ふたば系ゆっくりいじめ 984 お話しゆっくり 中編

お話しゆっくり 中編 57KB


虐待-普通 制裁 仲違い 誤解・妬み 自滅 同族殺し 駆除 群れ ゲス ドスまりさ 現代 人間なし 独自設定 ゆっくり興亡史の最終話です(三部作・中編)


※独自設定が沢山あるんだぜ!
※人間さんは最後にちょろっと出て来るだけだぜ!
※虐待?それ何なんだぜ?
※『ちーと』なゆっくりが出てくるんだぜ!苦手な人はごめんだぜ!
※とんでもなく長いんだぜ!これで中編なんだぜ?
※『お尋ねゆっくり』の続きなんだぜ!……遅くなってご免なさぁああいい!

書いた奴:一言あき






雪に閉ざされた森に生える一本の老木、その根元に開いた空洞の中にそれは居た。
食糧を兼ねた干し草を厚く敷き詰めた上に鎮座するのはれいむとまりさの番である。
そしてれいむの額には、八人もの実ゆを鈴生りに生やした茎が伸びていた。

「れいむのあかちゃん、はやくうまれてきてね!いっしょにゆっくりしようね!」
「まりさのあかちゃん、はやくうまれてくるんだぜ!いっしょにゆっくりするんだぜ!」

この番は先程すっきりーっ!したばかりだった。当然、茎だって生えてきたばかりである。
茎で生まれる実ゆのにんっしんっ期間は大体三日程度。それくらいの時間を掛け、文字通りゆっくり生まれて来るものだ。

「……まだうまれないの?ゆっくりしすぎだよ……」
「ほんとなんだぜ!ゆっくりしないでいそいでほしいんだぜ!」

だというのに、この番は赤ゆの誕生を待ち切れないらしい。
次第に呼びかけの内容が変わっていく。否、それはもう口汚い罵声であった。

「はやくうまれてね!!れいむたちをゆっくりさせてね!!」
「これじゃまりさたちがゆっくりできないんだぜ!!さっさとうまれろぉおおっ!!」

最初のゆっくりした呼びかけとは程遠い罵声に急かされたのか、ゆっくりと大きくなっていく筈の実ゆがビデオの早回し映像のように急速に育ち始める。
青いプチトマトのような外見がみるみる大きくなり、皺が寄り始めたかと思うとあっという間に閉じた目と口に変化していく。
へたの部分が上下に分かれ、下の部分が細かく枝分かれしながら伸びていき、髪の毛に変わる。
残った上の部分が黒や赤に染まり、黒いものは円錐状に広がって帽子になり、赤いものは髪の毛に絡まってリボンになる。
そして苦悶の表情を浮かべた実ゆが一斉に身震いを始め、茎の一番先に生っていたまりさが干し草の上に着地した。

「……ゆ、ゆっくちちていっちぇにぇ!!」

怯えを含んだ初めてのご挨拶。
その舌足らずの拙い言葉を聞いた途端、殺伐とした気持ちが消えていくのをれいむとまりさは感じていた。

「「ゆっくりしていってね!!」」

先程まで罵声を浴びせていたとは思えない程の変わり身で、生まれ落ちた我が子を祝福する。

「ゆ~♪とってもゆっくりしたおちびちゃんだよ!」
「まりさににてとってもゆっくりしてるんだぜ!!」

そして次々に生まれ落ちてくる赤ゆ達。やはり怯えながらのご挨拶に、両親は心からゆっくりした笑顔で応える。
両親のゆっくりした姿に安心したのか、赤ゆ達もお互い「ゆっくち!ゆっくち!」と姉妹を祝福し始めた。
そして茎の根元で震えていた最後の一人がぽとりと落ちる。両親も姉妹も、末っ子を祝福しようとそちらに目を向けた途端、固まった。

「ゆっちちちちぇいっちぇちぇ!」

妙に甲高い声で舌足らずに過ぎるご挨拶をしてきたのは、恐らくまりさ種なのだろうと思われるゆっくりだった。
頭頂付近に集中した金髪の上にちょこんと載った明らかにサイズの足りていないお帽子。
寸胴の茄子を思わせる体躯を盛んに捻り、唾液を撒き散らしながら「ゆっちちぇ!ゆっちちぇ!」と締まりのない笑顔で舌足らずのご挨拶を繰り返している。
お帽子もある。金髪さんも生えている。愛らしい笑顔も浮かべている。
だが、そこに居たのは姉達とは似ても似つかない化け物だった。

「ゆぎゃぁああああ!!なんなのこれぇええええ!?」
「なんなんだぜ!?これはいったい、なにごとなんだぜ!?」
「「「「りぇいみゅのいもうちょぎゃぁああああ!?!?」」」」「「「まりしゃのいもうちょぎゃぁあああああ!?!?」」」

「……ゆっ?」

一斉に騒ぎ出す両親と姉達を、不自然に大きな目で不思議そうに見る末っ子まりさ。彼女は先天的に足りないゆっくり、『未熟ゆ』であった。
栄養が足りないため、餡子の継承が不十分だったため、単純にゆっくり出来なかったため。『未熟ゆ』が生まれて来る理由は諸説あるが、未だ特定はされていない。
はっきり言えるのは、そうして生まれた未熟ゆは例外無くゆっくり出来ないこと、それだけだ。
奇声を上げて奇行に走る末っ子まりさ、余りにゆっくりしていない姿に親まりさは『間引き』を決意した。

「ゆ、ゆっくりしていないげすなあかちゃんはせいっさいっするんだぜ!!」
「まって!まりさ!!」

だが、一気に踏み潰そうと力を溜める親まりさを親れいむが引き止めた。

「れいむ、どうしてとめるんだぜ!?このままじゃ、あかちゃんもまりさたちもゆっくりできなくなるんだぜ!?」
「……それでも、そのあかちゃんもれいむとまりさのおちびちゃんなんだよ。それに……」

れいむは視線を末っ子まりさに移す。相変わらず「ゆっちちぇ!ゆっちちぇ!」と奇声を上げて跳ね回る姿はゆっくり出来ていない。

「……ねぇ、まりさもれいむも、うまれるまえのあかちゃんになんていったか、おぼえてる?」
「ゆ?…………っ!!まさか、そのせい、なんだぜ?まりさとれいむが、あかちゃんをゆっくりさせなかったから……?」

れいむの言葉からまりさが恐る恐る出した推論に、沈痛な表情で首を縦に振るれいむ。
そう、この八人姉妹のうち、末っ子だけが未熟ゆだった理由は明らかだった。
即ち『早産』と『栄養不足』である。
通常三日かけるにんっしんっを僅か一時間程度に縮めたのだ。むしろ先に生まれた姉達に異常がないのが異常であろう。
本来均等に行き渡る筈だった餡子が姉達に優先された結果、そのツケを末っ子まりさが背負ったのだ。

「……まりさ。このおちびちゃんはすきでゆっくりできないわけじゃないよ。れいむたちと、おちびちゃんたちのせいでこうなっちゃんだよ。
……だからゆっくりできるよう、りっぱにそだてるのが、れいむたちのばつなんだよ、きっと」
「……わかったんだぜ、れいむ。このおちびちゃんもゆっくりそだてよう。いまはむりでも、いつかいっしょにゆっくりしてくれるかもしれないんだぜ」
「そうだね、そうなるようにゆっくりがんばろうね!」

ゆっくり出来ない子供を育てることを決意したまりさとれいむが、改めて未熟ゆに向き直る。
奇行に走っていた未熟ゆがそれに気付いて、舌足らずな甲高い声で「ゆっちちぇ!」と呼び掛けてくる姿に両親はありったけのゆっくりを込めてご挨拶を返した。

「「まりさ、ゆっくりしていってね!!」」



『お話しゆっくり 中編』



先行する集団を追いかける後続集団の、その最後尾に陣取る化け物まりさは不審に思っていた。

(おかしいのぜ、どすがぜんぜんはんげきしてこないのぜ。
……それに、なんでいつまでたってもどすにおいつかないのぜ?)

ドスの鈍足に誰も追い付かない、そんなことは有り得ない。ならば、なぜ?
そこまで考えが及んだ時、化け物まりさの脳裏にある可能性が浮上した。

(……もしかして、おいつかないんじゃなくて、おいつけない、ってことのぜ?)

ドスの足が速いのではなく、群れの足が遅いのでもなく、ドスに追い付けない理由があるとするなら……?
そんなもの、罠に決まっている!
そう考えると、反撃もせずひたすら逃げるだけのドスの行動にも説明が付く。
ほら、畦道の両脇で生い茂る草むらなど、ゆっくりが身を隠すには絶好の場所ではないか!

「ゆげぇっ!?しまったのぜ、これはどすのわななのぜ!!ぜんぐん、とまるのぜぇええええ!!」

慌てて全軍停止を命じる化け物まりさ。しかし先行していた集団には命令が届かす、ドスを追いかけたままどんどん引き離されて行く。
と、不意にドスが振り向き、先頭集団に向けてドススパークを放った。畦道一杯に広がる光芒が、先頭集団を灼き尽くす。

「ゆっ!?あぶなかったのぜ!あれはきっと、にげながらきのこさんをむーしゃむーしゃしていたのぜ!!」

間一髪、ドスの企みを見抜いた化け物まりさの言葉に、周囲のゆっくり達が一斉に安堵の溜め息を吐く。
もしも化け物まりさが居なかったら、今頃自分達もあの光で消し飛ばされていただろう。そう考えると、化け物まりさの聡明さが頼もしく思える。
先頭集団を吹き飛ばしたドスは、逃げもせず同じ場所に突っ立ったままだ。策を見抜かれて呆然としているのだろうか?
今度は慎重にドスに近付いていく化け物まりさの軍勢。落とし穴とその後の混乱で全体の三分の一程を失ったが、まだまだ数の優位は崩れない。
動かないドスを無数のゆっくり達が取り囲む。そして化け物まりさが文字通り化け物じみた、壮絶な笑顔を浮かべてドスの正面に歩み出た。

「……よくもさんざんてこずらせてくれたのぜ。でも、それももうおわりのぜ」
「…………」

化け物まりさの勝利宣言に、ドスは無言を返す。化け物まりさの軍勢は、それを降伏宣言と受け取った。

「ゆあぁああん?なんなんだぜ?いまさらいのちごいなんてきくわけないんだぜ!?」
「よくもれいむをゆっくりさせなかったね!しゃざいとばいしょうをせいきゅうするよ!あまあまをたくさんよういしてからしんでね!!」
「どすったら、ほんとうにいなかものだわ!!こうなったらどすでいちにちじゅうすっきりーっ!をするしかないわね!!」
「…………」

口々に罵声を浴びせる群れにも、冷めた目を向けるだけで反論もしない。
やがて言いたい事を言い尽くしたのか、ある程度群れの狂乱が収まった頃合いを見計らって、化け物まりさが宣言する。

「よーくきくのぜ!!まりささまをゆっくりさせなかったつみ!!まりささまをだまそうとしたつみ!!けらいをころしたつみ!!
ゆっくりぷれいすをひとりじめしたつみ!!どれいのくせにどれいをもったつみ!!ぜんぶあわせて、どすをしけいにするのぜ!!
……さいごになにかいいのこすことはあるのぜ?まりささまはやさしいから、まけおしみくらいはきいてやるのぜ」

それを聞いたドスが、始めて口を開く。

「……奴隷?まりさ達には奴隷なんて居ないよ?」
「とぼけるんじゃないのぜ!!にんげんをどれいにしていたのはわかっているのぜ!!」

化け物まりさの言葉に、軽く目を見開いたドスは直後、腹を抱えて笑い出した。

「あっはっは!!人間さんを、奴隷にする、だって!?出来る訳無いでしょう、そんな事!!!」
「なにをわらっているのぜ!?まりささまをばかにするのもいいかげんにするのぜ!?!?
……もういいのぜ!!どうせ、どすはここでしぬのぜ!!」

最初はドスも捕らえて死ぬまで扱き使うつもりだったが、気が変わった。こんな生意気で無礼なドスなんか、生かしておくだけ無駄だ。
死刑を執行するべく、全軍に命令を下そうとする化け物まりさ。

「みんな、しけいしっ…………!!な、なんなのぜこのおと!?」

だが、声を張り上げる寸前に聞こえてきた羽音に、餡子の隅がくすぐられる。餡子の奥底に封じた筈の、ゆっくり出来ない日々の記憶が甦る。
羽音は空から聞こえてきた。即座に空を見上げる化け物まりさと、つられて空を仰ぎ見る群れのゆっくり達の目に、『ソレ』は姿を現した。

「「「「「「「「「「れ、れ、れみりゃだぁああああああ!!!!!」」」」」」」」」」

そこに居たのはゆっくりれみりゃであった。
実はこの群れはれみりゃと戦った事が無い。森の奥に隠れ住んでるらしいれみりゃは数に勝る群れを恐れ、一度も姿を見せた事が無かった。
そう、『数の暴力』こそが化け物まりさの群れの強さ。捕食種にして天敵たるれみりゃすら寄せ付けない、あの森を化け物まりさの天下に染め上げた絶対強者の原理。
だから……、『百匹近いれみりゃの大群』という自分達以上の『数の暴力』に出会ったのは、これが初めてだったのだ。
胴付き、胴無し取り混ぜての混成軍、しかも胴付きはそれぞれ手に鋤や鍬、鎌や熊手、干し草用のフォークなどを持って構えている。
餡子の奥に刻まれた恐怖に怯え、群れの士気はあっさり砕け散った。

「どおしておひさまがでてるのにれみりゃがいるのぜぇ!?!?」

狂乱する群れの中にあって、化け物まりさだけは違う点に着目していた。
確かに、餡子をちりちりと焦がす恐怖はあるものの、れみりゃは一度やっつけた事があるのだ。なら今回だって勝てるに違いない。
しかし、太陽光に弱い筈のれみりゃが日中から活動している事だけは納得できない。
思わず口に出してしまった疑問、その答えは目の前に居るドスからもたらされた。

「……何言ってるの?お日様ならとっくに沈んでるよ?」
「なにいってるのぜ!?こんなにあか……る………い……………?」

ドスの言葉に激昂する化け物まりさが、ある事に気付く。
ここに到着した時、お日様は既に傾いていた。橙色に染まった夕日に照らされるお野菜を、確かに見た。
季節は晩秋、いや既に初冬に入っている。この季節の夕日ならとっくに沈んでいておかしくない。

(なのに……なのに!なんでこんなに、あかるいのぜぇ!?!?)

そう、ドスを追いかけている間、畑は常に光に満たされていた。太陽が地平線に沈み、辺りが夕闇に覆われても、畑は煌煌と照らされていたのだ。
広大な畑の中心、収穫を終えて休耕している畑が作る空き地で、スポットライトを浴びるように照らし出される化け物まりさとドス。
そしてドスは、推理を明かす探偵のように、あるいは判決を下す裁判官のように語り始めた。

「人間さんはね、夜でも昼間みたいに明るくする事が出来るんだよ。ゆっくりには絶対に真似できないけどね」

ドスの語りに、化け物まりさは応じない。黙りこくったまま、ひたすらドスを睨み付けるだけだ。
周囲のゆっくり達も雰囲気に呑まれたのか、騒ぎ立てる事無くドスの言葉を聞いている。静まり返った畑に、ドスの声とれみりゃの羽音だけが響き渡る。

「貴女達が来る事はとっくに気付いていたんだよ。でも、まりさ達がお願いして全部任せてもらったんだよ。……その代わり、ちょっとしたお手伝いを頼んだんだ。」

そこで言葉を区切り、ドスは化け物まりさの軍勢を睥睨する。

「人数の多い貴女達を、まりさ達だけじゃ撃退出来ない……、だから援軍をおねがいしたんだよ。人間さんが捕まえていたれみりゃ達に、ね」

その言葉を聞いた途端、一斉にざわめき出す軍勢。化け物まりさも、驚愕を禁じ得なかった。
人間が捕まえていた?これだけの数のれみりゃを!?ならば、人間とはどれ程居るというのか!!
驚愕にざわめく一同を余所に、ドスの語りは続く。

「れみりゃは、お日様に当たると死んじゃうからね。だから、まりさが囮になって逃げ回ってたんだよ。
落とし穴で逃げ道を塞いで、吹き矢で狙撃して逃げられなくして、畑で待ち伏せして。そうやって、時間を稼いだんだよ。
……お日様が沈んで、れみりゃ達が動けるようになるまで。それが、まりさ達の『作戦』だったんだよ」

そこまで言うと、ドスはまた口を噤む。
静まり返った畑に沈黙が下りる。耳が痛くなる程の静寂を破ったのは、化け物まりさの叫び声だった。

「……う、うるさいのぜぇえええええ!!へりくつこねてないで、さっさとしぬのぜぇええええ!!」

まりさは怒っていた。先程までの怒りが霞んでしまう程激怒していた。
ドスの言葉通りなら、最初から最後まで自分達はドスと人間に弄ばれていた事になる。
ふざけるな!ふざけるな!!ふざけるな!!!たかがれみりゃ百匹程度で、優位に立ったつもりか!?

「れみりゃなんか、おうさまにかかればひとひねりなのぜ!!なんびきいようが、おうさまにかてるわけないのぜ!!」

その言葉につられたのか、話の内容に着いていけずに呆然としていた群れが再び騒ぎ出した。

「そーだそーだ!!れいむたちはれみりゃなんかより、ずっとずっとつよいんだよ!!わかったらさっさとしんでね!!」
「まりささまのおうごんのあしわざをくらって、いきているゆっくりなんかいないんだぜ!!あとでこうかいしても、おそいんだぜ!!!」
「たまにはれみりゃもいいわぁああああ!!ありすのとかいはなぺにぺにですっきりーっ!しましょうねぇええええええ!!」

姦しく騒ぎ立てるが、誰もそこから動かない。威勢が良いのは口先だけで、内心では皆れみりゃに怯えているのだ。
そんな情けない配下の姿に我慢が出来なくなったのか、ドスに向かって化け物まりさが猛然と襲い掛かる。

「ゆっくりしないでしねぇええええぅぶびゃっ!?!?!?」

だが、その渾身の一撃はドスに届く寸前、横殴りの衝撃に阻まれる。化け物まりさが勢い良く地面に叩き付けられ、餡子を吐きながら無様に転がって行く。
いつの間にか、ドスを守るように一匹のれみりゃが立ちはだかっていた。手に持った鋤を振り抜いた姿のまま、化け物まりさを睨みつけている。

「……ありがとう、れみりゃ。でも、まりさなら平気だったよ?」

化け物まりさの突撃はそれ程速くもなかったし、大きさだって標準的なゆっくりと大差ない。武器を銜えている訳でもないので、ドスの脅威にはならなかっただろう。
ドスの言葉に、れみりゃは頭を振って答える。

「……それはわかってるんだど。それでも、れみぃはあいつをゆるせないんだど」

そう言うれみりゃの視線を追い、ドスは「ああ、そうか」と納得した。

「……そう言う事なられみりゃに任せるよ。でも、とどめは刺さないでね。それで良い?」
「……あたりまえなんだど。まかせるんだどぅ」

ドスの提案に正面を向いたまま頷くれみりゃ。油断無く鋤を構える視線の先で、よろよろと化け物まりさが身を起こす。

「よくもやったのぜ!!もうてかげんはなしなのぜ!!ないてあやまるならいまのうちなのぜ!!!」
「むだぐちたたいてないで、さっさとかかってくればいいんだど。……それとも、くちさきだけなんだど?」
「むきぃいいいいいいっ!!いわせておけば、もうゆるさないのぜぇえええええっ!!」
「ゆるさなければ、どうするんだど?れみぃはいつでもあいてするんだど?」

お互いに挑発し合いながら、化け物まりさは焦っていた。

(なんでなのぜ!?なんで、すきがぜんぜんみえないのぜ!?)

ドスならドススパークを撃つ為のキノコの咀嚼、まりさ種やちぇん種なら飛び掛かる寸前の溜め、レイパーありすならぺにぺにを突き入れる為に腰を引く一瞬。
何らかの行動を起こす前に挟まれる予備動作を見逃さず、その後の行動を予測して先手を打つ。人間の武術で言う『後の先』を取る戦い方こそが、化け物まりさの必勝法だ。
先程からの挑発もその為。れみりゃの出方を計り、先に行動させることで『後の先』を取ろうとしたのだが、挑発の最中でさえれみりゃに隙らしい隙が見出せない。
視線は常に化け物まりさに固定され、鋤を構える手はぴくりとも動かず、唯一口と羽根だけが休まず動いている。

(……このままじゃらちがあかないのぜ。ここはひとつ、せんてをうってみるのぜ!)

それは今までの定石から外れた行為ではあるが、れみりゃとまりさの実力差は歴然としている。今更遅れをとる筈が無い。
じり、じり、と罵り合いを続けながら間合いを詰めていく。体半分程歩みを進めた辺りで、まりさは鋤を構えるれみりゃの右腕に力が篭るのを感じ取った。

(みぎかひだりか、どっちかからなぐりかかるきなのぜ!?だったらうしろににげるのぜ!!)

咄嗟の判断に従い、まりさは背後へ飛び退く。直後、紙一重でれみりゃの鋤が空振りする、筈だった。

「……ゆっぎゃぁああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!?!?!?!?!?」

化け物まりさが悲鳴を上げてのたうち回る。転がる度に餡子がどくどくと流れ出るのが見えた。
横薙ぎに払われたれみりゃの鋤がかすり、顔の皮を切り裂いたのだ。傷痕だらけの顔に真新しい傷が刻まれ、そこから餡子が漏れ出ている。
幸い傷は浅く、流れ出る餡子も致命傷には程遠い。だが、餡子が流れるような大怪我から離れて久しかったまりさにとって、それは堪え難い激痛だった。

(み、みえなかったのぜ!?れみりゃにいつなぐられたのか、ぜんぜんわからなかったのぜ!?)

しかしそれ以上に、れみりゃの攻撃が見えなかった事が化け物まりさを慄然とさせた。
ドススパークでさえ避けてみせたまりさが見切れない程の高速で振るわれた鋤、そしてそれを為したれみりゃ。
違う。このれみりゃは、何かが違う。まりさの餡子に、未知なる敵への警鐘が五月蝿い位に鳴り響く。
と、再びれみりゃの右腕に力が篭る。それに反応したまりさが飛び退くよりも速く、鋤が再び皮を切り裂いた。

「ゆびゃぁあああああっ!?!?どうしてかわせないのぜ!?つ、つぎはかわすのぜ!!」

餡子を撒き散らし、痛みに泣き叫びながら、化け物まりさはれみりゃに挑み続けた。

一方、れみりゃは何も特別な事はしていなかった。間合いに踏み込んできた化け物まりさを、鋤で小突いているだけである。
尤も、その鋤は人間から見ても驚愕する程の速さと鋭さをもって振るわれていたのだが。

この村では少々変わった研究が行われていた。『ゆっくりの農奴化』である。
ゆっくりは農家にとって害獣だ。とはいえ、ゆっくりには農耕の概念を持つゆうか種がいる。
ゆうか種の胴付きであるのうかりん種に至っては、人間とほぼ変わらない高度な園芸技術を持つものさえいるのだ。決して不可能な事ではない。

しかし、ゆうか種は希少種だ。のうかりんに至っては更に稀少で、通常七桁、個体によっては八桁で取引されている。そんなもの、必要な頭数を揃えるだけで破産が決定してしまう。
そこでこの村が目をつけたのがれみりゃ種であった。
れみりゃ種は捕食種の中で唯一、通常種に区別されるゆっくりだ。胴付きであろうとそれは変わらず、野生では良く見受けられる。
太陽の光に弱いので日中は行動できないが、捕食種に相応しい力と『すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる』と称する道具を使う程度の小器用さを備えているので、農耕の概念さえ植え付ければ良い農奴になるだろう。
そう考えた村の有志達が、野山で採集してきたれみりゃの品種改良に着手したのが五年前。以降、細々と続けられてきた研究の成果こそ、このれみりゃ達であった。

このれみりゃはこの村で生まれた第五世代目のれみりゃである。この世代は寿命こそ三年前後と短いが、知性身体能力共に通常のれみりゃよりかなり高い。
なにより、ゆっくりの中でもれみりゃ種が特に鈍いと言われる反射神経の向上には目を見張るものがあった。
予備行動から行動に移るまで一切無駄無く最速で動く、人間で言う『無拍子』に近いれみりゃの動作が、まりさの『後の先』より速かった。
言葉にすればたったそれだけでしかない。それが、化け物まりさにとって最悪の相性だっただけの事。
何より、このれみりゃには『絶対敵わない理由』がある事を、化け物まりさは知らなかった。

れみりゃの右手に力がこもるのを見て、まりさは必死の勢いで飛び退く。
だが、飛び退く為にあんよに力を込めた時には、既にまりさの左側面にまで鋤が迫る。
さくりと軽い音を立て、鋤の刃が頬を撫でるように浅く斬りつけた。

「ゆびぇええ゛え゛え゛え゛っ゛!?みえないのぜぇっ!?ぜんぜんみえないのぜぇえええええっ!?」

新しく付けられた傷口から餡子が滲み出す。じくじくした痛みに苛まれながらも、化け物まりさは見えない攻撃を見切ろうと躍起になっていた。
自分は『ゆっくりのおうさま』なんだ!だかられみりゃなんかに負ける訳が無い!
この根拠の無い自信がまりさの心を奮い立たせる。最早まりさの視界には目前のれみりゃしか映っていない。
だから、背後で配下の軍勢が囁き合う声は一切耳に入らなかった。

「……どういうことなんだぜ?なんで、おうさまがおされているんだぜ?」
「あっちのれみりゃよりよわいよね?おうさまって、あんなによわかったっけ……?」
「……なんだか、おうさまよりあっちのれみりゃのほうがとかいはにみえるわ。どうしてかしら?」

小さな疑問の声は、次第に大きくなっていく。
背後で広がるざわめきにも気付かずに、挑戦を続ける化け物まりさと迎撃するれみりゃ。
そして決定的な瞬間が訪れる。

「……しまったど!!」

鋤を振るうれみりゃの表情が焦りの色に染まる。
それを訝しみながらも必死に飛び退くまりさの横っ面に、鋤の腹がクリーンヒットした。

「ゆ゛ぎゃ゛びぃ゛い゛い゛い゛い゛っ゛!?」

目測を誤り、まりさを真っ二つにしてしまう軌道で振るわれた鋤を、れみりゃが咄嗟に腕を返して腹の部分で殴り飛ばしたのだ。
空気抵抗により勢いを殺された一撃はそれでも充分な威力を持ってまりさを弾き飛ばし、地面に叩き付ける。
その拍子に化け物まりさが被っていた帽子が脱げ、隠れていた頭頂部の禿頭が曝け出された。

「……ゆっ、ばでぃざのおがざりざんが………!!」

ひらひらと空中を舞い、帽子は化け物まりさ達の激闘を遠巻きに見ていた群れの方へ流れていく。
れみりゃとの勝負を一旦置き、まりさは帽子を追いかける。
ゆっくりと流される帽子に向かって大きく跳ね飛び、見事帽子を空中でキャッチしたまりさはそのまま群れの目前に着地した。

「…………ば、ばでぃざのおがざりざん………もうなぐずのばいやなのぜ………………ゆっ?」

ひらひらした帽子は、息を吹き込むなどして一度広げないと被りにくい。
そのセオリーに従って息を吹き込むべく深呼吸をしようとした処で、化け物まりさはようやくその視線に気付く。
まりさが、れいむが、ありすが、群れのゆっくり達全てが、化け物まりさのことを見つめている。
その表情には一律に『信じられないものを見た』という思いが浮かんでいた。

「……なんなのぜ、そのめは?まりささまにさからうつもりのぜ?」

生意気な視線を向けてくる配下のゆっくり達に凄む化け物まりさ。傷だらけの顔面も相まって、気の弱いものなら確実に泣き出す形相である。
にも拘らず、群れのゆっくり達は無言のまま。
いつもなら『ごべんなざい!』だの『ゆるぢでぇ!』だのと泣き叫んでしーしーを漏らしながら従うのに、微動だにしない。

「……な、なんなのぜ!?まりささまは『おうさま』なのぜ!?おうさまのいうことがきけないのぜ!?」

何か、致命的なことが起こりつつある。内心の焦燥を押さえつつ、化け物まりさは虚勢を張った。
……そんなまりさの虚勢に沈黙を破って応えたのは、軍勢の先頭に立っていたれいむだった。

「……どうして……」

ふるふると震えながら俯いていたれいむが、呟くように漏らす。
その言葉に首を傾げる化け物まりさへ、顔を跳ね上げたれいむが叩き付けるように叫ぶ。

「どおしてまりさがそこにいるのぉおおおお゛お゛お゛お゛っ゛!?」
「ゆ゛ゆ゛っ゛!?!?」

突然叫び出したれいむの勢いに怯むまりさに、それまで黙っていた軍勢が一斉に騒ぎ出した。

「なんでだぜぇえええ!!なんでおうさまがまりさなんだぜぇええええ!?!?」
「ありすたちをだましてたのねぇええええ!?!?このいなかものぉおおお!!」
「おうさまのうそつきぃいいい!!でいぶのおちびちゃんをかえせぇえええ!!」

口々に非難の言葉を投げ掛ける軍勢の面々。だが、化け物まりさには避難される覚えは無い。

「な、なにをいってるのぜ!?まりささまはまりささまにきまってるのぜ!?まりささまがおうさまなのぜ!?」

狼狽えながらも、化け物まりさは軍勢に向かって弁明する。
お飾りが無いので一時的に認識出来なくなっただけだろうと当たりをつけての行動だったが、返って来た答えはまりさの想像を超えていた。

「ちがうんだぜ!!まりさたちのおうさまは『れみりゃ』なのぜぇええええ!!!」
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ゛!?!?!?」

何だそれは!一体いつ、まりさが『れみりゃ』だなんて言ったんだ!?
お帽子は確かにれみりゃのものだったが、一人称は『まりさ』だったし、自分の武勇伝も『まりさはれみりゃをたおしたのぜ!!このおぼうしがしょうこなのぜ!!』と語っていたのだ。
自分がれみりゃだ等と名乗った覚えも無いし、第一空を飛べないまりさをどうやってれみりゃだと思えたのだろうか。
化け物まりさの胸中はそんな疑問で溢れていた。



化け物まりさの群れは所謂ゲスで構成されている、群れというより犯罪ゆ集団と呼ぶべきものだ。
ゲスにもピンからキリまで色々あるが、ピンとキリの間には物凄い格差があった。
ピンのゲスは知能ではなく、力で押し切るタイプだ。当然餡子脳の中身も救い様のない馬鹿揃い、そんな奴らにお飾り以外での個体認識が出来る筈が無い。
キリの方は少し複雑だ。お飾りを使った詐欺等の常習犯である彼女達は、化け物まりさが『れみりゃ』では無い事を何となく察している。
だが彼女達はそれに気付きつつも敢えて『自分達の長はれみりゃである』と思い込んでいたのだ。
れみりゃに率いられた自分達はきっと特別なゆっくりに違いない、そう思う事で周囲を見下し、よりゆっくりする為に。
胴無しなのに会話が出来るのは特別なれみりゃだから、お空を飛べないのは他のれみりゃと喧嘩して羽根を無くしたから、自分達を食べないのは自分達が優秀だから。
明らかに無理があるこじつけで、無理矢理自分を騙していたのだ。『まりさ』という一人称を聞かなかったことにしてまで。

しかしそんな自己暗示も、どんな餡子脳であっても否定出来ない証拠を突付けられて尚、自分を騙し続けることなど出来なかった。
化け物まりさの失策は三つある。
れみりゃの帽子を被ったままれみりゃに挑んだこと、お飾りを失った状態で自分がまりさであることを暴露してしまったこと、そしてその状態で高圧的に接したこと。
まりさの『後の先』を成り立たせていたのは帽子のおかげであった。まりさの帽子をみたゆっくりは『れみりゃ』への根源的な恐怖に縛られ、動きが鈍る。
だから、本来の帽子の持ち主であるれみりゃには『後の先』は通用しなかった。それどころか、死臭漂うお帽子を見たれみりゃは、それが殺されたれみりゃのものである事に気付いて激怒した。
一撃では殺さない、じわりじわりと苦しみ抜いて死ね。それがれみりゃ達の総意であった。
帽子が脱げた後、自身を『まりさ』と呼んだのも致命的だった。
自分を『まりさ』と呼んだ瞬間、群れの認識は空の飛べない『れみりゃ』から帽子を失った『まりさ』へと書き換えられた。
そこへいつもの調子で居丈高に命令してしまったことで、群れ全員の餡子脳が『れみりゃ≠おうさま=まりさ』という事実を理解してしまったのだ。
全ては化け物まりさとゲスゆ達との認識のすれ違いが原因だった。



一斉に騒ぎ出したゲスゆ達に、れみりゃは五月蝿そうに顔を顰めてドスに問う。

「……もういいんだど?あいつら、ぜんぶたべちゃうんだど?」
「……もういいよ。でも、あのまりさだけは最後まで残してね」

ドスが頷くのを確認したれみりゃは手にした鋤を振りかざし、経過を空中で見守っていたれみりゃの群れに号令する。

「またせたんだど!!れみぃたちのすーぱー☆でなーたいむのはじまりなんだどぉ!!」
「「「「「「「「「「うっう~!!!!!」」」」」」」」」」

百匹近いれみりゃが鬨の声を挙げる。そして未だ騒ぎ続けるゲスゆ達に向かい、一斉に急降下を始めた。

「うそつきまりさはゆっくりしねぇ!!………ゆ゛わ゛っ゛!?!?」

化け物まりさをなじることに夢中だったゲスゆ達が気付いた時には、既にれみりゃの宴は始まっていた。
急降下してきたれみりゃに気付かずに罵倒していたれいむが、突然の浮遊感に戸惑う間もなく牙を突き立てられる痛みに襲われる。
その痛みに思わず上げた驚愕の叫びは、次の瞬間には餡子を啜られるおぞましい感触に対する絶叫に変わった。

「い゛や゛じゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!でい゛ぶの゛あ゛ん゛ござん゛ずわ゛な゛い゛でぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」
「……う~☆あまあまだど~☆おぜうさまのでなーたいむだど~☆」

れいむがどんなに泣き叫ぼうが、れみりゃは餡子を啜るのを止めない。むしろ暴れるれいむを逃がさないように、掴んだ手に力を込める。
万力のような力で挟まれたれいむはどんどん楕円形に変形していく。押し潰されて内圧の高まった餡子が出口を求めてれみりゃの口内へ流れ込む。

「ぢゅ゛ぶれ゛り゛ゅ゛う゛う゛う゛っ゛!!ぼう゛や゛べでぇ゛え゛え゛え゛え゛!!でい゛びゅ゛じに゛ぢゃ゛ぐな゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛い゛ぃ゛い゛!!」

れいむの必死の懇願なぞ耳に入らずに餡子を啜り続けるれみりゃ。やがてれいむが『……ゆ゛っ゛……ゆ゛っ゛』と断末魔の痙攣を始めた頃、れみりゃはようやく牙を抜いた。

「……こいつはもうおわりなんだど~☆ぽーいするんだど~☆」
(……ゆっ?…………で、でいぶ、たすかったの………?)

餡子の殆どを失い、断末魔の痙攣を起こしながらもしぶとく生きていたれいむが一条の望みを見出す。
尤もそれは錯覚に過ぎなかったのだが。

「……でも、ぽーいするまえにとどめさすんだど~☆いかしておいちゃいけないんだど~☆」
(ゆ゛びっ゛!!!!!)

言うが早いか、れみりゃはその手に持った鎌をれいむの脳天に突き刺す。
わずかに残っていた中枢餡を貫き、あにゃるから先端を覗かせた鎌はれいむの命を縋った希望ごと奪い尽くした。

(ど……ぼぢで……でいぶが………ごんなべに…………もっど……………ゆっ………く……………ち……………)

かつてとあるまりさを襲い、無理矢理すっきりーっ!させてにんっしんっし、子供を人質に扱き使った挙げ句、生まれてきたまりさ種を悉く潰してれいむ種の赤ゆだけを育てさせたゲスれいむは、
その罪に見合わぬ軽すぎる罰を受けながら、その幸運を最後まで理解しないまま、自分をゆっくりさせなかったこの世を逆恨みしながら果てた。
しかしそれは、他の百人余りのゆっくり達も同様であった。

「ばなぜぇえええええ!!ばでぃざばおうざばになるんだぁああああ!!おうざばに…………おう……………ざ……………ば…………」

化け物まりさを暗殺して次の『おうさま』になろうと目論んでいたまりさは、胴無しれみりゃに集られて餡子はおろか皮まで喰われてこの世から消滅した。

「いやぁあああああああ!!ありずのぺにぺにがぁああああああぁびゅっ!!!!」

赤ゆを専門にレイプしてまわり、その全てを殺してきたありすは鍬でぺにぺにを切り落とされた後、押し潰されて死んだ。

「ごべんなざぁああああいいい!!ぼうじまぜんがらゆるじでぇええええぎゅぼっ!!!」

何が悪いのかすら解らないまま、命乞いの為に謝り続けたれいむはフォークに串刺しになってくたばった。
その罪に反してあっさり訪れた死。尤も、それは決して慈悲などからもたらされたものでは無かった。

「……まだこんなにいるんだど~☆はやくしないとあさになっちゃうんだど~☆」

大きな熊手を振り回してゆっくり相手に無双していたれみりゃが大声で急かす。
そう、彼女達は単に時間を掛けたくなかっただけだった。今だ千人以上を残すゆっくりの大軍勢を始末する為に、最も効率の良い方法を選んだ結果に過ぎなかったのだ。

「い、いやじゃぁあああああっ!ばでぃざじにだぐないぃいいいいいい!!」
「でいぶだけでもだすかるよ!!まりざだぢはゆっくりじね!!」
「ごんなのどがいばじゃないぃいいいいいいっ!!!」

最前列に並ぶゆっくり達の凄惨な死に方を目撃した後続のゆっくり達が、先程の罵倒とは正反対の悲鳴を上げながら四方に逃げ出す。
だが、ゆっくり達の必死の逃避行は、それを先読みしたれみりゃの包囲網に阻まれた。

「どぼじでごごにでびりゃがいるのぉおおおおおっ!!……やじゃぁああ!!でいぶをだべないでごろじゃないでじにだくないじにだっ!!!」
「ま、まりさはおいしくないんだぜ!!だからみのがすんだぜ!!……ばなぜぇえええええ!!ばなじでぇええええぎゃっ!!!」
「ありずのがずだーどじゃんずわないでぇええええっ!!おねがいじまずぅううううう!!おねが………おね………お…………………」

あちらこちらで繰り返される醜い命乞いとそれを無視して振るわれる農具、そしてその度に飛び散る餡子。
休耕地となっていた畑は今、良質の肥料を啜る吸血鬼ならぬ吸餡地と化していた。

「ゆっへっへ、いまのうちなんだぜ!……そろーり……そろーり……」

とはいえ、千を越す大群を僅か百匹足らずのれみりゃで完全に包囲出来るものではない。
れみりゃ達の隙を突き、畑の茂みに身を潜めて生き延びたゆっくりも相当に存在していた。が……

「こ、ここなられみりゃにみつからないよ!……そろーり……そろーり……ゆびゃっ!!」

……折角隠れていても、動く度に大声で『そろーりそろーり』等と自分の居場所を教えていては意味が無い。
畑のあちこちで湧き上がる『そろーりそろーり』の大合唱に呆れながらも、れみりゃは駆除を続けていた。

「……まったく、おばかなやつらなんだぜ。『そろーりそろーり』なんて、あかちゃんのやることなんだぜ」
「そうね、しょせんいなかものだわ。とかいはなありすたちのむれにはやくぶそくだったのよ」

そんな間抜けな仲間達が駆除されるのを、畑に身を潜めながら冷たい目で眺めるもの達がいる。
このまりさとありすはどうにか畑に逃げ込むと、見つからないように周囲の葉や土で偽装して身を伏せていた。

「このままあさまでまつんだぜ。あかるくなったら、れみりゃたちもひっこむんだぜ」
「まぬけなどすだけなら、ありすのずのうぷれいでらくしょうだわ。とかいはなけいかくよね」

朝になれば、日光に弱いれみりゃ達は帰るだろう。厄介なれみりゃさえ居なければ、残ったドスなど問題ではない。
咄嗟に考えたにしてはそこそこ上手い策略である。れみりゃが手当り次第に畑を攻撃し始めたらどうするかとか、そもそも誰に翻弄されてこうなったのかを忘れてさえ居なければ。
そして、その程度の思惑はとっくにドス達が見抜いており、既に対策済みであることを除きさえすれば。

息を潜め、見つからないように縮こまっていたまりさとありすの頭上で羽音がする。
思わず声を上げそうになるのを必死に押さえて増々縮こまる二人の目に、空から下りてきた死神の姿がはっきりと映し出された。

「う~☆こんなところにいたんだど~☆」
「「どぼじででびりゃにみづがっでるのぉおおおっ!?!?!?」」

驚愕の叫びを上げる二人の目前で仁王立ちしていたのは、その手に角形ショベルを持った胴付きれみりゃだった。
まりさは混乱する。自分の偽装は完璧だった、バレる筈は無い。自分の所為で居場所がバレたのではない!
自分の所為でないのなら………ありすの所為に決まっている!
およそ余人には理解出来ない思考回路に導き出された結論に従い、ありすを罵倒しようとしたまりさの体に鈍い衝撃が走る。

「ゆぎゃあああっ!?なにするんだぜぇ!ありすぅうう!!」
「だまりなさいいなかもの!まりさのせいでみつかったじゃないの!!」

まりさの体にぶつかってきたもの、それは同様の推理でまりさの所為だと結論付けたありすの体当たりだった。
自分の責任を認めないその発言に、まりさは激昂して反撃に出た。

「なにいってるんだぜぇえええ!!わるいのはぜんぶありすのせいなんだぜぇええ!!」
「ぷぎゃっ!?よくもやったわねぇええええ!!!!」

状況を忘れ、まりさとありすは睨み合う。
お互いがお互いを悪いと罵り合う喜劇のような喧嘩は、始まる前に幕を下ろした。

「……やかましいんだど~☆えいっ☆」
「じね『パァン!』え゛びゅ゛っ゛!?」「んほ『パァン!』お゛ぼっ゛!?」

まりさとありすが忘れていた観客、れみりゃが持っていた角形ショベルによって、ゆん生の終幕というおまけを付けて。
ショベルによって叩き潰され、餡子とカスタードを散らして爆ぜると言う派手な最期を遂げた二人に一瞥をくれ、れみりゃは右手の親指を立てたガッツポーズを明後日の方向に向ける。
いや、それはポーズではなく、戦友に向けた敬礼であった。

れみりゃが敬礼を向けた茂みの奥、そのまま飛び去っていく彼女を見送った『彼女』はようやく身を起こした。

「……おれいをいわれるのはすじちがいだよ。れいむは、これくらいしかできなかったんだから」

自嘲気味に呟くのは、先程のまりさ達など比較にならない程精巧な偽装を施されたれいむであった。
体が半分程収まる穴に潜み、迷彩が施された上に草や葉っぱを取り付けて草むらに見せかけた防水布を被る姿は、目を凝らしても周囲と見分けが付かない。
れいむが、否、れいむ『達』が請け負った役割、それは『見張り』である。
れいむ種には特に秀でたものがない。運動能力ではまりさに劣り、知性の面ではぱちゅりーに劣り、瞬発力ではちぇんに劣り、武力においてはみょんに劣る。
正直、戦いの役には立たない。だからといって、座して結果を待つなど考えられなかったれいむ達自身が発案し、『彼ら』の協力を得て完璧な偽装を施した上で作戦に投入されたのだった。

「……ゆっ!またみつけたよ、あんなところにかくれていたんだね」

防水布と塹壕の狭間から目を凝らしていたれいむが、数メートル先で帽子に葉っぱを刺して偽装したまりさを発見した。
即座に口に銜えた手鏡を器用に扱って、上空のれみりゃに合図を送る。合図に気付いたれみりゃを反射光で誘導し、まりさの目前に着地させた。

「ゆびぇえええええっ!?なんでばれたんだぜぇええええっ!?」

弾かれたように踵を返して逃げ出すまりさ。その後頭部に向け、れみりゃは手にした鉈を大きく振りかぶり、勢い良く投げ付けた。

「ゆ゛べっ゛!!!」

鉈は回転しながらまりさに吸い込まれるように命中する。お帽子ごと幹竹割りにされたまりさは左右別々に跳ねるような動きを見せた後、開きになって絶命した。
鉈を回収したれみりゃがれいむに向けて親指を立てる。そして再び空へ舞い上がった。

「……ありがとう、れみりゃ」

れみりゃ達がいちいち親指を立てて感謝を示すのは、れいむ達が『見張り役』に引け目を感じているのを知っているからだ。
れいむが出来る精一杯がこの程度だという現実が、『れいむは無能である』という事実の証明だとれいむ達は考えている。
だから『そんなことはない』、『れいむたちはじゅうぶんやくにたっている』と励ましを込めて、れみりゃ達は親指を立ててくれるのだ。
その心遣いが嬉しい反面、余計な気を使わせてしまう自分の無力が悔しかった。

「もっとつよくなりたいな……、れみりゃみたいにはむりでも、まりさみたいに……」

れいむの心に火が点る。小さく燻っているそれは、れいむが生涯を懸ける目標を得た証拠だった。
しかし今は将来の夢より目の前の現実である。再び見張りに戻ったれいむは、ふと先程潰されたまりさとありすの遺骸に目を向けた。

「……ありす、『やくぶそく』のいみ、まちがってるよ。……どのみちありすも『やくたたず』だったけど。れいむとおなじだね」

冷静にありすの言い間違いを指摘すると、れいむの意識はは未だ流餡の絶えない戦場に向かう。もう、ちらりともそちらを向くことは無かった。



「ゆぷぷっ!みんなばかだね!れいむはおりこうだから、こんなわなにだまされたりしないよ!」

空のれみりゃと畑に潜んだれいむ達による二重の監視網も完全ではない。絶対的な頭数が不足している以上、どうしても取りこぼしは出てきてしまう。
畑の茂みと畦道を縫うようにして上空のれみりゃから身を隠しつつ、畑のれいむ達にも見つからないように逃げるこのれいむも、そんな取りこぼしの一人だった。

「さっきからおかおがぴかぴかしたれみりゃがおりてくるよ!きっとくさむらのなかにみはりがいるんだよ!
くさむらのなかにはいったやつらがころされたのもそのせいだよ!……だかられいむはくさむらにはいらないよ!」

驚くべきことに、このれいむは畑の監視網を読み切って対策まで立てていた。
草むらに隠れては上空を窺い、れみりゃの動向に注意しながら長時間同じ所に留まらず、草むらの中に居る見張りに見つからないよう畦道伝いに逃げる。
度胸と細心の注意が要求される高等なスニーキングミッションだったが、れいむは運良くどちらにも見つからずに逃げ延びることが出来た。
畑を照らす光も届かない薄暗がりに辿り着いたれいむはようやく胸を撫で下ろす。ここまでくれば占めたもの、後はあの森まで一目散に逃げるだけだ。

「ゆっくりしないでおうちかえるよ!れいむたちをだましていたおうさまはそこでくるしんでしんでね!」

背後で断末魔の悲鳴を上げる群れにそう言い残し、れいむは一寸先も見えない夜闇へ駆け出す。いや、駆け出そうとした。

「まって!そっちへいっちゃだめよ!!」
「ゆっ!?」

れいむのエクソダスを止めたのは、見覚えの無い一匹のありすだった。カチューシャにれいむ種の物とおぼしきリボンが付いている。
化け物まりさの群れでは獲物から奪ったお飾りを付けて見せびらかし、自分の力を誇示するのが流行っていた。このありすもその内の一人なのだろう。
敵ではないことを確認したれいむは安堵し、次いで怒り出す。

「ゆっ!ありす、おどかさないでね!」
「あら、それはごめんなさいね。……でも、そっちにいったらしんでたわよ、れいむ」
「ゆゆゆっ!?どういうこと!?」

ありすの爆弾発言に、れいむは度肝を抜かれる。目を丸くしたれいむに、ありすは言葉を重ねた。

「くわしいことはあとにしましょう。それより、すぃーをうばってにげましょう」
「ゆっ!?すぃーがあるの!?」
「ええ、それもこわれてないすぃーよ!」

あの森でスィーを持っているゆっくりは一人も居ない。化け物まりさが森の外れに捨てられていたスィーを見つけるまで、現物すら見たことが無かった。
そのスィーとて壊れて動かないので、化け物まりさは奴隷に引かせていたくらいだ。

「すぃーなられみりゃもおいつけないわ。それに、おうさまだってちゃんとしたすぃーはもってなかったんだもの。
すぃーをもってもりにかえれば、れいむとありすがつぎの『おうさま』よ!」

ありすの言葉がれいむの餡子に染み込んでいく。煽て上げに弱いのはゆっくり共通の弱点である。

「……なんで、れいむにそんなことはなすの……?ありすだけですぃーをうばえば、ありすがおうさまだよ……?」

だが、れいむとて地獄の戦場を生き延びたゆっくり。
元々れいむ種にしては聡明な頭脳の持ち主であったが故に、ありすの言葉を無条件で信用するような真似はしない。
スィーは全ゆっくり憧れの乗り物、野生でスィー持ちであることは王侯貴族並みのステータスだ。
れいむならそれを目の前にして、手柄を分けるような真似は間違ってもしないだろう。

「……ありすだけじゃ、ぬすめないのよ。すぃーのところに、みはりがいるの。だから……」
「……れいむをおとりにするつもり?いやだよ、そんなこと」

成る程、れいむを囮にしてその間にスィーを盗み出すつもりだった様だ。
しかしこの場における囮とは即ち捨て駒のこと。もちろんれいむにはそんなつもりは毛頭無い。

「……わかってるわよ。だからおとりはありすがやるわ。そのあいだにすぃーをぬすんでちょうだい。
すぃーにはかぎがついてて、あまりとおくにはいけなくなってるの。ありすならかぎをはずせるから、とちゅうでごうりゅうしましょう」
「ゆふん?……そういうことならひきうけるよ」

なかなか抜け目の無いありすだ。ありすの言う通りなら、森に帰るにはありすの助力が必要になる。
仮にそれが嘘だったとしても、それを証明出来ない限りれいむはありすを無視出来ない。無論この場で証明なんかできない以上、ありすを切り捨てる選択は有り得ない。
あまり見覚えは無いが、このありすは化け物まりさの群れの中でもかなりの切れ者のようだ。
わざわざれいむを指名したのも、ここまで逃げて来れた実力を見込んでのことだろう。ならばその言葉も信用に値する。

「そう、ありがとう。……こっちよ、ついてきて」

そう言うとありすは躊躇無く暗がりに足を向ける。その後をれいむが追う。
周囲を煌々と照らし出す照明が逆に作り出した影を伝い、未だ阿鼻叫喚が続く畑を迂回するようにそろそろと這って行く。

「……ここよ」

不意に、先行するありすの歩みが止まった。その言葉にれいむが覗いて見れば、二匹のゆっくりが大きな段ボ−ル箱を挟むようにして周囲を警戒していた。
二人は素早くお互いの役割を確認する。

「あのはこのなかにすぃーがあるの。ありすがしょうめんからちょうはつして、みはりをひきつけるわ。そうしたら……」
「……れいむがあのはこにしのびこんですぃーをうばうんだね。わかったよ」
「……かぎがかかっていてもあるていどまでならはしれるみたいだけど、どこまでうごけるのかはわからないの。
だから、すぃーをうばったらかのうなかぎりすばやくありすにおいついてちょうだい。かぎをはずしたら、そのままもりまでいっちょくせんよ」

ありすの言葉に頷くれいむ。尤も、彼女はありすを裏切るつもりだった。
とりあえず鍵を外す所までは共闘しているふりを続けよう。鍵を外したらこいつは用済み、もし鍵云々が作り話だったとしてもスィーの現物が手に入るなら幾らでもやりようはある。

(おうさまになるのは……れいむだけでいいんだよ………!!)

逸る内心を押さえ、見事なポーカーフェイスを浮かべるれいむに、緊張しているのか若干息の荒いありすが最後の指示を出す。

「……れいむはこのままあのはこのうしろにまわって。れいむがいちについたら、はじめましょう」
「わかったよ!おとり、がんばってね!」

口先だけの励ましを贈り、れいむは段ボールへ向かうため踵を返す。
ありすの目の前に、無防備なれいむの背中が向けられた。

裏切る気満々ではあっても、れいむはありすを信用していた。
持ち掛けられた話も説得力はあったし、何よりありすの手練手管は信用に値するものだったから。
……それが、命取りだった事に気付かないまま。

突然、れいむの背中にのしかかってくるありす。れいむのもみあげに、荒い息が吹き掛かる。

「ゆっ!?なにするのありす!!……ありす?」
「ゆふ~っ……ゆふ~っ……」

れいむの背筋に悪寒が走る。化け物まりさの群れで散々見てきた場面、それに符合する行為だったから。

「ゆふ~っ……れぇえええいぶぅううううううっ!!」
「ゆわぁああああああっ!!!れいぱーだぁああああああああ!!」

あまりのおぞましさにここが敵地であることを忘れ、れいむは叫ぶ。
なんてことだ、囮という大仕事への緊張感でありすがレイパー化してしまったらしい。
確かにストレスに弱いゆっくりなら過度の緊張はレイパー発症の引き金に成り得るが、よりにもよってこのタイミングで起こるなんて!!
無我夢中でありすの拘束から逃げ出そうともがくれいむの目に、段ボールを離れてこちらに近付いてくる影が映った。

「ゆ゛っ゛!?ぎづがれぢゃっだよ!!ばやぐどいでねありず!!ごのままじゃでいぶだぢごろざれぢゃうよぉおおおおっ!!」
「こうかいぷれいねぇえええ!!もえるわぁあああああっ!!んほぉおおおおっ!!」

駄目だこいつ早くなんとかしないと。もう四の五の言っていられる状態ではない、この状況を打破出来るなら敵であろうと構わない!
れいむは近付いてくるゆっくりに助けを求めた。

「だずげでぇえええええ!!れいばーにごろざれるぅうううううっ!!……ゆ゛びっ゛!?!?」

だが、近付いて来る影が露になるにつれ、れいむの目が驚愕と絶望に染まっていく。
遠目では解らなかった二匹のゆっくり、それは両方ともありすだった。

「ゆふ~っ……こんなところでおさかんねぇええ!!ありすもまぜてほしいわぁあああ!!」
「かわいいれいむねぇええええ!!とかいはにあいしてあげるわぁああああ!!!」

そして二匹とも、あのレイパー特有の嫌らしい目付きをして絡み合うれいむ達に迫って来る。
後門のありす、前門のレイパー。れいむの聡明な餡子脳は最早退路が無いことをはじき出す。

「ごっ゛ぢぐる゛な゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!ゆ゛ん゛や゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛づづづっ゛!!!!!!」

れいむに出来たのは、決して聞き入れられることの無い拒絶の絶叫を上げることだけであった。



三十分程経過した頃、ありす達はようやくれいむを解放した。頭から無数の茎を生やし、すっかり黒ずんだれいむには何の意味も無かったが。
一仕事終えたレイパー達に、また別のありすが近付いてくる。しかしこのありすは少々変わった姿をしていた。
何かが入ったネットを背負い、カチューシャに挟み込むように赤十字が描かれた紙切れを頭に乗せている。それは一昔前のナース帽のようだった。
ナース帽のありすは平然とレイパー達に歩み寄っていく。その姿からはレイパーに対する恐怖は微塵も感じられなかった。

「……おわったみたいね。おつかれさま、ありす」

レイパーに向かって親しげに話し掛けるナースありす。その言葉に対して、レイパーが至極冷静に言葉を返す。

「……ほんとうだわ。けがらわしいれいぱーのまねごとをしなきゃたたかえないなんて、ありすたちもしょせんありすってことかしら」

自嘲気味に零すレイパーに、他の二匹も同意する。その様子を、ナースありすは苦笑いと共に見ていた。
背中のネットを下ろし、中から三つの蜜柑を取り出す。それを差し出しつつ、ナースありすは三人を励ました。

「しかたないわね。ふだんとれいぱーじょうたいではぜんぜんつよさがちがうもの。つかえるなられいぱーでもつかう、それはわかっているでしょ?」
「……それくらい、わかっているわよ。……つぎ、いきましょう。てきはまだまだたくさんいるわ。……ぁむっ」

皮も剥かずに、蜜柑を口に放り込んで咀嚼するありす達。このありす達もまた、ドスが用意した戦力であった。

れいむ達の監視網でカバー出来る範囲はそう広くない。その為、予め畑の外周部に予備戦力を置き、取りこぼしたゆっくり達を迎撃する。
それがドス達の狙いだった。いくら主戦力をれみりゃに譲るとは言っても、ドスの群れは皆かなりの実力者だ。
武器を持ったみょんと吹き矢のまりさ達、そして監視網のれいむ達を除いても結構残る戦力を遊ばせておく理由は何処にも無い。
それぞれチーム分けされて配置された戦力の殆どはまりさとありす。まりさはともかく、まともにぶつかればひとたまりも無いことはありす自身が良く知っていた。
そこでこのチームでは『囮作戦』で釣り上げた獲物を『レイパー化』して倒す作戦を立案、実行していたのだ。
このれいむで三匹目、今の所『チーム・レイパー』の担当エリアから逃げ仰せた敵は居ない。それはありす達が完璧に役目を果たしていることの証明だった。

「それじゃ、ありすもいくわね。……どんなけがでも、しなないかぎりなんとかなるわ。だから、あきらめないでね」

そう激励して『チーム・レイパー』と分かれたナースありすも、ドス達の『作戦』の一環だった。
直接戦闘を可能な限り避け、ゲリラ戦法に徹しているとは言っても完全に無傷ではいられない。
その為、緊急時に備えて蜜柑とオレンジジュースを装備したありすが控えているのだ。
『彼ら』によってナース帽もどきを付けられた彼女達は、重傷者にはオレンジジュースを振り掛け、疲労困憊したゆっくりには蜜柑を振る舞って戦場に送り出す。
随分血腥いナイチンゲールだが、彼女達の存在が前線に立つゆっくり達の支えになっているのは事実だった。

「……まだまだたたかいはつづくわ。ほんとう、ありすたちもしょせんゆっくりなのよね」

溜め息を吐きつつ、巡回を続けるナースありす。その表情には深い諦観が表れていた。



畑のあちこちで谺する断末魔の絶叫は、化け物まりさの耳に入っていなかった。
いや、正しくは聞いてる余裕が無かっただけだが。

「こ……こんどこそ!こんどこそやっつけるのぜぇええええびゃぎゃあっ!!」
「……そろそろあきらめるんだど。なんどやっても、れみぃにかてるわけないんだど」

裏をかくつもりで入れたフェイントをあっさり見破られ、飛んできた鋤の腹に吹き飛ばされる。
地面に叩き付けられ、大きくバウンドしながら転がっていくまりさの姿に、れみりゃは呆れて肩をすくめた。

「う……うるさいのぜ………こんなの………なにかのまちがいなのぜ……………」

大きく息を吐きながら、化け物まりさは身を起こす。
致命傷を避け、薄皮一枚残して付けられた裂傷は、それを付けたれみりゃの技量を物語る。
体中から餡子を滲ませ、全身を満遍なく腫らしたまりさの姿は、彼女の技量がれみりゃのそれに及ばない事実を証明していた。

「ま……まりささまは……おうさまなのぜ………!……れみりゃをたおして………もういちど、しょうめいするのぜ…………!!」

それでも化け物まりさが挑み続ける理由、それは『プライド』の為だった。
家来達の反乱、まりさはその理由が目前のれみりゃにあると考えたのだ。
今まで手足のように従えていた群れが、実は自分ではなく帽子に忠誠を誓っていた。それは即ち、まりさ自身に価値が無いということ。
まりさの歪で根拠の無い自尊心はそれを認めることを拒絶した。

(れみりゃさえ……れみりゃさえたおせれば………!)

れみりゃを倒し、まりさの方が強いことを示せばきっと家来達も帰ってくる。再び自分を王様と呼び、ゆっくりさせるなら奴隷に堕とす位で勘弁してやろう。
その為には、このれみりゃを倒さなければ…………!
それが化け物まりさの出した結論であり、無謀な挑戦を続ける理由だった。

「いいかげんしつこいど!」
「ゆぎゃぁああああ゛あ゛あ゛っ゛!!」

しかしそんな自分勝手な結論なぞ、れみりゃにとっては文字通り知ったことではない。
無造作に振るわれた鋤の一薙ぎに弾かれて、化け物まりさは再び宙を舞う。
鋤の腹で引っ叩いて弾き飛ばす戦法に変えてから一時間弱、ずっとこの調子である。れみりゃの忍耐もそろそろ限界であった。

「はやくおわるんだど~……」

れみりゃとて最早付き合い切れない。
本音を言えばとっとと潰してしまいたいのだが、ドスから直々に『最後まで残しておいて欲しい』と頼まれた以上、殺してしまう訳にはいかない。
鋤を持つ手を返して刃を突き立ててやりたくなる衝動を必死に抑え、れみりゃはまりさを弾くことに専念する。
更に小一時間が経過し、れみりゃの我慢がいい加減尽きかけた頃、待ち望んでいたものはやって来た。

「おさーっ!ほうこくだよーっ!」
「……ゆ゛っ゛?」

れみりゃと化け物まりさの一方的な戦いを眺めていたドスに、その知らせを持ってきたゆっくりを見るや、化け物まりさの全てが止まった。
それを置き去りにして、ぴょんぴょんと跳ねてきたゆっくりはドスの元に着くと、背筋を伸ばして報告する。

「そこのまりさいがいのもりのむれ、にせんにひゃくじゅういちひき、せんめつかんりょうだよー!」
「……生き残りはいないの?あれだけの群れだし、もし生き残っていたら……」
「そのしんぱいはないんだよー!あかちゃんまでふくめて、ちゃんとちぇんたちがかぞえたとおりだったよー!」
「……こっちの被害は?」
「ししゃはいないんだよー!けがにんがじゅうよにんいるけど、すでにちりょうずみなんだよー!」
「解ったよ、有り難う。そうしたら皆に『集会所』で待機するように言っておいてね」
「わかったんだよー!」

ドスと親しげに言葉を交わしているのはちぇんだった。化け物まりさは、そのちぇんに見覚えがあった。

「……どぼぢで……」

フルフルと震えながら、化け物まりさはちぇんに向かう。近付いてくる化け物まりさに気付いたドスとちぇんが一瞬身構え、すぐに警戒を解いた。

「……なんで……なんで…………!!」

化け物まりさは既に満身創痍だった。
長時間殴られていた為に全身は腫れ上がり、あちこち黒ずんでいる。
古傷だらけの顔に新しく刻まれた傷からは餡子が滲みだしており、片目は完全に潰れていた。
最早跳ねる力さえ残っていないのだろう。力無く這いずる姿からは先程までの威勢の良さが微塵も感じられない。
ぼろぼろの体に覇気の無い隻眼。今の化け物まりさには脅威と呼べる部分が一切見受けられなかった。

「……どぼぢで……どぼぢで!!」

しかし、化け物まりさは自身の体などもうどうでも良かった。ドスとちぇんの会話に出てきた群れの末路さえ、まりさの耳には入らない。
まりさに残されたたった一つの目は、ドスの前に佇むちぇんの姿に釘付けになっていたのだから。

「どぼぢでぢぇんがぞごにいるのぜぇえええ゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!!」

そう、ドスを長と呼んだちぇんは、群れに最近やってきたあの奴隷ちぇんだった。
特に聞き分けが良かった為に、まりさの覚えも愛でたかったのだ。見間違える筈も無い。

「ま……まさか……うらぎったのぜ!?まりさが……れみりゃじゃないから……?」

ちぇんが裏切る理由はそれしか考えられない。そこに気付いて一層震えだす化け物まりさに、ちぇんが残酷な一言を掛けた。

「ちぇんはうらぎってないよー?さいしょっからどすのなかまなんだよー!わかってねー!?」
「ゆ゛っ゛!?!?!?」

従順だったちぇんから聞かされた、余りに予想外の言葉にまりさの視界が真っ白に染まる。
言葉を無くした彼女に、追い討ちをかけるようにちぇんが畳み掛ける。

「ちょっとまえに、ちぇんたちのむれにしんいりさんがきたんだねー!
そうしたら、さいきんもりのみんながまりさのむれにいじめられてるってきいたんだよー!
もしかしたら、このむらにまでおしかけてくるかもしれないっておもったどすとにんげんさんが、ちぇんたちにちょうさをいらいしたんだねー!」

ちぇんの言葉が届いているのかいないのか、化け物まりさは沈黙を守ったままだ。
しかしそれに関係なく、ちぇんの独演会は容赦なく続けられた。

「まりさたちはわからなかったみたいだけど、ちぇんたちはこうたいであのもりをみはっていたんだよー!
おかざりをこうかんしながらだったから、ばれなかったんだねー!……おみみのおかざりはそのままだったから、いつばれるかとひやひやだったけどねー!」

ちぇんの告白は終わらない。

外から調べるには限界もあったので、潜入調査に切り替えたこと。
群れにちぇんやみょんが殆どいなかった為に困難だったそれを、勝手に奴隷として引き込んでくれたので助かったこと。
なるべく従順な振りをしながら、群れの現状を把握する為に走り回ったこと。
そして主要な情報をあらかた調べ尽くした頃に、人間さんの村を襲撃する計画が立ち上がったこと。
ちぇん達がそのことをいち早く伝え、ドスと人間さんが迎撃態勢を整えていたこと。
群れのゆん口を把握していた為に、迎撃戦闘に参加せず撃墜数をカウントしていたこと。
そして、二千二百十一匹全ての死亡を確認してドスに報告しにきたこと。

全てを打ち明けたちぇんはやけにすっきりした表情で化け物まりさを見ている。
そこには罠にはめた優越感や、己が砂上の楼閣に君臨していた道化でしかないことを知らなかったまりさへの嘲弄も無い。
ただ、ちぇんの表情には一仕事終えた後の達成感だけが浮かんでいた。
ちぇんにとって、化け物まりさのことなどその程度でしかなかったのだ。

「……どぼぢで……」

長い沈黙の後、化け物まりさが絞り出すようにそれだけ言う。
まりさの栄光はお飾りによる幻想だった。れみりゃより強いと信じた武力は全く通じなかった。己の手足となる筈だった群れは一匹残らず消滅した。
その上、自分達の行動すら最初から最後まで人間とドスの掌の上で踊っていたに過ぎなかった。
自分が信じたものが全て幻だった事を突付けられたまりさの視線が、真直ぐドスを射抜く。

「どぼぢで……ばでぃざが……こんなべにあうのぜ……?にんげんって……なんなのぜ……?ばでぃざど……どずど……なにがぢがうのぜ……?」

まりさは知りたかった。
こんなに強い群れを率いるまりさが、何故人間と共にいるのか?何故あれほどのれみりゃが人間に捕われていたのか?
そして自分とドスの、一体何が違うのか?何故まりさがこんな酷い目に遭わなければいけないのか?
まりさは、どうしてもそれが知りたかった。



畦道を歩く足音が聞こえる。足音の方向に目を向けた化け物まりさは、そこで初めて『人間』を見た。

「おぉドス、ご苦労さん。悪いゆっくりの奴ら、全滅だって?」
「……うん、ここにいるまりさを除けばだけど」

ドスに話し掛けた人間は小さかった。お飾りも付けていないお顔からあんよに掛けて細く尖っている。
あれでは跳ねることさえ出来ないのではないか?正直、化け物まりさより小さいかも知れない。
……お顔の下、あんよがある辺りから伸びている胴を無視すれば。
れみりゃ達、胴付きゆっくりのそれよりも細長い胴体はドスの身長より低い。だが、化け物まりさの群れの誰よりも大きかった。
成る程、こんなものが群れをなしているのなら、れみりゃが敵わないのも当然なのかも知れない。

「……ずるいのぜ。こんなやつらがものすごくいっぱいいたら、まりさたちがかなうわけないのぜ」
「はぁ?何言ってんだ、この村でゆっくりに関わってるのは俺たち三人だけだぞ?……この畑の持ち主は除くがな」

悔し紛れの台詞に返された返答に、まりさは一瞬言葉を失った。

「……ゆっ!?だ、だって、あれだけのれみりゃをつかまえてるって……」
「あー、そりゃそうだが……、そもそもあれって俺一人で集めてきたもんだしな」
「ゆ゛ぅ゛う゛う゛う゛う゛っ゛!?」

信じられない。たった一人であれだけのれみりゃを捕まえるなぞ、化け物まりさの想像を超えていた。
それを見ていたドスが口を開き、子供に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

「人間さんはね、ずっとずっとずぅううっと昔から、ゆっくりプレイスを作る為に頑張ってきたんだ。それこそ、ゆっくりする事を忘れるくらいに。
何も無かった野原にお家を建てて、硬い地面さんを掘り返して柔らかくしてお野菜を植えて、大きなスィーで遠くまでいけるように広い道を造って。
……ゆっくりみたいにゆっくりプレイスを使い捨てる事もしないで、少しずつ少しずつ悪い所を治しながら、理想のゆっくりプレイスに変えてきたんだよ」

化け物まりさは驚愕する。この素敵な楽園を作ったのが人間であるという事実に。
……そして同時に、あることに思い至って戦慄した。

(そ……そんなゆっくりぷれいすなら……いままで、まりさたちが……ここを、しらなかったのって……まさか………!?)

餡の気が引き、蒼白となったまりさの表情を見て、ドスはまりさが正解に辿り着いた事を知った。

「そうだよ。人間さんは自分達のゆっくりプレイスを荒らす奴には容赦しないんだよ。
ゆっくりだけじゃなく、野犬さんや猪さん、熊さんも、人間さんには勝てなかったんだ」

一旦言葉を区切り、ドスは畑の外縁に広がる落とし穴を視線で示す。

「あそこの落とし穴も人間さんが作ったんだよ。人間さんのゆっくりプレイスを荒らす、悪いゆっくりを懲らしめる為に」

そう語るドスの目に一瞬苦いものが浮かび、すぐに消える。尤も、些細な変化に気付けたゆっくりは居なかったが。

「……まりさ達を撃った吹き矢やみょん達の剣、れみりゃ達の『すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる』も、人間さんが作ったんだよ。威力は見ての通り、凄いよね。
ドスなら、素手の人間さんと一対一なら勝てるだろうね。でも、二人いたら絶対に勝てない。人間さんが武器を持っていたら、一人とだって戦えないよ。
……だからドス達は人間さんと取引したんだ。『人間さんをゆっくりさせる代わりに、ゆっくりプレイスに入れてください』ってね」

まりさの顔色がどんどん髪のように白くなる。天辺禿の金髪すら色素を失っていく。
歯の根が合わない。カチカチと響く音を餡子に響かせながら、まりさは全身を振ってその言葉を聞くまいとした。
だが、ゆっくりの全身感覚はそれを許さない。塞ぐべき耳も手も持たぬまりさには、それを妨げる事は出来ないのだ。

「……まりさは最初から、戦う相手を間違えていたんだよ」
「ゆ゛ん゛や゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!!!!!」

化け物まりさは『ドスが人間を奴隷にしている』と思い込んでいた。しかし、現実は逆だった。
『人間がドス達を奴隷にしていた』のだ。しかも『ドス達の方からお願いして奴隷にしてもらった』と言うおまけ付きで。
そして、この恐るべきドス達を『たった三人』で屈服させた人間の力を、まりさは今初めて理解したのだ。

「……して……」

化け物まりさは目を伏せて呟く。その余りにもか細い声からは、かつての偉容など欠片も感じさせなかった。

「……ころして……まりさを、ころして…………!!」

最早まりさの心は完全に折れている。
信じていたものがまりさを裏切り、よってたかって彼女の心をへし折らんとする状況の全てに、完膚なきまで叩きのめされていたのだ。
そして今、初めて目の当たりにする人間の偉業に、まりさはようやく自身の敗北を受け入れる事が出来た。
完敗、言い訳出来ない程完全無欠の大敗北。
もうまりさには何も残っていない。全てを失い、恐らくはこれから命すら失おうというのに、彼女の心はいっそ穏やかでさえあった。

(もう、いいや……まりさ、つかれちゃったよ……)

自分にとどめを刺すのはドスだろうか?それとも人間さん?
どちらでも構わない。死ぬのは痛いかも知れないけれど、きっとこのまま生きるよりはゆっくりできるだろう。
まりさはそっと目を閉じて断罪の時を待つ。悟りの境地にも似た静謐な精神が、瀕死の彼女にその名の通りの『ゆっくり』を与えていた。

「おいおい、何言ってるんだよ。ここまでしといて、そんなに簡単に死ねる訳無いだろうが」

しかし、まりさを捕らえた死神の手は、人間の口を借りてまりさの決心を打ち砕いた。

「…………ゆ゛ぅ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛っ゛!?!?!?!?どぼぢでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!?!?」

嫌だ、これでもうゆっくり出来ると思ったのに、これ以上まりさから何を奪おうというのだ!?
一筋の希望すら踏み潰され、先程の静謐が嘘のように彼女の精神を蹂躙する。そしてそれを為した人間はまりさを無造作に掴むと、持っていた籠に押し込んだ。

「まあ、これから長い付き合いになるんだ。よろしくな、まりさ?」
「ごろ゛ぢでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!!ばでぃ゛ざを゛ごろ゛ぢでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!!」

決して受け入れられないと解っていながら、化け物まりさは己の死を懇願する。
絶望に満ちた絶叫が次第に遠ざかっていくのを見送りながら、ドスは一言だけ呟いた。

「……ごめんなさい」






※過去作とかは後編にて



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最終更新:2010年03月17日 09:26
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