
互いに身の心配などはしていない。その辺りは両者ともプロである。

混乱の学院にグレイトフル・デッドという『悪魔』を従える暗殺者が舞い戻った。

プロシュート兄貴―マジに殺る気の兄貴がヤバイ『学院』にINッ!
はぐれ犯罪者コンビ―改めて結成


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