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闇夜の森のざわめきよ」(2009/11/14 (土) 04:47:29) の最新版変更点

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木々が風でざわめく夜の山。 地図で言うと南東にあたる森に、心の中で悪態をつく少女が居た。 (イヤミか!あの金髪外人と言い、それに向かった赤毛女と言い、胸がでかけりゃいいってもんじゃ無いだろがッ!) 全く違う所で殺し合いのオープニングに心中で憤慨していたセレナーデ=コランダムであった。 二重人格ほどではないが、所謂腹黒タイプの人間である。人当たりがよさそうな表情をして会話をしながらも、黒い事を考えている事が多いらしい。 そんな彼女だが、今回のトンデモ殺し合いゲームには意外と早く順応していた。 セリナは早速すべき事をする。 「携帯電話・・・ですか」 支給されたものの中で、コレと言って特別な物は無かった。 最初の会場説明を聞いた限りでは、何かしら特殊な代物が各々に配布されていると言う。 会場地図、コンパス、筆記用具、水と食料、名簿、時計、ケータイ。 順番に手に取って確認したが、一番最後にチェックした携帯電話。 一見普通に見慣れたものだったため、注視していなかったのだが、最後に触れた瞬間に、『理解した』。 この殺し合いに、この能力は、破格だ。 殺し合いに乗っているか、乗っていないか。 その情報を、偽ることなく本心に聞くことが出来る。 仮にパートナーを擬似的に作ったとしても、それはあくまで即興のもの。 心中何を考えているか分からない人間がいるのは、自分自身で証明されているも同然だ。 この殺し合いで、最も恐ろしい事は、到底抗う事の出来ない殺人鬼に遭遇する事だろうか。それとも、何らかの事故に巻き込まれて重症を負う事だろうか。 否。心から信用していた仲間に裏切られて寝首をかかれることだ。 抵抗する手段が無いのではない。逃げ出すチャンスがあるわけでも無い。そうではないのだ。 抵抗や逃げ出す、という選択肢が『仲間の裏切り』には無いのである。 完全に信頼しあってた仲だと思っていたら、実は利用されていただけだった―――なんて、全く持って笑えない冗談だ。 それが、背中を預けたパートナーなら尚更、自身の背中はがら空きとなる。 つまり。裏切りがあるかもしれない仲間と組むという事は。 スタートする以前に、詰みの状態になる。 どれだけの正義を持っても。 どれだけの悪意を持っても。 どれだけの力を持ってしても―――覆す事の無い、最悪な状況だ。 しかし。 ここで逆説を入れる。 視点を変えて、この状況を見つめなおす。 今言った事の、長所と短所を入れ替えることなく、視点だけを変える。 このゲームにおける、最強の武器は。 間違いなく、『裏切り』。 最後の1人になるまでこのゲームは続くらしい。 寄らば大樹の陰。正義感の強そうな、強豪ならば、喜んでパートナーとなってくれるであろう。 自分に疑心を抱き始めれば、排除し、次のパートナーを探すか、身を隠すかすればいい。 自分を含めて最後の2人になれば―――最後に、確実に相手の意表を突けるであろう能力を使い、排除。 最終的に自分が最後の1人になり、ゲームは終了となる。 マインドライブラリ。 触れた人間の心のうちを読むことの出来る能力。 「ふふ、私向きの能力ですね」 セリナは、この能力を使って、か弱い女の子を装い、のし上がる事に決めた。 再び周囲からは木々のざわめきが聞こえる。地面に座り込みながら考えをまとめていたセリナは、一度立ち上がる。 ぱっぱとスカートについた土埃を払うと、比較的明るい住宅地の方向を見つめた。 このゲームは、間違いなく心理戦。 その心理戦におけるジョーカーがこの能力だ。 懸念すべきは、触れなくてはいけないという絶対条件と射程距離、そしてこれと類似する能力の存在。 「ま、そんな似たような能力なんてあるわけないか」      ◆     ◆     ◆ トイ=ボックスは鳥であり、機械であり、ゲーム参加者である。 カラスよりも小さな身体は、他の参加者と比べても圧倒的に小さい。 彼の着けている首輪も、従来の物よりも小さい物だった。 しかし、それ以外は他の参加者と同じものが割り当てられていた。 支給されたバッグは彼の身体の何倍にも大きく、更に言えば食料などは彼には必要なかった。 一応地図と名簿は暗い環境下だったがスキャンして脳内HDにインプットしてあるので、彼はもう荷物を持つ必要は無くなっていた。 ――元々持とうと思っても持ち運ぶ事は出来ないが。 そして、支給武器。 今彼はバッグの横に置いてあった、普通の人間が持つにしても異常なほどに大きな斧の上に乗っていた。 大天斬と言う名称の武具らしいが。 「究極的にハズレアイテムあるね」 恐らく怪力の持ち主ならば、ラッキーアイテムなのだろう。 一応、この斧のコアルミナスを起動させると、一段階上の能力を発揮させる事が出来るのだが、ただの鳥には扱う事は愚か、持つことも出来ない。 「でも、ま―――非常に興味深い、能力の斧あるね」 機械故に、思うところはあるということらしい。 トーイの目的は、ゲームの破壊。 主催者に反逆したリレッドの意思を継ぐ事。 仲間を集めねばいけない。 この殺し合いゲームを覆す事の出来るカードを集めて、それをぶつけなければ、主催者には勝つことは出来ない。 自称・超高性能CPUは、結論として、そう導き出したのだ。 正直、ただ単純に生き残るのであれば、彼ほど隠れやすい参加者はいないだろう。 それこそレーダーでもない限り、森の木にでも草木にまぎれて隠れていれば、最後の2人になるまでは余裕で隠れ通す事が出来る。 「んな意味無い事もしてる場合じゃないあるね」 首輪の解析。 対主催者への第一歩はコレだ。 この首輪のせいで、嫌々殺し合いをさせられている人間も多いはずだ。 逆に言えば、首輪さえ何とかなれば、どうとでもなる。 恐らくこの会場で、電子機器に強い(というか本人が電子機器なのだが)のは、自分で間違いないだろう。 ならば――― 「げ」 自身の首についている首輪を解析しようと、身体からケーブルを取り出そうとした瞬間に、テンションがガタ落ちた。 機械につなげば規格など関係無しに同調でき、しまいには生物だろうがお構い無しに生態システムを掌握できるあのケーブルが・・・ 没収されていた。 システム掌握ならばまだいいのだが、彼の場合それを『憑依状態』にまで持っていけることが問題だった。 つまり、ケーブルをブッ刺せば思いのままに操る事が出来るわけである。 「・・・果たして、ただ没収されていただけあるか、それとも会場に配られているか・・・気になるところネ」 誰かに渡れば厄介な代物になる。 更にセンライは『支給品に能力を貼り付けた』と言っていた。 形状は、USBケーブルのような稚拙な物である。仮にそれを取り戻した所で、トーイ自身が生態ジャックが出来るかどうかは分からない。 「見つけたら試して、駄目だったらこの方法は諦めるしか無いある」 ばさり。 一度底辺まで落ちたテンションをなんとか戻し、トイ=ボックスは空高く夜空に飛び立った。 まずは木々に身を隠しながら他人の様子を伺える森の探索をしながら、エリア端へと向かい、首輪に関する気になる項目を潰していく。 エリア外ギリギリで超上空まで飛び上がり、ここがどこなのかを把握し、首輪がどういったアルゴリズムで起爆するのかを確かめる。 そして、その道中で、『このゲームを破壊する同志になりうる』人間を探していくことにする。それが彼の知り合いならば、さらによし。 「早々都合よくアカルと会えるとは思わないあるけど、ね」      ◆     ◆     ◆ ん~、とセリナは背伸びをする。 大丈夫、私ならやれる。さて、誰から手玉にとってやろうか。 誰かに襲われたという設定で、無害そうな人間に近づくべきか、それともただ恐怖におののく少女を演じようか。 正義感が強い人間なら後者でも構わないかもしれないけれど、弱者を単純に足手まといだと考える現実主義者(リアリスト)なら、考え物だ。 バッグに物を詰め、携帯電話をスカートのポケットに入れる。 携帯を握り締めたままだから、ガラの悪い不良がポケットに手を突っ込んでみているみたいだな、と普段のキャラとは違う自分に苦笑した。 「ま、出来れば夜に行動するのは嫌だけど、善は急げってね」 「残念、急がば回れだったね」 ―――えっ。 背後で声がした。 振り向く直前に地面に私以外の影が見えた。 刃物が見えた。刃物は驚く事に10本あった。 次の瞬間にはソレが2本も私の身体を刺し貫いていた。 ああ、なんだ、死ぬ直前だから、こんなに状況が分かるのか。 セリナの胸元から痛さが遅れてやってきた。吐血。 「―――ガ・・・ふっ」 「あ~、やっぱり鎌とは違うかなぁ、使い方。手前に引いて首を落としたり出来ないもの。フフフ、でもまあ当たりだよ、当たりの武器。  使い方は勉強しながらだけどね。幸い刺すって行為なら何度もしてきたからね」 なんせ、死神だから。 セリナの背後から勢い良く近づいてきた、黒衣を纏った少年は付け加えて言った。 ぽたりぽたりと地面に赤い血が流れ落ちる。 「それにしてもこんなにステキなイベントを開催してくれるなんて、楽しいこともあるもんだね。クロアを取り上げられたのは癪だけど。  代わりにこんな沢山の刀が貰えたよ。ああ、勿論クロアも取り戻すけどね。 楽しい、楽しいなあ。  フフフ・・・ハハ・・・アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」 ズブリと、刺さった刀を一気に引き抜く。 血が吹き出る。間違いなく、致死量。 死神の両手に刀。一本ずつだが、力強く握っている。 日本刀と西洋刀がごちゃまぜになった、合計10本の刃物は、2本だけが赤く染まっていた。最初に見た残りの8本は、彼の足元に置いてあっただけだった。 どさっ。 膝の力が抜けて地面に倒れる。胸が熱い。 意識はもう、無くなる。 手に握っていた携帯電話の液晶画面がぼんやりと見えた。 リース。 そう携帯電話のライブラリには登録表記されていた。 彼女の心に、最期に響いてきたのは、どうしようもなく単純で、どうしようもなく残酷で、どうしようもない殺意で埋め尽くされた、どうしようもない狂気だった。      ◆     ◆     ◆ 死神リースは、少々憤慨していた。 肌身離さず持っていたクロアを没収されたこともそうだが、人間を刺し貫いたのにもかかわらず、力を吸い取る事が出来なかった。 「能力も使えない、ってことか」 が、気を取り直して刀を拾う。 「天地雷風水火」からなる六本の一般的な形状の刀「六行」。 「山鉄爪・沢鉄爪」からなる二対の長刀「弐爪」。 「炎皇轟雷・雹星天翔」からなる二対の変幻刀「天地」。 合計10本の刀からなるジーナ専用のバリエーション豊かな刀剣セットなのだが、流石にその数が数だけに、持ちながら移動するだけでガチャガチャ五月蝿いことは必至だ。 先程は最初の天地の剣を振るい、血に染めた。適当に血を拭い、錆びないように手入れしようと思ったが、やめた。 面倒だったし、何より他にも刀は沢山ある。天地を破棄し、持って行くのを止める。 さらに吟味した結果、とりあえず長刀の「山鉄爪・沢鉄爪」、そして変幻刀「炎皇轟雷・雹星天翔」、あわせて4本だけ持っていくことにした。 バッグは持たない。地図だけ折りたたんでポケットに入れる。 死神には、命を刈り取る武器さえあれば、それでいい。 「ハハ・・・ハハハ・・・!」 そう、単純に、命を摘むんでいくだけで、いいのだ。 狂気と狂喜で気が狂いそうになる。 「ヒャハ・・・ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 死神リースは、森を下り、殺して殺して殺し尽くすために、街へと向かった。 漆黒の黒衣をはためかせ、得物を見る目は、狂喜に満ちて。 【南東 山⇒住宅地/1日目/深夜】 【リース@NOVELS ROOM】 [状態]:健康 [装備]:長刀「山鉄爪・沢鉄爪」&変幻刀「炎皇轟雷・雹星天翔」@ジーナ(T.C UnionRiver)、 [道具]:地図 [思考・状況] 基本:殺し合いに乗る 1:会場を練り歩き、参加者を殺して回る 2:クロア(大鎌)を探し出し、取り戻す (備考) リースのバッグ(コンパス、筆記用具、水と食料、名簿、時計入り)が南東の山に落ちています。 同様にセリナのバッグも落ちています。 &color(red){【セリナ@T.C UnionRiver 死亡】} 「―――殺し合いに乗った人間も間違いなく居るみたいある」 トーイは横たわっているセリナの元に、降り立っていた。 彼が彼女を空中から目視した時は、既に黒衣を纏った何者かに刺された直後だった。 上空からだったため、容姿を確認する事が出来なかったため、被り物を脱ぎ捨てればすぐに誰だか分からなくなってしまうだろう。 「・・・埋めて上げる事も出来ないある。申し訳ないネ」 将来はきっと美人さんになったに違いないある。 ちょっと胸足りないあるけど。 「―――?」 血にぬれた彼女の手元には、淡く光る携帯電話があった。 内容を見ると、『リース』と表記してある。 脳内HDの名簿にアクセスすると、確かにその名はあった。それが彼女の名前なのだろうか。 そこで、彼はセリナのバッグを開けてみると、説明書を見つけることが出来た。 「マインドライブラリ・・・あるか」 何らかの能力を秘めていた携帯電話らしいが、その具体的な内容は紙には書いていなかった。 触れた彼女にしか分からないのだろう。 その携帯電話を回収し、後で解析しようと思った矢先に、音も無く携帯電話は消滅した。 「!?」 まるで、消失したように、消えた。 どういうことだろうか。 具現化する能力が『マインドライブラリ』なのか、持ち主が消えると武器が消える仕様なのか、それがこの殺し合いのルールなのか。 考える事が多すぎる。 「ま、いいある。とりあえずは、当初の目的どおりエリア端に行くしか無いネ」 仏に手(羽)を合わせ、その場を立ち去った。木々の間を縫って、再び夜空へと舞う。 誰とも知らぬ少女の亡骸は、今まで他人に接したときとは違った、嘘偽りの無い表情をしていた。 【南東 山/1日目/深夜】 【トーイ@誰かの館】 [状態]:健康 [装備]:無し [道具]:無し(地図と名簿はHDに書き込んであります) [思考・状況] 基本:仲間を集めてゲームを破壊、あるいは脱出する 1:首輪とエリアに関する考察をするためエリア端へ向かう 2:安全そうな参加者に接触(特にアカルを信用) 3:黒衣の人間に対して警戒 4:リースという名に対して警戒 5:ケーブルを奪還。無ければ代用品を探す (備考) トーイのケーブルを人間に刺しての操る能力は無くなりましたが、機械に関する知識は失われてはいません 携帯電話が消失した原因は「持ち主の死」が起因していると考えてはいますが、それが全ての支給武器にあてはまっているかどうかは断定できていません <提供能力> 名称:ケーブル@トーイ 能力:憑依・解析 詳細: 1~2m程のケーブル。リレッドをよく操って憑依状態にしたアレ。 完全に憑依状態になるので、その間本人は無防備。どんな相手でも刺せば操れるが、2m以下しか長さが無いので射程距離が非常に短い。 トーイ程の小さいキャラならば肩に乗りながら操る事もできるが、普通の人間では難しい。 ちなみに機械に刺して入力出力操作を省略する事も出来る。首輪にこれが通用するかは不明。 ※能力を持った武器は持ち主が死ぬと消失します。消失には死からタイムラグがあるようです。  このタイムラグが何を意味をするかは不明。不明。 Back:[[発狂者/形見のリボン]]  Next:[[風の力を得た者/龍の力を得た者]]
木々が風でざわめく夜の山。 地図で言うと南東にあたる森に、心の中で悪態をつく少女が居た。 (イヤミか!あの金髪外人と言い、それに向かった赤毛女と言い、胸がでかけりゃいいってもんじゃ無いだろがッ!) 全く違う所で殺し合いのオープニングに心中で憤慨していたセレナーデ=コランダムであった。 二重人格ほどではないが、所謂腹黒タイプの人間である。人当たりがよさそうな表情をして会話をしながらも、黒い事を考えている事が多いらしい。 そんな彼女だが、今回のトンデモ殺し合いゲームには意外と早く順応していた。 セリナは早速すべき事をする。 「腕時計・・・ですか」 支給されたものの中で、コレと言って特別な物は無かった。 最初の会場説明を聞いた限りでは、何かしら特殊な代物が各々に配布されていると言う。 会場地図、コンパス、筆記用具、水と食料、名簿、腕時計。 順番に手に取って確認したが、一番最後にチェックした腕時計。 一見普通に見慣れたものだったため、注視していなかったのだが、最後に触れた瞬間に、『理解した』。 この殺し合いに、この能力は、破格だ。 殺し合いに乗っているか、乗っていないか。 その情報を、偽ることなく本心に聞くことが出来る。 仮にパートナーを擬似的に作ったとしても、それはあくまで即興のもの。 心中何を考えているか分からない人間がいるのは、自分自身で証明されているも同然だ。 この殺し合いで、最も恐ろしい事は、到底抗う事の出来ない殺人鬼に遭遇する事だろうか。それとも、何らかの事故に巻き込まれて重症を負う事だろうか。 否。心から信用していた仲間に裏切られて寝首をかかれることだ。 抵抗する手段が無いのではない。逃げ出すチャンスがあるわけでも無い。そうではないのだ。 抵抗や逃げ出す、という選択肢が『仲間の裏切り』には無いのである。 完全に信頼しあってた仲だと思っていたら、実は利用されていただけだった―――なんて、全く持って笑えない冗談だ。 それが、背中を預けたパートナーなら尚更、自身の背中はがら空きとなる。 つまり。裏切りがあるかもしれない仲間と組むという事は。 スタートする以前に、詰みの状態になる。 どれだけの正義を持っても。 どれだけの悪意を持っても。 どれだけの力を持ってしても―――覆す事の無い、最悪な状況だ。 しかし。 ここで逆説を入れる。 視点を変えて、この状況を見つめなおす。 今言った事の、長所と短所を入れ替えることなく、視点だけを変える。 このゲームにおける、最強の武器は。 間違いなく、『裏切り』。 最後の1人になるまでこのゲームは続くらしい。 寄らば大樹の陰。正義感の強そうな、強豪ならば、喜んでパートナーとなってくれるであろう。 自分に疑心を抱き始めれば、排除し、次のパートナーを探すか、身を隠すかすればいい。 自分を含めて最後の2人になれば―――最後に、確実に相手の意表を突けるであろう能力を使い、排除。 最終的に自分が最後の1人になり、ゲームは終了となる。 マインドライブラリ。 触れた人間の心のうちを読むことの出来る能力。 「ふふ、私向きの能力ですね」 セリナは、この能力を使って、か弱い女の子を装い、のし上がる事に決めた。 再び周囲からは木々のざわめきが聞こえる。地面に座り込みながら考えをまとめていたセリナは、一度立ち上がる。 ぱっぱとスカートについた土埃を払うと、比較的明るい住宅地の方向を見つめた。 このゲームは、間違いなく心理戦。 その心理戦におけるジョーカーがこの能力だ。 懸念すべきは、触れなくてはいけないという絶対条件と射程距離、そしてこれと類似する能力の存在。 「ま、そんな似たような能力なんてあるわけないか」      ◆     ◆     ◆ トイ=ボックスは鳥であり、機械であり、ゲーム参加者である。 カラスよりも小さな身体は、他の参加者と比べても圧倒的に小さい。 彼の着けている首輪も、従来の物よりも小さい物だった。 しかし、それ以外は他の参加者と同じものが割り当てられていた。 支給されたバッグは彼の身体の何倍にも大きく、更に言えば食料などは彼には必要なかった。 一応地図と名簿は暗い環境下だったがスキャンして脳内HDにインプットしてあるので、彼はもう荷物を持つ必要は無くなっていた。 ――元々持とうと思っても持ち運ぶ事は出来ないが。 そして、支給武器。 今彼はバッグの横に置いてあった、普通の人間が持つにしても異常なほどに大きな斧の上に乗っていた。 大天斬と言う名称の武具らしいが。 「究極的にハズレアイテムあるね」 恐らく怪力の持ち主ならば、ラッキーアイテムなのだろう。 一応、この斧のコアルミナスを起動させると、一段階上の能力を発揮させる事が出来るのだが、ただの鳥には扱う事は愚か、持つことも出来ない。 「でも、ま―――非常に興味深い、能力の斧あるね」 機械故に、思うところはあるということらしい。 トーイの目的は、ゲームの破壊。 主催者に反逆したリレッドの意思を継ぐ事。 仲間を集めねばいけない。 この殺し合いゲームを覆す事の出来るカードを集めて、それをぶつけなければ、主催者には勝つことは出来ない。 自称・超高性能CPUは、結論として、そう導き出したのだ。 正直、ただ単純に生き残るのであれば、彼ほど隠れやすい参加者はいないだろう。 それこそレーダーでもない限り、森の木にでも草木にまぎれて隠れていれば、最後の2人になるまでは余裕で隠れ通す事が出来る。 「んな意味無い事もしてる場合じゃないあるね」 首輪の解析。 対主催者への第一歩はコレだ。 この首輪のせいで、嫌々殺し合いをさせられている人間も多いはずだ。 逆に言えば、首輪さえ何とかなれば、どうとでもなる。 恐らくこの会場で、電子機器に強い(というか本人が電子機器なのだが)のは、自分で間違いないだろう。 ならば――― 「げ」 自身の首についている首輪を解析しようと、身体からケーブルを取り出そうとした瞬間に、テンションがガタ落ちた。 機械につなげば規格など関係無しに同調でき、しまいには生物だろうがお構い無しに生態システムを掌握できるあのケーブルが・・・ 没収されていた。 システム掌握ならばまだいいのだが、彼の場合それを『憑依状態』にまで持っていけることが問題だった。 つまり、ケーブルをブッ刺せば思いのままに操る事が出来るわけである。 「・・・果たして、ただ没収されていただけあるか、それとも会場に配られているか・・・気になるところネ」 誰かに渡れば厄介な代物になる。 更にセンライは『支給品に能力を貼り付けた』と言っていた。 形状は、USBケーブルのような稚拙な物である。仮にそれを取り戻した所で、トーイ自身が生態ジャックが出来るかどうかは分からない。 「見つけたら試して、駄目だったらこの方法は諦めるしか無いある」 ばさり。 一度底辺まで落ちたテンションをなんとか戻し、トイ=ボックスは空高く夜空に飛び立った。 まずは木々に身を隠しながら他人の様子を伺える森の探索をしながら、エリア端へと向かい、首輪に関する気になる項目を潰していく。 エリア外ギリギリで超上空まで飛び上がり、ここがどこなのかを把握し、首輪がどういったアルゴリズムで起爆するのかを確かめる。 そして、その道中で、『このゲームを破壊する同志になりうる』人間を探していくことにする。それが彼の知り合いならば、さらによし。 「早々都合よくアカルと会えるとは思わないあるけど、ね」      ◆     ◆     ◆ ん~、とセリナは背伸びをする。 大丈夫、私ならやれる。さて、誰から手玉にとってやろうか。 誰かに襲われたという設定で、無害そうな人間に近づくべきか、それともただ恐怖におののく少女を演じようか。 正義感が強い人間なら後者でも構わないかもしれないけれど、弱者を単純に足手まといだと考える現実主義者(リアリスト)なら、考え物だ。 バッグに物を詰め、腕時計をスカートのポケットに入れる。 腕時計を握り締めたままだから、ガラの悪い不良がポケットに手を突っ込んでみているみたいだな、と普段のキャラとは違う自分に苦笑した。 「ま、出来れば夜に行動するのは嫌だけど、善は急げってね」 「残念、急がば回れだったね」 ―――えっ。 背後で声がした。 振り向く直前に地面に私以外の影が見えた。 刃物が見えた。刃物は驚く事に10本あった。 次の瞬間にはソレが2本も私の身体を刺し貫いていた。 ああ、なんだ、死ぬ直前だから、こんなに状況が分かるのか。 セリナの胸元から痛さが遅れてやってきた。吐血。 「―――ガ・・・ふっ」 「あ~、やっぱり鎌とは違うかなぁ、使い方。手前に引いて首を落としたり出来ないもの。フフフ、でもまあ当たりだよ、当たりの武器。  使い方は勉強しながらだけどね。幸い刺すって行為なら何度もしてきたからね」 なんせ、死神だから。 セリナの背後から勢い良く近づいてきた、黒衣を纏った少年は付け加えて言った。 ぽたりぽたりと地面に赤い血が流れ落ちる。 「それにしてもこんなにステキなイベントを開催してくれるなんて、楽しいこともあるもんだね。クロアを取り上げられたのは癪だけど。  代わりにこんな沢山の刀が貰えたよ。ああ、勿論クロアも取り戻すけどね。 楽しい、楽しいなあ。  フフフ・・・ハハ・・・アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」 ズブリと、刺さった刀を一気に引き抜く。 血が吹き出る。間違いなく、致死量。 死神の両手に刀。一本ずつだが、力強く握っている。 日本刀と西洋刀がごちゃまぜになった、合計10本の刃物は、2本だけが赤く染まっていた。最初に見た残りの8本は、彼の足元に置いてあっただけだった。 どさっ。 膝の力が抜けて地面に倒れる。胸が熱い。 意識はもう、無くなる。 手に握っていた腕時計の液晶画面がぼんやりと見えた。 リース。 そう能力のライブラリには登録表記されていた。 彼女の心に、最期に響いてきたのは、どうしようもなく単純で、どうしようもなく残酷で、どうしようもない殺意で埋め尽くされた、どうしようもない狂気だった。      ◆     ◆     ◆ 死神リースは、少々憤慨していた。 肌身離さず持っていたクロアを没収されたこともそうだが、人間を刺し貫いたのにもかかわらず、力を吸い取る事が出来なかった。 「能力も使えない、ってことか」 が、気を取り直して刀を拾う。 「天地雷風水火」からなる六本の一般的な形状の刀「六行」。 「山鉄爪・沢鉄爪」からなる二対の長刀「弐爪」。 「炎皇轟雷・雹星天翔」からなる二対の変幻刀「天地」。 合計10本の刀からなるジーナ専用のバリエーション豊かな刀剣セットなのだが、流石にその数が数だけに、持ちながら移動するだけでガチャガチャ五月蝿いことは必至だ。 先程は最初の天地の剣を振るい、血に染めた。適当に血を拭い、錆びないように手入れしようと思ったが、やめた。 面倒だったし、何より他にも刀は沢山ある。天地を破棄し、持って行くのを止める。 さらに吟味した結果、とりあえず長刀の「山鉄爪・沢鉄爪」、そして変幻刀「炎皇轟雷・雹星天翔」、あわせて4本だけ持っていくことにした。 バッグは持たない。地図だけ折りたたんでポケットに入れる。 死神には、命を刈り取る武器さえあれば、それでいい。 「ハハ・・・ハハハ・・・!」 そう、単純に、命を摘むんでいくだけで、いいのだ。 狂気と狂喜で気が狂いそうになる。 「ヒャハ・・・ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 死神リースは、森を下り、殺して殺して殺し尽くすために、街へと向かった。 漆黒の黒衣をはためかせ、得物を見る目は、狂喜に満ちて。 【南東 山⇒住宅地/1日目/深夜】 【リース@NOVELS ROOM】 [状態]:健康 [装備]:長刀「山鉄爪・沢鉄爪」&変幻刀「炎皇轟雷・雹星天翔」@ジーナ(T.C UnionRiver)、 [道具]:地図 [思考・状況] 基本:殺し合いに乗る 1:会場を練り歩き、参加者を殺して回る 2:クロア(大鎌)を探し出し、取り戻す (備考) リースのバッグ(コンパス、筆記用具、水と食料、名簿、時計入り)が南東の山に落ちています。 同様にセリナのバッグも落ちています。 &color(red){【セリナ@T.C UnionRiver 死亡】} 「―――殺し合いに乗った人間も間違いなく居るみたいある」 トーイは横たわっているセリナの元に、降り立っていた。 彼が彼女を空中から目視した時は、既に黒衣を纏った何者かに刺された直後だった。 上空からだったため、容姿を確認する事が出来なかったため、被り物を脱ぎ捨てればすぐに誰だか分からなくなってしまうだろう。 「・・・埋めて上げる事も出来ないある。申し訳ないネ」 将来はきっと美人さんになったに違いないある。 ちょっと胸足りないあるけど。 「―――?」 血にぬれた彼女の手元には、淡く光るデジタルの腕時計があった。 内容を見ると、『リース』と表記してある。 脳内HDの名簿にアクセスすると、確かにその名はあった。それが彼女の名前なのだろうか。 そこで、彼はセリナのバッグを開けてみると、説明書を見つけることが出来た。 「マインドライブラリ・・・あるか」 何らかの能力を秘めていた時計らしいが、その具体的な内容は紙には書いていなかった。 触れた彼女にしか分からないのだろう。 その時計を回収し、後で解析しようと思った矢先に、音も無くソレは消滅した。 「!?」 まるで、消失したように、消えた。 どういうことだろうか。 具現化する能力が『マインドライブラリ』なのか、持ち主が消えると武器が消える仕様なのか、それがこの殺し合いのルールなのか。 考える事が多すぎる。 「ま、いいある。とりあえずは、当初の目的どおりエリア端に行くしか無いネ」 仏に手(羽)を合わせ、その場を立ち去った。木々の間を縫って、再び夜空へと舞う。 誰とも知らぬ少女の亡骸は、今まで他人に接したときとは違った、嘘偽りの無い表情をしていた。 【南東 山/1日目/深夜】 【トーイ@誰かの館】 [状態]:健康 [装備]:無し [道具]:無し(地図と名簿はHDに書き込んであります) [思考・状況] 基本:仲間を集めてゲームを破壊、あるいは脱出する 1:首輪とエリアに関する考察をするためエリア端へ向かう 2:安全そうな参加者に接触(特にアカルを信用) 3:黒衣の人間に対して警戒 4:リースという名に対して警戒 5:ケーブルを奪還。無ければ代用品を探す (備考) トーイのケーブルを人間に刺しての操る能力は無くなりましたが、機械に関する知識は失われてはいません 腕時計が消失した原因は「持ち主の死」が起因していると考えてはいますが、それが全ての支給武器にあてはまっているかどうかは断定できていません <提供能力> 名称:ケーブル@トーイ 能力:憑依・解析 詳細: 1~2m程のケーブル。リレッドをよく操って憑依状態にしたアレ。 完全に憑依状態になるので、その間本人は無防備。どんな相手でも刺せば操れるが、2m以下しか長さが無いので射程距離が非常に短い。 トーイ程の小さいキャラならば肩に乗りながら操る事もできるが、普通の人間では難しい。 ちなみに機械に刺して入力出力操作を省略する事も出来る。首輪にこれが通用するかは不明。 ※能力を持った武器は持ち主が死ぬと消失します。消失には死からタイムラグがあるようです。  このタイムラグが何を意味をするかは不明。不明。 Back:[[発狂者/形見のリボン]]  Next:[[風の力を得た者/龍の力を得た者]]

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