シルフィードが300メイルから急降下する。
地表すれすれ2メイルで引き起こす。
そのまま超低空円周横転に移行。
次は地表すれすれから羽ばたかずに垂直に上昇。
やっぱりシルフィードはきれいだ、とわたし(ミドラー)は見惚れていた。
この夕食後のシルフィードの飛行訓練が始まってしばらくになる。
タバサが指導している。
この子には色々なことを教わっている。
色々な使い魔の名前、魔法の種類、使い魔契約の内容。
言葉が通じるのは契約時の効果らしい。気がつかなかった。
気になっていた食堂の奇妙な少年についても説明を受けた。
はるか東方から呼び出された使い魔で、サイトというらしい。
ギーシュに決闘で勝ったというのは正直驚いた。あのぼんやりした雰囲気は擬態なのか。
粗末な食事とずば抜けた剣術、彼はサムライなのだろうか?
なんとなくアヌビスを思い出す。
あまり関わらないほうがよさそうだ。毛皮もウロコもないし。
そのサイトは今、簀巻きにされて吊るされている。
ルイズとキュルケというメイジに二股がばれて処刑されるらしい。
キュルケというのは顔なじみだ。確かあのサラマンダーとかいうトカゲの主人だ。
顔を赤らめて、トカゲの首筋はあまり撫でないでほしいと云ってきたので覚えている。
しかし使い魔がメイジに二股を掛ける、というのは何かすごい。ギーシュに勝つだけのことはあるのか。
体術で着地できるからなのか余裕に見える。
「…次、16分割垂直緩横転」
タバサが新しいメニューを追加する声に、何やら地鳴りが重なった。
地震かと振り返った先に
10階建てのビルほどの大きな土人形が生えつつあった。
様々なことが同時に起きた。
キュルケが火の玉でサイトを吊るすロープを焼き払い、落下するサイトをシルフィードが超低空で咥えて離脱、ルイズとタバサとわたしは校舎から全力で離れた。
離れた場所から土人形(タバサ曰く、ゴーレムと云うらしい)を観察する。
さっきからハイプリーステスのパワーショベルアームで足を狙って削っているが、相手が大きすぎる。
その上削る片端から再生する。やっかいな敵だ。
タバサやルイズ、キュルケが魔法を飛ばしているがやっぱり有効打にならない。
ゴーレムが四つんばいになる。
頭の部分に、黒光りするツノのような物が見えた。
ぐっと、スモウのような格好をしたかと思うと―――そのまま校舎に頭突きをした。
衝撃で校舎の窓ガラスが全て砕け散る。
壁に頭をめり込ませた状態で2~3分動きが止まっていたゴーレムが、立ち上がる。
ぞっとした。
全高30メイルからあれだけの質量の土の塊が降ってくれば、どんな防御も意味をなさない。
これはまずい。
とりあえずシルフィードで皆と一緒に避難、と思って振り向いた先に、シルフィードが白目を剥いて痙攣していた。
「ちょっと!?どうしたのよ!」
キュルケが叫ぶ。タバサも顔面蒼白だ。
シルフィードの口の端から人の足首が見える…足首?
さっき助けたサイトだ!
急降下でスピードがつきすぎて、咥えるつもりが飲み込みかけてしまったのか。
慌てて皆でシルフィードを助ける。
サイトはぐったりしている。命には別状なさそうだ。
一連のドタバタの最中、大きなゴーレムはこちらを無視して歩き始めていた。
逃げるつもりのようだ。
タバサがシルフィードに追跡させている。
ゴーレム出現から逃亡まで僅か数分。
泥棒として見事な手口だ。
あと、ルイズは主なんだから竜の涎なんか気にせずに縄を切ってやるべきじゃないかと思った。
一時間もしないうちに、学院の非常職員会議が開かれた。
目撃者としてタバサたちと一緒に呼ばれる。
できれば来たくなかった。
本当に来たくなかった。
(ギーシュは来ない。モンモランシーの私室にいて目撃していないのだ。
最近ちょっと夜遊びが過ぎると思う)
扉を開ける前から、地獄のような雰囲気が漏れ出ている。
タバサ、ルイズ、キュルケに目配せして誰が開けるか相談する。
何となく視線がこっちに集まる。
そりゃあこの中では一番年上だけれど…正直部外者なんだけどなぁ…
ぐずぐずしてたらサイトが先頭に立って扉を開けてくれた。
なんていい奴だろう、と感謝し、
『しッつれーしまーすッ!』(馬鹿明るく大きな声)
即座に撤回した。
宝物庫の中で集まっていた教師達は、皆オスマン師に土下座していた。
ミス・シュヴルーズは土下座したまま気絶している。頭に花瓶の破片が刺さっていて血塗れ水浸しだ。
そこに場違いな明るい声が響き、生徒たちが入ってきたのだ。
気まずいのとオスマン師の意識が逸れたのを感じて、土下座している教師は微妙な表情になる。
そこに響く声
「なあ、あの凄い雰囲気の爺さん誰?」
「オスマン先生っつってこの学校で一番えらい人。だからちょっと静かにしてろよデルフ」
((お前も永久に黙ってろッ!!))
教師陣全員の無言の絶叫がミドラーには聞こえた。
そしてほぼ同時にルイズがサイトの隣に立ち、抜いた手が見えないほどの速さで掌底を放ち使い魔を昏倒させた。
「私の至らぬ使い魔が失礼しました」
ルイズが頭を下げる。心中ではサイトに対する罵詈雑言が渦巻いている。
考えてみればサイトは前回覚醒したオスマン師を一度も見ていない。
ギーシュとの決闘の後は昏倒していたし、ミドラーの決闘のときもルイズに殴られて気絶していた。
しかし、見ていないとはいえこの状態のオスマン師にあんな気安い口を聞くとは…
(馬鹿だとは思っていたが、これほどまでとは思わなかったッ)
ギーシュが使い魔に影響されてだんだん緩くなっているのを目の当たりにしていたルイズは慄然とする。
買い与えたインテリジェンスソードもちっとも知性の足しになってない。
(冗談じゃないわ!こんな奴に引きずられて馬鹿になるのは真っ平よ!)
地表すれすれ2メイルで引き起こす。
そのまま超低空円周横転に移行。
次は地表すれすれから羽ばたかずに垂直に上昇。
やっぱりシルフィードはきれいだ、とわたし(ミドラー)は見惚れていた。
この夕食後のシルフィードの飛行訓練が始まってしばらくになる。
タバサが指導している。
この子には色々なことを教わっている。
色々な使い魔の名前、魔法の種類、使い魔契約の内容。
言葉が通じるのは契約時の効果らしい。気がつかなかった。
気になっていた食堂の奇妙な少年についても説明を受けた。
はるか東方から呼び出された使い魔で、サイトというらしい。
ギーシュに決闘で勝ったというのは正直驚いた。あのぼんやりした雰囲気は擬態なのか。
粗末な食事とずば抜けた剣術、彼はサムライなのだろうか?
なんとなくアヌビスを思い出す。
あまり関わらないほうがよさそうだ。毛皮もウロコもないし。
そのサイトは今、簀巻きにされて吊るされている。
ルイズとキュルケというメイジに二股がばれて処刑されるらしい。
キュルケというのは顔なじみだ。確かあのサラマンダーとかいうトカゲの主人だ。
顔を赤らめて、トカゲの首筋はあまり撫でないでほしいと云ってきたので覚えている。
しかし使い魔がメイジに二股を掛ける、というのは何かすごい。ギーシュに勝つだけのことはあるのか。
体術で着地できるからなのか余裕に見える。
「…次、16分割垂直緩横転」
タバサが新しいメニューを追加する声に、何やら地鳴りが重なった。
地震かと振り返った先に
10階建てのビルほどの大きな土人形が生えつつあった。
様々なことが同時に起きた。
キュルケが火の玉でサイトを吊るすロープを焼き払い、落下するサイトをシルフィードが超低空で咥えて離脱、ルイズとタバサとわたしは校舎から全力で離れた。
離れた場所から土人形(タバサ曰く、ゴーレムと云うらしい)を観察する。
さっきからハイプリーステスのパワーショベルアームで足を狙って削っているが、相手が大きすぎる。
その上削る片端から再生する。やっかいな敵だ。
タバサやルイズ、キュルケが魔法を飛ばしているがやっぱり有効打にならない。
ゴーレムが四つんばいになる。
頭の部分に、黒光りするツノのような物が見えた。
ぐっと、スモウのような格好をしたかと思うと―――そのまま校舎に頭突きをした。
衝撃で校舎の窓ガラスが全て砕け散る。
壁に頭をめり込ませた状態で2~3分動きが止まっていたゴーレムが、立ち上がる。
ぞっとした。
全高30メイルからあれだけの質量の土の塊が降ってくれば、どんな防御も意味をなさない。
これはまずい。
とりあえずシルフィードで皆と一緒に避難、と思って振り向いた先に、シルフィードが白目を剥いて痙攣していた。
「ちょっと!?どうしたのよ!」
キュルケが叫ぶ。タバサも顔面蒼白だ。
シルフィードの口の端から人の足首が見える…足首?
さっき助けたサイトだ!
急降下でスピードがつきすぎて、咥えるつもりが飲み込みかけてしまったのか。
慌てて皆でシルフィードを助ける。
サイトはぐったりしている。命には別状なさそうだ。
一連のドタバタの最中、大きなゴーレムはこちらを無視して歩き始めていた。
逃げるつもりのようだ。
タバサがシルフィードに追跡させている。
ゴーレム出現から逃亡まで僅か数分。
泥棒として見事な手口だ。
あと、ルイズは主なんだから竜の涎なんか気にせずに縄を切ってやるべきじゃないかと思った。
一時間もしないうちに、学院の非常職員会議が開かれた。
目撃者としてタバサたちと一緒に呼ばれる。
できれば来たくなかった。
本当に来たくなかった。
(ギーシュは来ない。モンモランシーの私室にいて目撃していないのだ。
最近ちょっと夜遊びが過ぎると思う)
扉を開ける前から、地獄のような雰囲気が漏れ出ている。
タバサ、ルイズ、キュルケに目配せして誰が開けるか相談する。
何となく視線がこっちに集まる。
そりゃあこの中では一番年上だけれど…正直部外者なんだけどなぁ…
ぐずぐずしてたらサイトが先頭に立って扉を開けてくれた。
なんていい奴だろう、と感謝し、
『しッつれーしまーすッ!』(馬鹿明るく大きな声)
即座に撤回した。
宝物庫の中で集まっていた教師達は、皆オスマン師に土下座していた。
ミス・シュヴルーズは土下座したまま気絶している。頭に花瓶の破片が刺さっていて血塗れ水浸しだ。
そこに場違いな明るい声が響き、生徒たちが入ってきたのだ。
気まずいのとオスマン師の意識が逸れたのを感じて、土下座している教師は微妙な表情になる。
そこに響く声
「なあ、あの凄い雰囲気の爺さん誰?」
「オスマン先生っつってこの学校で一番えらい人。だからちょっと静かにしてろよデルフ」
((お前も永久に黙ってろッ!!))
教師陣全員の無言の絶叫がミドラーには聞こえた。
そしてほぼ同時にルイズがサイトの隣に立ち、抜いた手が見えないほどの速さで掌底を放ち使い魔を昏倒させた。
「私の至らぬ使い魔が失礼しました」
ルイズが頭を下げる。心中ではサイトに対する罵詈雑言が渦巻いている。
考えてみればサイトは前回覚醒したオスマン師を一度も見ていない。
ギーシュとの決闘の後は昏倒していたし、ミドラーの決闘のときもルイズに殴られて気絶していた。
しかし、見ていないとはいえこの状態のオスマン師にあんな気安い口を聞くとは…
(馬鹿だとは思っていたが、これほどまでとは思わなかったッ)
ギーシュが使い魔に影響されてだんだん緩くなっているのを目の当たりにしていたルイズは慄然とする。
買い与えたインテリジェンスソードもちっとも知性の足しになってない。
(冗談じゃないわ!こんな奴に引きずられて馬鹿になるのは真っ平よ!)