ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-28

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「失敗したわ!!」
 ルイズは歯噛みした。
 フーケはこちらに気づいていなかった。めずらしく魔法も狙ったところで爆発した。
 それなのにまるで攻撃が分かっていたかのようにゴーレムの上に逃げられてしまった!
「ね、ねぇ。いきなり攻撃してよかったの?」
 康一が間の抜けたことを言う、
「何言ってるのよ!あんな怪しすぎる奴敵に決まってるじゃない!貴族の基本は見敵必殺よ!敵を見つけたんだから後は必ず殺す番ね!」
「そこはかとなく危険思想な気がするけど・・・」
 しかし、放っておくわけにもいかなそうだ。
 ゴーレムは自分達を無視するかのように、再び壁に拳を叩きつけた。
 ついに壁に大穴が開いて、中の様子が垣間見える。
 その穴にフーケが飛び込んだ。フードを被っているので顔はよく見えない。
「あそこって・・・宝物庫!?やっぱり宝物を盗むつもりだわ!コーイチ!フーケを捕まえて!!」
 ルイズがその間もファイアーボールの呪文を唱えて杖を振る。
 見当はずれの場所がボンボコボンボコ爆発した。
「わかったから、『スタンド』には当てないでよね!」
 ACT2を出して、フーケが飛び込んだ穴に飛ばす。
 フーケのいる部屋までは大体20m!十分射程圏内だ!
 いた!フーケは部屋の中で何かを物色しているようだ。
「そこまでだあッ!!」
 『バグォオオオン!!』の尻尾文字を作り投げつける。
 しかし尻尾文字が穴に飛び込もうとした瞬間、土の壁が穴をあっという間に覆い隠してしまう。
 尻尾文字は土の壁に阻まれて爆音をあげる。
「そんなぁ!!」
 ACT2は土の壁に張り付いたが、これを破るだけのパワーはACT2にはない。
「コーイチ!!」
 ルイズの悲鳴でハッと我に返った。
 土のゴーレムが足を飛ばしてルイズと康一を踏み潰そうとしている。
「うわぁぁー!!」
 二人が這うようにしてそこから逃げだした。すぐ後に、小屋くらいの大きさの足の裏がズゥウウウンと地響きを立てて踏み降ろされた。
「こ、こんなのに潰されたらひとたまりもないぞッ!」
 本体を叩いている場合じゃない。まずはこのゴーレムをなんとかしないと!
「こいつを止めろ!ACT3!!」
 今度はACT3を出す。3FREEZEをゴーレムの足に叩きつけた。しかし・・・
「な、なんだってぇー!?」
 エコーズが重く出来るのは一度に一つである。ゴーレムへの3FREEZEの効果は、ゴーレムの足の一塊の土を重くするだけにとどまっていた。
 重くなった土が剥がれ落ちるが、ゴーレムは周りの土を集めてすぐに再生してしまう。
「ぜ、全然効かないよぉーーーー!」
 康一は悲鳴をあげた。
「ちょっと!なにやってんのよ!!」
 ルイズが怒鳴る。
「だって、こんな土でできたゴーレムなんて、相性が悪すぎるよ!!」
 ゴーレムには聴覚もないし感覚もない。だからACT1や2の攻撃も意味がない。ACT3で重くするのも意味がない。
 ACT3で殴り合えというのか!このちょっとしたビルほどもある、馬鹿でかいゴーレムと!!
 ゴーレムの地を這うようなこぶしが襲い掛かってくる。
 いや、試しに殴り合ってみようか。ひょっとして『3FREEZE』ならあの拳を止められるのではないだろうか、
 ゴウッ!という風圧が迫る。ダムの放流現場に近づいたときのような、莫大な質量がもたらす圧倒的存在感!
「やっぱ無理ッ!!」
 転がるようにして避ける。スタンドとの戦いの経験はあるが、こんな化け物とやったことはない。
「もうっ!!がんばりなさいよっ!!」
 一方のルイズは康一よりもさらに遠くから杖を振りまくっている。ゴーレムのあちこちが爆発するが、表面の土を巻き上げるだけだ。
「どうしろっていうんだッ!!」
 康一が怒鳴り返した。


 フーケは宝物庫の中に入ると、まっすぐに右奥を目指した。
 「弓と矢」のありかは分かっている。以前オールド・オスマンの付き添いで、宝物庫の整理をしたことがあるからだ。
 大きな木箱に、鉄製の鍵がかかっている。『固定化』の呪文がかけられていたが、フーケが『錬金』であっという間に土くれにしてしまう。
「ふふっ、ようやく手に入れたわ。」
 フーケは箱を開けると、中にある『弓と矢』を取り出した。
 そんなに変わったものにはみえない。ただ鏃だけは凝った作りになっており、石とも金属ともいえない、不思議な輝きを放っていた。


「フーケが逃げるわ!!」
 宝物庫から飛び出してきたフーケが、ゴーレムの肩口に飛び乗る。
 ゴーレムはゆっくりと向きを変え、塔から離れていく。
 動作そのものはスローに見えるが、縮尺が大きいので移動速度はかなりのものである。
「逃がさないぞッ!」
 外に出てきたなら、ACT2で攻撃できる!
 しかし、追跡しようとしたところで、ゴーレムが離れ際に何かを投げてきたのが見える。
 石、だろうか。
 いや近づくにつれ、どんどんとでかくなる。岩・・・?
 違う!これは、ゴーレムの拳についていた、巨大な鉄の塊ッ!!!
 ルイズに向かって落ちてくるが、ルイズは追いかけるのに夢中で気がついていない!
「ルイズ!!」
 走っても間に合わない!

ドゴォオオン!!!

 鉄塊が地響きを立てて激突した。
 あたりに土ぼこりが立ち込める。
「ごほっごほっ!・・・ルイズ!大丈夫!?」
 康一はフーケを追うのを諦め、ルイズの元へと駆け寄った。
 鉄塊の落下地点の更に向こう。ルイズは土まみれになって地面に転がっていた。
 あの瞬間、康一はACT2の音文字『ドヒュウゥゥゥ』でルイズを吹き飛ばしていたのだ。
 ルイズはしばらく地面に突っ伏したまま動かなかったが、康一の呼び声にぴくりと反応して体を起こした。
 擦り傷打撲であちこちがぼろぼろである。その上頭からつま先まで土ぼこりにまみれている。ケホッっと小さく可愛い咳をした。
「危なかったね。無事でよかったよォ~!」
 康一が駆け寄るとルイズはむくりと立ち上がった。
 心配顔の康一の顔面に手を飛ばした。ぐーである。
「ぷげっ!!」
 いきなり殴りかかってくるとは思わない康一はまともに喰らってしまった。思わず手で鼻を押さえた。鼻がツーンとして涙が出る。
「な、なにを・・・!?」
「なにをじゃないわよ!あんたのせいで逃げられたじゃない!!」
 積もった埃を払おうともせず、ルイズは激昂した。
「逃げられた、って。君今危うく死ぬところだったんだよ!?」
「そうね。あんたにぶっ飛ばされて走馬灯が見えたわ。危うく天国のおじい様に連れられて川向こうのお花畑に遊びに行っちゃうところだったわ!!」
 どうやら、危うく自分を押しつぶすところだった鉄塊のことは眼中にないらしい。
「ぼくは君を助けたんだぞッ!?」
「言ってる意味がわかんないわ。だいたい助けるならもっと優しく助けるべきでしょ!臨死体験させてどーすんのよ!」
 そんな暇なかったよ!!と言おうと思ったが諦めた。おかんむりのご主人様は使い魔の言うことを聞く耳を持ち合わせていないらしい。
 今らながら、騒ぎを聞きつけた警備員やメイジたちが集まってくるが、フーケとそのゴーレムはもういずこかに消えていた。
「せっかく、チャンスだったのに・・・」
 あんたのおかげで逃げられたわ。といわんばかりに頬を膨らます。
 ただでさえ幼い容貌なのに、そうするとまるで、小学生みたいだ。
 思わず拭きだしてしまうと、ルイズは康一の二の腕を握りこぶしでゴンと叩いた。
「何笑ってるのよー!」
「ごめんごめん!」
 土まみれで周りの目も気にせずやり合う二人に、駆けつけた大人たちは顔を見合わせた。

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