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*ARMORED CORE 3 SILENT LINE 【あーまーどこあすりー さいれんとらいん】 |ジャンル|3D戦闘メカアクション|&amazon(B00007F1L6)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売・開発元|フロム・ソフトウェア|~| |発売日|2003年1月23日|~| |定価|7,190円|~| |廉価版|PlayStation2 the Best&br()2004年2月26日/3,150円|~| |分類|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| //|ポイント|二丁拳銃の台頭&br()水増し武器&br()前作からの正当進化|~| |>|>|CENTER:BGCOLOR(#fed):''[[アーマード・コア シリーズ 作品リンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/307.html]]''| //元ガッカリゲー判定から仕分けにてカタログ移転し、移転議論スレを経由して良作へ。 ---- #contents(fromhere) ---- **ストーリー 地下シェルター都市「レイヤード」を統治していた『管理者』が破壊され、封印されていた地上への扉が開いてから数年。~ 人類は各企業の提唱する「Brigade Project」(地上開発プロジェクト)によって新しい世界の発見を急ぐとともに、地上の開発計画を行っていた。~ しかし地上に住む場所を移そうとも、人々、そして企業のやることは変わらない。企業は地上勢力の拡大に腐心し、日夜敵対企業との勢力争いに明け暮れていた。 やがて地上の開発はほとんど終了し、企業は今や限られた未踏破地区――「サイレントライン」へその食指を伸ばす。~ 大災害以前の新技術や資源を求め、激化する抗争。だがその中で、サイレントラインの調査部隊が次々と消息を絶ち、更に人類勢力を攻撃する謎の第三勢力が現れる。~ 機動兵器「アーマード・コア(AC)」を駆る傭兵・レイヴンである主人公は、サイレントラインを巡る大きな戦いの渦へと身を投じていく。 ---- **概要 『アーマード・コア』シリーズ第7作。前作『3』の直接の続編であり、世界観や設定が引き継がれている。~ 前作『3』は対戦ツールとしての出来はお世辞にもいいとは言えなかったが、一方で『初代』をリスペクトしたゲーム内容や設定、ほどほどの難易度をはじめとする各要素で人気を博し、現在でも「AC入門作」に推奨される名作となった。~ 本作『サイレントライン(以下、SL)』は『3』の良さは(ほぼ)そのままにブラッシュアップを図り、やはり一定の評価を得るに至った。より重苦しくなったストーリー、音楽は今なお高い評価を受けている。~ キャッチコピーは''「それは、侵してはならない「領域」―。」'' &br()&br() ---- **特徴 主なゲームの特徴や内容は、今までのACシリーズとほとんど変わらない。ここでは本作から追加された新要素や、大きく変わった点を紹介していく。 -''AI機体'' --本作の見所のひとつ。プレイヤーは「AIの操縦するAC」をアセンブルし、そのACをアリーナで使用することによってAIに経験を積ませることができる。AIは経験を積ませることで成長し、特定の場面で僚機として同行させたり、対戦相手として戦うことができる。AIは素直ではなく、自分の思った通りの行動や癖を仕込むには根気が必要。 --『マスターオブアリーナ』のAIアリーナの流れを少し組んだこのAI育成要素は、後にAI育成を主眼においた外伝作品『[[フォーミュラフロント>アーマード・コア フォーミュラフロント]]』に引き継がれることとなる。 -''武器破壊'' --今作の武器には耐久度が設定されており、武器はダメージの蓄積で破壊される。はっきり言って不評(詳細後述)で一度廃れるが、後に『[[ラストレイヴン>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/299.html]]』にて「部位破壊」という発展システムとなって復活する。 -''パーツの大幅増加'' --前作からパーツ数が大幅増加。OPにも登場した「実体盾」や「追加ブースター」など、武装カテゴリも増えた。 --特に前作で登場した「左腕専用の銃」がさらに発展し、右腕とほぼ同性能の銃が左腕にも追加された。 -''その他'' --ACの塗装パターンに無印シリーズ以来の「迷彩」が復活。 --コックピット視点がデフォルトで選べるように。 --今作から、ACのカメラアイ部分が発光するようになった。 --新BGM追加。特にアリーナではこれまで選択ステージ毎に固定だったBGMがランダムになり曲数も大幅増加。 ---- **評価点 ''変わりない一人プレイの面白さ'' -1人プレイの評価が高かった『3』の後継作である本作も、やはり1人プレイの評価は高め。 --新天地を求めながら争い続ける人類と、それを阻む謎の力の恐怖を押し出した作風は人気が高い。前作の設定を引き継ぎ、明暗が分かれつつある三大企業の動向や、彼らに接触する謎のAI研究所の謎めいた存在が物語に深みを出す。「管理者」が居なくなったことで傭兵派遣会社の勢力が強まっているような描写も細かい。 --「ゲーム自体ではあまり深くは語らず、レイヴンに思考の余地を与える」というフロム節は顕在。「宇宙要塞」「特徴的な頭部の特殊AC」「自動で開くシャッター」など、『初代』『PP』『MoA』のオマージュともとれる描写もあり、設定好きのレイヴン達による考察も盛ん。 --演出、そして音楽も高品質を保っている。 ---ミッションは数こそ減ったものの相変わらず多彩で、ステージの背景描写も細かくなった。「凄まじい強さ(しかし対策も立てやすい)の特殊ACと対決」「軌道上からのレーザー照射をかわす」「要塞内部のトラップを掻い潜りながら最深部を目指す」「(台詞のみだが)複数のレイヴンで要塞を攻略」といった、ファンの間で語り継がれる「名物ミッション」も多い。 ---重厚な音楽の評価はシリーズ中でも高く、現在絶版のサウンドトラックは高額で取引されている。 --「僚機システム」は登場キャラクターの個性が強いこともあってよりゲームを面白くしている。 //3から変化が無いのにどう洗練されたか説明が無い。 ---折笠富美子、家弓家正、勝生真沙子など、シリーズの恒例として主演声優も%%無駄に%%豪華。 ---敵メカも全体的に強化されており、こちらも個性豊かな面子が揃っている。上級MTのカイノス、ブーバロス、高機動飛行メカのトラーゲンはルックスもイケメンでファン(そして余りの鬱陶しさに切れそうになったレイヴン)多し。 ''高品質のアリーナ'' -敵のロジックが練りこまれており、対戦していて非常に楽しい敵が多い。 --非強化機体でプレイヤーを翻弄するフォグシャドウや、奇っ怪な動きと凄まじいAIM技術でプレイヤーを苦しめるコープスペッカーはシリーズ1、2を争う強敵として有名。 ---ちなみに今までアリーナ上位(大体10位くらいから)のランカーは全て強化人間であり、その特性(ほぼ全ての面においてACが強化される)に頼ったゴリ押しか地形に挟まったりする駄目ロジックかの二択だった。フォグシャドウは上位ランカーでありながら真人間、つまりプレイヤーと全く同じ条件にもかかわらず超が付くほど強いため、リプレイで相手側視点を見るだけでもかなり参考になる。 --前作よりもランカーの数自体は減ってしまったものの、その分個性的なキャラクターが増えている。量より質をとったとも言える。 ''パーツ・対戦バランスの向上'' -前作からパーツパラメータの修正が行われた。特に四脚の消費エネルギーの軽減、逆関節の軽量化などは良好な調整であるとの声が大きい。これら問題を抱えていた脚部はミッションでもかなり使いやすくなっており、各パーツの特徴の個性化も進められている。 --オーバードブーストを利用した高速戦闘が流行。ゲームスピードが全体的に上昇し、めまぐるしい高速戦闘が戦いの主体となった。 --増加したパーツをいかに使うかという試行錯誤も楽しめる。追加フレームパーツはビジュアル的に優れたものも多く、より個性的な機体を組めるようになった。 ---小型ミサイルを三発同時発射するトリプルミサイル、当たり判定は小さいもののかの「月光」を超える威力の短射程ブレード、形状が特徴的な「指マシンガン」など、過去のシリーズで登場した武器のリメイク的な存在も多数追加されている。 -その他、AI育成の要素も好評。 --難解ではあるものの、強制するものではないためプレイを阻害しない。試行錯誤の過程がおもしろいと言うプレイヤーも多い。 ---- **問題点 -''パーツ関連'' --追加武器パーツには既存武器の色違いが多い。その大半が「弾数増・重量増」「軽量化してスペックダウン」などの簡単な調整で済まされており、真の意味で差別化された武器が少ない。新武装に前作の「定番パーツ」ほどの有用性を見いだせるものが少ないのも悲しい。 --スペック差によるパーツ幅が広がった反面、使えない・出番のないパーツも相対的に増加している((「『SL』では産廃が増えた」と言われることもあるが、実のところ割合で考えると歴作と変わりがない。分母が拡大したために数が多く映ってしまうのだ。))。 --新カテゴリの、1トリガーで複数弾を連射する「アサルト武器」の仕様に欠陥がある。連射の初弾は相手を狙って飛んでいくのだが、その後の弾は初弾の軌道をそのままトレースして飛んでいくので、動く目標にはほぼ100%当たらない。左腕用のアサルト武器は全弾に補正がかかるのにどうして右手だけ…? ---ちなみに全ミッションSランク達成時の報酬は「6連アサルトハンドガン」(総弾数108発。ついた渾名が『煩悩ハンド』)というシリーズ屈指の産廃。苦行を乗り越えたレイヴン達を「俺達の苦労は何だったんだ」と絶望させた。 --空中でブレードを振った際に相手を追尾する機能「ブレードホーミング」が弱体化した。敵機の未来位置を過剰に参照するため「斬りに行ったのに何故かバックした」という事まで起こるように。 --本作では全ミッションに何かしらの隠しパーツが存在するが、それらの入手法は全てノーヒント。中々気付かない条件のパーツも多い。 ---これまでの作品でもヒントはなかったが、これほどまでに隠しパーツが多い本作では流石に不親切と言われても仕方がない。他にも「カスタマイズメカアクション」である建前上、全てのパーツをそろえてからが本番という部分があるため、(それがたとえ誰も使わない産廃であっても)その根底となるパーツの取得が困難であることはあまり好ましくない」という意見もある。 ---また、隠しパーツ入手時に表示される確認メッセージが一度きりしか表示されないため((一部の隠しパーツはメール画面にて確認することができる。))、うっかり読み飛ばしてしまうとどのパーツを入手したのかすらわからなくなってしまいやすい。 -''武器破壊'' --単純に攻撃を当てれば当てるほど武器破壊の確率が高まるので、結局は''負けている側がより不利になる''という、逆転の芽を摘むだけのシステムでしかない。 ---せめて、狙って特定の武器を破壊することができれば逆転要素として成立したかもしれないが、そんなことはできない。武器の耐久値や破壊性能は隠しパラメータとなっており、ゲーム中ではわからないのも辛い。 --対戦ではon/offが切り替えられ、ミッション中ではこれを意識する局面がほとんどない(殆ど壊されない)。このため、幸か不幸かそれほど深刻な問題にはならなかった。 --一人プレイのアリーナでも特定の組み合わせか、意図的に武器破壊力の高いものを使用しない限り中々お目にかかれない((禁止武器の有力候補の一つである強力なマシンガン・通称「800マシ」は非常に壊され易い性質があり、アリーナでもしばしば破壊される。ある意味バランスが取れていると言えなくも無い。))。 -''ミッション関連'' --前作から導入されたランク査定は顕在。しかも不親切な査定基準も相変わらずのまま。ミッションの全体的な難度増加から査定のウザさは3以上。統一された基準を設けるか、せめてわかりやすくしてほしかったところ。前述した通り、今回はSランク取得が隠しパーツの入手条件になっているため余計にたちが悪い。 --扉を開けると画面が強制的に切り替わり勝手に部屋内へ移動する、各企業に大打撃を与えているはずの衛星砲がミッションではプレイヤーのみを狙うなど、不自然なトラップも幾つかみられる。 ---- **対戦環境について -広い目で見るとパーツバランス、引いては対戦バランス自体は改善された。大会で使用禁止が推奨されるパーツも他作品と比べると少ない。特に前述の通り、脚部は無印からの調整の甲斐あってかなり選択肢は広まっている。 --フレームの中でもコアは非常に高性能な「MCM-MI/008」の一択状況となってしまっているが、この高性能なOBのおかげでようやく「攻め」が成立しているという事情もあり、一概に問題点と言い切るのは難しい。前作『3』が対戦の際にあまり選ばれないのは、「待ち」が強すぎて面白味に欠けるという背景もある。 //--ただし、大会レベルのフレームパーツの組み合わせ、つまり「ガチ対戦用に煮詰めたアセンブル」となるとかなり絞られてくる面がある。特にコアパーツ「MCM-MI/008」の性能は他のそれを引き離しており、必然的に頭部以下の他フレームパーツもこれと相性の良いモノを選ぶことになる。 --ジェネレータパーツに関しては他シリーズ同様に一択の状況だが、その他の内装パーツは選択の幅が広い部類に入る。後のシリーズのように選択肢が多いように見えて組み合わせが限定されるような事もない。例としてはラジエータは基本となる重量か消費Eのどちらを取るかの二択に加え、軽量追及や冷却特化タイプも余程のガチ対戦でない限り選択肢に入る。 -それまでブレードと同じく補助武装としての存在だった左腕銃に、主力たる右腕銃クラスの製品が大量追加されたこと、そして前述したブレードホーミングの下方修正によって、対戦シーンはほぼ完全に「二丁拳銃(ダブルトリガー)」の機体で占められることとなった。 --射撃機が中距離で安定したダメージを与えられるようになったことで、ブレードを扱う際の絶対条件である「斬撃のレンジまで詰め寄る」という行為に大きなリスクが伴うことになったのである。ブレードの射程においても、より扱いやすく高火力なマシンガンとショットガンの二丁持ち「マシショ」が流行した。 ---この革命の影響・余波は大きく、ブレード愛好家、そしてダブルトリガースタイルに適応できなかったレイヴン達は苦難の時代を迎えることとなる。4年後の『4』までブレードの冬の時代は続く。 ---一応、ブレード自体がそこまで弱体化されたわけではないので、ミッション・アリーナ等の一人プレイなら実用範囲ではある。ただ、本作は使用中の武器のロックオンサイトに左手の武器が左右される為、例えば「広域なサイトを持つライフル+左手に本来ならサイトの狭いスナイパーライフル」といった組み合わせが一人プレイでもかなり強力で、どうしても趣味の域を出なくなってしまった。 -とにもかくにも、ブレードが弱体化したこと以外に大きな問題点はなく、(コアの一択化という前提を踏まえればの話ではあるが)バランス自体は比較的良好なので、対戦会も多く開かれた作品となった。……それだけに通信対戦時に2P側にラグが発生する現象(画面分割対戦では前作同様、発生しない)が引き継がれている点が惜しい。 ---- **総評 シリーズ通してのファンからはシリーズの対戦シーンを大きく変えた作品として認知されている。~ 特に、新要素の左腕銃の台頭を受け入れられたファン、受け入れられなかったファンとの間で評価が分かれやすい。~ //特にPS時代からの「一発屋・ロマン」の象徴であったブレードの凋落に落胆したファン(更に言えば対戦重視の層)と、『2』『3』以降にシリーズを知り、そこまでブレードに拘らないファン(または一人プレイ・作品の完成度を重視する層)との間で評価が分かれやすい。~ とはいえ、単体のアクションゲームとしてみれば一定以上の品質を有していることは紛れもない事実。「問題点」の項で挙げた難点も実際のプレイには支障を出さないものが大半で(ミッションの不親切なトラップも数自体は多くない)、比較的後期にシリーズを遊び始めた層からは安定した評価を受けている。~ 難易度はシリーズの中でも高い方であるため、''ある程度修練を積んだレイヴン向けの作品''であるといえる。入門用として前作『3』を遊び、データを引き継いで本作をプレイすることをお勧めする。 **移植 後にPSPに移植された。[[こちら>http://www23.atwiki.jp/ksgmatome/pages/428.html]]を参照のこと。 **余談 -ACシリーズのオープニングムービーに登場する機体はビジュアルを重視した実用性皆無の構築であることが一般的。~ ……が、本作のOP機はそれがさらに際立ち、軽量二脚に重すぎる武器を搭載しまくった(ゲーム中では)まともに動けない機体に仕上がっている。 -本作のサウンドトラックは、発売元のデジキューブが倒産したこともあって再販が絶望視されている。~ サントラの仕様は中々変わっていて、A4サイズの冊子である「ビジュアルガイド」にCDがくっ付いている。現在は中古市場でプレミア価格がつく希少品となっている。 -ミッションの内容やボリュームがちょうどよいのか、ゲーム内容の研究が進んでいるタイトルでもある。バグを利用した攻略法が見出されたり、射突型ブレードを極めたりと言ったやり込みも多い。他にもACシリーズでは珍しくTAS動画が制作され、ニコニコ動画にて公開されている。 ----
#contents() ---- *ARMORED CORE 3 SILENT LINE 【あーまーどこあすりー さいれんとらいん】 |ジャンル|3D戦闘メカアクション|CENTER:&amazon(B00007F1L6)[[裏を見る>https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51P3F47APML._SY445_.jpg]]| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売・開発元|フロム・ソフトウェア|~| |発売日|2003年1月23日|~| |定価|7,190円|~| |廉価版|PlayStation2 the Best&br()2004年2月26日/3,150円|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|二丁拳銃の台頭&br()水増し武器&br()前作からの正当進化|~| |>|>|CENTER:BGCOLOR(#fed):''[[アーマード・コアシリーズ]]''| //元ガッカリゲー判定から仕分けにてカタログ移転し、移転議論スレを経由して良作へ。 ---- **ストーリー >地下シェルター都市「レイヤード」を統治していた『管理者』が破壊され、封印されていた地上への扉が開いてから数年。~ 人類は各企業の提唱する「Brigade Project」(地上開発プロジェクト)によって新しい世界の発見を急ぐとともに、地上の開発計画を行っていた。~ しかし地上に住む場所を移そうとも、人々、そして企業のやることは変わらない。企業は地上勢力の拡大に腐心し、日夜敵対企業との勢力争いに明け暮れていた。~ ~ やがて地上の開発はほとんど終了し、企業は今や限られた未踏破地区――「サイレントライン」へその触手を伸ばす。~ 大災害以前の新技術や資源を求め、激化する抗争。だがその中で、サイレントラインの調査部隊が次々と消息を絶ち、更に人類勢力を攻撃する謎の第三勢力が現れる。~ 機動兵器「アーマード・コア(AC)」を駆る傭兵・レイヴンである主人公は、サイレントラインを巡る大きな戦いの渦へと身を投じていく。 ---- **概要 『アーマード・コア』シリーズ第7作。前作『3』の直接の続編であり、世界観や設定が引き継がれている。~ 前作『3』は対戦ツールとしての出来はお世辞にもいいとは言えなかったが、一方で『初代』をリスペクトしたゲーム内容や設定、ほどほどの難易度をはじめとする各要素で人気を博し、現在でも「AC入門作」に推奨される名作となった。~ 本作『サイレントライン(以下、SL)』は『3』の良さは(ほぼ)そのままにブラッシュアップを図り、やはり一定の評価を得るに至った。より重苦しくなったストーリー、音楽は今なお高い評価を受けている。~ キャッチコピーは''「それは、侵してはならない「領域」―。」'' &br()&br() ---- **特徴 主なゲームの特徴や内容は、今までのACシリーズとほとんど変わらない。ここでは本作から追加された新要素や、大きく変わった点を紹介していく。 -''AI機体'' --本作の見所のひとつ。プレイヤーは「AIの操縦するAC」をアセンブルし、そのACをアリーナで使用することによってAIに経験を積ませることができる。AIは経験を積ませることで成長し、特定の場面で僚機として同行させたり、対戦相手として戦うことができる。AIは素直ではなく、自分の思った通りの行動や癖を仕込むには根気が必要。 --『マスターオブアリーナ』のAIアリーナの流れを少し組んだこのAI育成要素は、後にAI育成を主眼においた外伝作品『[[フォーミュラフロント>アーマード・コア フォーミュラフロント]]』に引き継がれることとなる。 -''武器破壊'' --今作の武器には耐久度が設定されており、武器はダメージの蓄積で破壊される。はっきり言って不評(詳細後述)で一度廃れるが、後に『[[ラストレイヴン>アーマード・コア ラストレイヴン]]』にて「部位破壊」という発展システムとなって復活する。 -''パーツの大幅増加'' --前作からパーツ数が大幅増加。OPにも登場した「実体盾」や「追加ブースター」など、武装カテゴリも増えた。 --特に前作で登場した「左腕専用の銃」がさらに発展し、右腕とほぼ同性能の銃が左腕にも追加された。 -''その他'' --ACの塗装パターンに無印シリーズ以来の「迷彩」が復活。 --コックピット視点がデフォルトで選べるように。 --今作から、ACのカメラアイ部分が発光するようになった。 --新BGM追加。特にアリーナではこれまで選択ステージ毎に固定だったBGMがランダムになり曲数も大幅増加。 ---- **評価点 ''変わりない一人プレイの面白さ'' -1人プレイの評価が高かった『3』の後継作である本作も、やはり1人プレイの評価は高め。 --新天地を求めながら争い続ける人類と、それを阻む謎の力の恐怖を押し出した作風は人気が高い。前作の設定を引き継ぎ、明暗が分かれつつある三大企業の動向や、彼らに接触する謎のAI研究所の謎めいた存在が物語に深みを出す。「管理者」が失われたことで傭兵派遣会社の勢力が強まっているような描写も細かい。 --「ゲーム自体ではあまり深くは語らず、レイヴンに思考の余地を与える」というフロム節は顕在。「宇宙要塞」「特徴的な頭部の特殊AC」「自動で開くシャッター」など、『初代』『PP』『MoA』のオマージュともとれる描写もあり、設定好きのレイヴン達による考察も盛ん。 --演出、そして音楽も高品質を保っている。 ---ミッションは数こそ減ったものの相変わらず多彩で、ステージの背景描写も細かくなった。「凄まじい強さ(しかし対策も立てやすい)の特殊ACと対決」「軌道上からのレーザー照射をかわす」「要塞内部のトラップを掻い潜りながら最深部を目指す」「(台詞のみだが)複数のレイヴンで要塞を攻略」といった、ファンの間で語り継がれる「名物ミッション」も多い。 ---重厚な音楽の評価はシリーズ中でも高く、現在絶版のサウンドトラックは高額で取引されている。 --3から引き続き、「僚機システム」は登場キャラクターの個性が強いこともあってよりゲームを面白くしている。 ---折笠富美子氏、家弓家正氏、勝生真沙子氏など、シリーズの恒例として主演声優も%%無駄に%%豪華。 ---敵メカも全体的に強化されており、こちらも個性豊かな面子が揃っている。上級MTの「カイノス/E02」や「ブーバロス」、高機動飛行メカの「トラーゲン」はルックスもイケメンで、ファン(そして余りの鬱陶しさにブチキレたレイヴン)多し。また、浮遊型ガードメカ「リトルラプター」の恐怖は語り草となっている。 ''高品質のアリーナ'' -敵のロジックが大幅に進化。従来の、そして後発の作品と比べてもかなりの質で、対戦していて非常に楽しい相手が多い。 --使い切った武器のパージを行ったり、ミサイルを効率的に迎撃する動きなど、プレイヤーの参考になる行動も多々実装された。 --軽量二脚のスピードをフルに活かしてプレイヤーを翻弄するフォグシャドウや、アリーナの紹介文通りの凄まじい射撃精度と機動性を併せ持つコープスペッカーは、多くのレイヴンから「シリーズ随一の強豪」と評されるほど。 --トップランカーのメビウスリングも武装の中途半端さのせいで強さはパッとしないが、リプレイの敵機視点で動きを観察してみると実は神がかった精度のエネルギー・熱量管理で的確にオーバードブーストを使っていることがわかるほか、ダブルトリガーで戦っていると気づきにくいがブレードの攻撃精度は非常に高い。今までの「強化人間((ACシリーズ恒例の『公式チート』。キャノン系武器の使用制限解除、エネルギー効率強化などの恩恵が受けられる。今作では『3』から引き続き、専用オプションパーツ「OP-INTENSIFY」を装備することで強化人間の恩恵を得ることができる。))の恩恵で頭上を取って火力をぶつける」というトップランカーの定番戦法から脱却した美しい動きは必見。 ---ちなみに前作までは、上位ランカーは強化人間なのが当たり前で、プレイヤーには絶対にできないオプショナルパーツを超過装備なども多く、加えて戦法も前述したような「強化人間の恩恵や重量過多ペナルティを無視したACの力に頼ったゴリ押し一辺倒」というものがほとんどであった。だが、フォグシャドウは上位ランカーでありながら真人間かつオプショナルパーツも基準内、''つまりプレイヤーと全く同じ条件''にもかかわらず超が付くほど強いため、リプレイで相手側視点を見るだけでもかなり参考になる。ミッションやメールでの対応も相まって人気も高い。 --前作よりもランカーの数自体は減ってしまったものの、その分個性的なキャラクターが増えている。量より質をとったとも言える。 ---ロジックも個性的で、「距離を離すとミサイルを垂れ流し、近づくとキャノンで猛攻を仕掛けるタンク」、「ENパックを利用してひたすら地上ブーストを行いキャノンを連射する四脚」など武装の特性を活用して行動するものが多い。「高機動を生かして射突型ブレードを当てようとするフロート」といったユニークなランカーも存在する。 ''パーツ・対戦バランスの向上'' -前作からパーツパラメータの修正が行われた。特に四脚の消費エネルギーの軽減、逆関節の軽量化など良好な調整も多く、3で問題を抱えていた脚部はガチ対戦はともかくミッションでも十分使っていける水準になっている。個性化・差別化されたパーツも多い。 --オーバードブーストを利用した高速戦闘が流行。ゲームスピードが全体的に上昇し、めまぐるしい高速戦闘が戦いの主体となった。 --増加したパーツをいかに使うかという試行錯誤も楽しめる。追加フレームパーツはビジュアル的に優れたものも多く、より個性的な機体を組めるようになった。 ---小型ミサイルを三発同時発射するトリプルミサイル、当たり判定は小さいもののかの「月光」を超える威力の短射程ブレード、形状が特徴的な「指マシンガン」など、過去のシリーズで登場した武器のリメイク的な存在も多数追加されている。 --一瞬でコンデンサのエネルギーを使い尽くしていたエネルギー追加装甲のバグが修正された。 -その他、AI育成の要素も好評。 --難解ではあるものの、強制するものではないためプレイを阻害しない。試行錯誤の過程がおもしろいと言うプレイヤーも多い。 ---- **問題点 -''パーツ関連'' --追加武器パーツには既存武器の色違いが多い。その大半は「弾数増・重量増」「軽量化してスペックダウン」などの設定がされているが、バランス調整が今一つ甘く、有用性を見いだせるものが少ない。結果として使えない・出番のないパーツが大幅に増加している(割合では歴作と大差ないが、分母が拡大したために弱パーツの絶対数も多い)。 ---色違いの互換パーツについては、重量増加に加えて連射力の低下、弾数減少に加えて攻撃力低下など、何故か元のパーツより性能低下しているものが大半。軽量化パーツなどは弾数を犠牲にしている時点で釣り合いが取れているはずである。 ---それ以外のパーツでも、新規追加された「アサルト武器」は1トリガーで複数弾を連射するのだが、右腕用のものは2発目以降も初弾と同じ位置を狙うので、動く目標にほぼ当たらない。また、不自然に狙いを固定するため、射撃中だけ腕部が有り得ない曲がり方をしたりする。左腕・背部のアサルト武器は全弾が目標を捉え直すのに、どうして右腕だけ…? ---ちなみに全ミッションSランク達成時の報酬は、「''右腕用6連アサルト''ハンドガン((装弾数108発にちなんだ渾名は『煩悩ハンド』。1発の攻撃力・熱量が低く、先述のバグを踏まえると装弾数は正味18発でリロードも激遅。さらに重量大きめ・短射程・SPサイトなので取り回しが悪い。もはやテストプレイをしたのか疑うほどのシロモノである。))」というシリーズ屈指の産廃。苦行を乗り越えたレイヴン達を「俺達の苦労は何だったんだ」と絶望させた。 ---「エネルギー系スナイパーライフル」が相手の未来位置を参照しない。武器腕のマシンガンも前作から引き続き存在するにもかかわらずこの仕様で修正されていない。このためこれらの武器は単純に移動中の敵には当たらない産廃となっている。このエネルギー系スナイパーライフルに至っては弾速だけなら全武器中トップクラスであり、なおこの高弾速を全く生かせていない。 ---エクステンションも様々なものが追加されたが、こちらも使い道に悩むものが少なくない。ミサイルジャマーはまだしも、緊急冷却装置やシステムエラー短縮装置などはあえて装備枠を割くだけの魅力がなく、存在自体忘れられる事もしばしば。 --一方で同じ新登場でも強パーツはとことん強い。 ---代表格がマシンガン「MWG-MG/800(通称800マシ)」で、重量・命中率・ロックオンサイト・総火力・瞬間火力のすべてにおいて優秀、という壊れた性能を持っている。そのため、対戦ではまず禁止武器となることが多い。歴代で見ても、PPで登場の5発同時発射マシンガン(通称指マシ)ほどではないにしろ、2の高火力レーザーライフル(通称カラサワ)と並んで指マシに次ぐ強武器との声が名高い。 ---また横長型FCS「PLS-SRA02」は長射程・広サイトでありながら精度・ロック速度・ミサイルロック数のすべてで水準を満たしており、対戦ではほぼ一択。辛うじて広域型FCSも候補にはなるが((目視で相手の移動先に置くように射撃する「ロケ撃ち」をするために、特に弾速の遅いグレネードなどを愛用するプレイヤーはあえてロック距離の長いFCSを避ける場合がある。))それ以外はミサイル特化FCSを除きほとんどのパーツの上位互換状態。 --本作では全ミッションに何かしらの隠しパーツが存在するが、それらの入手法は全てノーヒント。理不尽なほどに解りづらい・難しい条件のパーツも多い。 ---これまでの作品でもヒントはなかったが、大量に隠しパーツが存在する本作では流石に不親切と言われても仕方ない。また「カスタマイズメカアクション」である建前上、全てのパーツをそろえてからが本番という部分があるため、(それがたとえ誰も使わない産廃であっても)その根底となるパーツの取得が困難であることはあまり好ましくない…という意見もある。 ---また、隠しパーツ入手時に表示される確認メッセージが一度きりしか表示されないため((一部の隠しパーツはメール画面にて確認することができる。))、うっかり読み飛ばしてしまうとどのパーツを入手したのかすらわからなくなってしまいやすい。更にミッション終了後に入手通知されるパーツは入手できた理由や条件も分からない。 --空中でブレードを振った際に相手を追尾する機能「ブレードホーミング」が弱体化した。敵機の未来位置を過剰に参照するため「斬りに行ったのに何故かバックした」という事まで起こるように。 -''武器破壊'' --単純に攻撃を当てれば当てるほど武器破壊の確率が高まるので、結局は''負けている側がより不利になる''という、逆転の芽を摘むだけのシステムでしかない。 --せめて、狙って特定の武器を破壊することができれば逆転要素として成立したかもしれないが、そんなことはできない。武器の耐久値や破壊性能は隠しパラメータとなっており、ゲーム中ではわからないのも辛い。そのうえ武器に被弾した際もAPはしっかり減る。 --折角の新しいシステムだが、対戦ではon/offが切り替えられるため殆ど使われる事はなかった。 ---余談だが、マシンガンなどは破壊されやすい性質があり、仕様が練り込まれていれば一部の強力パーツのバランス調整に成り得たかも知れない。 -''ミッション関連'' --一概に問題点とは言えないが、全体的にミッションの難易度のクセが強め。 ---それぞれのミッションに適したパーツやアセンブリがあるのはシリーズ通してお約束だが、今作では強力な敵MTが増加し、特殊状況下のミッションや長丁場のミッションなどが多めに設定されている為、対策の有無で理不尽なまでに難易度が上下する。これまでのシリーズのように汎用的な構成だけで攻略する事は難しく、言い換えればパズル的。 ---加えて全体的に硬い敵や移動速度の速い敵との遭遇シーンが増えており、より一層パーツの特性を把握しなければならない。本作が経験者向けと謂われる所以といえる。 --前作から導入されたクリアランクは顕在で、不明瞭・不親切な査定基準も相変わらず。ミッションの全体的な難易度上昇から査定の理不尽さは前作以上となっているため、統一された基準を設けるか、せめてわかりやすくしてほしかったところ。 ---一部のミッションで特定条件を満たした上でクリアした時に派生する追加ミッション(現地で受諾を判断できる)で、派生先ミッションのランクしか評価を得られない問題点も健在。このためSランクをコンプリートするにはわざわざ連続ミッションを拒否しなければならない。 ---前述した通り、今回はSランク取得が隠しパーツの入手条件になっているため余計にたちが悪い。 --扉を開けると画面が強制的に切り替わり勝手に部屋内へ移動する、各企業に大打撃を与えているはずの衛星砲がミッションでは企業の部隊を狙わないなど、不自然なトラップも幾つかみられる。 -''その他'' --新規プレイで全パーツを所持するための金額が莫大。『3』ならミッションとアリーナ2種を制覇するだけで200万ほど余るが、本作ではミッションの繰り返しで1300万以上も稼がなくてはならない。 ---ミッション数とアリーナの対戦相手が減ったことにより得られる総額が減少したことと、パーツ数が膨大になったことが原因である。その割に、ミッションで得られる報酬は1~5万前後と前作とほとんど変わっていない。 ---「巨大兵器撃破((『3』の終盤ミッション。フロートと火炎放射器があれば数十秒の戦闘で8万以上稼げる。))」クラスの稼ぎ用ミッションが存在しないことも問題。「未踏査地区探査」が報酬10万と高額だが、広大な作戦エリアの四方に散らばった上級MTを倒して回るのはあまりに面倒過ぎる。しかも手際よく倒してしまうと増援としてAC2機が出現、赤字やミッション失敗のリスクが重くのしかかる。 --AIACに自作エンブレムを直接貼り付けることができない。どうしても使用したければ、128×128ドットのエンブレムデータを方眼紙などに書き写し、AIACのエディット画面で1ドットずつ復元するしかない。 --前作同様、一部NPCの断末魔において音声とテキストメッセージが明らかに一致していない(「うわっ」「ぐわっ」「ぐわー」等)。 --ごく一部ではあるが断末魔の使い回しがみられる(マイリッジ⇔侵入者MT、セブンスヘブン⇔研究員など)。 ---- **対戦環境について -広い目で見るとパーツバランス、ひいては対戦バランス自体は改善された。大会で使用禁止が推奨されるパーツも他作品と比べると少ない((前述した通り「使えないパーツ」こそ大量にあるが、パーツ数を相対的に見た場合、突出した禁止パーツが少ないのはかなりの評価点と言える。))。特に前述の通り、脚部は前作からの調整の甲斐あって選択肢が広がっている。 --フレームの中でもコアは非常に高性能な「MCM-MI/008」の一択状況となってしまっているが、この高性能なOBのおかげでようやく「攻め」が成立しているという事情もあり、これを問題点と言い切るのは難しい。前作『3』が対戦の際にあまり選ばれないのは、「待ち」が強すぎて面白味に欠けていたという背景もある。 //--ただし、大会レベルのフレームパーツの組み合わせ、つまり「ガチ対戦用に煮詰めたアセンブル」となるとかなり絞られてくる面がある。特にコアパーツ「MCM-MI/008」の性能は他のそれを引き離しており、必然的に頭部以下の他フレームパーツもこれと相性の良いモノを選ぶことになる。 --ジェネレータパーツに関しては他シリーズ同様に一択の状況だが、その他の内装パーツは選択の幅が広い部類に入る。後のシリーズのように選択肢が多いように見えて組み合わせが限定されるような事もない。例としてはラジエータは基本となる重量か消費エネルギーのどちらを取るかの二択に加え、軽量追及や冷却特化タイプも余程のガチ対戦でない限り選択肢に入る。 -それまでブレードと同じく補助武装としての存在だった左腕銃に、主力たる右腕銃クラスの製品が大量追加されたこと、そして前述したブレードホーミングの下方修正によって、対戦シーンはほぼ完全に「二丁拳銃(ダブルトリガー)」の機体で占められることとなった。 --射撃機が中距離で安定したダメージを与えられるようになったことで、ブレードを扱う際の絶対条件である「斬撃のレンジまで詰め寄る」という行為に大きなリスクが伴うことになったのである。ブレードの射程においても、より扱いやすく高火力なマシンガンとショットガンの二丁持ち「マシショ」が流行した。 ---この革命の影響・余波は大きく、ブレード愛好家、そしてダブルトリガースタイルに適応できなかったレイヴン達は苦難の時代を迎えることとなる。4年後の『4』までブレードの冬の時代は続く。 ---一応、ブレードそのものが弱体化されたわけではないので、一人プレイなら実用範囲ではある。ただ、本作では使用中の武器のロックオンサイトが左腕銃にそのまま適用される為、例えば「広域なサイトを持つライフル+左手に本来ならサイトの狭いスナイパーライフル」といった組み合わせが一人プレイでもかなり強力で、やはり趣味の域を出る事はない。 --こうして見ると左腕銃のあからさまな優遇を感じるかも知れないが、同じく左腕装備に追加された新パーツの「実体シールド」などで結果的に装備間の相性バランスが形成されている。 ---実体シールドは軽量腕部に重量腕部以上の防御力を与え、エネルギー消費などのリスクが一切存在しない異常なパーツ。強力な左腕銃とどちらを選ぶかが戦術上の重要なポイントとなる。 -とにもかくにも、ブレードが弱体化したこと以外に大きな問題点はなく、バランス自体は比較的良好なので(コアの一択化という前提を踏まえればの話ではあるが)、対戦会も多く開かれた作品となった。……それだけに通信対戦時に2P側にラグが発生する現象(画面分割対戦では前作同様発生しない)が引き継がれている点が惜しい。 ---- **総評 シリーズ通してのファンからはシリーズの対戦シーンを大きく変えた作品として認知されている。~ 特に、新要素の左腕銃の台頭を受け入れられたファン、受け入れられなかったファンとの間で評価が分かれやすい。~ //特にPS時代からの「一発屋・ロマン」の象徴であったブレードの凋落に落胆したファン(更に言えば対戦重視の層)と、『2』『3』以降にシリーズを知り、そこまでブレードに拘らないファン(または一人プレイ・作品の完成度を重視する層)との間で評価が分かれやすい。~ とはいえ、単体のアクションゲームとしてみれば一定以上の品質を有していることは紛れもない事実。「問題点」の項で挙げた難点も実際のプレイには支障を出さないものが大半で(ミッションの不親切なトラップも数自体は多くない)、比較的後期にシリーズを遊び始めた層からは安定した評価を受けている。~ 難易度はシリーズの中でも高い方であるため、''ある程度修練を積んだレイヴン向けの作品''であるといえる。入門用として前作『3』を遊び、データを引き継いで本作をプレイすることをお勧めする。 ---- **余談 -ACシリーズのオープニングムービーに登場する機体はビジュアルを重視した実用性皆無の構築であることが一般的。~ ……が、本作のOP機はそれがさらに際立ち、軽量二脚に重すぎる武器を搭載しまくった(ゲーム中では)まともに動けない機体に仕上がっている。 -本作のサウンドトラックは、発売元のデジキューブが倒産したこともあって再販が絶望視されている。~ サントラの仕様は中々変わっていて、A4サイズの冊子である「ビジュアルガイド」にCDがくっ付いている。現在は中古市場でプレミア価格がつく希少品となっている。 -ミッションの内容やボリュームがちょうどよいのか、ゲーム内容の研究が進んでいるタイトルでもある。バグを利用した攻略法が見出されたり、射突型ブレードを極めたりと言ったやり込みも多い。他にもACシリーズでは珍しくTAS動画が制作され、ニコニコ動画にて公開されている。 ---- ---- *ARMORED CORE 3 SILENT LINE PORTABLE 【あーまーど・こあ さいれんとらいん ぽーたぶる】 |ジャンル|3D戦闘メカアクション|&amazon(B002AS9F2O)| |対応機種|プレイステーション・ポータブル|~| |発売元|フロム・ソフトウェア|~| |発売日|2009年11月19日|~| |定価|3,990円|~| |判定|なし|~| |ポイント|問題点も長所も前作と同じ&br;''バグまでそのまま''完全移植なのも同様&br;''キーコンフィグを変えるとAIACがバグる''|~| **概要(PSP) 『3』の続編であるPS2版『SL』の完全移植。……''バグなども含めて。''~ 移植度の高さは『3P』譲りだが、ポータブルシリーズ共通の欠点やAIACのバグが追加されている。 **問題点(PSP) -ベタ移植による問題 --色違いパーツの使いにくさや武器破壊システムの粗をはじめ、PS2版の欠点がほぼ据え置かれている。 --「1トリガーで複数弾を連射するが、''2発目以降は動く目標にほぼ当たらない''」という右腕用アサルト武器の産廃ぶりもまったく改善されていない。 ---当然、これには右腕用6連アサルトハンドガンも含まれる。PS2版のパーツバランスを全面的に見直せとまでは言わないが、「やりこみの証でありながら100人いれば100人全員が産廃と感じる武器」をそのままにしておくのは…。 //もちろん見方を変えれば「ベタ移植であるがゆえに」安心感があると言えなくもないが。←さすがに安心できない。移植というものは最低でもバグや修正すべき仕様の改善が求められるもの。 -ポータブル版で追加発生した問題 --「キーコンフィグによってはパージできなくなる」「武器のリロード値が奇数だと実質的に+1される」「対人戦で2Pラグを避けられない」というポータブルシリーズの欠点はそのまま。~ さらに、''キー配置が初期設定でないとAI機体が正常に動かない''というバグが追加されてしまった。 ---ポータブルシリーズではボタンの少なさゆえにキーコンフィグを変えるユーザーが多いため、本作をプレイする際にはAI要素は抜きにして考えた方がいい。 --『3P』の新規追加パーツを本作で使うには、入手済データを本作に引き継ぐ必要がある。しかしPS2版と同様に、データを引き継ぐと難易度が強制的に「NORMAL」になる。 //したがって難易度「ハード」でやりたい場合は、AC3P追加パーツを諦めなければならない(とはいえPSPならではの操作の難しさ(難易度ハードだとロックオンサイトの大きさが小さくなり敵を捕捉しづらくなる)、フロム公式の対戦大会が「ノーマル」を推奨しているだけあって、PSP版の対戦では難易度ノーマルで行うのが主流である) --「マルチブースタ」というパーツをある条件で使用すると、機体が”瞬間移動”といえるスピードで急上昇する新たなバグ追加。 ---ゲームバランスに影響を与えるものではなく、さらに見た目が面白いため、好意的に受け止められている模様である。 **評価点(PSP) -「AIACに自作エンブレムを直接貼り付けることができない」というPS2版の問題が改善。機体の登録時にエンブレムが反映されるようになった。 --機体の再登録(学習内容のリセット)なしでエンブレムだけ変えたい場合、PS2版のように書き写し・復元作業が求められる。 -電撃ホビーマガジン誌掲載の外伝小説「Brave New World」から一名、さらにHJのモデラーがデザインしたオリジナル機体を母体とするオリジナルキャラが一名、追加ランカーとして参戦している。 --強さは『3P』追加ランカーのマーウォルスよりだいぶマシになっており、それなりに手応えを感じるレベルになっている。 **総評(PSP) 移植度自体はほぼ完璧だが、バグ等の問題までそのまま移植。~ また『3P』と同様にポータブル特有の問題も抱えてしまった。本作では更にAIAC作成に悪影響が出たのが辛い。~ それでも携帯機でプレイするなら、購入を検討する価値は十分にある。

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