ふたば系ゆっくりいじめ 340 ゆっくりほいくえん

ゆっくりほいくえん 33KB


「ゆっゆっゆ~っ、ゆゆゆゆゆ~っ♪」
 ゆっくりれいむのおうたが響き渡った。
 人間には雑音扱いされる奇怪な音声だが、ゆっくりたちはこれでゆっくりできるという。
「ゆっゆっゆ~っ、ゆゆゆゆゆ~っ♪」
 れいむの後に続けて歌声を奏でるのは、小さな子ゆっくりたち。数は多く、れいむ、ま
りさ、ありすなどの通常種が合計で百匹ほど。
「ゆゆーん、みんなおじょうずだよ! つぎはおゆうぎだよ!」
「まりしゃはおゆうぎとくいなのじぇ!」
「ゆゆぅ、れいみゅはおうたはとくいだけどおゆうぎは……」
「だいじょーぶよ、ありしゅだっちぇ、へただったけどうまくなっちゃのよ」
 れいむが歌い出す。
 するとその歌声に合わせて、子ゆっくりたちが踊り出す。踊ると言ってもゆっくりのこ
とだから、そんな複雑なものではない。
 のーびのーびして、ころりと横になってお尻をふーりふーりして、こーろこーろして、
二匹一組になってすーりすーりして、その程度のことだ。
 だが、それでも子ゆっくりたちは幾度となく練習してその踊りをマスターしたのだ。
「ゆゆん、それじゃきょうはおしまいだよ、みんなまた明日ゆっくりしようね!」
 やがて、れいむがそう言うと、子ゆっくりたちは帰っていく。親や姉妹が迎えに来てい
るものもいる。
「れいみゅ、とっくんしゅるよ!」
「ゆん、それならまりしゃもてつだうじぇ!」
「どりょくすりゅのはとってもとかいはにぇ、ありしゅもてつだうわ」
 お遊戯が上手くいかなかった子れいむに、友達の子まりさと子ありすが協力を申し出る
微笑ましい光景。
 それを見ながら、れいむの顔にふっと影がさした。
「ゆっゆっ、れいむのおかげでおちびたちがゆっくりできるよ! ゆっくりありがとう!」
 そこへ、一匹のまりさが声をかけてきた。成体サイズで、子まりさ二匹が一緒にいる。
子供を迎えに来た親だ。
「ゆ、ゆゆぅ、ど、どういたしまして! れいむも、おちびちゃん好きだからゆっくりで
きてるよ!」
 先ほど面上をよぎった影など失せて、れいむは満面の笑みを浮かべてそう答えた。
「ゆっ! それじゃ帰るよ! またあした!」
「ゆっ! せんせー、さようにゃら!」
「ゆゆん、さようならー」
 まりさ一家は挨拶して去って行った。

 皆帰り、れいむだけが残された。いや、いないのはゆっくりだけという意味で、そこに
は一人の人間の男がいた。
 そこは、とある森の外れにあるプレハブ小屋であり、その入り口には、

 ゆっくりほいくえん ゆっくりしていってね!

 と書かれた看板が掲げられていた。
 男は黙々と床を箒で掃いたり、子ゆっくりたちが使っていた遊具を片付けたりしていた。
彼は、ここでは「よーむいんさん」と呼ばれていた。
「ゆぅ……」
 そして、またも影のさした顔を俯かせた、せんせーと呼ばれていたゆっくりれいむは、
いわばこの保育園の保母さんだった。
「おい、れいむ」
 片付けを終えた男が、れいむに声をかけると、れいむはあからさまにびくりと震えた。
「さっき連絡があって、予定通り三日後にやるから」
「ゆ……ゆぅ……」
「……ほれ」
 男は、携帯できる大きさのモニタ付きDVDプレイヤーを取り出して電源を入れ、再生
ボタンを押した。
 そこには小さな子まりさが映し出され、保母れいむの目はそれに釘付けになる。
 元気に、ぽよぽよと跳ねていた子まりさが転倒した。
「ゆぴっ! ……おねえしゃーん! ゆっきゅちできにゃいよぉぉぉ!」
 子まりさの泣き声に、保母れいむは心配な顔になり、目を左右に振った。
「ゆゆん、れいみゅがぺーろぺーろしてあげるから、ゆっきゅちちてね!」
 そこへ、画面の右端から子れいむがフレームインしてきた。それを見て保母れいむが安
堵する。
「ゆぅ……ゆぅ……ゆっ! まりしゃ、ゆっきゅちできりゅよ!」
 ぺーろぺーろしてもらった子まりさがゆっくり笑った。
「ゆぅぅぅ、れいむのおちびちゃんたち、ゆっくりしてるよぉ~。まりさはあいかわらず
腕白だね! れいむはおねえさんらしくなってきたね!」
 保母れいむはとてもゆっくりした笑顔で子まりさと子れいむの仲のいい姉妹ぶりを見て
いる。そう、この二匹は保母れいむの子供たちなのである。
「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇ~」
 場面は切り替わり、姉妹が美味しそうにお菓子を食べる姿が現れる。
「見ての通りだ。あと三日で仕事が終われば、ここにお前も入ってずっとゆっくりできる
んだ。頑張りな」
 男がそう言うと、れいむの顔に影がさす。しかし、今度のそれは単独ではなかった。影
だけではなく、光もさしていた。
 影と光が交互に、或いは同時に、れいむの顔を彩っていた。
「……おちびちゃんたちとゆっくりするために、れいむがんばるよ」
 やがて、れいむが言った。
 目はどっかと座り、ゆっくり的感覚で言えば、それはとてもゆっくりしていない顔だっ
た。

「ゆっ! みんなおじょうずおじょうず!」
 保母れいむがお遊戯をする子ゆっくりたちに賞賛の声をかける。
「とくにまりさはおじょうずだね!」
「ゆゆん!」
 誉められた子まりさが誇らしげに胸……というか顎を張る。
「他のみんなもとてもいいよ。ゆっくりしてるよ!」
「「「ゆゆん!」」」
 と、他の子ゆっくりたちも嬉しそうだ。
「おやつ持って来たぞ」
 そこへ、人間の男が段ボール箱を抱えてやってきた。
 大歓声が上がる。
「ほれ、たくさんあるから順番な」
 このゆっくりほいくえんでは、こうしてお菓子を子ゆっくりたちに与えている。

 一週間ほど前、以前からあったこのプレハブ小屋が突如ゆっくりほいくえんになった。
 狩りに行っている間、子供たちを預かってくれる施設であると説明されて、近辺のゆっ
くりたちは、それはとてもいいものだと思った。
 人間の男だけならばさすがに疑心も芽生えたであろうが、人間は用務員であり、一緒に
いるゆっくりれいむが保母さんであると聞いて、ゆっくりたちはこの施設を利用すること
にする。
 子ゆっくりたちは、保母れいむに習っておうたやお遊戯を楽しみ、そればかりか毎日美
味しいお菓子を貰えるとあって、これはとてもゆっくりしたところであり、れいむせんせ
ーもよーむいんさんもとてもゆっくりしているとすっかり心を許していた。
 でも、なんでここまでしてくれるのか?
 こんなことして何か得があるのか?
 と、考える親ゆっくりもいないでもなかったが、
「この保育園を作った理事長さんはね、ゆっくりが大好きなんだ。自分がゆっくりをゆっ
くりさせてあげる、というだけでゆっくりできる人なんだよ」
「そうだよ、りじちょーさんはおちびちゃんが特に好きで、いつも可愛い可愛いって言っ
てるんだよ!」
 と、男と保母れいむに言われると、あっさり納得してしまった。
 おちびちゃんたちは可愛いから、それをゆっくりさせて上げることでゆっくりできるの
はあまりにも当然のことであり、納得できる。かわいくてごめんね。
 ――という理屈である。ゆっくりりかいしてね。

「それじゃ、ゆっくりさようなら!」
「「「ゆっきゅちさようにゃら!」」」
 保母れいむの挨拶に続けて、子ゆっくりたちが唱和する。
「ああ、そうだ」
 用務員が帰ろうとする子ゆっくりたちや迎えに来た親ゆっくりたちに言った。
「明日の歓迎会にはお弁当とか持ってこないで大丈夫だよ。子供たちの分だけじゃなくて、
みんなの分のごはんもこっちで用意するからね」
「ゆゆっ! まりさたちのごはんも?」
「ああ、たくさん用意しておくから、余ったら持って帰ればいい」
「ゆゆゆゆっ! ぜ、ぜったい来るんだぜ!」
 親まりさが言うと、それに同調する声が多数上がる。
 明日は、このおちびちゃんたちがゆっくりできる場所を作ったりじちょーさんがやって
くるのでその歓迎会を開くのだ。
 日頃練習した子ゆっくりたちのおうたやお遊戯を聞いて見てもらって、いつもゆっくり
させてもらっているお礼に、ゆっくりさせてあげるのだ。
 その子供たちの晴れの舞台を拝むため、親ゆっくりたちの多くは初めからそのつもりだ
っただろうが、子供だけでなく親たちにもたくさんのごはんをくれるのならば狩りをする
必要は無くなる。
 そうなれば、親ゆっくりも一匹残らずやってくる。
 用務員は、何度も何度も本当かと聞いてくるゆっくりたちに根気よく本当だよと答えて
いる。
 それを横目で見ながら、保母れいむの顔に影。

 全てのゆっくりが帰った後、片付けを済ませた用務員は最後に天井に仕掛けてあるカメ
ラからメモリを抜き取った。
 これで子ゆっくりたちのとっても可愛いゆっくりぶりを撮影して理事長さんがおうちで
見てゆっくりするのだ、と説明してある。
 ……決して、間違ったことは言っていない、と用務員は思う。
「よし、おれは帰るぞ」
「ゆん」
「明日で最後だ。子供たちとゆっくりできるぞ」
「……れいむ、がんばるよ。おちびちゃんたちとゆっくりするためなら……なんでも……
やるよ」
「おお」
 男は、出て行った。
 保母れいむは、このプレハブ小屋に住んでいる。早朝、用務員がやってくるまでは誰に
も邪魔されることなくゆっくりできる。
 ふかふかのタオルを寝床として与えられているし、美味しいゆっくりフードもある。
 それでも、孤独なゆっくりは、やはりどこかしらぽっかり穴のあいたゆっくりだった。
 そんな時は目をつぶり、用務員が時々でぃーぶいでぃーで見せてくれる子供たちの姿を
思い浮かべる。
 離れてから一週間と少しだが、成長の早い時期だけに目に見えて大きくなっている子供
たち。
 早く、会いたかった。
 早く、一緒にゆっくりしたい。
 ゆっくりしている子供たち。
 そこに自分がいることを想像する。
「ゆぅ……あした……おしごとが終われば……いっしょに、ゆっくり」
 れいむは目を開き、窓から見える月を眺めた。満月に近い丸い月が可愛い可愛いおちび
ちゃんに見えた。
「ゆっくり……ゆっくりしようね」
 明日――もうそう遠くない未来に迫った幸せにゆっくり笑ったれいむだが、次の瞬間に
笑みは凍りつき、慌てて転がり顔をタオルに埋めるようにした。
「おちびちゃんたち、待っててね。いっしょに、ゆっくりしようね」
 れいむは、そう言って、それからも眠りにつくまで似たようなことをブツブツと呟いて
いた。
 れいむは見てしまったのだ。
 用務員が、片付けの後に明日のために壁に貼り付けていったものを……。
 それは長細い紙であり、そこにはこう書いてあった。

 りじちょーさんいらっしゃい!
 ゆっくりしていってね!

 ――と。



 翌朝、れいむは人間さんのすぃーの音で目を覚ました。
「……ゆぅ」
 憂鬱そうに、沈んだ表情。
 窓から差し込む朝陽が、あの紙の文字を照らしている。
「おはよう、れいむ」
 一人の青年が入ってきた。歳は二十半ばぐらいだろう。
「ゆぅ……おはよう、お兄さん」
「もっと早く来るつもりだったんだけど、予定が押してな」
「ゆ……そうなんだ」
「それじゃ、今日は頑張ってな」
「お兄さん、おちびちゃんたちは……」
「ああ、うちでゆっくりしてるよ。DVD見ただろ?」
「約束だよ……おしごとが終わったら……」
「もちろん、明日から君ら親子は一緒にゆっくり暮らしていいんだよ」
「ゆぅ……れいむ……がんばるよ」

 やがて、大勢のゆっくり親子たちがやってきた。その時には青年は姿を消している。
「ゆっくりおはよう! 今日はりじちょーさんが来てるから、ゆっくりさせてあげようね!

「ゆっきゅちおはようごじゃいます! りじちょーしゃんゆっきゅちちていっちぇね!」
「よし、入った入った」
 用務員が扉を開けて中へゆっくりたちを誘う。
「はい、お前らはこっちね。ここから子供たちの勇姿を見ててね」
 親ゆっくりたちは一番奥のスペースに移動させられた。そこがいわゆる観客席というこ
とらしい。
「ゆっ? 透明なかべさんがあるよ?」
 部屋の真ん中ら辺に設えられた壇上に子ゆっくりたちが集まっていて、そこと観客席の
間には強化プラスチックの壁が聳え立っていた。かなり高く、大人のゆっくりでも飛び越
えられない。
「ああ、可愛いおちびちゃんたちが落ちて怪我したら大変だからね」
「ゆゆん、それなら安心だね!」
「さあ、そろそろ理事長さんが来るよ。おちびちゃんたちのおうたとお遊戯でゆっくりし
てもらおうね。それからゆっくりごはんを食べようね」

「ゆぅ……ゆぅ……やるよ……」
「せんせー、どうちたの?」
「ゆっ! な、なんでもないよ!」
 ブツブツ言っていた保母れいむは、子まりさに声をかけられて慌てて答えた。あからさ
まに怪しいのだが、すっかり「せんせー」を信用している子ゆっくりたちはなんでもない
と言われたらなんでもないのだと思い込んでいる。
「せんせー、れいみゅを見ちぇ!」
 子まりさが示す方を見れば、そこで子れいむが踊っていた。
 おうたは一番お上手なのに、反面踊りは全く駄目な子れいむだったが、それが上手いと
は言えないものの、随分とマシになっていた。
「ゆゆ!? おじょうずになったね!」
「ゆふん、れいみゅ、とっくんしちゃんだよ!」
 誇らしげに子れいむが言うと、
「ゆっ! まりしゃとありしゅもおてつだいしちゃよ!」
「そうにゃのよ、とっちぇもとかいはにぇ!」
 子まりさと子ありすも、嬉しそうに言った。
「これでりじちょーしゃんもゆっきゅちできりゅね!」
「ゆ……う、うん、そうだね!」
 他の子供たちも口々に同じことを言った。言葉から、この保育園を作った理事長への感
謝が溢れ出ているようだ。

「やあやあ、おお、これはゆっくりしているね!」
 青年がドアから入ってきた。
 用務員が置いたパイプ椅子に座る。
「はじめまして、僕が理事長だよ。今日はゆっくりさせてもらうよ!」
「「「りじちょーしゃん、いらっちゃい! ゆっきゅちちていっちぇね!」」」
 子供たちはかねて教えられていたように歓迎の言葉を発する。
「「「ゆっくりしていってね!」」」
 透明な壁の向こうの観客席の親ゆっくりたちも、言った。
「ゆ……ゆ……」
「ほらほら、れいむ」
 保母れいむは、用務員に促されても動こうとしなかった。あの影のさした顔をしている。
「終わったら……ね」
 背中を押すような青年の声。
 影に光が混じる。
 しばらく俯いていたが……
「ゆっ! みんな、いつも練習してるおうたとお遊戯を見せてあげようね。ゆっくりさせ
てあげるんだよ!」
 満面笑みの顔を上げ、子ゆっくりたちに向けて言った。
「「「ゆっきゅちがんばりゅよ!」」」
 素直に返す子供たちの声を聞いても、保母れいむの顔にもう影はささなかった。
「それじゃ、いくよ。いちにーのさん!」
 保母れいむが音頭をとると、子ゆっくりたちが歌い始める。
「「「ゆっゆっゆ~っ、ゆゆゆゆゆ~っ♪」」」
 その美声に観客席の親たちは酔いしれた。
「ゆぅぅぅ、ゆっくりしたおうただよぉ~」
「ゆゆ? 今、まりさのおちびちゃんの声が聞こえたよ!」
「とかいはなおうたでゆっくりできるわ!」
 保母れいむが、ぽよん、と一跳ねした。
「みんな、おゆうぎだよ!」
「「「ゆっきゅちおどりゅよ!」」」
 お次はお遊戯だ。
「ゆっゆっゆ~っ、ゆゆゆゆゆ~っ♪」
 保母れいむの歌声に合わせて、小さな体をのーびのーびさせる。
 お尻をふーりふーりして、こーろこーろして、二匹一組になってすーりすーりして日頃
の練習の成果を見せる。
「ゆわわわわ~」
「おちびちゃんたち、おじょうずだよ!」
「すごくゆっくりできるね!」
「ゆっ、なんだかまりさもやりたくなってきたよ!」
「ゆふふ、それならあとでおちびちゃんたちに教えてもらおうか」
 評判は上々。
 ……ただ一人、本来ゆっくりさせるべき者を除いては、好評であった。
「待て!」
 突然、理事長の青年が言った。あまりにも大きく鋭く怒気すら含んでいた声だったので、
子供たちの動きも、親たちの歓声もぴたりと止まった。
「……ゆっくりできないな」
 露骨に失望した様子で青年は言った。
「……やっぱりあんな天井につけたカメラから撮った映像じゃ駄目だな。なんかいいよう
に見えちゃうんだろうな。実際見たらひどいもんだ」
 と、横に立っていた用務員に言う。
「まったく、色々やってやったのにこんなに駄目だとは思わなかったね。……どーすんだ
よ、これ」
 固唾を飲んで見守るゆっくりたち。驚き、ゆっくりできない気分にはなっていたが、青
年は用務員の男を見て彼を責めるような感じだったので自分たちが咎められているとは思
えなかった。
「すいません。……お仕置きします」
「うん、そうだね」
 だが、そう言って用務員が子れいむを一匹摘み上げると、ざわつき始めた。
「ゆっくりできないゆっくりはこうだ」
 青年は、手渡された子れいむにデコピンする。
「ゆ゛っ!」
「「「ゆ゛わ゛あああああ、なにずるのぉぉぉぉぉ!」」」
 悲鳴が上がる。
「い、いぢゃいぃぃぃぃ、ゆっきゅぎでぎにゃいぃぃぃ!」
「ゆっくりできないのはこっちだよ! あんな下手くそな歌と踊りを見せやがって!」
 またデコピン。
「よし、他の奴だ」
「はい」
 既に男が子まりさを摘み上げて待機していた。
「ゆぴ、にゃ、にゃにずるの? いぢゃいごとしにゃいでね?」
「しないわけねえだろが、今の見てなかったのかよ」
 デコピン。
「やべでええええ! おちびぢゃんにひどいごどじないでええええ!」
 親らしきまりさが透明の壁に体当たりをしているが、ビクともしない。
「んんー」
 青年は、壁越しに見える悲痛に泣き崩れた親ゆっくりたちを見ると、恍惚とした表情で
しばし手を止めた。
「次」
 だが、ほんの少しだ。また用務員から別の子ゆっくりを渡されてデコピンする。
 それだけでなく、そのうちに針を取り出してきて、それを刺したりもした。
「や、やめぢぇぇぇ! ぷすぷすしにゃいでええええ!」
 ライターで炙ったりもした。
「あ、あぢゅいよぉぉぉぉ、おどーしゃん、たぢゅげでええええ!」
 髪の毛をむしったりもした。
「……ありぢゅのぎれいなかみのげが……もう、どがいはになれにゃいよぉぉぉぉ!」
 子供たちも、壁の向こうの親たちも等しく泣き喚かないものはなかった。
 およそ百匹いた子供たちを延々と痛めつけていた青年だが、それでも一時間ほどやって
いるとさすがに飽きてきた。
「よし、一匹ずつやるのは面倒になってきたから、こいつを喰らえ」
 青年が手に取ったのは、殺ゆっくり剤のゆっくりジェットであった。痛がっている子ゆ
っくりたちに容赦なくそれを噴きつける。
「ゆ゛ぴぴ、ゆ、ゆげえええ」
「ごほっ、ごほっ、ゆげえ」
「ゆっぎゅぢできにゃ、ゆぐ! ゆげげげ」
 そこかしこから苦しみの声が上がり、そこかしこに餡子ゲロがぶちまけられる。
「おい、あれ」
「はい」
 用務員が新たなスプレー缶を青年に渡す。
「やべでえええええええ! 死んじゃう、おちびぢゃんが死んじゃうよぉぉぉ!」
 青年は親ゆっくりたちの懇願を無視してトリガーを引いた。
「ゆ゛あああああ、ゆっぐりでぎないぃぃぃぃぃ!」
 これで、とうとう死んだと思った親ゆっくりたちの悲鳴は一際大きかった。
「ゆ……ゆ……ゆ!」
「ゆゆっ……ゆっきゅちできりゅよ!」
「ゆ……ぺーろぺーろ……これ、あまあまらよ!」
 だが、想像に反して、子供たちは苦しむどころか逆にゆっくりし始めたではないか。
 青年が後から噴きつけたのは毒ではなかった。
 ゆっくりの怪我を治すのによく使われる、オレンジジュースをベースにしたゆっくり用
の治療薬だったのだ。
「ぺーろぺーろ……ちあわちぇ~」
「ゆっきゅちできりゅね!」
「ゆゆん、もっちょちょーらい!」
 シンプルイズベスト。
 ならば最もベストな生き物はゆっくりだ。
 とか、どっかの誰かが言ったとか言わんとか。
 単純極まりない饅頭型生物は、それだけで先ほどまで痛めつけられた傷が回復していた。
 皆、子ゆっくりで体が小さく回復にそれほど多くの薬を必要としないということもあっ
ただろう。
「ゆゆぅ、よかったね」
「どうなることかと思ったよ。これでゆっくりできるね!」
「それじゃ、そろそろごはんにしようね!」
 親ゆっくりたちも安心してゆっくりしている。
「よし、それじゃやるか。おい、あれを」
 と、青年が用務員に命じると、すっかりごはんの用意だと思ったゆっくりたちはとても
ゆっくりした笑顔で喜んだ。
 結局、子供たちは一匹も死んでいない。りじちょーさんはなんか怒ってゆっくりできな
い人になっていたけど、ああして子供たちにあまあまをくれたのだからゆっくり心を入れ
替えたのだろう。
 それなら、後は最初に言っていた通り、歌とお遊戯が終わったのだからごはんの時間だ。
 ゆっくりたちは、みんなそう思っていた。

「よっ」
 だが、用務員が持ってきたのは、ごはんとは言い難い代物だった。
「よしよし」
 青年が、それを触ったり叩いたりして満足そうに頷く。
 それは、薄い鉄板だった。厚みは無いが大きさはそこそこあって、大体一辺50センチ
の正方形の形をしていた。
「おし、ちびども整列」
 ごはんを貰えると思っていた子ゆっくりたちは戸惑っている。
「おい、れいむ、並ばせろ」
「……ゆっ、みんな、並んでね」
 保母れいむが声をかけると、子ゆっくりたちは不安そうにしながらも言われた通りに並
び始める。四角く、そう、正方形のように。
「よし」
 用務員が、その上へ、鉄板を乗せた。
「「「ゆぴっ!」」」
 子ゆっくりたちが悲鳴を上げる。
「……よし、いいね」
 青年は満足していた。
 丁度、約百匹の子ゆっくりに負担が分散して、動けないけど潰れもしない、という状態
になっていた。
「な、なにずるのぉぉぉぉぉ!」
「も、もういいかげんにやめでね!」
「り、りじちょーさん!」
「ん?」
「おうたとおどりがゆっくりできなかったからって、やりすぎよ! そんなのとかいはじ
ゃないわ!」
「そ、そうだよ、おしおきならさっきので十分だよ!」
「そうだよ、そうだよ、もうやめてあげてね!」
「おちびちゃんたち、苦しそうだよ。やめてあげてね!」
 親ゆっくりたちの抗議を、青年はきょとんとした顔で聞いていた。
「ぷ……」
 しばらくして吹き出した。
「あっはっははははは! そうか! そうかあ!」
 青年はさもおかしそうに笑い続けた。
「そうかあ、まだわかってないのか! うん、うん、そうだよね。そういう生き物だった
よね」
 ゆっくりたちは、なにがなんだかわからずに困惑している。
 そこへ、その困惑を解消し、さらなるそれを与える青年の言葉が投げかけられた。
「全部、こうやって子ゆっくりどもをいじめて遊ぶためなんだよ。このゆっくりほいくえ
んは。最初からお前らなんかの下手な歌や踊りでゆっくりするつもりなんか無いし、お仕
置きなんかじゃなくて、おれが楽しいからやってるんだよ」
「「「ど、どぼじでそんなごどずるのぉぉぉぉ!」」」
「楽しいからだよ。うん」
 りじちょーの恐ろしい意図を知ってから、親ゆっくりたちが自分を取り巻く状況を見て
みると――。
 完全に、詰んでいた。
 この建物の入り口とも子供たちとも、親ゆっくりたちは高い透明の壁で隔てられてしま
っていて、逃げることも子供を助けることもできない。
「ゆ、ゆ、ゆっぐりでぎないぃぃぃぃぃ!」
「れ、れいぶ!」
 一匹のまりさが、保母れいむを視線で射ながら叫ぶ。
「れいぶも、れいぶもながまなの!?」
「ゆぅ……それは……」
 親ゆっくりたちは、どこかで期待していた。あの優しい保母れいむは仲間ではないと。
保母れいむもすっかり騙されていた被害者なのだと。
 親たちは、壊されたくなかった。ゆっくりした思い出。
 一家団欒の時に子供たちが語った「優しいれいむせんせー」が嘘だったなんて思いたく
なかった。
「んなもん、仲間に決まってんじゃねーかよ。なあ、れいむ」
 口ごもっていた保母れいむを尻目に、青年はにこやかに言った。
 むろん、親たちの上げた絶望と怒りの叫びは保母れいむを痛烈に打ったが、それよりも
遙かに小さな声の方が、保母れいむにはよく聞こえた。

「う、うぞだよ、にぇ……」
「せんせー、そんにゃひじょいこと……しにゃいよ、ね?」
「みんにゃのこちょ、だいしゅきだっちぇ、せんせー、いっちぇたよね?」
「じぶんのおちびちゃんみたいに思っちぇるって……」
「ゆぐっ、せんせーは、せんせーはやしゃしんだよ、しょんなこと、しにゃいよ!」
「ゆっ、そうらよ! そんなのうそらよ!」
「いちゃいよ、つぶれちゃうよ! たすけちぇ!」
「せんせー! いちゃいよ!」
「せんせー! たすけちぇよ!」
「せんせー! くるちいよぉ!」
「せんせー! せんせー!」
「せんせー! せんせー!」
「せんせー! せんせー!」

 鉄板の下から聞こえてくる、あどけなくか細い声。
 優しいせんせーのことが忘れられないのか、青年の言うことが信じられないようだ。
 だから、青年は優しくれいむに言った。
「うん、僕から言っても信じられないらしい。お前から直接言ってあげな」
「ゆっ……」
「もう、そろそろ終わりさ。実はね、お前の子供たちを車に乗せて連れてきているんだ」
「ゆゆっ! おちびちゃん!」
「これが終わったら、すぐにでも会えるよ。一緒にゆっくりできるよ。甘くて美味しいお
菓子も用意してあるよ。れいむもまりさも、お前に会うのを楽しみにしていたよ。……で
も、お前がしくじったら……あの子たちはもうゆっくりできないんだろうなあ」
「ゆゆゆゆゆっ!」
 れいむは、決然として顔を上げた。
 影もなく、光もなく、強い決意だけがそこにはあった。
「みんな! れいむはみんなのことなんか嫌いだよ! せんせーはお仕事だからやってた
だけだよ!」
「ゆぴゃああああん」
「にゃ、にゃんでしょんなごというにょぉぉぉぉ」
「なんでもなにも、それが本当のことだからだよ! ゆっくりりかいしてね! れいむの
おちびちゃんはあの子たちだけだよ! お前らなんか死んだってなんとも思わないよ!」
「ゆぐっ、ゆえええええええん! せんせー、にゃんでええええ!」
「ゆわああああん、せんせー、ひじょいよぉぉぉ!」
「うるさいよ! れいむはもうお前たちのお守をしなくて済むからゆっくりできるよ!」
 言葉を叩きつけるように浴びせた。
「ははははは! いいぞれいむ、会った頃のお前みたいだ」
 青年が笑っている。
 れいむは、街の野良ゆっくりだった。番のまりさはゴミ捨て場に狩りに行って人間さん
によって殺された。
 二匹の子供を抱えて必死に生きていた。大きな家の庭に侵入して花壇の花を食べようと
したら捕まった。
 れいむは開き直り、口汚く人間を罵った。もうどうにでもなれ、と思っていた。
「一つ仕事してくれたら。ゆっくりさせてやるよ」
 だが、人間は怒らずに、そんなことを言ってきた。それが、青年だった。
 青年はゆっくりがたくさん生息している森の外れに長いこと使っていないプレハブの物
置を持っていた。そこを利用してゆっくりほいくえんをやるから保母になれという。
 目的は、そうやって子ゆっくりを集めて虐待することだ。彼は、子ゆっくりを虐待する
のが好きだった。
 さすがに躊躇ったものの、もう既に一度死んだものと思っていたのでれいむは自分でも
思いもよらないほどに肝が座っていた。
 子供たちをゆっくりさせるために、引き受けた。
 自分と子供がゆっくりすればいい。
 他のゆっくりのことなんか知ったことじゃない。
 街で過酷に生きてきたれいむにとっては、それほどに抵抗のある考えではなかった。い
や、むしろ馴染んですらいた。
 森に住んでいるゆっくりたちは純朴だった。
 こんな奴らじゃ、街に来たらあっという間に死ぬに違いない、とれいむは軽蔑しつつ付
き合っていた。
 だが、やはりれいむもゆっくりであったということであろうか。
 そうやって善良で純粋な子ゆっくりたちの面倒を見ているうちに、とてもゆっくりして
いた。都会の野良暮らしの中で失ってしまった気持ちが蘇ってきた。
 蘇らない方がよかったのに――。

 蘇ったそれが、れいむを苦しめた。
 あんなにゆっくりした子供たちを騙している。あの子たちは、そのうちにあの人間さん
によって酷い目にあわされる。
 そんな気持ちが芽生えた時には、引き返せなくなっていた。
 仕事の邪魔になるだろうから、うちでゆっくりさせてあげる、と言って子供たちは青年
の下にいたからだ。
 時々、子供たちの映像を見せられた。ゆっくりしている映像。
「おしごとがんばっちぇね!」
「はやくいっちょにゆっきゅちちようね!」
 と、呼びかけてくる映像もあった。
 青年を裏切ることはできなかった。

「お前らなんか嫌いだよ!」
 だが、こうして鉄板の下の教え子たちを罵倒しているのは、決して本心ではなかった。
でも、そうでも言わないと精神がもちそうになかった。
 しおらしく謝ったところで、子ゆっくりたちが殺されることはもはや決定事項だ。
 親ゆっくりたちの怒りを避けることもできまい。
 それならば開き直って攻撃的な気持ちになっていた方がよかった。
「さて、それじゃあその辺をゆっくりりかいしたところでお別れだ」
 青年が言うと鉄板の傍らに行き、腰を落とした。
「一度、やってみたかったんだ」
 舌なめずりするような喜悦に満ちた青年の声。
「ゆ……」
 れいむも、具体的に何をするかは聞いていない。
「着地の時、滑らないように気をつけてください」
「ああ、わかってるって」
 用務員とそんな会話を交わしてから、
「よっ!」
 青年が、飛んだ。
 真上に、ではなく、少し前へ。
 そして、着地した。
 鉄板の上へ。

「「「ゆ゛っっっっ!!!」」」

 幾つもの声が、搾り出されるような声が、した。

 ぷち。
 と、潰れた。
 一つではなく、幾つも潰れた。
 ぷちぷち。
 いや――
 ぷちぷちぷち。
 いやいや――
 ぷちぷちぷちぷちぷち。
 いやいやいや――

 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち

「おお~っ」
 青年は鉄板の上で、感嘆していた。
「たまんねえなあ」
 鉄板から降りる。
 鉄板を持ち上げた。
 透明の壁の向こうの親ゆっくりたちによく見えるように、そちらの側から持ち上げた。
 親たちは、呆然としていた。
 何が起こったのか、いまいちよくわかっていない。
 でも、それを見ればわからざるを得ない。
 あの鉄板にべったりとついた餡子。
 皮や、お飾りが混じったおぞましいそれの中のどこかに、自分の子供がいるのだという
ことを理解せざるを得ない。
「「「ゆぎゃあああああああああ! ゆ、ゆっぐり、ゆっぐりでぎないぃぃぃぃ!」」」
 張り裂けるような悲鳴。
 泣き声。
 嘔吐。
 涙とゲロにまみれた親ゆっくりたちが、透明の壁に張り付いて蠢いていた。進むことな
どできないのに、子供の亡骸へ少しでも近付こうと、無駄な足掻きを繰り返していた。
「ゆ……ゆげえええええ」
 酷薄にしていた保母れいむも例外ではなかった。一辺に大勢の子ゆっくりが死ぬのを目
の当たりにして、耐え難い生理的嫌悪感がこみ上げてきて、嘔吐した。
「ふー、いかんなこれは、クセになりそう」
「これからはこんな手のこんだことしないでください。子ゆの百個ぐらい加工所ですぐ買
えるんですから」
「いや、それだとアレがな」
 と、青年は透明の壁を見る。
 青年が子ゆっくり虐待を好きなのは、同時に、それを見て泣き叫ぶ親ゆっくりを見るの
が好きだからだ。
「まあ、もうこれきりさ。……撮ってるんだろ」
「はい」
 その日も、天井のカメラは働いていた。親ゆっくりたちの一部始終を見つめていた。
 そして、それだけではなかった。床にもカメラは隠して設置されていて、子ゆっくりた
ちが鉄板に押し潰されて死ぬ様子を四方から撮影していた。
「……透明の板でやった方がよかったかな」
「それは、加工所産のでやりましょう」
「うん、そうだな」
「あれはどうしましょう?」
 と、用務員は親ゆっくりたちを見た。
「殺してくれ。乏しいとはいえ知恵があり、人語を喋るからな。街に出てきてあることな
いこと話されたら面倒だ」
 あることだけ話されても面倒だ、と心の中で付け加えて、青年は親ゆっくりの始末を用
務員に任せた。
「さて……」
 青年の目は、れいむに注がれる。
 これから、あれと二匹の子供をゆっくりさせてやらなければいけないのだが、気が滅入
る。
 そして、約束なんか守る必要ねえな、と思うのに時間はかからなかった。
「おい、待て」
 青年に言われて、用務員は手を止めた。
 彼は虐待趣味は無い。正確に効率よく、既に十匹の親ゆっくりを始末していた。それで
もまだ二十匹ぐらいはいる。
「あいつのガキ連れてきてくれ」
 言われて用務員が車から箱を持ってきた。それは透明なケースで中に子れいむと子まり
さがいるのが表からもわかった。
「ゆ! お、おちびちゃん!」
 保母れいむが、目を輝かせた。
「ゆゆ、おきゃあしゃんだ!」
「ゆぅ、おきゃあしゃん、ゆっきゅちちようよ!」
「ゆん、おしごと終わったよ。これからは一緒にゆっくりできるよ!」
「ゆわーい、まりしゃ、ゆっきゅちできりゅよ!」
「ゆっきゅちちようにぇ!」
 希望に満ちた親子の会話。
「ほい」
 しかし、子供たちはれいむの所へは来なかった。
 透明の壁の向こう。子供を虐殺された親ゆっくりたちの所へと下ろされた。
「ゆゆ? ゆっきゅちちていっちぇね!」
「ゆぅ? なんだかげんきにゃいよ。まりしゃといっちょにゆっきゅちちようにぇ!」
 戸惑いつつも、これまで散々ゆっくりしてきた子れいむと子まりさは、涙とゲロに汚れ
た親ゆっくりたちにとてもゆっくりした声をかけた。
「や、やべでえええええええ!」
 叫んだのは親である保母れいむだ。
「やべで、れいぶのおびぢぢゃんにひどいごどじないでええええ!」
 れいむは、騙され子供を殺された報復に、親ゆっくりたちが子れいむと子まりさを殺す
ことを恐れてそう言ったのだが、むしろそれは茫然自失していた親ゆっくりたちにそれを
気付かせることになった。
「ゆ……こいつら、あのれいむのおちびだよ……」
「ゆっくりしてるわ……ありすのおちびちゃんたちは……もうゆっくりできないのに」
「まりさのおちびちゃんと……同じにしてやるよ」
 じりじりと迫る親ゆっくりたちに恐怖を覚えた子れいむと子まりさは逃げようとするが
すぐに囲まれてしまう。
「やべでええええええ!」
 れいむが、壁にびたーんと張り付いた。
「おきゃあしゃん、たちゅけてええええ!」
「ゆっきゅちできにゃいよぉぉぉ!」
 子れいむと子まりさは母に助けを求める。
「おねがいじまずぅぅぅ、おちび……おちびぢゃんはなにもじらないんでずぅぅぅ、なに
もわるぐないんでずぅぅぅ、れいぶは、れいぶはどうなっでもいいがら、おちびぢゃんに
ひどいごとじないでえええええ!」
 だが、れいむとて出来ることは懇願することだけだ。
 そして、多くの場合無駄に終わるゆっくりの懇願だが……。
「ゆぅ……たしかに、子供はわるくないよ」
「わるいのは、れいむだよね」
「ゆぅ、そうだね」
 子を思う言葉は、親ゆっくりたちの心に届いた。
「おお、なんて優しいゆっくりたちだ!」
 青年が言った。けっこう、本心から感心していた。てっきり子供たちが殺されると思っ
ていたのだ。
「よし、それじゃあ約束通り、この子たちはゆっくりさせてあげるね。美味しいごはんと
ふわふわのお布団と、楽しい玩具。大きくなったら番も見つけないとね。すっきりしてに
んっしんっして、可愛いおちびちゃんを産んで、ゆっくりした家族を作るんだ。そうした
られいむはお婆ちゃんだね! 孫ゆっくりたちはきっとお婆ちゃんが大好きになるね! 
とてもゆっくりできそうだね!」
 ニヤニヤしながら青年が言うと、親ゆっくりたちの顔に再び憤怒が燃え上がってきた。
 嫌だ。
 この子たちは悪くない。
 でも、それなら自分たちの子は悪かったのか? そんなことはない。
 自分たちの子は、もうむーしゃむーしゃすることも、すっきりすることもにんっしんっ
して子供を産むこともない。
 それなのに、どうして自分たちを騙して子供を殺す片棒を担いだあのれいむの子供がそ
んな幸せでゆっくりするのか。
 嫌だ。
 そんなの、許せない。
 許せない。
「同じにしてやるぅぅぅぅ!」
「そうだよ、おちびちゃんと同じにしてやるぅ!」
「やっちゃええええ!」
「ゆぴゃあああ、やめちぇぇぇぇ!」
「おきゃあしゃん、たちゅけちぇ!」
 子れいむと子まりさは、同じ、にされた。
 そう、親ゆっくりたちに上に乗られて押し潰されたのだ。
「ゆ、ゆぎゅぅぅぅ、ちゅぶれるぅぅぅ」
「ぐ、ぐりゅじぃぃぃ、ゆげぇ」
 まず口から、そして遂には目からも餡子が飛び出し始める。口ならともかく、目からは
本格的に危険なことを示している。
「やべでえええええ! れいぶを、れいぶをがわりにつぶじでぐだざいいいい! おぢび
ぢゃんはだずげでえええええ!」
 透明の壁に張り付いたれいむの前。
 すぐそこなのに届かない場所で、れいむの最愛の子供たちは潰された。
「も……ぢょ……ゆ……ぎゅ……た」
 子れいむは、餡子の涙を流すようにして死亡。
「ぐらい……よぉ……にゃんにも……見えにゃい……おきゃあじゃん、どきょ? おねえ
じゃん、どきょに、いりゅの?」
 子まりさは、必死にもがいているうちに、体の位置が変わった。口を床に押し付けるよ
うな位置で上に乗られたために、押された餡子の出所が目だけになってしまった。
 両目の眼球が飛び出し無明の暗黒の中で、母と姉を探し求めながら死んだ。

「ゆ゛ああああああ!」
「ゆっぐりじね! ゆっぐりじね!」
「おまえが、おばえがわるいんだあああああ!」
「もっと苦しんでしね! あっさり死ぬなんてゆるさないわ!」
 そして今、保母れいむは親ゆっくりたちに凄惨なリンチを受けて死に至ろうとしていた。
 子供たちの死に絶叫し、話が違うと青年に食って掛かったところ、
「違うからどうしたってんだよ」
 と、無情にも壁の向こうに投げ入れられたのだ。
 頭の片隅では、この子たちは悪くないと理解しつつもれいむの子供たちを殺した親ゆっ
くりたちである。れいむを許すはずもなかった。

 れいむが一番悪い!
 こいつのせいで子供たちが!
 こいつの子供だって、こいつのせいで死んだようなものだ!

 ありとあらゆる罵倒と暴力を浴びているれいむをニヤニヤ笑いながら眺めている人間こ
そが一番悪いのだということには気付く余裕も無いようだった。
 やがてれいむが死に、そして親ゆっくりたちも殺された。



 車での帰り道。
 車載ラジオからニュースが流れている。
 はじめは気にもしていなかった青年だが、とある事件の裁判についてのものだと知ると
耳を澄ませて聞き入った。
 保育園を経営していた男が、園児に猥褻な行為をしていた事件だ。
 犯人は、低料金で保育園を経営し、人には自分は子供が好きで商売抜きでこの仕事をや
っていると美辞麗句を吐いていたが、好き、の意味がそういう意味だったというわけであ
る。
 青年は、この事件を聞いて、ゆっくりほいくえんを考えたのである。
 そして、それとは別に純粋に興味も持っていた。
 彼は怒っていた。ひどすぎると。
 ニュースは懲役二十年の判決を不服として被告が控訴した旨を伝えていた。
「ったく、死刑だ。死刑。控訴って、なにを言ってやがるんだか」
 いたいけな女児への卑劣な犯行に、彼は心底腹を立てていた。
 次のニュースは、殺人事件だった。
 犯人は動機を「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」と述べており、その身勝手
な言い分に、青年は怒った。
「ったく、殺したいならゆっくりを殺せばいいじゃないか。頭のおかしい奴ってのはたま
らんな。死刑だ。死刑」

                                終わり






 初投稿です。よろしくお願いします。

 ひっでえ話だなあ。
 おれが書いたんだけど。



挿絵 by鉛筆あき


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感想

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  • ↓×9お前きのこの山派か?…………………………………………………同士よ! -- 2023-02-19 08:02:14
  • ↓3 ? 生きとし生けるものは全て等価に決まってるだろ?
    ちょっと論理的思考が得意なだけのサルが図に乗るんじゃないよ… -- 2020-07-23 09:22:16
  • この人バランス感覚いいな -- 2019-03-31 02:04:20
  • 最高。やっぱ子ゆは親の前で殺すに限る -- 2018-10-01 21:37:41
  • この おとこ も しけい は まぬがれない
    -- 2016-09-12 16:09:37
  • 人間とクソ饅頭を同列に扱うとかマジウケルwww -- 2016-03-24 16:35:13
  • 保母れいむも、親ゆっくり達も、そのおちびちゃんたちも可哀想に
    私からしたら、この男は、女児を殺した男と同じじゃねぇか(#^.^) -- 2015-01-01 00:51:54
  • 保母でいぶざまあ!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwee -- 2014-07-13 07:16:33
  • このSSでもっとも許せないのは親ゆが保母れいむに復讐できた事だ
    そんな一片の希望を与えるなんてこの理事長はどうかしているぜ -- 2013-01-18 11:07:52
  • そんなことよりきのこたべたい -- 2012-09-04 14:10:53
  • 2010ー08ー01 03:14:54みたいな餡子脳はでていってね
    ばをわきまえないとはずかしいよ(笑) -- 2012-06-26 08:12:03
  • 歌がなんとなく気に入ったwww -- 2012-05-14 16:54:49
  • おゆうぎしてるゆっくりを痛めつけたくなった・・・・・・

    ↓知恵遅れ言い過ぎワロタwww -- 2012-01-02 02:17:58
  • ↓SF・ホラー・ファンタジーなどのありとあらゆる小説・漫画・映画で架空生物が出てくるわけだが
    その全てを否定するつもりかい知恵遅れが
    架空生物に対してすっきりできないのはおまえの知恵が極端に遅れているからだよ知恵遅れが
    知恵遅れの分際で人様の精神をどうこう言うなんておこがましいにも程があるぞ知恵遅れが
    おまえの存在自体が不愉快極まりないんだよ知恵遅れが
    ここはおまえのような知恵遅れが来ていい場所ではないんだよ知恵遅れが
    僅かにでも知能らしきものがあるのなら二度と来るなよ知恵遅れが -- 2011-11-16 02:31:56
  • 架空生物に対してすっきりするか?お前いらの精神を疑うわ -- 2011-11-16 02:02:17
  • ↓5
    ゆっくりは馬鹿だから苦しめて殺すなんて高等テクニックできません。
    -- 2011-11-14 20:01:56
  • 笑顔の子ゆって目ん玉くり抜きたくなるな♪
    -- 2011-05-04 02:43:42
  • そんなことより青年の歳が28のイメージの俺orz -- 2011-05-03 23:43:08
  • ゆっくりの存在しない世界に生まれた自分に憤る -- 2011-03-19 22:15:34
  • ゆっくりは屑だな! -- 2010-09-23 12:31:45
最終更新:2010年04月21日 17:17
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