ふたば系ゆっくりいじめ 797 ぐるぐるまわる!ゆんどうかい!

ぐるぐるまわる!ゆんどうかい! 21KB


虐待-普通 悲劇 仲違い 誤解・妬み 飾り 自滅 同族殺し ツガイ 群れ 自然界 現代 虐待人間 小説は初投稿です



ぱちゅりー「むきゅ!きょうはまちにまったゆんどうかいだわ!」

巣の外から差し込む光は眩いくらいだ。まさにゆんどうかいびより!
ただ日差しの割に冷える……
否、やや寒いくらいの気温だけがぱちゅりーは不満だ。

ぱちゅりー「なつさんももうおわりかしら?
      でも、あついよりすこしさむいくらいがいいわ!
      ゆんどうをすればおからだもあったまって
      ちょうどよくなるもの!」

ゆっくり特有のポジティブ思考で現実をねじ伏せた。

ぱちゅりー「やっとこのぴーぴーさんのでばんだわ!」

ぴーぴーとはホイッスルのことで、ぱちゅりーが道端にぽつりと落ちていたのを見つけて拾ってきたものだ。
珍しい人間の道具に浮かれて散々いじりまわしたものの使い道がわからず
長であるぱちゅりーの補佐であり、元飼いゆっくりでもあるありすに託したところ、偶然にも使い道はおろか使用したことさえある様子だった。
全てはこのホイッスルから始まった。


ありすはこれを使った運動会という人間の行事を模したゆっくり版の運動会
『ゆんどうかい』を開催することをぱちゅりーに提案した。

食べては寝るだけの生活にいささかマンネリズムを感じていた群れのゆっくり達は、
この新しい行事の開催に積極的で反対意見は皆無だった。
そしてゆんどうかいはその翌月8月に行われることに決まった。

そのことを誰よりも喜んだのはやはりありすだった。
ありすの話によると、テレビという映像が映る箱のようなもので運動会を見る度にやってみたいと思っていたようだ。
中でもホイッスルを使い、周りの者を自在に操る進行役に一番の興味を抱いていたということだった。
それならばありすが進行役を執り行った方がいいのではと譲ろうとしたが、
長のほうがその役に適任であるし、ホイッスルを見つけたのはぱちゅりーなのだからと断られた。

しかし、ホイッスルには問題があった。
紐の長さがゆっくりの体系に合わず、特に小さいぱちゅりーに至っては体からずり落ちそのまま使用することができなかった。
そこでありすが紐を調度良い長さに裁断し、上手に結び直した。
ぱちゅりーはありすのその器用さに驚嘆し、褒め讃えた。
それは元飼い主の編み物を手伝っていた経験によるもので、糸状のものの扱いなら多少慣れているとありすは恥ずかしそうに言った。

そして今に至る。


ぱちゅりー「そうだわ!ありす!まだねているの?」

ぱちゅりーは今だ動く気配のないありすに向かって呼びかけた。
あんなに今日を楽しみにしていたのに、寝坊してしまうなんてあのありすにも抜けたところがあるものだ。
今だ背を向け続けるありすの正面に回りこんだところ、ぱちゅりーはぎょっとした。

ありすの様子が昨日までと明らかに違っていた。
目の下は黒ずみ、髪は乱れ、痩せこけていた。
昨日はゆんどうかいのためにいつもより餌を食べ、日が沈まない内に眠ったのだから、いつもより元気でなくてはおかしい。
それが朝起きた時の挨拶であるゆっくりしていってね!すらなく、ただ淀んだ瞳で虚空を見つめるだけでぱちゅりーのほうすら見向きもしなかった。

ぱちゅりー「ありす……どうしたの?」
ありす  「……」

ぱちゅりーの呼び掛けだけが巣の中に響く。
しばらく沈黙だけが続き、耐えかねてぱちゅりーがもう一度ありすに呼びかけた。

ぱちゅりー「ありす……おびょうきかもしれないし
      きょうのゆんどうかいをおやすみしたほうがいいわ……

      ありす、むれのみんなのだれよりもきょうをたのしみにしてたから
      すごくざんねんだろうけど……

      またあきさんにもゆんどうかいをしましょう?
      きょうはおうちでゆっくり……」
ありす  「だめよ」
ぱちゅりー「む……むきゅ……」
ありす  「わたしがいないと……ゆんどうかいははじまらないもの……」
ぱちゅりー「えっ……?」

ぱちゅりーはありすの言葉の意味が理解できない。
確かにありすは群れにとって重要な存在ではあるが、ゆんどうかいではただの一参加者であり
ありすがいなくても進行に支障をきたすようなことなどない。

何か別の意味があるのだろうかとぱちゅりーが思考を巡らせていると、ありすが覚束無い足取りで巣の出口へ向かっていた。

ぱちゅりー「むきゅ!だいじょうぶなの?ありす!」
ありす  「はやくおわらせましょう……みんながむこうでまってるわ……」
ぱちゅりー「えっ……?」

終わらせる?なんのことなの?
ゆんどうかいを?でもまだ始まってもいないのに……
いまのぱちゅりーとありすのお話のことかしら……?
……?

ぱちゅりーはまたありすが不思議なことを言ったので頭を悩ませたが、きっとありすは調子が悪くて意識が朦朧としているのだと思うことにした。






ぱちゅりーとありすは群れの集会場へと向かった。
ゆんどうかいはそこで行われるからだ。


集会場は森の中の開けた草地に切り株が真ん中にあるだけの場所だ。
しかし、今集会場はゆんどうかいのためにゆっくりたちが雑草を丁寧に食べ尽くし、足を傷つける可能性のある石も取り除かれ
真ん中の切り株を囲んだグラウンドのようなものになっていた。

これもありすの提案で行われたことだ。
ありすはゆんどうかいのために率先してまずい雑草を吐き戻しそうになりながら食べ、体を汚しながら石を邪魔にならない場所までよけた。
作業を手伝うゆっくりたちを帰らせた後もありすはただ一匹残り、それを日が沈みきる限界まで続けていた。

ぱちゅりーはありすがれみりゃに襲われないか不安で、時間はかかってもゆっくり準備をするべきだと何度も諭そうとしたが
群れのみんなが楽しみにしてくれているのだから、早くゆんどうじょうを完成させたいと聞かなかった。
ありすの努力の甲斐もあり、ゆんどうじょうは予定より早く完成した。


ぱちゅりーは急いだ。
いつもは集会場までの通り道でゆっくりしているはずの、れいむやまりさ達が見あたらないのだ。
ゆっくりしすぎてしまったのかと、ぱちゅりーは焦る。
ぱちゅりーはゆんどうかいの進行役だ。
自分がいなくてはゆんどうかいは始められない。

ようやくのことでありすとぱちゅりーは集会場に到着する。
どうやら本当にゆっくりしすぎていたようだ。
既に群れの全員が集会場に集まっている。
群れで一番朝遅くまで寝ているちぇんでさえしかたないねという表情を浮かべる。

れいむ  「おはよう!ぱちゅりー!ありす!ゆっくりしていってね!」

れいむの声を皮切りに、群れのゆっくり達がぱちゅりーとありすに挨拶をする。

ぱちゅりー「みんなおはよう!ゆっくりしていってね!
      おくれてごめんなさい!」

群れのゆっくりの殆どは遅れてきたぱちゅりーを攻めたりはしなかった。
ゆっくりしている証拠だよ!と、フォローさえされた。
ぱちゅりーはこの群れは本当にゆっくりしていることを実感し、感動さえしていた。

ふと気づくと、ありすはまたおうちの中と同じように虚空を見つめていた。
まるで自分の周りには何も存在していないかのように、ゆっくり達の挨拶にすら上の空だった。

ぱちゅりーはその様子に苛立った。
いくら体調が悪くても挨拶くらいできるはずである。
ゆっくりにとってゆっくりしていってね!という挨拶は何よりも重要なものだ。
それなのに、ありすは……

ありす  「しょうがないじゃない……」

いつの間にかぱちゅりーは無意識にありすを睨みつけていたようで、ありすの声でハッと我に帰った。
しかし、より一層ぱちゅりーは腹がたった。

話せるじゃない。
なのになんでゆっくりしていってねじゃなくてそんな言葉が先に出るの?

ぱちゅりーはありすに詰め寄りそうになったが、自分たちのせいでゆんどうかいの進行が遅れていることを思い出した。
こみ上げてくる怒りを抑えながら、ぱちゅりーはゆんどうじょうの真ん中の切り株の上に登った。

ぱちゅりー「むきゅきゅ!それじゃあゆんどうかいをはじめるわ!
      みんな!しゅうごうのあいずはおぼえてるわね!」

ピッ!ピッ!ピーッ!

ゆっくり達が切り株の周りに集まり始めた。
ありすもふらふらと移動を始める。
切り株に向かって縦に三匹、五列の塊ができた。
ありすはちょうどぱちゅりーの真ん前にいた。

ぱちゅりー「いち……に……さん……
      さんがひとつと、いち……に……さん……
      …………さんのさんがひとつと、さんがふたつ!」
      みんなちゃんといるわね!むきゅ!
ぱちゅりー「それじゃあ、ゆんどうかいをはじめるわ!
      ゆっくりしていってね!」

ぱちゅりーのゆんどうかいの始まりの言葉にゆっくり達は沸き立ち、飛び跳ねたり、周りのゆっくりと満面の笑みを交し合い有頂天になっている中
ただありすだけが俯き、何かを諦めたように小さくため息を漏らした。






ゆんどうかいの全容はごく単純なものである。

基本3匹一組で中央の切り株の周りに引かれたラインにそって一周走り、ゴールした順番に順位がきまる。
組ごとに順位が付けられるだけで、ゆっくり全体での首位を決めるわけではない。
丁度、人間の運動会から徒競走だけ抜きだしただけのものだ。

今回のゆんどうかいは試験的な開催で、参加できるのは大人のゆっくりのみ。
様子を見て種目を増やしたり、体の弱い子供のゆっくり達も参加できるようにしたり、群れのゆっくり全体を2組に分け対抗戦にするつもりだと
ありすはぱちゅりーに興奮気味に語っていた。

それだけに今日のありすの様子はぱちゅりーには理解できなかった。
ゆんどうかいの第一組がスタートするという今でさえ

かぜさんでとんでしまったのね……

という不可解な発言を残し、ふらりとどこかへ消えてしまったのだ。

ガサガサ……

ありすが茂みから姿を現した。

ぱちゅりー「むきゅー!なにやってるのありす!
      れいむとれいむとれいむがいまからはしるのよ!
      ありすのばんはまだだからって、どこかにいったりしちゃいけないでしょ!
      ゆんどうかいはみんなでやるものだって、ありすいってたじゃない!」

ぱちゅりーは今までの鬱憤を晴らすかのように怒気をはらんだ声で言い放ったが、
ありすはみんなで、と言う言葉にまぶたをぴくりと動かしただけで、ぱちゅりーを淀んだ目で見つめ返すだけだった。

そして、またもありすは理解できない行動に出た。
あろうことか三匹の走者の横に並び始めたのだ。
ありすの走順は三組目である、にもかかわらずまるで自分もこの一組目と走るかのようにぱちゅりーに開始の合図を促した。

ありす  「はやくはじまりのあいずをして」
ぱちゅりー「なにいってるの!ありすのじゅんばんはまだよ!」
ありす  「はやくはじまりのあいずをして」
ぱちゅりー「む……むきゅ……」

いくらありすに退くように指示をしても意に介さず、ただ開始の合図を催促するのみ。
ありすへの怒りと意味不明な行動に、ぱちゅりーの頭の中はパンクしそうになっていた。

ありす  「みんなも、わたしにはしってほしいっていってるわ」

群れのみんなも頷いた。
ぱちゅりーは頭の中が真っ白になった。
いったい何がどうなっているのか、さっぱりわからない。

ありす  「はやくはじまりのあいずをして」

ピーッ!!

たまらずぱちゅりーは開始の合図をした。
みんながいいならもう、それでいい。これいじょうわけのわからないことは起こらないで欲しい。
ぱちゅりーはそう願ったが、すぐに破棄されることになる。

不気味なほどに三匹とありすの走る速度が同じなのだ。
ありすののろのろとした動きに合わせるように三匹とものろのろと進む。
しかもありすがちょっと躓きそうになれば三匹も躓きそうになる。
息をきらせて立ち止まれば三匹も立ち止まる。

ぱちゅりーは自分が群れのみんなに担がれているのではないかと疑い始めた。
しかしありすと三匹の行動が気味の悪いくらい一致している光景は異常だった。
意図的に合わせているのなら、もうすこしバラついてもいいはずだ。
なのに、完全に、完璧に、寸分違わず挙動が一致しているのだ。
結果、第一組は全員同着に終わった。

続く第二組もありすが走者の横について走った。また全員同着だった。
第三組もありすが本来の走者であるだけで、一組二組と光景は変わらなかった。
第四組は自分が誰よりも早いことを証明する、と息を巻いていたちぇんが走者にいたが、自ら証明することを反故にしたようだ。
ありす他二匹と同着に終えたからだ。

ぱちゅりー「ぱちゅりーはわるいゆめでもみてるのかしら……
      みんなはへんだしありすはもっとへん……」
ありす  「ゆめだったらよかったわね」

ぱちゅりーはありすにからかわれたと思い怒鳴りつけようとしたが、ありすが何故か悲しそうにうつむいていたのでやめた。

きっと夢よ、そうに決まっている、そうに違いない……

夢から覚めるためにもみあげで自分を叩いてみたが痛いだけだった。
ふと、顔を上げるとれいむの子供と視線があった。
ぱちゅりーの様子を見て変に思ったのだろう。

変なのはみんななのに……
ふとぱちゅりーは気になった。

ぱちゅりー「れいむのおちびちゃんのおなまえなんだったかしら……?
      れいむ……?ちがうわ、れいむ……でもない……
      へんね、さいきんうまれたばっかりなのに
      なんでもうわすれちゃったのかしら」
ぱちゅりー「ねぇありす、れいむのおちびちゃんのおなまえ、なんだったかしら?」

今まで感情を失ったようだったありすの表情が変わった。
深刻な顔をして必死に思い出そうと眉間にシワを寄せ、しばらくそうしていた。
ずいぶん時間が経ってから、ありすは答えた。

ありす  「おもいだせないわ……
      ………………ぱちゅりー、れいむにきいてきたら……?」
ぱちゅりー「むきゅ、そのてがあったわ!」

ぱちゅりーはれいむの元へと駆け寄った。

ぱちゅりー「ねぇ、れいむ、れいむのおちびちゃんのおなまえ、なんだったかしら」
れいむ  「わすれちゃったの?ひどいよ、ぷくー!
      れいむのおちびちゃんのおなまえはね、───だよ!」
ぱちゅりー「えっ?」
れいむ  「───だよ!───!」

結局何度聞き返しても、ぱちゅりーはれいむの言うおちびちゃんの名前を聞き取ることができなかった。






そして最後の第五組。
ここではぱちゅりーが他の三匹の走者と一緒に走ることになっている。
本来ならありすがぱちゅりーに代わり、ホイッスルで開始の合図をすることになっていたが、
やはりありすがぱちゅりーと三匹の間に割り込む形で入り込んでいる。
もうぱちゅりーは気にしないことにした。

ありす  「ねぇ、おもいださない?」
ぱちゅりー「なにを?」

ぱちゅりーは聞き返したが、ありすは聞こえていないかのように続けた。

ありす  「ぱちゅりーははしりはじめてすぐころんだわね
      なんにもないのになんでころぶのかしら」
ぱちゅりー「なにを」

言い切る前にぱちゅりーは見えない何かに引っかかって転んだ。

ありす  「ありすはぱちゅりーをたすけにいったわ
      まだみんなはしってるのに、じゃましちゃったわ」

そう言ってありすはぱちゅりーの体を起こした。
その途端、ぱちゅりーは震えが止まらなくなった。
前にもこんなことがあった気がする。

思い出してはいけない、そんな言葉が頭をよぎるが、
その考えとは裏腹にぱちゅりーの頭脳は記憶を探り続ける。

ありす  「そう、あなたのからだをおこしたそのときだったわね
      ──れいむがつぶされちゃったのは」

ぱちゅりー「むぎゅうううううううううううううう!!!!!!!!!!」






人間   「なんだぁ~?ピーピーピーピーうるせぇと思ったら
      ゆっくりが人間の真似事なんかしてやがる。」

人間は踏まれた衝撃で真っ二つになり、圧力で目玉が飛び出したれいむの上半分をつま先で弄んだ。

れいむ  「ゆ゛ひっ、ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」

人間   「こんな状態で生きてたってしょうがないでしょ~?
      中途半端にしぶといと辛いよ~?」

そういうと人間はれいむの千切れた部分につま先を突っ込んだ。

れいむ  「あ゛!」

人間   「これ運動場のつもりかぁ~?
      案外知能あるねぇ~!不出来生物のくせになぁ?」

そしてれいむをつま先にはめたまま切り株の周りを引きずりながら一周させた。
その頃にはれいむは既に絶命していた。

人間   「はい、れいむちゃん一等賞~!
      よかったなぁ~!一番最初に死ねたな~!」

群れのゆっくりは突然現れた人間と、仲間の死に呆然としていたが、
ようやくその遅い思考回路に危険信号が灯された。

ありす  「み…な……に……にげ……」

人間   「なんだぁ~?お前ら仲間が殺されたのに逃げるの?
      薄情だねぇ~!そうだいいこと考えた!

そういうと人間はれいむに駆け寄ったその子供を手で鷲掴みにした。

れいみゅ 「ゆんや~!はなしぇ~!」

人間   「お前ら逃げたらこのおちびちゃんが死ぬぞ~?いいのか~?
      そこのぱちゅりー、お前長っぽいけど
      こいつを見捨てたら、仲間からなんて思われるかな~?
      そういうゆっくりだって思われるぞ~?」

ぱちゅりー「……むきゅ!みんな!れいむのかたきをうつのよ!
      にんげんなんてこわくないわ!
      ゆっくりできなくさせてやるのよ!」

そういうとぱちゅりーは無謀にも人間に跳びかかった。   

人間   「あっ!痛い!人間のあんよが!
      ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」

ゆっくり達は一番体が弱いはずのぱちゅりーが人間に飛びかかっている勇姿と
予想外の人間の劣勢に勇気と希望が湧きぱちゅりーに加勢した。

ありす  「やめてみんな!そんなのじゃにんげんさんはしなないのよ!」

ピッ!ピッ!ピーッ!
ピッ!ピッ!ピーッ!
ピッ!ピッ!ピーッ!

ありすは力いっぱいホイッスルを吹き鳴らし自分についてくるよう集合の合図をするが、どのゆっくりも聞く耳を持たない。
それでもありすはホイッスルを吹き鳴らし続けた。

人間   「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」

人間はゆっくり特有の断末魔を真似し、ゆっくり達が自分を殺しに集まってくるのを待っていた。
そして──

人間   「二着、ちぇん」

人間のつま先がちぇんに埋没した。
そして履物のようにちぇんをめり込ませたまま他のゆっくりをその足で踏みつけ始めた。

人間   「ははは!人間がゆっくりに負けるはずないだろ!
      ほら三着!四着!五着!ちぇん、お前仲間何匹殺すんだよー!わからないよー!」

次々とちぇんスリッパで一踏のもとに潰されていくゆっくり達。
踏みつける度にちぇんは原型からかけ離れていく。

ぱちゅりー「むぎゅううう!やめでえ゛え゛ええええ!!も゛うやめでくだざい゛い゛い゛!」
人間   「駄目駄目!全員がゴールするまでが徒競走だ!六七八九十!
      よーし!そろそろぱちゅりーもゴールしようか!」
まりさ  「ぱちゅりいいいいい!」

その時一匹のまりさが人間の足に噛み付いた。

人間   「あっ!わりと痛い!」
れいむ  「ぱちゅりーはおさなんだよ!
      おさがしんだらむれはだめなんだよ!あかちゃんたちをつれてはやくにげてね!
      ありすもはやく!」
ぱちゅりー「み゛、み゛んな゛……」

このままでは全滅してしまうと悟ったゆっくり達がぱちゅりーとありす、そして子どもたちを守るために尚も人間に飛びかかる。

人間   「あかちゃん~?」

ゆっくりの子供達は惨状から少し離れた場所に固まって怯えていた。
次々と死んでいく親たちを見て、絶望しきったもの、ただ泣きわめくもの、凄惨な光景に気を失ったもの
様々な反応をしていたが、

人間   「はいゴォォォォル!」

幅の伸び広がったちぇんでまとめて叩き潰され、ゆっくりの子供達は一匹として二度と反応することはなくなった。

まりさ  「よくもおちびちゃんをおおおおお゛お゛お゛」
れいむ  「ゆっぐりじないでじねえええええええええええええええええええええ!」

子供を殺されたことで怒り狂った数匹のゆっくりが人間に飛びかかるが大した効果は無かった。

ありす  「はしゅりー!ゴホッ!」

ホイッスルを力の限り吹き続けた影響で、ありすは殆ど声が出なくなっていた。

ありす  「にげ、ゴホ!にげるのよ!」
ぱちゅりー「みんなが!みんながあ゛あ゛あああ!!!!!!!!!!」

錯乱するぱちゅりーを引っ張るが、ぱちゅりーは抵抗する。

ぱちゅりー「はなしでえええええ!みんなをたすけるのよおおおお゛お゛」
ありす  「わたしたちが、ゲホ、にんげんに、なにができるのよ
      みんなは、ゴホッ、いまわたしたちを、にがすために
      がんばってるのよ」
ぱちゅりー「ぱちゅりーはみんなどじぬ゛わあああ!
      みんな……みんな゛……あ゛あ゛あ゛あああああ」

ありすは涙で前が良く見えなかったがぱちゅりーを力の限り引っ張り続けた。
ぱちゅりーはそれでも抵抗し続けたが、その内力なくうなだれなすがままになった。

群れの仲間が、人間が見えなくなってもありすとぱちゅりーは必死に逃げた。
やがて疲れ果て、草むらに倒れ込んだ。
意識は朦朧とし体の感覚が無くなっていたが、頭の中に木霊する仲間の断末魔だけはいつまでも明朗であり続けた。






しばらくしてありすとぱちゅりーは集会所へ戻ったが
ゆんどうかいの始めに確認した頭数からありすを引いた数のゆっくりとその子供の死骸がそこにあるだけだった。
人質であったれいむの子供も切り株の上で煎餅のように平たくなっていた。

ありすは仲間の死骸を土中に埋め、木の枝を突き刺し、そこにお飾りをつけ墓を作った。
自分達の為に失われた仲間を忘れることの無いよう、一匹一匹お別れの挨拶をして丁寧に葬った。

しかし、ぱちゅりーは自分の誤断で仲間が死んだという現実を目の前に突きつけられ、徐々におかしくなっていった。
既に9月半ばになるにも関わらず、蝉が鳴いていると言い出し、その内仲間の誰かが呼んでいると幻聴まで聴こえだした。
そして幻聴だけにとどまらず、墓に供えられた仲間のお飾りに持ち主が生きているかのように話しかけ始めた。

ありすはぱちゅりーの現実逃避を許さなかった。
自分たちの為に犠牲になった仲間達の意志への冒涜だからだ。
しかし何度となく事実を伝えても、ただ泣きわめき気絶し、覚醒しては忘れるを繰り返した。
そしてありすのその行為がぱちゅりーの逃避に拍車を掛ける結果になった。

遂にぱちゅりーの精神はゆんどうかいの日に留まり続けることになった。
最初の内はありすは頑に説得を続けたが、逆にありすのほうが気が変になったのだと憐れまれる結果になった。
しかし、集会所へ行ってもただ仲間がいるだけで何時まで経ってもゆんどうかいは始まらない。
ぱちゅりーはゆんどうかいは今日では無かったのだと自己完結し、翌日また今日がゆんどうかいの日だと思い込む。

ただ時間だけが過ぎ既に10月に入っていた。
ありすは一人で二匹分の越冬の準備をし、巣に帰れば狂ったぱちゅりーの相手を繰り返していた。
ありすの精神も限界だった。

ありすはぱちゅりーの留まり続けるゆんどうかいを終わらせてやることにした。
集会所に蔦を巡らせ、仲間たちのお飾りをつけて人形のように操り、まるで生きているかのように動かした。
かけっこの時はお飾りを棒に付け、口にくわえて走ることにした。
仲間のお飾りを道具のように扱うことで自己嫌悪に苛まれたが、仲間が死んだ今お飾りはただの物で
もう仲間とは関係ないものだと自身を納得させた。

思惑は成功し、ぱちゅりーはゆんどうかいが始まったと喜んでいた。
既に壊れて音など出ないホイッスルをからからと鳴らし、ゆんどうかいの始まりを告げるらしい合図をする。
ここまでは良かった。
だが、徒競走の時に挙動が完璧に一致して動くありすとゆっくり達を気味悪がった。

ありすは気にすることなく、最後までやり遂げようとした。
そうすることでぱちゅりーのゆんどうかいを終わらせることができると考えたからだ。

突然ぱちゅりーが悲鳴を上げ始める。
第五組目になると、ぱちゅりーは仲間の死を必ず思い出すのだ。
仲間の死を忘れてはいけないというぱちゅりーの最後の意識が邪魔をするのか
何度やっても五組目で悲鳴をあげ、気絶し、目が覚めては忘却を繰り返した。

そして今回も結果は同じだった。






11月終わり頃、一匹のゆっくりまりさが森の中を歩んでいた。
巣の中で待つれいむとおちびちゃんの為に、限界まで餌を探しにはるばる隣の森までやってきたのだ。
餌をいっぱい詰め込んだ帽子が重くて疲れたので傍に見える切り株に寄りかかり休むことにした。

まりさは切り株の周りで異様な光景を見た。
始めはぶら下げられた蔦に大量の虫が付いているように見えて願っても無い僥倖に心踊らせたが、そこに近づくに連れまりさの意気は消沈していった。
それは朽ち果てたゆっくり達の飾りだったからだ。

途端にまりさはこの場所が恐ろしくなった。
ここはゆっくりを蔦にぶら下げて処刑する場所だったのだろうか、怖い群れもあるものだ。

あたりを見回すと、奇妙な二つの塊があった。
一つは目に木の棒が突き刺さったゆっくりの死骸だ。
しかもその木の棒にすら御丁寧にお飾りがつけられていた。
まだ死んでから間も無いようで、少し皮が乾燥している以外は綺麗なものだった。
二つはこちらに背を向けて表情は見えないが、木の棒のつきたった墓らしきものに向かってうぞうぞと動いている。

まりさは恐怖のあまりこの場から逃げることにした。

からら……からら……からららららら

後ろから不気味な音が聴こえる。まりさは更に怖くなった。

からら……からら……からららららら

まりさは必死に逃げた。
なんだかわからないけれど、ここはゆっくりできないみたいだ。
様子からしてゆっくりの群れがいるのかもしれないが、きっと碌な群れではないのだろう。
こんな危ないところからはさっさと逃げよう。

まりさの去った後の森ではからからと不思議な音が鳴り続けていたが、やがてそれも消えた。




──あとがき


初めて小説なるものを書きました。
稚拙な表現、描写等欠点をあげつらえばきりがありません。

個人的に絵より小説のほうが表現することの難易度が高く思い、敬遠していましたが
絵より遥かに楽しかったです。

ありすの人形遣い属性を活かそうと頑張りましたが……
これは……



作った人・暇あき

挿絵 by暇あき

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感想

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  • パチュリーかわいい!
    人間許さんヽ(`Д´#)ノ(自分も人間) -- 2021-09-03 14:18:54
  • (人間サイド)笛をピーピー吹かれたら、そりゃムカツクわなww
    (ゆっくりサイド)ありすは頑張ったほうだが、自分が壊れる前に終わらせるべきだった。 -- 2018-01-24 13:00:43
  • なんかがっこうぐらしに似た衝撃を感じた
    -- 2015-09-04 03:20:13
  • ぱちゅりー・・・ご愁傷様です。 -- 2015-06-04 00:02:22
  • 無限ループなのか? -- 2015-02-13 00:08:49
  • ぱちゅりーが挑発に乗って人間に歯向かおうとする、そして誰もありすの笛を聞かなかった故に悲劇が起きた
    ありすは逃げられたんだし長であるぱちゅりーがゲスで無かったらまた違った結果だったんだろうな -- 2014-08-15 01:21:37
  • 最後は耐えきれなくなって殺っちまったのか・・・ -- 2013-12-19 04:51:37
  • おもしろかったw
    これがれいむなら責任など感じないでれいむ知らないよで終わりなんだろうな
    -- 2011-09-04 18:38:08
  • なるほど、そういう事だったのか
    これはなかなか面白かったぜ -- 2011-02-15 03:58:15
  • うわぁぁぁあぁあぁぁああ!!!!!!!アンドロメダァァァァァァァァァ!!!!!!!!! -- 2011-01-26 16:07:42
  • ↓↓↓テメェが死ね。 -- 2011-01-07 21:07:33
  • 物語の中の存在だからこそ見下そうが同情しようが自由だと思うけど他人の感想にケチをつけるのは
    よくないと思うよ。 -- 2010-09-17 20:37:05
  • なんでゆっくり見下してるんだぜ?ゆっくりはあくまで物語の中の存在なのぜ?
    現実に存在しないナマモノを見下すのはやめるのぜ。ゆっくりというキャラクターを愛せる様になれば、この話一つとっても違う楽しみかたが出来るようになるのぜ。 -- 2010-09-17 02:21:54
  • なんで人間に怒りを?糞饅頭を駆除しただけじゃん。あんたゆっくりごときに同情なんてしてんの?ばっかみたい。死ね。 -- 2010-09-13 21:11:22
  • 「」の前に名前を付けると文章じゃ違いを表現できないのかと思ってしまう -- 2010-09-09 23:17:38
  • 上質のサスペンス読んでるみたいだった。すごい。
    思わず引き込まれてゆっくりに感情移入しちまって人間に怒りを感じる。 -- 2010-08-10 00:11:05
最終更新:2010年02月05日 21:18
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