ふたば系ゆっくりいじめ 288 ゆっへん!まりさはとってもつよいのぜ!

ゆっへん!まりさはとってもつよいのぜ! 23KB


ゆっへん!まりさはとってもつよいのぜ!


※現代設定。ゆっくりの俺設定。
※人間が出ます。
※斬新でもなんでもないただの虐待。

「ゆゆーっ!くらうんだぜーっ!」
初夏の山の中。午後の木漏れ日が地面に美しい斑を描いている。
「ゆっへん!まりさにかかれば こんなやついちころなのぜ!」
「ゆーっ!すごいよまりさ!あんなにこわいかまきりさんを やっつけちゃうなんて!」
二匹のゆっくりが狩りを行っていた。
「すごい!まりさはとってもつよいんだね!」
赤いリボンをつけたれいむ種、木の実を集めながら、連れの狩りを眺めている。
「あたりまえなのぜ!しょせんはまりさのてきじゃないんだぜ!」
れいむの連れ、黒い帽子のまりさ種は捕らえたカマキリを、どうやっているのか、舌で器用に掴みながら答える。
びくりびくりとうごめく、半分潰れかかった「獲物」を自分の目の前まで持って行き、少し優越感を顔に浮かべてから帽子の中へしまう。
別に食べる訳ではない。カマキリは堅い上に、そのカマで口の中を切ってしまう可能性もある。ゆっくりが食べられるものではない。
これは言うなれば「勲章」なのだ。自分が強いという、証。
「どうしてまりさはそんなにつよいの?ゆっくりおしえてよ!」
れいむもまりさみたいになりたいよ!得意気な様子のまりさに、れいむは飛び跳ねながら尋ねる。
「ゆっ!とくべつなことはなにもしていないんだぜ!まりさは うまれつきとってもつよかったのぜ!」
身をそらして、胸を張るような仕草をするまりさ。
「ゆゆ~ん♪さすがはむれいちばんの”かりうど”だよ~♪」
「ゆっへん!」
そんなまりさを、れいむは熱のこもった視線で見つめる。恐らくはつがいなのだろう、頬が赤く染まっている。
「れいむのためなら どんなやつだってやっつけてやるのぜ!」
そんなれいむにまりさも顔を赤くして答える。あまりむりはしないでね!と心配するれいむにも余裕の表情をみせる。
その顔は貫禄こそ無いが自信に満ち溢れていた。つまる所、このまりさは若かったのである。
「ゆゆっ!そういえばまりさはさいきんかりにあきてきたのぜ!」
 狩りからの帰り道、急にまりさが言った。
「ゆっ!?そんなこといったらごはんをむ~しゃむ~しゃできなくなっちゃうよ!?」
れいむはその唐突な発言に顔を青く染める。れいむは狩りが得意ではなかったし、だからこそ狩りの上手なまりさと番になったのだから。
「かんちがいしないでほしいんだぜ!まりさはかりをやめたいわけじゃないんだぜ!」
「ゆゆっ?どういうこと?れいむにゆっくりせつめいしてね!」
「じゃぁゆっくりせつめいするのぜ!それはね…」
 しばらくの後、赤く染まり始めた森にれいむの驚きと尊敬に満ちた声が響いた。


 次の日、舗装された道路を跳ねているのは昨日の二匹。
二匹の住んでいた森は人間が住んでいる町からやや離れていたがそれでも歩いていけない距離ではない。
人間の3、4倍は時間がかかるが、ゆっくり達にとってもそれは同じであった。
 ゆっ!ゆっ!ゆっ!と掛け声をかけながら進む二匹。その目は朝の日差しを受けてきらきらと輝いているが、理由は日差しだけではない。
希望。これからもずっとゆっくりできるという希望。
 ゆっくり特有の小馬鹿にして笑っているような表情も心なしか普段より明るい。
昨日の帰り道でのまりさの提案。こんな提案を思いつくなんて、まりさは頭も良いに違いないよと、れいむは思い、頬を緩める。
 緩やかな斜面を登りながら、れいむは新しい暮らしに胸をときめかせ、まりさの言葉を思い出した。

「ばかなにんげんたちをやっつけて、まりさとれいむだけのおうこくをつくるのぜ!」

…まりさはもうよわっちいむしさんたちあいてじゃつまらないのぜ!だからまりさはにんげんをかるのぜ!
そうしたらまりさがおうさまで、れいむがおうじょさまだぜ!
まりさの言葉を、れいむは何度も何度も頭の中で繰り返す。
 ―――あぁ!れいむが王女さま!どんな生活が送れるだろう?あまあまを毎日食べて、ずっとすっきりー!をしようか?
うぅん。一日中まりさと日向ぼっこをするのも良いな…―――

…そうしたらにんげんをどれいにして、ずっとふたりでゆっくりするんだぜ!
…ゆっくりー!

 ずっとゆっくり、その言葉はゆっくりにとって何よりの幸せ。
二匹には失敗の二文字は存在しなかった。
人間は噂でしか聞いたことが無かったが、まったく恐れることは無いように思えた。
まりさは自分の強さを信じていたし、れいむもまりさの強さを信じていたからだ。
 坂を登りきり、まりさ達は実にゆっくりとした表情を浮かべながら、下り坂となった斜面を降りていった。


「ゆゆ~ん。やっとついたのぜ」
「つかれたね!まりさ!」
朝早く出かけた二人が町に着いたのは昼前だった。
「おひるにはまだはやいから、それまでここでゆっくりするのぜ!」
「ゆ~ん♪ゆっくりぃ~♪」
「「ゆっくりしていってね!」」
町のはずれの公園の真ん中に位置する芝生の上。お互いに挨拶をして、寄り添って日向ぼっこをする二匹。
 天敵のほとんどいない山に住んでいた二人に警戒という概念は無かった。
しばらくして、太陽が二匹を真上から照らし始めた頃、空腹を感じ始めた二匹は昼食をとることにした。
「にんげんのやついないね!せっかく あまあまをみつがせて む~しゃむ~しゃ してあげようとおもったのにね!」
「しかたないから、ここあたりのくささんをたべてやるんだぜ!」
二匹はぴょんぴょんはねて食べられそうな草を口に入れる。
「「むーしゃ、むーしゃ、それなりー」」
人気の無い公園に二匹の声が響く。 
 ひとしきり食事を終え、二匹が食後のゆっくりをはじめたときに事件が起きた。
「ゆゆっ!まりさ!にんげんだよ!」
「ゆ!ちょうどいいのぜ!しょくごのでざーとをとってくるかられいむはそこでみてるのぜ!」
「ゆゆーん!まりさかっこいいよぉ!ゆっくりおうえんするよ!」
くたびれた作業着姿、恐らくは先ほどまで工事現場で働いていたのであろう20代半ばの男が、ペットボトルの飲料を飲みながら、公園に入ってきた。
男はゆっくり二匹をちらりと見やると、近くのベンチに腰掛けた。
「ゆっ!おい!にんげん!」
まりさが噛み付くように話しかける。しかし男はそんなまりさを黙殺する。
「ゆゆっ!このまりささまがよんでいるのぜ!むしするなだぜ!」
「きこえないの?ばかなの?しぬの?」れいむも加勢する。最強のまりさがいれば恐いものは無かった。
男は沈黙を続ける。先ほどまでの仕事で出た汗を拭き、また一口ペットボトルに口をつける。
「ゆっ!まりさ!にんげんは、まりさにおそれをなしているよ!さすがだねまりさ!」
「ゆっへん!おいにんげん!にげなくていいのかだぜ?まりさはさいきょうのほしょくしゃなのぜ?」
ピクリ、と男が反応する。理由は怒りでも、当然恐怖でもなく、まりさの言ったある言葉に興味が沸いたからに他ならない。
「ゆっ やっときこえたみたいだぜ!にげるならいまのうちなのぜ!はやくしないとぼこぼこにするんだぜ?」
わずかな沈黙。無表情な男と対照的にまりさは余裕の笑みを崩さない。
「…お前は捕食者なのか?」
ようやく男が口を開いた。男が興味を引いた言葉、それは捕食者という言葉。
「そうだよ!まりさはいままでどんなむしさんにもまけなかったんだよ!とりさんだっておっぱらったんだから!」
「ゆっへん!」
男は深くため息をつく、顔に浮かぶ落胆の顔。
「なんだ、そういうことかよ…」
「そういうことなのぜ!」
意味も無くまりさが胸を張る。男の言葉の真意は当然理解していない。
”新種ゆっくり高価買取り!”仕事現場の傍にあった加工所のポスターの内容を思い出して、男は再びため息をつく。
 男は飲みかけのペットボトルをベンチに置いた。饅頭に期待した俺が馬鹿だったな、と心の中で呟く。
「じゃぁ、お前、本気でかかって来いよ、負けたときの言い訳は聞きたくないからな」
「なにいってるの?まりさがまけるわけないでしょ?ば…」
「馬鹿なの?死ぬの?ってか?死ぬわけねぇだろアホ饅頭、お前はたたかわねぇんだろ?黙ってみてろよ」
「ゆぅぅっ!?」
目を見開くれいむを尻目に男は立ち上がる。少し遊ぶか、と呟いたその声は、二匹には聞こえない。男には少し虐待趣味があった。
 一方まりさは怒り心頭だった。自分はまだしも愛しのれいむを目の前でアホ饅頭呼ばわりされたのだから。
「ゆぎぎ…!まりさのだいすきなれいむをぶじょくするなんてゆるさないのぜ!いわれなくてもほんきなのぜ!」
 この人間は半殺しにして奴隷として生かしてあげようかとおもったが、やめた。
地獄を見せてやろう、負けたときの言い訳をするのは人間の方だ。人間とゆっくりの圧倒的な差を見せ付けて殺してやる!
まりさは怒りのあまり歯を食いしばり男を睨む。男は自分の眼光に怯えるに違いないが、いまさら逃がすつもりは無い。
 それなのに。
「早くしろよ。まりさは最強なんだろ?それとも怖いのか?かかってこいよ。動かないでいてやるからさ」
ほら、ここだここ、と男は自分の体をぽんぽんと叩く。
その行為が戦いの合図になった。もっとも一方的な虐殺を戦いと呼ぶのであればの話であるが。
「ゆ゛っがああああああああっ!」
まりさは怒りに身をまかせ、男に腹に渾身の体当たりを浴びせた。
ぽすっと間の抜けた音が鳴る。
 当たった!勝負はついたも同然だ!その瞬間まりさは感じた。
枕を床に落とした時のような音を立ててまりさは着地する。視線を上げれば激痛に顔を歪めた男がいるはずだ。もしかしたらもう死んでいるかな?
ニヤリ、と口の端を上げて、視線を向けた先には
当然ながら無傷の男が立っていた。
「ゆゆっ!?」
まりさの頬を汗が流れる。
 いや、落ち着け。まりさは冷静になって考える。あれはやせ我慢をしているのだ、そうに違いない。無様なものだ、と。
とたんにまりさの顔に再び自信が戻る。
「ゆっ!ゆっ!やせがまんしないでさっさとしぬんだぜ!」
浴びせる連打、連打。今度は足だ。
「まりさ!にんげんはもうむしのいきだよ!がんばって!」
「ゆっ!ゆっ!まっててねれいむ!ゆっ!もうすぐこのにんげんをころすからね!ゆっ!ゆっ!」
しばらくぽすぽすと体当たりを浴びせた後、そろそろだろうか、とまりさは考え、人間の顔を見上げる。
「どうなのぜ!まりさのすーぱーあたっくは!まりさのあまりのつよさにてもあしもでないのぜ!?」

男は冷ややかな目でまりさを見下ろしていた。
「なぁ」
「ゆ!やっとしゃべったのぜ!てっきりしんだのかとおもったのぜ!」
「なにやってるんだ?」
「ゆっ!?」
お前こそ何を言っているんだ?まりさは混乱する。
「甘えてくるのもいいけどよ、そろそろかかってこいよ」
無論男は先ほどからまりさが”攻撃”を繰り出し続けているのを知っている。
要は、ただの挑発だった。
「ゆ゛っぎいいいいいいいいい!!なんでへいきなかおしているのぜええええええっ!?」
「あぁ?今の攻撃だったのか。気がつかなかったよ」
ゲラゲラと男は笑い、その笑いはまりさの怒りの炎をさらに燃え上がれせる
「ゆ゛ぎいぃぃぃ!しね!しねぇ!」
懸命な攻撃。だが男は顔色一つ変えない。
まりさ心に暗雲が立ち込める。何故効かない?何故?
 しばらくして、まりさがゆひぃ、ゆひぃと息を切らし始めた頃、男が口を開いた。
「走ってから体当たりをしたらどうだ?」
「ゆ!」
男の提案を聞きまりさの顔にわずかな光が戻る。
「ゆっ…へっへっへ…!やっぱりにんげんはばかなのぜ!」
「そのかわりそろそろ俺も攻撃するよ?いいな?」
男が言い終わる前に、すでにまりさは助走を始めていた。
「やってやるのぜーーーーーー!」
いままでのゆん生最大の力を込めてまりさは跳んだ。まりさの脳内には粉々に吹き飛ぶ忌々しい人間の姿が鮮明に描かれていた。


「ゆ゛ぎゃっ」
まりさは地面に叩きつけられていた。顔に痛みが走る。
つがいのれいむはしっかりと見ていた。男がまりさの頭をぴしゃりと叩いたのを。男としてはそのまま攻撃を受けてもまったく問題が無いのだが、気まぐれ、という奴だった。
「ゆぎいいい!いちゃい゛い゛いいい!なんでまりさのこうげきがきがないんだぜえ゛ぇぇぇ!」
まりさは顔の痛みと解けぬ疑問に身もだえする。何故?必殺の攻撃が?何故?
「よーし、俺の攻撃な」
もだえるまりさを無視し、男は足を上げ、まりさを踏みつけた。
「ゆ゛んぎっ!」
ギリギリと、男の足がまりさを死なない程度に押しつぶす。
「ゆ゛い゛い゛い゛…!!!」
自慢のお帽子がひしゃげ、脳天から踏まれて行き場を失った体内の餡子が体の外側へと集まる。
限界まで膨らんだ表皮に裂傷が走り、餡子が漏れ始める。
「ばりざぁぁ!?どぼじだのぉ!?はやぐやっづげでよおお!?」
れいむが叫ぶ。計画では、まりさが人間の群を制圧して、奴隷として働かせるはずだったのに。
「ゆ゛ぎ…ぎ…」
まりさは動かない、動けない。圧倒的質量の前に身をよじる事さえ叶わない。
口を必死に閉じているが少しずつ餡子が漏れ出す。涙が滝のように流れ、体液がぞくぞくと分泌される。
その時、不意にまりさを押さえつける力が無くなった。男が足を離したのだ。
白目を剥いてゆひぃ、ゆひぃと息を吐くまりさを、男が見下す。
れいむは何もいえない、何も言うことが出来ない。最強の夫がなすすべも無く倒されたのだから。
「ゆ゛…どぼじで…にんげんのくせに…」
「どうしてか、教えてやろうか?」
男がニヤつきながら言う。まりさはハッと息をのみ、体に虫が蠢く感覚を覚える。嫌な予感がする、とまりさは感じた。
だがもう、全てが遅かった。

「お前が、どうしようもないくらい弱いからさ」

痛みも忘れ、まりさの頭の中が真っ白になる。
自分が弱い?群れで狩りの一番上手い自分が、弱い?
男は追い討ちをかける。
「どうせ、群れで一番強い自分がどうして、なんて思っているんだろう」
何故分かる。やめろ、やめろ。まりさはとってもつよいんだぞ。
「ところで、お前は群れのゆっくり全員と戦って勝てるのか?」
やめろ、やめろ。まりさの中で何かが急速に崩れはじめる。取り返しのつかない、何かが。
「人間はな、お前らの群れなんざ、一人で皆殺しに出来るんだよ」
「ゆ゛っがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああっ!!!」
叫ぶ、叫べば男の声は聞こえないと信じて。まりさは叫ぶ。今まで積み上げてきた何かを守るために。
「それなのに人間を殺そうと思っただぁ?本当に馬鹿としかいえないな。」
それでも男の声は聞こえる、心をナイフで抉るような感覚を感じる。やめろやめろやめろ。
「まりさ!?まりさああああっ!がんばってえぇ!」
―――あぁ、れいむのこえが聞こえる、頑張らないと。二人の王国のために。
そうだ、こんな男の言葉に苦しめられている場合ではない。なんとかして倒す方法を考えて―――


「まさか、お前、人間を支配しようなんて思ってないだろうな?」
まりさの思考が止まる。
「だとしたら馬鹿の極みだな。お前みたいな弱っちい饅頭がよぉ、身の程を知れってぇんだよ」

れいむの言葉でわずかに持ち直したかに見えたまりさの心は、その一言で見事に砕け散った。

「や゛べろ゛お゛お゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
決死の覚悟でまりさは男に飛び掛かる。
「やめねーよ、クソ饅頭」
だが男はまりさの顔面を蹴り飛ばす。
「ゆ゛っげえ゛ぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
まりさの顔を今まで味わったことの無いほどの激痛が走る。もちもちの肌はべこりとへこみ、目玉が少し飛び出し、白玉で出来たやわらかい眼球が空気に晒される。
普段はやけたような笑顔を浮かべているその口も苦痛と衝撃でこの上なく醜く歪む。
衝撃で、やわらかい草や花しか食べてこなかった金平糖の綺麗な歯が5、6本折れ、砕け散り、口から餡子が流れ出す。
歯茎から無理矢理歯を、それも何本も抜かれる苦痛にまりさはただボロボロと涙を流すことしか出来ない。
自身が宙に浮かぶ感覚を感じ、まりさは縦にぐるんぐるんと回る。それに合わせて口から吐き出す餡子が、涙が、線を描いて飛び散って行く
「ばりざあああああぁぁっ!!!」
どさり。
数メートル吹っ飛ばされたまりさの体は芝生の上に叩きつけられた。
「ばりざっ!しっがりしでええ!ばりざっ!ばりざあ゛あ゛あ゛あああ!!」
れいむの慟哭も虚しく、まりさはぴくり、ぴくりと弱弱しく痙攣するだけだ。
「うわぁ、本当にゆっくりって弱いのな、まぁあの分だと放っておいても死にはしないよな」
”弱い”という言葉を聴いたからか、少しだけ強くまりさが痙攣したように見えた。
生命力だけは強いからな。と男はれいむの方へ向き直る。仮に死んだところで、死体は自治体か加工所が回収してくれるので問題ない。
「や・・・やべでね!ひどいごどしないでねっ!」
歩み寄る男にひたすられいむは震える。最強のはずの夫をいとも簡単に倒した男に勝てるはずが無かった。
「おでがい・・・もうやめちぇぇえ・・・!!」
男は無言のままれいむの片方のもみ上げを持ち上げる。
「ゆ゛う゛う゛うううぅぅぅぅ!!」
 自重を支えきれないもみ上げがブチブチと嫌な音を立てた。
 男はもう片方の腕で傍に落ちていた小枝を拾い上げる。
「ゆっ…?なにずるの?やめてね!やめてね!」
 男は笑う。こんなことをする人間がその言葉を聞いてやめるだろうか?
 いや、ないね。男は否定する。
 枝を握った腕を振り上げた。
「ゆ…?ゆゆっ!!やめちぇっ!やめ…ピギイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
 アイデンティティの”ゆ”すら付け忘れる程の激痛。
 れいむのまむまむと呼ばれる部位に硬い枝が突き刺さっていた。
その枝は、途中で何本かに短く枝分かれしていて、その枝分かれした部分がれいむの中を滅茶苦茶に突き破っていた。
「ゆっ…!ぎっぎっ…」
歯を食いしばり白目を剥いているれいむを眺める。口角から泡が漏れているが問題ないだろう。
男はそのまま、まむまむから飛び出ている枝を掴み直し、鍵を開けるように回し始めた。
 枝がれいむの体内を掻き回す。
再び響き渡る悲鳴。つんざくような叫び声。小鳥のさえずり。遠くで犬が吠える声。


 まりさは生きていた。
かろうじて動ける程度だったが、とにかく生きていた。
男はもうほとんど飲みつくしてしまったペットボトルの中身をまりさにぶちまける。
多少の糖分がこの飲料には入っている。
糖分を得ることで、いくらかマシになるはずだった。
「よぉ、雑魚。どうしようもないクソ饅頭」
男が話しかける。糖分を得たおかげで、多少の会話くらい出来るはずだが、まりさは言い返せない。
いや、言い返すことが出来るだろうか。
「よかったな。お前は蹴り一発で済んで」
人間で言えば自動車にはねられたようなもの。良い筈が無いが、男はそう言った。
「お前の愛しのれいむとやらはもっと長い間苦しんだんだぜ」
びくっとまりさが震えた。
「かわいそうになぁ、お前が自分の力を知っていればこんなことにはならなかったのに」
弱っちい饅頭ってさ。と男は続ける。
 事実、昆虫程度が自分たちの勝てる限界だということを知っていれば、こんなことにはならなかっただろう。
「れ…れい…むは…?」
ようやくまりさが口を開いた。
「あぁ、アレ?あそこに落ちているから、見に行ってやればどうだ」
俺はもうすぐ仕事始まっちまうから。じゃぁな。男はそれだけ言い残すと空になったペットボトルをゴミ箱に捨てて公園を去っていった。


 初夏の午後の太陽の下、夏には早いがそれでも眩しい日差しが公園の芝生に降り注ぐ。
さぁっと涼しい風が吹き、まりさのおさげを揺らした。
「れ…い、むぅ…」
ずりずりとまりさが這う。緑色の芝生のキャンパスに黒い餡の線が描かれる。
激痛と喪失感に耐えて、耐えて。ようやく愛しのれいむの赤いリボンの前に立つ。リボンはボロボロになっていた。
「れいぶぅ…ごべん、ねぇ…」
まりさ弱かったんだよぉ、弱っちぃ饅頭だったんだよぉ。涙と餡子をこぼしながられいむの前へ回り込む。
だから、今までどおり山で草さんを食べて暮らそう、今日の分までゆっくりさせてあげるから…
 そう言おうと思っていた。
「ひっ!」
しかし、言えなかった。
 れいむは酷い有様だった。目玉は抉られ、全身が傷だらけ、殴られ続けたためか、体中ぼこぼこになっていた。
「あ…あ…」
何より、れいむのまむまむからおびただしい量の餡子が出ていて、そして、まるでそれをせき止めるかのように枝が刺さっていた。
一度もすっきりしていなかったのに。ゆっくりした赤ちゃんと一緒にゆっくりしようと思ったのに。
その夢は叶わない。己が弱かったから?それもある。あるが、しかし何よりも。
 自分が愚かだったからだ。
必死の思いで、れいむを傷を舐める。甘い味が口に広がる。舐める程度では到底直らない怪我だった。
「ま、りさ…」
「あ…ああ…れいぶぅ…」
れいむが無事だった方の目を開けて、まりさを見た。
良かった生きていたんだね。まりさが言いかけたその言葉をさえぎる様にれいむが言い放つ。
「まりさ どうしてまけちゃったの」
沈黙。絶句。微笑みかけたまりさの顔が硬直する。
「れいむを だましたの」
「れいむ ばかだからしんじちゃったんだよ まりさがにんげんさんにかてるって」
「ねぇ あかちゃん つくれなくなっちゃったよ」
「ここはとってもゆっくりしてるゆっくりぷれいすなのに れいむもうゆっくりできないよ」
 ねぇ、まりさ。れいむが続ける。
「れいむはもう えいえんにゆっくりしちゃうんだよ」

「まりさのせいだよ」

 れいむは動かなくなった。
「ゆ…ゆっ…ゆわああああああぁぁぁ!!」
まりさは叫んだ。幸か不幸か、れいむの餡子を舐めたことで、まりさの体力は叫べるまでに回復していた。
「おうぢがえる!おうぢにがえる!」
逃げ出すように、まりさはずりずりと動き出した。
もう人間には近づかない。まりさは虫さんくらいにしか勝てないんだから。
ずりずりと、公園の出口を目指す。しかし、まりさが己の後ろにある、自分の餡子以外の”黒”に気がつくことはなかった。


「ゆっ…ゆっ…もう少しだよ…」
公園の出口が見えてきた。日が少し傾いてきたが、この分なら今日中に森に帰れるかもしれない。
男に受けた肉体的ダメージはほとんど回復していた。ぽいん、ぽいん、と間の抜けた音を出しながら跳ねる。
 ちくり。
「ゆゆっ?」
まりさは跳ねるのをやめた。自分の足に小さな痛みが走ったのだ。
「ゆ、きのせいだよね」
そう決め付け、歩き始める。
 ちくり。
「ゆゆっ!」
再び足を止める。今回は痛みの理由が分かった。自分の頬に蟻が喰いついている。
「ゆゆっ!むしのくせにまりさにはむかおうなんて なまいきなのぜ!」
まりさは下で器用に蟻を掴み地面へ叩き付けた。
人間には絶対に勝てない。だが少なくとも自分は虫よりは強いのだから。まりさは、心中に渦巻く屈辱と悲しみを紛らわせるように、叩き付けた蟻を何度も踏みつける。
 たいした時間もかからず、蟻は動かなくなった。
「ゆっへん!ざまあみるんだぜ!」
まりさは潰れた蟻を見下して、帰りを急ぐ。

 ちくり。
「ゆゆゆっ!」
ぎょっとして振り返る。蟻が生きていた?
 否、死んでいる。では何が?
「ゆーん?」
まりさは首をかしげる様な動きをしてから、何とはなしに振り返る。
 夕日に赤く染まった公園。その芝生にまりさの餡子が黒く、伸びている。
男に吹き飛ばされた地点から、れいむの場所、そして公園の出口と、公園を上から見たら、まるでLの字を描くような
その軌跡は、まるで筆で書いたように、徐々に細くなっている。傷口が塞がっていっているからだ。
 だがその細くなっている所が少しずつ太くなっていく。
甘い黒線を補強していくもう一つの黒い存在。
「ゆぎっ!?いぢゃいぃぃ!なんでふえてるのぜぇぇ!?」
蟻に他ならない。
芝生に付着した餡子よりも本体を狙いに来たようだ。
「なまいきなのぜ!いっぱいいるからかてるとおもったの?ばかなの?しぬの?」
 男の言葉を思い出す。
―――人間はな、お前らの群れなんざ、一人で皆殺しに出来るんだよ―――
「まりさだって!ばりざだって!」
おびただしい数の蟻の群に、まりさは立ち向かう。虫になら勝てる、その発想はもはやまりさにとって揺ぎ無いものとなっていたのだ。
 致命的な勘違いをしているとも知らずに。
 人間には四肢があり、道具を使い、それを作り出す知能がある。
蟻には強靭な顎がある。カマキリには力強い鎌と顎がある。
では、ゆっくりには?
「まりさはおまえたちになんが!まげないのぜっ!」
まりさはひたすらに飛び跳ね、踏みつける。饅頭ごときの一度の跳躍で昆虫を殺すことは出来ない。
 まりさはその体格差から辛うじて殺すことが出来ているだけだ。
「ゆぎっ!?あんよがいだいいぃ!?」 
 しとめ損なった一匹が、まりさの底部に噛み付いた。
 まりさがひるんだ隙に一匹、一匹、黒い粒が這い上がる。 
 ゆっくりは、人に擬態し、大声で人語を話し、大きく膨れ上がることができる。
それは被捕食者にとっては紛れも無く立派な”武器”。だが、それは狩るものの武器ではない。
狩られるものが狩るものに攻めかかる。その攻撃の先に何があるのか。
「ゆ゛うううぅぅ!?なんでのぼってきてるんだぜぇぇぇ!?」
ちくり、ちくり
黒い兵士たちは、愚かな生物を食らわんと次々と這い上がり、その体に食らいつく。
「やめるんだぜぇぇぇ!!ばりざからはなれるんだぜぇぇ!!」
 蟻を引き剥がそうと、ごろごろと転がるまりさ、しかしその行為は逆に自分の首を絞める結果となる。
自分の体に地面の餡子を付着させてしまったのだ。
 一気に這い上がる蟻。転がっても転がっても、次から次へと食らいつく蟻の攻撃を止めることは出来ない。
「ゆ゛う゛う゛うううぅぅ!!!」
口から、目の中から、まむまむから、蟻が入っていく。体内を喰らわれる痛みにまりさは叫びを上げた。
今度は蟻を引き剥がすためではなく、痛みに耐えるために転げまわる。少しづつ弱まるまりさの動きとは対照的に
蟻たちはどんどんまりさの体内に侵入していく。
「どぼじでぇ…!どぼじでぇ…!」
まりさは呟く。
むしさんになら勝てると思ったのに、と。
 まむまむを蟻に食いちぎられ、まりさは一際大きな悲鳴を上げた。
―――よぉ、雑魚。どうしようもないクソ饅頭―――
 男の言葉が、まりさの中で浮かんで反響し、消える。
悲鳴を上げても、その声が聞こえる。まりさは心身ともに文字通り蝕まれていく。
「いちゃいよぉ…!おうぢ…かえるぅ…」
 威勢の良さはすっかり消えて、幼児退行したまりさをあざ笑うように、蟻はまりさの体を喰らい、食いちぎる。
傍から見れば穴あきチーズのように見えるかもしれない。
「もう…や゛…べ…ちぇぇぇ…」
まりさが呟くなか、蟻はいよいよ食事を本格化させ始めた。


夕日は地平線に姿を消そうとしていて、空が赤から紫へと変わっていく。
そろそろ、自治体と加工所のゆっくり回収車が野良ゆっくりとその死体を集める頃だ。
公園の電灯に明かりが灯る。
まりさはまだそこにいた。しっかりと生きたまま。
だがもう長くないだろう。右目は喰われ。体の中身も大半が喰らい尽くされてしまった。
どさり、とまりさは横たわる。もはや体の平衡すら保てなくなっていた。
帽子がまりさの頭から落ちる。だが、それを拾う体力すらまりさには残されていない。
「ばりざ…の…おぼ…し…」
目から、空の眼窩から、涙がこぼれる。
激痛と、狭まった視界と薄れ行く意識の中、まりさが最後に見たものは。
「あ゛…ああぁ…」
蟻によって自分の帽子の中から運び出されていく、まりさのカマキリだった。

そのカマキリは男に踏まれて、以前よりも平べったくなっていた。



あとがき

最後までお読みくださりありがとうございます!
自分は今回がSS初投稿なのですが、ゆっくりできたでしょうか?
今回は、特に目新しい虐待方法もないので少しお兄さん達には食傷気味だったかもしれませんが
ゆっくりできたのなら幸いです。
ご意見、ご感想等お待ちしております。
次回作を書くかは未定ですが、ご要望があればご自由に。

最後に:作中に出てくる男の作業着なのですが、服のビジョンは浮かぶのに名前が出てこないという大変もどかしい事に…。
ちなみに某いい男が着用しているようなツナギではありません。
紺色の袴みたいなやつ、なんて言いましたっけ?よくゴム製の草履みたいのと一緒に着用するやつ。
よく返り血ならぬ返りセメントがついてるような感じで足首の辺りでダボっとしてるやつ。うーん。


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このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

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  • ゆっくりなんかザーコザーコ -- 2023-08-26 11:50:34
  • もっと論破してくれよw
    と思ったが、お兄さんも仕事中だもんね。お疲れ様です!
    ※蟻を馬鹿にしているコメントがあるが、侵略する力は強いぞ?数年前から日本もヒアリに侵され始めた。
    歴史を見ても、疫病で人類絶滅出来そうなのも小さな虫(蚊)だしな。 -- 2018-01-17 10:16:38
  • 蟻には餌にしか見えてないんだろうな -- 2016-10-25 14:29:57
  • 蟻つえーw
    -- 2016-10-06 16:33:28
  • 蟻やばすぎる笑カマキリに勝てて蟻に負ける糞饅頭、笑勇猛果敢な蟻達を応援するよ!
    -- 2016-08-30 04:35:46
  • 身の程をわきまえない何の価値もないゴミクズが論破されてボロクソになるのはとてもゆっくりできるよ! -- 2015-12-10 16:33:45
  • 意味もなく生き、意味もなく死んで行く。ほんと人間そのものだな。ゆっくりって。
    -- 2015-02-05 01:55:42
  • 蟻>カマキリ>人間(越えられない壁)>>まり………えーっと、誰だっけ? -- 2015-02-01 23:24:30
  • こういうものを待ってたんだ・・・ -- 2014-06-17 14:29:28
  • 死を恐れない勇猛果敢な黒い兵士達
    無能、無知、雑魚、精神脆弱なゴミ饅頭
    勝負は見えてたな -- 2013-12-14 17:20:05
  • 蟻に勝てない饅頭ざまぁww -- 2013-05-26 10:01:56
  • 論破というか言葉責め系が大好きなのでたまりません、お兄さんの作業服はニッカポッカですかね。ゴムの草履はゴム足袋? -- 2013-01-28 18:02:34
  • 特殊な蟻だなこいつ -- 2013-01-17 02:16:33
  • ゆっくりが頭良かったらいいのにwww
    -- 2012-07-11 20:32:41
  • 蟻と男最高やっぱゆっくりはゆっくりか
    ↓そーなのかー -- 2012-07-08 15:18:05
  • 人間に蜜ぶっかけてツボの中に有りと一緒にぶち込むと死ぬ。これ豆知識 -- 2012-03-13 23:54:28
  • ↓4 お前はまずその誤字に気づけ -- 2012-03-07 05:54:31
  • 最後のカマキリのシーンがよかった -- 2012-03-05 02:03:11
  • ゆっくりーwwwwwwwwwwできたよ -- 2012-02-19 08:55:50
  • こういう論破するの大好き -- 2012-02-10 03:59:25
最終更新:2009年10月24日 00:51
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