ふたば系ゆっくりいじめ 830 餡動戦士ゆんだむⅤ ポケットの中のゆっくり

餡動戦士ゆんだむⅤ ポケットの中のゆっくり 34KB


虐待-凄惨 悲劇 理不尽 現代 虐待人間 完結編です。







 夕焼けが、ゆっくり達の頭上に広がる空を、まがまがしい紅さで染め上げていた。

 しかし、その下に集ったゆっくり達には、あるいは自らの心中に
燃える怒り、そして勇気の炎、とでも映ったかもしれない。

 二度に渡る人間さんの襲撃を受け、この平和に暮らしていたゆっくりの群れは、
もはや肉体的にも精神的にも、満身創痍であった。

 69匹いた群れのゆっくりも、41匹にまで減った。
同じペースで人間さんに潰されるとすれば、後2日もすればほぼ全滅してしまう。

 しかし、ここに居るゆっくり達に、その事に対する怖れも、怯えももはや
無かった。

 それは、恐怖を乗り越え、克服した、と言うよりは、全ての逃げ場も、逃げ道も断たれ、
脆弱なゆっくり達の精神の行き場が、そこにしか無かった、と言うべきか。

 絶望的な状況の中で、長が示した『ゆんだむ』という唯一の希望…
必然的に、ゆっくり達の願いはそこに集まり、それは一つとなって、
ゆっくり達にかつてない一体感と、それに伴う勇気と自信が芽生えていたのである。

 そんな、曇り無き決意をみなぎらせた顔々を見回し、長ぱちゅりーは
ひとまずは満足そうにうなずくと、皆に話し始めた。

「みんなのむっきゅりしたはたらきによって、ついに、すべてのじゅんびがととのったわ。
むきゅ、だけど、ぱちゅたちにむっきゅりしているよゆうはない…
すぐにでも、『ゆんだむ』をつくるさぎょうにはいるひつようがあるわ」

 見れば、そこは、ぱちゅりーが『かくのうこ』と称する、かなり広めに作った広場であった。
『かくのうこ』などと言っても、結局は雑草を踏み固めたり抜いたりして作ったスペースに過ぎず、
村にある他の広場と比べて、何の変哲も無かった。
しかし、他の広場のように、広場同士で通路を連結してはおらず、村そのものからは隔離され、隠されていた。

 そして、その広場のスペースを占有しているのは、大勢のゆっくりだけではなかった。
ダンボール、鉄クズ、バケツや何かの缶、布切れ…
うずたかく積まれた、ゴミの山であった。それも、ゆっくりごときがよくぞ集めた、
と感心してやりたくなる程の量であった。

「おさ!まりささまも、よういはばんったんっなんでぇい!まずは、なにをすればいいんでぇい?」

 意気揚々と金槌を振り上げた、棟梁まりさが言った。
このゆっくり達の逆転計画にとって重要な要である棟梁まりさは、特別に『かくのうこ』に
隠されていたため、人間達の2度目の襲撃の奇禍に遭う事も無く、
最初に受けた傷もほぼ完治して、体力は全快で元気であった。

「むきゅ!それじゃみんな、これから、ぱちゅのいうとおりにして、きびきびうごいてね。
むっきゅりしちゃだめよ!まずは…」

 そして、ゆっくり達の命運の全てを賭けた、一世一代の大工作が、始まったのであった。






 ――そして翌日、早朝。

 ゆっくり達の決死の作業は、昨晩、暗くなって何も見えなくなるまで行われ、
翌早朝再開され、そして、ついに今――――完成の時を、迎えたのであった。

 『かくのうこ』には、急ピッチの作業を完了させ、疲労し切ったゆっくり達が、
そこらじゅうに転がっていた。眠っている者もいたが、ほとんどの者は起きていて、
中央に、凛然と屹立する『それ』――自らの希望の証を、
疲れて横たわりながらも、キラキラと輝く瞳で見上げていた。

 『ゆんだむ』――長によってそう名付けられ、ゆっくり達の明日を紡ぐべくこの世界に生み出された、
ゆっくりの、ゆっくりによる、ゆっくりのための最終兵器。

 しかし、それは言わずもがな、と言うか、案の定、と言うべきか、
人間の目から見れば、当然の事ながら、所詮はゆっくりの工作であると、言わざるを得なかった。

 まず、パッと見た印象では、色のついたダンボールが積み重なっているようにしか、見えなかった。

 下から見ていくと、まず、足とおぼしき、丁度一匹のゆっくりがすっぽり入るくらいの
箱が二つ、少し離して、並べて置いてある。その上には、脚部を成す細長い箱が乗っており、
その上は腰ではなく、胴体部分のやや縦に長い箱と、直接くっついていた。
一応は間接らしき物もあるらしく、それは箱に穴を開け、トイレットペーパーの芯を通した
構造になっているようだ。無理をすれば、数センチくらいは可動するだろう。

 その上には、頭部らしきただの四角い箱が乗せてあり、申し訳程度に、
V字型の角が貼り付けられている。しかしその頭部(笑)に、
ゆっくりが付けているお飾り以上の意味がない事は、明らかであった。

 両腕に当たる部位は、見当たらなかった。その変わりに、胴体の側面に直接、
武器が据え付けられていた。
右には、ライフル型の、それなりに勢いがあるであろう水鉄砲、
左には、こちらもエアガンの、アサルトライフルが、半ば無理矢理に、トリガーを胴体内に
埋め込む形で、くっつけられていた。
これらの武器は、中島が置いていった虐道具にぱちゅりーが目を付け、その中から拝借した物であった。
「ゆうう…にんげんさんのものを、かってにつかったりしたら…
ありすたち、またおこられて、ころされちゃうんじゃないのぉ?」
と危惧する声も上がったが、
「むきゅ、だいじょうぶよありす!おこられるもなにも、
こんどは、ぱちゅたちがにんげんさんをころすばんなんだからね!
にんげんさんをむっきゅりころころして、にんげんさんのものを、ぜんぶぱちゅたちのものに
しちゃえばいいのよ!むっきゅりりかいしてね!」
と言って、説得したのだった。

 どうやら、徐々に出来上がって行くゆんだむの姿は、全ての自信と希望を失いかけていたゆっくり達に、
それらを取り戻させ、前にも増して持たせるに十分な程に、ゆっくり達にとって、
この上もなく頼もしい、ゆっくりしたものであったらしい。
完成した頃には、もうすでに人間の脅威などあって無きが如きもの、
勝って当然のようなもので、皆楽しそうにきゃっきゃと騒ぎ、はしゃいだ雰囲気にすらなっていた。

 そんな訳で、ついに人間さんの襲撃の前に、最終兵器ゆんだむを完成させる事に成功した、ゆっくり達…。
その事にすっかり安心し、慢心し、またさすがに切羽詰まった中での必死の作業だったので、
疲れていたのもあり、皆かくのうこのそこかしこで寝転がり、雑魚寝を始めてしまった。

 ゆっくり達が起き出してきた時には、しかし、まだ昼前だったので、
人間達が昨日と同じような時間に来るとすれば、まだ時間には余裕があった。
そこで、食事を済ませて空腹を満たし、食後にまた少々休憩したり軽く昼寝などしてゆっくりすると、
もうゆっくり達は元気いっぱい、昨日までの沈痛な面持ちはどこへやら、
この上もなくゆっくりした集団に、すっかり戻っていたのだった。

 ぱちゅりーも一安心したようで、ほっとした様子でそんな皆を見回していたが、
ぱちゅりーにはまだ、人間さんとの決戦の前に、決しておかねばならぬ命題があることを、分かっていた。

「むきゅ…ぜんいん、むっきゅりしゅうごう!ぱちゅのはなしをきいてね!」

 長ぱちゅりーの号令の下に、群れのゆっくり達は、ゆっくり達に崇められる偶像のように
立ち尽くすゆんだむを取り囲む形で、かくのうこに集結した。

 そのゆんだむの傍らに立ち、その雄々しき姿を惚れ惚れと見上げ、脚部の白い装甲に手をかけると、
ぱちゅりーは意気揚々と話し始めた。

「むきゅ!みんなの、とてもむっきゅりしたはたらきによって、ついにぱちゅたちの
さいきょうにしてさいしゅうへいき、YX−78−2、『ゆんだむ』がかんっせいしたわ!」

 ゆっゆおー!長のその言葉に、全員が唱和し、時の声を上げた。
いまやゆっくり達のテンションは、最高潮であった。

「それじゃ、『すぺっく』さんをせつめいするわね。
まず、ぺんきさんの『まぐねっとゆーてぃんぐ』によってまろやかにとそうをほどこすことによって、
ただのだんぼーるさんのぼでぃは、『だんぼりうむごうきん』となり、100ばいのぼうぎょりょくになったわ。
これなら、にんげんさんのこうげきくらいなら、すべてむっきゅりはねかえせるのよ。
そして、さゆうににんげんさんの『らいふる』さんをふたつもそうびすることによって、
ゆんだむのこうげきりょくはひやくてきにのび、そのいりょくはどすすぱーくにかんさんして、
ゆうに100ぱつほどにもなるわ」

 このぱちゅりーの説明は、実際のところそれを聞くゆっくり達には、何一つ意味が伝わっていなかったのだが、
すっかり自らが作り上げたゆんだむと、その作り方を教えてくれた、けんじゃ(笑)であるぱちゅりーに
心酔しているゆっくり達には、意味などわからずとも、とにかく「ゆんだむはすごい」
ということで納得し、キラキラと輝く表情に、涎を垂らしながら聞いていたのだった。

「むきゅ、そしていよいよ、動かし方だけど……」

 言いながら、ぱちゅりーはゆんだむの後ろに回った。皆もそれに習い、ゆんだむが後ろから見えるように
集まった。

「ゆんだむをそうっじゅうするには、3にんのゆっくりのちからがひつようよ。
むきゅっ、みんな、ここをみて」

 ぱちゅりーは、ゆんだむの両足の踵の、裏側に当たる部分を、おさげで指し示すようにした。

「『はっち』さんがみえる?ここはひらくようになっていて、まずここのりょうほうにひとりずつ、
ふたりがのりこむことになるわ。そしてそのふたりは、『れっぐぱーつ』のそうっじゅうをたんとうすることになるのよ。
むっきゅりりかいできたかしら?そして、うえの……」

 そう言ってぱちゅりーは、今度は背中の下側の辺りを指し示した。

「あそこの『はっち』さんが、『こっくぴっと』さんのいりぐちよ。あそこにのりこむひとりが、
かきかんせい、しゃげき、いどうのしじをたんとうすることになるわ。
『めいんぱいろっと』さん、というわけね」

「ゆゆーっ!それじゃ、『めいんぱいろっと』さんは、まりさにきまりだね!さっそくのりこむよ!!!」

 突然、一匹のまりさが大きな声でそう叫ぶと、コックピットへの踏み台用に積み上げられた箱へ向かって、
びょんびょんと跳ねながら突進して行った。

「ちょっとまってね!!!!」

 そのまりさの傍らにいたれいむが、そう叫ぶと共にまりさに横から、強烈な体当たりをぶちかました。

「ゆぶぶぶぅぅ!!!」

 顔面を地面に叩きつけられ、まりさは餡子を吐き出して苦しんだ。

「い…いだいよぉぉぉぉぉ!!どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ!?れいむぅぅぅぅ!!!」

「それはこっちのせりふだよ、まりさ!なにかってにこっくぴっとさんにのりこもうとしてるの?
ゆんだむのこっくぴっとさんは、れいむのゆっくりぷれいすなんだよ?
だから、かってにのりこもうとしたまりさはせいっさいされてとうぜんでしょ?りかいできる?」

「ゆ…ゆぅぅぅぅ!!?なにいってるのぉぉ!?ちがうでしょお!?
ゆんだむのこっくぴっとさんは、まりさのゆっくりぷれいすだよ!
ゆんだむの『めいんぱいろっと』さんがいちばんかっこいいんだから、いちばんかっこいいまりさが
『めいんぱいろっと』さんにふさわしいに、きまってるでしょおお!?そんなこともわからないのお!?
ばかなの!?しぬの!?」

「おお、あわれあわれ。これだから、くうきのよめないまりさは、れいむたちのめいわくなんだよ。
このむれのしゅじんこうは、だれだとおもってるの?れいむにきまってるでしょ?
そんなこと、おちびちゃんだってみんなわかってることだよ?
だから、しゅじんこうであるれいむが、『めいんぱいろっと』さんのぽじしょんにいちばん
ふさわしいに、きまってるでしょお?ゆっくりりかいしてね?」

「だまってね!わがままれいむ!もうれいむのわがままには、みんなほとほとあいそがつきてるんだよ!!
いいかげんにしないと、みんなそろそろゆっくりきれるよ!?そしたらげすなれいむなんか、
にどとゆっくりできないようにぼこぼこにされたあげく、ついっほうされちゃうんだよ?ぷくううう!」

「ゆぎいいい!おまえこそだまれええ!!おさ!このげすまりさは、むれのとくべつな、かわいいれいむに
ゆっくりできないぶじょくをしたよ!みんなでせいっさいしてやってね!ぷくううう!」

「ちょ、ちょっと、あんたたち…」

 全く予想していなかったトラブルの勃発に、ぱちゅりーは辟易としながらも、
なんとか事態を治めようと、二匹の間に割って入った。

「ふたりとも、むっきゅりおちついてね!もおお、だれがとくべつとかしゅじんこうとか、
そんなのどうでもいいでしょおお?みんな、むっきゅりしたおなじむらのなかまなのよ?
むっきゅりりかいしてね!」

「ゆうう…」

 長のその言葉を聞き、まりさの方は幾分恥じ入って反省したようで、不満げな表情をしながらも、
一歩引き下がって長の制止に従ったが、れいむの方は、ますます鼻息を荒くするばかりだった。

「どうでもいいってなんなのぉぉぉ!?れいむがとくべつでしゅじんこうなのは、
どうでもよくないでしょおおお!!?いくらおさでも、いっていいこととわるいことがあるよ!?
いいからさっさとこのげすまりさをせいっさいしてやってね!それと、れいむをゆんだむの
『めいんぱいろっと』さんに、さっさとにんていしてね!あと、あまあまもってきてね!たくさんでいいよ!」

 見れば…と言うか、見た目では他のれいむと見分けはつかないが、そのれいむは、
はじめにぱちゅりー達についてゴミ山に来ていた、あのれいむであった。

 前にも述べたように、このれいむは、度が過ぎた我が侭によって、度々群れやぱちゅりーに
迷惑を掛けていたのだった。

 れいむがこうなってしまった以上、もう長といえども、手が付けられないのだった。
ぱちゅりーは助けを求めるように、周りをキョロキョロと見回した。

「ゆふぅ…またなのぜ?いいかげんにするのぜ、れいむ……」

 その場を見かねて、長の番であるまりさが進み出る。

「れいむ…いまは、わがままにつきあってられるじょうきょうじゃないのぜ。
『めいんぱいろっと』さんがだれになるのかは、おさがゆっくりきめることなのぜ。
まりさたちは、いまはすみやかにおさのめいれいにしたがって、にんげんさんにたいする
げいっげきたいせいを、ととのえなくちゃいけないのぜ。ゆっくりりかいできないんなら、
またまりささまがおさげちょっぷでせいっさいしてやるのぜ?」

 言って、おさげを振り上げる。今までにそれを何発も食らい、その痛さが餡子に染みているれいむは、
びくっと萎縮してあとずさったが、涙を流す事と、小便を漏らす事と、不満げな呻き声を上げる事は、やめなかった。

「ゆんぐうううううう…!」

 そんなれいむに向かい、やれやれ、という調子のため息を一つ漏らすと、まりさはぱちゅりーに向き直った。

「さ、おさ。こんなゆっくりできないあまったれはほっといて、はやく『めいんぱいろっと』さんを、
きめるのぜ!まりさたちには、じかんがないのぜ?」

「む、むきゅ、そうだったわね、まりさ…ありがとうね、ごめんなさい。
…だけど、どっちにしろ、『めいんぱいろっと』さんには、れいむのなかのだれかにやってもらわなくちゃ、いけないのよ。
おさげをふたつつかえるれいむでなければ、りょうほうの『らいふる』さんのとりがーが、ひけないし…。
ぱちゅでは、なんどもとりがーをひくだけのたいりょくが、たりないわ。
だけど、わがままなれいむじゃ、たしかにちょっとたよりないわねぇ。さて、だれがいいかしら……」

 そう言って、値踏みするように、ぱちゅりーはれいむ達を見回した。

 れいむ達の反応は、我こそが…!と勇み立つ者もいれば、自分はちょっと…と、
ビビって後ろに下がる者もいて、まちまちであった。

「ゆぐうう…だから、だかられいむがぁ…!れいむが、いちばんゆんだむをうまくつかえるんだよ…!」

「れいむ…だまるんだぜ。やっぱり、まりさのおさげちょっぷをくらいたいのぜ?」

 性懲りもなく、またれいむがしゃしゃり出ようとしてきたが、まりさが睨み付けて止めさせる。

「ゆんぎぎぎぎぎ…」

 しかし、今日のれいむは、いつもより諦めが悪かった。
尚も、涙目になって小刻みに震えながらも、挑みかかろうとするような目つきをやめようとはしなかったが、
小便を垂れ流して明らかにまりさにビビっているのは間違い無かったので、
実際に飛び掛かることなどは、無理であろうと思われた。

「ゆがああああああ!!!!」

 そこでれいむは、誰もが全く予想外の行動に出たのである。

 飛び掛かることは、飛び掛かったが…その相手はまりさではなく、
ようやく日の目を見たゆっくり達の守護神、ゆんだむだったのである。

 ボゴォッ!!と、ダンボール箱がへこむ音がして、バッフーンという軽い音を立てて、
ゆんだむは横倒しに倒れた。その衝撃で、右足と左のライフルが外れ、転がった。

「ゆあああああああああ!まりさたちのゆんだむがああああ!!なにしてんのぉぉぉぉ!!」

「さいごのきぼうがあぁぁぁ!!」

 仲間達の口々の非難の声も、全く耳には入らない様子で、興奮状態のれいむは、
更にゆんだむに攻撃を加えた。

「れいむのものにならないゆんだむなんて…ゆっくりしねばいいんだよ!!ゆっくりしね!!ゆっくりしねっ!!」

 倒れたゆんだむの上に飛び乗り、何度もジャンプして潰そうとした。
脆いダンボール箱は、到底れいむの体重に耐え切る事など出来ず、みるみるへこみ、ひしゃげていく。

 ぱちゅりーがたまらず飛び出し、叫んだ。

「むぎゅううう!わかったわ!れいむ!れいむがめいんぱいろっとさんでいいから!
だからもうやめてええ!ゆんだむをこわさないでえええ!えれえれえれ…」

 あまりのショックで、お約束の嘔吐をするぱちゅりー。あわててまりさが駆け寄り、介抱しようとする。

 れいむの方は、ぱちゅりーのその言葉を聞くと、ぴたっと動きを止め、
そして今まで泣き叫んでいた表情をコロッとニッコリ笑顔にすると、言った。

「ゆっ!ようやくりかいしたんだね!おさ!わかればいいんだよ!まったく、おさはおさのくせに、
ときどきあたまがわるいからいやになるよ。それじゃ、れいむは、にんげんさんたちとのはげしいたたかいにそなえて、
せいっしんっとうっいつにはいらなくちゃいけないから、しつれいするよ!
それがおわるまでに、ゆんだむはゆっくりなおしておいてね!れいむのきたいなんだからね!
せんさいにせいびしておかないとだめだよ!ゆっくりしていかないでね!」

 れいむはそれだけ言うと、いかにも自分は重大な戦いを控えた戦士なのだ、とでも言いたげに、
肩(?)で風を切って、かくのうこから出て行った。

「ゆうう…おさ、だいじょうぶぅ?…よかったの?あんなこといって…。
ありすたちのさいごのきぼうを、あんなげすなれいむにたくすなんて……」

「むぎゅ…ごほ、ごほっ。いいのよ、ありす……とにかくいまは、じかんがないわ。
それにあんがい、にんげんさんとたたかうなら、あのれいむのほうが、いいのかもしれない。
ゆっくりの「おもいこみ」は、ときにものすごいちからをうむ、といわれているわ。
あれほど、じぶんこそがさいきょうでさいこうとおもいこめるれいむなら、
にんげんさんをたおせるかもしれない。でんせつの「ゆーたいぷ」に、めざめることができるかもしれない…」

「ゆゆう?「ゆーたいぷ」……?」

 全く聞き慣れない言葉に、ありすは怪訝な表情をしたが、苦しそうに咳き込むぱちゅりーを見ていると、
とてもそれ以上問い質す気には、なれなかった。

「むぎゅ…!それより、いそがないといけないわ!みんなで、ゆんだむのこわれたところを、
むっきゅりなおさなくちゃ!むきゅうう、ごめんなさいとうりょう、もうひとしごと、おねがいするわ……」

「ったく、しかたねぇんでぇい……」

 またまた、いくつもの波瀾と、その種を含みつつも、ゆっくり達の、人間に対する迎撃態勢は、整いつつあった。

 また、日が傾きかける頃になれば、人間達がやって来るのだろう。
しかし、今この時のゆっくり達には、恐怖も絶望も無かった。
希望を見出す事の出来る力を自ら創り出し、そこに全てを賭けていたのである。

 その賭けは、吉と出るか凶と出るか。
答えは、分かり切ったようなものだったが、ともかく、刻一刻とその時は、迫っていたのである。






「ゆゆっ!みんな!きたわ!にんげんさんがきたわよっ……!!」

 そう叫んだのは、木の椅子の上に箱を積み上げて作った、『みはりだい』に登って見張りを務めていた、
ありすであった。

 今度はゆっくり達も、心構えと、戦う術をしっかりと用意していた。
その警告の叫びを聞いても、誰一匹取り乱す者もなく、速やかに全員が、長ぱちゅりーの指示を聞いて、
あらかじめ決められていた持ち場についた。

「むきゅっ…れいむ?れいむきこえる?」

 意気揚々とゆんだむのコックピットに乗り込んだれいむの耳に、ぱちゅりーの声が響いてきた。

「ゆゆっ!きこえるよ、おさ!」

 声は、ダンボールのコックピットにしつらえられた、紙コップの糸電話から、聞こえてくるのだった。

「ぱちゅはこの『ほわいとべーゆ』から、せんきょうをみながら、むせんでしじをだすわ。
れいむはまだくんれんもつんでない、きょうがういじんのるーきーさんなんだから、
しじにはむっきゅりしたがってね!それと、『ほわいとべーゆ』と、『ゆんだむ』を結ぶ
『ゆんびりかるけーぶる』が切られてしまうと、むせんはつかえなくなるわ。
むっきゅりきをつけてね!」

 ゆんだむの背中の下側のコックピットのあたりから、一本の細い白い糸がひょろひょろと延び、
村の広場の端の方にある、元々長ぱちゅりーの家だった大き目のダンボールハウスの屋上に、
急遽ブリッジを増築し、『ほわいとべーゆ』と称した指令基地へと繋がっていた。

「ゆゆん!そんなにしんぱいしなくても、れいむにまかせておけばだいじょうぶだよ、おさ!
にんげんさんがきたら、この『びーむらいふる』と、『ゆっくりましんがん』でしゅんっさつしちゃえば、
むせんもくそもないでしょ?」

「むきゅう……そうね、たしかにそれは、れいむのいうとおりだわ。
とにかく、そっこうでたおせばたおすほどいいわ。たたかいがながびくと、けいけんのすくないぱちゅたちが、
ふりになる……。にんげんさんのすがたをしにんしだい、しゅうちゅうほうかをあびせるのよ、れいむ!」

「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたよ……!!!」

 さしもの傲岸不遜なでいぶといえど、多少の緊張は感じているのか、
思わずトリガーを握るおさげには力が入ってしまい、額からたらりと汗の滴が流れ落ちた。
しかし、基本的には、れいむは自らの勝利と、そしてゆっくりした栄光を、疑ってはいなかった。

(ここからはじまるんだね……。れいむのでんせつが……!)

 今日の朝、強引にゆんだむのめいんぱいろっとの座に納まってから、今までの短い時間の間で、
れいむの餡子脳の中では既に、今日の大活躍と、それからの、ゆんだむをかっこよく駆り、
人間達を次々と倒してゆっくり達の王国を築き、自らが王様となるまでの栄光のストーリーが、
出来上がっていたのだった。

「ゆゆう…!ぱたーんあお、にんげんさんよ、おさ!」

「むきゅっ…!りょうかい、さくせんかいしよ!さいしゅうむっきゅりけっせんへいき、
ゆんだむ、りふと・おふ……!」

 楽しい妄想にすっかり浸り、思わずさっきまでの僅かな緊張感も忘れて、涎を垂らして
放心しかけていたれいむの耳に、ブリッジからの緊迫した声が飛び込んで来る。
さすがにれいむもはっと我に返り、コックピットの覗き窓から、『標的』の姿を、確認した。



 ここで、視点は人間の側に移る。

 既に、二人の少年にとって、勝手知ったるゆっくりの村であったはずだが、
そこで二人は、またしても全く予想外の事態に遭遇し、口をぽかんと開けて呆気に取られていた。

 二人の目の前に立った、不恰好で幼稚で、滑稽な物体――。

 最初それは、ただダンボール箱が積み重なっているだけにしか、見えなかった。
しかしよくよく見てみると、それはただ無造作に積んであるのではなく、
足、動、頭――と、人型に近づくように、明らかに何か、意図的な工作の産物であることが、
見て取れたのである。しかも、胴の左右両側には自分達が持ち込んだ、玩具の銃が据え付けられており、
それで全体は、園児辺りがこしらえた、稚拙な戦うロボットのように、見えなくもなかった。

「な、なあ、中島………なんだ?ありゃ」

 ゆっくりに関して、自分よりも遥かに深く広い知識を持つ親友の中島に、磯野は訊ねた。

「………」

 しかしさすがの中島の知識を持ってしても、こんな状況は全くの想定外らしい。
当然中島には、何と答えて良いか分からず、ただ目の前のおかしな物体を、怪訝な表情で見つめている事しか、出来なかった。

「まさか……あん中に、ゆっくりが入ってやがんのか!?」

 好奇心が困惑に勝り、磯野は近づいて直接調べてやろうと、一歩踏み出した…その時であった。

 ビシュウゥッ!!

 そいつの右側にくっついていた水鉄砲の銃口から、突然勢い良く水が飛び出し、磯野の顔面を直撃したのである!

「ぶえぇっ!!?」

 しかし所詮は子供が遊ぶ水鉄砲、顔面に直撃したと言っても、シャワーで顔を洗ったのと、
結果は大して違いがなかった。

 しかし、その突然の攻撃は、これ以上ない程に意表を突いたのは、確かであった。
磯野は一瞬何が起こったのか分からず、驚いた余りに足をつるりと滑らせてしまい、後ろざまに引っ繰り返った。

 ゴン!!!

 そして更に運の悪かった事には、仰向けに倒れた磯野の頭が当たる場所に、
丁度大きめの石が転がっており、磯野はそこに強か後頭部を打ち付け、気を失って昏倒してしまったのである。

「!! 磯野!おい、磯野…!」

 中島はすぐにしゃがみ込み、磯野を抱え起こして声をかけた。

「う~ん…」

 磯野は苦しげに眉をしかめると、うめいてみせた。どうやら、少々意識が朦朧としているようだが、
命に別状があったり、などということは、無さそうだ。
中島は一安心すると、柔らかい草の上に、磯野を寝かせた。

「つめてっ! !? うわ、いてっ、いてててて!!」

 そんな中島に、間髪を入れず、再度の射水攻撃が襲い掛かった。しかも今度は、同時にエアガンの方も
乱射して来たのである。中島はとっさに腕で防いでいたが、水の方はせいぜい服が濡れる程度で済むが、
小さな硬い、BB弾のつぶてがパチパチと、大量にぶつかってくるのは、さすがに結構痛かった。

 そしてその時、中島はついに全てを理解したのであった。
あの無様な物体の中には間違いなくゆっくりがいて、下等なゆっくりどもにしては、余りにも小癪な
考えで、あんな物を作り、自分達の武器まで盗み出して、親友を傷付け、そして今また、
自分に、到底ゆっくりから受けるには耐えがたい、痛みと屈辱を与え続けているのである。

(ゆっくりごときが…!)

 中島の心に、いつもゆっくりの愚かさ、あさましさを眺めている時に感じる、ビキィ感情とも違う、
義憤と憎悪が、むくむくと立ち上がった。
しかし、ゆ虐馴れしている中島は、その感情を今すぐに爆発させてゆっくりどもを叩きのめすではなく、
最も理想的なシチュエーションで、最も効果的な虐待によって報復を果たす為、一芝居打つことにした。

「うわあああ~」

 わざとらしい悲鳴を上げ、中島はその場に倒れ込んだ。
その後もしばし、尚も攻撃は止まなかったが、やがてしばらくすると、それも止んだ。
そして、予想した通りに、ゆっくり達の方から、勝利と喜びの大騒ぎが聞こえてきたのである。



 時間を少し戻して、コックピットの中のれいむである。

「ゆあああああああ!やったよおおおおおお!れいむがああ!れいむがにんげんさんをたおしたよおおお!
れいむのうったびーむらいふるさんがあたったんだよおおお!だからこれはれいむのてがらだよおおお!
だからあまあまちょうだいねえええ!たくさんでいいよおおお!」

 自らの放った『びーむらいふる』が人間さんの片割れの顔面に直撃し、倒れるのを見たれいむは、
たちまち有頂天になり、ダンボールのコックピットの中でボスボスと跳ね、大騒ぎして
自らの手柄をアピールした。

「むっきゅうううう!よくやったわ、れいむぅ!だけど、むっきゅりゆだんしてちゃだめよおお!
まだ、にんげんさんはもうひとりいるわああ!むっきゅりしないではやくたおしてねええ!」

 自らが設計した兵器が、実際に人間を倒すところを目撃し、ぱちゅりーもテンションが上がり過ぎ、
声が上ずっていた。しかしそこはさすがに長なのか、判断は冷静で素早く、れいむに、
残ったもう一人の人間にも、すぐさま止めを刺すように命じた。

「ゆゆっ!このさいきょうのれいむにまかせてね!このゆんだむのちからをかんっぺきにつかいこなすれいむなら、すぐに…」

 すかさず、銃口をもう一人の、しゃがみ込んで倒れた人間を覗き込んでいる、
眼鏡の人間に向ける。そして今度は、両方のトリガーを、同時に引き絞った。

 たちまち、ビームとマシンガンの嵐が、にっくき人間さんに襲い掛かる。
しかし、今度は直撃せず腕で防がれ、何発も当てても、標的は中々倒れなかった。

「ゆふん!そんなの、むだなていこうだよ!よわいよわいにんげんさんはさっさとあきらめて、
れいむにふくじゅうしてね!ゆうぅ~っ…ゆんだむ!さいだいぱわーっ!
おちてね!ゆっくりおちてねえぇぇーーっ…!!」

 そして、更にトリガーを引き絞り、仕留めにかかる。すると、ついにゆんだむ最大パワーの攻撃は、
強固な人間さんの装甲をも打ち破ったのか、残ったもう一人の人間さんも、ドウ…と地面に倒れ、動かなくなった。

「ゆ…」

 その瞬間を目撃したゆっくり達の中で、急速に、喜び、安堵、達成…様々なゆっくりできる感情が、
膨れ上がってゆき…それはすぐに、爆発した。

「ゆあああああああああ!!!!やったあああああ!!!やったよおおおお!!」

「にんげんさんたちを、やっつけたわあああ!ありすたちのしょうりねええ!」

「ちーんぽ!ちーんぽ!ちーんぽ!ちーんぽ!」

 一時は、苦しめられ、痛めつけられ、進むも地獄退くも地獄の、全く成す術のない、
真の絶望を突きつけられていただけに、ゆっくり達の喜びようは、大変なものだった。

「おさ、やったわね!やっぱりおさのいったことは、ほんとうだったのね!さすが、ありすたちの、
たよりになる、さいこうにゆっくりしたおさよ!」

 長ぱちゅりーと一緒にブリッジにいて、おぺれーたー(笑)を務めていたありすが、ぱちゅりーを労った。

「むきゅう…そんなにほめないでね、ありす。むっきゅりてれちゃうわ。
だけど…しょうじき、ここまでうまくいくとは、ぱちゅもおもってなかったのよ。
きっと、むれのみんなががんばってくれたからね。ぱちゅだけのちからじゃないわ。
ありすも、まりさも、れいむも…みんながむっきゅりがんばってくれたから、こうして……むぎゅうううううう!!??」

 ぱちゅりーが突然金切り声を上げたので、ありすはびっくりして叫んだ。

「ゆゆっ!?おさ、いきなりどうしたのお!?」

「れいむうう!まえみてええ!まええええ!」

 ぱちゅりーは泡食った様子で、ゆんだむのこっくぴっとに通じる糸電話をおさげに取ると、怒鳴った。

 れいむはその時、ゆんだむの背中に付いているコックピットハッチを開いて顔を出し、
皆の喜ぶ様子をゆっくりと眺めながら、これからの自分への惜しみない賞賛と、英雄としての待遇について、
思いを馳せているところだった。

「ゆゆ?おさがなんか、さわいでるよ?まったく、しょうがないおさだね…れいむへのしょうさんなら、
あとでゆっくり、いくらでもきいてあげるのに……ゆ?」

 そして、ゆっくりできない長をたしなめてやろうと、後ろを振り向いたれいむは、そのまま凍り付いた。

 ゆんだむの覗き窓を通して、その四角く区切られた視界を覆い尽くすように、轟然と立ちはだかったその姿――

 それは紛れも無く、先程自分が完膚無きまでに叩き伏せた筈の、人間さん――中島であった。

 ボゴォッ!!!

 中島は裏拳を振り抜いた。それは横からゆんだむの頭部をとらえ、テープやボンドで雑に貼り合わされただけの
頭部を容易くもぎ取って吹き飛ばし、歪な角を付けた頭部が、地面に転がった。

「どっ、どぼじでにんげんざんがいぎでるのおぉぉぉ!!??」

 コックピットの中のれいむは、ゆっくりの本能に従い、とりあえず、目の前の、信じ難くゆっくり出来ない光景に、
大声で叫んで抗議する事しか、出来なかった。

 ゆっくり達も、騒然となっていた。一度は勝利の美酒に酔いかけていた、その矢先の急転直下だっただけに、
その不信と動揺は激しく、群れ全体が上へ下へ、しっちゃかめっちゃかの大混乱であった。

「むきゅうううう!れいむうう!いつまでも、むっきゅりびっくりしてちゃだめよおおお!
はやくたたかって!こんどこそ、かんっぺきににんげんさんをたおすのよおぉぉぉ!!」

 しかしその混沌の中にあっても、さすがと言うべきか、長だけは、この惑乱を収める術を、心得ていた。
即ち、今度こそ人間さんを倒し、完全に沈黙させる事である。

「ゆうううう!だけどおさ、ゆんだむのゆっくりしたおかおが、とれちゃったわよお!?だいじょうぶなのぉ!!?」

「むきゅ!たかが、めいんかめらがやられただけよ!ゆんだむなら、まだまだむっきゅりたたかえるわ…!」

 そうだ、人間が生きていて、また襲って来たところで、また倒せばいいだけのことだ。
ぱちゅりーの言葉を聞き、れいむもその事に思い至った。すぐに左右のトリガーを握りなおすと、
にやりと笑みを浮かべた。

「ゆふん、ばかなにんげんだね!なんどたちあがったところで、またれいむのつよいつよいこうげきで、
いたいおもいをするだけだよ!とくべつにくるしむひまもあげずにころしてあげるから、かんしゃしてゆっくりしんでね!」

 そう言い放つと、早速トリガーを引き絞る。が、

「ゆ…ゆううう!!?」

 撃っても撃っても、水もBB弾も、人間さんの体に届いては、くれなかった。
それもそのはず、ここまで近づかれてしまうと、完全に射程の内側の死角となってしまい、
いくら撃っても当たりようがないのである。

「なにこれええ!?ぷっくうううう!にんげんさん!わかったから、ちょっとたんまだよ!
これじゃ、れいむのゆっくりしたこうげきが、あたらないでしょおお!もうすこしうしろにさがってね!
それからやりなおしだよ!」

 覗き窓の向こうに見える中島に向かって、さもそれが当然のように命令するれいむ。

 ベリベリィッ!!

 中島は無言で、ゆんだむの両側から突き出た銃身を掴むと、それを力任せに引き剥がした。

「ゆああああああああ!!!れいむのつよいつよいらいふるさんがあ!ましんがんさんがああ!!
なにじでんのおおお!!!」

 あっけなく、水鉄砲とエアガンのトリガーはれいむのおさげから離れ、
本来の持ち主の元へ帰ってしまった。

 当然、れいむは頼りの武器を失い、恐慌をきたして騒ぎ出すか、逃げ出すかと思われたが、
意外にもれいむに同様は無かった。

「ゆふふふ…まったく、ほんとうに、かわいそうなにんげんさんだよ。
このれいむをほんきにさせて、そのひめられしちからをかいっほうさせてしまったんだからね……」

 ハァ?という顔をした中島の前で、れいむはゆっくりと目を閉じた。

 そしてまたカッ!と見開くと同時に、叫んだ。

「ゆゆーん!!れいむはたねわれしたんだよ!ゆっくりりかいしてね!ぱりいいいーーん!!」

 目をどこかで見たようなレイプ目にしながら、れいむは喚いた。

「ちぇん!まりさ!れいむはいまたねわれしたんだから、ゆんだむのせいのうが、さんっばいになったんだよ!
だからさっそく、さんっばいのすごいはやさで、にんげんさんのうしろにまわりこんでね!
ぎゅうおおおーん!ていうかんじでだよ!りかいできる?ぎゅうおおおーん!ていうかんじだよ!」

 ゆんだむの地面と接した足にあたるダンボール箱には、ゆんだむを移動させる為に、
右足に足の速いちぇん、左足に長の番である力持ちのまりさが入っていた。
己の願望を実現させようと、早速コックピットから指示を飛ばすれいむ。

「ゆうう!?そんなこと、できるわけないんだぜえええ!!!わがままもいいかげんにするんだぜえ、
れいむううう!!!」

「も、もうダメなんだねー!わかるよー!だからちぇんはにげるよー!わかってねー!!」

 人間さんの接近に恐慌をきたし、ちぇんはハッチから飛び出し、ゆんだむを放棄して一目散に逃げ出した。

「ち、ちえぇぇぇん!?ゆうう…いくらまりさでも、ひとりじゃ…。
こうなったらもう、しょうがないのぜ!まりさもにげるのぜえええ!!!」

 まりさもちぇんに続き、ハッチから外へ、少しでも人間から離れ、遠くへ逃げようと、全力で駆け出した。

「ゆ…ゆうううう!!?まりざあああ!!ちぇぇぇぇん!!なにやっでんのおおお!?
れいむがたねわれしたっていってるのが、きこえないのおおお!!?ばかなのお!?しぬのお!?
…まったく!ゆうしゅうなれいむのために、じみにゆんだむをうごかすしかのうのないむのうなばかゆっくりのくせに、
じぶんのさいていげんのしごとすらほうきしてにげだすなんて、とんでもないげすなまりさとちぇんだね!
れいむがせいっさいしてやるよ!ぷくううう!!!」

「…制裁されるのはてめーだよ、ゴミ饅頭」

「ゆっ?」

 れいむはごみまんじゅうなんかじゃないよおおお!なにいってんのおおお!?
そう抗議しようとして振り向いたれいむの目の前に、鈍色に光る、エアガンの銃口が突き付けられた。

 れいむは何が起こっているのは全く分からず、ただ阿呆のように、ようにと言うか実際に阿呆だったが、
銃口を見つめていた。

 ガガガガガガガガッ!!

 中島は覗き窓からアサルトライフルの銃口をねじ込み、そのまま引きがねを引いた。

「ゆぎょえああああああああああああ!!!おめめがあああああああ!!
れいむのかわいいかわいいおべべがあああああああああ!!いだいいいい!!いだいよおおおおおおおおおお!!!!」

 至近距離で、フルオートで射出された無数の硬いBB弾が、れいむの白玉の右目をモロに抉り、突き刺し、
弾けさせた。

 中島は銃口を引き抜くと、ゆんだむに回し蹴りをぶち込んだ。ゆんだむは横様に無様に倒れ、
衝撃で、中にいたれいむが苦しみに喚きつつ、餡子を吐き出しながら転がり出て来た。

 中島はれいむを踏み付けにすると、その髪の毛をわしづかんだ。そのまま足の裏で抑えつつ、
ブチブチブチィ!!とわしづかんだ大量の髪の毛を、一気に毟り取る。

「ゆぎぎぎぎぎぎぃ!!ゆぎっ…ゆぐっ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…」

 れいむは白目を剥き、泡を吹いて、ただ激甚な苦痛に苛まれ、不気味な痙攣を続けているだけである。

「おっ、おさ!おさぁ!ゆんだむが、ゆんだむがやられちゃったわあああ!!どうずればいいのおおおお!!?」

 ブリッジにも当然、その一部始終は、見渡されていた。
ブリッジにいる、長直属のゆっくり達も、狼狽し、浮き足立って、今にも算を乱して逃げ散ってしまいそうな
状態であった。

 しかし、長なら…それでも自分達の長なら、なんとかしてくれる……。
その一縷の希望が、ギリギリの所で、ゆっくり達の統率を保っていた。

「むぎゅうううううう…!!さくせん、ちゅうしぃ!!ぱちゅたちのあんぜんをさいゆうせん!
みんな、むっきゅりにげるのよおおお!となりのおやまへ!むっきゅりしていかないでねえええ!!!」

 言うやいなや、長自ら、率先してブリッジを飛び出し、外へ駆け出して行った。
他のゆっくり達も一も二も無く、長の後について、慌てて逃げ出すしかなかった。

 れいむを足蹴にしたまま、中島は村全体を見渡すようにした。
どうやら、ゆっくりどもの抵抗もここまで、後は作戦もクソも無く、ただ闇雲に、隣の山へ逃げ込むつもりで
あるらしかった。

「フン、逃がすか」

 中島が、翔けた。踏み付けにしていたれいむごと大地を蹴って、ゆっくりを地獄へと誘う、
死の天使のように。






 ――そして、その日も、凄惨な殺戮と共に、暮れた。

 ゆっくりの知恵と勇気を振り絞った抵抗は、新たな中島無双の幕開けとなっただけだった。
そこに意識を取り戻した磯野も加わり、真・ゆっくり虐殺無双乱舞を発動した二人は、
もう、ゆっくりどもの終末まで、止まる事など出来なかった。

 ゆっくりの村であった、そのささやかな空間は、まるごと、二人の人間の怒りの炎による、火葬場を化した。
焼き尽くされ、微塵の活気も生活感も失った虚ろな広場には、ただ、無残に破壊され尽くした
おびただしい数の饅頭の残骸が、べっとりと打ち捨てられている。

 長ぱちゅりーも死んだ。棟梁まりさも死んだ。とかいはなありすも死んだ…みんな死んだ。

 いや、まもなく死ぬが、まだ生きている者が、一匹だけいた。

 ゆんだむに乗り、一度は人間さんを倒したと信じた、れいむであった。

「げぶっ…」

 れいむは一度、大きく餡子を吐き出すと、体の下半分が踏み潰されて動く事は出来なかったが、
僅かに上半分だけを上げ、涙も涸れて乾き切った左目を見開いた。

 そこに、なんとか映った光景――折り重なり、餡子をぶちまけた群れの仲間達の死骸。
もう住む者もいなくなり、寂しげな墓標のように風に吹かれているだけの、おうち。

 しかしそれらを目にしても、れいむの苦しみ抜き、今にもその活動を終えようとしている
餡子脳は、なにを思うことも、なにを考えることも出来はしなかった。

 最後に、れいむの目は、ゆっくり達が最後にすべての希望を託した、『ゆんだむ』の残骸の上に、止まった。

「でいぶ…………もっぢょ……ゆっぐ、じ…………………」






おわり


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感想

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  • うん取り敢えず磯野と中島は先生に24時間叱られとけ -- 2023-02-21 16:48:51
  • でもちょっと待てよ?・・・こういうのが量産されたらヤバいんじゃね・・・ -- 2018-08-31 01:31:21
  • 頭のお味噌(ゲス<まとも)
    中島<アムロ・レイむ(パイロットのあいつ)«普通のゆっくり -- 2012-12-24 15:33:59
  • 俺もれいむがゆんだむを押し転がしたところでクソワロタww
    れいむごときに横転させられた時点で人間には勝てないと気付けよw

    >長ぱちゅりーも死んだ。棟梁まりさも死んだ。とかいはなありすも死んだ

    メインキャストが戦死(笑)するシーンはもうちょと詳しく見たかったな
    まあ全ゆっくり死ぬんだからゆんだむよりゆでおんの方がよかったかもねw -- 2011-07-29 00:36:10
  • れいむがゆんだむに攻撃始めて噴いたw -- 2011-06-02 09:54:13
  • くそっ!パイロットがでいぶじゃなければ勝てる戦いだった…わけないか。 -- 2011-01-09 04:10:41
  • どや顔の中島がムカつく -- 2010-10-28 13:01:45
  • 私は寧ろ、我侭でいぶにイラッときたがなw -- 2010-10-26 23:10:59
  • 子供はすぐ逆ギレする、ゆっくりできない生き物。うぜぇ。 -- 2010-07-09 03:10:39
  • 子供に腹たって仕方が無い -- 2010-04-07 13:09:03
最終更新:2010年02月06日 17:13
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