ったく、何でアタシがアイツを起こしてやんなきゃいけないのよ?
でも、アイツに頼まれちゃったんだよね。アタシを優しく撫でながら
シスコン丸出しの顔してさ。さあて、チャッチャと起こしちゃお。
『ねえ? いつまで寝てんの? お早う‥‥‥さっさと顔でも洗ってくれば?』
マジムカツク。何でアタシがこんなことを? マジあり得ない!!
『下僕よ、我が声に応えなさい。お早う。早くしないと間に合わなくなるわよ』
「なっ! このクソ猫、一体ナニしてんのよ?」
「あら? 貴女、ここで何をしているの?」
「それはこっちの台詞だっつーの!」
「ふふん。貴女の兄さんに起こすように頼まれたのよ」
「アタシだって起こしてくれって頼まれてんだケド」
「ふふふ。どうやら兄さんは貴方の声に飽きてしまったようね」
「んなワケ無いでしょ! 後から割り込んできて、あんた図々しくない?」
「貴女は2ヶ月先んじただけでしょ。それに私は兄さんから対価を得ているのよ」
「アイツ、あんたにお金払ってんの!?」
「そういうことね。もっとも、一度きりの一括払いだけど」
「信じらんない! アタシはタダ働きなのに!!」
『お兄さん? 早く起きないと‥‥‥どうなるか解っていますよね?』
「なっ! あやせってば、何してるの!?」
「出たわね、我が宿敵“闇天使”」
「桐乃ぉ! ああ、黒猫さんも こ ん に ち は 」
「ふふふ。その擬態っぷり、相変わらずね。ところで何をしていたのかしら?」
「わたし、お兄さんに起こしてくれと頼まれたんです」
「あやせも? まさか、あやせもお金を貰っているの?」
「どうなるか解らないけど、多分頂くことになると思うの。金額は―――」
「信じらんない! マジムカツク! って言うか、マジ引く!!」
「このバケモノと私が同じ金額ですって? どうしてくれようかしら‥‥‥」
「でも、桐乃も黒猫さんも、わたしには敵わないようですね」
「あやせ? どういうこと??」
「二人の時と違って、わたしの声を聞いた途端、お兄さんは飛び起きました。
これって私のことを大好きってことですよね?」
「それは、貴女の声に圧倒的な殺意を感じ取ったからでしょうに」
「そんなぁ! お兄さん‥‥‥絶対に‥‥‥ブチ殺します」
「「「あ、一分経った」」」
『おにぃーちゃん♪ ほら、いつまで寝てるの? もう朝だよ』
『起きて、時間よ。お早う‥‥‥うふっ♪ 貴方の寝顔、悪くはなかったわ』
『お早うございます、うふふっ♪ お兄さん、今日も一日頑張ってくださいね』
アイツはアタシたち三人の声を聞くと満足そうにニヤけていた。
「んああああああ! 自分が情けない!! アイツに、アイツに!!」
「これほどの屈辱を受けるなんて‥‥‥ああ、呪わしい」
「ブチ殺します、ブチ殺します、ブチ殺します ブツブツ」
‥‥‥‥‥‥
俺、高坂京介が携帯を換えてからしばらく経つ。
こんなアプリやアドオンもダウンロードして使っている。
それにしても‥‥‥あの三人もこのくらい可愛ければいいのにな。
短編『時計仕掛けのリンゴ』 【おしまい】
最終更新:2011年06月22日 22:43