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*エルナード 【えるなーど】 |ジャンル|RPG|~| |対応機種|スーパーファミコン|~| |メディア|12Mbit ROMカートリッジ|~| |販売元|エニックス|~| |発売元|ゲームプラン21|~| |開発元|プロデュース|~| |発売日|1993年4月23日|~| |定価|9,600円(税別)|~| |判定|なし|~| |ポイント|ミスティックアークの前身&br;殺伐とした兄弟弟子&br;衝撃のラスト|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -ゲームシステムや用語など、『[[ミスティックアーク]]』と共通した部分を多く持つ、事実上の前作。 --ただし、固有名詞の一部が共通しているものの世界観上の繋がりは明示されていない((そもそも『ミスティックアーク』は設定的に「本来の世界観」が明らかにされていないので、同一とも異なるとも言いようがないのだが…。))。 -プレイヤーキャラは賢者と呼ばれる「神の子」シーダの7人の弟子のひとり。師の課した試練として、世界中に散らばる7つのアークを集める旅に出る。 --妖精のような姿を持っている『ミスティックアーク』のそれとは異なり、こちらではアークは純然たるアイテムである。 -移動画面でのコマンドは「トーク」「サーチ」、戦闘でのコマンドは「アタック」「ガード」など英語表記が多く、国産ゲームだが洋ゲー臭がするとしばしば評される。 **特徴 -7人の弟子 --ゲーム開始時、7人の中から主人公を選択する。 ---カムル:人間の戦士。平均的な能力を持ち魔法もそこそこ覚える、いわゆる勇者的な性能。紳士的で礼儀正しい。 ---エスナ:紅一点であるエルフの魔法使い。魔法は攻撃・回復とも使いこなすが身体能力は低い。明るい性格。 ---バルス:人間の神官。回復・補助魔法のエキスパート。攻撃は苦手。礼儀正しいが正義感が強すぎる傾向がありレージスやウィルミーを嫌っている。 ---オルバン:ドワーフの老戦士。カムル同様魔法もそこそこ覚えるがこちらは攻撃力・防御力が高く素早さが低い重戦士スタイルとなっている。性格はやや頑固。 ---レジース:山羊の頭を持つ魔族。全属性の攻撃魔法を覚える上に物理攻撃も強力だが、防御面が貧弱で回復魔法は一切覚えない。自分勝手で協調性も皆無だが、会話内容からツンデレと呼ばれやすい。 ---ウィルミー:獣人のような姿をしたエイリアン。装備がほとんどできず魔法に弱いが、素の身体能力が非常に高い。過去に迫害された経験がある為か自分を認めさせようとする言動が多い。 ---ラックス:「テツジン」と呼ばれるロボット((終盤に能力が上昇するイベントがある))。装備は専用のものしか使えず、魔法は魔法という名のレーザー攻撃である。足音がガシャガシャうるさい。ロボット故か仲間への差別心は皆無。 --メインストーリーは全員共通だが、選んだ主人公によってイベントの解決法などが異なる部分がある。 --主人公に選んだ者以外の6人はそれぞれ独自に旅をしており、街などで出会うことがある。この際の反応は基本的にランダムで、会話だけで別れることもあれば組まないかと誘われることも、果ては主人公の持つアークを奪おうと襲ってくることも。 ---逆に、先にアークを手に入れた兄弟弟子からアークを奪う展開もある。ストーリー上で1人は完全に悪堕ちすることに。兄弟弟子との戦闘にはパートナーは協力してくれず強制タイマンとなるため、かなり苦戦する。 ---殺し屋((死んだ後も二回も蘇って計3回も襲撃してくる。 キャラとしては中ボス扱いだがやけに律儀な殺し屋である。 余談だが復活後はレッド→メタルとパワーアップしており発売元の某モンスターを連想させる。))を雇って主人公を消そうとしてくる兄弟弟子までいる始末。雇い主が誰かは不明だが、正直誰でもおかしくない設定であり、他の6人への猜疑心を生み出す結果となっている。 --パートナーになってくれる兄弟弟子がいればパーティを組むことができる。パーティは最大2人で、既に仲間がいる時に別のキャラの誘いをOKした場合は前の仲間と別れることになる。 --マスクデータとしてキャラ同士の相性の概念があり、相性の良いキャラほど仲間にしやすく・敵に回りにくくなるらしい。また、相性の悪い仲間を連れている時にアークを入手すると、アークを奪おうと襲ってくる''仲間割れ''が発生することも。 --ただし、シナリオ上の都合で後半以降はこれらの要素はオミットされるのだが… -レーダー表示 --フィールドやダンジョンでは画面左上にレーダー(シーダから授けられたクリスタルという設定)が表示され、街・ダンジョン・敵・宝箱・アークなどが表示される。 --つまり、フィールド画面に直接の表示はされないがレーダーで感知できるシンボルエンカウントである。 -戦闘システム --戦闘はターン制のコマンド式。主人公及びパートナーは1ターンに1回ずつ行動できるが、2人のどちらを先に動かすかは自由。 ---直前に行動したキャラが「前に出た」扱いになり、敵の攻撃の対象になる。ただし後ろにいるキャラも全体攻撃は受ける。 --ガードを行うと被ダメージを大きく減らせる他、次のターンは攻撃力が上がる。ガード→アタックが戦闘の基本。 --ストーリーを進めるために集める必要があるアークは、使用することで魔法と同じような効果を発揮できる。特に回復やバフ効果を持つものは必須レベルで重要。 ---…なのだが、終盤のイベントで集めたアークを全て失ってしまう。その流れに至るストーリー展開の衝撃度もさることながら、一気に戦力が落ち苦労することに。 ---なお、戦いを挑んできた兄弟弟子に敗北した場合も手持ちのアークを全て奪われる。再戦して勝てば取り返せるが、当然ながらそれまでは茨の道となる。 --全滅するとお金を半分失う。アイテムは失わないため、購入時と同額で売却できる換金専用アイテム「宝石」が安全な貯金として機能する。宝石は価格の異なる複数種類があり、基本的にはストーリー上で先にある街ほど高額な宝石を扱っている。 **評価点 -雰囲気溢れるBGM --ユーザーの多くが本作の一番印象に残る部分だと言うであろう要素がBGMである。 ---透明感のある笛の音にシンプルな伴奏を付けた穏やかな曲が中心で、メロディーラインもどこか物悲しいものが多い。あまり多くを語らないストーリーと兄弟弟子との殺伐とした関係なども相まって、作品全体に独特の寂寥感を与えている。 ---反面、戦闘曲はノリノリ。こちらも聴き応えがある。 ---街にある噴水を調べると「''ふんすいを 見ていると こころが なごんだ!''」のメッセージと共に短いフレーズが流れる。確かに和むが特に意味はない。 -戦闘のテンポの良さ --コマンド選択後すぐに自キャラが動き、敵が生き残っていればその後即座に動いて再びプレイヤーの番が回ってくる。メッセージ送りなどが不要で、攻撃モーションも短くストレスにならない。 --戦闘に突入する際の、平面のフィールドマップが回転して立ち上がり擬似3D表示の戦闘シーンへ移行する演出も臨場感があり高評価。 ---敵もアニメーションによる攻撃を行うので格好良さや''キモさ''、''可笑しさ''もひとしおである。 **賛否両論点 -''とにかく地味。'' --このゲームが目立たなかった最大の理由であろう。終始淡々と進むストーリー、レーダーを頼りに広大なフィールドを彷徨う感覚、物寂しいBGMと独特の雰囲気は出ているのだが、ひたすら地味でキャッチーな要素に欠ける。 ---主人公は一切喋らず、パートナーも仲間になる時などは台詞があるがパーティにいる状態では喋らない。 ---行く先々で何度も出会う兄弟弟子の台詞にはそれなりにパターンがあり、個性も出ている。 --もちろん「その素朴さがいい」というファンも少なくない。ある種の雰囲気ゲーとしても愛好されている。 -ストーリーの''本当に微妙''な変化 --基本ストーリーは一本道だが、一部のイベントでは誰を主人公にしているかで展開が変わる他、幾つかの展開から1つがランダムで選ばれる局面がある。兄弟弟子の誰が敵に回るかなども含め、プレイ毎に少しずつ違う展開となることで主人公を変えての繰り返しプレイを楽しめる。 ---しかし、明確に違う展開になる局面はごく僅か。悪堕ちした兄弟弟子と戦うイベントなどは、その役に誰が選ばれても敵として登場した時の台詞が変わらないという適当さ((普通の男性口調のため、紅一点のエスナとカタカナで喋るラックスはここでの敵としては選ばれないようになっていると推測される。))。 ---メインストーリーだけでなく、どこで誰と出会って仲間にした・誰と敵対した、といったプレイの流れをその周だけの自分なりの物語として楽しめる人には向いている。 --ちょっとした分岐のようなものもあるが、後味が良く実利もある展開と後味が悪く何も得しない展開に分かれている程度で、実質としてはイベント達成成功・失敗での分岐に過ぎない。 --序盤のあるボスに一度敗北してから街の人に話を聞くと、ボスの背景の説明と共に一発で退散させるアイテムを貰える。救済措置というよりはストーリー補完の意味合いが強いイベントなのだが、最初から勝ってしまうとこの話を聞けない((一応、簡単な経緯を教えてくれる人物はいる。))。 **問題点 -攻撃の命中率が低い --とにかく攻撃が外れる。ガード→アタックが基本となる関係上、ミスすると2ターンを無駄にしたことになる。 ---命中率には素早さが影響するため、重戦士タイプのオルバンは不遇。素早さを上げる魔法を唯一覚えるバルスは非常に優秀なサポートキャラになる。 --魔法も容赦なく回避される。 --その代わり、味方もそれなりに敵の攻撃を避けてくれる。こちらの攻撃が当たらないことでストレスは溜まるがバランスとしては悪くはない。 -アイテム周りが不親切 --同じアイテムは9個までしか持つことができない。 ---消耗品を大量に持てないのはゲームバランス調整のためとも取れるが、貯蓄用の宝石も各9個まで。先の街へ進めばより高価な宝石が売られているが、ストーリーを進展させないと安全に貯蓄できる金額にも限界が来てしまう。 --店での購入・売却は1個ずつ。個数指定ができない。特に宝石の売買が非常に面倒。 -詰みに近い状態になり得る --アークを6つ入手する所まで進むと、兄弟弟子と出会っても仲間になってくれなくなる。つまりパートナーが固定されてしまう。 --それ以前でも、一度でも敵として戦闘した兄弟弟子は絶対に仲間にならない。強制イベントで敵に回った者も当然永久退場である。 ---そして、パートナーはアーク入手時に裏切る可能性がある。パートナーに裏切られた時点で他の全員と敵対フラグが立ってしまっていたらその後は一人旅確定である((全員とは敵対しないようにフラグ管理がされているのかも知れないが、ランダム要素が多いため未解明。))。一人旅クリアも不可能ではないが、やり込みプレイの域となる苦難の道のりである。 --また、終盤のとあるダンジョンでは「通過すると解呪イベントをこなすまで魔法が一切使えない呪いをかけられる」箇所があり、絶対に通らなくてはならない。魔法使い系2人でここまで来てしまうと地獄を見る。一応、アークがあるので頑張ればクリアできないものではないが。 --兄弟弟子との戦闘に敗れてアークを失った時のリカバリーも非常に厳しい。 -ストーリーは欝展開が多い --各地の問題を解決しても傷跡が残るという描写がかなりあり、明るい展開はかなり少ない。 ---主人公が倒すボスの殆どが''実はボスも被害者''、''悲しい出来事で狂ってしまった''と言うようなもので強さもあってボスを倒したと言う爽快感よりも後味の悪さしか残らないと言うことも多い。 -アーク関連 --こう言った要素にありがちだがアークによって使い勝手の良い、悪いの差が出やすい。 ---例を挙げると空のアークはMPを回復してくれるのだが入手が全アーク中で6番目で固定であり、さらに上記の呪いイベントが直ぐに起こる為に恩恵に預かれる期間が少ない。 ---また、終盤のイベントでアークは全部失うので代用アイテムを買っておかないとイベント後に物凄く苦労する((各町への瞬間移動は代用アイテムでも効果が発動しなくなる。))。 **そして待ち受ける結末 -ストーリー終盤には意外な展開が待っているが、それを乗り越えて辿り着くエンディングは驚愕の結末。内容としては鬱展開といえるものだがこれも非常に淡々と描写され、その呆気なさが衝撃に拍車をかける。 #region(終盤~エンディングのネタバレ) //読み直してて疑問が浮かんだんだけどゴーシア関連の時間軸の解釈違ったかも知れない。ラスボスは過去世界で封印された直後のゴーシアが未来の影響で復活したものだと思ってたけど、未来で復活した後にわざわざ過去に戻ってきたってことなのかも? だとしたら更に過去のゴーシアが歴史変えて復活→無限ループの可能性も有り得る? 台詞の細部覚えてる人は間違いあったら訂正お願いします。 //一応記憶にある内容で修正しておきます。 -主人公はついに7つのアークを手にするが、そこで師であるシーダ…と思われていた者が本性を現す。 -実は弟子達にアーク集めを命じた時点で既に、本物のシーダは殺され偽者に入れ替わっていた。偽シーダの正体は神によりアークに力を封印されていた「闇の王」ゴーシア。今まで使っていたアークの力は封印されたゴーシアの力であったのだ。 --主人公達にアーク捜索を命じたのも自分の力を取り戻す為であった、そしてゴーシアはアークを破壊し復活を遂げてしまう。 -ゴーシアは自分を封印した神を抹殺する為に過去へ飛ぶがその際に主人公(とパートナー)も巻き込まれてしまう。過去の世界を旅し、紆余曲折を得て神のいる場所までたどり着くが、未来から戻ったゴーシアは本来なら神によってアークに封印された筈の過去を捻じ曲げて、逆に神を倒してしまった。 -死に瀕した神の力(アーク)を受け継ぎゴーシアに勝利した主人公だが、ゴーシアは「いつの日か復活する」と告げ、最後の力を振り絞って主人公を道連れにする。''主人公の肉体は消滅してしまう。'' -神もまた最後の力で、主人公の魂を転生させる。生まれ変わった主人公が誕生したのはゲームスタート地点、レミールの街の神殿。光の中から生まれた赤子を見た神官達は彼を「神の子」と呼び、シーダと名付けるのであった…。 --現代での復活が過去にも影響していたゴーシアの存在のあり方を考えれば、同じく過去の世界からやってきた主人公達に滅ぼされているのでこの世界はパラレルワールドとしてゴーシアが現れる事はないと思われる。 ---だが復活する気満々な捨て台詞を見るに、完全に滅びた訳ではないのかも知れない。無限ループではないと解釈したいところだが…。 --一方で、パートナーには何の救済もなく''過去世界に置き去り''である。 ---特にその後が語られることもない。というか主人公が消滅しパートナーだけが残された画面からそのままエンディング演出に移り、全く触れられることなく終わってしまう完全放置((下手をすると弟子を全員皆殺しにしてしまう可能性もあるのでイベントを作りにくかった可能性もあるが…))。 #endregion **総評 どこか寂しく陰鬱な雰囲気が漂う世界を旅し、ひたすら淡々と紡がれる物語の中で兄弟弟子と血みどろの争いを繰り広げ、その果てに辿り着く結末さえもハッピーエンドとは言い難い。全編に渡って独特の寂寥感と虚無感に満ちており、それを「味」として楽しめるならば上質な雰囲気ゲーといえる。&br; その反面、システム面は光る部分もあるものの平凡なRPGのアレンジに留まっており、今プレイすると若干もっさり感も覚えるかも知れない。&br; いわゆる典型的JRPG路線とは少し違った、空気を感じるRPGをやってみたい人にはお勧め。そういう意味でも後継作の『ミスティックアーク』と似通ったゲームである。 **余談 -オープニングによればタイトルの『エルナード』とは舞台となる惑星の名らしい。特にストーリー上で重要な訳ではないが。 --また、オープニングでは創造神として女神アルテシアという名が登場するが、作中に登場する「神」は男神である。多神教なのだろうか? -小学館から攻略本が発行されている。 --攻略部分に関してはごく普通の攻略本だが、ヨーロッパで撮影されたと思しき風景写真が各街のページにイメージ画像として掲載されており、ゲームの雰囲気に合っていると高く評価するファンが多い。 -海外版のタイトルは『The 7th Saga』。国内でも『セブンス・サガ』のタイトルでGファンタジー誌にてコミカライズされている。国内版タイトルとは全く違う上に原作がこの通りマイナーなので、ゲーム原作だと知らずに読んでいた人も多いのでは。 --掲載誌の読者層に合わせてか主人公のカムルとヒロインのエスナは原作での成人男女から少年少女に変更されており、設定も大分異なる。もちろん結末もハッピーエンド。 -前述の通り『ミスティックアーク』、及びスタッフが共通していると思われる『ブレインロード』とは名詞などにリンクが見られ、ファンの間では「アーク三部作」とも呼ばれる。 --『ミスティックアーク』の男主人公・『ブレインロード』の主人公のデフォルト名「レミール」は、本作のスタート地点となる街の名前と同一。逆に、『ブレインロード』の最初の街の名前は「''アーク''ス」である。 ---本作と直接の関係はないが『ミスティックアーク』の女主人公のデフォルト名「フェリス」も『ブレインロード』のキャラ名と同じ。 --また、主人公候補のひとりラックスと同名の「テツジン」が『ミスティックアーク』の仲間キャラとしても登場するが、デザインが違うため別個体と思われる。
*エルナード 【えるなーど】 |ジャンル|RPG|~| |対応機種|スーパーファミコン|~| |メディア|12Mbit ROMカートリッジ|~| |販売元|ゲームプラン21|~| |発売元|エニックス|~| |開発元|プロデュース|~| |発売日|1993年4月23日|~| |定価|9,600円(税別)|~| |判定|なし|~| |ポイント|ミスティックアークの前身&br;殺伐とした兄弟弟子&br;衝撃のラスト|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -ゲームシステムや用語など、『[[ミスティックアーク]]』と共通した部分を多く持つ、事実上の前作。 --ただし、固有名詞の一部が共通しているものの世界観上の繋がりは明示されていない((そもそも『ミスティックアーク』は設定的に「本来の世界観」が明らかにされていないので、同一とも異なるとも言いようがないのだが…。))。 -プレイヤーキャラは賢者と呼ばれる「神の子」シーダの7人の弟子のひとり。師の課した試練として、世界中に散らばる7つのアークを集める旅に出る。 --妖精のような姿を持っている『ミスティックアーク』のそれとは異なり、こちらではアークは純然たるアイテムである。 -移動画面でのコマンドは「トーク」「サーチ」、戦闘でのコマンドは「アタック」「ガード」など英語表記が多く、国産ゲームだが洋ゲー臭がするとしばしば評される。 **特徴 -7人の弟子 --ゲーム開始時、7人の中から主人公を選択する。 ---カムル:人間の戦士。平均的な能力を持ち魔法もそこそこ覚える、いわゆる勇者的な性能。紳士的で礼儀正しい。 ---エスナ:紅一点であるエルフの魔法使い。魔法は攻撃・回復とも使いこなすが身体能力は低い。明るい性格。 ---バルス:人間の神官。回復・補助魔法のエキスパート。攻撃は苦手。礼儀正しいが正義感が強すぎる傾向がありレージスやウィルミーを嫌っている。 ---オルバン:ドワーフの老戦士。カムル同様魔法もそこそこ覚えるがこちらは攻撃力・防御力が高く素早さが低い重戦士スタイルとなっている。性格はやや頑固。 ---レジース:山羊の頭を持つ魔族。全属性の攻撃魔法を覚える上に物理攻撃も強力だが、防御面が貧弱で回復魔法は一切覚えない。自分勝手で協調性も皆無だが、会話内容からツンデレと呼ばれやすい。 ---ウィルミー:獣人のような姿をしたエイリアン。装備がほとんどできず魔法に弱いが、素の身体能力が非常に高い。過去に迫害された経験がある為か自分を認めさせようとする言動が多い。 ---ラックス:「テツジン」と呼ばれるロボット((終盤に能力が上昇するイベントがある))。装備は専用のものしか使えず、魔法は魔法という名のレーザー攻撃である。足音がガシャガシャうるさい。ロボット故か仲間への差別心は皆無。 --メインストーリーは全員共通だが、選んだ主人公によってイベントの解決法などが異なる部分がある。 --主人公に選んだ者以外の6人はそれぞれ独自に旅をしており、街などで出会うことがある。この際の反応は基本的にランダムで、会話だけで別れることもあれば組まないかと誘われることも、果ては主人公の持つアークを奪おうと襲ってくることも。 ---逆に、先にアークを手に入れた兄弟弟子からアークを奪う展開もある。ストーリー上で1人は完全に悪堕ちすることに。兄弟弟子との戦闘にはパートナーは協力してくれず強制タイマンとなるため、かなり苦戦する。 ---殺し屋((死んだ後も二回も蘇って計3回も襲撃してくる。 キャラとしては中ボス扱いだがやけに律儀な殺し屋である。 余談だが復活後はレッド→メタルとパワーアップしており発売元の某モンスターを連想させる。))を雇って主人公を消そうとしてくる兄弟弟子までいる始末。雇い主が誰かは不明だが、正直誰でもおかしくない設定であり、他の6人への猜疑心を生み出す結果となっている。 --パートナーになってくれる兄弟弟子がいればパーティを組むことができる。パーティは最大2人で、既に仲間がいる時に別のキャラの誘いをOKした場合は前の仲間と別れることになる。 --マスクデータとしてキャラ同士の相性の概念があり、相性の良いキャラほど仲間にしやすく・敵に回りにくくなるらしい。また、相性の悪い仲間を連れている時にアークを入手すると、アークを奪おうと襲ってくる''仲間割れ''が発生することも。 --ただし、シナリオ上の都合で後半以降はこれらの要素はオミットされるのだが… -レーダー表示 --フィールドやダンジョンでは画面左上にレーダー(シーダから授けられたクリスタルという設定)が表示され、街・ダンジョン・敵・宝箱・アークなどが表示される。 --つまり、フィールド画面に直接の表示はされないがレーダーで感知できるシンボルエンカウントである。 -戦闘システム --戦闘はターン制のコマンド式。主人公及びパートナーは1ターンに1回ずつ行動できるが、2人のどちらを先に動かすかは自由。 ---直前に行動したキャラが「前に出た」扱いになり、敵の攻撃の対象になる。ただし後ろにいるキャラも全体攻撃は受ける。 --ガードを行うと被ダメージを大きく減らせる他、次のターンは攻撃力が上がる。ガード→アタックが戦闘の基本。 --ストーリーを進めるために集める必要があるアークは、使用することで魔法と同じような効果を発揮できる。特に回復やバフ効果を持つものは必須レベルで重要。 ---…なのだが、終盤のイベントで集めたアークを全て失ってしまう。その流れに至るストーリー展開の衝撃度もさることながら、一気に戦力が落ち苦労することに。 ---なお、戦いを挑んできた兄弟弟子に敗北した場合も手持ちのアークを全て奪われる。再戦して勝てば取り返せるが、当然ながらそれまでは茨の道となる。 --全滅するとお金を半分失う。アイテムは失わないため、購入時と同額で売却できる換金専用アイテム「宝石」が安全な貯金として機能する。宝石は価格の異なる複数種類があり、基本的にはストーリー上で先にある街ほど高額な宝石を扱っている。 **評価点 -雰囲気溢れるBGM --ユーザーの多くが本作の一番印象に残る部分だと言うであろう要素がBGMである。 ---透明感のある笛の音にシンプルな伴奏を付けた穏やかな曲が中心で、メロディーラインもどこか物悲しいものが多い。あまり多くを語らないストーリーと兄弟弟子との殺伐とした関係なども相まって、作品全体に独特の寂寥感を与えている。 ---反面、戦闘曲はノリノリ。こちらも聴き応えがある。 ---街にある噴水を調べると「''ふんすいを 見ていると こころが なごんだ!''」のメッセージと共に短いフレーズが流れる。確かに和むが特に意味はない。 -戦闘のテンポの良さ --コマンド選択後すぐに自キャラが動き、敵が生き残っていればその後即座に動いて再びプレイヤーの番が回ってくる。メッセージ送りなどが不要で、攻撃モーションも短くストレスにならない。 --戦闘に突入する際の、平面のフィールドマップが回転して立ち上がり擬似3D表示の戦闘シーンへ移行する演出も臨場感があり高評価。 ---敵もアニメーションによる攻撃を行うので格好良さや''キモさ''、''可笑しさ''もひとしおである。 **賛否両論点 -''とにかく地味。'' --このゲームが目立たなかった最大の理由であろう。終始淡々と進むストーリー、レーダーを頼りに広大なフィールドを彷徨う感覚、物寂しいBGMと独特の雰囲気は出ているのだが、ひたすら地味でキャッチーな要素に欠ける。 ---主人公は一切喋らず、パートナーも仲間になる時などは台詞があるがパーティにいる状態では喋らない。 ---行く先々で何度も出会う兄弟弟子の台詞にはそれなりにパターンがあり、個性も出ている。 --もちろん「その素朴さがいい」というファンも少なくない。ある種の雰囲気ゲーとしても愛好されている。 -ストーリーの''本当に微妙''な変化 --基本ストーリーは一本道だが、一部のイベントでは誰を主人公にしているかで展開が変わる他、幾つかの展開から1つがランダムで選ばれる局面がある。兄弟弟子の誰が敵に回るかなども含め、プレイ毎に少しずつ違う展開となることで主人公を変えての繰り返しプレイを楽しめる。 ---しかし、明確に違う展開になる局面はごく僅か。悪堕ちした兄弟弟子と戦うイベントなどは、その役に誰が選ばれても敵として登場した時の台詞が変わらないという適当さ((普通の男性口調のため、紅一点のエスナとカタカナで喋るラックスはここでの敵としては選ばれないようになっていると推測される。))。 ---メインストーリーだけでなく、どこで誰と出会って仲間にした・誰と敵対した、といったプレイの流れをその周だけの自分なりの物語として楽しめる人には向いている。 --ちょっとした分岐のようなものもあるが、後味が良く実利もある展開と後味が悪く何も得しない展開に分かれている程度で、実質としてはイベント達成成功・失敗での分岐に過ぎない。 --序盤のあるボスに一度敗北してから街の人に話を聞くと、ボスの背景の説明と共に一発で退散させるアイテムを貰える。救済措置というよりはストーリー補完の意味合いが強いイベントなのだが、最初から勝ってしまうとこの話を聞けない((一応、簡単な経緯を教えてくれる人物はいる。))。 **問題点 -攻撃の命中率が低い --とにかく攻撃が外れる。ガード→アタックが基本となる関係上、ミスすると2ターンを無駄にしたことになる。 ---命中率には素早さが影響するため、重戦士タイプのオルバンは不遇。素早さを上げる魔法を唯一覚えるバルスは非常に優秀なサポートキャラになる。 --魔法も容赦なく回避される。 --その代わり、味方もそれなりに敵の攻撃を避けてくれる。こちらの攻撃が当たらないことでストレスは溜まるがバランスとしては悪くはない。 -アイテム周りが不親切 --同じアイテムは9個までしか持つことができない。 ---消耗品を大量に持てないのはゲームバランス調整のためとも取れるが、貯蓄用の宝石も各9個まで。先の街へ進めばより高価な宝石が売られているが、ストーリーを進展させないと安全に貯蓄できる金額にも限界が来てしまう。 --店での購入・売却は1個ずつ。個数指定ができない。特に宝石の売買が非常に面倒。 -詰みに近い状態になり得る --アークを6つ入手する所まで進むと、兄弟弟子と出会っても仲間になってくれなくなる。つまりパートナーが固定されてしまう。 --それ以前でも、一度でも敵として戦闘した兄弟弟子は絶対に仲間にならない。強制イベントで敵に回った者も当然永久退場である。 ---そして、パートナーはアーク入手時に裏切る可能性がある。パートナーに裏切られた時点で他の全員と敵対フラグが立ってしまっていたらその後は一人旅確定である((全員とは敵対しないようにフラグ管理がされているのかも知れないが、ランダム要素が多いため未解明。))。一人旅クリアも不可能ではないが、やり込みプレイの域となる苦難の道のりである。 --また、終盤のとあるダンジョンでは「通過すると解呪イベントをこなすまで魔法が一切使えない呪いをかけられる」箇所があり、絶対に通らなくてはならない。魔法使い系2人でここまで来てしまうと地獄を見る。一応、アークがあるので頑張ればクリアできないものではないが。 --兄弟弟子との戦闘に敗れてアークを失った時のリカバリーも非常に厳しい。 -ストーリーは欝展開が多い --各地の問題を解決しても傷跡が残るという描写がかなりあり、明るい展開はかなり少ない。 ---主人公が倒すボスの殆どが''実はボスも被害者''、''悲しい出来事で狂ってしまった''と言うようなもので強さもあってボスを倒したと言う爽快感よりも後味の悪さしか残らないと言うことも多い。 -アーク関連 --こう言った要素にありがちだがアークによって使い勝手の良い、悪いの差が出やすい。 ---例を挙げると空のアークはMPを回復してくれるのだが入手が全アーク中で6番目で固定であり、さらに上記の呪いイベントが直ぐに起こる為に恩恵に預かれる期間が少ない。 ---また、終盤のイベントでアークは全部失うので代用アイテムを買っておかないとイベント後に物凄く苦労する((各町への瞬間移動は代用アイテムでも効果が発動しなくなる。))。 **そして待ち受ける結末 -ストーリー終盤には意外な展開が待っているが、それを乗り越えて辿り着くエンディングは驚愕の結末。内容としては鬱展開といえるものだがこれも非常に淡々と描写され、その呆気なさが衝撃に拍車をかける。 #region(終盤~エンディングのネタバレ) //読み直してて疑問が浮かんだんだけどゴーシア関連の時間軸の解釈違ったかも知れない。ラスボスは過去世界で封印された直後のゴーシアが未来の影響で復活したものだと思ってたけど、未来で復活した後にわざわざ過去に戻ってきたってことなのかも? だとしたら更に過去のゴーシアが歴史変えて復活→無限ループの可能性も有り得る? 台詞の細部覚えてる人は間違いあったら訂正お願いします。 //一応記憶にある内容で修正しておきます。 -主人公はついに7つのアークを手にするが、そこで師であるシーダ…と思われていた者が本性を現す。 -実は弟子達にアーク集めを命じた時点で既に、本物のシーダは殺され偽者に入れ替わっていた。偽シーダの正体は神によりアークに力を封印されていた「闇の王」ゴーシア。今まで使っていたアークの力は封印されたゴーシアの力であったのだ。 --主人公達にアーク捜索を命じたのも自分の力を取り戻す為であった、そしてゴーシアはアークを破壊し復活を遂げてしまう。 -ゴーシアは自分を封印した神を抹殺する為に過去へ飛ぶがその際に主人公(とパートナー)も巻き込まれてしまう。過去の世界を旅し、紆余曲折を得て神のいる場所までたどり着くが、未来から戻ったゴーシアは本来なら神によってアークに封印された筈の過去を捻じ曲げて、逆に神を倒してしまった。 -死に瀕した神の力(アーク)を受け継ぎゴーシアに勝利した主人公だが、ゴーシアは「いつの日か復活する」と告げ、最後の力を振り絞って主人公を道連れにする。''主人公の肉体は消滅してしまう。'' -神もまた最後の力で、主人公の魂を転生させる。生まれ変わった主人公が誕生したのはゲームスタート地点、レミールの街の神殿。光の中から生まれた赤子を見た神官達は彼を「神の子」と呼び、シーダと名付けるのであった…。 --現代での復活が過去にも影響していたゴーシアの存在のあり方を考えれば、同じく過去の世界からやってきた主人公達に滅ぼされているのでこの世界はパラレルワールドとしてゴーシアが現れる事はないと思われる。 ---だが復活する気満々な捨て台詞を見るに、完全に滅びた訳ではないのかも知れない。無限ループではないと解釈したいところだが…。 --一方で、パートナーには何の救済もなく''過去世界に置き去り''である。 ---特にその後が語られることもない。というか主人公が消滅しパートナーだけが残された画面からそのままエンディング演出に移り、全く触れられることなく終わってしまう完全放置((下手をすると弟子を全員皆殺しにしてしまう可能性もあるのでイベントを作りにくかった可能性もあるが…))。 #endregion **総評 どこか寂しく陰鬱な雰囲気が漂う世界を旅し、ひたすら淡々と紡がれる物語の中で兄弟弟子と血みどろの争いを繰り広げ、その果てに辿り着く結末さえもハッピーエンドとは言い難い。全編に渡って独特の寂寥感と虚無感に満ちており、それを「味」として楽しめるならば上質な雰囲気ゲーといえる。&br; その反面、システム面は光る部分もあるものの平凡なRPGのアレンジに留まっており、今プレイすると若干もっさり感も覚えるかも知れない。&br; いわゆる典型的JRPG路線とは少し違った、空気を感じるRPGをやってみたい人にはお勧め。そういう意味でも後継作の『ミスティックアーク』と似通ったゲームである。 **余談 -オープニングによればタイトルの『エルナード』とは舞台となる惑星の名らしい。特にストーリー上で重要な訳ではないが。 --また、オープニングでは創造神として女神アルテシアという名が登場するが、作中に登場する「神」は男神である。多神教なのだろうか? -小学館から攻略本が発行されている。 --攻略部分に関してはごく普通の攻略本だが、ヨーロッパで撮影されたと思しき風景写真が各街のページにイメージ画像として掲載されており、ゲームの雰囲気に合っていると高く評価するファンが多い。 -海外版のタイトルは『The 7th Saga』。国内でも『セブンス・サガ』のタイトルでGファンタジー誌にてコミカライズされている。国内版タイトルとは全く違う上に原作がこの通りマイナーなので、ゲーム原作だと知らずに読んでいた人も多いのでは。 --掲載誌の読者層に合わせてか主人公のカムルとヒロインのエスナは原作での成人男女から少年少女に変更されており、設定も大分異なる。もちろん結末もハッピーエンド。 -前述の通り『ミスティックアーク』、及びスタッフが共通していると思われる『ブレインロード』とは名詞などにリンクが見られ、ファンの間では「アーク三部作」とも呼ばれる。 --『ミスティックアーク』の男主人公・『ブレインロード』の主人公のデフォルト名「レミール」は、本作のスタート地点となる街の名前と同一。逆に、『ブレインロード』の最初の街の名前は「''アーク''ス」である。 ---本作と直接の関係はないが『ミスティックアーク』の女主人公のデフォルト名「フェリス」も『ブレインロード』のキャラ名と同じ。 --また、主人公候補のひとりラックスと同名の「テツジン」が『ミスティックアーク』の仲間キャラとしても登場するが、デザインが違うため別個体と思われる。

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