真実の一片


私の名前は伊織・フェイト・刹那。
厨二病臭い本名を持つ廃ワナビよ。
うぅ……自分で言っていて落ち込んでくるわ。

でもね、そう悪いことばかりではないのよ。
今日は借金(今50万近くになっているわ)を返済する目処が立ちそうなの。
ふふふ……見てなさい。ここから私の人生の逆転劇が始まるの。

―――カランカラン
「あ、伊織さん。こんにちは」
このライトブラウンの髪の女の子は高坂桐乃。
美しい容姿に溢れる才能。努力をすればしただけ認められる幸運の持ち主。
前にちょっと魔がさして―――という話は今日は置いておくわ。
輝かしい彼女に正直あまりいい印象を持っていないのだけれど、今日は違う。
「こんにちは、桐乃ちゃん」

「あの、早速ですけど、はいこれ」
「うん。ありがとう」
ふふふ、僕テンション上がってきたよ。
受け取った50万を鞄にしまって、と。
「この前は、ありがと。おかげでなんとか兄貴をごまかせたわ」
「それに、大好きなお兄ちゃんとデートできたし?」
「っ!ち、そ、そんなんじゃなくて―――」
「はいはい、本物の藤真社長?を説得するのに写真が必要だったんでしょ?」
この辺りの事情は詳しく聞いていないのだけれど。
何かの事情があって、桐乃ちゃんはとっさに京介くんに
『彼氏のフリをして、会ってほしい人がいる』と言ってしまったらしい。

で、その時ちょうど、藤真社長という人にモデルの引き抜きをされそうになっていて。


『彼氏がいるから』と言い訳したら『写真を見せなさい』と言われたらしいの。
したたかな人らしいから、写真程度で納得するハズないと思うのだけれど。

そこで、私に『藤真美咲』という人物になりきって演技してほしいと言ってきて。
京介くんをごまかすのと同時に、写真を撮るためのデートを仕向けてほしい。
ということだったわけ。
ほら、前に編集者のフリをして桐乃ちゃんを騙したこともあるし、
ある程度時間があって自分の自由になる大人の女性として私に白羽の矢が立ったわけ。



「それで、本物の藤真社長に写真は渡せたの?」
「うん、一応。あ、これ伊織さんにも」
ふふふ、赤くなっちゃって。
まー彼氏と彼女に見えなくはないかな。もし私が社長だったら、そうね。
桐乃ちゃんの仲のいいモデル仲間あたりに、プリクラを元に事実確認をすると思うのだけれど。
ま、そんなこと言ってあげる義理はないわ。
私が頼まれたのは演技、見返りは50万貸してくれること。それだけよ。

「でもよく京介くんに、私だってバレなかったわね」
「え?」
「一応それなりの変装はしたけれど」
「ちょっと待って、伊織さんってあいつと面識あるの?」
あ。しまった。
桐乃ちゃんの兄と姉(本当は姉じゃなくて友達らしい)とは、
この前の盗作騒動のときに面識があったのだけれど。
桐乃ちゃんには内緒にしといてって言われてたのに。
ま、いっか。


「え、あいつらそんなこと一言も……」
「うん、あの子達も桐乃チャンに知られたくなかったと思うから。
黙っといてあげてね。」
「はい……」
「あ、そうだ。その時のお礼をしたいのだけれど、
京介くんの連絡先を教えてもらってもいいかしら?」

京介くんの連絡先を聞きながら、
私は鞄の中の50万を思い、晴れやかな気持ちでいた。
そうだ!この50万をFXで増やせば、借金返済だけじゃなく………
ふふふ、どうやらこの私にも、運が向いてきたようね。


おわり。





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最終更新:2011年02月27日 23:20
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