ふたば系ゆっくりいじめ 269 約束しよう

約束しよう 25KB


【注意】
  • 冗長です
  • ネタ被りはご容赦を





初夏のある日、うちの畑にゆっくりが入り込んでいた。

「おい」
「ゆ゛!?」
「何やってるんだ、お前ら」
「ごべんだざいいいいいいいいいいいいい!!
 でいぶはどうなっでもいいがら、おぢびぢゃんだぢだげでもだずげでぐだざいいいいいいいいいい!!」

声をかけたら、返事がこれだった。





【約束しよう】





逃げようとするでも無くの、突然の敗北宣言に少々面食らった俺は、こいつの話を聞いてみることにした。

「悪いってわかってるのにどうして来た?」
「じがだながっだんでずうううううう!!
 おぢびぢゃんだぢのだべにぼ、おやざいざんぼじがっだんでずうううううう!!」
「ゆわああああああああん!! おがあざんじんじゃやだあああああああああああ!!」
「おでがい、おがあざんにひどいごどじないでえええええええ!!」
「わかったわかった、話次第じゃ許してやるから耳元で大声出すな」
「ゆ……ぼんどに?」

見つけたときから、こいつの様子は少し変だった。
今まで畑を荒らされたときは、ゆっくりどもは脇目も振らずに野菜を食い漁っていた。
俺に気付かずに潰されたやつも多いくらいだ。
それが、こいつは野菜を前にして、何もせずにじっとしていた。
一緒にいた子ゆっくりたちも、親を見上げてじっとしていた。

ゆっくりを潰すとゆっくりの死臭が付くらしく、その日は我が家で飼っているちぇんが怯えて仕方が無い。
何もしないで帰るなら──今までそんなことは一度も無かったが、手を出さずにおくつもりだった。
が、いつまでも動かないこいつらを眺めているのにも飽きて、冒頭のやり取りになったというわけだ。





れいむは森の奥で群れのはずれに暮らしていた。
まりさと番になり、子供も生まれた。
れいむとまりさが1匹ずつの、とてもゆっくりした赤ちゃんだ。
ここまでは幸せだった。

ところが、子供が育っていくにつれ、餌が足りない日が多くなった。
日に日に増していく子供たちの食欲に、まりさの狩りでは追いつかなくなったのだ。
小さい子供たちを狩りに連れて行くにはまだ早い、だかられいむは巣の近くで取れる餌を集めるようになった。

だが、いくられいむが集めても、満足できるだけの量には届かない。
れいむが頑張る分だけ、まりさが手を抜くようになっていたのだ。
それにれいむがはっきりと気付いたときには、まりさは自分で食べる分しか取ってこなくなっていた。

れいむは決して狩りが下手ではないが、子ゆっくり2匹の旺盛な食欲を賄えるほどではない。
最初はれいむの分まで子供たちに与えていたが、するとれいむが満足に動けなくなり、かえって餌が足りなくなった。

れいむの群れにはドスがいる。
ドスに頼ることも考えたが、すっきり制限を破って内緒で子供を作ったれいむを、ただ助けてくれるとは思えなかった。

近所のありすやぱちゅりーに相談したが、信じてもらえなかった。
外面は優しいまりさが、れいむの話とあまりにも違いすぎていたのだ。

まりさにどれだけ懇願しても、ゲスの本性を現したまりさは話を聞かなかった。
それどころか、れいむにも子供にも暴力を振るっていった。

子供たちはまりさを怖がり、れいむの狩りに付いてくる。
子供を連れては、群れの皆の目に付くような場所では狩りが出来ない。
皆がいないような場所は、餌が無いから誰もいないのだ。

ますます餌に困っていくスパイラルに落ち込み、とうとう人間の畑にやってきた。
畑を荒らしたときの人間の恐ろしさは、ドスに散々教えられている。
だから、今まで見たことも無いご馳走を前にしても、恐怖で食べることが出来なかった。
まりさからの虐待で親の態度に敏感になっていた子供たちも、れいむの様子を察して野菜にかぶりつくことが出来ない。

そうして悩んでいるところに俺が来た、ということらしい。



「どうしてそんなにされてまで巣に帰るんだ? まりさが怖いんじゃないのか?」
「ゆぅ……。
 おうちがないと、おちびちゃんたちがゆっくりできないよ。
 だけど、ほかにおうちにできるばしょがなかったよ。
 まりさはこわいけど、れいむのおうちはあそこしかないんだよ…」

何ともまあ、のんきな饅頭だと思っていたが、ゆっくりにもこんな泥臭い話があったとは。

俺は家でちぇんを飼っているくらいなので、決してゆっくりが嫌いではない。
だからと言うか…このれいむにちょっと同情してしまったのだ。



畑の脇の切り株に腰掛け、れいむを抱え上げて膝の上に乗せる。
土埃が付くが、もともと野良仕事のための格好なので、気にすることもない。

「なあ、れいむ。人間の畑に入ったのは悪いことだ。わかるな?」
「……わかるよ。でも! わるいのはれいむだよ! おちびちゃんはゆむぐっ!?」
「話は最後まで聞け。
 れいむは悪いことをした、だから罰を受けてもらう。いいか?」
「むぅ……」

足元では、まだ拳ほどの大きさの子ゆっくりたちが、母を助けようと体当たりをしている。
そんなもの当然効きはしないので、無視して話を進める。

「れいむに与える罰は、俺の畑の番だ。ほかのゆっくりに荒らされないようにな」
「むぐ?」
「れいむが逃げないように、子供たちは俺の家の中に入れておこう。
 飢え死にされても困るから、餌くらいは用意してやろう。
 期間は子供が自分で狩りが出来るようになるまでだ。
 いいな?」

そこまで言って、れいむの口をふさいでいた手を離してやる。
れいむは呆けたように俺を見上げている。
子供たちも体当たりを止め、れいむを見上げている。

「……いいの?」
「いいも何も、これは罰だ。絶対にやってもらうぞ」

そう答えて、ぽん、とれいむの髪に手を置くと、れいむはぼろぼろと涙をこぼし始めた。

「ゆっぐじおでがいじばずうううううううううぅぅぅぅぅぅ」
「お前がちゃんとやれば、俺も約束は守る。頑張れよ」
「にんげんざんありがどうございばずううううううぅぅぅぅぅ」





それかられいむと子ゆっくりの合わせて3匹を交えての生活が始まった。

朝は俺とちぇん、れいむたちで朝食を取る。
もともとちぇんの餌も間引いたクズ菜を野草でかさ上げしたものだったので、れいむたちにも同じものを与えた。
それでもれいむたちにはご馳走だったようで、大喜びで食べていた。

朝食が済めば、子供たちはちぇんに預け、俺とれいむは畑に出る。
俺は畑を耕したり、草むしりをしたりと、畑の手入れをする。
その間、れいむは切り株の上に乗り、畑を荒らすゆっくりがいないか見張りをさせる。
ゆっくりが来ようものなら、あの騒がしさで俺もすぐに気付く。
だからこれはままごとの様なものなのだが、それでもれいむは真剣に辺りを見張っていた。

昼になれば家に戻って飯を食い、日が暮れるまで働いたら風呂に入り、飯を食い、床についてまた明日だ。
俺にとってはいつもと変わらない、ちぇんにとっては友達が増えただけの日々。
だがれいむ一家には、久し振りのしあわせーな日々。

そんなものが終わるときはあっけなかった。










「う…」

れいむがうちに来てから半月ほど経ったその日、俺は朝から腹の具合が悪かった。

「ゆ? おにいさん、だいじょうぶ?」
「あまり大丈夫じゃない…厠に行ってくる」

伸びをして見送るれいむに手を振りながら、俺は畑を後にした。
そうして四半刻ほど厠で脂汗をかき、ようやく痛みが治まった頃。

どんっ!
「おうっ!?」

突然厠の戸が音を立てた。

「おにいさん、たいへんだよ!」
「あ、ちぇんか?」
「おちびたちがでていっちゃったよ! ゆっくりしないででてきてほしいよ!」
「何?」

急いで始末をして、洗っていない手で嫌がるちぇんを抱えながら畑に向かった。
ちぇんが言うには、子供たちは突然れいむを呼びながら畑に向かって飛び出していったらしい。

「おにいさん! あそこ!!」

ちぇんに言われるもなくわかっている。
見ている先は、れいむがいた切り株。
上に載っていたはずのれいむは地面に落ちている。
大した高さでもないのに、潰れて餡子を撒き散らして。
おそらく、隣にいるゆっくりまりさの仕業だろう。
そいつが今、子供たちに飛びかかろうとしている。



「げすはゆっくりしぶぇえええええええええええええええ!?」

まりさが明後日の方向に吹っ飛んでいく。
俺の蹴りが間に合ったのだ。

「大丈夫か、お前ら?」
「ゆわああああああああああん!! おがあざんがあああああああああ!!」
「おがあざあああああああん!! ゆっぐりじでよおおおおおおおお!!」

子供は大丈夫そうだ。
だが、れいむは手の施しようがなかった。
体が何ヶ所も大きく破れ、すでに餡子を半分ほども失っている。
今から傷をふさいでも助からないだろう。

「おに……ざん…」
「なんだ、れいむ?」
「ごべ…ざい…はだげ…おやざ…ざん…」
「それはいい。子供たちと話してやれ」

まりさが荒らしたのだろうが微々たる物だ。
そんなものの謝罪よりも、子供たちとの最後の時間を大事にしてやりたかった。

「れ…ぶ……ばり…ざ…」
「おがあざん!! じんじゃやだよおおおおおおおおおお!!」
「じなないでよおおお!! ゆぐっ、ゆええええええええええ!!」
「おに…ざんの…いうごど…ぎ…で……ゆ…ぐりじで…でね…」
「ゆびゃあああああああああああああ!!」
「ゆびぇえええええええええええええ!!」

子供たちにも、れいむが助からないことがわかっているのだろう。
嗚咽ばかりでもはや言葉になっていない。

「…に……ざ…」

れいむの視線がこっちを向いたことで、俺に話しかけていることに気付く。

「わがばば…い…で……ごべ…ざ……おぢび…ぢゃ……だぢ…」
「わかった、子供たちのことは心配するな。約束する」

それで力を使い切ったのだろう。
れいむは目を閉じ、二度と開かなかった。



「やぢゃああああああ!! おぎでよおおおおおおおおおお!!」
「ゆびっ…おがぢゃ…ゆええええええええええええええ!!」

れいむの死骸にすがり付き、泣き叫ぶ子供たち。
その隣に、同じように泣いているちぇんを置いた。

「ちぇん、子供たちを頼む」
「おにいざん?」
「俺はやることがある」

道端の藪の中に、さっきのまりさが落ちている。
気絶したままのそいつを拾うと、横っ面を思い切り張った。

「いつまでも寝てるんじゃねえ」
「ゆべええええええええええええええええええ!?」

目を覚ました瞬間から、俺の偏見でもなんでもなく、まりさはふてぶてしい顔つきをしていた。
わずかな時間、戸惑ったような表情を見せたが、状況を把握すると醜く顔を歪ませて喚き始めた。

「なにするんだぜ!? くそにんげんはゆっくりしないでまりささまをはなすんだぜ!!」
「黙れ」
「いいからいうことをきくんだぜ!! むのうなにんげんはまりささまにゅぶうううう!!」

何のことはない、ただのゲスだ。
こういう手合いとは話すだけ無駄だ。
ゲスまりさを上下から腕で挟み込み、口を開けなくする。
さっさと潰すかとも考えたが、子ゆっくりたちにとっては親の仇なので思いとどまった。
こいつを許すにせよ殺すにせよ、子供たちが決めるべきだ。

ゆっくりたちのところに戻ると、子供たちはまだ泣いていたが、幾分落ち着いていた。

「おい、れいむ、まりさ」
「「ゆ?」」

涙目でこちらを見上げる2匹の前に、ゲスまりさを差し出す。

「お前たちの母親の仇だ。どうしたいかはお前たちが決めろ」

ところが、子供たちの反応がない。
罵るくらいはあると思っていたのだが。
そう思っていると、子供たちはしーしーを漏らして泣き始めた。
先程までの悲しみでではなく、恐怖でだ。

「ゆぎゃああああああああああああああああ!! だずげでえええええええええええええええ!!」
「ごべんだざいおどおざん!! ゆるじでええええええええええええええええ!!」
「何!?」

ゲスまりさを持ち直して話せるようにする。
途端にゲスまりさは俺を罵り始めた。

「ぐぞにんげんがああああああああああ!! どっどどばりざざばをはなぜええええええええええ!!」
「黙れ!」
「ゆぶうううううううううううう!!」

ど真ん中に拳を叩き込んでおとなしくさせる。

「おいお前、この子供たちの親なのか?」
「そうなのぜ!! まりささまのちびたちだから、どうしようとまりささまのかってなんだぜ!!」
「じゃあ、そこのれいむはお前の番なんじゃないのか?」
「ゆぺぺぺぺぺぺぺぺ!!
 むれいちばんのびゆっくりであるまりささまがすっきりしてやったのに、れいむはおんしらずのげすなのぜ!!
 おやさいさんをひとりじめするげすは、まりささまがゆっくりせいさいしてやったのぜ!」

呆れたものだ、れいむの話していた暴力亭主が、自分を棚に上げてれいむをゲス呼ばわりしている。
これでは子供たちが怯えて話が進まない。

「ちぇん、子供たちにすりすりしてやってくれ」
「わかったよー」
「ゆびゃああああああああああああああああああああああああ!!」
「ゆひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「すーりすーり」
「ゆびぇっ、ゆびぇええええええええええ!」
「ゆわああああああああああああああ!」
「すーりすーり、すーりすーり」
「ゆび……」
「ゆえ…」

どうやら子供たちも落ち着いてきたようだ。

「れいむ、まりさ。安心しろ、俺はこいつより強い」
「ゆぅ…」
「で、でも…」
「見ろ、こいつは俺から逃げられないだろ」
「ゆがああああああああああああああああああ!! なにやってるんだぜええええええええ!!
 いいかげんにはなぜえええええええぇぇぇぇぇぶびゅるうぅっ!!」
「力だってこの通りだ。俺はこいつをいじめることも出来るし、お前たちをいじめさせないようにも出来る」
「ゆぎゃああああああああああああ!! ぐずにんげんはばりざざばをいじめるななんだぜええええええええ!!?」
「……ゆぅ、ほんとうにゆっくりしててもいいの?」
「ああ、大丈夫だ。こいつにはもう何もさせない」

ここでようやく子供たちが安心したようだ。
子まりさがキッとゲスまりさをにらみつけると、子まりさの陰から子れいむも出てきた。
ゲスまりさが相変わらず喚き散らし、子供たちまでを罵っているが、これなら大丈夫そうだ。



ゲスまりさを地面に置き、上から押さえて動けなくも喋れなくもする。
そして、子供たちに尋ねた。

「こいつはお前たちの親だ。
 だがゲスだ。
 れいむを殺したとんでもないゲスだ。
 お前たちは、こいつをどうしたい?」

2匹を見る。
子まりさはゲスまりさをにらみ続けているが、時折後ろを気にしてもいる。
子れいむの様子を伺っているのだ。
子れいむは母れいむの死骸を見続けていたが、しばらくしてから子まりさに向き直った。

「もういいよ、おねえちゃん…」
「れいむ…ほんとうにいいの?」
「れいむは……れいむは、おかあさんをゆっくりできなくしたおとうさんなんてきらいだよ!」

子れいむの台詞を聞いて、子まりさは吹っ切れたようだ。
2匹は俺のほうを向いて言った。

「おにいさん! まりさたちはそんなゆっくりをおとうさんだなんておもわないよ!」
「おかあさんのかたきはゆっくりしないでしね!」
「むぐううううううううううううううううううう!!!」

おおむね予想通りの答えだ。
子供たちを愛したことなどないのだろうこのゲスには、当然の報いだ。
必死に何か呻いているが、こいつの意向など関係ない。

「お前たちの気持ちはわかった。だが、こいつは殺さない」
「「どぼちて!?」」
「これでも一応、お前たちの親だ。お前たちの殺意でこいつを殺してはいけない。
 それではきっと、いつかお前たちが不幸になる」
「そんなのかんけいないよ! おかあさんのかたきなんだよ!」
「おとうさんでもなんでもないよ! そんなゆっくりしらないよ!」
「わからなくてもいい。
 こいつは殺さない。が、必ず罰は与える。それで今は我慢しろ」

子供たちは納得いかない様子だったが、ちぇんにもなだめられて引き下がった。
れいむに子供たちのことを約束した以上、子供たちに道を踏み外させるわけにはいかない。
間接的にであろうと、ゆっくり殺しになどなるべきではないのだ。

それに。



殺しては罰が一瞬で終わってしまうではないか。










「すみません、こいつらを預かってもらえませんか?」
「それは構わんけど、こんな時間にどこか行くのかね?」
「ちょっと森の奥まで。ゆっくりに畑を荒らされたんで、群れに教え込んでこようかと」
「日が暮れるまで長くないから、さっさと帰ってこいよ」
「暗くなるまでには帰ります」

隣の家にちぇんと子供たちを預け、俺は袋を背負って森に向かった。
群れの場所は以前にれいむに聞いておおよそわかっている。
ゆっくりの足では大変な距離だろうが、人間ならば半刻もかからぬ場所だ。



「ゆ! にんげんさんがいるよ!!」
「ここはありすたちのゆっくりぷれいすよ! にんげんさんはでていってね!!」

森の奥のわずかに開けた場所、そこにゆっくりが集っていた。
賢いドスが治めているらしく、見える範囲にいるゆっくりの数は決して多いものではない。

「ドスに用がある。呼んでくれないか?」
「どすならそこにいるよ! みえないの? ばかなの?」

ゆっくりしていない相手には見えないというあれだろう。
ふむ、下草が丸く倒れている場所がある。
場所は大体わかったが、今回は話が通じれば十分なので、どこにいようと関係ない。

「人間を恐れているなら、別に出てこなくても構わない。
 とりあえず、これを見てくれ」

懐から死んだれいむのリボンを取り、前に掲げる。

「ゆゆ!? あれはれいむのおりぼんだよ!」
「そういえばれいむのことちかごろみないよ?」
「にんげんさんにゆっくりできなくされたの!?」

途端に群れのゆっくりたちが騒がしくなる。
誤解を受けているようだが、この状況なら当然だろう。

「…にんげんさんがれいむをゆっくりできなくしたの?」

少し離れた場所から、ドスのものだろう一際低い声がする。

「いや、俺じゃない。やったのはこいつだ」

そう言うと俺は、背負った袋を降ろし、中からゲスまりさを取り出した。
ちぇんのお仕置き用に使っていた防音型の透明な箱の中で、ゲスまりさには目隠しがしてある。
ゲスには今、外がどういう状況かわからないはずだ。

「ゆ! にんげんさん、まりさをはなしてね!」
「それは駄目だ。こいつにはれいむを殺した罰を受けてもらう」
「にんげんさんがころしたかもしれないでしょ! しょうこをみせてね!」
「それをこれから見せてやる。群れの連中を静かにさせろ」
「いきなりきたにんげんさんはしんようできないよ!」
「信用しなくても構わん。まりさは殺さないとだけは約束してやろう。
 ほかのゆっくりにも決して手は出さない。
 だから静かにさせろ」
「……みんな、しずかにしてね」

ドスの言葉に、徐々にだが群れのゆっくりたちのざわめきが治まっていく。
十分に静かになったところで、声を立てないように釘を刺してからゲスまりさの箱から出した。



「ゆがあああああああああああああ!! ぐぞにんげんがああああああああああああ!!
 ばりざざまをはなぜ!! はなぜええええええええええええええええええ!!」

この時点で顔が引きつっているゆっくりがいる。
優しい人気者の美まりさからは、この言葉遣いは程遠いのだろう。

「駄目だ。お前はまだ、れいむを殺した罰を受けていない」
「あんなげすはしんでとうぜんなのぜ!!
 びゆっくりのまりささまがすっきりしてやったのに、ごはんももってこれないくずなのぜ!!」

「おい、餌を運んでくるのは父親の役目だろう。どうして母親のれいむに持ってこさせるんだ?」
「まりささまはすっきりしたかっただけなのに、あのげすはあかちゃんをうんだのぜ!!
 あかちゃんなんてまたつくればいいのに、すてなかったのぜ!!
 おかげでまりささまはかりがたいへんだったのぜ!!
 そんなにあかちゃんがほしいんだったら、じぶんでごはんをとってくればいいんだぜ!!」

「実際、れいむは自分で餌を取っていただろう。なのにどうして殺した?」
「げすがかってにいなくなると、まりささまがへんなめでみられるのぜ!!
 しかたないからさがしにいってやったら、あのげすはおやさいさんをひとりじめしていたのぜ!!」

「野菜の生えている畑は人間のものだ。ドスに教わらなかったのか?」
「そんなのしらないんだぜ!! おやさいさんはまりささまにたべられるためにはえているんだぜ!!
 なのにあのげすは、にんげんさんのだからとかいってまりささまのじゃまをしたのぜ!!
 げすでくずのれいむはほんとうにやくにたたないんだぜ!!」

「野菜を食べる邪魔をしたから殺したのか」
「そうなのぜ!! げすにはとうぜんのむくいなのぜ!!」

「じゃあどうして子供まで殺そうとした?」
「ゆ? げすにせいさいするのをじゃましたからなのぜ!!
 げすのこどももげすだったんだぜ!!」



「…ゲスはお前だ」



ゲスまりさの目隠しを取る。

「……ゆ?」

ようやくゲスまりさは、自分を包む針のような空気に気付く。
群れのゆっくりたちは汚物を見るような視線を向け、中には露骨に目をそらすものもいる。

「…ゆっ! まりさはにんげんさんにひどいことをされたよ!! みんなたすけてね!!」

いまさら取り繕ったところで誰も聞きはしない。
それどころか、ゲスまりさへの嫌悪感に火をつけてしまう。

「れいむをころすなんてひどいよ!!」
「あんなにゆっくりしてたれいむだったのに!!」
「すっきりはきんしでしょ? おやさいはたべちゃだめでしょ? ばかなの?」
「げすのまりさはゆっくりしないでしんでね!!」
「おお、ぶざまぶざま」

一斉に浴びせかけられる罵声にまりさは右往左往するが、すぐに我慢できなくなって本性を現した。

「ゆがああああああああああああああああああ!! ばりざはげずじゃないいいいいいいいいいいいいい!!
 ばりざざまをげずっでいうげずはじねええええええええええええええええ!!」

「…まりさはげすだよ」
「ゆ゛っ!?」

突き刺さるような低い声にゲスまりさがひるむ。
何もいなかったはずの正面の空気が揺らぎ、そこから唐突にドスが現れた。

「…ゆ…ゆぴっ……」

ドスは憤怒の表情でゲスまりさを見下ろしている。
目が合ってしまったゲスまりさは、情けなくもおそろしーしーを漏らし始めた。





「みんな! げすのまりさはせいさいするよ!!」
「待て」

ドスが制裁宣言をするが、それを止めた。

「とめないでねにんげんさん! げすはせいさいしないといけないんだよ!」
「制裁はする。俺がやる」
「これはゆっくりのもんだいだよ! にんげんさんはかんけいないからあっちいってね!」
「関係ならある」
「ゆっ!?」
「れいむの子供と約束したんだ。こいつに罰を与えるってな」
「で、でも!」
「俺は最初に、こいつに罰を与えるといった。お前は証拠を見せろと言った。
 俺は証拠を見せた。だから黙ってみていろ」

そこまで言うと、俺は有無を言わさずに制裁を始めた。





「ゆびいっ!?」

右手に持っているものは杓文字だ。
それをまりさの後頭部に無造作に突き刺す。
開いたところに手を突っ込んで左右に広げると、拳2つ分ほどの穴が開いた。

「や、やべでっ!! ごろざないで!!」
「れいむを殺したお前がどの口でそれを言う?」
「ゆひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」
「安心しろ、殺しはしない」
「…ゆ?」
「食い物のためにれいむを殺したお前には、好きなだけ食わせてやる」
「ゆぎいぃっっっ!!!??」

開いた穴に杓文字を突っ込み、中の餡子をかき取る。
それを、まりさの目の前に捨てる。

「…どうした」
「ゆ゛っ?」

痛みに震えているまりさに声をかける。

「これからお前の餡子をかき出して捨てていく。食べないと中身が空になって死ぬぞ?」
「ゆわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



まりさが舌を伸ばして餡子をかき込んだのを見て、次の餡子をかき出す。
ここからはもう、まりさと話す必要はない。

「ゆぎぇえっ!! むーしゃむーしゃ!
 ゆがああ!! がーつがーつ!!
 ゆごおおおおおお!!」

最初は加減して取り出した餡子を、徐々に目一杯かき出していく。
常にまりさが餡子を食べきれない程度の速さでだ。

「ゆげえぇっ!! ば、ばっで!!
 ゆぎゅううう!! じんじゃう!!
 ゆびゃあああああ!!」

まりさの前に餡子の小山が出来たので手を止める。
ようやく一息つき、涙を流しながらまりさは餡子を食べていく。
そうして餡子山が半分くらいに減ったところで、先程以上の速さで餡子のかき出しを再開する。

「ゆばあああ!! ば、ばだだべ
 ゆぼおお!! お、おでが
 ゆあああああ!! まふっ! まふっ!
 ゆぎょおおおお!! も゛っ! も゛っ!」

今度は止まらないと悟ったのか、いよいよ必死になってまりさは餡子を食べることに集中する。
それでも杓文字を体に突っ込まれるたびに、痛みで咀嚼が中断する。
結局、どれほどまりさが頑張ろうが、俺の加減ひとつなのだ。



「ゆぐううう!! も゛っ! も゛っ!
 ゆびょおおお!! も゛っ! も゛っ!
 ゆぎぇええ! も゛っ…も゛っ…
 ゆぶぁあああ! も゛っ…も゛っ…
 ゆぶうううぅぅぅぅ…」

体力だって続かない。
まりさが食べる勢いは確実に落ちていく。

「ゆっ…ゆっ…」

とうとう体の餡子の3分の1ほどで小山を築いたところで、まりさは気を失った。





まりさを死なせないために、餡子の小山を体内に戻し、穴をふさぐ。
傷には砂糖水で溶いた小麦粉を塗っておいたので、そのうち塞がるだろう。



事を終えたので後始末を始め、そこで初めて俺を見るゆっくりたちの視線に気付いた。
どれもこれも、目に宿っているのは恐怖、ドスでさえ例外ではない。

「…こわいにんげんさんだね」
「俺もそう思うよ」

ドスの言葉に軽口で返す。

「ほら、こいつは返す」
「ゆ……でも、まりさはいきてるよ?」
「殺さないと約束しただろう」

ゆっくりは死ぬと地獄に行くという。
そんなもの、ゆっくりに限ったことじゃない。
生きている限りは誰しも業を負い、そのために例外なく地獄に落ちるものだ。
れいむも地獄に落ちてしまったのなら、すぐにこんなゲスに後を終われるのは気分が悪いだろう。
だから、こいつには精一杯長く生きて、後悔し続けるのが相応しい。

「いいか、こいつは殺すなよ」
「けどそれじゃ!」
「俺はこいつを殺さないとも、れいむの子供たちと約束した」
「ゆ゛っ」
「俺に約束を破らせるな。いいな?」
「ゆっ……ゆっくりわかったよ…」



まりさをどうしろとは、それ以上言わないで森を出た。
後は、ゆっくり自身でゲスに相応しい末路を用意してくれるだろう。










季節は秋に差し掛かり、日々の暑さもだいぶ和らいだ頃。

「ゆ! おにいさん! おやさいさんにむしさんがついてるよ!」
「おーう、今行く」

子まりさと子れいむはすっかり大きくなり、もうそろそろ大人と呼んでも良い頃になった。
母れいむに代わって畑を見張ると言って聞かず、あれから2匹は毎日畑で過ごしている。
一人でお留守番が嫌なのか、近頃はきれい好きのちぇんまで一緒に跳ね回っている。

「わがらにゃいよーーー!!」
「うわ蜂かよ! こっち来るなちぇん!」
「どぼぢでっ!?」

まあ、何だかんだで毎日楽しい。



まりさもれいむも十分に狩りができるようになったので、母れいむとの約束もそろそろ終わりだ。
だから、ここから先は俺と2匹との約束だ。

今日、帰ったら2匹に尋ねてみよう。
俺は、2匹がこれからもちぇんの友達でいてくれることを願っている。















ドスはゆっくりできていなかった。

ゲスまりさを殺さずに引き取ることになってしまった。
だが、群れの誰もがゲスまりさを嫌がり、もはや群れの中に居場所はなかった。

いっそ追放してしまおうか。
あるいは殺してどこかに捨てるか。

そういう考えが浮かぶたび、一緒にあの人間の顔まで浮かんでくる。



ドスはかなり長く生きたゆっくりだった。
率いた群れも、これが初めてではない。
かつて率いた群れの中には、ゆっくりできない人間に襲われ、滅びたものもある。

だからこそ、足りない食料のために厳しいすっきり制限をしてまでも、こんな森の奥に場所を構えたのだ。
人間の恐ろしさを教え、野菜はゆっくりできないと教え、徹底的に人間との距離を置いた。
あの恐ろしい人間たちに群れを滅ぼされるのは懲り懲りだったのだ。



その、かつて見た恐ろしい人間たちと、あの人間は違う。

群れを滅ぼした人間たちは、ある種の災害のようなものだった。
その場に現れ、暴れ、気が済んだら去っていく。
抗いようのない理不尽な暴力だからこそ、あきらめもついた。

しかしあの人間は違う。

あの人間はゆっくりにまで筋を通した。
あの人間の話すことはドスにも正しいと思え、だから逆らえない。
だから、あの人間と筋を違えるようなことがあれば、次にゆっくり出来なくされるのは自分だ。

そんな、精神に響く恐怖を残していった。



そのストレスがドスの本能を刺激した。
無意識に、ドスはゆっくりすることを求めていた。

昼間は群れに気を使い通し、夜はすっきり出来る相手もおらず寝るだけ。
ドスにできるゆっくりといえば、おいしいものを食べることだけだ。
普段はよく節制し、動くのに必要な分しか食べないドスだが、あれからは食べる量が増えていた。

食べれば出る、自然の摂理だ。
こうしてドスにしては珍しく、このドスはうんうんをするようになっていた。



ドスともあろうものが、みんなの前でうんうんするわけにはいかない。
だからドスは、巣の奥に作ったトイレでうんうんをする。

蓋にしていた葉をどかすと、中からうんうんの嫌な臭いと一緒に喚き声が飛び出してきた。

「だぜええええええええええええええ!! ばりざざばをだぜえええええええええええええ!!
 ごごはぐざいいいいいいいいいい!! ゆっぐりでぎないいいいいいいいいいいいい!!」



うるさいな、このおといれは。
はやくしずかになるといいのに。





「どすのうんうんでゆっくりしていってね!」

「ゆがあああああああああああああああああああああああああ!!
 だれがばりざをゆっぐりざぜろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」










(完)





作者:普通の制裁ものに挑戦してみました。
   ネタに走らないのがこんなに大変だとは…。

挿絵 byゆんあき



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このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

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  • ブロリー「やっぱ、ゲスするのはさいこ最高に気持ちいい」
    DIO「善良と希少種こそが、虐待したくない存在なのだ!!」 -- 2014-12-30 11:24:21
  • グレイト、これをもとめていた
    -- 2014-11-19 02:47:45
  • お兄さんマジイケメン -- 2013-06-28 12:48:12
  • レベルの高い制裁物だなこれ、良作の一つだと思う -- 2013-01-16 10:25:19
  • どすの表情ww -- 2013-01-05 12:26:05
  • とてもゆっくりできたおはなしだね!! -- 2012-03-13 20:41:21
  • お母さんれいむ…(;ω;) -- 2012-02-20 10:48:36
  • お兄さんつうか見てる間はかっけえむきむきのおっさんみたいなお兄さんかと思ってたけど挿絵見たら違った。
    らそな無表情さに笑った。 -- 2012-01-05 00:24:34
  • お兄さんwww
    無表情でまりさを刺すなwww
    つぼにはいっただろwwwww -- 2011-11-24 18:25:15
  • お兄さん、かっけぇな -- 2011-11-08 02:38:14
  • やっぱり制裁は救われる奴と裁かれる奴がいないとだめだな。良いSSだった。
    最近は虐待と制裁の区別がつかないで良SSを荒らす奴が多くて困るな。 -- 2011-10-17 14:47:10
  • これは斬新。掻き出しループ後にトイレになるとはww -- 2011-09-17 12:17:38
  • 掻きだした中身を食わせる虐待は初めて見たな。

    面白かったです!! -- 2011-01-30 04:24:58
  • ↓純粋虐待主義者ですらない差別野郎はこういうSSでコメントするな。他人を不快にさせるだけだ。
    餡子脳すぎて空気を読めないのか?それにしたって読むSSくらい自分で選り分けろよ。 -- 2011-01-21 15:50:05
  • はあ?れいむを駆除しないような奴は崖から落ちてずっとゆっくりしとけ -- 2010-12-18 20:36:24
  • いい話だなーw
    特にゲスが苦しむ様とか最高wゲスいじりはみててすっきりーwしますwww -- 2010-11-22 00:13:26
  • 良いお兄さんだった。筋を通す姿は格好良いな。
    お兄さん達には幸せになって欲しい -- 2010-10-03 14:23:21
  • イイハナシダナー -- 2010-08-29 21:33:29
  • 古き良き時代劇をみた後の様な気分になった。 -- 2010-08-26 20:54:14
  • ドスとお兄さんのキャラクターが秀逸。めーりんあきの話ではこれが一番好き。 -- 2010-08-24 01:48:14
最終更新:2009年10月24日 02:12
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