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主人公の射場荘司は、「快適な環境で受験勉強を」という名目で、幼馴染の柊明美に避暑地のペンションに誘われ、連れてこられる。&br しかし、人生に目的を見つけられない荘司は、相変わらず無意味で怠惰な一日を過ごす。&br ペンションで出会い共に過ごす娘たちがそれぞれ内面に抱える苦しみにも、人との関わりを避ける荘司は気付かない。&brだがその夜、彼は奇妙なオブジェを手に入れたことで、ある不思議な感覚にとらわれることになる。 繰り返される毎日。&br 常に付きまとう、退屈と倦怠。 荘司たちは、「循環する世界」に巻き込まれていく。&br しかし自分からは何も変えられない。ただ、その場に流されるだけでしかない。&br 荘司たちは、循環から抜け出し「あした」を踏み出すことができるのか? **特徴 -ループを抜け出すには、ヒロインそれぞれの「秘密」を知ることが重要となる。 -繰り返す一日の中で出現するフラグを取捨選択し次の繰り返された一日で「解放」することで話を進めていく。 -フラグの保存できる回数は制限されているため、総当たりなどは難しく、プレイヤーがフラグを模索しないとひたすらループ回数を重ねるだけとなってしまう。 --このゲームには、バッドエンドやゲームオーバーなどはなく、''エンディングにたどり着くまで延々とループが続く''。上手くいかなければ100周を超えることもある。 --この点から、「ループ脱出シミュレーションゲーム」とも言える。 **ゲームシステム -循環する一日 --このゲームでは主人公と全ての登場人物が同じ一日を繰り返していく。&br''最初の1回目はおよそ30分間読むだけの進行となる。''&br一日が終わると、画面は一旦タイトルに戻る。「継続行動」を選ぶと&brまた同じ一日が始まり、主人公の記憶も元に戻っていく。 -記録 --しかし2回目以降は、プレイヤーにもできることがある。&brその日に起こる出来事が時々「記録」できるようになるというもの。&br「記録」は左上の半透明のオブジェに浮かぶ球体として表される。&brただし、この記録は同時に5つまでしか持つことができず、「記録」がいっぱいだとチャンスがあってもそれ以上記録できないので、チャンスのたびに取捨選択していくことも必要になってくるのである。 -解放 --次の回の特定の時点でその「記録」は自動的に「解放」される。&brその影響で同じ一日がすこしだけ変わり、前と違ったことが起こるようになる。&brまた、ある「記録」が解放された状態でないと起こらない出来事や記録できる内容も存在する。&brプレイ中に何の変化もなかった場合、持っていた全ての「記録」が自動的に解放される。 -「記録」と「解放」の例 --ある一日において&color(red){川原の石を移動}し、その環境を「記録」する→別な一日の同時刻同地点で自動的に「開放」され&color(red){川原の石が移動}した事になっているので登場人物がコケるという変化が起きる。 --また&color(red){午後から雨}という環境を「記録」していたら次の周回で「開放」され&color(red){午後から雨}になる。雨が降っているので外出はとりやめになるなんてことも。 **評価点 -ゲームシステムと不可分なストーリー表現。 --特に『プリズマ』の魅力を支える根幹が、「記録」。 ---「記録」に関してはプレイヤーに選択権があり「解放」は自動で行われる。プレイヤーは「記録」と「解放」の法則性を常に考えて進めていく必要があり、フラグを使ったパズルゲームと表現される最大の理由。 ---「記録」をジグソーパズルのピースと考え、ピースを正解の位置に当てはめると、各人の背景や隠れていた問題が浮かび上がってくると考えた方がわかりやすい。コマンド総当りやアイコンを全てクリックといった従来のアドベンチャーでできたような手法が通用しないため、眺めるだけのプレイをしているといつまでもクリアできない。 --つまり「''自ら踏み出すことができなければ、それは何も変わらない。''」というゲームのテーマを、プレイヤー自らが“体験”することになる。 ---このようにテーマをプレイヤーに体験させているのが最大の魅力。『プリズマ』のファンはほぼ例外なく、この魅力の筆頭にあげる。悩みを抱え進むことを恐れていた登場人物たちが小さな一歩を自ら踏み出したエンディングで、涙が止まらなかったという人も。 --最短手順でも、1キャラあたりエンディングまで十数周かかり、特定の状況下で発生する特殊イベントなどもあるためボリュームは結構ある。 -一分の無駄もないテキストの完成度(主人公が良い) --作中は学術用語などが飛び交い、その内容から「衒学的」と言われるが、テーマと密接に結びついている。 ---ほとんどの登場人物は、最後まで循環に気がつかないままである。主人公“も”例外ではなく''循環のたびに記憶がリセットされてしまう''。以降の周回でそのたびに主人公の記憶がリセットされても、事実や真実に徐々に近づいていくことの出来る鋭い観察力と知識量がないと、話が先に進まないため。 --なお一人称を「俺」から変更可能。 ---世間離れした彼に似合う一人称ということで、「拙僧」にしてプレイすることがネット上で流行したこともある。 --また、どんな小さな一歩でも、「''前に進むことは、それだけで素晴らしい''」と高らかに謳いあげるこのゲームにおいて、観察眼に秀でる反面、行動力には欠ける人物像は、主人公としてこれ以上ない理想的な造詣であり、一分の隙もないほどに洗練された『プリズマ』を象徴している。 -主人公のインパクトが強いものの、5人のヒロインも皆個性的でそれぞれ魅力がある。 --ちなみに説明書のキャラ紹介には端的に特徴として、「頭悪い」、「狂暴」、「ブラコン」、「不可解」、「天然ボケ」という容赦ない文言が添えられている。 -エンディングを見るまで何周、何十週もする必要があるゲームだが、ゲーム内で表示されるようにスキップ前提の構成であるため、スキップ機能は充実している。ロード時間もほとんどない。 --幾度とない周回プレイも、サクサクとスピード感をもってプレイできる。 -操作性に優れている。 --右手でも左手でも、片手操作も可能になっている。 -製作スタッフは三人と少人数。 --ファンの中で圧倒的に評価が高いのはシナリオ・プログラム・企画を担当した池田修一である。ファンは奇才イケシュウの帰りを首を長くして待ち続けている。 ---イケシュウ独特の衒学的テキスト。またゲーム中のシチュエーションコメディの評価が高い。 --舞台が高原らしいさわやかな音楽。中でも音楽ユニットWater Clockのオープニングテーマと、ラフイラストを使ったオープニングムービーの評価は高い。 --森藤卓弥の絵 ---着衣に浮遊感のある独特なイラストに加えて、シナリオ担当の池田修一のテキストと合わせて、フェチな魅力が強烈。 **問題点 -主人公にクセがある。 --主人公はあまり積極的な性格ではなく、また博覧強記で哲学用語や比喩暗喩を多用する。その独特の言い回しの大半は''自分を含めた周囲の観察や自己弁論に用いられる''ので、人によっては「殴りたい」などと言われることも。良い意味でも象徴的だった彼だが、悪い意味でも『プリズマ』を象徴している。 --ゲーム開始早々に放たれる「''グーで負けた。グーで負けるというのは、保守的なために敗北したかのような、苦い後悔が残るものだ。''」という主人公のモノローグは、主人公のキャラクター及びその視点で進むシナリオのテイストを端的に表す名(迷)言として、良くも悪くも語り草にされる。 -循環に関しての説明はほぼされない。また、エンディングもブツ切り感は否めない。 --現象の理由やその後の顛末の多くを説明しないこういった形式は、説明不足とも、想像の余地が大きいとも取れ、人を選ぶ要因と言える。 ---ただし、今作の主題は上記のとおり「行動することの尊さ」であり、循環はそのための舞台装置にすぎず、説明するのはむしろ野暮ったくもある。 ---エンディングも、行動することに肯定的になった主人公や悩みを解消し前へ進むヒロインたちなど、多くは語られないが主題に沿った成長はしっかり描かれている。 -ロード時間を削るために、人物グラフィックが画面に表示されている間にもスキップが継続している。 -上述のように一般的なアドベンチャーの感覚で遊ぶといつまでたってもクリアできないことはもとより、フラグが複雑に構成されているため、''システムを把握したうえでも相当な攻略難度を誇る''。 --にも関わらず、オーソドックスなADVとしてプッシュされた結果、阿鼻叫喚を呼ぶことに。 --「記録」をするか否かの選択肢が出ている際にメニューを開くことで一応ヒントを見ることができるが、説明書にも載っておらず気付きにくい。内容もざっくりしたもので、その意味するところも考える必要があり、攻略が劇的に容易になるものではない。 ---ある程度このゲームの仕組みを理解した人向けのものとも言え、無論のこと、よく分からない人に分かりやすい取っ掛かりを与えるものではない。 --攻略法をググって最短の手順をなぞろうとしても、既に適当に何周かした状態からだと手順の状態への戻し方がよく分からなくて最初の手順からやった方が楽なことも。 --午後からの雨降りはランダム発生。これも最短手順をそのままなぞろうとすると混乱しやすい要素。 ---周回の始まりに午後の天候が判定されるため、周回の終わりにセーブしておいて翌周の午後の天候が手順と異なればロードして天候調整することになる。 ---先述の通り「午後から雨」という「記録」により確実に雨天にできるが、記録時が雨でなくてはならず解放も自動的なので「ある周が雨だったとき、次の周も雨にする」という効果しかない。また「午後から晴れ」という「記録」は存在しないため、晴れてほしいときはランダム任せしかない。 **総評 -このゲームは独創的かつ挑戦的な意欲作である。 --一切の無駄を省いた洗練されたスタイルを持つため、いまだに唯一無二の傑作ゲームであるという熱狂的なファンも存在している。「名作」という評価でカテゴライズされてもおかしくないほど。それだけに外野のネガティブな騒動(後述)に巻き込まれてしまったのが惜しまれるタイトルとなっている。 -特にプレイヤーに試行錯誤を要求し、プレイヤー自身が脱出のために努力しないと絶対に循環を脱出できないゲームシステムは、「自ら踏み出すことができなければ、それは何も変わらない。」とのテーマをプレイヤー自身に体験させるという、極めてコンピュータゲーム的なストーリー表現となっている。 --体験させるという極めてゲーム的なストーリー表現を持つため、他の媒体のループ物と一線を画す独自性を誇る。 **余談 -タイトルが長いうえ覚え辛い為、『P17n(『Prismaticallization』のPとnの間が17文字)』『プリズマ』『ズマ』と省略した名前で呼ばれることが多い。 -ゲームアーカイブス版におけるCEROレーティングはA(全年齢対象)であるが、水着イベントが存在する。ゲーム内で見ることは容易いことではないが、動画サイトなどでも見ることができる。 -前年の『[[センチメンタルグラフティ]]』に似たキャラデザから「ニセンチ(偽センチ)」と言う蔑称も存在した。ただしゲームとしては全くの別物である。 --本作のキャラデザである森藤氏いわく「初めてその某ゲームのイラストを見た時に、自分の理想をやられてしまった! と大ショックを受けてしまったんです。そのショックがずっと残っていて」とのこと。 --ちなみに製作陣の中心人物である池田修一は次回作『微塵の月 "Particles of the Moon, or Prismaticallization speculative."』(退社によりボツ)を「外見は前作と同様に慣例化した形になる。」と語っているため、『プリズマ』でも意図的にギャルゲーとして「慣例化」した外見をとった可能性が高い。 ---森藤氏はステレオタイプを狙ってデザインしたとコメントしているが、池田氏個人としては慣例的なキャラ造形に批判的な立場を取っている。大好評だった本作の小学生キャラのスクール水着も、池田氏は猛反対していたとのこと。 -本作の制作スタッフには同アークシステムワークスの格闘ゲーム『[[GUILTY GEAR]]』シリーズの初代作に関わったメンバーも複数存在する。 --後述の射尾氏ももちろん関わっており、数々のデザイン業の他、プレイヤーキャラである「チップ=ザナフ」と最終ボス「ジャスティス」の全ボイスまで担当している((氏が声を担当したのは初代作のみ。石渡太輔氏をはじめ、他の社員も様々なキャラの声を担当している))。 -ネガティブな外野の騒動には事欠かない、不運なゲームとして有名である。 ''射尾卓弥大先生の舌禍騒動''~ このゲームが最もネガティブな意味で話題を集めたのは、キャラクターデザインの森藤卓弥(現:射尾卓弥)の舌禍騒動暴言の数々である。 -このゲームの発売後、キャラデザの森藤氏は前述の「ニセンチ」をはじめとした「水谷とおるのパクリ」批判を受ける。本人も攻略本インタビューで影響を受けたことを自ら語っており特にメインヒロインの澄香は(センチの沢渡ほのかを)手本にしてそっくりになり過ぎたと認めている事であるが、批判に対しては激しく反論。この時の発言が非常に問題となった。以下に列記。 --「素人が真剣にあーだこーだとうんちくをたれてるのを見てると…。なんだかなー(--;」 --「自分に出来ない事で、がたがたぬかすんじゃねーこのシロートが!って事ですね。」 --「あ、それとイラストだけだったら俺より上手い奴はゴマンといるけど、模型とイラストをココまで高次元で両立してる奴はそー居ないもんね♪ ザマー見ろって事です」 --「ギャル絵だけで食ってる人って将来の事何か考えてるのかなぁ???」 --ブログ禍のごとくネット各所でフルボッコになり、イラストレーター業界の人間にも批判される騒動に。ファンには"大先生語録"として(ネタ半分に)愛されている。 --もっとも製作者側も「黙っていればそのうち事件も風化される」と謝罪をせず、ギャルゲープレイヤー側も一時的に掲示版などで話題に出したが、約1カ月後に発売される『[[ときめきメモリアル2]]』の攻略・レビュー・考察が最優先事項であり余計な話題でその事に掛ける労力を使いたくないためそれ以上相手にしなかったことにより(両者の思惑が奇妙に合致して)音速でこの事件は風化した。 -ただし、大先生その人は、10年以上後になってもイラストレーター・メカモデラーとしてそれなりに活躍している通り、実力が伴っていないというわけではない。''伴っていても暴言は控えるべきだが。'' ''多根清史氏のデタラメ記事''~ 本作は一般書籍のクソゲー本「超クソゲー2」で、実際のゲーム内容と異なる誹謗中傷をされたことがある。 -記事中では“親密度”なる存在しない数値が捏造され、その独自解釈のままに「攻略本を見ても解けない」などとデタラメが記述されていた。担当ライターは多根清史氏。 //-「超クソゲー2」 //--“親密度”なる数値を捏造し、クソゲーとの烙印を押した。 //--また同記事には「攻略本を見ても解けない」など読むに耐えないデタラメが多い。 //--この同記事を担当したのはクソゲーライターの多根清史氏(詳しくは用語集へ)。 //多根清史氏の項目は現在執筆依頼にしか無いため、表記を変更。&bold(){} --実際は、手順を把握してしまえば攻略は容易く、情報が間違っていない限り攻略できないなどということはない。
*プリズマティカリゼーション(Prismaticallization) 【ぷりずまてぃかりぜーしょん】 |ジャンル|サークレイト・アドベンチャー|&amazon(B00006LJFK)|&amazon(B000069UQ6)&amazon(B00006LA0G)| |対応機種|プレイステーション&br()ドリームキャスト|~|~| |開発元|アークシステムワークス|~|~| |発売元|アークシステムワークス&br()サクセス(SuperLite1500版のみ)|~|~| |発売日|【PS】1999年10月28日&br()【DC】2000年8月24日|~|~| |価格|6,090円(税込)|~|~| |廉価版|【PS】(SuperLite1500シリーズ)&br;サクセス/2002年12月12日/1,500円(税別) |~|~| |配信|ゲームアーカイブス:2007年8月30日/600円|~|~| |判定|BGCOLOR(lightsteelblue):''スルメゲー''|~|~| |~|BGCOLOR(khaki):''ゲームバランスが不安定''|~|~| |ポイント|ループから抜け出すためにプレイヤーが模索する&br()特異なシステムに引きずられ難易度はかなり高い&br()聞きなれない哲学用語飛び交う衒学的なテキスト&br()ギャルゲー然としているが恋愛要素はないに等しい&br()独創性は評価される|~|~| //記載ルール変更に伴い余談に回った「キャラデザ担当の暴言」は、ポイントから外しました。 ---- #contents(fromhere) ---- **概要 「サークレイト(circulate: 循環する)・アドベンチャー」を名乗っており、フラグを使ったパズルという趣のゲームシステムに特化された、ユニークなアドベンチャーゲーム。&br() 主人公を含めほとんどの登場人物はループに気づいていないため、プレイヤーがフラグを模索しループを抜け出すために努力する形となる。&br() ギャルゲーっぽい見かけだが恋愛要素は薄く、そのシステムとテキストも相まって一般的なそれとは一線を画している。&br() その尖った内容から奇ゲーとして界隈では知られ、アークのオフィシャルサイトの作品紹介では「選択肢の存在しない特異なシステムとそれに連絡した珍奇なテキストが''多くの非難と僅かな賛辞を呼んだ。 ''」と説明されている。&br() **ストーリー > 夏の避暑地。~ 主人公の射場荘司は、「快適な環境で受験勉強を」という名目で、幼馴染の柊明美に避暑地のペンションに誘われ、連れてこられる。~ しかし、人生に目的を見つけられない荘司は、相変わらず無意味で怠惰な一日を過ごす。~ ペンションで出会い共に過ごす娘たちがそれぞれ内面に抱える苦しみにも、人との関わりを避ける荘司は気付かない。~ だがその夜、彼は奇妙なオブジェを手に入れたことで、ある不思議な感覚にとらわれることになる。~ ~ 繰り返される毎日。~ 常に付きまとう、退屈と倦怠。~ ~ 荘司たちは、「循環する世界」に巻き込まれていく。~ しかし自分からは何も変えられない。ただ、その場に流されるだけでしかない。~ 荘司たちは、循環から抜け出し「あした」を踏み出すことができるのか? ---- **特徴 -ループを抜け出すには、ヒロインそれぞれの「秘密」を知ることが重要となる。 -繰り返す一日の中で出現するフラグを取捨選択し次の繰り返された一日で「解放」することで話を進めていく。 -フラグの保存できる回数は制限されているため、総当たりなどは難しく、プレイヤーがフラグを模索しないとひたすらループ回数を重ねるだけとなってしまう。 --このゲームには、バッドエンドやゲームオーバーなどはなく、''エンディングにたどり着くまで延々とループが続く。''極論、100周でも200周でも。 --この点から、「ループ脱出シミュレーションゲーム」とも言える。 **ゲームシステム -循環する一日 --このゲームでは主人公と全ての登場人物が同じ一日を繰り返していく。&br''最初の1回目はおよそ30分間読むだけ''の進行となる。 ---設定を変えれば読み飛ばせるが、後々のヒントなどもあるため、最初は素直に読むことが推奨される。 --一日が終わると、画面は一旦タイトルに戻る。「継続行動」を選ぶとまた同じ一日が始まり、主人公の記憶も元に戻っていく。 -記録 --しかし2回目以降は、プレイヤーにもできることがある。&brその日に起こる出来事が時々「記録」できるようになるというもの。 ---「記録」は左上の半透明のオブジェに浮かぶ球体として表される。 ---ただし、この記録は同時に5つまでしか持つことができず、「記録」がいっぱいだとチャンスがあってもそれ以上記録できないので、チャンスのたびに取捨選択していくことも必要になってくる。 -解放 --次の回の特定の時点でその「記録」は自動的に「解放」される。&brその影響で同じ一日がすこしだけ変わり、前と違ったことが起こるようになる。&brまた、ある「記録」が解放された状態でないと起こらない出来事や記録できる内容も存在する。 ---プレイ中に何の変化もなかった場合、持っていた全ての「記録」が自動的に解放される。 -「記録」と「解放」の例 --ある一日において&color(red){川原の石を移動}し、その環境を「記録」する→別な一日の同時刻同地点で自動的に「開放」され&color(red){川原の石が移動}した事になっているので登場人物がコケるという変化が起きる。 --また&color(red){午後から雨}という環境を「記録」していたら次の周回で「開放」され&color(red){午後から雨}になる。雨が降っているので外出はとりやめになるなんてことも。 ---- **評価点 -ゲームシステムと不可分なストーリー表現。 --特に『プリズマ』の魅力を支える根幹が、「記録」。 ---「記録」に関してはプレイヤーに選択権があり「解放」は自動で行われる。プレイヤーは「記録」と「解放」の法則性を常に考えて進めていく必要があり、フラグを使ったパズルゲームと表現される最大の理由。 ---「記録」をジグソーパズルのピースと考え、ピースを正解の位置に当てはめると、各人の背景や隠れていた問題が浮かび上がってくると考えた方がわかりやすい。コマンド総当りやアイコンを全てクリックといった従来のアドベンチャーでできたような手法が使えないため、眺めるだけのプレイをしているといつまでもクリアできない。 --つまり「''自ら踏み出すことができなければ、それは何も変わらない。''」というゲームのテーマを、プレイヤー自らが“体験”することになる。 ---このようにテーマをプレイヤーに体験させているのが最大の魅力。『プリズマ』のファンはほぼ例外なく、この魅力の筆頭にあげる。悩みを抱え進むことを恐れていた登場人物たちが小さな一歩を自ら踏み出したエンディングで、涙が止まらなかったという人も。 --最短手順でも、1キャラあたりエンディングまで十数周かかり、特定の状況下で発生する特殊イベントなどもあるためボリュームは結構ある。 -一分の無駄もないテキストの完成度(主人公が良い) --作中は学術用語などが飛び交い、その内容から「衒学的」と言われるが、テーマと密接に結びついている。 ---ほとんどの登場人物は、最後まで循環に気がつかないままである。主人公“も”例外ではなく''循環のたびに記憶がリセットされてしまう''。以降の周回でそのたびに主人公の記憶がリセットされても、事実や真実に徐々に近づいていくことの出来る鋭い観察力と知識量がないと、話が先に進まないため。 --なお一人称を「俺」から変更可能。 ---世間離れした彼に似合う一人称ということで、「拙僧」にしてプレイすることがネット上で流行したこともある。 --また、どんな小さな一歩でも、「''前に進むことは、それだけで素晴らしい''」と高らかに謳いあげるこのゲームにおいて、観察眼に秀でる反面、行動力には欠ける人物像は、主人公としてこれ以上ない理想的な造詣であり、一分の隙もないほどに洗練された『プリズマ』を象徴している。 -ストーリー自体も、大仰な物語ではないが、ちょっとした伏線や示唆に富み構成は巧み。 --システム柄複雑に展開するが、破綻などもない。 -主人公のインパクトが強いものの、5人のヒロインも皆個性的でそれぞれ魅力がある。 --ちなみに説明書のキャラ紹介には端的に特徴として、「頭悪い」、「狂暴」、「ブラコン」、「不可解」、「天然ボケ」という容赦ない文言が添えられている。 -エンディングを見るまで何周、何十周もする必要があるゲームだが、ゲーム内で表示されるようにスキップ前提の構成であるため、スキップ機能は充実している。ロード時間もほとんどない。 --幾度とない周回プレイも、サクサクとスピード感をもってプレイできる。 -操作性に優れている。 --右手でも左手でも、片手操作も可能になっている。 -製作スタッフは三人と少人数。 --ファンの中で圧倒的に評価が高いのはシナリオ・プログラム・企画を担当した池田修一である。ファンは奇才イケシュウの帰りを首を長くして待ち続けている。 ---イケシュウ独特の衒学的テキスト。またゲーム中のシチュエーションコメディの評価が高い。 --舞台が高原らしいさわやかな音楽。中でも音楽ユニットWater Clockのオープニングテーマと、ラフイラストを使ったオープニングムービーの評価は高い。 --森藤卓弥の絵 ---着衣に浮遊感のある独特なイラストに加えて、シナリオ担当の池田修一のテキストと合わせて、フェチな魅力が強烈。 **賛否両論点 -主人公にクセがある。 --主人公はあまり積極的な性格ではなく、また博覧強記で哲学用語や比喩暗喩を多用する。その独特の言い回しの大半は''自分を含めた周囲の観察や自己弁論に用いられる''ので、人によっては「殴りたい」などと言われることも。良い意味でも象徴的だった彼だが、悪い意味でも『プリズマ』を象徴している。 --ゲーム開始早々に放たれる「''グーで負けた。グーで負けるというのは、保守的なために敗北したかのような、苦い後悔が残るものだ。''」という主人公のモノローグは、主人公のキャラクター及びその視点で進むシナリオのテイストを端的に表す名(迷)言として、良くも悪くも語り草にされる。 -循環に関しての説明はほぼされない。また、エンディングもブツ切り感は否めない。 --ただし、今作の主題は上記のとおり「行動することの尊さ」であり、循環はそのための舞台装置に過ぎない。エンディングも、行動することに肯定的になった主人公や悩みを解消し前へ進むヒロインたちなど、多くは語られないが主題に沿った成長はしっかり描かれている。 --その為、この現象の理由やその後の顛末の多くを説明しない形式を「想像の余地が大きく、説明は寧ろ野暮」「主題はしっかり描き切っている」と取るか「説明が無くては釈然としない」「消化不良」と取るかで評価が分かれ、人を選ぶと言える。 **問題点 -ロード時間を削るために、人物グラフィックが画面に表示されている間にもスキップが継続している。 -一般的なアドベンチャーの感覚でいるといつまでもクリアできないことはもとより、フラグ立てが複雑に構成されているのに対し、「ストックは5つまで」「解放は自動」などフラグ管理上の制約は大きいため、''ゲームの仕組みに慣れたうえでも相当な攻略難度を誇る。'' --にも拘らず、オーソドックスなアドベンチャーとしてプッシュされた結果、阿鼻叫喚を呼ぶことに。 ---「エンディングにたどり着けず投げた」「一人二人はなんとかクリアしたが全員はとても無理」と言った声は少なくない。 --「記録」をするか否かの選択肢が出ている際にメニューを開くことで一応ヒントを見ることができるが、説明書にも載っておらず気付きにくい。そしてその内容は、その「記録」が何に影響するかを示唆するもので、フラグをどう組めばいいかなど分かりやすい取っ掛かりを示すものではないため、攻略のためにはどの道プレイヤー自身がどのようにフラグを組めばいいかを一から考察・構築するしかない。 ---また、非常にざっくりしているため、具体的にどういう変化をもたらすのかなど、意味するところはストーリーや他のフラグと合わせて考える必要がある。判断材料を増強するため役に立たないなどということはないが、攻略が劇的に容易になるものでもない。 ---言ってしまえば、''根本的な救済措置は存在しない。'' --攻略法をググって最短の手順をなぞろうとしても、既に適当に何周かした状態からだと手順の状態への戻し方がよく分からなくて最初の手順からやった方が楽なことも。 --午後からの雨降りはランダム発生。これも最短手順をそのままなぞろうとすると混乱しやすい要素。 ---周回の始まりに午後の天候が判定されるため、周回の終わりにセーブしておいて翌周の午後の天候が手順と異なればロードして天候調整することになる。 ---先述の通り「午後から雨」という「記録」により確実に雨天にできるが、記録時が雨でなくてはならず解放も自動的なので「ある周が雨だったとき、次の周も雨にする」という効果しかない。また「午後から晴れ」という「記録」は存在しないため、晴れてほしいときはランダム任せしかない。 -キャラボイスは無い。 --「声が想像出来て…」という意見もあるだろうが、この時期のギャルゲーとして音声が一切無いのは寂しいものがある。 ---- **総評 このゲームは独創的かつ挑戦的な意欲作である。~ その独創性は癖の強さと難易度の高さに直結しているため、間口が広いとは言えず迷作と呼ばれることも多い。~ 一方で、一切の無駄を省いた洗練されたスタイルを持ち一度ハマるとその魅力は深いため、唯一無二の傑作であるという熱狂的なファンも存在する。~ プレイヤーに試行錯誤を要求し、プレイヤー自身が脱出のために努力しないと絶対に循環を脱出できないゲームシステムは、「自ら踏み出すことができなければ、それは何も変わらない。」というテーマをプレイヤー自身に体験させるという、極めてコンピュータゲーム的なストーリー表現に結びついている。~ この極めてゲーム的なストーリー表現により、ギャルゲーとして異色なだけでなく、ループものとしても他のソレとは一線を画す独自性を誇る作品となっている。 ---- **移植など -廉価版が[[SuperLite1500シリーズ]]の一作としてサクセスから発売されている。 -ゲームアーカイブス版におけるCEROレーティングはA(全年齢対象)であるが、水着イベントが存在する。ゲーム内で見ることは容易いことではないが、動画サイトなどでも見ることができる。 -DC版は微妙にテキストの追加などが行われている。ただし、DC版はプレミア化によりかなり高騰している。 ---- **余談 -タイトルが長いうえ覚え辛い為、『P17n(『Prismaticallization』のPとnの間が17文字)』『プリズマ』『ズマ』と省略した名前で呼ばれることが多い。 -前年の『[[センチメンタルグラフティ]]』に似たキャラデザから「ニセンチ(偽センチ)」と言う蔑称も存在した。ただしゲームとしては全くの別物である。 --本作のキャラデザである森藤氏いわく「初めてその某ゲームのイラストを見た時に、自分の理想をやられてしまった! と大ショックを受けてしまったんです。そのショックがずっと残っていて」とのこと。 --ちなみに製作陣の中心人物である池田修一は次回作『微塵の月 "Particles of the Moon, or Prismaticallization speculative."』(退社によりボツ)を「外見は前作と同様に慣例化した形になる。」と語っているため、『プリズマ』でも意図的にギャルゲーとして「慣例化」した外見をとった可能性が高い。 ---森藤氏はステレオタイプを狙ってデザインしたとコメントしているが、池田氏個人としては慣例的なキャラ造形に批判的な立場を取っている。大好評だった本作の小学生キャラのスクール水着も、池田氏は猛反対していたとのこと。 -本作の制作スタッフには同アークシステムワークスの格闘ゲーム『[[GUILTY GEAR]]』シリーズの初代作に関わったメンバーも複数存在する。 --後述の射尾氏ももちろん関わっており、数々のデザイン業の他、プレイヤーキャラである「チップ=ザナフ」と最終ボス「ジャスティス」の全ボイスまで担当している((氏が声を担当したのは初代作のみ。石渡太輔氏をはじめ、他の社員も様々なキャラの声を担当している))。 -発売から数十年経過しているが、本作のサントラは今現在かなり希少でありネットで検索してみてもほぼ見つからない。 --このサントラは発売からわずか2週間ほどで完売し、その後も再販についての問い合わせが相次いだ為、OPを再録した新たなサントラが発売された事もある。(こちらもかなり希少) -ネガティブな外野の騒動には事欠かない、不運なゲームとして有名である。 ''射尾卓弥大先生の舌禍騒動''~ このゲームが最もネガティブな意味で話題を集めたのは、キャラクターデザインの森藤卓弥(現:射尾卓弥)の舌禍騒動暴言の数々である。 -このゲームの発売後、キャラデザの森藤氏は前述の「ニセンチ」をはじめとした「水谷とおるのパクリ」批判を受ける。本人も攻略本インタビューで影響を受けたことを自ら語っており特にメインヒロインの澄香は(センチの沢渡ほのかを)手本にしてそっくりになり過ぎたと認めている事であるが、批判に対しては激しく反論。この時の発言が非常に問題となった。以下に列記。 --「素人が真剣にあーだこーだとうんちくをたれてるのを見てると…。なんだかなー(--;」 --「自分に出来ない事で、がたがたぬかすんじゃねーこのシロートが!って事ですね。」 --「あ、それとイラストだけだったら俺より上手い奴はゴマンといるけど、模型とイラストをココまで高次元で両立してる奴はそー居ないもんね♪ ザマー見ろって事です」 --「ギャル絵だけで食ってる人って将来の事何か考えてるのかなぁ???」 --ブログ禍のごとくネット各所でフルボッコになり、イラストレーター業界の人間にも批判される騒動に。ファンには"大先生語録"として(ネタ半分に)愛されている。 --もっとも製作者側も「黙っていればそのうち事件も風化される」と謝罪をせず、ギャルゲープレイヤー側も一時的に掲示版などで話題に出したが、約1カ月後に発売される『[[ときめきメモリアル2]]』の攻略・レビュー・考察が最優先事項であり余計な話題でその事に掛ける労力を使いたくないためそれ以上相手にしなかったことにより(両者の思惑が奇妙に合致して)音速でこの事件は風化した。 -ただし、大先生その人は、10年以上後になってもイラストレーター・メカモデラーとしてそれなりに活躍している通り、実力が伴っていないというわけではない。''伴っていても暴言は控えるべきだが。'' ''多根清史氏のデタラメ記事''~ 本作は一般書籍のクソゲー本「超クソゲー2」で、実際のゲーム内容と異なる誹謗中傷をされたことがある。 -記事中では“親密度”なる存在しない数値が捏造され、その独自解釈のままに「攻略本を見ても解けない」などとデタラメが記述されていた。担当ライターは多根清史氏。 //-「超クソゲー2」 //--“親密度”なる数値を捏造し、クソゲーとの烙印を押した。 //--また同記事には「攻略本を見ても解けない」など読むに耐えないデタラメが多い。 //--この同記事を担当したのはクソゲーライターの多根清史氏(詳しくは用語集へ)。 //多根清史氏の項目は現在執筆依頼にしか無いため、表記を変更。 --実際は、手順を把握してしまえば攻略は容易く、情報が間違っていない限り攻略できないなどということはない。

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