ふたば系ゆっくりいじめ 568 共生する群れと草原のまりさ

共生する群れと草原のまりさ 31KB


自業自得 自滅 駆除 群れ ドスまりさ 現代 初投稿です。

初投稿です。
現代の農村が舞台です。独自設定有り。
無駄に賢いゆっくりがでてきます。虐待とは呼べません。自滅・・・?かな。








『共生する群れと草原のまりさ』


あるところに、ゆっくりしたゆっくりが暮らす理想のゆっくりプレイスがあった。
そこには優秀なドスを長とし、豊富な食べ物、快適な環境、ゲス等一匹もいない
長い時を重ねて繁栄を続ける群れがあるという。
そんな素敵なゆっくりプレイスを求めて、多くのゆっくりが群れに加えてもらおうと数多くやってくるのだ。

「ついに見つけたんだぜ。ここがあの噂のゆっくりプレイスなんだぜ!」

「さすがかわいいれいむのまりさだね!ここなら思いっきりゆっくりさせてもらえるんだね!」

「まりしゃあまあまたくしゃんたべてゆっくちしゅるよ!」

「れいみゅにもはやきゅあまあまもっちぇきちぇね!」

今日も親まりさ、親れいむ。子まりさ、子れいむの
お約束とでもいうべきスタンダードな家族がこの群れにやってきた。
その家族に、群れの一員であるありすが気付き、近寄ってくる。

「ゆっくりしていってね!!」

「「「「ゆっくりしていってね」」」」

「ありすたちの群れにようこそ。まりさ達はなんのごようがあってここにきたの?」

「ここならとってもゆっくりできるって噂を聞いてやってきたんだぜ!」

「はやく群れに入れてね!れいむたちは歩きっぱなしで疲れているんだよ!やさしくしないといけないんだよ!」

「ゆっくち!ゆっくち!」

「はやきゅあみゃあみゃをだしぇー!」

ゲス気質が発言の端々から見受けられるが、ありすは落ちついたものだった。

「ちょっとここでまってて。今ドスをよんでくるわ。」

数分後、通常のドスより更に一回り大きいドスまりさが一家の前に現れた。
体長は3mを超え、髪に結び付けられたたくさんのリボン
数々の苦難を潜り抜けてきたのであろう古びた大きな帽子は、風格さえ漂わせていた。
その横には側近のぱちゅりーと先ほどのありすも一緒だ。
ドスの威厳に呆気にとられたまりさ一家をよそに、ドスは語りかけはじめた。

「群れへの参加希望の家族だね。ドスたちの群れは掟をきちんと守ってくれるゆっくりなら、誰でも歓迎するよ。」

「まりさたちなら掟を守ることぐらい簡単なことなんだぜ!」

「かわいいれいむのかわいいおちびちゃんたちも、れいむのきょーいくでしっかりした子に育ってるから安心だよ!」

まりさ一家は掟を守る事なんて簡単だ。はやく群れに入れろとまくしたてる。
ドスは淡々と話を続ける。

「掟も色々とあるんだけどそんなに多くはないし難しくもないよ。掟を破ったらおしおきがあるけどね。」

「まず、群れに入るに当たって最初に約束してもらう掟があるよ。これを守ってもらえないなら

 群れへの参加はお断りさせてもらうからね。それだけ大切な約束だよ。」

まりさ一家は、どんな掟でも約束でもちゃんと守るよ!と意気揚々だ。
しかし、ドスの発したその「約束」はまりさ一家にとって驚愕すべきものだった。




全てのゆっくりプレイス、住居、森、山、川、草原、食料、ここにある全てのものは、全てにんげんさんの持ち物である。
全てのゆっくりはにんげんさんと協力して、ゆっくりプレイスの維持に努める。





まりさ一家はドスの言った言葉を理解できず、ぽかんと口を開けたまま固まってしまった。

ゆっくりプレイスがにんげんのもの??
ゆっくりできるおうちがにんげんのもの??
おいしいお花さんや虫さん、食べ物が勝手に生えてくる全ての場所がにんげんのもの??
いつもぜんぜんゆっくりしてなくて、ゆっくりに傍若無人な振舞いをするにんげんと協力??

ただでさえ少ない餡子脳が、ドスの言葉を理解するのには多少の時間が必要だった。

「ど・・・・どうしてそんなこと言うのぉおおおおおおおおおおおおおおお!??!!」

場を包んだ静寂を親まりさと親れいむの絶叫が切り裂く。

「ドスはなにをいってるんだぜ?!ゆっくりプレイスはゆっくりしたゆっくりのものなんだぜ?
 バカで弱くてまったくゆっくりしてないにんげんのものなんかじゃないんだぜ!!」

「そうだよ!なんでちっともゆっくりしてないじじぃやばばぁと一緒にゆっくりしないといけないの!?
 にんげんなんてやっつければいいんだよ!!ドスならできるでしょぉおおおおおお!!」

ドスは深い溜息をついて

「これは群れの掟の中でも一番大切な掟だよ。守れないゆっくりは群れには入れてあげられないんだよ。」

ドスのこの言葉に2匹は逆ギレした。

「そんな掟はぜんぜんゆっくりしてないんだぜ!なんで強くてかっこいいこのまりささまが
 そんな掟をまもらなきゃいけないんだぜ!!」

「そんなバカな掟なんか守ってるドスの群れもぜんぜんゆっくりしてないね!おおぶざまぶざま」

「いくんだぜ!れいむ!こんな群れこっちからおことわりなんだぜ!!」

「そうだね!こんなゆっくりしてない群れなんか、こっちからおことわりだよ!!」

「まりしゃをゆっくちしゃせてくれにゃいどしゅなんかちね!!」

「きゃわいいれいみゅのきゃわいさがわからにゃいどしゅなんてちね!!」

言うが早いか子まりさと子れいむを帽子のなかにいれ、一家はどこかへ行ってしまった。

「ふぅ。やっぱり今回も理解してくれないゆっくりだったね。」

「むきゅう・・・仕方無いわよドス。にんげんさんの本当の凄さがわかってないと
 この掟を理解するのは難しいわ・・・」

「あの親子、口の悪さからとかいはじゃない雰囲気があったわ。群れに向かえなくて正解よ。」

「せめて、どうしてそんな掟があるのか?って疑問を持って、話を最後まで聞いてくれれば
 多少は救いがあるんだけど・・・仕方無いね。」

この群れに参加を希望するゆっくりは後をたたなかった。
しかし、群れへの加入を許されるゆっくりはその1割以下。
ほとんどのゆっくりが、先ほどのまりさ一家のような反応を示すのだ。
ゆっくりはなぜか人間への警戒心が薄い。
全てにおいて人間を、ゆっくりよりも下等な存在と決め付けている。
何の根拠もないこの認識については
ゆっくりは人間の顔しか認識できず自分達より小さいと誤認してしまう。
ゆっくりを至上の価値観とするゆっくりにとって、ゆっくりしていない人間は下等な存在である。等など。
学者によっても意見の解れる所であり、結論は導き出されていない。

ゆっくりのなかで、人間とゆっくりとの、覆りようも無い彼我の力の違いを知っているのは
飼いゆっくりとして、厳しい教育を施されたゆっくり
人間の不興を買い、制裁されたゆっくり
虐待鬼意山との、素敵なひと時を過ごしたゆっくり
そしてこの群れのように、人間とのコミュニケーションによって
人間とゆっくりの力の違いを認識したもの達くらいなのだ。



まりさは怒り心頭だった。
長い道程を経て辿り着いた「理想のゆっくりプレイス」はまったくゆっくりしていなかった。
にんげんと協力?カマキリさんにだって余裕で勝てる、このまりささまがにんげん如きと!
あんな群れに入らなくたって、れいむとおちびちゃんたちと一緒にゆっくりすればいいんだ!
れいむも子ゆっくり達も同じ考えだった。
群れもあの群れだけじゃない。他にもあるはずだ。
他の群れに入れてもらえばいいんだ。そう思っていた。

しかし他の群れはどこにも見当たらなかった。
群れがあった形跡すらない。
道中、ゆっくりに会う事はあったが、この近くに群れは、あの奇妙な掟がある群れしかないとの事だった。
まりさ一家は群れを探す事をあきらめ、自分達のゆっくりプレイスを探す事にした。
ちょうど親子4人が住むのに良い具合の、木の洞をみつけるとそこに入り

「ここはまりさたちのゆっくりプレイスだよ!ゆっくりしていってね!!」

お家宣言。これでここはまりさたちのゆっくりプレイスに決定。

「むきゅ?!ここはぱちぇたちのゆっくりプレイスよ!」

「突然なんなの!?とんだいなかものね!早くここからでていきなさい!」

数分後、木の洞の外には、カスタードとクリームまみれのゆっくりだったものが複数存在した。
ゲスには迷いがない。なぜなら自分達が絶対正義という事を疑う事がないからだ。



次の朝、まりさは狩場を探しに周辺を見てまわった。
季節は春。穏やかな気候に生命の息吹が溢れる季節。
きのこやどんぐりがいっぱいありそうな山林。
秋になったらいっぱいむーしゃむーしゃできるだろう。
綺麗なお水が流れる小川。
夏の乾きもこの水をごーくごーくすれば癒せるだろう。
そして小高い丘に登ったまりさは眼下に広がる草原に目を奪われた。

「ゆわぁー・・・・!」

青々としたおいしそうな草が風を受けてたなびいている。
それが目の前にどこまでもどこまでも広がっているのだ。

「すごいんだぜ!これならごはんに困る事はないんだぜ。こんなすごいゆっくりプレイスを見つけたまりさは
 やっぱり選ばれた(笑)ゆっくりなんだぜ!!」

まりさは早速、手近にある草や虫など、ごはんをいっぱい帽子に詰め込んで帰路についた。



まりさが丘から草原を見渡し、その餡子脳にバラ色の未来を描いていた頃
群れのゆっくりたちはその草原の中で、山菜や野草を収穫していた。
手分けをして、大きすぎず小さすぎず、程よい大きさのわらびやぜんまいなどを、手際良く収穫していく
ゆっくりたちは、それぞれ人間にもらった袋を持っており
帽子のようなお飾りに収納スペースを持たないゆっくりであっても
袋のおかげで収穫の効率を上げる事に成功していた。

「みんなおつかれさまなんだねー。今日はこのくらいで終わりにしようねー。わかってねー。」

群れの幹部の一人であるちぇんが声をかけると、ゆっくりたちは収穫を止め
ちゃんのもとにあつまり、その日の収穫物を集め始めた。
その量は、群れのゆっくりが200前後と大所帯とはいえとても食べきれるものではない量であった。

「じゃあ手分けして、みんなでにんげんさんの村まではこぶよー。もうちょっとがんばろうねー。」

群れのゆっくりたちは手際よく山菜を分担して袋にいれ、村へと降りていった。

「おお。今日もたくさんもってきてくれたな!ありがとうよ。」

村の入り口ではひとりの農家の男がゆっくりたちを待っていた。
ゆっくりがもってきた大量の山菜を軽トラックに積みこみ

「ほい。何時も通りあく抜きをして乾燥させた山菜だ。もっていきな。」

男は笑顔で、ちゃんの頭を頭をわしわしと撫で、ひとつの袋を手渡した。
ちぇんはくすぐったそうにしながら

「いつもありがとうなんだねー。またもってくるからこれからもよろしくねー!」

人間への感謝の言葉を他のゆっくりたちも次々と口にし、山へと帰っていった。
男もゆっくりがみえなくなるまで手を振り続けていた。



まりさは家に帰ると、れいむに今日みてきた素晴らしいゆっくりプレイスの数々の事をを話続けた。

「さすがはかわいいれいむのまりさだよぉ。すてきなだんなさまといっしょでれいむはしあわせーだよぉ。」

「しゃしゅがまりしゃのおとうしゃんはしゅごいね!」

「むーちゃむーちゃちあわせー!」

一家はたくさんのごはんとたくさんのゆっくりプレイスにその餡子脳をバラ色に染め上げていた。
次の日からもまりさは草原や山林で、狩りに勤しんだ。
草原では、あの奇妙な掟の群れのゆっくりにも遭遇したがどういう理由か、にがい草ばかり採っている。

「ふん!やっぱりあの群れに入らなくて正解だったんだぜ!バカなゆっくりしかいないんだぜ!」

まりさは意気揚々と帽子をごはんでいっぱいにして帰路についた。



ある日、まりさが草原にいくと、あの奇妙な群れのゆっくりが草原から消えていた。
いるのはまりさ一家とおなじように、群れに属さないゆっくりばかりのようだ。
奇妙な奴らがいなくなって清々したんだぜ!などと思っていたまりさの目に
大きな音を響かせながら、人間の乗り物が草原にやってきた。
その乗り物は草原に入ると、根こそぎ草を刈り取りはじめた。

「まりささまのゆっくりプレイスにやってきて無断でおいしい草さんを刈るなんて
 とんでもないにんげんなのぜ!たっぷりせいっさい!してやるのぜ!」

まりさはその乗り物に向かって走り出した。
どうやら周辺のゆっくりもまりさとおなじ考えらしく
乗り物のまわりにはゆっくりが集まり始めていた。

「草さんを刈り取るにんげんは死ねぇ!」

「せいっさいしてやるよ!」

まりさがその乗り物の近くに来た時、すでに他のゆっくりが乗り物に体当たりをしようとしていた。
まりささまがせいっさいする必要はなかったようだぜ。などと、ぼこぼこにされたにんげんと乗り物を
餡子脳に思い描いていたまりさの目に映ったのは、信じられない光景だった。

バツン。ブチィ!ズガガガガガ。ビチャビチャビチャ。

体当たりをしたゆっくりはその乗り物に切り裂かれ押しつぶされていった。
その乗り物はトラクターとそれに連結された草刈機だった。
草原の草は元々人間が家畜の餌用に育てていたもの。
山菜の収穫も粗方終わった今、草の刈り取りが始まったのだ。
その巨大な農業用機械に、人間でさえ不用意に突っ込んだりしようものなら、命を容易く落とすだろう。
いわんやゆっくりもである。
草刈機の刃は一瞬にして、ゆっくりを切断し、粉切れにしていった。
飛び掛る寸前だったゆっくり達には、刈り取られた草の破片がかなりのスピードで、その饅頭肌に突き刺さる。

「いたいぃいいいいいいいいい!!ぎゅべら」

「れいむのきれいなおめめがぁああああああああ!!」

「らんしゃまぁあああああああああああああ!!」

「だれかぁあああああ!ありすのとかいはなペニペニに刺さった草を抜いてぇええええええ!!」

一瞬にしてゆっくり達は地獄へと叩き落とされた。
トラクターはゆっくりなど存在しなかったように速度を落とす事なく、草を狩り続ける。

まりさは惨状を目の当たりにし、全速力で逃げた。
にんげんに負けるとは思っていないが、あの乗り物はやばい。
それが餡子脳が導きだした結論だった。
1週間後草原の草は人間に残らず刈り取られていた。



「ゆぅ・・・雨さんばっかりで狩りにいけないんだぜ・・・」

季節は梅雨へと移ろいでいた。
おいしい草も全て刈り取られ、食料事情が悪化したところにはじまった雨。
いつまでも降り続く雨で、満足に狩りにも行けず
まりさ一家は空腹に耐えていた。

「どうしてごはんさんをとってきてくれないの!まりさ!」

「うわぁーんおにゃかちゅいたよぅー!」

「そんな事いっても、この雨のなか狩りになんていったら、体が溶けてゆっくりできなくなっちゃうんだぜ!」

「その前に、おちびちゃんがゆっくりできなくなっちゃうでしょぉおおお!馬鹿なの!?死ぬの!?」

この一家は梅雨への備えを怠っていた。近場の草原の存在を過信していたのも痛手だった。
まりさが雨の合間に狩りにでかけるが、満足の行くほどのごはんはみつけられない。
雨が降り続ければじっと空腹に耐えるしかないのだ。
しかし、親ゆっくりならまだしも子ゆっくりの体力で、この空腹に耐えることは難しかった。

「ゆっゆっゆっ・・・」

最近では空腹ですっかりおとなしくなっていた子れいむの様子が急変した。

「ゆゆっ!?おちびちゃんしっかりしてね!おかあさんがぺーろぺーろしてあげるからね!」

「って・・・・どうしておちびちゃんのきれいなお肌が、青や緑色になっているのぉおおおおおおおお!?」

栄養失調による体力低下で、免疫力のおちた子れいむの肌にはカビが生え始めていた。

「おちびちゃんしっかりするんだぜぇえええええ!まりさのおちびちゃんなら病気なんかに負けちゃダメなんだぜ!」

「うわーーーーん!れいみゅううちっかりちてー!!」

子れいむは2日後「もっとゆっくりしたかった」と呟きこの世を去った。



群れのゆっくり達は、梅雨の間、巣の中でゆっくりとした時間を過ごしていた。

「むーしゃむしゃしあわせー!」

春の間に、備蓄していた食糧に加え、人間から報酬としてうけとっていた乾燥させた山菜は
保存食として最適だった。巣の中にはビニール袋など人間から譲り受けた防水に役立つアイテムさえあった。

ドスは降りしきる雨の中これからの事を考えていた。
それぞれの家族には十分な備蓄食料を持たせてある。梅雨が例年通りなら問題ないだろう。
だけど梅雨が長引けば、食料は群れの備蓄を放出すれば問題ないが
抵抗力のない子ゆっくりが病気になってしまうかもしれない。

「早く、梅雨さんが終わらないかなぁ。そして夏になったら・・・」

降りしきる雨の中、ドスは夏以降の群れの運営方針を、巣のなかでゆっくりと思い巡らせていた。



夏。
まりさ一家は、小川で喉の渇きを潤していた。
梅雨によって大事なおちびちゃんを一人失ったが
生き残った子まりさだけでもゆっくりとした立派な子に育てよう。
両親はそう心に誓っていた。
涼しい小川で、思い思いにゆっくりしていると、どこからか声がする。

「えー。皆さん暑い中お疲れ様です。それでは用水路の整備を始めます。」

かなりの数の人間が、小川の中に入り草を刈り取ったり、石を動かしたりしている。
川から田畑への農業用水を取り入れる用水路は
こうやって定期的に草や石を取り除く事で、効率よく水を田畑に引き込むことができるのだ。

まりさ一家は物陰からその様子を見ていた。
にんげんはなにをやっているのだろう?まったくゆっくりしていない。
なにより、まりささまたちのゆっくりプレイスに、無断で入ってくるなんて許せない!

「おい!くそにんげん!まりささまたちのゆっくりプレイスから早く出て行くんだぜ!」

「まりさは強いんだよ!にんげんなんてイチコロなんだからね!」

「ぷきゅぅううううううううううう!!」

親2匹と子1匹。人間に対して精一杯の威嚇行動を行っている。
これでにんげんが恐れをなして逃げ出すと思っているのだから、餡子脳というのは本当に救いようが無い。
まりさ一家の愚かな行動を、人間達は少々驚きを感じながらみつめていた。

「あれ?ゆっくり??」

「え?今あいつらは村の畑で、農作業の手伝いをしてるんじゃなかったか?」

「ああ。野菜についた虫や雑草を取り除く作業を頑張ってやってるよ。」

「ってことはこいつら群れのゆっくりじゃないのか?」

「はぐれゆっくりってとこだろうなぁ。口汚いし。」

人間達が会話を続けている最中も、まりさ一家は、でていけだの死ねだの五月蝿い事このうえない。

「あー。とりあえず作業の邪魔だな。」

「どこか適当に放り投げておけよ。」

「めんどくさいなぁ・・・」

騒ぎたてるまりさ一家の側に一人の男が近づいていくと、なんの躊躇いもなく子まりさを掴み上げた。

「じじぃ!なにをしてるんだぜ!まりささまのかわいいおちびちゃんを早くはなすんだぜ!!」

「おちびちゃんんん!!?じじぃはゆっくりしないでおちびちゃんを離して死ねぇええええええ!!」

「うぇええええん。きょわいよぉおおお。」

男の足元で、ぽいんぽいんと無駄な体当たりを繰り返す親ゆっくり。
男はそれを全く無視して

「ほらよっと!」

子まりさを、少し離れた藪の中に投げ込んだ。

「ゆぅうう?!おしょらをとんでりゅみたぃいいい・・・!ゆべぇ!」

お決まりの「お空を飛んでるみたい」を叫びながら子まりさは藪のなかに投げ込まれてしまった。

「「おちびちゃんがあああああああああああ!?」

大切な子まりさが人間に投げ飛ばされた事に、驚きの声をあげる親ゆっくり。

「はいはい。お前達も作業の邪魔ですからねー。」

男はそういうと、まりさとれいむを、子まりさが飛んでいった藪にめがけて思いっきり蹴り上げた。

「ゆぶぅううううううううっ!?」
「ゆうがぁあああああああああああっ!!?」

親子3人、仲良く藪の中に叩き込まれてしまった。



「ゆ・・・ゆぅうう。!?れいむ?おちびちゃん?!」
まりさが気付いた時、すでに空は夕焼けに染まっていた。
どうやら気絶してしまっていたらしい。

「ゆぐぐ・・・痛いんだぜ・・・れいむはどこなんだぜ?」

れいむは藪の中に頭を突っ込んだ姿勢で気絶していた。

「れいむ?!大丈夫なんだぜ!!?ゆっくり、ゆっくりしていってね!!」

「ゆう・・ううん。まりさ?ゆぅう・・・痛いよぅ」

藪の中に蹴り込まれたまりさとれいむは、体中擦り傷だらけでずーりずーりと這いずるのがやっとの状態だった。

「おちびちゃんの姿が見えないんだぜ・・・・おちびちゃーん!どこにいるんだぜー?」

「かわいいれいむのおちびちゃんー!ゆっくりしないではやく出てきてねー?」

我が子を探す親ゆっくりの目の前に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。
子まりさは、藪の鋭く尖った枝にあんよから頭まで串刺しにされた状態で、息絶えていた。

「「まりさとれいむのかわいいおちびちゃんがなんで死んじゃってるのぉおおおおおおおおお!?」」

夕焼け空に親ゆっくりの慟哭だけが響いていた。



実りの秋。
人間もゆっくり達もその恵みを享受しようと野山を駆け巡る。
子ゆっくりがいなくなった今、まりさとれいむは二人揃って、冬篭りに備え狩りに勤しんでいる。
さすがにこの時期に子ゆっくりを作る事は、冬篭りの失敗に繋がる事を、二人は理解していた。
なにより、自分達のゆっくりプレイスに、いつでもどこでも人間が現れる事も
二人に子作りを断念させた大きな要因だった。
子ゆっくりが殺されたあの日以来、二人は人間と極力接触しないようにしている。
にんげんはちっともゆっくりしていない。
だが、にんげんの恐ろしさを、この二匹もようやく理解し始めていた。

おうちにしていた洞のある木は、狩りにでかけている最中
人間達に、周りの木々と共に切り倒してしまった。
きのこがいっぱい生えている森の中では、あの奇妙な群れのゆっくりが人間と一緒に
きのこ狩りに勤しんでいた。
こっそりとゆっくりたちの中に紛れ込んできのこを取ろうとしても
すぐに人間につまみだされてしまう。
どんぐりが実る山林も、人間達によって木ごときりたおされ
倒れた木の枝についたどんぐりは、奇妙な群れのゆっくりたちが丁寧に摘み取り
人間達に差し出していた。

ここに来た時は、家族でゆっくりできると思っていたのに
子は失い、住処は奪われ、ごはんも満足に取る事ができない。
まりさ達は、草原の丘の麓に穴を掘りそこを新しい住処にしていた。
草原に生えているあまりおいしくない枯れ草を、主食として生きながらえていた。
草原を吹く風が冷たくなってきている。もうすぐ冬がやってくる。
おいしくない枯れ草とはいえ、冬篭りのために必要な量はなんとか確保できそうだ。
二人は巣の中で、
次の春になったらたくさんあかちゃんをつくってゆっくりしよう。
おいしいものをいっぱい食べよう。
巣の中で希望に満ちた春を思い描いていた。



雪が当たり一面を白く塗り替えていく。
まだ見ぬ春を夢見てゆっくり達は巣の中で、春を待ち続けた。



冬も終わりを迎えようとしていた。
風に春の予感を感じさせるものの、まだ肌寒い時期である。
群れのゆっくりたちは、通常はドスの住居兼集会所である
大きな洞穴の中で越冬の最中であった。
ドスと200を超えるゆっくりたちが思い思いに春を待ちゆっくりしていた。
越冬も終盤とも言えるこの時期にあっても、まだ貯蔵した食料は十二分に残っている。
この事からも、この群れの越冬対策の優秀さが伺える。

そこへ一人の男が尋ねてきた。
年は還暦間近ではあるものの、山野を歩く足並みは精強そのものだ。

「お邪魔するよ。ドスはいるかい?」

「ゆゆっ!にんげんさんいらっしゃい!ゆっくりしていってね!!」

「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」

ドスの声にあわせて群れのゆっくりが男に挨拶を返す。

「はい。ゆっくりゆっくり。」

ドスと側近達が男の前に歩みでて、人間に軽く会釈すると
男はよっこいしょと、ドスとゆっくり達の前に腰を下ろした。

「にんげんさんが今年の「やくいんさん」なんだね。まだ寒いのにわざわざありがとう!やくいんさん。」

ドスは更に男に頭を下げ礼を言った。

「まあ役員っていっても、村のなかで順番がまわってきただけさね。
 こりゃ俺達とお前さん達との約束だからな。俺の祖父さんの頃から続く約束だ。お互いしっかり約束は守らなきゃな。」

「やくいんさん、今年ももうそんな時期になったってことだね?」

「ああ。そうだ。日時は1週間後だ。お前さん達はいつもどおりやってくれればいい。
 今年はちと多いか?200くらいいるのかい?」

「ドスをいれて235のゆっくりがいるよ。去年より20くらいおおいかな。」

「そうか。まあ多すぎず少なすぎず、うまく越冬もできそうだってとこだな。」

「うん!そうだね。これもにんげんさんたちのおかげだよ!ゆっくりありがとう!!」

「「「「ゆっくりありがとう!!」」」」

「いやいや。お前さん達の努力の成果だよ。じゃあ1週間後またくるからな。
 しっかりと群れのゆっくり達にも話を・・・特に新参とこどもたちにはちゃんと教えておけよ?」

「わかったよ、やくいんさん!1週間後にまたあおうね!!」


男が立ち去った後。
ドスは全てのゆっくり達を前に語りはじめた。

「みんなゆっくりよく聞いてねね!いまからいうことは絶対に忘れちゃいけないことだよ!
 まえからずっと掟としてみんなにいってきたけど
 それが正しいことだっていうのを、今度にんげんさんたちが教えてくれるよ。」

「これはドスやみんなのおかあさんの、おかあさんの、そのまたおかあさんの・・・
 ずーっとずーっとむかしからの、むれの掟だよ!!ぜったいにわすれちゃいけないよ!!」

「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」」

期日までの7日間。ドスは群れに、大人はこどもに、古参は新参に。
なんどもおなじことを繰り返し語り続けていた。
俗にいう餡子脳。それに絶対に刻み込むために必要な事なのだ。



「よし。ここでいいぞ。ここなら一望できるし安全だ。」

1週間後。男はゆっくり達と小高い丘の上に立っていた。
眼下には、ススキをはじめとする枯れ草が風にたなびく草原が広がっていた。
ドスをはじめ群れの全てのゆっくりが、ここに集まっている。
まだまだ風も冷たく、ぐずる子ゆっくりもいるようだが
親ゆっくりが必死になだめている。
これから起こる事。
それを愛するわが子にもしっかりとみせておくために。

「はじまったな」

男がそういうとゆっくり達も一斉に草原に目をやった。
草原の端のほうから白い煙があがっている。
煙の下からちろちろと赤い炎も見え隠れしている。

「いいか。これが「野焼き」だ。よく見ておくんだぞ。」

野焼き。
地方によっては火入れとも呼ばれる。
1年に一度、春先に草原の枯れ草を焼却し、春の新芽がしっかりと生えてくるように
草原を整備するのが目的だ。
これを行わないと草原は荒れ、野草などの収穫量も落ちる。
最終的には草原は、鬱蒼とした森林へと姿を代えてしまうのだ。
豊かな恵みを維持するために一年に一度の野焼きは必要不可欠なのだ。

端から上がった炎は少しづつその勢いを増し草原を覆いはじめた。
人間からみてもなかなかに壮大な眺めである。
数百ヘクタールという広大な草原が火に覆われ燃えていくのだ。

ドスや昨年の野焼きを見たことがあるゆっくりたちは
じっとその様子を見つめていた。
新参や子ゆっくりはただ呆然とその光景を眺めることしかできない。
話で聞くのと、実際に目の当たりにするのとでは訳が違う。
火の勢いに恐ろしーしーを漏らす子ゆっくりも多数いる。
しかし、眼をそらす事は、ドスによって禁じられている。
草原を燃やしつくす炎の恐ろしさ。
それを実行する人間の力。
そして人間の力によって、ゆっくりプレイスが管理維持されているということを
しっかりとその眼に焼き付ける必要があるのだ。



火が順調に草原に燃え広がる頃。
燃える草原の中から、ゆっくり達の悲鳴が聞こえてきた。

「あつぃいいいいいいいいいいいい!!どうして草さんがもえてるんだぜぇえええええ??!」

「なんだかポカポカしてきたよ。やっと春さんが来たんだね!!
 れいむはしんぐるまざーだから春さんも早めに来てくれたんだね!!遅いくらいだよ!
 遅すぎておちびちゃんだけじゃお腹いっぱいにならなっかったよ。ゆゆゆ!・・・・あついぃいいいいいいいいいいいいいい!!
 どうしてかわいいれいむのおりぼんさんが燃えてるのぉおおおおお!!?」

「ありすのとかいはなおうちがどうして燃えてるのぉおおおおおおおおおおお!!?
 ま・・・まりさはどこ!?おちびちゃんは・・・?」

「おかぁあしゃあああああああん!どこなのぉおおおおおおかわいいまりしゃを助けてねぇえええええ!」

各々、草原の中の巣で越冬をしていたゆっくりにとって
まさに降って沸いたのような大惨事であった。
ゆっくりの体に火が付き、ゆっくりが暴れ周り、それがまた周辺の枯れ草に飛び火する。
その火がまたゆっくりに飛び火する。
ゆっくりにとって阿鼻叫喚の灼熱地獄がそこにはあった。
成体・子・種類、一切の区別無くゆっくりは燃えあがり、黒い炭へとかわっていく。



まりさ一家の巣の近くにも火の手はせまってきた。

「ゆぅぅん?なんだかあったかいんだぜ?春さんが来たのかだぜ?」

まだ寝ぼけ眼のまりさであったが、外から聞こえてくるゆっくり達の悲鳴に
なにか恐ろしい事が起きている事にきづいた。

「ゆっ!?れいむ!れいむ起きるんだぜ!なんだか外でゆっくりできない事がおきてるみたいなんだぜ!!」

「ゆーぅーん。れいむまだ眠たいよ。まだ春さんには早いでしょう?ゆっくりしてればいいんだよ。
 ゆゆ?なんだかあったかいね?もう春さんが来たの?まりさ?」

「外にでてみないとわからないんだぜ・・・でもなにかとても嫌な予感がするんだぜ・・・」

「なんだか外が騒がしいね。結界さんを外して外の様子を・・・ゆゆっ!」

草原を覆いつくす炎は、ついにまりさたちの巣の入り口に施してある結界
 ・・・燃えやすい木の枝や枯れ草で作られた簡易バリケードにも燃え広がっていた。

「「なんで結界さんが燃えてるのぉおおおおおおおおお!?」」

炎は容赦なく燃え広がっていく。同時にその熱量が巣の中に充満し、二人を襲った。

「ゆがぁああああああ。熱いぃいいいいいいいいい!!」

「まりさぁあああああ!早くなんとかしてよぉおおおおおお。」

このままでは二人ともゆっくりと焼饅頭になるだけだ。
外になんとかしてでなければ!
まりさはありったけの勇気を振り絞って、結界に体当たりをして活路を見出そうとする。

「ゆがぁああああぁあああ!結界さん早くそこをどくんだぜえええええ!!ゆぎゃああああああ熱いぃいいいいい!!」

まりさの渾身の体当たりは、燃えて脆くなっていた結界をあっさりと吹き飛ばした。
しかし結界から巻き上がった火の粉が体に燃え移り、耐え難い熱さに絶叫するまりさ。

「まりさのすてきなおぼうしさんがぁあああああああ!」

火の手は、ゆっくりにとって大切なお飾りにも燃え移る。

「れいむは今のうちににげるよ!お飾りがもえてるまりさはそこでゆっくり死んでね!」

「どうしてそんなこというのぉおおおおおおおお!?」

あっさりと番を見限り一人だけで逃げようとするれいむ。
しかし炎はそんなれいむに罰を与えるかのように襲い掛かる。
燃え盛るススキの束がれいむの頭上に倒れ掛かってきたのだ。

「ゆぎゃわぁあああああ熱いぃいいいいいい!!まりさぁああああたすけてえええええええ!!」
「れ、れいむぅううう!?」

勢いをました炎はれいむをあっというまに包み込み、その断末魔さえも、燃え盛る炎の中に消えていく。
転がりまわり、なんとか体と帽子についた炎をかき消したまりさではあったが
周囲を炎の壁にはさまれ、帽子も天辺から半分以上燃えてしまい、絶望と迫り来る死にただただ恐怖するばかりであった。
燃え尽きただの炭クズになってしまった番を前に、涙を流すだけのまりさ。
ここでまりさもれいむみたいに燃えて死んでしまうのだと、あきらめかけたその時。
れいむに倒れ掛かったススキがあった場所が、燃え尽き炭だけになっているではないか。
その後ろも炎が散見されるものの、ぎりぎりゆっくり一匹が通れるだけの
スペースができあがっている。

まりさは走った。
炎が迫ってないとはいえ、足元の灰のなかではまだ小さな火がくすぶり、まりさのあんよをこがす。
降りかかる火の粉がその饅頭肌に無数の火傷をつくる。
ただ炎から逃れるために、ガムシャラに走り続けるまりさ。
炎の塊が、まりさの右目にふり落ち、目玉はその熱量で爆ぜた。
いつもであれば耐え難い苦痛も、炎の恐怖の前にかき消される。
木の枝が、石が、急勾配の上り坂が、下り坂が、まりさの体を傷つける。
それでもまりさは走り続けた。



炎から逃れ、小高い丘にまりさはたどり着いていた。
しかし、体のいたるところが焼け爛れ、傷からはあんこが漏れ出し
あんよは這いずるのがやっとなほどに焼け焦げていた。
炎からは逃れられたものの、明らかに致命傷である。
しかしあの燃え盛る炎からの脱出はまりさの心を安堵させた。

「ドスー!こっちに大怪我をしているまりさがいるよー!!」

ゆっくりの声が聞こえる。
火傷と極度の疲労でよくききとれない。

「とりあえずこっちへ運んで!ぱちゅりーは手当ての準備を!」
「むきゅ!わかったわ!」

大勢のゆっくりたちがまりさを丘の頂上まで運び上げる。
治療のために、群れのぱちゅりーたちがまりさを取り囲む。

「むきゅう・・・ドス・・・このまりさはもう・・・」

「助からないの?」

「これだけの火傷に加えて、あんこさんもかなりの量がでてしまっているわ。
 人間さんにもらったオレンジジュースをかけても回復しない・・・
 痛みを和らげる効果はあるけれど・・・そこまでよ。」

「そう・・・・」

まりさはオレンジジュースのおかげで、痛みが少し和らいでいた。
しかし全身を包む脱力感が自分の命がもう長くない事を悟らせていた。

「どうして・・・・
 どうしてまりさだけが・・・・こんな目に・・・・・
 ドス達はゆっくりしているのに・・・・どうして・・・・」

まりさは一つになった眼から大粒の涙をながしながら、絶望を口にする。
そんなまりさにドスは語りかける。

「それはね・・・まりさ達がにんげんさんと仲良くしてこなかったからだよ」

「う・・・嘘なんだぜ・・・にんげんなんかと一緒にいたって仲良く・・・できるわけないんだぜ」

ドスは大きく顔を横に振った。

「違うんだよ。まりさ。ここのゆっくりプレイスはね。ゆっくりがここに来た時よりも
 ずーっとずーっと昔から、理想のゆっくりプレイスにするために
 にんげんさん達が努力して作りあげてきたんだよ。」

「・・・・・・・」

「まりさ。見えるかな?この下の草原が。」

春に青々とおいしい草を茂らせ、これ以上はないと思えたゆっくりプレイスだった草原は
炎が燃え盛り、燃え尽きた枯れ草は炭色になって草原を覆い尽くしていた。

「ど・・・・どう・・・してこんな・・・ことを」

「これは野焼きっていってね。春さんが来る前に枯れ草さんを燃やしてしまって灰にするんだよ。」

「そして春になれば灰を栄養にして、またおいしい草さんが一杯はえてくるんだよ。」

「春になれば群れのみんなで山菜取りのお手伝いをするんだよ。草原も草原に生えてくるものも
 全てにんげんさんの持ち物だからね。ゆっくりはお手伝いをしてはじめて報酬を受け取れるんだよ。」

「・・・・・・うそ」

「嘘じゃないよ。それに草原だけじゃないよ。山や川もにんげんさんが、しっかり手入れをしてくれるおかげで
 おいしい食べ物がいっぱい生えてくるんだよ。」

「いらなくなった木や雑草を刈り取ったり
 川の水を畑に流したりしておいしいお野菜さんをいっぱい作るんだよ。」

「群れのゆっくりはにんげんさんと、いつも仲良く一緒にお仕事をしてるんだよ。」

「・・・・・・・・・」

まりさは何も言えなかった。ドスの言う事は素直には信じられない。
だけど・・・目の前に広がる光景・・・
どこまでもどこまでも広がる草原を、人間が焼き尽くしていく。
その圧倒的な炎の力。そしてそれを操る人間達の力。
目の前に広がる覆り様のない現実。
それを死の間際にまざまざとみせつけられて、ようやく人間とゆっくりの力の違いを理解する事ができた。

「まりさは・・・・・どう・・・して・・・・・・・」

まりさは息を引き取った。
最後に何を思ったのだろうか。
人間との力の違いを知らなかった己を呪ったのか。
理不尽な世の中に憤りを感じて黄泉へと旅立ったのか。
それはだれにもわからない。

「ドス・・・」

心配そうに側近のぱちゅりーが声をかける

「残念だけど、これが現実なんだよ。ゆっくりだけの楽園なんて決して存在しないんだよ。」

「にんげんさん。動物さん。昆虫さん。ゆっくり。それぞれ生き方は違うけれど
 一緒にゆっくりできる方法を考えずに生きていけるほど、甘くはないんだよ。」

「自分勝手に生きようとすれば、その時はゆっくりできるかもしれない。
 でも最後に、そのツケを払わされるのは自分なんだよ・・・この草原のまりさみたいにね。」



村の役員である男は一部始終をじっとみつめていた。
やはりこのドスは賢い。そしてこの群れのゆっくりたちも
ドスがいるかぎり人間に害を為すようなことはしないだろう。
自分の祖父さん達の世代は、本当に良い掟を作ってくれた。
ゆっくりを生かすつつ、人間は利を得る。
簡単なようでこれを実行に移すのは至難の業だ。
だが今までこうやってうまくやってこれたのは、祖父さん達の努力と
このゆっくりたちの先祖の努力の賜物だろう。
両者共に尊敬に値する。

しかし、群れのゆっくり達はきづいているのだろうか?
この賢いドスは、薄々感づいてはいるとは思うが。
群れ以外のゆっくりが、可能な限り草原で越冬する事を選択し
野焼きによって春になる前に一網打尽にできるよう
人間達が行動していることに。
群れに属さないゆっくりが、この草原以外で越冬できないようにするために
山や川、雑木林など、時期をあわせて刈り入れなどの農作業を行い
群れ以外のゆっくりの行動範囲をこの草原に囲い込むようにしていることに。

管理された群れは、すっきり制限などの掟によっていつも一定量に保たれている。
しかし、人間にとって群れ以外のゆっくりは不要だ。
ただ漠然と生きているだけのやつらに、なんの対処も施さなければ
増えるだけ増えて、この村の山野を荒地にかえてしまうだろう。

この国で人間の所有物ではない土地など存在しない。
1?たりとて存在しない。
個人の所有でなければ、国や市町村の共有地として登録されている。
人の出入りが疎らな秘境と呼ばれる場所でさえ例外ではない。

この国には、最初から「ゆっくりだけのゆっくりプレイス」など存在しないのだ。


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感想

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  • 面白かった。ちゃんとした知恵は生きていくのに必須だね。 -- 2012-03-26 00:40:55
  • 面白かったけど、ドスが代替わりするときは注意が必要だな。 -- 2012-01-02 15:12:51
  • 素晴らしい! -- 2011-08-09 18:03:09
  • 良い作品だ。他の生き物との共生を学んだゆっくりの将来は明るいな。
    自分の事しか考えないゲス共はざまぁww

    まぁこの方法が上手く行くのは、管理し易い島国ならではだろうけどもね。
    大陸とかだと、他の地域からわんさか来るし、人間が居ない場所とかあるしなぁ。 -- 2010-10-16 20:43:42
  • このSSはゆっくり達にとっての1つの理想郷だな
    人間と友好的な関係を結べればゆっくりできるのにゲス共はわざわざ滅亡するんだから馬鹿だね -- 2010-08-09 23:50:50
  • 人ゆ共生がずっと続くといいなぁ。 -- 2010-07-19 06:53:23
  • 面白かった -- 2010-06-08 22:06:22
  • 良い作品。 -- 2010-05-17 23:29:21
  • うーん納得 -- 2010-03-15 15:03:02
最終更新:2009年12月13日 23:43
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