ふたば系ゆっくりいじめ 203 まりさのだいじな

まりさのだいじな 19KB


【注意】
  • 冗長です
  • 俺設定あります
  • 愛でお兄さんが出ます
  • 一人称ザッピングがうざいです
  • ネタかぶりはご容赦を










うちではまりさを飼っている。
金バッジのまりさだ。
今日、ゴールド認定試験に合格したのだ。

「おにいさん! まりさやったよ!」
「がんばったもんなぁ、よくやったぞ、まりさ」

まりさの帽子の銀バッジを取り、代わりに金バッジをつけてやる。

ゴールド認定試験に合格したら、2つお願いを聞いてやる。
そのお願いの1つが、まりさの母親の、形見の金バッジだった。
鏡に映る、少しくすんだバッジを、まりさはうれしそうに眺めている。

満足したのか、しばらくしてまりさは俺のほうを振り返った。

「おにいさん、やくそくだよ! もうひとつ、まりさのおねがいをきいてね!」
「わかったわかった。あんまり無茶なことじゃなければな」





そして数日後。

「「ゆっくりしていってね!!」」
「……は?」
「おにいさん! まりさはれいむと、ずっとゆっくりしたいよ!!」










【まりさのだいじな】










数ヶ月前のこと。

「れいぱーに襲われた?」
「そうなんだよ……」

ゆっくりのブリーダーをしている友人が、ひどく落ち込んだ様子でうちに来た。

「うちの厩舎で一番の良餡統だったヤツなのに…」
「まあ、なんというか…お気の毒だな」



犬などのペットや家畜には血統書というものがある。
これは、その個体が純血種であることを証明するものだ。
ゆっくりにもそれに相当するものがあり、餡統書という。

もっとも、ゆっくりには取り替え子の問題もあるので、れいむ種やまりさ種などの純餡種を証明するものではない。
餡統書は、そのゆっくりがゴールドまたはシルバー認定された、優秀な個体の餡統であることを証明するものだ。

ゆっくりは母親から餡を引き継ぐため、良個体からは良個体が生まれやすい。
このため、代を重ねた餡統書を持つ個体は、繁殖用としてもペット用としても価値が高い。

だが、犬の血統書が交雑によって失効するように、餡統書もまた失効する場合がある。
具体的には、ブロンズ以下の個体とのすっきりすることだ。
餡の質が不安定になるのが理由らしく、ましてや野良とのすっきりなど論外だ。



れいぱーによって、友人の厩舎で稼ぎ頭だった個体の、餡統書が失効してしまった。
そのため、泣く泣くその個体をれいぱーごと潰してきたのだという。

「風評のこともあるから、手元に残っているあれの子供は商品に出来ない。
 そこで頼みがあるんだが…」

そういって友人は箱を取り出した。
そっとふたを開けると、綿が敷き詰められた中に、赤ゆっくりが1匹眠っている。

「あいつの最後の子供なんだ。
 商売のことがあるから、俺の手元では育てられない。
 無理を承知で頼む、代わりに育ててくれないか?」





あのときの赤ゆっくりが、目の前にいるまりさだ。
落ち込む友人も、その赤ゆっくりも、あまりに不憫だったので、つい引き受けてしまったのだ。

さすがに良餡統個体だけあって、しつけなどは楽だった。
シルバー認定試験も1ヶ月で合格するなど、知能も高かった。

だから、信じられなかった。
ゴールド認定試験のためにあれほど教え込んだ、「野良に近づいてはいけない」を守っていないことが。



…いや、思い出せ、ひとつだけ心当たりがある。

「まりさ」
「なに、おにいさん?」
「そのれいむ、どうしたんだ?」
「れいむはまりさのおともだちだよ! ちいさいころからおともだちなんだよ!」
「小さいって、いつ頃だ?」
「はるさんがゆっくりしてたころだよ! おにいさんはおさけさんでくさいくさいになってたよ!」

ああ、間違いない、春頃…毎日酔っぱらってたって言うと、花見の時期だ。
春のシルバー認定試験の後、ゴールド認定の勉強を始める前だ。

あの頃、シルバー認定に合格したご褒美に、1匹で外に出ることを許すようになった。
友人に注意され、すぐに柵で囲った庭以外には出てはいけないことにした。
だが確か、それまでのわずかの間に、まりさが野良と遊んでいるところを見た覚えがある。
その後も柵越しに時々会っているのを見かけたが、ゴールドの勉強が進むと見かけなくなったので、忘れていたのだ。



「おにいさん! れいむのはなしもきいてね!」
「お?」
「れいむもまりさのことがだいすきだよ! れいむのことをかってくれなくてもいいから、まりさとゆっくりさせてね!」

少し驚いた。
飼いゆっくりになることが目的でまりさをたぶらかしたのかと思ったが、飼われなくても構わないという。

確かに2匹とも身ごもった様子は無く、すっきりはしていないらしい。
それどころか、れいむはここまで余計な口を挟んでいない。
野良といえば好き勝手喚くだけだと思っていたが、このれいむは意外と知能が高いのかもしれない。



「…よし、わかった」
「「ゆ?」」
「れいむをうちで飼おう」
「「……ゆ?」」

あまりにあっさり許可が出たためか、2匹とも反応が薄い。

たっぷり2分は硬直した後、
「「…ゆ…ゆわぁーーーーーーーーーい!!!」」
そろって喜びを爆発させた。

「ゆわーーーーん!! ありがどうおにいざああああん!!」
「ゆっくりしようねまりさ!! ゆっくりしていってね!!」
「ただし!」
「「ゆゆ!?」」

はしゃぐ2匹に釘を刺す。

「お前たちには2つだけ約束を守ってもらう」
「ゆう…れいむとずっとゆっくりできるならしかたないよ」
「わかったよ! やくそくさんまもるよ!」



俺が提示した条件は、次のとおりだ。

  • まりさはれいむに、人間と暮らすためのルールを教える。
  • れいむがシルバー認定に合格するまではすっきり禁止。

「守れなかったときには、れいむにはうちから出て行ってもらう。いいな?」
「わかったよ! まりさがれいむをたすけるね!」
「れいむもがんばるよ!」

その日のうちにれいむを飼いゆ登録して銅バッジをつけ、2匹との生活が始まった。










1ヵ月後。

「ゆーん……またまちがえちゃったよ…」
「おしかったねれいむ! もうちょっとだったよ!」

まりさはれいむに、シルバー認定試験のための知識を教えていた。

れいむは野良にしては良い個体だった。
俺の家で暮らすようになり、最初は勝手が違うのか、トイレの場所を間違えるなどした。
その都度まりさが教え、一週間もする頃には普通の飼いゆっくりと変わらなくなっていた。

だが、シルバー認定の勉強となると話は別だ。
今もひらがなの書き取りをしているが、どうしても2,3個間違えてしまう。
数もようやく10は数えられるようになったが、20になるとまだ怪しい。

それでも俺は、特に心配していなかった。
餡統書付きのまりさと比べるから物覚えが悪く感じるが、元野良だと考えれば驚くべき伸びだ。
次のシルバー認定試験まで2ヶ月ある。
それだけあれば、れいむの合格は難しくないだろうと踏んでいた。



「もういっかいがんばろうね、れいむ!」
「まりさぁ、れいむもうつかれたよぉ…」

これも、れいむの根気が足りないわけではない。
今も1時間みっちりと勉強したところで、ゆっくりにしては頑張りすぎと言える。

「お前たち、そのくらいにして少し休憩しろ」
「ゆう、おにいさんがいうならしかたないね!」
「ふぅ…ゆっくりするよ…」

熱心なまりさ先生はまだまだこれからといった雰囲気だが、れいむはよほど疲れたのか、潰れたように床に広がって脱力している。
あまり甘やかすのはいけないが、頑張ったご褒美くらいは構わないだろう。

「ゆふふ、まりさぁ♪」
「ゆーん、くすぐったいよ、れいむ」

仲良く頬ずりをする2匹をおいて、おやつを取りに部屋を出た。



「まりさぁ…ゆゆ…」
「ゆ、すーりすーりはもうおわりにしようね」

そう言うと、まりさはれいむから離れた。

「ゆー! もっとゆっくりしようよ!」
「だめだよ! れいむがぎんばっじさんもらえるまで、すっきりしちゃいけないってやくそくだよ!」
「すっきりじゃないよ! すーりすーりだよ! だからもっとしようよ!」
「すーりすーりしすぎるとすっきりしたくなっちゃうんだよ! がまんしてね!」










れいむは不満だった。

まりさと一緒に暮らせているし、お兄さんは優しい、ご飯もおやつもとてもおいしい。
動物に襲われない安全なおうち、雨の心配の要らないやわらかい寝床。
野良だった頃には、こんな幸せな生活は考えられなかった。

それでも、れいむはゆっくり出来ていなかった。



れいむの母れいむは飼いゆっくりだった。
それが、野良とすっきりしたために捨てられた。

母れいむは何度も「ゆっくりさせてあげられなくてごめんね」と謝った。
それがれいむには不思議だった。
母れいむとのすーりすーり、家族そろってのゆっくりしたご飯、妹たちとの歌うお歌。
れいむはとてもゆっくり出来ていた。

ある日、れいむはゆっくりしたまりさと出会った。
お帽子につけたぴかぴかさんは、人間さんに「ゆっくりしたゆっくり」とほめられた証という。
日が傾くまで一緒に遊んで、また遊ぼうねと約束して、おうちに帰った。
晩御飯を食べ、寝る前にその日のゆっくりしたことをお話しした。



それから、母れいむは変わった。

「むーしゃむーしゃしあわせー」をすると、ゆっくりしていないと怒られた。
ご飯で顔を汚すと、ゆっくりしていないと怒られた。
お歌を歌うと、ゆっくりしていないと怒られた。

「にんげんさんにゆっくりさせてもらうためにだいじなことなんだよ! ゆっくりりかいしてね!」

母れいむはそう言うが、全然わからなかった。
れいむたちは自分でゆっくりしているのに、どうして人間さんにゆっくりさせてもらわないといけないのか。
今まで出来ていたゆっくりが出来なくなって、れいむは悲しかった。

ゆっくり出来ない柵に囲まれて出られなくなってしまったまりさに、最近ゆっくり出来ないと話した。
するとまりさは不思議なことを言った。

「おにいさんとまりさのおうちでゆっくりできるかもしれないよ!」

それから、まりさの言葉を信じて、母れいむの言いつけを守った。
ご飯をきれいに食べる、大きな声で騒がない、人間さんと丁寧に話す、人間さんの言うことには逆らわない。
ゆっくり出来ないけれど、頑張った。



ある日、まりさのお帽子に付いたぴかぴかさんが、銀色から金色になった。
まりさが頑張って、とてもゆっくりしているとほめられた証だ
喜んでいるまりさにお祝いを言った。

そして。

「ここでゆっくりまっていてね!」

いつもなら、人間さんが来ないうちに帰らないといけなかった。
それが、この日は人間さんが来るのを待つという。

れいむは気が付いた、まりさが言ったいつかの言葉、それが今日叶うのだと。
まりさのおうちでゆっくり出来る、まりさとゆっくり出来る。
れいむの心は期待に高鳴った。



けれど、れいむは全然ゆっくり出来なかった。

お兄さんは優しいけれど、まりさは優しくなくなった。
ご飯はおいしいけれど、まりさは一緒にむーしゃむーしゃしてくれなかった。
広くて安全なおうちだけど、れいむとまりさのお部屋は別々だった。
やわらかくてゆっくりした寝床だけど、1匹で寝るのは寂しかった。

昔はあんなにゆっくり出来たのに、今のまりさはれいむを全然ゆっくりさせてくれない。

遊ぼうというと、勉強しないとダメだと怒る。
ゆっくりすると、もっと頑張らないとダメだと怒る。
すーりすーりだって、はむはむだって、すっきりはダメだといってさせてくれない。
あれもこれも、お兄さんにゆっくりさせてもらうために、我慢しないといけないと言う。

違う、れいむはまりさとゆっくりしたかったんだ。
だからまりさの言葉を信じて、母れいむの言うことを守ってきたんだ。
人間さんにゆっくりさせてもらうために、今まで我慢してきたんじゃない。

なのに、まりさは全然ゆっくり出来ない。





「まりさぁ…」
「ゆ? どうしたの、れいむ?」
「れいむ、おうちにかえりたいよ…」
「だめだよ! れいむのおうちはここなんだよ!」
「…もうやだよ! まいにちおべんきょうばかりでぜんぜんゆっくりできないよ! れいむはゆっくりしたいよ!」
「ゆっくりするためのおべんきょうなんだよ! ゆっくりわかってね!」
「何だ何だ、どうしたんだ?」

お兄さんがあまあまさんを持って戻ってきた。
そうだ、お兄さんにお願いしよう、お兄さんはゆっくり出来る人だ。

「おにいさん! れいむはゆっくりしたいよ! おうちにかえりたいよ!」
「どうした、ここでの暮らしは嫌か?」
「いやじゃないよ! いやじゃないけど、ゆっくりできないよ!!」
「まってね、おにいさん!」
「何だ、まりさ」
「れいむはつかれてるだけなんだよ! なーばすなんだよ! ほーむしっくなんだよ!」
「まあ…そうなるかもなあ。お前さ、毎日れいむに頑張らせすぎじゃないか?」
「だってやくそくだよ! れいむはぎんばっじさんをとらないといけないんだよ!」

約束したよ、でもそれは、銀バッジさんをもらえるまですっきりはダメだよ。
れいむはすっきりを我慢できるよ。
まりさが我慢できないから、れいむをゆっくりさせてくれないの?
そんなの、ひどいよ…。

「ゆわああああぁぁぁぁぁぁ……」
「れ、れいむ!?」
「…見ろまりさ、れいむ泣いちゃったじゃないか」
「ゆぅ…」
「ゆびっ…ゆええええええぇぇぇぇぇ…」
「ほら、今日はもうお勉強は終わりな。おやつを食べてゆっくり休め」
「わかったよ…」





「どぼちてこんなことに……」

家族とゆっくり出来ていた頃を夢に見て、目覚めて夢だと気付いて、れいむは涙をこぼす。
妹たちと重なり合って寝ていた頃が懐かしい。

一度まりさに、寄り添って寝たいと頼んだことがある。
結果は、断られて終わりだ。
すっきりはダメ、すっきりはダメと、触れ合いはほとんどさせてもらえない。

まりさはれいむのことをどう思ってるの?
いつもいつも、触ると「すっきりはダメ」
れいむのこと、すっきりだと思ってるの?

もう、まりさとの生活には耐えられなかった。
なんとしても、家族の待つおうちに帰りたかった。
お兄さんに話しても、まりさに止められてしまった。
お兄さんは優しいけれど、まりさのほうがかわいいから、まりさの言うことを聞いてしまう。
だったら、どうすれば帰れるんだろう。



隣の部屋でゆぴーゆぴーと寝息を立てているまりさを見て、れいむは決心した。










「ゆわあああああああああああああああああ!!」

翌朝、俺はまりさの大声で叩き起こされた。

「なにじでるのでいぶううううううううううううう!!!」
「………」
「朝っぱらから何事だ!?」

まりさたちのいる部屋に飛び込んだ俺の目に映ったのは、硬い表情のれいむと、泣き喚いているまりさ。
そして、まりさの額から生えている茎と、それに実った赤ゆっくりだった。

「ずっぎりはだめっでいっだでじょおおおおおおおおお!?」
「れいむ、お前…」

こんな約束を守れないほど頭の悪い個体ではないはずだ。
自分の判断を裏切られた気分でれいむを見る。
それに答えたのは、何かを確信したような、れいむの真剣な表情だった。

「ごめんなさい、おにいさん。
 れいむはやくそくをやぶったよ。
 だから、もうおにいさんのおうちには、いられないんだよ」
「…本気だったんだな」

昨日の、帰りたいというれいむの台詞のことだ。

人間との約束を破ったゆっくりがどうなるか、これだけはまりさに任せず、俺自身がれいむに教えていた。
痛めつけられ、時には殺されることがあるということも。
れいむはそれさえも覚悟した顔をしていた。
よほど俺の家ではゆっくり出来なかったのだろう。





まりさにとって、れいむははじめて出来た友だちだ。
野良と遊んではいけないと教わり、柵の外には出られなくなった。
それでも、れいむはたった1匹の友達だった。
だから、れいむにはゆっくりしてほしかった。

「おうちでおかあさんがゆっくりさせてくれないよ…」

ある日、れいむがそう言った。
詳しく聞くと、母れいむの教えは、かつてまりさがお兄さんに教わったことと同じだった。

おうちでれいむと一緒にゆっくり出来るかもしれない。
まりさにそんな希望がわいた。



「おにいさん、まりさのおねがいをきいてほしいよ!」
「どうしたまりさ? お願いなら銀バッジの時に聞いたぞ」
「まりさはきんばっじさんももらえるようにがんばってるよ!」
「そうだな。金バッジに合格できたら、またお願いをひとつ聞いてやる」
「それでね、おにいさん。きんばっじさんをもらえたら、おねがいをふたつきいてほしいよ!」
「おお? 欲張りだなまりさ」
「ぎんばっじさんでおねがいがひとつだったんだよ! きんばっじさんならふたつきいてほしいよ!」
「まあ…そうだなあ、あの金バッジは元々まりさの物だし。
 よし、わかった。
 金バッジに合格できたら、お前のお母さんの金バッジのほかに、もう一つお願いを聞いてやろう」
「ゆー! ありがとうおにいさん!」



それからまりさは、今まで以上に頑張った。
努力の甲斐あり、ゴールド認定試験に合格できた。
念願だった母の形見をお帽子に飾り、うれしくて涙が出そうになった。

そして、もう一つの約束。
お兄さんはそれを守ってくれた。

二つ出された条件も、野良ゆっくりを飼う対価としては破格の厚遇だった。
元々まりさは、れいむに色々教えてあげるつもりだったので、条件は事実上一つだけ。
それさえ達成すれば、れいむはお兄さんのおうちでずっとゆっくり出来る。

だからまりさは、一生懸命れいむに勉強を教えた。
まりさが認定試験に臨んだとき以上の熱心さで。

それなのに。





「ゆわああああああん!! ゆぐっ、ゆわああああああああああああん!!!」

大泣きを続けるまりさに、れいむが冷めた視線を送る。

「そんなにれいむとのすっきりがいやだったんだね…」

一緒にずっとゆっくりしたいと言ったのに、この有様は何なのだろう。
まりさは自分のことなど、好きでも何でもなかったのではないか、そう考えると悲しくなってくる。

「ぢがうよおおおおお!! ぞうじゃないよでいぶううううううう!!」
「なにがちがうの? れいむがきらいだからないてるんでしょ?」
「まりざはでいぶがだいずぎだよおおおおお!! でもまだだめだっだんだよおおおおおお!!」
「………」

意味がわからない。
まりさは赤ちゃんを見てから、ずっと泣いてるじゃない。
赤ちゃんがいればゆっくりできるよ。
赤ちゃんが嫌だから泣いてるんでしょ?

「俺が教えてやるよ、れいむ」
「ゆああああああ!! おにいざんがえじでええええええええ!!!」

お兄さんがまりさのお帽子を取り上げる。
そして何かいじった後、まりさの目の前にそれを置いた。

「ゆっ…ゆあああああぁぁぁぁぁ………」

まりさがお帽子を見つめて震えている。
見ているのはバッジさん、金色ではなく、銀色の。

「れいむが銀バッジをとる前に、まりさとすっきりしてしまった。
 だから、まりさは金バッジじゃなくなったんだ」
「ゆ?」

お兄さんが何か言っている。

「人間は、ゆっくりしたゆっくりにバッジをあげる。
 でも、ゆっくりできないゆっくりからはバッジを取り上げる。
 まりさはゆっくりできないゆっくりになった。
 だから、金バッジはつけられないんだ」
「で、でも、まりさにゆっくりできないことをしたのはれいむだよ?
 ゆっくりできないゆっくりはれいむだよ!」
「そうだな。
 れいむはゆっくり出来ないゆっくりだ。
 そのれいむと、まりさはすっきりしてしまった。
 だから、まりさもゆっくりできないゆっくりになったんだ」
「!!」





俺の説明を聞いて、れいむが固まっている。
自分のしたことが大変な結果になったことに気付いたようだ。

「お、おにいさん!! わるいのはれいむだよ!!
 まりさはわるくないよ!! まりさをゆるしてあげてほしいよ!!」
「それは駄目だ」
「どぼちて!?」
「これは人間の群れのルールだ。お兄さんだけが許しても、どうにもならない」
「しょんな!!」

シルバー認定以上の資格は3ヶ月に一度、更新試験がある。
バッジをとったことで増長し、ゲス化するゆっくりが後を絶たないことで、制度が変更されたのだ。

まりさはせっかくゴールド認定に合格したが、れいむとのすっきりで餡統書を失効してしまった。
ゴールド認定試験には餡統審査もあるため、次の更新試験でまりさのゴールド認定も失効する。
もう二度と、まりさは金バッジをつけられないのだ。

「ばりざの、ばっじざ……ゆぐっ……おが…ざんの、ばっじざん……
 ゆえっ…ゆえええぇぇぇぇぇぇぇん……」

まりさは俺の手の中にあるはずの金バッジを見上げ、すすり泣いている。
そんなまりさに、れいむは声をかけられない。



「…おにいさん」

だいぶ時間が経ってから、れいむが俺を呼んだ。

「どうした?」
「まりさのあかちゃんたちを、れいむにほしいよ」

泣きじゃくっているまりさの額には、2つだけ実が生っている。
まだ種別がわかるほどには大きくなっていないそれらは、眠るように目を閉じている。

「あかちゃんは、れいむがわるいことをしてできたこだよ。
 だから、れいむがそだてないといけないんだよ」

そうやってれいむが話す間も、まりさの視線は俺の手から離れない。
反応を返さないまりさをおいて、俺とれいむの間で話が進んでいく。

結局俺はれいむに言われるままに、まりさの額から茎を抜き、れいむの額に植え替えた。
そのときも、まりさは軽くうめき声を上げただけ。

「ごめんなさい、おにいさん。
 ごめんなさい、まりさ」

れいむが去っていくときも、まりさは振り返らなかった。










うちではまりさを飼っている。
銀バッジのまりさだ。

まりさの母親の形見は、今では棚の上に飾ってある。
ゆっくりには届かない高さだが、取ってほしいとまりさがねだった事は、あれ以来一度もない。



まりさが十分な大きさに育った去年の秋、番にするためのゆっくりを買った。
金バッジのありすだ。

プロのブリーダーが育てただけはあり、ありすは素直で賢く、しつけが行き届いていた。
最初はまりさが警戒していたが、直に打ち解け、ひと月も経たないうちに「ふたりでずっとゆっくりする」と報告に来た。

2匹は子供がほしいと言った。
俺は許した。
ありすが胎生にんっしんをした。

おなかに2匹子供がいて、両方産んで育てたいといった。
俺は許した。
生まれた子供は、まりさとありすが1匹ずつだった。



「ゆきさん! しろいしろいだね!」
「きれいだね! でもさむくてゆっくりできないよ!」

2匹の子供たちが、窓の外を眺めてはしゃいでいる。

「はやくはるさんきてほしいね!」
「はやくおそとであそんでみたいね!」

子供たちの髪飾りには銀バッジが輝いている。
去年最後のシルバー認定試験に合格したのだ。

ご褒美は何が良いかとたずねると、2匹とも「おそとであそびたい」と答えた。
俺は許した。
だが、子供たちを抱いて外に出て、寒いから春まで我慢しような、と言った。
2匹は聞き分けて、暖かい部屋の中で春を待っている。

2匹の親のまりさとありすは、子供たちを微笑ましく見守っている。





ふと、まりさの視線がずれた。
その先は家の門の外。

外は一面の雪景色で、動くものは何も無い。
だが、まりさは何かを探すように、しばらくそこを見つめていた。

「どうしたの、まりさ?」
「ゆ?」

ありすの声に、まりさが我に返る。

「だいじょうぶ、まりさ? なにかあったの?」
「ゆぅ、だいじょうぶだよ。なんでもないんだよ」
「なんだかまりさがとおくにいっちゃいそうなきがしたわよ…」
「…なんでもないんだよ」

2匹のそんなやり取りが耳に痛い。
俺も時々、門の外を探してしまうからだ。

窓のそばではしゃぎ続ける子供たちに、まりさは再び目を向けた。





「まりさのおちびちゃんたち…」

かわいい子供たちを見ながらの言葉は、ひどく寂しそうだった。










(完)





作者:全員で空回りする話を書いてみたかった


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感想

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  • れいむ→ゆっくりしたいからまりさみたいに飼われたいよ!。ゆっくりたいから子供ができるかもしれないスリスリをするよ!なんかまりさがゆっくりできなくなってきたよ!もう野良に戻りたいから無理やりすっきりーさせるよ!あっ!できたおちびちゃんはれいむがもらうよ!じゃあれいむは無傷無罪放免で帰るよ!糞糞糞 -- 2018-06-20 08:50:20
  • 何でもかんでも糞ゴミれいむのおもいどうりにさせてる無能お兄さんは死んでね! -- 2018-06-20 08:27:25
  • 元金バッチの餡統だとしても、所詮れいむだったな。
    れいむ種は自分優先なのが多いから、このれいむもセリフを読めば例に漏れずって感じのクズ。
    (有名な890れいむ程度とはいかないまでも、簡単に逸材は居ないか) -- 2018-01-10 13:00:12
  • 結局のところ、どちらも幸せにはなれなかった -- 2017-03-11 16:12:31
  • おおあわれあわれ -- 2016-08-29 14:18:02
  • おおひでえひでえ
    -- 2016-08-23 16:32:14
  • ↓日本語読めないらしいなクソガキ
    設定すら理解できないお前はゆっくり以下の餡子脳だよ -- 2016-08-12 04:09:55
  • え?これれいむがまりさをレイプしったって事でしょ
    それでまりさのバッチ失効しちゃう訳?

    それともまりさは同意の上だったのかね?騒ぎようからそうは思えないけど
    -- 2015-12-17 09:55:51
  • 良い話だ、れいむがゲスだという意見が出てるが、ゲスはこんなに素直じゃない
    俺だったらそのまま飼うけどな、希少種派だが居たら飼っちゃうだろう -- 2012-12-18 18:00:54
  • ↓↓いや、れいむも所詮餡子脳だから、すーりすーりをしてしまえばどうせすっきりを我慢出来なくなるだろ。
    まりさはそれが分かってたから、にんっしんの危険を避けるために出来るだけ触れ合わなかったんだよ。 -- 2012-09-20 22:09:21
  • 一緒にいるだけで幸せなれいむと、中学男子のごとくすっきりしたくて抑えられないまりさ。
    仕方ないとはいえ、れいむじゃないだろ、悪いのはまりさだろ。 -- 2011-12-17 01:29:28
  • 虐待SS読みに来たはずなのに普通に良い話でビックリした -- 2011-11-14 16:46:56
  • まりさがゆっくりにしては優秀で真面目すぎたんだな。。。 -- 2011-09-29 00:12:54
  • カスが!!!!!!自分の幸せだけを優先するからこうなるんだ!!!! -- 2011-05-29 10:49:41
  • いや、これはれいむを潰すべきでしょwww
    好きなことするだけして子供まで貰って無罪放免とか無いわwww -- 2010-11-23 04:56:19
  • 存在自体がカスと自覚できないれいむに
    まりさをめでる馬鹿2人のお話か
    ありすもまりさをレイプしないし
    どうしようないゆっくりと人間ばかりだな -- 2010-10-23 14:17:05
  • >れいむとすっきりしたいかられいむに頑張らせるの? れいむはすっきり我慢できるのに
    みたいな事言ってるけど、すりすりしようとせがんでる辺り
    どうみても我慢出来てないのは笑うところなんだろうなww -- 2010-09-27 15:20:07
  • 悲しい系だなぁ でも、良い話だと思うよ -- 2010-08-13 00:22:55
  • 何度読んでもいいな -- 2010-08-06 11:45:53
  • すこし悲しいな・・・w -- 2010-07-30 23:54:20
最終更新:2009年10月20日 17:28
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