ふたば系ゆっくりいじめ 846 南の島の天の河

南の島の天の河 38KB


観察 自業自得 群れ 希少種 自然界 現代 独自設定 うんしー ぺにまむ 南の島のスカーレットクロス続編です。完結します。

南の島のまりさ、南の島の生命賛歌、南の島の葬送行進曲
南の島の風葬墓、南の島のスカーレットクロスの続編です。
いろいろ独自設定が入っています。ご注意ください。


南の島のまりさシリーズ追補編3



『南の島の天の河』



みんなの死体、ろりすの死体、そして我が子の死体…
風葬墓はまるで古代の様相を取り戻したかのように死臭にあふれていた。
そして、その中で息をする三匹のゆっくり…

るいずは傷ついた体を床に横たえ、何も言えず、ただ視線を中に浮かせていた。
そして、しょうとなずーりんは、盟友同士は、片方は力のない、怯えた視線を、もう片方は憎
悪の煮えたぎった視線を交わしていた。

「しょう…ごめんよ…」

最初に沈黙を破ったのはなずーりんだった。同志と呼ぶことをすっかり忘れていた。

「殺すつもりはなかった…分かるよね?殺されたくなかった…」

しょうは何も言わず、涙を流しながらなずーりんをにらみ続けていた。
なずーりんは逃げ出したかった。脱兎の如く逃げ出したかった。だが、今逃げれば殺されるの
ではないか?その恐怖がなずーりんの心を鷲づかみにして放さなかった。

「すまない…」

なずーりんはもうそれ以上何も言うことができず、その場にうずくまった。洞窟中の空気がす
べてなずーりんにのしかかっているかのように重たかった。

「…なんで…こんな……ゆっくり…できない…」

しょうは絞り出すような声でそれだけ言うと、潰れてしまった我が子のもとで泣き崩れた。
なずーりんは少しだけほっとした。あのまま無言でにらみつけられているのが、一番ゆっくり
できなかったからだ。

「おちびちゃん…あんなにゆっくりした…おちびちゃん…ごめんよ…おちびちゃん…ごめんよ
…るいず…」

しょうはひたすら「ごめんよ」を連呼しながら泣き続けた。
るいずはずりずりと、怪我したあんよを庇いながら、這いずって来ると、子しょうの亡骸を何
回かぺーろぺーろしたが、すぐに無駄を悟ると嗚咽を漏らし始めた。

そこへやっとふぁらんくすの生き残りがやって来た。なずーりんはその姿を認めると安堵した。
しかし、巣内の惨状に、ふぁらんくすのゆっくりたちはとてもゆっくりできなかった。

「どぼじでみんなえいえんにゆっぐりじちゃっでるのおおおお゛!!!」
「ありずのどがいはなあがじゃあああん!!どこおおおおお!!」
「れいむ!目を覚ましてね!まりさだよ!!!ぺーろぺーろするよ!!ぺーろぺーろ…どぼじ
で目を開けてぐれないのおおおお゛!!!」
「ちぇえええええええええええええええええええええええんっ!!!」

しょうはただ泣きながら、子しょうの散った花飾りを集めていた。

「同志しょう、どうか落ち着いてほしい。僕が巣の守りを疎かにしたばかりにすまない。だが、
同志しょうのおちびちゃんの犠牲によって群れは救われたのだ。これは…」

その一言が余計だった。捕食種による攻撃は仕方のないもの、なずーりんの行動も他に方法が
なかった、しょうはそう思っていた。しかし、なずーりんの不用意な一言によって、抑えてい
た感情が爆発した。盟友だと思っていたなずーりんにとっては、群れのみんなも、しょうの子
供も、そして恐らくはしょう自身も、どうでもいい存在になっていたのだ。

「ばかかああああ!おばええええ!!だれがすぐわれだあああ!?みんなじんだぞっ!!!」

爆発した感情は暴力となり、しょうは全力でなずーりんに体当たりをした。

「みっぎいいい!!!」

なずーりんはしたたかに岩に打ち付けられた。

「なんでおばえはながない!?みんなじんだぞ!!なんでだあああ゛!!!」
「ゆぐ!!!やべで!!!やべでえええ!!!」

なずーりんの嘆願を聞かず、ただひたすらなずーりんに体当たりを続けるしょう。
なずーりんは泣きじゃくり、その口から、傷口からチーズが飛び出す。

「ゆぎゃああ!!!おい゛!!ふぁらんぐず!だじゅげろ!しょうをだいほじろ゛!」

なずーりんは思わずふぁらんくすに助けを求める。

「助けろ!!お前ら!!…どうした!!動け!!何をじでいる゛!!!」

だがふぁらんくすは動かなかった。もうしょきちょうのために動くことの意味が誰も分からな
かった。

「じね!!じね!!じねええ!!!」
「ゆぎゃああ!…ゆべ!…うぎゅう!…やべで!」

しょうは体当たりを続けた。傷口が開き、潰れた目から再び透明な汁が出てきたが、構わず体
当たりを続けた。

「ばが…ばがああ゛…なずーりんのばがあ゛……」
「いじゃいいいいい゛だじゅげで…だずげで…」

しょうは体当たりを止めた。助かったのか?とばかりに後ろを振り返るなずーりん。

「出てけ…」
「しょう?」

月の光が逆光で、しょうの顔は見えなかった。
呼吸を整えたしょうは静かな、ただし異論を挟ませぬ口調でもう一度言った。

「…出てってください…なずーりんは…殺せない…お願いだから…出て…て…ゆっぐりしない
で出てって…」

もうしょうには憤怒の表情はなかった。ただ泣きじゃくっていた。
なずーりんはもう一度、助けを求めるかのようにふぁらんくすを見たが、彼らは自分の家族の
亡骸を探すのに必死だった。
なずーりんは力のない足取りで、崖の風葬窟から出て行った。
赤い満月は、天高く上り、青い光を島に投げかけていた。

弁舌の力で権力を手に入れたなずーりんは、舌禍によって全てを失った。



6月
雨季になり、島の降雨量は増えた。

この頃、若ぱちゅりー率いる海岸の群れは、個体数も全盛期の八割を越えるまでに回復し、新
しく発見した横穴にゆん口の一部を分散させることで、群れの防御機能を損なうことなく、居
住空間にも余裕を持てるようになった。

また、まりさ種が減少したために、れいむ種、ありす種、ちぇん種、そして最近になって数を
増やしてきたみょん種が狩りに積極的に出るようになり、彼らの体にも島の環境への適応が見
られるようになってきた。

それまで、夏場の日光はゆっくりから水分を奪うだけでなく、強い紫外線による皮の光劣化を
もたらすため、まりさ種以外のゆっくりは外出を控えてきた。光劣化した皮はがさがさになり、
餡子からの水分蒸発が発生するため、そのままの状態で屋外活動を続けることは高確率での死
を意味してきた。

しかし、屋外活動用のモンパノキ帽子の開発、まりさ種の急速な減少による食糧事情の悪化は、
それまで外出を控えてきた他種による狩りを促した。その間に、屋外の環境に耐えられず、ゆ
っくりしてしまう個体も生じ、過酷な屋外環境で短命に終わるゆっくりも多かった。
その一方、他種が屋外に出るようになったのが晩秋の弱い太陽光線下であったことが、屋外環
境への漸進的な適応を促した。結果的に生じたのが体色の黒化である。

焼き饅頭とでも表現するべきだろうか?
褐色の肌を持ったれいむ、みょん、ありす、ちぇんたちは、昼の太陽光線下での活動性、光劣
化への耐性が大幅に向上し、海岸の群れの食料収集効率は急上昇した。
この現象は依然として大きな帽子に頼るまりさ種(時折現れるるいず種も同様である)、また、
海と違い、太陽光線への遮蔽物が多い、林野で活動する崖の風葬窟のゆっくりには見られなか
った。
まさに、ゆっくりの亜熱帯の海岸環境への適応と言える現象であった。

余談だが、後にこの褐色れいむ、褐色みょんから、それぞれがんぐろれいむ、きりんみょんと
呼ばれる愛玩用変種が人工的に作成され、新たな喜劇・悲劇を生むことになる。

ある日、海岸の巣に帰ってきた隊長まりさは親友の「パン屋の二代目」ちぇんを呼び出した。

「どうしたのまりさ?相談事なんだんね~分かるよ~!」
「ちぇん!ゆっくり聞いてね…実はまりさ、ゆっくりぷろぽ~ずしようと思ってるんだよ!」
「それは素敵なんだね~分かるよ~!で、お相手は誰~?分からないよ~?」

隊長まりさはただ黙って前方を見つめていた。ちぇんが、ふとその視線の先を追うと、そこに
いたのは

「ぱぱ!!そろそろれいむも狩りさんに行きたいよ~!!!」

まだ親の保護がなければやっていけない子れいむだった。

「…!?…」

いぶかしげな表情で隊長まりさを見つめるちぇん、
そんなちぇんに隊長まりさは力強くうなずいた。

「まだおとなじゃないよおおおお゛!!わからないよおおおおお゛!?」
「ちぇん、まりさは…まりさはね…」

ちぇんは驚愕の表情のまま、隊長まりさの次の言葉を待った。

「まりさは…ろりこんなんだ…」
「!?」

待って損した。なお、ろりこんとはろりーゆこんぷれっくすの略語である。

「か、ゆっくり勘違いしないでね!!ゆかりんみたいなばばあだって大歓迎だよ!!!」
「???」

その眼に曇りはなかった。

「ただ、今好きになったのはたまたまあのれいむだったってだけなんだ!だからってどうっ
てことはないんだよ!まりさはまりさだよ!!」
「……」

「パン屋の二代目」は何も言えなかった。
隊長まりさがあにゃるに日傘を突っ込まれて倒れていたのは翌日、隊長まりさと子れいむが
番になったのは、その翌々日のことである。子れいむの方も、「隊長さん」と隊長まりさの
ことを呼び、懐いていた。また、隊長まりさはこの群れの中では優秀と名高く、相手の両親
も反対しなかった。ふぁーすとすっきりは大分後のことになりそうだったが。

その頃、海岸の群れに珍客があった。かつての崖の風葬窟のしょきちょう、なずーりんであ
る。

「れみりゃの襲撃によって群れを壊滅に追い込まれた責任により、群れをゆっくり離れるこ
とになりました。ぜひとも、ぱちゅりーさまのような優秀な指導者に率いられた群れで余生
をゆっくりしたいのです。無能非才の身ですが、お願いします。」

なずーりんは平身低頭して、海岸の群れに加えてもらえるよう若ぱちゅりーに頼んだ。そこ
にはかつての傲岸不遜な態度は微塵も感じられなかった。ただ、その張り付いたような笑顔
だけは変わらなかった。

「むきゅう…どうしましょう…」

若ぱちゅりーは、隊長まりさの報告からこのなずーりんにあまりいい感情を持っていなかっ
たが、以前、こちらの群れの余剰ゆん口を受け入れてもらった恩はある。実際に、群れの中
でのなずーりんの振る舞いを見ていたわけではないので、判断しかねたのである。
若ぱちゅりーは群れの幹部―隊長まりさ、「パン屋の二代目」ちぇん、そしてふとっちょの
褐色れいむ、通称「デイヴ」の三匹に相談した。

ちぇんは一匹遅れて若ぱちゅりーのもとにやってきた。その口には今朝海岸に打ち上げられ
ていたアオリイカの卵がくわえられている。
若ぱちゅりーの避難がましい視線が、その卵を射抜く。

「?…ああ、噛み切れないイカのたまごさんでも、ずっと噛んでると美味しくいただけるん
だよ~!分かるね~!」

完全に論点がずれていた。若ぱちゅりーはため息をつくと、なずーりんのことをみんなに相
談した。最初に口を開いたのはデイヴだった。

「かつてのりーだーがあんなに頭下げてるんだよ!ゆっくり受け入れてやろうよ!!」

話す度にそのほほのたるんだ肉が震える。

「でも、なずーりんは群れをゆっくりできなくしたんだよ!!」
「捕食種はしょうがないよ!!もし、なにかみんながゆっくりできないことをするようなら、
その時はこのデイヴがせーさいするよ!」

その後も議論は続くが平行線だった。隊長まりさはなずーりんにある種の不気味さを感じて
いたが、ちぇんはご馳走してもらった恩があるせいかあまり気にしていなかった。そして、
何より、彼らはなずーりんが群れを追い出された詳細など知らなかったのである。
若ぱちゅりーはなずーりんを呼び出した。

「むきゅう、なずーりんを受け入れるわ。ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!この群れのためにこの身を粉にしてゆっくりするよ!!」

こうしてなずーりんは海岸の群れの一員になった。
なずーりんは見事な手際で巣を作ると、とあるまりさの巣を訪ねた。

「なずーりんか、待ってたよ!ゆっくりしていってね!」

それは武闘派であるデイヴのぶれーんを努めているまりさ、その舌の長さから「蛇の舌」と
呼ばれているまりさだった。幹部として君臨しているのはデイヴだったが、デイヴはある種
の筋肉馬鹿であり、実質的にデイヴとその一派をコントロールしているのは「蛇の舌」だっ
た。なずーりんは「蛇の舌」まりさに多大な賄賂を贈り、デイヴが自分に味方してくれるよ
う頼んだのである。

「ありがとうまりさ、おかげでこの群れの一員になれたよ。」

そう言ってなずーりんは、シダの葉の包みをまりさに渡した。その中には、身軽ななずーり
んでしか取れないバッタがたくさん包まれていた。

「ゆへへへ、なずーりんのとってくるごはんさんはゆっくりできるよ…」

「蛇の舌」まりさは包みを受け取ると、それを帽子の中にしまいこんだ。

「デイヴは今、赤ゆたちがうるさくてなかなかゆっくりできないでいるよ。赤ゆたちにごは
んさんやあまあまさんを持っていけば、デイヴもゆっくりできるよ。」
「ありがとう、そうさせてもらうよ。」

なずーりんが「蛇の舌」まりさの巣から帰ろうとしたとき、「蛇の舌」まりさはなずーりん
を呼び止めた。

「今日は帰らずにまりさとすっきりしてゆっくりしてほしいよ!!ゆへへ、なずーりんみた
いな美ゆっくりとすっきりしたいよ!!まりさはなずーりんのためにゆっくりしないで働い
たよ!」

なずーりんは一瞬冷たい目をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻り、

「本当かい?僕もまりさみたいな素敵なゆっくりとすっきりしたかったんだ。」

と言って、赤く熟した果実を取り出した。

「ゆ?」
「それは何度もすっきりできるようになる果物さ、今夜はたっぷりすっきりしようよ!!」
「ゆゆ?それはゆっくりできるよ!むーしゃむーしゃ…」

そして数分後、そこには口とあにゃるから餡子を吐き出し、しーしーを垂れ流し続ける
「蛇の舌」まりさの姿があった。なずーりんが「蛇の舌」まりさに食べさせたのは、アルカ
ロイド系の毒を有するあのミフクラギの実だったのである。

「ゆげげ…ゆげえ…だじゅげで…なずーぢん…だじゅげ…」
「きたないまりさはゆっくり死んでね!!」

なずーりんは尻尾でまりさの帽子を取り上げると、それをまりさのうんうんの中に突っ込ん
だ。

「ゆべべえええ゛!!!までぃざの…おぼうじ…なんじぇ…」
「くそぶくろはくそぶくろらしく、うんうんとでもすっきりしてなよ。じゃあね!!」

なずーりんが去った後、「蛇の舌」まりさはまもなく死んだ。ぶれーんを欠いたデイヴの派
閥の中で、なずーりんの存在が大きくなるのに、そう時間はかからなかった。



その日は快晴だった。隊長まりさは新婚ほやほやの幼な妻に見送られ、漁に出た。

「ほくすぽくす・ふぃじぶず、ほくすぽくす・ふぃじぶず…」

幼な妻れいむが何やら、隊長まりさの背中で呪文のようなものを唱える。

「ゆゆ?れいむはなにをしてるの?」
「ゆふふ、これは隊長さんがぶじ帰ってこれるおまじないよ!ゆっくり漁をしてきてね!」
「ゆ~!れいむはとてもゆっくりしているよ!!ゆっくりしないで帰るよ!!」

でれでれでまりさが漁に出かけた。海岸は干潮によって沖まで潮が引き、あちこちでゆっく
りたちが漁をしている。去年の夏と違うところは、褐色の皮に包まれたゆっくりたちが帽子
を被ってせっせと漁に励んでいる点だった。

隊長まりさはまず、海岸に打ち上げられていたアオリイカの卵を採集した。半透明のエンド
ウマメのような鞘に入った卵が房ごと打ち揚げられている。大収穫だ。

「たくさんの卵さんはゆっくりできるよ~!!!」

次に隊長まりさは貝やカニを捕ろうと干上がった海岸を歩き回った。そこで思いもかけず出
会ったのは、屋外行動用のモンパノキ帽子被ったなずーりんだった。

「やあ!まりさ!ゆっくりしていってね!!」
「ゆゆ!なずーりん!ゆっくりしていってね!!」

なずーりんはもう同志を名前の前に付けなかった。

「まりさ、僕は海での狩りはあんまり経験ないんだ。教えてくれないかな?」

特に断る理由もなかったので、隊長まりさはなずーりんに漁の仕方を教えた。
ヤドカリは触っている間は貝殻に引っ込んで逃げないこと、カニははさみにやられないよう
に後ろから捕まえるか、叩いて軽く潰すこと、岩盤などに付着している二枚貝の捕り方、注
意しなければいけない有毒生物などなど…隊長まりさはかつての父まりさに勝るとも劣らな
い、漁の達人に成長していた。

「ありがとうまりさ!!おかげでたくさんのエサを取ることができたよ!これだけあればと
てもゆっくりできるよ!!」

なずーりんが集めたエサは一人で食べる量ではなかった。明らかに大勢で食べるような量だ
った。隊長まりさはなずーりんに家族ができたのか?といぶかしがったが、すぐに愛する幼
な妻のもとへ一刻も早く帰るため、エサ集めを再開した。



なずーりんはゆっくりたちに説いた。なぜ、みんな苦労してエサを集めなければいけないの
かと。なぜもっとゆっくりして生きていけないのかと。
それは、一部の者が、狩りで必要以上にエサを取り、貯蓄しているから。そして彼らはそれ
を努力の差と勝手な評価を下し、ゆっくりできないみんなを見下している。それさえなけれ
ば、もっと多くのゆっくりがゆっくりできるはずだ。
なずーりんは崖の風葬窟でやったのと同じように扇動した。ゆっくりたちは努力して生活を
向上させるよりも、暴力によって向上させる方を選んだ。そういう見方もできるだろう。

ある日、ちぇんはアダン林で狩りをしていた。近くの草花にとまっていたハナムグリをゆっ
くりにしては素早い動作で捕まえ、帽子の中にしまい込む。今は、子供が食べ盛りなのだ。
ちぇんには、今は亡きありすとの間に作った子ありすがいた。母ありすは海岸で漁をしてい
る時に大きなカニに襲われ、永遠にゆっくりしてしまったのである。

「こんにちは、同志ちぇん…」

ちぇんが振り向くと、そこにいたのは、かつて崖の風葬窟で何度も見た、あのしょきちょう
がいた。

「なずーりん!ゆっくりしていってね!」

だがその挨拶とは裏腹に、なずーりんの目に宿る光はとてもゆっくりできそうになかった。
ちぇんはいつの間にか、ゆっくりの一団に囲まれていた。

「みんなをゆっくりできなくしているくずはせーさいするよ!!!」
「お前みたいくずが群れででかい顔してるかられいむがゆっくりできないんだよ!!!」
「みんな何言ってるの?分からないよ~!!」

ちぇんはこのゆっくりたちが何を言いたいのか分からなかった。

「まりさたちだって頑張ってるのに、楽していいものむーしゃむーしゃしてるげすちぇんは
せーさいするよ!!」
「自分たちだけいい思いしているくずはれいむがせーさいするよ!!!」
「みんなのゆっくりを踏みにじるくずは死ぬがいいみょん!!」

なずーりんはゆっくりたちを扇動した演説をちぇんにも披露した。

「同志ちぇん、君は自らの罪を償い、そしてその死がこの群れにおけるかくめーの号砲とな
るんだ。」
「そんなのはかくめーなんてものじゃないよ~!分かるね~!」
「?」

ちぇんは顔色一つ変えずに言い返した。

「単なるやけだね~!分かるよ~!!なずーりんは頭いいけど、結局のところおばかさんな
んだね~!分かるよ~!」

なずーりんは激昂した。風葬窟での優越感と特権に満ちた生活は、なずーりんの自我を必要
以上に肥大させていたのである。そして肥大した自我は、自身への批判に過敏だった。

「えらそうな口をきくなああああ!!おいっ!!連れて来い!!」

なずーりんの後ろから、一匹のゆっくりが現れる。そのゆっくりは口の中に小さな子供をく
わえていた。ちぇんの子ありすだった。

「ゆわあああああん!!ちゃしゅけて!!ぴゃぴゃ~!!!」

子ありすは口の中から解放されると、ちぇんに向かって跳ねていく。

「ぴゃぴゃ~!ゆえええ゛ごわがっだぶぶっ!!!」

なずーりんは子ありすの上に飛び乗った。
子ありすの体後部がつぶれ、口から勢い良くカスタードクリームが吐き出される。

「おじびじゃん!!!」

本当は「最期の大隊」のメンバーであるちぇんに抵抗されたときのために拉致したのだが、
もうそんなことはどうでもよかった。
なずーりんはさらに尻尾を子ありすの右目に突き刺した。

「ゆぎゃあああああああああ゛!!!ありじゅのおべべがああああああ゛!!!」
「やべろ!!おじびじゃんはがんげーないよ!!!わがらないのおおお!?」

泣き叫ぶちぇんの顔を見てなずーりんは満足した。主導権を握ってよいのはなずーりんだ
けのはずなのだ。

「いい顔だね、同志ちぇん!!だいじょーぶ、君が抵抗せずに死んでくれれば、この薄汚
いおちびちゃんは解放してあげてもいいよ!!」
「…わかった…よ…」

ちぇんを取り囲んでいたゆっくりたちが、先の尖った木の枝を取り出し、ちぇんに詰め寄
る。

「…ちぇんを殺したら、自分たちがゆっくりできると本当に思っているのなら…殺してみ
るといいよ…?分かるといいね~?」

ちぇんは最期の瞬間を覚悟して堂々としていた。誰もこの丸腰の「パン屋の二代目」を前
に動けなった。その目から発せられる鋭い視線に気圧され、本当に殺していいものなのか、
躊躇していた。

「何をしてる!」

なずーりんは苛立った声で怒鳴った。しかし、誰も動かない。いや、動けないのだ。
なずーりんはゆっくりの一人から枝を奪うと、ちぇんの腹部に深々と刺し込んだ。

「ゆ゛!!!」

それを合図にしたかのように、他のゆっくりたちが一斉にちぇんに枝を刺す。なずーりん
はそれでも飽き足らず、ちぇんの両目を枝で掻き出し、髪を口でむしり取った。

「死ね!死ね!死ねええええ゛!!!」
「ゆぎ…ゆ゛…」

ちぇんは必死にこらえていた。悲鳴を挙げても、なずーりんを喜ばせるだけ、ならば一言
も聞かしてやるものか。

「ぴゃぴゃ~!!!!」
「ゆ゛!!おじびじゃ!!!」

なずーりんは開いたちぇんの口の奥深くに棒を刺し込んだ。棒はちぇんの体を貫通し、後
頭部へと突き抜けた。

「ゆぷ!!!」

ちぇんの中枢餡は破壊され、ついに事切れた。

「ぴゃぴゃ~!!!にゃにずんだこのくじゅ!!じね!ぴゃぴゃをがえぜ!!!」

たまらず、子ありすはなずーりんに体当たりをする。なずーりんはちぇんから枝を引き抜
くと、頭から、その子ありすに枝を刺し込んだ。

「ゆぎゅびゃああああああ゛!!!」

子ありすはカスタードを吐いて死んだ。

「片づけておけ!!!」

なずーりんは怒気を含んだ声でゆっくりたちに命じ、帰っていった。
翌日、ちぇん一家の不在に気づいた群れのゆっくちたちは捜索にあたったが、二匹の遺骸
が見つかることはなかった。隊長まりさは親友の死を悲しみ、何か嫌な感覚を感じたが、
それが何なのかは分からなかった。
悲しみにくれるちぇんの親族を慰め、その面倒を積極的に見たのはデイヴだった。そして、
周りのゆっくりたちは、それはデイヴの群れでの立場からすれば自然なことのように思っ
ていた。



その日もなずーりんはたくさんのエサをデイヴのところへ持参した。「なずーりんのおる
がん」で採集したスジエビや、海岸の二枚貝、ハンミョウの幼虫やヒルガオにつくのイモ
ムシ、よく熟したアダンの実などである。二枚貝はすべて割ってあり、すぐに食べられる
ように処理されていた。

「なずーりんにはいつもお世話になっているよ!!ゆっくりしていってね!!」

デイヴがほくほく顔で献上されたエサを見つめる。このデイヴは元来、ふぁらんくすを率
いて第一線で巣を守ってきた個体だが、なずーりんの贈り物と甘言によって、かつての質
実剛健な雰囲気はすっかり錆び付いていた。

「デイヴさまには群れに加えていただいた恩があります。いつまでもお役に立ちます。」

平身低頭し、忠臣を演じるなずーりん。

「おい!!どれー!!きゃわいいきゃわいいれいむにあまあまよこちぇ!!!」
「まりちゃにも!!はやきゅもってくればいのちだけはきゃんべんしてやるじぇ!!」

デイヴの子供たちがあまあまを見て騒ぎ出す。

「ゆ~…ごめんよなずーりん、おちびちゃんたち、でいぶがだらしないから、すっかり言
葉遣いが悪くなってしまって…」
「かわいいおちびちゃんが喜んでくださるならゆっくり気にしませんよ。」

なずーりんは笑顔を張り付けたまま、アダンの実を軽く潰して、赤ゆたちのところへ運ん
だ。
この赤ゆたちが、なずーりんの甘言と甘やかしによってゲス化してしまったことなど、デ
イヴは知る由もなかった。

「ぺーちゃぺーちゃ…ちあわしぇ~!!!」
「おいちいあまあまもってきちゃから、どれーのことゆるちてあげるんだじぇい!!!」
「ありがとうございます、れいむちゃん、まりさちゃん。」
「どぼじでれいむさまっていわないのおおお゛!!!ぶをわぎまえてよねええええ!!」
「どれーはめうえへのことばづかいゆっくりかんがえてねええ!!ばきゃなの!?じね
よ!」
「申し訳ございません、れいむさま、まりささま。」

赤ゆたちは、なずーりんが持ってくるあまあまや美味しいエサに舌が肥えてしまっていた。
そのため、デイヴが持ってくるエサでは満足できなくなっていた。おまけに、性格がゲス
化してしまい、デイヴは赤ゆたちの扱いにほとほと困っていた。結果として、ますますな
ずーりんを頼るしかなくなったのである。デイヴは最早なずーりんの傀儡と化していた。

「おい!どれー!!ちゅぎはかにさんがたべちゃいよ!!」
「ゆゆ!!まりちゃもかにしゃんがたべちゃいよ!!ちゃっちゃととってきちぇね!!」
「きゃわいいれいみゅにえさをけんじょーできるなんて、こーえーにおもっちぇね!!」
「まりちゃをあがめていいよ!!!きゃわいきゅてごめんにぇー!!!」

食べたばかりだというのに、赤ゆたちはまた騒ぎ始めた。なずーりんが来る以前は考えら
れなかった増長ぶりである。

「なずーりん、次はカニさんをとってきてほしいよ!」

武闘派で鳴らしたデイヴも子供には弱い、なずーりんは満面の笑顔で快諾した。

「最近、良い場所を見つけました。大きなカニがたくさんいます。明日ゆっくり取って来
ますので、デイヴさまやおちびちゃんだけでなく、はばつのみなさんにもご馳走したいで
す。」
「それはとてもゆっくりできるよ!!明日みんなを集めて待つよ!!ゆっくりとってきて
ね!」
「「ゆっくりしないでとってきちぇね!!」」

なずーりんは馬鹿に合わせることにいら立っていたが、デイヴたちの態度は満足すべきも
のだった。「パン屋の二代目」ちぇん亡き後、デイヴは最大派閥を形成した。その中には
ちぇんの親族も含まれていた。そしてその派閥の中心にいるのはなずーりんだった。

なずーりんはいずれはデイヴに取って代わり、じゆーとびょーどーを合言葉に、この群れ
で権力を握る算段だったのである。
そのために、多大な賄賂を贈り「蛇の舌」まりさを買収、一番オツムが弱いと思われたデ
イヴに取り入った。そして「パン屋の二代目」ちぇんは葬られ、残るは隊長まりさと若ぱ
ちゅりーだけだった。
隊長まりさは派閥らしいものを持っていないが、父まりさは前幹部、自身は「最後の大隊」
の指揮官という経歴を持つ英ゆんであり、七英ゆんの一人にも数えられていた。
なずーりんはできれば味方にしたいと考え、今まで隊長まりさに対する行動を控えてきた。
しかし、今は気にしていなかった。デイヴ派を操って若ぱちゅりーを倒し、そこで味方に
なりたいと請うなら良し、抵抗するなら圧倒的な戦力差で潰せば良いだけの話だった。

その日、なずーりんはいつもとは違う海岸へ漁に向かった。ここは、なずーりんが自慢の
跳躍力を生かして発見した穴場であり、大きなカニがたくさん棲息していた。

なずーりんは道具を巧みに使い、カニを一匹、また一匹と仕留めていった。そして、その
カニを手下となったゆっくりたちが帽子に仕舞い、デイヴの巣へと運んでいく。

なずーりんはこの宴会の席で再度扇動し、早ければ明日にも決起するつもりだった。
デイヴ派を乗っ取り、その力でこの群れを支配する。そしていずれ崖の風葬窟に対して熱
狂的再征服を行う、それがなずーりんの思い描く絵図だったのだ。

そんななずーりんの野心も知らず、デイヴたちはカニの第一陣が到着したその瞬間から、
食事をはじめていた。

「こんなカニさんはじめてだわ!!!おっきくてとかいはね!!!」
「うっめ!めっちゃうっめ!!!」
「まるで味のらすとじゃっじめんとやー!!!」
「むーしゃむーしゃ…しあわせええええええ!!!」

あのデイヴの赤ゆたちも、このカニにご満悦だった。

「うっみぇ!めっちゃうっみぇ!!!」
「ちあわしぇええええええ!!!どれーもたまにはいいちごとちゅるんにぇ!!!」

なずーりんの取ってきた大きなカニに舌鼓を打つ、デイヴとその一派のゆっくりたち。既
にそのほとんどのゆっくりがなずーりんに取り込まれていたなど、デイヴは気づく由もな
かった。

なずーりんは潮が満ちてきたことを知ると、デイヴのところに帰ることにした。その道す
がら、扇動するための演説の文句を考えながら跳ねていく。

なずーりんがしばらくして、デイヴの巣についたとき、そこにあったものは…

「あばばばばばばばばばばばばば」
「だばばーだーばーだばばーだばばーだばばーだーばー」
「あばばばばばばばばばばばばば」

何やら発狂した様子で口から泡を吹きながら奇声をあげる、デイヴ一派の変わり果てた姿
だった。

「!?これは…いったい何が!?」

なずーりんには何がどうなっているのかさっぱり分からなかった。

「ぱんぴょろすぽ~ん!!!」

あるれいむは奇声をあげ、ひたすら高速でぶりぶりとケツを降りながら、スプリンクラー
のようにしーしーを散布していた。

「んほおおおおお゛!!!んほほほほほほほほっほほほほほおおおおお゛!!!」

あるまりさは、水上移動時に使用するオールをあにゃるに突っ込み、それを壁にこすりつ
けながらうんうんを漏らして悲惨なことになっている。

「そのとき轢死がうごいたああああああああああ゛!!!」

あるありすは何か意味不明なことを喚きながら、自分の赤ゆの上でごーろごーろして、赤
ゆをすり潰していた。

なずーりんは、いや、群れの誰も知らなかったことだが、なずーりんが取ってきたカニに
は毒が含まれていた。毒成分の名はドウモイ酸、アミノ酸の一種で、記憶喪失性貝毒の原
因物質である。
貝毒と名がついているものの、毒そのものを産生するのは珪藻である。それが捕食を通し
て貝や、その貝を食べたカニに蓄積されるのだ。
記憶喪失性貝毒と名前の通り、摂取すれば海馬の特定部位を選択的に破壊し、重症患者に
は見当識障害、記憶障害をもたらし、長期の記憶喪失に苦しんだ患者もいたという。
ゆっくりの餡子にこのような毒がどう作用するかは不明だが、なずーりんが見たのは足り
ないどころか突き抜けてしまったゆっくりたちの姿だった。

「デイヴなにしてるんだ!?しっかりしろ!デイヴ!!」

デイヴはもう出ないにも関わらず、うんうんするよ、うんうんするよと息張っていた。そ
のうんうんを赤ゆたちが喜んで食べている。デイヴの巣の中には一面に混沌がぶちまけら
れていた。

「うっめ!これめっちゃうっめ!!んほほほほほほほほ!!!」
「あまあまさんはまりちゃだよ!!まりちゃはおぼうじざんともーりもーりするじぇ!!」

「ごはんさん見つけたよ!!!」

一匹の子まりさが何を思ったのか、なずーりんの頬に噛み付き、食いちぎった。

「ぎゃああああああ゛!!!」
「ごはんさんたべるよ!むーしゃむーしゃ…しあわべっ!!」

なずーりんは怒りに任せて子まりさを尻尾で引っぱたいた。

「ゆわああああああ゛!!!」

子まりさは勢いよく転がって行き、壁にぶつかって、染みになった。

「もっちょ…ゆっぐ…」

なずーりんの頬からは少しチーズが漏れていた。

「デイヴ何してるんだ!みんなに止めさせろ!!」

デイヴはそのうち口から泡を吹き出した。

「あばばばばばば」
「しっかりしろ!!デイヴ!!!僕が狩りに行っている間に何があったんだ!!!」

その一声が掛け声となった。

「狩りだ!!!狩りにでかけるよ!!!」

デイヴが音頭を取り、皆が一斉に外へと跳ねていく。
巣の中に残ったのはドウモイ酸を摂取しすぎて死亡したゆっくりの死体だけだった。

「あばばばばばばば」
「あまあまなカニさんのあにゃるをふろーらるに捕まえにいくよ!すっきりー!」

奇声をあげつつ行進する団体に、巣の中は騒然となった。しかし、彼らは周囲を気にする
こともなく潮が満ち始めた海に向かっていく。そして、曇天下で狩りが始まった。

あるまりさつむりは、

「獅子天雷閃迅槍・絶牙!!」

とシャコガイに頭から突っ込んだ。シャコガイは熱帯の海に生息する比較的大型の二枚貝
で、最大では200kgにも成長する。その貝殻は頑丈であり、貝殻を閉じる力は大根程度なら
簡単にへし折ってしまうとも言われている。
まりさつむりは貝殻のおかげで頭を切断されずに済んだが、そこから脱出することができ
なくなっていた。

「ゆゆ~!!!はなじでね!!まりじゃはがりをずるんだよ!!!はなじでね!!!」

じたばたと貝殻からあんよのみが飛び出して動いている。そこに毒の作用なのか、れいぱ
ー化したありすが襲い掛かった。

「んっほほほほほ!!!とかいはなまむまむを見つけたわああああ゛!!!」
「ゆぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!?」
「すっきりすっきりすっきりすっきりいいいいい゛!!!」

シャコガイに挟まれて動けない状態のまま、何度もすっきりさせられるつむり、栄養状態
が良かったせいか黒ずむことはなかったが、シャコガイの中で何本も茎が伸びていた。

「ゆべべ…ゆべ…あぎゃやぎゃがお…!!!」
「まだまだいくわよおおおおぎょおおおおおば!!!」

次の瞬間、れいぱーありすはぺにぺにの付け根は巨大なノコギリガザミのハサミ脚によっ
て挟まれていた。そして、ハサミ脚は一気に閉じられる。

ぶち

「ぺぺばねdすいwqljんうぇjjsjpjふぉえわ0うふぁh!!!」

ありすは声にならない声をあげて悶絶した。潮が満ちてきたことで、隠れていた、あるい
は沖の方に移動していた捕食者たちが帰ってきたのである。

「ゆ゛あああああ゛!!!ありじゅのめとろぼりだんなぺにぺにがあああああ!!!」

そろそろ毒の効果も切れてきたのだろうか?ありすは現状を理解したようだ。もっとも、
もうどうにもならなかったが…
ノコギリガザミはそのまま、ありすのかちゅーしゃや髪を少しずつ引きちぎっては口に
運んでいった。

「いじゃじゃっじゃじゃあああ!!!ありじゅのがみざんがあああああ゛!!!」

別のれいむは複数のカニに一度に挟まれ、

「いじゃいよおおおおお゛!!!はなじで!!がにざんはなじでえええええ!!!」

あんよを滑らせて、ごつごつしたフジツボが生えた岩場に転落してしまった。

「ゆ!ぉじょらをどんででででででででで!!!!」

そして、フジツボの生えた斜面を滑走していき、その体は大根おろしのように削られてい
く。

「ゆぎゃああああ゛あんよが!!!れいぶのあんよがああああ゛!!!」

そのれいむはあんよから背中がごっそり削り取られ、餡子がぼろぼろと漏れ出していた。

「ゆんやあああ゛!!!やべでね!!れいぶのからだざんこわれないでねえええ!!!」

無駄な足掻きだった。

「どぼじでえええええ゛!!!べべ!!!」

れいむはそのままフジツボによって、体をずたずたにされ、岩の上に餡子を撒き散らして
叩きつけられた。その衝撃で目が飛び出、口からはあふれ出た餡子は山盛りになっていた。

デイヴは潮が満ち、孤立した岩の上にぽつんと取り残されていた。

「やべてね!!おみずさんこないでね!!やべでね!!」

体の大きさが幸いしたのか、すっかり毒は抜けていたが、もうあんよは海水にひたひたと
浸かっていた。次第に皮がふやけてくる。

「だじゅげで!!!だれかだじゅげで!!!までぃざ!!!おぼうじ!!おぼうじでだず
げでええええ!!!」

デイヴは恐怖に駆られ、番のまりさを呼ぶ。しかし、まりさはシャコガイに挟まれ、胴体
を寸断されてとっくに永遠にゆっくりしていた。
海水は次第にあんよから口のあたりまで上ってきた。もうデイヴのあんよはぐずぐずにな
りつつあった。

「やだああああ゛!!!じにだぐない!!!だじゅげでええ!!!おみずじゃんはゆっぐ
りできないいいいいい゛!!!」

叫んだ瞬間に口から海水が入り込み、のどが焼かれる。

「げぼっ!!げぼぼっ!!!」

デイヴは意を決して、隣の岩まで飛び跳ねることにした。しかし、その距離はどうひいき
めに見てもゆっくりが跳躍できる距離ではなかった。

「できるよ…デイヴならきっとできるよ!!!ゆあああああ!!あ゛!?」

あんよに力をこめて飛びはねようとした瞬間、ぐずぐずだったあんよは崩壊した。

「あああああ゛でいぶのあんよがあああああああああ゛!!!」

そして上半身?だけがちぎれて飛び、デイヴは頭からサンゴに突っ込み、四散した。

「ひでヴっ!!!」

デイヴの赤ゆ二匹は、親とは別の場所で、やはり満ちた海水によって孤立していた。
前方は満ちた海水、後方は急な斜面、小さな足場の上で赤れいむと赤まりさは限られた足
場を巡って醜い争いを繰り広げていた。

「きょきょはきゃわいいれいみゅのばしょだよ!!!きちゃないまりちゃはうみにおちて
ちんでね!!!」
「ちがうよ!!まりちゃのばしょだよ!!あほづらのれいみゅこそちんでね!!みんなよ
ろこぶよ!!」

ぽよんぽよんと、お互いに体当たりを繰り返し、相手を破滅させようとする。
そうこうしている間に、海水面は上昇を続け、足場はさらに狭くなっていった。

「まりちゃ!!!ちね!!ちね!!いらないきょはちね!!!」
「ゆぎぎぎぎぎ!!いらないのはれいみゅだよ!!じゅようないよ!!!」

その時、まりさは閃いた。帽子に乗れば、ここから脱出して巣に戻れるのではないかと。
初めての狩り、その土壇場で野生の勘が閃いたのだろうか?

「ゆゆゆゆ~ん!!!まりちゃはてんざいだね!!まりちゃはおぼうじにのってゆっくり
すにもどるよ!!れいみゅはずっとそこにいちぇね!!まりちゃのあたまよくってごみぇ
んにぇ~!!!」

言うが早いか、帽子を海面に浮かべ、飛び乗る赤まりさ。

「ゆがああああん!!!なにちてるのおおお!!!れいみゅをひっちになってたちゅけな
きゃだめでちょおおおおお!!」

必死に抗議する赤れいむ、しかし、赤まりさは器用に海へと乗り出してしまった。

「ゆゆゆ~!ばいば~い!!ちんでねれいみゅううう!?」

その瞬間横波が赤まりさを帽子ごと飲み込み、赤まりさは岩に叩きつけられた。

「ゆぴゃ!!!」

餡子の染みだけが岩に残ったが、すぐに洗い流されてしまった。
成体のまりさ種ですら、潮が満ちてくる時間は波が荒いため、水上に繰り出すのを禁止し
ていた。
赤まりさでは、どうすることもできなかったのだ。
一匹だけ、足場に取り残された赤れいむ。その姿を見ている動物に気がついたのは次の瞬
間であった。その動物は急な斜面に難なく張り付き、赤れいむのことをじっと見ていた。

「おい!!ちょこのへんにゃの!!れいみゅさまをたちゅけろ!!そうすればどれーにち
てあげてもいいよ!!きゃわいくてごめんにぇええええ☆!!」

その動物は何も言わず、ただじっと赤れいむを見つめていた。

「おい!!きこえないにょおおお!?ばきゃなの!?しにゅの!?はやくれいみゅをたち
ゅけろ!!」

ぴこぴこともみあげを上下させて怒りをあらわにする赤れいむ。

「はやくたちゅけないときょろしゅべべ!?」

ぱく

赤れいむはオオヒキガエルによって一飲みにされてしまった。オオヒキガエルは「海のヒ
キガエル」とも呼ばれるカエルであり、浸透圧に弱いとされるケロちゃんの中では例外的
に海水にも耐性がある種である。

「ゆわああああああ゛!!くらいよおおおおお゛!!!だじゅげろ!!れいみゅをだじゅ
げろおお!」

赤れいむはしばらくオオヒキガエルの腹の中で騒いでいたが、オオヒキガエルは気にせず、
森の方へ帰っていった。小うるさい赤れいむの声は数時間もすると何も聞こえなくなった。



海岸にはたくさんのゆっくりの死体、あるいはその一部が打ち揚げられていた。
ドウモイ酸を多量に摂取したゆっくりは錯乱したまま死亡し、そうでなかったゆっくりは
錯乱から覚めた後で絶望して永遠にゆっくりした。
そして、自分が用意したエサで、自分の手足を壊滅させたとは知らないなずーりんは、海
岸でただ途方に暮れていた。

その周りを褐色みょんによって構成された群れの警ら隊「よーム戦士団」が囲んでいた。

「なずーりん、みんなに毒を盛った容疑があるみょん。りーだーのところまで同行しても
らうみょん。」



なずーりんはおとなしく従い、若ぱちゅりーの前に現れた。
若ぱちゅりーは人払いをし、なずーりんに問いかける。なずーりんは今でもなお、定番の
笑顔を張り付かせていた。
なずーりんは知らなかった。「パン屋の二代目」ちぇんが放った密偵によって、自分のデ
イヴ一派での行動が若ぱちゅりーにほとんど筒抜けだったことなど。
若ぱちゅりーはただ、もっと早く対応しなかったことだけを悔いていた。

「あのデイヴたちは困りものだったのよね。なずーりんが毒を盛ったんなら、罪は問わな
ければならないけど、せーせーはしたわ。」

若ぱちゅりーはかまをかけた。

「ぱちゅりーさま、あれは事故なのです。僕の話を聞いてくれれば、ゆっくり理解しても
らえます。それにここの群れは僕がいた群れよりもみんな活き活きしている!素晴らしい!
まだまだ僕はここでぱちゅりーさまのお役に立ちたいのです。いや、お役に立ちますよ!」
「なずーりんは自分の昔の群れは嫌いなの?」
「愚かな連中でした。ぱちゅりーさまと僕の素質の違いでしょうが、自分のゆっくりしか考
えられない連中でしたよ。」
「素敵なりーだーね。」

若ぱちゅりーの皮肉に対して、なずーりんは自己陶酔の色が見える表情でしゃべり続けた。
なずーりんは理解できていなかった。自分と異なる考え方で群れをまとめようとするゆっく
りがいることなど。だから安心してぺらぺらとしゃべった。
結局、なずーりんは権勢を得てからは、自分しか見ていなかったのだ。

「群れなんて、りーだーという名の主役を目立たせるための舞台に過ぎません。僕はもっと
素晴らしい役が演じられる舞台があるなら、自分の作り上げた群れでも罵倒して見せますと
も!」
「気に入らないわ。むきゅ!!」

なずーりんの体に痛みが走った。若ぱちゅりーがなずーりんの腹部に深々と五寸釘を突き刺
したのだ。それはあのうふふまりさが使っていた五寸釘だった。

「群れをダメにしたのは、なずーりんでしょう?」

なずーりんは信じられないといった表情で、しばらくぱくぱくと口を動かしていたが、第二
撃がなずーりんの右目を貫いた。

「ゆぎ…!!!この…くずがああああ!!!」
「むきゅ!?」

なずーりんは若ぱちゅりーを突き飛ばし、反撃に転じようとした。しかし、

「ほくす・ぽくす、以下省略!!!」
「ゆ゛!!?」

物陰に隠れていた隊長まりさが、後ろからなずーりんに木の枝を突き刺した。
なずーりんは腹と眼窩からチーズをぼとぼととこぼし、数分して動かなくなった。

それはもうなずーりんではなくなっていた。
死んだからではない。しゃべれなくなったからである。



島の中にどこからかやってきたゆっくりたちは、島の生態系を構成する一つの歯車として定
着しつつあった。もし、ゆっくりがいなくなれば、イノシシは、ヤマネコは、アカマタは、そ
して多くの生き物が食料不足となり、個体数を減らしてしまうだろう。
ゆっくりの侵入による生態系の混乱の時期は終わり、ゆっくりを構成要素として迎え入れた新
しい食物網は完成しつつあった。彼らは幻想の世界から来た不思議な饅頭ではなくなり、島の
生物となったのだ。

ゆん口が一気に減ってしまった崖の洞窟の中では、しょうが傷を癒しながら、愛する妻とわが
子とともにゆっくりしていた。

「ぴゃぴゃがはやくなおってくれるよう、ぺーろぺーろするよ!!!」
「ありがとうおちびちゃん!!ぱぱはすっかりよくなってきました。」

るいずはもうどこへも行こうとしなかった。例え、自分の本能に逆らおうとも、ずっとここで
しょうと添い遂げようと決意したのだ。しょうはそんなるいずに提案した。子供が大きくなっ
たら、一緒に島を見て回ろうと。

「るいず…もう一回すっきりしませんか?しょうはもっとおちびちゃんが欲しいです…」

頬を赤くしてるいずに見上げるように懇願するしょう。

「ベッドの中では『疾風うぉるふ』のくせに…」

「ゆえええええええ゛!!ぞんなごどいわないでぐだざいいいいいい゛!!!」

しょうは気にしていることを言われ、深く傷ついた。

「そうね、この子がもう少し大きくなったら、ゆっくり考えるわ!」

「本当ですか!!良かったぁ!!!」

だが、しょうは湧き上がる衝動を抑えきれない様子だった。

「るいず!るいず!るいず!るいずぅぅうううわぁあああああああああああああああああああ
あああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!るいずるいずるい
ずぅううぁわぁああああ!!!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハ
ースーハー!いい匂いだなぁ…くんくんんはぁっ!るいずたんのブロンドの髪をクンカクンカ
したいお!(以下略)」

(…明日出て行こうかしら…)

るいずは黙ってしょうの頭に乗っている花飾りを取り上げた。

「ゆあああああああ゛!!!しょうのおばなざんんん!!!ぞれがないどゆっぐりでぎまじぇ
えん!がえじでぐだざいいいいいいいい゛!!!」

「ゆゆ!おほしさまきれいだよ!!!」

洞窟から見える夜空には天の河がかかっていた。生まれたばかりの赤しょうには、初めて見る
天の河だった。

「おほしさまぺーろぺーろするよ!!ぺーろぺーろ…」

夜空の星をあまあまさんか何かと思っているのだろうか?子しょうは星をぺーろぺーろしよう
と小さな舌を必死に伸ばした。


島の生態系の均衡の中で、彼らは毎日数を増やし、そして減らしていくだろう。
通常種であろうが、希少種であろうが、すべてを包み込む、無慈悲な自然は公正だった。
それは何の変哲もない、自然の中のありふれた一幕に過ぎなかった。


幻想が終わり、自然の摂理が始まる



  完



神奈子さまの一信徒です。

南の島シリーズは以上で閉幕となります。読んでくださった皆様、ありがとうございました。
自然の中でのゆっくりの生き死にを描写してみようとして、途中変な方向にひゃっはーしなが
ら、終幕を迎えることができました。

本作品を面白がってくれた皆様ありがとうございました。ゆっくりできなかった皆様、機会あ
れば次はゆっくりしていただけるよう精進したいと思います。

余裕があれば、洒落でゆっくりの生態論文でも書いて、ぬえあたりに投稿してみようと思いま
す。興味があるという奇特な方はゆっくりお待ちください。

最後に感想を書いてくださった皆様と、素晴らしいSSや絵を書かれている他の作者の皆様に心
からの感謝を。


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感想

すべてのコメントを見る
  • お星さまぺーろーぺーろが銀□伝のあのシーンだと今更気付いた -- 2023-09-03 00:14:55
  • ナズーリンは権力を手にしてからは本当にどうしようもなかったな。
    シリーズ前半と後半でだいぶ空気が変わったけど、面白かった。 -- 2012-01-29 00:15:56
  • なんか隊長まりさは空気だったなあ
    隊長まりさが主役の南の島生態記と
    なずーりんが主役の南の島の赤い行状記は分けた方がよかったね
    途中までは早く隊長まりさを殺せとか思ってたけど最後の方は空気過ぎてどうでもよくなったよ
    -- 2011-10-02 23:33:47
  • 銀河英雄伝説ネタとかが散りばめられていて面白かったですね -- 2011-09-18 19:19:42
  • まあこのSSのネタを面白くないと感じるかどうかはその人の見識の広さによるだろうな。
    シリーズ通して非常に楽しめた。自然との付き合いからなずーりんの政略戦争まで全部面白かったよ。 -- 2011-01-06 02:38:40
  • 最後www しょうww

    げすなずーりんが制裁されてすっきりー!

    確かに、しょうはでいぶと同じような感じにみえたな。
    物をなくしてなずに頼るとか…だめだめにしか思えない。
    ろりす達の方が頑張ってたし、死ぬのが惜しいかったわ -- 2010-11-13 22:13:46
  • 最後のやりたかっただけだろww -- 2010-09-16 14:25:20
  • まぁなんだ、なずーりんが制裁されたから良しとしようや。 -- 2010-08-27 04:10:48
  • このシリーズを続けて読んでて、ムカついたね、なずーりんには
    優秀なんだけど他ゆんを洗脳して自分の良いようにする宗教の教祖みたいなゲス感がある
    存在自体が不快なゆっくりを見たのははじめてだわ

    このシリーズはこの方向性に話を持っていったのは失敗だと思うけどなあ、中途半端なネタも面白くないし -- 2010-07-22 02:25:12
  • 変にドラマ性つけようとしておかしくなったな南の島とか関係ないし
    そしてナズーリンを悪者として描きたかったんだろうが
    餌場をきっちり見つけてきたり率先して餌取りに出かけたりと働き者な上
    しょうのほうは描かれ不足なのかはわからないがなにもしてなくて
    子供作ってゆっくりしてるだけというのがでいぶと同じ行動に見える
    いろいろ失敗して残念な感じがする -- 2010-07-22 00:20:55
  • だんだん変な方向に向かっていったなあ・・・。 -- 2010-06-13 12:39:09
  • 途中まではいいゆっくりと思ってたなずーりんがゲスで
    きちんと制裁してくれたのはゆっくりできた
    ただもうちょっと苦しんでほしかったなぁ -- 2010-04-05 14:12:48
最終更新:2010年02月13日 18:24
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