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女大学評論-1
【女大学・1】
女子は成長して他人の家へ行き舅、姑に仕えることになるのだから、男子よりも親の教えをよく守らなくてはならない。
父母が甘やかして育てれば夫の家に行ってから気ままであるとして夫に疎まれ、または舅の教えが正しいというのにそれを耐えがたく思って舅を恨みそしり、仲が悪くなってついには追い出され恥をさらす。
女子の父母が自分たちの教育がきちんとしていなかったと反省せず舅、夫が悪いと思うのは間違いである。これは全て女子の親の教育がきちんとできていなかったせいである。
【女大学評論・1】
成長して他人の家に行くものは必ずしも女子に限らず、男子も女子と同様、総領以下の次男・三男は養子として他家に行く例もある。
人間は世界に男女が半数ずついるのだから、それが成長して他の家に行く者の数もまさしく同数とみることができる。
男子は分家して一戸の主人となることがあるから女子の場合とは違うという意見もあろうが、女子ばかり多く生まれた家ではそのうちの一人を家に置いてこれに婿養子をとらせて本家を相続させ、その他の姉妹にも同様に婿養子を取らせて家を分かつことも世間にはとても多い。
だから子に対して親の教えをゆるがせにするべからずというのはもっともあたりまえのことだけれども、女子に限って男子よりもそれを守れというのは道理が合わない。男の子だからといって甘やかして育ててよいというわけではない。
男ならば養家に行って我が儘な態度をとって身を持ち崩し妻に疎まれ、舅を恨みそしって家内に波風を立て、ついには離縁されても恥ではない…などということはありえない。
女子の身に恥となることは男子においても恥なのだ。
だから父母の教育が大切であり、逃れられない義務であるのだが、女子に限ってのみその教育を重んずるというのは全く根拠のないことである。
世間にはこんなことを言う人がいる。「父母の教訓は子供にとっては良薬のようなもので美しいから、女子のほうを重んじて男子は次でいい、そのあたりは問うべきことではない」と。これは大きな誤りだ。
元来、人の子に教えを授けて育てあげるのは病人に薬を与えて、その薬には適切な分量というものがあるということだ。
もしその分量を間違えれば良薬も害になる。
だから父母が子を育てるときにはたとえその教えが良く美しいものであっても女子だからといって厳しくするのは間違いだ。男女で同じ症状の患者に対しての薬の分量を加減しなくてはならないのと同じ問題である。
女子の適量は男子には不足であるし、男子の適量は女子には多すぎ、与えればめまいを起こさせてしまう。
女子は男子よりも親の教えをよく守らなくてはならない、勝手気ままであってはならない、というのは、父母たる者は特に注意をして女子の言行を取り締り、温良恭謙に導くとの意味だろう。
温良恭謙は確かに人間の美徳であるけれども、女子に限ってその教えをよく守らなければならないというのは、女子に限って薬を大量に飲ませなければならないという意味になってしまう。女子がこの大量の教えに耐えてめまいをおこさないという保証がどこにあるだろう。
その温良恭謙柔和忍辱の教えにめまいを覚えれば、女子は万事控えめになってしまって人生の活動の機会を失い、言うべきことも言えず、なすべきこともなさず、聴くべきことも聴かず、知るべきことも知らないということになり、ついには男子のために侮辱されてもてあそばれることになってしまう。
だから、古くから言われているように男子よりも云々といって男女を区別してしまうのは、女性のためにはよくないことなのだ。
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最終更新:2007年04月27日 12:52
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