拉致問題を考える3

拉致問題を考える3
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拉致問題の今


 2002年9月17日、小泉訪朝以降、拉致問題は世論の後押しから国民運動へと発展していく。
拉致被害者の5人の生存者については、一時帰国が実現し、日本政府が一時帰国した被害者を
「北朝鮮へ帰す」ことを拒否し、5人の家族の帰国も要求する方針をとったことから、
 交渉はいったん暗礁に乗り上げたものの2004年5月22日、小泉首相の2度目の平壌訪問によって、
蓮池・地村夫妻の子供たちが父母の祖国日本へ「帰国」した。
 また、曽我ひとみの夫・ジェンキンス氏は脱走・亡命した元アメリカ兵として、
アメリカ軍による訴追の問題があるため、北朝鮮政府側に執拗に北京での面会を求められるも
これを拒否し、2004年7月9日にインドネシアのジャカルタで家族と再会。
その後、7月18日曽我ひとみ・ジェンキンス氏家族は日本に帰国を果たした。
 その後、現在に至るまで、北朝鮮側は「拉致したのは13人だけ」、「問題解決の取り決めで、
死亡者8人を除く生存者5人を返したので問題はすべて解決済み」と主張している。
 しかし、日本側は「問題解決の取り決めなどしていない」と主張し、
また、北朝鮮から死亡の証拠として出されたものはすべて捏造であるとしている。
 日朝の主張は平行線のまま、拉致問題に関してはさしたる進展もないまま、
拉致被害家族の政治に対する不信と焦燥感はつのっていった。
※上記詳細は2002年日朝首脳会談とその後の動向を参照してください。

 2月28日、名古屋の講演会「拉致問題と国防」において、
家族会事務局長増元照明氏、特定失踪者問題調査会代表荒木和博氏、元航空自衛官・航空幕僚長
田母神俊雄氏による、北朝鮮による日本人拉致問題をテーマにした講演において、田母神氏の
「自衛隊を動かしてでも、ぶん殴るぞという姿勢を(北朝鮮に)見せなければ拉致問題は解決しない」
という発言に、国内保守・右派が活気付いた。
 田母神氏は記者会見で「『ぶん殴る』とは具体的には何か」と質問されると、
「自衛隊を使って攻撃してでもやるぞという姿勢を出さないと、北朝鮮は動かない」と答え、
軍事オプションを圧力の一環として威嚇することの重要性を訴えた。

 上記の2/28田母神発言は、さまざまな物議を醸し出したが、
一番の問題点は、拉致被害者奪還に自衛隊を北朝鮮に派兵することを前提とする、
こういった田母神氏の『拉致問題保守強硬論』にある。

 元来、保守陣営にとって、自衛隊の自衛軍・国軍化は憲法改正をも含めた悲願でもある。
ただし、それは、政治としての課題であり、拉致問題を踏み台にすべきものではない。
 そのような拉致問題に起因する北朝鮮との開戦を、自衛隊の自衛軍化に煽り、
あたかも、既成事実化し憲法改正の布石にしようとする発言は看過できるものではない。
 これは日本国憲法への軍靴による足蹴であり、冒涜だ。

 自らの身は省みないまでも、発言は省みていただきたいものである。

 拉致問題の行き詰まりが、文民統制に添えなかった軍人と称する元自衛官の言説に活路を求めることは、
ブルーリボンをつけている、政治家をも含めた、多くの拉致問題関係者みずからの、
政治と外交とインテリジェンス(情報戦)の敗北宣言でしかない。

 関係各位には、こういった論調に惑わされることの無いように、自制を求めたい。

平成21年4月5日                   FreeJapan0

最終更新:2009年04月05日 02:46
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