10-242


つん、つん   つん、つん

「…ん…なんだ?」
誰かが頬をつつく感触で目が覚める。
あれから桐乃の見事なハメ技で、どんどん弱っていく俺とは対照的に
黒猫は顔色が良くなっていった。ええと、確かそれからみんなで花火をして――
バンガローに帰ってちょっと横になって――、
どうやら昼間の疲れがどっとでたのか、すぐに眠ってしまっていたようだ。
それにしてもこんな夜中に誰だ?頬をつついていた張本人に目を向けた。
俺の頬をぼやけていた目の焦点が合ってゆき、次第に輪郭がはっきりし始める。
さらさらと気持ちよさそうな長い黒髪…吸い込まれそうな大きな瞳…
「うわ!く、黒猫!?」
「しーーーーーーっ!何時だと思っているの!」
って、それはこっちの台詞だろ!時計を見ると、まだ午前2時だ。
「なんだよ、こんな時間に。」
黒猫は正座したまま、「あの…えっと…」と何やら言い出しにくそうにモゾモゾしている。
いつもは雪のように白い顔が真っ赤に染まり、視線を合わせようとしない。
…おいおいおい、何だこの雰囲気。なんだこのドキドキする感覚。

 も し か し て 誘 っ て い る ん で す か ?

いやいやいや、そんなはずはないだろ!大体友人たちが寝てる部屋で誘うって、どんだけ淫乱だよ!
考えろ…考えろ俺…黒猫はをよく見よう。ええと、黒猫はというと、何かモゾモゾと太ももをこすり合わせてるな。

 い や 、 ど う 考 え て も 誘 っ て る だ ろ !

いやいやいや、静まれ―静まれ俺のイリュージョン。よーく考えろ、熟慮だ熟慮…あっ!
と、鈍い俺は、そこでようやく理解した。
「…ああ、トイレか。」
俺が落胆の声をあげると共に、黒猫がキッと俺に抗議の視線を向ける。
「…くっ!あなたって、本当に鈍くてデリカシーの無い男だわ!」
「わ、悪かったな…それで、俺に何の用だ?行ってこればいいだろう。」
「うっ、それは…ここの共用トイレは結構離れてたところにあるでしょう?
 だから…その…。」
そう言って、黒猫は顔を赤らめながら視線を外し、歯切れの悪い返事をする。
…ふふ、なあるほど。怖いから付いて来いという訳だな。
「ははーん、もしかしておまえ、怖いのか?あれ、闇の眷属とかなんとか言ってたのは―――」
「う、うるさいわね。誰の所為だと思っているの?あなたが昼間に散々水を飲ませたからでしょう?」
怖いなら怖いと素直に言えばいいのに。まあ、それが黒猫のかわいいところでもあるんだが。
「へいへい、分かったよ。」
俺はそういうと立ち上がった。

外はもうすっかり涼しく、虫の声があふれている。薄暗い街頭の光の中を黒猫と連れ立って歩く。
黒猫はと言うと、ビクビクと周りを注視しながら、俺の腕にしがみ付いてくる。
「お、おい…くっつき過ぎなんじゃないのか」
「…し、仕方がないじゃない。山の夜は冷えるのよ。」
ちくしょう…なんで怖がってる女の子ってこんなに可愛いんだ。しかも、ちょっと胸が当たってるし。
「全く、いつもはあんなに強気なのに。そんなに怖がるなんてまるで子供だな」
「…ち、違うのよ!これは怖いんじゃなくて――」

   ガサガサ       ガサガサ 

黒猫&俺「ひっ!」


ヒョコ( ^ω^)

「…なんだ、内藤ホライゾンか。」

( ^ω^)…

⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン

「……。」
ブーンと遠くなって良く内藤の後ろ姿を、無言で見つめるしかない俺と黒猫。
「…な、なんであんなvip臭い生物がいるのよ…」
「あの顔って、ミョーにむかつくよな…なんでだろな…」


「ほら、着いたぞ」
「わ…分かってるわ。じゃあ、あなたはそこで待っていて頂戴。絶対動かないでよ。」
「はいはい。怖いからって、途中で漏らすなよ。」
「莫迦!別に怖がってなんかいないわ!」
そう言うと、黒猫はそそくさとトイレに入っていった。あいつ、絶対怖がってることを認めないんだな…。

そこでちょっと悪戯心が働いた。こっそりどこかに隠れて、おどかしてみるか。


(おまけ)
黒猫「先輩、喉が渇いたわ。お茶を持ってきて頂戴。」

京介「へいへい。全く人使いの荒い後輩だぜ…」

黒猫「ちょっと待ちなさい。どこへいくつもりなの?」

京介「どこって・・・台所に決まってるだろ。お茶が欲しいんじゃないのか?」

黒猫「先輩、ちょっとそこに座りなさい。
   あなたに今から言葉の裏の意味というものを教えてあげるわ。
   人は言葉に色々な感情を込めるものなのよ。
   だからそれをちゃんと理解しなくてはダメ。
   とても大事なことだからちゃんと聞くのよ。」

黒猫「もし「先輩、お茶を持ってきて頂戴」と私が言った時に、
   今の様にすぐさまお茶を取りに行ってはいけないのよ。
   なぜなら私が「お茶を持ってきて」と言ったら、
   それはすなわち私を抱き締めて頂戴という意味だから。
   言い換えればそれは私にキスをして頂戴ということなのよ。
   だから、もし私が「先輩、お茶を持ってきて頂戴」と言ったら、
   あなたはすぐに私を抱きしめて、キスをするの。
   それからお茶を取りに行かなくてはならないのよ。
   わかったかしら?
   そう、わかったのね。
   話はそれだけよ、先輩・・・・・・・・早くお茶を持ってきて頂戴。」

京介「・・・・」


おまけおはり





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最終更新:2010年11月26日 14:03
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