俺の妹の最終決戦 02


俺と妹の最終決戦
~~その2~~

新垣あやせ。妹の親友でクラスメイト。雑誌の専属モデルをやっている。俺のことを近視相姦上等の
キモオタ兄貴だと思い込んでいるが、何故かちょくちょく桐乃のことで俺に相談を持ちかけてくる
黒髪の美少女。

愛しのラブリーマイエンジェルあやせちゃん。

そんな美少女が、今、俺の目の前に立っている。

「お兄さん!なに、にやにやしているんですか? 二人きりだからって変なことしないでくださいね」
「しないしない」
「そっ、それよりどういうことですか? 桐乃のことで、とても大事な話があるってメールに書いて
 いたんですけど?」
そう、桐乃から愛の告白?を受けた俺は、翌日の夕方あやせと対面していた。
例によって桐乃大好きのあやせに対して、桐乃を餌にしていつもの公園へ呼び出していたのだった。

しかし、あっさり、ここに現れたなこいつ・・。呼び出した俺が言うのもなんだけど、チョロすぎるぜ。
「お兄さん! 早く話をしてください! 桐乃に何があったんでしょうか?」
 あやせが鬼のような形相で俺を睨みつけてくる。
「ってか、なんでおまえは、いつも怒っているんだ?」
「えっ・・・、そっ、そんなことはありません。お兄さんが早くわたしに話をしないからです」
「・・・・・」
「いや。実を言うとな、今日は俺からお前に大事な話があるので、ここに来てもらったんだ」

俺は、あやせに精一杯の凛々しい声で、応えた。
そして・・・・・。

「俺と結婚してくれ」
あやせは光彩の失した瞳で俺を見て・・・・・
「通報しました」
ブ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

畜生このアマ、またしても携帯用防犯ブザーを鳴らしやがった!
「すっ。すまん、分かったから落ち着け。あやせ! お兄さん調子に乗っていました! すみません。すみません。」
俺は、ただ、ひたすら謝り続けるしかなかった。
かちっ。
あやせは、ようやくブザーを止めてくれた。

「もう、毎回毎回いい加減にしてください。どうして、いつもそんな冗談ばっかり言うのですか!」
「いや・・・それは、お前が俺にとって、あまりにも魅力的な女性だから」
「おっ、お兄さんのくせに、気持ち悪いセリフを言わないでください。あなたと二人で一緒にいることで、わたしが
 どれだけ我慢しているのだと思っているのでか」
「あやせ貴様ぁ! 言うにことかいて、俺を何だと思ってやがるんだ!」
「変態、セクハラ野郎だと思っています!」

もう、俺、本当に泣くよ。まじ泣きするよ。
「俺、いつもお前の相談に乗ってやっていたよな。お前だって、感謝していたんじゃなかったのかよ。」
「その件はその件です。それに、毎回、わたしなりのお礼をきちんとしているつもりです。桐乃へのプレゼントの件
 の時でも、わたしからのサプライズプレゼントを、きちんとしたつもりですけど」
「へっ? 俺、なんかあの時にプレゼントしてもらった?」
「なっ! お姉さんの髪型がとても綺麗になっていたことに、気づいていなかったの?」
「え?? もしかして、あの時のあの寝癖っぽいやつ? あれ、お前が何か関係していたの?」
「お兄さん!!」
「もしかして、お姉さんにも、今の台詞と同じようなことを言ったんじゃないでしょうね?」

だって、あれ、どう考えてもただの寝癖じゃん。俺はあやせにひどく不可解な顔をしてしまった。
「なんですかその反抗的な目は? また通報しますよ!」
「もういい。その件については、俺も悪かったと思っているんだ!」
てか、通報通報、うるさいだよ(心の声)
「なっ! なんですか、その言い方は! 本当に反省しているのですか?」
あやせが再び、光彩の失した瞳で俺を見つめてきて・・・・・、その瞳には 「殺」という文字が透けて見えてくる。

「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
俺は本気の本気で謝りまくった。
まさか、年下の女の子に向かって、ここまで情けない姿を見せてしまうなんて。
「そこまで、怯えられると、さすがに傷つくんですけど」
あやせは、さすがに引きつった顔をしていた。

「わたしは、イメチェンしたお姉さんをお兄さんに喜んでもらいたかっただけなのに・・・・・ひどくないですか?」
あやせが口を尖がらせて、すねたような表情になってくる。
「すまなかった。あやせ。」
俺があやせに続いて、そっと肩に手をやる。
「きゃ! か、顔! 顔が近いです!」
あやせが顔面真っ赤になって、ぐいっと手のひらで俺を押しつけてきた。
なぜか、光彩を取り戻したあやせ。

「もういいです。それで、お兄さん。わたしへの大事な話はどうなっているのですか?」
ようやくあやせが落ち着いたところで、俺は改めて話を切り出した。
「いや、実はな、桐乃のやつに好きな人ができたみたいでよ」
「えっ? 桐乃がわたしのことを好きになったんですか?」
「俺のこと言えないくらい気持ち悪いよ。お前。そうじゃない。変な世界に入ってくるな!」

「じゃー、どういうことなんですか? はっ、まさか桐乃がわたし以外に好きな人なんて、いるわけないですよね!
 またそうやって、わたしをからかって喜んでいるだけなんですよね」
「ぐ、ぐるしいっての・・・・・・」
必死でタップすると、あやせは気付いて手を放してくれた。
「げっほ! はぁ、はぁ、はぁ・・・」

死ぬよ俺。こんどこそ本当に。
「・・・・・・で? どういうことなんです!」
「い、いや、実は、昨日、桐乃と大喧嘩してよ。そして最後に言われたんだ」
「好き・・・・・お兄ちゃん・・・・・・」ってなことを。
俺は昨日の桐乃とのやりとりと最後にそう告げられたことをあやせに告白した。

「・・・・・・どう思う?」
「・・・・・・・・・・」
ん?なんか悲しそうな顔をしているな?
「・・・多分、本当にそう思っているのだと思います。以前、初めてわたしがお兄さんと出会ったとき、
 言いましたよね。桐乃が本気でお兄さんのことを嫌っているわけじゃないと。やっぱりわたしの勘は当たって
 いたんです」
なぜか、絞り出すような声色だった。

「考えてみれば、あの時から桐乃は学校で毎日お兄さんの話ばかりしていました。口ではいろいろ悪口ばかり
 言っているようだったけど、いつもいつも楽しそうな笑顔でお兄さんの話をしていました」
そうか、そうだったのか。あいつ、あやせの前で俺なんかの話を。。



「それで、どうするんですか?お兄さん?」
その時、再び、光彩が消えていくあやせの瞳を見て、俺は生まれて初めて死を覚悟した。
しまったぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
なんで、俺、こんな話をあやせにしてしまったの?
な、なんとかごまかさなければならない。
考えろ、考えろ、俺。

俺の選択死1 申し訳ありません。あやせさん。今の話はすべて冗談でした。
俺の選択死2 俺と結婚してくれ。あやせ!
俺の選択死3 とにかく逃げる。この場から逃げてしまう!

人は、生と死の境目を一瞬の判断で見極めなければならない。俺は、今まさに、この瞬間、確実に待っている死を
回避しなければならない。

そして、俺が選択した答えは!

「俺は、妹が、妹が大好きだ。妹が、大好きなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
何をとちくるったか、いつかと同じように、あやせに向かって魂の叫びを浴びせた。これが追い詰められた俺の
選択した答えであった。

しばし沈黙・・・。

そして

「・・・・そうですか。それが、お兄さんの答えということですね。・・・わたし忠告しましたよね。桐乃に手を
 出したら必ず殺しますからねっと」
もはや完全な殺し屋の目となったあやせが、何らかの決意を決めたかのように、俺の数センチ前まで近づいてきた。

そして・・・・・

「いますぐ、後ろに向いてください。」
「・・・・・・・・・」
「早くしてください」
俺はあやせに言われるがままに体を回し、あやせに対して無防備な背中を向けた。
「そのまま目をつむってください」
なんなんだ。いったい。・・・殺るなら、いっそ、ひと思いに殺ってくれ。
俺がそんなふうに考えていた中、突然・・・。

背中に柔らかい感触が伝わってきた。
そう。あやせが、俺に抱きついてきたのであった。

「おっ、お前、いったいどういうつもりなんだ」
「少しだけ。ほんの少しだけ、このままにさせておいてください。」
「・・・・あっ、あやせ・・・・・??」
「・・・本当は、初めて会った時から、ずっとお兄さんのことが好きでした。でっ、でも、わたしは、桐乃のことも
 お兄さんと同じくらい好き。だ、だから、ずっと我慢していたのです。桐乃との関係を壊さないように・・・。
 桐乃の大好きなお兄さんを・・・・」
「だっ、だって、お前、俺のことを近視相姦上等のキモオタ兄貴とか・・。電話だって、着信拒否してなかったか?」
「・・・ずっ、ずっと我慢していたんです。お兄さんのことを、そんなに好きにならないように・・・」
「だっ、だけど、そうやって無理すれば無理するほど、お兄さんのことが・・・」
「以前、桐乃とお兄さんが二人で映っているプリクラを見たときは・・・。一晩中、眠れませんでした。」
「あやせっ・・・・」


刻は夕暮れ。空は赤く染まり、足下の影法師が長く長く伸びてくる。まだ、夏ということもあり、時おり心地よい風が
流れてくる。そんな中、俺と黒髪の美少女の存在するこの公園は、静寂に満ちている。
どれくらいの時間が経過したのだろうか。実際の時間はおそらく数分程であったと思うが、俺にはとても長く心地よい時間が
経過したような気がした。

そして、・・・・・・
振り向くと、光彩を取り戻した黒髪の美少女が、俺に語りかけてきた。
「お兄さん」
「どうか、桐乃の力になってあげてください」
「あやせ。俺は」
「言わないでください。もういいです。早く、桐乃のところへ行ってあげてください」
「・・・・・」
「本当に・・・・・、本当に早く行かないと、通報しますよ」

そう言って、あやせは、鞄から携帯用防犯ブザーを取り出して、これ以上ないほどの笑顔を見せてくれた。
「おう! 行ってくるぜ。あやせ!」

こうして、俺とあやせとの戦いは終わった。

話を終えた俺があやせを背に勢いよく家に向かって走り出した時・・・

「さようなら。わたしの大好きなお兄さん」

そんな声が俺の背中で聞こえてきたのは、決して俺の空耳ではなかったんだと思う。

あたりがいっきに暗くなってきた。もうすっかり夜になりやがったな。
次はいよいよ黒猫の番だな。麻奈美のことも忘れちゃいないが、まあ、あいつは何時でもいいだろう。

そして、俺は携帯を手に、夜の帝王黒猫へ俺の最後のメールを出した。

しかし、この時の俺はまだ知らなかった。
次の黒猫との戦いこそが、この俺、高坂京介にとってかつてない戦いになるということを。






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最終更新:2010年11月28日 02:25
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