ふたば系ゆっくりいじめ 277 騙されゆっくり

騙されゆっくり 24KB


※完全に独自解釈です。
※ぺにまむ表現がちょっとだけあります。
※虐待成分相当薄目。
※やたら長いです。
※前作『ふたば系ゆっくりいじめ 274 嘘つきゆっくり』をお読みになってからお読みください。






「「「「「「どぼじでごばんざん゛がな゛い゛の゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!」」」」」」

秋の山にゆっくり達の悲痛な叫び声がこだまする。

「いつもあきになったらはえてくるきのこさんがぜんぜんはえてこないよ!?なんでなの、おさ!?」
「ばったさんがいないよ!いつもだったらたくさんとんでるのに!どうして、おさ!?」
「りすさんがきのみさんをひとりじめしてるよ!どうやってとりかえせばいいの、おさ!?」
「はっぱさんがぜんぜんゆっくりしてないよ!このままじゃすぐゆきさんがふるよ!どうしよう、おさ!?」

「むっきゅうぅぅぅぅぅぅ!うるさぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁい!」



『騙されゆっくり』



山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘。
紅葉も散り、冬枯れの様相を呈する木々に囲まれた丘の天辺で、長であるぱちゅりーは群れに囲まれていた。

「すこしだまってなさい!いま、どうするかかんがえてるんだから!」

そうは言うものの、ぱちゅりーには打開策なぞ見当もつかない。

(なんでごはんさんがたりなくなったのかしら?いつもどおりにしていただけなのに……)

打開策どころか、食料危機に陥った原因にすら気付かない。

(むきゅっ!きっとみんながかりをさぼってるからにちがいないわ!だからごはんさんがたりないのね!)

それどころか全く明後日の方向に結論を捩じ曲げ、群れに責任転嫁をする始末。
だがそんな事をしていても状況が改善する訳ではない。むしろ余計な時間を浪費するだけだ。

(はやくどうにかしないと、ゆっくりできなくなるわね……ん?そういえばまえにもゆっくりできないことがあったような……)

不意にぱちゅりーの脳裏を何かがよぎる。
そう、あれは確か、とても不愉快なクズれいむを皆でゆっくり出来なくさせたあの日。
無様に泣き叫ぶれいむを枝で引っ掻き、傷だらけにしてから押さえつけておしおきした時に、あのれいむは何と言っていた?

「むきゅ!そうよ、にんげんさんからおやさいをとりかえしましょう!!」

「「「「「「「「「「ゆぅぅぅぅぅうぅぅぅっ!?!?!?」」」」」」」」」」

突然の長の発言に驚愕する群れに、ぱちゅりーは名案という名の思いつきを披露する。

「まえにあのくずれいむがいっていたでしょう?にんげんさんはおやさいをひとりじめしているって!
ごはんをひとりじめするのはゆっくりできないことよ!だからみんなでとりかえしにいくの!」

無論、れいむはそんな事は言っていない。むしろ真逆の事を主張していたのだが、ぱちゅりーの脳内ではそう言っていた事になっている。
ぱちゅりーの案を聞いた群れがざわめく。
あのれいむが語ったお話はあの場にいた全員が知っていた。何せ群れが暮らす丘の上で、長と大声で怒鳴り合っていたのだから。
しかし、今ぱちゅりーが語った内容とは全く違っていた筈だ。彼女達の餡子脳でさえその程度は記憶できている。
だが、それを指摘できるゆっくりは居なかった。
なにしろ一代でこの群れを築き上げた、偉大な先々代の長ぱちゅりー唯一の直系である。
しかもあのれいむ以降、ぱちゅりーの機嫌を損ねたゆっくりは皆ゆっくり出来なくされてしまった。
言うなれば公開処刑を利用した恐怖政治体系が出来上がっていたのだ。
もしも今、ぱちゅりーに「ちがうよ!れいむはそんなこといってないよ!」などと指摘しようものなら、あの恐ろしい『お仕置き』送りだ。

「で、でも、にんげんさんはつよいのぜ!?れいむだってたくさんいじめられていたんだぜ!?」

あるまりさが恐る恐る進言する。
このまりさはれいむの事件以降、長の補佐として抜擢されていた。
何でも「長の命令に従い、幼馴染みのれいむをすっきりさせすぎて殺した」事が気に入られたらしい。

「むきゅ!それはにんげんさんがたくさんいるからよ!にんげんさんのむれはとてもつよいけれど、ひとりだったらたいしたことはないの!
にんげんさんがひとりになったときに、むれのみんなでいっせいにかかればこわくないわ!」

それは確かに正解だ。
人間の強さはその社会性にある。連携のとれた役割分担をもって、ほ乳類最強の地位を獲得したのだから。

だがぱちゅりーは肝心な事を忘れている。いや、肝心な事を知らないというべきか。
彼女達ゆっくりが、自然界において最弱に位置している事実を。

周囲の危険な生物と言えば、精々蜂がいるくらいの理想的な環境に居たぱちゅりーには自らの立場を知らない。
先々代ぱちゅりーの非凡な才能が、皮肉にも子孫である彼女からそれを知りうる機会を奪っていたのだ。

「それじゃああした、おひさまがのぼるまえににんげんさんのはたけにいくわ!れいむもぱちぇもついてきてね!」

長の宣言に驚いたのは言われた当人達だ。

「まってよおさ!おちびちゃんたちをおいていけないよ!?」
「むきゅ!ぱちぇたちはせんりょくにならないわ!それにがっこうはどうするの!?」

慌てて長に抗議したのは、最近親になったばかりの若いれいむと、子ゆっくり達にお勉強を教える係のぱちゅりーだ。
この群れでは赤ゆっくりがある程度成長したら、このぱちゅりーの元で勉強をしなければならない義務がある。
勉強と言っても『食べられない草やキノコの見分け方』や『蜂に襲われたときの対処法』程度ではあるが、
これによりある程度は中毒死や蜂毒による死者を押さえることが可能だ。
これも先々代ぱちゅりーの取り決めであるが、長ぱちゅりーはこの教育を受けていない。
先代が自ら帝王教育を施す、と頑として譲らなかったのだ。
先々代程でないにしろ、先代の長もそこそこ優秀ではあった。ただし『長としては』だが。
親としてはまさしく『馬鹿親』以外の何者でもなかった。
全ての我侭を「あまえんぼさんね」と聞き入れ、洒落にならない悪戯さえ「わんぱくなんだから」と笑って許す。
前年の冬籠り中にぱちゅりーが食料を食い尽くしたときも、笑って「さあ、おたべなさい」をやった程だ。
その結果がこの無能なぱちゅりーの完成である。

「なにいってるの!みんなでいく、っていったでしょ!とうぜんあかちゃんもつれていくわ!」

「「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛!?」」

先々代もきっと浮かばれまい。



東の空が明るくなり、真っ暗な夜が次第に西に追いやられる早朝、夜明け前。
山の裾野に広がる森と、人里を分ける広い平原に、突如現れた200を超える大軍勢。
その先頭に立つのはかつて母親に強請り、所有していたまりさから強引に取り上げたスィーに乗った長ぱちゅりー。
ちなみにそのまりさは無実の罪を着せられ、群れを追放されている。
その後ろに付き従うのは補佐役のまりさ。
今回の出征に対し、副将を命じられたのだ。
それに続くはみょんとちぇんの混合部隊。
その後塵を拝するのはまりさとありす。やや遅れてれいむ。
殿にぱちゅりー達を置き、それぞれが方陣を組んで縦列に並んでいる。
無駄に統率のとれた陣形だった。

「むきゅう!みえてきたわ!」

朝焼けに大根のシルエットが連なる影が薄らと浮かび上がるそれを見て、ぱちゅりーは喜びの声を上げた。

「やっぱりだれもいない!おひさまがみえるまえならにんげんさんもねむっているのよ!
しかもあかるくなりかけだかられみりゃもでてこないわ!ぱちぇのおもったとおり!」

それを聞いた群れは一同感心する。
一見無謀なこの計画が、そんな深謀遠慮で成り立っていたなんて!

「みんな、いまのうちにおやさいをとりかえすのよ!ぜんぐん、とつげきぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

そう言ってぱちゅりーは、群れの先頭に立って畑に突撃した。
慌てて副将のまりさが「まつんだぜぇぇぇぇぇっ!」と追いかけ、群れの皆も「ゆおぉぉぉぉっ!!!」と鬨の声を上げながら全力疾走する。

(ゆふふ、これだけあればふゆはよゆうでこせるわ!ぱちぇのちしきにふかのうのもじはないのよ!)

凄まじい自画自賛を心に浮かべ、ぱちゅりーは罠の可能性を考慮すらせずに真直ぐ畑に突進する。

そして真っ先に罠に引っ掛かった。

落とし穴とネズミ捕りを組み合わせたようなその罠は、まず最初の一匹が浅めに掘られた落とし穴に落ちる事から始まる。
突然現れた落とし穴に、スィーを全速にしていたぱちぇりーはそのままの勢いで突っ込んだ。
乗っていたスィーは大破。ぱちゅりーは投げ出された衝撃で生クリームを吐き、そのまま意識を失った。

ぱちゅりーに追い付くべく、全力で跳ねていた群れはその姿をしっかりと見てしまった。

「ゆっ!みんなとまるんだぜ!おとしあながあるんだぜ!」

慌てて副将のまりさが急停止を命令するも、全速力で急行していた勢いは殺しきれない。
それでも穴に落ちるゆっくりがいなかったのは不幸中の幸いと言うべきか。

「おさー、だいじょうぶなんだぜー?」

気絶したぱちゅりーに呼び掛けるまりさ。他のゆっくり達も穴の周りに集まり、心配そうに穴の底の様子を伺う。
落とし穴はそれ程深くない。まりさやちぇんなら簡単に出てこられる程度だ。
だがぱちゅりーでは無理だろう。
ましてこのぱちゅりーは外出の際は必ずスィーに乗っていた為、運動能力は他のぱちゅりー種より劣るのだから。

「ゆぅ……、とりあえずおさをきゅうしゅつするんだぜ。みんなはここでまってるんだぜ。」

そう言って穴に飛び込むまりさ。怪我を負った仲間を見捨てない精神は確かにリーダーの資質であった。



だが、それこそがこの罠の本当の狙い。



まりさが穴に着地すると同時に、穴の周囲が突然陥没したのだ。それも広範囲に渡って。

「「「「「「「「「「ゆ゛っ゛!?!?!?!?」」」」」」」」」」

突然の浮遊感に『おそらをとんでるみたい!』などと思う間もなく、200匹を超える群れ全員が落ちていく。
そして、

「「「「「「「「「「ゆ゛っ゛ぎゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!」」」」」」」」」」

全員がゆっくりできない悲鳴を上げた。



「あ゛ん゛よ゛がぁ゛!!ばでぃざのあんよがぁぁあぁぁ!!!」
「でいぶのあんござんゆっぐりじでぇぇぇぇええぇっっ!!!もどってぎでぇぇぇぇっっっ!!!!」
「ありずのどがいばなおばだがぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!!おばだがいじゃいぃぃぃぃぃぃいぃぃぃっ!!!!!」
「らんじゃまぁあぁぁぁ!!!!!わぎゃらないよぉぉお゛ぉぉぉぉぉおぉぉぉっっ!!!!!!」
「ぢぃい゛ぃぃぃんぼぉおおお゛ぉぉぉぉっっ!!!!!!」

最初の穴よりもかなり深く掘られた穴の底はまさに阿鼻叫喚の様を晒していた。
ゆっくり達がもがき苦しむ原因は、穴底にびっしり生えた刺であった。
刺の正体は古釘。
赤錆塗れの釘を打ち付けた板が穴の底全体に敷かれていたのだ。
しかも真直ぐな釘は殆ど無く、くの字に折れ曲がっていたり斜めに打たれていたりしていた為、普通に刺さるよりも傷は深くなる。
その上中途半端な長さの釘はゆっくり達を貫通する事無く、長さもまちまちなのでゆっくり達を満遍なく傷付けていく。
痛みにもがけばもがくほど、更なる痛みを与えるように、しかしゆっくりを即死させないように設計された罠であった。



そしてこの罠最大の仕掛けは、

『仲間を助けようとしたゆっくりだけが助かり、他のゆっくり達がもがき苦しむ様を見せつけられる』

事であった。



「ゆぎゃあああぁぁっぁぁぁあぁっ!!どぼじでみんながぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!」

相変わらず気絶しているぱちゅりーを余所に、まりさはそろって生き地獄に堕ちた群れに半狂乱になっていた。
最初の落とし穴は囮。始めに引っ掛かったゆっくりを助けようと他のゆっくりが穴に飛び込んだ時、仕掛けのスイッチが入る仕組みだ。
落とし穴はそのまま柵付きの櫓へと変わり、砂で偽装されていた網目の床が本来の姿を取り戻す。
そうして本物の罠に嵌ったゆっくりが何日も掛けて文字通り『ゆっくり』死んでいく様子を見せる特等席へと変貌するのだ。

「なんでなんだぜ!?どうしてでれないんだぜ!?いつのまにてんじょうさんがはえたんだぜ!?」

隠れていた蓋が閉まり、堅牢な檻と化した櫓の上で、まりさは皆を助ける為になんとか外に出ようと暴れ回る。
それが無駄の努力だとうっすら理解しつつも、まりさは暴れ続けた。

まりさの頭上に人影が現れたのは、罠に嵌ってから半刻ほど過ぎた頃だった。







……うるさいな。また畑の罠にゆっくりが引っ掛かったのか……
どれ、ちょっと見てくるか。

……おお、今度はまた大漁だなオイ。
ええと、1、2、3、4……

……199、200、っと。
200匹超えかよ。こいつら群れごと襲って来た訳か。
罠が無かったらやばかったな。

……しかしこいつら罠に嵌ったって言うのに全然懲りてないのな。
さっきから『早く出せ!』だの『さっさと助けろ、爺!』だの。
……全然ゆっくりしていないじゃねぇか。
あのれいむとは大違いだな……

……うん?何だ其処のまりさ。『なんでれいむの事知ってるんだぜ?』だと?
お前こそなんであのれいむの事知ってるんだよ?

……何?お前らがあのれいむの群れだったのか?
じゃあ何で畑を襲ったんだよ。れいむは教えてくれなかったのか?
『畑のお野菜は人間がゆっくりする為に必要な物だ』ってよ。

……『まりさ達はあんな大嘘に騙されたりしないんだぜ!』?
おい、なんで嘘だと思ったんだ?

……『長が知らないから』?
それだけで嘘だと決め付けたのか?
……『長は何でも知ってるから、長が知らなければ嘘なんだぜ』?
何だそれは。ゆっくりの考える事は全然解らないな……。
それで、あのれいむはどうしたんだ?

…………『みんなに嘘を吐いた罪で死刑にした』だと?
……そうか。
……なあ、どうして殺したんだ?
…………『死ぬまで嘘だと認めなかったから』?
……そうか。あいつは最後まで俺との約束を守ろうとしてくれたのか……。







人間さんが立ち去るのを見て、まりさは頬の力を抜いた。
精一杯のぷくーっ!で威嚇を続けていたが、馬鹿な人間さんには今ひとつ効果が薄いようで、なかなか言う事を聞かない。
いつもなら相手が泣き出す前に止めるのだが、今回は相手が逃げ出すまでぷくーっ!し続けてしまった。

(ゆうぅ、いくらにんげんさんあいてだからってやりすぎちゃったんだぜ)

まりさの心中に哀れみが浮かぶ。これが武士の情けという奴だろうか。

(それよりどうやってここからにげだすかなんだぜ……)

眼下の地獄から目をそらし、まりさは脱出方法を考えながら何気なしに空を仰ぐ。

「……ゆ゛っ!?てんじょうさんがきえてるんだぜ!?それにはしさんができてるんだぜ!?」

いつの間にか檻の蓋が開いており、穴を跨ぐように細い板が渡されていた。
おそらく人間さんがうっかり閉め忘れたのだろう。間抜けな話だが、今のまりさ達には好都合だ。
問題は……

「……はしさんほそすぎるんだぜ……うまくとびのれるかしんぱいなんだぜ……」

そうなのだ。橋の幅が余りにも細いのだ。
檻の高さはまりさなら飛び越せるだろう。しかし、勢いをつけなければ無理な高さだ。
もしも勢いがつきすぎたら、自分もあの地獄へ真っ逆さま。
そんな未来はまりさも嫌だ。
かといってこのままでは折からでる事も叶わない。せめて足場でもあれば、ゆっくり橋に乗り移れるのだが。

(……ゆ!そうだ!!あしばならあるよ!!)

突然まりさに天啓が降りる。そして未だ気絶しているぱちゅりーを揺さぶって起こし始めた。

「おさ!おきるんだぜ、おさ!!」

「…………ゆうぅぅぅん……なにごとよまりさ……きょうはおめざめがはやかったから、まだねむいのに……」

やたら呑気な台詞と共に、ぱちゅりーがようやく目を覚ます。
激突の衝撃が余程凄かったのか、状況が認識できていないらしい。

「……ゆ?なんだかうるさいわね……ゆぎゃあぁぁぁぁぁああっぁぁぁっ!?!?!?!?」

寝起きで霞むぱちゅりーの視界に飛び込んで来たのは、この世のものとは思えぬ悲鳴を上げながらもがき苦しむ群れの姿。
正直、人間だったらトラウマ確実の光景である。

「な、ななななにがおきたの!?これはどういうこと、まりさ!?!?」

「おちつくんだぜ、おさ!いま、せつめいするんだぜ!」

錯乱するぱちゅりーを宥め、こうなった経緯を語り出すまりさ。それを聞き、ぱちゅりーの目に知性の光が戻る。

「ゆぅ……そうだったの……」

「さっきのにんげんさんはまりささまにおそれをなしてにげたんだぜ!だからおいかけてぼっこぼっこにしてやるんだぜ!
そうしてまりささまのどれいにして、みんなをひっぱりあげさせるんだぜ!!」

先程、人間さんを得意のぷくーっ!で追い払った事がまりさを増長させたらしい。
確定した未来のつもりで妄想を垂れ流すまりさを尻目に、ぱちゅりーは自慢の生クリーム脳をフル回転させていた。

(まりさはにんげんさんがにげたっておもってるみたいだけど、たぶんちがうわね。
にんげんさんがどこかへいっちゃったのは、おそらくなかまをよびにいったのだわ。
……いけない、このままじゃころされちゃうわ!はやくにげださないと……!!!)

ぱちゅりーも全くの無能という訳ではない。
むしろ自らの危機には敏感で、それを回避する為の知恵も素早く回る。
今まで群れの長の地位を追われずにこれたのは、なにも七光りだけではないのだ。
それだけに現在自分が置かれた状況は充分理解できていた。
ぱちゅりーはまだ得意げに「にんげんさんをどれいにしてやるんだぜ!!」等とほざくまりさを見やる。

(……このまりさはもうだめね。じゃあ、さいごにぱちぇのやくにたってもらいましょう)

内心を全く表に出さず、ぱちゅりーは心配そうな振りをしながらまりさに語り掛けた。

「だめよ、まりさ。にんげんさんといちたいいちでたたかうなんてむぼうにすぎるもの。
それにみんなをたすけるのに、ばかなにんげんさんのてをかりるひつようはないわ」

「じゃあどうするんだぜ!?このままじゃみんなしんじゃうんだぜ!?」

ぱちゅりーの言葉に目を剥いて反論するまりさを抑え、ぱちゅりーは説得を開始した。

「いい?わたしがほかのむれにたすけをよびにいくわ。まりさはいざというときのためにここにのこっていて」

「ゆ!?ひとりでなんてむぼうなんだぜ、おさ!まりさもいくんだぜ!!」

「だめよ!まりさがいなかったらみんながころされちゃうかもしれないわ!
にんげんさんがみんなをころそうとしたら、さっきみたいにおいはらってちょうだい。
これはぱちぇにはまねできない、つよいまりさにしかできないことよ!!」

「……わかったんだぜ!みんなのことはまかせるんだぜ!!」

誉め殺しと言う名の説得に、とうとうまりさも折れた。
邪悪な微笑みを苦痛の表情で隠し、ぱちゅりーはまりさを使って檻の外に出る。

「……じゃあいってくるわね!みんなのことおねがいね、まりさ!!」

「きをつけていってくるんだぜ、おさ!!」

危険を顧みず群れの為に助けを喚びにいく長の姿を、まりさは感動のあまり滂沱の涙を流しながら見送った。
決して帰ってこない、その姿を。







……こんだけ藁と油がありゃ十分か。
……あれ?三軒隣の御仁井さんじゃないですか。
……ああ、これですか?
いえ、うちの畑にね、ええそうです、罠を仕掛けてもらった畑ですよ。
そこにゆっくり共が押し寄せてきましてね。
……ええ、一網打尽ですよ。凄いですね、あれ。
それでですね、罠ごとゆっくり共を全部燃やしちまおうと思いまして。

……解ってます。自分でもかなり乱暴だな、とは思いますがね。
ほら、覚えてますか?罠を仕掛けてもらった時に話したれいむのこと。
……そうです。あのれいむの群れなんですよ。
奴ら、れいむの話を聞くどころか、れいむを嘘つき呼ばわりして殺しちまったみたいなんです。
……ええ、確かにあの話は俺が作った法螺話ですがね。
それでもあいつは最後まで俺の話を信じてくれていたんです。
ゆっくりに同情する訳じゃありませんが、仇ぐらい討っても良いでしょう?

……それは?
唐辛子、ですか?何でまたそんな物を……
なるほど、こいつを藁に混ぜるんですか。その煙で燻せばゆっくり共が余計に苦しむ、と。
いや、流石ですねぇ。こんなこと俺には思い付きませんでしたよ。
……何匹か分けてほしい、ですって?
いえ、構いませんよ。それじゃあ一緒に行きませんか?
何なら半分くらい持っていっても構いませんよ。
何しろ全部で200匹以上居ますし。
……そうですね、ここ最近では新記録になるんじゃないですか?
どうも群れごと襲って来たみたいですね、長みたいな奴も居ましたし。
っていうか、俺はそれだけのゆっくりを根こそぎ捕まえる罠を作れるアナタが凄いと思いますが。

……おや?
……いえ、ほら彼処、あの頭から罠に突っ込んでぶっ壊れたスィーがあるでしょう?
あれから投げ出されて瀕死だったはずのぱちゅりーが居ないんですよ。
結構派手にぶつかったらしくて、俺が見つけた時には生クリーム吐きまくって痙攣していたんですがね。
……おい、まりさ。其処に居たぱちゅりーはどうした?

……『長はとっくに逃げたんだぜ!』?
満身創痍で瀕死のぱちゅりーが、スィーも無しで一匹だけでか?
って、お前が長じゃなかったのか?
それよりどうやってこの罠から逃げたんだよ。

……『他の群れに助けを呼びにいったんだぜ!』?
今更、他の群れに助けを求めても無駄だと思うぞ?
この辺りのゆっくりはもう冬籠りしてるからな。

……『どうしてなんだぜ!?』ってか。
秋まきの大根がそろそろ収穫できるからな。もうすぐ雪が降り始めるぞ。
賢いゆっくりならとっくに冬籠りの支度は済ませてるさ。
特に今年は寒くなるのが早かったから尚更だな。
今頃食料を集めているお前らの長はよっぽど無能だったんだな。

……『長を馬鹿にするんじゃないんだぜ!』って言われてもなぁ……
実際無能だろ?
今もこうしてお前ら見捨てて逃げ出す位だしな。
そもそも賢いゆっくりなら人間の畑なんぞ襲わないっての。

……お前らもあのれいむの話は聞いていたんだろう?
お前らは嘘だと思っていたらしいが。
でもそれはあのぱちゅりーがそう言ったから、だったよな。
……哀れだな。お前ら全員、あのぱちゅりーに騙されていたんだよ。
あのぱちゅりーがお前らを騙して、人間の畑を襲わせたんだ。
……大方、れいむの話とは真逆の事を言ったんじゃないか?
『お野菜を取り返す』とかなんとか。
……やっぱりか。
……『どうして解ったんだぜ!?』って、あのなぁ。
少し考えりゃ解るんだよ。
さっきも言ったが満身創痍のぱちゅりーが、一匹だけでどうやって助けるってんだ?
それを踏まえれば、お前らを見捨てたって考える方が自然だろうが。
……お前ら群れごと来てるんだろう?
大方、赤ん坊の数を押さえる事も出来ずに、食えるだけ食い尽くしたせいで森の食い物が尽きちまったって所か。
だったらこの襲撃の失敗も計画のうちだったんだろうさ。
……『何を言ってるんだぜ?』?
お前らの数が増えすぎたせいで食糧不足になったんだったら、今度は逆に減らせばいいのさ。
お前らだって冬に備えて食料は貯めていたんだろう?食い物が尽きたとは言ってもそれ位はしているよな。
増えすぎた群れを滅ぼして一からやり直すのと、労せずして冬籠りの食糧を手に入れる。
ほら、一石二鳥だろう?



……うるせぇな。泣きわめいたってしょうがないだろ。
どのみちここで死ぬ事には変わりないんだから。
……すみませんね御仁井さん。長々とつまらない事に付き合わせちまって。
……え?さっきの話ですか?
ええ、口から出任せって奴ですよ。
経緯は間違ってなさそうですが、動機は違うと思いますよ?
実際助けを呼んだ所で、またこの罠の餌食になるのが関の山でしょう。
それに、希望を持たせたまま死なせるなんて、あのれいむの仇には似合いませんよ。
……そんなに怖いですか?
止してくださいよ、俺はただの百姓で充分です。
怖がるのも怖がられるのも真っ平ご免、ってね。

……さて、さっさと燃やしちまいましょう。
あ、新しい罠の設置、お願いしますね。
……はい、前回と同じ予算で。
そうですね、一晩あればこいつらも燃え尽きるでしょうから、明日にでも……







「げほっ!ごほっ!げむ゛り゛ざん゛、ゆ゛っ゛ぐり゛じな゛い゛であ゛っ゛ぢい゛ぐん゛だぜ!!」

目や喉を刺激する煙に燻されながらも、まりさはまだ生きていた。
しかし炎の勢いは留まる事を知らず、数分もすればまりさのいる檻まで火は回るだろう。
穴の底に目を向ければ、先程まで断末魔をあげてのたうち回っていた群れが、最早うめき声すら漏らす事無く炭と化していく姿が見える。

(ごめんねみんな……。まりさ、みんなをたすけられなかったよ……)

煙がしみる目から大量の涙を流しつつ、まりさは心の中で皆に謝る。

ふと、群れに残して来た子供達の事を思い出す。
あくまでも群れ全員での襲撃にこだわるぱちぇりーに、「せめてこどもたちだけはおいていってね!」とまりさが進言した為、
大人になる一歩手前の子ゆっくり以外はあの丘に残して来たのだ。

(おちびちゃんたち、だいじょうぶかなぁ……しんぱいだよ………)

狩りのやり方は教えた。食べられる花やキノコ、お薬になる草の事も教えた。
それに群れのおうちには若干ではあるが食べ物が残っている。
子供達だけなら一冬越す程度の蓄えにはなる筈だった。
それでも親の庇護の無い子ゆっくりが生きていくには、余りに厳しすぎる条件である。

(なんで、こんなことになっちゃったのかなぁ…………)

結局ぱちゅりーは帰ってこなかった。
やはり人間さんの言う通り、自分だけ助かる為にまりさ達を騙したのだろうか。
ならば。
いったい何時から自分達は騙されていたのだろうか。
先代の長が冬籠り中の事故で巣穴に生き埋めになってしまった時からか、それとも群れ唯一のスィーを独り占めしていたまりさを追い出した時からか。
あるいは……

(……やっぱり、れいむをくずってよんだときかなぁ……)

あの時、全身を傷だらけにされてありすに犯されていた幼馴染みの姿に、子供の頃から大好きだったれいむが苦しむ姿に耐えられず、
早くれいむを苦痛から解放させてあげたくて、まりさはれいむをレイプした。
まむまむを潰されていたれいむが、ぺにぺにを突き立てられる度に悲鳴を上げるのが見ていられなくて、ずっとすーり!すーり!していた。
ゆっくりがレイパーにやられて死んでしまう理由が、自分の許容量を遥かに超えるにんっしんっの所為である事を知っていたまりさは、
まむまむが潰されていてもすーり!すーり!でのにんっしんっでなられいむを永遠にゆっくりさせてあげられると考えたからだ。
結局れいむはにんっしんっの兆候すら見せずに死んでしまったが、まりさは最後まですーり!すーり!を止めなかった。
涙を流してれいむの死体に体をこすりつけるまりさを、群れの皆はクズをゆっくりさせない厳しいゆっくりだと勘違いして、長の補佐につけたのだ。
それ以降、まりさは沢山の友達を殺して来た。

赤ちゃんの為に他のゆっくりから食糧を奪ったれいむを殺した。
レイパーの疑いをかけられた無実のありすを殺した。
親の仇を取る為に長に襲いかかったちぇんを殺した。
長が希望した蜂の巣を捕って来れなかったみょんを殺した。
そして、長の命令に逆らったまりさ達を……。

(おさがうそつきだったら、れいむも、みんなも、ほんとうは……)

足下で大きな音がした。
自重に耐えきれなくなった櫓がいよいよ崩れ出したのだ。
木製の檻を支える支柱が崩れ落ち、燃え盛る炎の中へ落ちていく。

目前に迫った炎の熱気を浴びながら、まりさは大好きだった幼馴染みに一言だけ、伝えた。

「…………ごめんね、れいむ……」

もう届かない、謝罪の言葉を。






※まずは前作に感想を下さった皆様に感謝を。
拙い駄文に「続きプリーズ」と言ってくださった方々も、
「何やっとんじゃワレ!」的な厳しいお言葉を頂けた方々も、本当にありがとうございます。
本来ならこの話でもりのけんじゃ(笑)には死んでいただく予定でしたが、
「ぱちゅりー死ね!」「群れの全滅見せろ!」のお声に筆が進む進む。
気が付けば前作を超える長文となり、ぱちゅりーの死に様が入らない始末。
ぱちゅりーの死に様をご期待いただいた方には申し訳ありませんが、次回に持ち越させていただきます。
……申し訳ないついでに、もう一つ。
当初予定していたぱちゅりーの死に様が余りにあっさりしているため、全面的にプロットを見直させていただきます。
おそらく連休前か、連休初日あたりにはうp出来るかとは思いますが、少々お待ちくださいませ。


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感想

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  • めいさく -- 2019-08-13 10:27:24
  • 最後のくだりは本心だろうが、あの時はノリノリだったじゃねーか
    よって、会う資格無し。ゆ獄で反省しろ -- 2013-11-20 19:55:36
  • 最後ぱちゅりーに恨み言言うならまだしも良い奴ぶって死んでいくまりさがうぜえ -- 2013-04-16 20:46:51
  • SSには人間世界でも起こりうる、もしくは起こった事をモチーフにしてる作品もあるからなぁ
    こういう作品を見ると少し背筋に寒さを感じるな、でも好きだなこういうの -- 2013-01-16 11:37:41
  • ぱちゅりーは死ぬのがとかいはだわ -- 2012-08-15 17:34:40
  • ↓ パチュリー・魔理沙じゃなくて
    ぱちゅりー・まりさじゃないの?こまけぇことはいいんだくないよ!! -- 2012-08-09 21:40:50
  • パチュリー、オレンジジュースかけながらいたぶりてぇ -- 2012-08-07 09:19:01
  • パチュリーくそだな、魔理沙・・・・悪かった -- 2012-07-08 14:59:41
  • わかるよーぐずはしぬうんめいなんだよー -- 2012-01-15 16:35:03
  • パチュリーめ…
    野郎オブクラッシャアアアアアアアア!!! -- 2011-08-23 15:16:08
  • まりさの最期はよかった -- 2010-10-10 01:33:57
  • やはりゲス共にはこれだな…
    後はぱちゅりーのですっきりできそー! -- 2010-10-03 17:17:52
  • 動物農場を彷彿とさせるな。面白くて良い。 -- 2010-09-19 22:19:14
  • 確かにこのまりさの記憶変換能力は凄いなw
    すこし羨ましいくらだw -- 2010-09-07 07:04:43
  • まりさの記憶変換まじパネェwwww -- 2010-08-26 22:59:38
  • ヨッシャァァァ!!!
    -- 2010-08-21 15:33:00
  • ゲスなまりさが死ぬのはいいことだね -- 2010-07-19 18:52:15
  • イイハナシダナー -- 2010-07-09 15:44:55
  • 名作!! -- 2010-06-21 12:55:49
  • 続きあったんだ!ゆっかりしていたよ -- 2010-06-14 19:29:02
最終更新:2009年10月23日 23:39
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