ふたば系ゆっくりいじめ 525 犬

犬 9KB


悲劇 理不尽 人間なし 初投稿です。宜しくお願いします。

土や緑も珍しくない、郊外の住宅地。
今日、空を見上げた人間は、揃ってこう言うだろう──いい天気だなあ。
そんな爽やかな日差しの下を、一匹の犬が行く。
首輪は付いていない。
身の回りの世話をしてくれる人間──飼い主もいない。
俗にいうところの「野良犬」だ。
その日暮らしの彼ではあるが、翻せばそれは飛びっきりの自由だ。
飼い犬には決して真似のできないその生活を、彼は謳歌している。
彼の表情が、
「きょうはなにをしようかな?」
そう、楽しげに微笑んでいるように見えるのも、あながち錯覚ではあるまい。
いい天気だし、ちょっと遠出をしてみよう。
普段は歩かないコースを辿って、おもむろに電柱にマーキング。
その辺の飼い犬がなにやら吠えているが、そんなもの気にもならない。
縄張り拡大と放出感に満足し、ふと顔を上げると、前から何かが跳ねてきた。


「ゆっゆっゆ~。きょうはいいおてんきだね!」
「たいようさんも、すごくゆっくちしてるよ!」
「ゆっくち! ゆっくち!」
ポテン、ポテンと歩を進めるのは、ゆっくりの家族。
先頭の親れいむに、子れいむと子まりさが続く。
「ぜっこうの『ぴくにっく』びよりだね!」
起きたらこの好天気。
おうちのある藪を飛び出し、急遽ピクニックに出てきたのだった。
「ゆゆーん。おちびちゃんたち、みちのはしっこのほうをあるいてね!」
「はしっこをゆっくちあるくよ!」
かねがね、子どもたちに「社会勉強」をさせなければいけないと思っていた。
ほとんどおうちの周りから出たことのない子たちだ。
この世界で生きていく上でのルールを──特に人間さんの怖さについて──教え込まなければ。
人間さんに殺され、先に逝ってしまった番のまりさのためにも、この子たちにはずっとずっとゆっくりしてもらいたい。
しんぐるまざーとその子どもだからといって、他のゆっくり達に舐められてはいけないのだ。
親れいむは使命感に燃えていた。
「ゆゆっ!? あそこにおやさいさんがいっぱいあるよ! むーちゃむーちゃしていい?」
「ゆっ! そこははたけさんだよ! にんげんさんたちのばしょだから、はいったらこわいこわいだよ!」
「ゆ? ゆーん、ゆっくちりかいしたよ……」
未練タラタラ、横目で畑を見ながらも、子ども達はどうにか納得してくれたらしい。
とにかく人間さんには逆らってはいけない。
それさえ守れば、自分たちはずっとゆっくり暮らしていけるのだ。
平日の午前中、静かな住宅街。
人間さんも、すぃーも、この時間帯のこの場所ではほとんど見かけない。
まさにピクニックには最適な日だった。
「もうすぐかりのばしょだよ! おちびちゃんもおおきくなったらごはんをとりにくるばしょだから、しっかりおぼえてね!」
「ゆっくちおぼえるよ!」
地域のゴミ集積場へと向かう一行の前に、大きな影が現れた。


目の前に人間の生首が転がっている。
大きいのが一つに、小さいのが二つ。
揃って呆けたように彼を見上げている。
おお、と野良犬は唸った。
野良犬仲間に聞いたことがある。たしか「ゆっくり」と言ったか……。
初めて見るその生き物に戦々恐々としていると、突然、小さい二匹が声を上げた。
「ゆっくちちていっちぇね!」
その甲高い声に彼がビクっとすると、今度は大きいゆっくりが叫んだ。


「いぬさんはゆっくりできないよおおお!!」
混乱する親れいむ。
最愛のまりさを殺した人間さんへの恐怖を教え込むばかり、他のことがまったくおろそかになっていた。
そうだ。
そういえば。
この世界には、人間さん以外にも恐ろしいことはたくさんあるのだ。
犬さんもその一つ。
しんぐるまざー友達のありすは、子どももろとも犬さんに食べられたと聞く。
自分自身が遭遇した事がなかったとはいえ、なぜ子どもたちにその恐ろしさだけでも教えておかなかったのか……。
いや、今ごろ後悔してもはじまらない。とにかくこの場から離れなければ。
「お、おちびちゃんたち、ゆっくりしないでにげるよ!」
その時、犬さんが「クゥン」と優しげに鼻を鳴らした。
その音に反応したらしい。
「ゆゆっ? のらいぬしゃん?」
「ゆゆ、いまのこえ、いぬしゃんもゆっくちしちぇるね!」
子どもたちはあろうことか、犬さんの側に寄っていく。
「どうしていぬさんにちかづくのおおお!?」
子どもたちは聞いていない。
犬さんに「フンフン」と顔を、鼻を近づけられ、喜んでいるようだ。
「ゆ~、くちゅぐっちゃいよお~」
「まりしゃも! まりしゃもふんふんしちぇえ~」
あれ、と親れいむは思った。
この犬さんは、ひょっとしてゆっくりしているのかな?
よくよく考えてみると、ゆっくりの中にも、ゆっくりしていない者などはザラにいる。
しんぐるまざー友達のれいむなどがそうだ。
「しんぐるまざー」であることを傘に着せ、いつも傍若無人にふるまっている。
同じれいむなのに、なんでああも自分とは違うのかと、いつも不思議に思っていた。
だから犬さんにもいろいろいるのかも知れない。
そんなことを考えていると、
「おれいにれいみゅが、ぴこぴこしちぇあげりゅね!」
子れいむは揉み上げをピコピコ上下させ、
「まりしゃはぴゅんぴゅんすりゅよ! ゆっくちみてね!」
子まりさはその場でピョンピョン跳ねた。
それを見た犬さんが、しっぽをフリフリさせる。
「ゆっ! いぬさんはゆっくりしてるね!」
親れいむは、とてもゆっくりした気持ちになった。


その時、犬の本能が閃いた。
犬という生き物は、動き回る物体がとにかく大好きだ。
それは飼い主とのフリスビー遊びや、ボール遊びを例に挙げるまでもあるまい。
野良犬である彼とて同じ事である。目の前で動いている小さいモノを目にして、体が動かないわけがない。
黒い帽子をかぶったゆっくりに向け、前足を一閃。
驚くほどあっけなく潰れる。
頭上からの一撃を受けたゆっくりは、「ゆ゛っ」と短くうめいて、そのまま動かなくなった。
あたりに、ゆっくりの中身──とろけるような餡子──の香りが漂う。
ところで、彼ら犬の大好きなものがもう一つある。
それは古今東西、甘いものだ。
甘い匂いの元に、彼は顔を近づけ……


「れいぶの、れいぶのかばいいおちびぢゃんがああああああ!」
親れいむは絶叫した。
何が起きた?
わかっている。目の前で我が子が潰されたのだ。
「素敵なお帽子」を体にめりこませ、平べったくなっている子まりさを見て、
「れいぶのおちびじゃんがつぶれじゃったあああああああ!!!」
親れいむは再び絶叫した。
「おねえちゃんがしんじゃっだあああああああ!!!」
遅れて子れいむも叫ぶ。
「おちびじゃん、しっがり! しっがりしでね! ぺーろぺーろ!!!」
死んでいるのはわかる。しかし親の悲しい本能か。我が子の痛みをやわらげようと、親れいむは子まりさの体
──すでに中身と区別が付かなくなっている──を舐めはじめたが、もちろん無駄な行為だ。
死んだゆっくりは元にはもどらない。
「どうじて、なおらないのおおおおお!?」
その時、大きな影が親れいむを覆った。
犬さんだ。犬さんが、自分と死んだ子まりさを見下ろしている。
「ぷ、ぷくー!! ぷくーだよ、いぬさん!!!!」
咄嗟に親れいむが頬を膨らませ威嚇するが、犬さんはそれを見ていない。
犬さんは子まりさだったものを見つめ、鼻を「クン」と鳴らした後、おもむろに舌を突き出した。
「ゆゆっ! いぬさん! ぺーろぺーろしてあげてね! いたいいたいをなおしてあげてね!」
混乱しているのか、他でもない野良犬さんが我が子を潰したことを忘れきっているのか。
親れいむはただ必死だった。
「ぺーろぺーろだよおちびちゃん! いぬさんもぺーろぺーろしてくれてるよ!」
しかし親れいむは勘ちがいしていた。
犬さんは決して「ぺーろぺーろ」しようとしたのではない。
ぺーろぺーろと、なめようとしていたのではなく……


彼は「それ」ガツガツと貪った。
甘い味と匂いが口の中に広がる。
初めてゆっくりに出会い、初めて食ったわけだが、これは久しく忘れていた快感だ。
気のいい人間から食べ物をもらえることは少なくないとはいえ、甘味はそうそう味わえるものではない。
大きいゆっくりが体当たりをしてくるのが邪魔くさいが、夢中でペロリと平らげた。


「じね! おちびじゃんをたべた、いぬざんはじねええええ!」
「おねえちゃんがたべられじゃっだあああああああ!!!」
なにがなんだかわからないが、親れいむとにかく体当たりを続ける。
怖い犬さんに出会ったら、それは実はゆっくりした犬さんで、そう思ったらおちびちゃんが潰されて、
あろうことか食べられてしまった。
「どおじでおちびじゃんをたべじゃうのおおおおお!!!!!!」
親れいむは、犬さんに体当たりを続ける。
まりさの忘れ形見だったのに!
素直で、とてもゆっくりしたいい子で……。
怒りと悲しみを込め、そのゆん生最大、渾身の体当たりを犬さんに見舞う。
「じね! ゆっぐりじねええええええ!」
その体に、犬さんの牙が食い込んだ。


もうそんなに腹は空いていない。
しかし彼は野良犬。こんな甘味に、次はいつめぐり合えるかはわからないのだ。
食べられる時にはしっかり食べるのが鉄則。
人間風に言うなら、さしずめ──据え膳食わぬはなんとやら、だ。
もし食べ切れなかったら、その時はその時。
いつものように……


食べられている。
親れいむの恐怖は最高潮に達した。
「いぬさん! やべてね! いだいよ、やべでね! ゆっ! ゆがあああああああ!!!!」
「おかあしゃんがいたがってるよ! やめちぇね! もうやめてあげちぇね!」
容赦なく突き立てられる鋭い牙。
「れいぶのおりぼん!!!!!」
まりさが褒めてくれた、きれいなおリボンが引きちぎられた。
「れいぶのきれいなおべべがああああああああああ!!!!!!!」
まりさが好きだといってくれた、自慢の瞳がえぐり出され、あっけなく潰された。
「れいぶのあんよさん! たべないでええええええええ!!!!!!!」
美ゆっくりだったまりさをも魅了した、その自慢の脚線美も切り裂かれた。
親れいむのすべてが。すべてが蹂躙されていく。
「おかあしゃんをたべないでえええええええ!!!!」
ああ、おちびちゃんが怖がっている。
どうしてこんなことになっているのだろう?
子れいむの声をどこか遠くに聞きながら、親れいむは考えていた。
今日はとてもいいお天気。。
家族みんなで、社会勉強を兼ねた楽しいピクニックだったのに。
何を間違えたのだろう?
しんぐるまざーとはいえ、どこよりもゆっくりした家庭を築いた自負があったのに。
「おかあしゃんが! おかあしゃんのからだがなくなっちゃったあああああ!!!!!」
ああ、おちびちゃん泣かないで。
薄れていく意識の中、親れいむは、番のまりさと子まりさのゆっくりとした顔を見た気がした。


公園の片隅、一匹の犬が土を掘っている。
彼のその口元と前足を汚す餡子に、だんだん土が混じっていく。
らんらんと輝く彼の目は、まるで特別な宝物を見つけた少年のものだ。
ほどなくして、掘り返された土の中から、かつては食べ物だった腐敗物や骨が姿を現す。
それを見た野良犬は、満足げに鼻を鳴らす。
かたわらでは、紅白の小さなゆっくりが、震えながら涙を流していた。

(了)



トップページに戻る
このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

すべてのコメントを見る
  • ゆっくりできるとても良いお話だったどぅー☆
    面白かったどぉー♪ -- 2015-03-30 19:06:00
  • 架空のものにマジレスしてんじゃねーよ糞餓鬼共 -- 2014-09-12 23:08:24
  • こまけぇこたぁいいんだよ! -- 2014-03-06 03:07:50
  • 熊はハチの巣を好んで食べるとか聞いたような…。
    甘いの好きなんじゃない? -- 2011-01-21 22:34:42
  • ↓確かに…熊とはぜんぜんわかりませんよねー
    -- 2010-11-26 05:05:32
  • ↓それもそうか。人間中心の考え方&間違った言い方だったね、すまぬ。
    動物と人間の食べ物の違いによる注意点とか解れば良いんだが…
    犬猫は多いけど、熊とかは殆ど無くて調べ難い… -- 2010-11-13 21:20:10
  • ↓揚げ足取るが人間が食べれなくて他の生き物が食べられるものもあるぞ
    人間と食べられるものが違うから動物の飼育は大変だ、ならわかるが -- 2010-11-12 19:24:51
  • 犬にチョコレートのちぇんは毒物だしなぁ。
    猫が好きなのは脂肪分なので生クリームとか大好き。
    動物は人間と違って食べれない物が有るから飼育は大変だよね -- 2010-10-13 21:48:16
  • 好きとか感じないとかえろいよー
    ここはかんそうかいたりするんだよー。おもしろかったよー -- 2010-09-14 02:33:57
  • うちの猫甘いもの好きだよ -- 2010-09-13 14:01:58
  • いぬさんは甘いもの大好きだよ。でもねこさんは甘み感じられないよ。

    家の犬と猫で実践してみたから間違いない。 -- 2010-08-12 03:19:46
  • 犬は甘味をあまり感じないってNHKでやってたよ。 -- 2010-07-09 05:20:40
  • チョコクリームのちぇんだったら永遠にゆっくりしてたかもしれないよ! -- 2010-06-25 02:42:05
  • 良い子のみんなは犬さんに餡子を食べさせちゃだめだよ。マジでな。 -- 2010-06-25 02:21:18
  • 犬は餡子を食べるとぶつぶつができるよ。犬さんが可哀想だよ -- 2010-06-18 11:55:22
最終更新:2009年11月26日 20:52
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。