ふたば系ゆっくりいじめ 514 僕とさくやとおぜうさま

僕とさくやとおぜうさま 21KB


制裁 愛護 飼いゆ 捕食種 希少種 現代 愛護人間 人間がおかしい



・現代。俺設定満載。希少種優遇。いつも通りだね!!
・ちょっと愛で入ってるね!気をつけてね!

思ったよりも時間が掛かりました。とりあえずどうぞ。

では、ゆっくりしていってね!!!





「だんなさま、あさですわ!おきてくださいまし!!」

朝。心地よい夢の世界に身を委ねていた僕は、いつもの大きな声で現実に引き戻された。

眠い目をこすりつつ寝起き特有の不機嫌な気分で声のほうに目をやると、
そこにはやはり、ウチで飼っているゆっくりさくやの姿があった。

銀色の髪を軽くまとめたおさげに、 ホワイトブリムが映える。
今日も実にキュートだ。まあそれで僕の眠気が吹っ飛ぶわけでもないが。

「だらしないですわ、だんなさま!はやくおきておしごとのしたくをなさってくださいまし!!」
「うん、まあ、それはいいんだけどさ…
 なんで君いつも目覚ましよりも早く起こすわけ?目覚ましの意味無いじゃん」
「よていのじゅっぷんまえこうどうがしんしのたしなみですわ、だんなさま!!」
「いや、だからそれも視野に入れての設定…まあいいや。着替えの仕度は?」
「いつものところにかけてあります!ゆっくりしたくしてくださいまし!」

ゆっくりする暇があるならもう少し寝かせろよ、と言うとまた小言が飛んでくるのでおとなしくしておく。
僕が着替え始めるのを確かめると、さくやは引き戸を開け颯爽と跳ねて部屋から出て行った。


もう彼女と暮らし始めて1年と少しになる。
最初は手間が掛からないペットという認識で、人気種の子犬でも買うつもりで大枚はたいて購入したのだが、
手間が掛からないどころかこっちの生活が少しだが楽になるという予想外な結果となった。
後で調べてみると、彼女はどうやらメイドの真似事をする習性があるらしい。
おかげでペットどころか、本職には遠く及ばないものの随分と便利なお手伝いができた。

だがしかし。さくやは非常に口うるさい。
それなりに今までのんびりと暮らしていたのが彼女が来てからというもの、
まるで母親と一緒に暮らしているような錯覚を覚える。少なくとも断じてメイドじゃない。
そのせいで僕はかなり規則正しい生活を送る事を余儀なくされてしまった。

とは言っても都会に出てから、一人寂しく暮らしていた以前よりはずっと楽しくやっている。
うるさくはあるが、さくやは可愛いし(ゆっくりに言うのもなんだが)器量もいい。
つまり僕はさくやが誰よりも大好きだ。

これで、あの妙な習性さえなければなぁ…

「おじょうさま、あさですわ!おきてくださいまし!!!」
「うー、まだれみぃおねむなんだどぉ…」
「いけませんわ!りっぱなおじょうさまはきちんとしたせいかつをするものです!!」
「うあ゛ー!なんでそんないじわるいうんだどぉ!さぐや!ざぐや゛ー!!」

あーうるさい。朝っぱらから喚くなよ…

忌々しいあの肉まんの声にイライラしながら、僕は朝食の準備をするために部屋を出た。





           僕とさくやとおぜうさま 





少し口やかましいが働き者で気配りもできるさくやが我侭を言ったのは、
一緒に暮らし始めて二ヶ月ほど経ってからだった。


「だんなさま…さくやはおねがいがあります」
「なんだ?珍しいな。
 まあ言ってみなよ。よっぽどの事でなけりゃ聞いてあげるさ」
「…さくやはしあわせものでございます。なのに…
 たとえだらしなくても、ひとりではあさもおきられないだめなおかたであったとしても、
 これほどにやさしいだんなさまがいるというのに…」
「いや、おだてるのはいいから……え?これ貶められてるの?どっち?」

「さくやは……おじょうさまがほしゅうございます!!!」


…お嬢様?何の?
訳がわからない。僕に妹とかはいないんだけど…

「どういうことさ。お嬢様って…」
「このまえ、ほんをよんでいたときにみたのです。
 わたくしのようなゆっくりには、つかえるべきおじょうさまがいると…
 わるいことだとはわかっているのです!ほかにつかえるかたがほしいなどと!
 しかしもうかんがえただけでがまんができないのです!!
 どうか、どうか…」

ああ、もしかしてゆっくりの習性に関する本のことか。
確かにさくや種はれみりゃ種、それも胴付きに仕える癖があるって書いてたが、
今まで知らなかった物を自分で確認、自覚した事で我慢できなくなったんだな…

そういえばさくやを買った時もなんか抱き合わせみたいな形で勧められたような気もする。
あんな脂っこい肉まん欲しくないから適当に聞き流したけど。
しかしあのブッサイクで頭が悪い肉まんと暮らすのか?でも他ならないさくやの頼みだしな……


―――結局次の日、いくつかの条件を飲ませて胴付きれみりゃを飼う事を許した。

ウチに来てからというもの、ろくな要求もせずただ黙々と僕に仕えるあのさくやが。
何か欲しい物は、行きたい所は、やりたい事は無いのかと聞くたびに、
『だんなさまにつかえることが、さくやのなによりのしあわせですわ!!!』
と言って譲らなかったあのさくやが、初めて自覚しながらも我侭を言ったのだ。

きっと身を切るような覚悟だったのだろう。その辛そうな顔を見れば分かった。
ならば断るわけにはいかないではないか。
例えそれで、あの醜く知性の欠片も無い肉まんを家に招く事になるとしてもだ。

念願叶いとても幸せそうなさくやに僕の頬も思わず緩む。
あとは―――

「うぁー、さくやー♪ふっでぃんたべたいどぉ。ぷっでぃ~ん♪
 かわいいれみぃにぷっでぃんちょうだいだどぉ~♪」
「はい、おじょうさま!きょうのおやつにはとっておきのぷりんをごよういしてありますわ!!」
「さくやばかだどぉ、ぷりんじゃなくてぷっでぃんだどぉ♪」
「そうですわね、おじょうさま!もうしわけございません!」
「うっう~☆うあ☆うあ♪」

ホントあれさえ居なけりゃなぁ…

上機嫌で奇妙な踊りを始めるでっぷりと膨れた肉まんに、笑顔が固まった僕は自分の血圧が上がるのを感じた。





――――――――――


さくやは今とても幸せだった。
あの憧れのおじょうさまに、とうとう仕える事ができたのだ。
おじょうさまが来てから二日になり、今までよりさくやは忙しくなったがそんなことは気にならない。
辛い事や上手くいかない事もあるが、充実した日々を送っている。

それにこんな自分には勿体無いほど優しい旦那様がいる。
自分はあなたのほかに仕える方が欲しいなどと、
従者にあるまじき発言をしたというのにそれを受け入れてくださった。

旦那様にはとても大きな御恩がある。自分ごときでは全ては到底返せそうに無い程の恩が。
だがそれでも少しでも完璧で瀟洒な従者に近づき、
おじょうさまを立派な淑女にすることが恩返しに繋がるのだと、さくやは信じて疑わなかった。

少し品性が無く我侭が過ぎるおじょうさまは、従者専門である自分であっても非常に手が掛かる。
が、そう信じればこそさくやは諦めずにおじょうさまを諫め続ける事ができたのだった。

「おじょうさま、いけません!そんなにちらかすのはゆうがではございませんわ!!」
「うるさいんだどぉ!れみぃのこーきなげいじゅつせーがわからないむのーはだまってるんだど!
 れみぃのげーじゅつのうつくしさがわかったら、ぷっでぃんをもってくるのをゆるしてやるんだどぉ♪」

「おい、うるさいぞ。たまの休みくらいゆっくりさせてくれ!」
「も、もうしわけございません、だんなさま!」
「まったく……また後で片付けないとな。手伝ってくれよ?」
「はい、だんなさま。まことにもうしわけございませんわ…」

「おい、お前もさくやの言うこと少しはきけよ、居候同然の分際で。もうこれで七度目だぞ」
「う~!そんなのしらないんだど!ばかなにんげんはぽ~いするんだど!さくや、ぽ~い!!」
「いけません、おじょうさま!だんなさまにそのような…」
「うぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!みんな゛れみ゛ぃをいじめるんだど!さぐやぁ、ざぐやぁぁ゛ぁ゛!!」
「お、おじょうさま……」「・・・・・はぁ。」


そう。どれだけ辛くとも、さくやは幸せだったのだ。





――――――――――


れみりゃは、幸せではなかった。今の状況はちっともゆっくりできない。

あの自分の体の大きさとほとんど変わらない狭い部屋にいた頃に比べれば、
おいしいご飯に広い部屋、オマケに大好物のぷっでぃんまで付いてくる。

以前のパサパサでまずいご飯をほんの少ししか与えられず、他に話ができる者も居ない。
そして時々見知らぬ人間に部屋を覗き込まれ、鼻で笑われる毎日。
(それでも世の中に存在する8割の他の胴付きれみりゃよりは恵まれているのだが)
それに比べれば、従者までいる現在は天と地の差ほどに恵まれているはずである。


が、当のれみりゃはそう思っていない。

むしろ
“今までかわいいれみぃがあんな酷いところにいたのは何かの間違いだ。
さっさと迎えに来ないなどさくやは何をしていたのか。
まあいい、それは許してやる。高貴な自分が住むには少し狭いおうちも、まあ許してやろう。

が、あの人間はなんだ。勝手に自分の家に入り込んで自分の従者を使う。
それどころか従者であるさくやはその人間に逆らいもせずただ従う始末だ。
食事を作るので特別に許してやっているが、自分がそのために我慢するなどあってはならない。

だと言うのに、さくやは我慢しろと言う。
もっとおとなしくだの、人間に逆らうなだの、あれこれと言う。
何故?れみぃはこの“こーまかん”の主なのだ。我慢する事など何もない。
むしろお前達を住まわせてやっているのだから、お前達が自分に跪くのは当然だろう”
と考えていた。

早い話がれみりゃは、
『自分がこういう環境にいるのは当たり前。自分の思い通りにいかないこと自体が間違っている』
そう思っていたのだ。

ふざけた話だが、それでもこの肉まんにとってはそれが真実だった。
“むのーなじゅうしゃ”の意見ごときでそれが変わる事は、決して無い。
その思い違いが己の運命を決定付けるとも知らずに。

そして、さくやの努力は実ることなく時は流れていく―――





―――――時は戻り、約11ヵ月後の現在―――――


「おいしくないおはな、ぽーい!まじゅいおやさいののこりもぽーい!れみぃはぷっでぃんがしゅきー☆」

仕事から帰ってきた僕を出迎えたのは散らかった部屋と、テーブルの上の花瓶等を倒しながら、
テーブル上でこっちに例の気持ち悪い変な踊りを見せる、太った醜い肉まんだった。
さくやはテーブルの上に登る様な行儀の悪い事はせず、ただ下でオタオタするだけだ。

「う?うあ☆うあ♪れみぃのかり☆しゅまだんすでにんげんなんかいちころなんだどぉ♪
 やくたたずなさくやにもやさしいれみぃはみせてやるから、かんしゃするんだどぉ♪」
「おじょうさま、おやめください!!このままでは、このままでは……」

「……さくや」
「だ、だんなさま。ちがうのです…これは……」
「さっさとれみぃのみりょくにのうさつされたら、ぷっでぃんもってくるんだどぉ♪
 うっふ~ん、かわいくてごべんねぇ~ん♪ うっうー☆(ブボッ!)」

わけのわからん事をほざきながら屁をこく肉まんには目もくれず、
僕はさくやに静かに、そして冷徹に告げた。

「もう、だめだな」「!!!」
「これで何回目か分かってるだろ?さくや。約束は約束だ」「・・・・・」

さくやはうつむいたまま何も言わない。
こちらのやり取りにはかまわず、肉まんは調子に乗り続ける。

「きいてるのかどぉ?これだからばかなにんげんはこまるんだど♪
 まったく。やくたたずなさくやといっしょにほんとはくびにするとこなんだどぉ!
 でもしょうがないからとくべつにれみぃのあしをなめればゆるしてやるどぉ♪」

「くたばれ」
「う~?なに『ボゴッ!!』ブボォ!!?」


まだ何かを喚いている肉まんの顔を、僕はおもいっきり殴りつけた。
飛んで壁に激突した肉まんは、顔の中心をめり込ませてウメボシになりながらも何か騒いでいる。

「ぶぼぉぉ゛ぉ゛!!よぐもでびぃどぶりぢーな゛がおぁ゛!!!」

構わず顔面を殴り続ける。どれだけ叫ぼうとも、許しを請おうとも

「ざぐや、だずげでざぐや!!おぜぅ゛ぇ゛!!がっ!が!」
「ごべんじゃ!ゆるじばぁ!ぼ、ぼういだがぁ!!あがっ!ぶがぁ!!」
「ぶげっ!ぎゅが!あげぇ!ぷびぃ!!ぶぅ!ぶぅぅぅ!!!」

ひたすら殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。


殴り続けて、もうれみりゃ種特有の再生力も働かなくなった頃、
肉まんはうめき続けるだけになった。さくやは目を瞑ってただ身を震わせている。
僕は動かなくなった肉まんの髪を引っ張り上げ、唾を吐きかけた。

「おい、デブ。いい夢見れたか?
 お前みたいな醜い豚には過ぎた夢だったろう?」
「ぶ…ぶぎぃ…でびぃぶだじゃ……」
「ブーブー鳴く汚い豚だよ、お前は。生憎ウチに住めるのはさくやに相応しい、理想のお嬢様だけなんでな。
 これだけさくやが尽くしても全く進歩が無いバカは、ただの豚。いや、それ以下だ」

豚は今度は必死になって、震えているさくやに助けを求めている。
本当に勝手な奴だ……先程の自分の言動を省みるような事もしないのだから。
何度もさくやを無能だなどと言った事を、僕は決して許しはしない。

「ぶ、あがぁぁ…ざぐやぁ…ざぐぶぎゃぁ゛!!!」
「豚風情が僕の従者を気安く呼ぶな。不愉快だ。
 さあ、豚は豚らしく逝くべき所に行かないとな」
「ぶ、ぶぎぃ…でびぃ゛!!やべっ!ぼうぶだない゛べっ!!!ばっ!!ぶあ゛あ゛!!」

そう言って今度は話せなくなるまで再び顔面を殴り続けた僕は、豚の髪を掴んで引きずりながら外へと繰り出した。
さくやも黙ってその後をついて来る。





――――――――――


顔が潰れて声も出せなくなった豚を引きずって来たのは、人気の全く無い夜の公園だ。
近所迷惑にならないように声が出せないよう顔面をグチャグチャにしてやったのだが、
豚もここに来る間に少しは回復したのか微かに息を漏らしていた。

「おい……一応生きてるみたいだな、豚。
 お前に相応しい最後を用意してやったぞ」
「ば、おでがいじばず、だずげ…」
「ここは夜になるとカラスが集まる場所でな。
 そりゃもう町内の四分の一が集合してるんじゃないかってくらいの数さ。

 …今は分からないだろ。息を潜めてるからな。
 奴らは人にむやみに突っかかるような真似はしないのさ。
 賢いだろう?少なくともお前よりはよっぽどな」

「で、でびぃじにたぐ…」
「お前はこれから、カラスに食われる。
 体中を啄ばまれて、ジワジワと痛みを感じながら死ぬんだ。
 凄いな。骨とか関係なく体全部が食料になるんだ。豚よりもそこは誇っていいぞ」

「いや゛、いやだぁ…なんでれびぃが…」
「はいはいゆっくりゆっくり」
人間ってやつは豚の懇願なんかいちいち聞きやしないんだって。

全て言い終えると、僕は豚の腕を掴み一気に


―――引きちぎった。


「う゛ばぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
バサバサバサバササッバサッ!!
「ぼっぢょ!ぼっぢょゆっぐりぃぃ゛ぃ゛ぃ゛い゛ぢゃい゛!!やべでぇ゛ぇ゛!!!」

豚が大声で鳴くと同時に今まで息を潜めていたカラスたちが一気に群がった。
まず損傷が酷く肉汁まみれだった顔を粗方毟り取られ、次第に叫びは声にならない物になっていく。
「う゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!だじゅきゅぶぃー!!ぷぴぃぃぃ!!」

その光景を、一歩引いたところで僕とさくやは見ていた。
思わず目を背けようとするさくやを、僕は叱りつける。

「だめだ、さくや。ちゃんと見るんだ。
 あいつがあまりにもバカで能無しだったという事もあるとはいえ、
 理想のお嬢様にできなかった君にも責任の一旦はある。勿論それは君だけじゃない。僕もだ。
 だけど君が約束を守れなかったのも事実だ。だからこそ、ちゃんと見るんだ」

「う…うぅ…おじょうさまぁ…またちゃんとおじょうさまをりっぱなしゅくじょにできませんでした。
 ゆっくりさせてあげられませんでした。さくやは、さくやはだめなじゅうしゃでずぅ…」
「駄目なんかじゃないさ。今回だって前回よりはまだ上手くやれてただろ?
 今まで犠牲になった“おじょうさま”のためにも諦めちゃ駄目だ」
「だんなさまぁ…」

さくやは何もできずに叫び続ける豚を前に涙を流している。



そう。僕が今までさくやに与えた“おじょうさま”は別に一匹というわけではない。
そもそも僕がさくやと、“おじょうさま”を飼う時に交わした約束、条件にもそんな事は書かれてない。

・おじょうさまの世話だけでなく、僕の世話も怠らない事。
・もしおじょうさまが相応しくない行動をとった時は、さくやが責任を持って躾ける。
・それができずに僕の注意や警告が十回を超えれば、不適合と判断し処分する。
・処分して約一ヵ月後、また新しいおじょうさまを迎え入れる。その後は上の通りに。

たったこれだけだ。が、それで十分だった。

まず一匹目は三日で目に余る行動が規定回数を超えたので殺した。
さくやは勿論泣きじゃくったが、次があると説得し何とか立ち直らせた。
二匹目のおじょうさまは三日半もった。が、結局死んだ。
さくやは泣きじゃくったが、また説得で立ち直った。

そうして次々と肉まんを与え、そのことごとくが死んでいった。
ちなみに今回は十一匹目だ。今度は六日間もった。
きっとさくやは僕が支える限り、決して諦めず何度だって挑むだろう。
僕はただ、それを応援するだけだ。





――――――――――


食事が終わったカラス達は、一匹残らず飛び去っていった。
残ったのは地面に広がった食べカスと肉汁とボロボロになったおべべだけ。

さくやはまだ、かつておじょうさまが居たであろう場所を見つめてしゃくりあげていた。
自分のせいでまたおじょうさまが死んでしまった。今度こそは、と思っていたのに…
いや、思っているだけなら毎回だ。ついてこないのは結果だけ。

なんで、どうして…そんな事を考えているさくやに、“だんなさま”が優しく語りかけた。

「さくや…ごめんな。僕ももう少し我慢強くなってやればとは思うんだけど。
 それでも君が役立たずだって、あれほど尽くしていた君があんな能無しに言われた事が許せなかった。
 何度もやってて言うようなことじゃないのは分かってるんだけど、さ」
「わかっております、だんなさま…」

そうだ。そんなことはわかっている。怒るときの理由は色々あったが、
いつだって旦那様は自分がおじょうさまに、無能だ役立たずだと言われた時にしか怒らなかった。

悪いのは旦那様でも、おじょうさまでもない。
おじょうさまの期待に答えれない自分が悪いのだ。
自分がちゃんとしてればおじょうさまもお怒りにならず、旦那様の不評も買うことは無いのに。

それでも、旦那様は応援してくれる。こんな勝手で駄目な自分に頑張れと言ってくれる。従者だと言ってくれる。
ならば精一杯努力しなければ。そのために旦那様は幾つものチャンスと一ヶ月の猶予をくださるのだから。

これからもさくやのする事は変わらない。
次のおじょうさまに仕える為に更に従者としての心構えを学び、
その間だけでも迷惑をかけた分旦那様だけに心から御奉仕するのだ。

だから、こんなところでうちひしがれている場合ではないのだ。こんなところで、こ・・ん・・な・・・

何度経験したからといって、目の前で大事な存在が永遠にゆっくりしてしまう事に慣れる訳が無い。
自分の心を必死に押さえつけようと目を潤ませるさくやを“だんなさま”は持ち上げ、抱きしめた。

「いいんだよ、さくや。そんな事まで我慢する必要は無いんだ」
「だ、だんなさま…!?」
「誰だって完璧にはなれやしない。僕は君にそんな事望んじゃいない。
 ただ自分の心に正直であってほしいだけなんだ。
 だから、泣きたい時はおもいっきり泣いていいんだよ。
 僕には君がどれだけ辛いかはわからないけど、受け止めてあげる事ぐらいはできるんだからさ」

それも旦那様の役目ってもんだろ?と笑う“だんなさま”に、
さくやは改めて『この方が私の旦那様でよかった』と思い、おもいっきり胸に頭をうずめて、泣いた。

「だんなさま……だんなさまぁ………うわあぁぁぁぁぁん!!!」

“だんなさま”は何も言わず、ただ優しくさくやの頭を撫でてくれた。





――――――――――


泣きじゃくるさくやの頭を優しく撫でながら、僕は―――ニヤリと笑った。

そうだ。これでいいんだ。そうでなくてはならない。
これでこそ、あんな肉まんの相手をわざわざする甲斐があるというものだ。


僕はさくやの全てが好きだ。
懸命に尽くしてくれるところも、少し口うるさいところも、
笑った顔も、嬉しそうな顔も、そして悲しそうな顔も。なにもかも。

僕は独占欲が深い男だ。できればさくやには僕だけを向いていてほしい。
でも、さくやはお嬢様が欲しいと言う。
当然僕は気に入らないが、さくやの頼みは聞いてあげたい。

が、僕らの間にあの醜い肉まんを入らせるつもりはない。
そのために僕が良い格好してればさくやに嫌われる事も無く
いつでもあの肉まんを排除できる、自分にとって都合のいい条件を作った。

これで短い期間で奴を消せる。
なにせ最低でも、タイムリミットは奴がさくやを十回馬鹿にするまでなのだから。
そこに関しては譲るつもりはない。あんな豚がさくやを罵るなどあってはならない事だ。
あのさくやが居る事のありがたみを少しも理解しない愚か者なら、それで十分だ。
後は僕の機嫌を損ねたときぐらいだろうか。それをしてしまうとマジで瞬殺なので控えてはいるが。

さくやは自分の勉強の成果が出ていると思っているようだが、なんの事はない。
奴らが処分されるまでの日時が延びているのは単に運と、僕のさじ加減によるものなだけだ。

十回という回数にも深い意味は無い。
ただなんとなく、五回程度で我慢の限界というのは人として器が小さいと思われるかも、と考えただけだ。


そして後はあの肉まんを処分するだけ。
これに関しては楽しい事など何もなかった。僕に豚を虐めて楽しむ趣味などない。

が、その後のさくやにハマッてしまった。
あの肉まんが死んでいくときの無力感と絶望感に満ちた表情。
そして奴が死んだ後に、普段からは考えられないほどに悲しむ姿を見るだけで興奮が収まらない。

実は当初、再び肉まんを買い与えるつもりはなかった。
だがその時のさくやの反応を見るのに病み付きになってしまったため
再び見たいが為の追加の処置であったが、以外にもさくやには心が広いと感謝されるし良い事尽くめだ。
まああんなに泣くほど想われている肉まんどもに嫉妬して辛く当たるのはご愛嬌というもの。
お陰でカラス達も、ここがたまにご馳走がもらえる場所だと覚えてしまったようだ。

代価はというと、月一でペットショップに置いてある問題ありな肉まんを安く買い叩くだけ。
入荷当初、ペット用の胴付きれみりゃは脂っこい気持ち悪さで人気が出ずほとんど売れなかった。
それに頭が悪すぎて卸す前に受けたせっかくの躾を忘れてしまう事も多いから、問題ありが沢山出る。
誰もすぐ調子に乗って言う事は聞かず、所構わず散らかし、屁をこく不細工で我侭な肉まんなど欲しがりはしない。

今では虐待用くらいしか需要が無く、売れずに育ちきって処分にも困ったバカが探せば割といるのだ。
店側も見世物同然のタダ飯喰らいを置いておくよりマシと捨て値で売るし、無駄がない。

後はあの耳障りな声や妙な行動、我侭を我慢すれば良いだけ。
それも、もしこちらの我慢の限界が来たなら簡単に切ることができる。
そりゃ時々は億劫になるが、さくやの色んな顔が見れるとなれば安いものだと思う。

そもそも彼女は自分と他のゆっくりとの違いがわかってないみたいだ。
なんせ彼女のような希少種とあのゆっくり一馬鹿な肉まんの頭の出来が同じだと信じているのだから。

だからこそ、ああも無駄な躾を続けれるのだろう。
そんなものあのどうしようもない豚以下の知能しか持たない肉まんに通じるはずがないのに。
自分が仕える者なのだから、自分と同等かそれ以上の知能を持っている筈とでも思っているのだろうか?

そんな事はありえない。彼女の理想と、現実は遠く離れすぎている。
実際にあらゆる面において特別なのは彼女の方であって、あの肉まんはその点においては最下層に位置する。
仕える価値など微塵もありはしない。いいところあの肉まん達ではおぜうさま(笑)が限界だろう。


別に彼女の変な習性も、無ければ無いでお互い上手くやっていけるのは事実だ。
しかし、あればあったで良いものを見ることができる。
彼女だってこの事に気付かなければそれなりに幸せにやっていけるだろう。
これからも僕らのこの関係は何も変わらない。変わる必要も無い。

もう一度言う。僕はさくやが大好きなのだ。
ただ、それを実感する方向性が捻じ曲がっているだけで。





――――――――――


しばらく経って泣き止んださくやに、僕はいつもの様に話し掛ける。
「さあ、さくや。もう帰ろうか。次のために勉強しないとな」
「…そうですわね。つぎこそはやってみせますわ!みててくださいませ、だんなさま!!」

ああ、見ているとも。まあ君の努力が報われる事は未来永劫無いけどね。

「そうだな。頑張れよ!
 …その前に晩御飯だな。お腹が空いて仕方ない」
「まあ、だんなさまったら。
 それならはやくかえりましょう?おてつだいいたしますわ」
「これからも頼りにしてるよ」
「・・・はい!おまかせくださいませ、だんなさま!
 さくやはきっとりっぱなじゅうしゃになってみせますわ!!」
「ああ。楽しみにしてるさ……」

僕の陰湿な愛情表現に付き合ってもらうんだしな。


僕に抱かれながら決意を新たにするさくやには見えないように、歪んだ笑みを浮かべて僕は家路を急いだ。










・あとがき

 通常種は嫌いです。それよりもゲスが嫌いです。でも胴付きれみりゃはもーっと嫌いです。引き千切りたい。
 というわけで、色々考えたけどやっぱゆっくりは完全に幸せになっちゃいけないよねっていうのが今回のテーマ。

 困った事にこういう話になるとどうしても人間が気持ち悪くなります。仕方ないね。
 あと、カラスの餌付けはダメ。絶対。

 と、言うわけで、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました!

                                         小五ロリあき




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感想

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  • あれなんだろう最後の方から目から汗が -- 2023-08-17 21:34:01
  • ↓×7ゆゆこは餅、ゆうかは蜂蜜、きめぇ丸は黒胡麻餡、もみじは紅葉饅頭、
    りぐるは青汁、さなえはメロンクリーム、かなこはドーナツ、すわこはタピオカ、
    びゃくれんは粥系、さとりはラズベリー系、こいしはメロンマカロン、
    もこうが紅芋餡、てんこがピーチジャム、ちるのがソーダフロート、
    だったはず -- 2023-02-26 09:52:02
  • ゆっくりが本当に居ればなぁ……笑 来世はゆっくりが居る世界へお願いいたします!神様! -- 2016-08-28 12:03:23
  • 胴付きれみりゃ本当に居たらゲスなら絶対潰すと思う。やっぱりどうつきさんはうざいね




    -- 2016-08-09 20:37:45
  • ミニれみりゃにすれば良いのに -- 2015-01-31 15:44:57
  • ゆっくりの中身ってSS書く人によってちょっとづつ変わってくるよね。
    まぁそこが面白いところというか、深みと言いますか…やっぱりゆっくりSSは最高だね!
    あと純粋なさくやちゃんを騙すってヒドスwでも仕方ないよね!
    あとれみりぁは死んでもいい。 -- 2014-10-18 22:05:23
  • お空の場合虐待するといろいろ終わる -- 2013-11-15 17:15:41

  • 1位 胴付きれみりゃのゲス だどぅ☆ やのうさつ☆ダンス(笑)
    や ぽーいするの!ぽーい!や人間を従者と思っているなどがイラつくとのこと。

    2位 でいぶ すぐに子を捨てる、子やつがいの魔理沙をこき使う、食べ物をふつうの5倍以上食う、
    自分がゆっくりすれば世界がゆっくりできると思っている、出会ってすぐに奴隷!あまあまもってこいぃぃぃ!という、
    自分の立場をわかってない奴が腹立つとのこと。一部では1位に選ばれているとか…

    3位ゲス魔理沙 悪知恵を働かせる、最強だと思っていて 自分が負けると「人間は卑怯な手を使ったからノーカウントなんだぜ」と言う、
    お家宣言を人間の家でやり、「ゆ?人間なんかがなに魔理沙様のゆっくりぷれいすに入っているんだぜ?でも
    魔理沙さまはうっちゅう!いち心が広いから あまあまをけんっじょう!したあとにさいっきょう!の魔理沙さまの奴隷にしてやるんだぜぇぇぇぇ! ありがたく思うんだぜ!」という、
    自分が助かるために仲間を渡す、でいぶと一緒にいることが多いので町に迷惑をかける ことがイラつくとか。

    虐待したいランキング
    -- 2013-09-23 14:04:54
  • ちぇんはチョコレート、みょんはホワイトチョコレートだが、
    さくやはプリン、めーりんはラー油もしくはピザまん
    れみりゃは肉まん、ふらんはあんまん、ぱちゅりーは生クリーム
    らんはいなり寿司で、中身は米でえーりんは薬、ゆかりは納豆
    ぬえはタルタルソース(だっけ?)、にとりは漬物に使う水
    お空は…いわれなくともわかるであろう 他はまだ未確認

    これは中身のことです -- 2013-09-23 13:48:30
  • れいむは粒餡、魔理沙はこしあん、 -- 2013-09-23 13:42:34
  • 基本から覚えよう -- 2013-09-23 13:41:19
  • さくやさまーん^^ -- 2013-02-25 16:08:24
  • いくらなんでもあんまりなあつかいだど・・・ -- 2012-10-03 07:17:05
  • 不細工なれみりゃはゆっくり死んでいってね! -- 2012-04-21 12:47:14
  • ばかなれみりゃを鳥葬……胸が熱くなるな…… -- 2012-01-17 00:43:22
  • 胴付きれみりゃのうざさは異常 -- 2011-12-31 21:23:10
  • ほとんど虐待じゃないですか。
    れみりゃは[ただおばか]と言うイメージがあったんだけどなー? -- 2011-12-28 16:01:11
  • ふらんの中身は餡子、めーりんは激辛のラー油饅かピザ饅だったはず

    -- 2011-09-13 22:14:53
  • ↓れみりゃは肉まんだった気がする -- 2011-09-01 10:17:28
  • ↓↓ぷっでぃんはれみりゃだった気がする
    -- 2011-08-28 22:04:02
最終更新:2009年11月26日 19:24
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