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*BUSIN ~Wizardry Alternative~ 【ぶしん うぃざーどりぃお るたなててぃぶ】 |ジャンル|RPG|CENTER:&amazon(B00005S89S)| |対応機種|プレイステーション2|~| |メディア|CD-ROM 1枚|~| |発売元|アトラス|~| |開発元|ラクジン|~| |発売日|200111月15日|~| |定価|7,800円(税抜)|~| |分類|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:''[[Wizardryシリーズリンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/1088.html]]''| **概要 ウィザードリィの版権元であったサーテック社の倒産後、その権利を受け継いだオンタリオ・インク社が様々な会社にウィザードリィの権利を使った作品を作らないか呼びかけたことから誕生した作品。~ 今までの和製ウィズとは異なり、発売は『女神転生シリーズ』などで有名なアトラスが担当。これは『女神転生シリーズ』のディレクター岡田耕始が熱心なウィズファンであったためだという。~ **システム 基本的には「ダンジョンを探索し、魔物を倒して経験値とお金をゲット、アイテムなども入手しどんどん奥へと進んでいく」というウィズの基本形を踏襲しつつ、女神転生シリーズを思わせる要素を盛り込んだ独特な作風になっている。 -基本のシステムは「6人パーティーをキャラメイクし、前衛3、後衛3に振り分ける」という超伝統的スタイル。ただし旧作と違い少人数でも前衛・後衛に分けることができるようになった。後衛に回るためには前衛にキャラがいないといけないが。 --種族は人間、ドワーフ、エルフ、ノーム、ホビットの5種族。職業は戦士、盗賊、魔術師、僧侶、忍者、侍、司教、騎士の8職。各種族・職業の特徴も概ね伝統的なものに則っている。 ---全てのキャラクターは、善、中立、悪のどれかに分類されており、属性によってつけない職業がある。旧作と異なり属性が同じでなければパーティーが組めないということはない(ただし、信頼度の関係上統一しておいた方が何かと得)。また種族と属性によって性格が固定される。性格は信頼度の上下に影響する。迷宮で属性が変わっても性格はそのまま。 ---イベントなどで加入する固有顔グラ持ちのキャラもいる(ただし顔グラやメッセージはイベント時のみ表示)。パラメーター面でやや優遇されているが、転職には高額な特殊アイテムが必要だし、名前は変更できない。 --レベルアップはダンジョン内では発生せず、一度町の宿屋に帰る必要がある。 --未鑑定の装備品はいきなり装備しても鑑定されるが、安心して使うためには鑑定してもらう必要がある(司教がいれば無料で鑑定できるが、リスクもある)。 --魔法は僧侶、魔術師の2系統存在し、複数の段階ごとに分けられている。それぞれのレベルにMPが設定されているのは過去のウィズ同様。今作では魔法を使える職業がかなり多くなった。 ---魔法の習得に関しては「魔法石」という特殊アイテムが必要になる。宝箱に入っていることもあるが、敵を倒して得た残骸系のアイテムを店(ヴィガー商店)で融合して作るのが基本。同じ魔法石を複数回使うと魔法がレベルアップする。 ---本作には月齢というシステムがあり、これが紅月の時は魔法石融合が事故を起こし狙いの魔法石とは違う物ができあがるという要素がある。 --本作の戦闘面での最大の特徴がアレイドアクションという必殺技。複数人のパーティーメンバーで協力し、様々な効果をもたらすというもの。序盤で習得して以降はこの技が戦闘の要となる。 ---この要になるのが「トラスト(信頼度)システム」。これが高くなると使えるアレイドアクションが増え、同じアレイドアクションの効果も高くなっていく。主人公の様々な行動で、パーティー内の信頼度を高めることが重要。 ---信頼度は戦闘勝利を積み重ねると上がるが死者やステータス異常者を放置すると下がる。イベント時は主人公の選択によって大きく影響されるがその時は仲間の属性によっても信頼度がどうなるかは変わる。 //特に友好的なモンスターに対する態度は、性格に大きな影響を与える。←属性変えても性格はそのままです。 -宝箱や道中に仕掛けられている罠は制限時間内に表示されるコマンドを入力することで解除。また戦闘勝利後の宝箱は常に罠がない状態になった。 **評価点 -余計な演出を廃し、それでいながらのめり込めるように構成されたシナリオ。 --「ドゥーハンという都市を拠点に、その都市が荒廃した原因となる『閃光』の正体を探るべく閃光の中心地に出現した迷宮を探る」というシナリオなのだが、登場人物の言動が非常にリアル。基本的には絶望的な状況下で、荒んだ人物も多いのだがその中にあって希望を見失わない人々の姿も描かれている。また登場人物の中には人間に友好的なオーク達もいて、コメディ要素を提供してくれる。 ---また主人公は記憶喪失なのだが、この設定も実に良く活かされている。中盤、主人公は身に覚えのない(記憶がないので当然)罪で命を狙われることになるのだが、これはプレイヤー本人としてもいままで聞いたこともない話で互いの立場がしっかりリンクしている。 --本作に声優というものはない。それどころかムービーはおろか立ち絵の差分すら一切なく、最初から最後まで演出は非常に淡々としている。演出だけなら明らかに時代に逆行した表現。 ---しかし多くのプレイヤーが「だがそれがいい」と評している。むしろ、淡々とした演出に奥深いシナリオが噛み合い、いつの間にかどっぷりとのめり込める内容になっている。 ---キャラデザ担当は寺田克也。絵画的な立ち絵は他の作品では見られない特異なものだが、ゲーム全体の雰囲気に良く合っており、評価は高い。 --最終盤の展開は非常に衝撃的で感動的。 -臨場感溢れる探索システム。 --本作はシンボルエンカウント式を採用している。視点は常に主人公の一人称視点で、背後はおろか側面の確認すらままならない。 ---薄暗いダンジョン内で、背後から執拗に敵に迫られたり、角を曲がった瞬間に出会い頭に遭遇したときの恐怖は計り知れない。バックアタックをくらうと、敵に先手を取られた上で前列後列が入れ替わるので、非常に危険。逆にこちらが相手シンボルの背後から接触することで先手を取ることも出来る。 --探索中のBGMは小さめで、環境音のような雰囲気になっている。しかしモンスターが扉を開ける音や足音は響き渡っており、常に「何かがいる」気配に満ちあふれている。敵シンボルが人型や飛行型や竜型や虫型のぼんやりとしたもやのようなもので表現されているのも特徴的。 -戦闘バランスは絶妙。難しすぎず、簡単すぎない。 --本家ウィズに比べるとアレイドアクションの存在により比較的穏やかな難易度だが、復活失敗によるキャラロストなどは健在((ただし死亡の状態だと寺院での蘇生率は100%なのが旧wizとの大きな違い))で、一般的なRPGと比較すればそこそこの難易度である。雑魚戦でも油断すると死にかねない程には難しい。例えば敵忍者の恐るべき素早さとクリティカル(''一撃死'')はトラウマ物。 ---特に危険な存在が「死神」。同フロアを長時間探索したり、特定ポイントにたどり着くと出現し、壁などを無視して恐ろしい速度でパーティーに迫り来る。追いつかれるとパーティーメンバー一人に取り憑き、取り憑かれたメンバーは以降死亡すると''即ロスト''。早めに寺院で祓わないと危険。 ---イベントではボス敵としても出現。剣を持った非常にカッコイイデザインで、乗り越えるべき壁として威厳溢れる外見になっている。もちろん強さは折り紙付き。 **問題点 -戦闘時の演出が遅い。特に敵の直接攻撃は敵が画面前に向かってきて攻撃する演出が毎回入る。これをアレイド「牽制射撃」で妨害すると妨害された敵が悔しがる演出が入ってさらに少し時間がかかる。 -直接攻撃のレベルアップによる被ダメージの減少が激しい。中盤で初遭遇時は苦戦したガーゴイルの三連撃も少し鍛えると1ダメージの三連撃に。 -直接攻撃しかしてこない敵はアレイドアクション「牽制射撃」でほとんど雑魚に。前衛の3人中指定した2人が常に直接攻撃から保護されるといえばその凄さがわかるだろう。回数制限もない。 --ただ、これだけでカバーできるのは精々2階ぐらいまで。魔法攻撃を放つ敵との混成の場合、魔法を中断させるマジックキャンセルとの使い分けが重要になってくるし、そもそもこれをやっていると後衛2人がまともに戦闘に参加できなくなる。 -''地味''。 --ある意味本作最大の問題点。そもそもウィズ自体、「古くさい」という評価から逃れられない一作なのに、本作は基本システムなどほぼ旧作からの変化がなく、職業や種族もほぼ持ち越しである。というかゲーム全体の雰囲気もやや鬱々としたネガティブなものであることは否めないが。 ---と思いきや能力値が99まで伸び、呪文効果も安定している。旧wizardryの数値感覚は全然通用しないので注意。 //---職業に限って言うなら、なぜか君主の職が騎士に置き換わっているのが旧作のプレイヤーからすると違和感があるだろう。←ロードを「君主」と訳したオリジナルwizardryに問題があるとも考えられる。君主がダンジョンを冒険するのは騎士よりも変である。 -キャラクターには種族と属性によって性格が決まり、それによって信頼度の上がりやすい行動、下がりやすい行動が出てくるが使いやすい性格と使いにくい性格の差が極端。上がりやすくデメリットゼロの性格も多いが、反面、エルフ・中立の「孤独的」のように4人以上で一定時間冒険するだけで下がる性格、人間・悪の「好戦的」の極端にレベルの低い敵を倒すだけで下がる性格(レベルの高い敵を倒すと上がる)もある。これは逃げればいいのだが面倒だし名前負けである。 -ストーリーの都合でもあるが主人公はメンバーから外せない。また終盤の主人公のイベントのイメージがどうも男性の(このゲームは性別の概念はないが)人間の戦士系向けに作られてるのではないかと思われる面がある。これは解釈次第だが、イベント時にイメージギャップにとまどうかもしれない。プレイ面では固有キャラの人数バランスから主人公は後衛職にするのも大いにアリだが。 -バグが多い。 --特定の条件を満たすと装備品が別の物に変化してしまう、商店での売り買いの金額に異常があるなど、ゲーム進行に致命的な影響を与える物は少ないが、厄介なものもある。 -ややUIに不備あり。 --特に待機中の仲間とのアイテム入れ替えが出来ずメンバーチェンジして受け渡しする必要がある(これは旧作でもそうだが)のと、魔法石融合の演出スキップができないのはテンポが悪い。 -一部イベントは発生させずに先に進んでしまうと取り返しが付かない。固有キャラ加入など重大イベントもあるので、注意が必要。一応くまなく探っていれば見つかる程度ではあるが…。 -死神憑きにメリットがほぼない。 --一応死神アレイドという特殊アレイドが使えるのと、誰かが死神憑きでないと開けられない扉があるが、死神アレイドは「全員死神憑き」などという正気の沙汰とは思えない状態を維持した上で「使うと誰かがロストする」などさらなるデメリットを被る。しかもこの状態では通常のアレイドは使えない。死神扉はゲーム中の出現頻度が少なく、地味。死神扉の先にある重要アイテム「巻物」を入手したい時にわざと憑けるくらいである。 -中盤以降、魔法のレベルアップがほぼ必須と化す。 --合成素材がダンジョン内の店で買えるようになるが、これで魔法を強化しておくのが前提となっているようなバランス。魔法を強化せずに進むと非常に厳しい。 **総評 日本人向けに絶妙にアレンジされたウィズ。本家の無味乾燥さを個性的な登場キャラで上手く中和しつつ、かといってストーリーやキャラクターがうるさすぎず、基本的には「ダンジョン探索」の一点のみに集中させる構成は非常にすばらしい。~ 主人公の立ち位置などまさにロールプレイ(役割を演じる)という本質的な意味でのRPGの原点に立ち返ったような作品であり、戦闘・謎解きともにシビア目ではあるが決して鬼畜ではなく、手応えのあるRPGを求めるプレイヤーにとっては間違いなく傑作と言っていい一本である。~ ウィザードリィに興味がなかった人も「Alternative(代替品)」ではなく「Alternative(新生)」として楽しんでもらいたい作品である。
*BUSIN ~Wizardry Alternative~ 【ぶしん うぃざーどりぃ おるたなてぃぶ】 |ジャンル|RPG|#amazon(B00005S89S)| |対応機種|プレイステーション2|~| |メディア|CD-ROM 1枚|~| |発売元|アトラス|~| |開発元|ラクジン|~| |発売日|2001年11月15日|~| |定価|7,800円(税抜)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:''[[Wizardryシリーズ]]''| #contents(fromhere) ---- **概要 ウィザードリィの版権元であったサーテック社の倒産後、その権利を受け継いだオンタリオ・インク社は、様々な会社に「ウィザードリィの権利を使った作品を作らないか」と呼びかけた。その結果、『ウィザードリィ エンパイア』シリーズや『ウィザードリィ クロニクル』とともに本作が誕生した。~ 発売は『[[女神転生シリーズ]]』などで有名なアトラスが担当。これは『女神転生シリーズ』のディレクターである岡田耕始氏が熱心なウィズファンであったため「自分の手でウィザードリィを作ってみたい」という欲求からプロデューサーを引き受けることとなった。~ **ストーリー (説明書5ページより引用)~ >古の時代より、聖都として称えられてきたドゥーハン王国。~ だがある日、天空から飛来した光球は、"ベノアの宝石"として名高かったドゥーハンの城を直撃し、数千を越える民の命を奪い街を廃墟へ変えた。~ 悲劇はそれだけにとどまらない。~ 光球が激突した際の衝撃は空間を歪ませ、地獄の亡者が徘徊する迷宮の扉と城の地下をつなげてしまった。~ 結界に包み込まれたドゥーハンは陸の孤島と化し、街には言い知れない絶望感が満ち溢れた。~ そんな中、辛うじて光球の難を逃れた女王オティーリエはクイーンガードの長、魔術師レドゥアに迷宮の探索を命じる。~ そして、王国の兵士が迷宮の探索を始めた頃、人々の間にまことしやかに1つの奇妙な噂が流れた。~ ~ 「いかなる望みをもかなえる」という魔神の秘宝が、迷宮の中に眠っているらしい……。~ ~ 過酷な生活を強いられてきた生き残りの者たちは、一縷の希望をかけ、次々と迷宮へと消えて行った。~ ある者は国の英雄になるため、ある者は生き残るため、そしてある者は自らの欲望を叶えるために……。 ---- **システム 基本的なシステムはウィザードリィのそれを踏襲しているが、ハード性能を活かしたグラフィックの改善や、女神転生シリーズを思わせる要素を巧みに盛り込んである。 ***キャラメイク・ステータス編 -「主人公」と「固有キャラクター」の存在 --ゲーム開始時に「主人公」というべきキャラクターを作成する。このキャラは特別な存在であり、パーティーから外すことができない。理由は後述する「トラストシステム」に関わってくるため。また主人公のロストは即ゲームオーバーとなる。 --冒険者ギルド(旧作の訓練場に相当)で仲間を作成できる点はこれまでのシリーズ通り((ただし最序盤は不可能、主人公があるイベントにより冒険者間に有名になる必要がある。))だが、本作にはイベントで加入が可能になる固有顔グラフィック持ちのキャラもいる。 ---特定のイベント時に彼らがパーティに居ると追加でメッセージが表示される。またパラメーター面でやや優遇されている。ただし名前が変更不可、かつ冒険者ギルドでの転職が行えない(これは高額だが転職アイテムを使用することで解消できる)。 -ステータス面 --シリーズおなじみの属性(善・中立・悪)と共に「性格」が追加。種族と属性の組み合わせで決定される。例えば人間・善なら「正義感」となり、友好的なモンスターに攻撃をしかけると一気に信頼度が減少する。 --また迷宮内で属性が変わっても性格は変わらない。よって「正義感」のキャラは悪になったとしても友好的なモンスターと戦うたびに信頼度が急落。 ---旧wizとは異なり善・悪の属性のキャラが「酒場で」同時にパーティを組めるようになった。ただし友好的な敵に遭遇した場合確率でどちらかが属性を変わることを覚悟する必要があるのは旧wizと同様。 --「トラスト(信頼度)システム」というものが存在し、主人公と共に戦いを乗り越えることで「パーティランク」が上昇。ランクアップとともに後述する「アレイドアクション」を習得してゆく。 ---基本的に戦闘勝利を積み重ねてゆくことで徐々にではあるが成長する。しかし死者やステータス異常者を放置すると下がり、イベント時は主人公の選択や仲間の属性の影響を受けて大きく増減する。 --魔法の習得に関しては「魔法石」という特殊アイテムが必要になる。宝箱に入っていることもあるが、敵を倒して得た残骸系のアイテムを「ヴィガー商店」(地上ではアイテム売買は全てここで取り扱う)で融合しても作成できる。また、魔法にもランクが存在しており、同じ魔法石を与えることでランクアップ、性能が上昇する。 ---MP制にも変更があり、本作では全職業(そのままでは呪文が一切使えない戦士も含めて)がレベルアップとともにMPを獲得してゆく。もちろん呪文が得意な職業ほどMP増加の成長が速いのは言うまでもない。 ***集団連携戦術「アレイドアクション」 -本作最大のキモとなる部分。複数人で行う連携技で効果も多岐に渡り、使い方次第でパーティ全体の戦闘力が大きく跳ね上がる。もちろんゲームバランスもアレイドアクション(以下AA)を駆使することを前提として調整されている。 --AAは「パーティランクを上げる」「特定のイベントをクリアする」「パーティランク一定以上の時に冒険者ギルドに金を払って習得する」等で習得。高ランク、後半のイベントで覚えるものほど性能が高いが、低ランクのものにも最後まで使える超重要AAはある。また、パーティーランクを上げることで性能も上昇してゆく。 -AAは敵も使用してくる。低ランクの物しか使ってこないが、それでも対処を誤ればパーティーが窮地に陥りかねない。 #region(AAの一例) -ラッシュ --必要人員:全員(他の行動と組み合わせは不可能) --全員で行う必中の突撃攻撃。防御無視の小ダメージを相手側全員に与える。亜人型の敵の集団が使ってくることもある。 -フロントガード --必要人員:前衛3人 --前衛全員で行う強力な防御。通常の「防御」コマンドでは物理回避率しか上がらないが、こちらは回避だけでなく防御も上昇し、さらに発動ターン中は一部の状態異常に対する完全耐性を獲得。また、敵のラッシュを無効化できる。 --人型の敵の集団が使ってくることもある。つまり敵のラッシュをこちらのフロントガードで防いだり、逆にこちらのラッシュが敵のフロントガードで防がれることもある。 -ホールドアタック --必要人員:前衛1人&その背後の(魔法が使用可能な)後衛1人 --後衛が魔力で敵1体を拘束し、そこに前衛が攻撃を加える。威力上昇率はさほどでもないが、拘束に成功すれば(失敗の可能性もある)前衛の攻撃は必中になるため、高回避の敵(特に即死攻撃を併せ持つ忍者系)に対する有効打となる。 -散開 --必要人員:味方全員(※他の行動と共に行える) --選択しておくと敵のブレス攻撃に対して自動発動、散開してその威力を弱める。パーティーランク上昇と共にダメージ軽減率が上昇。強力なブレス攻撃を持つ竜系やポイズンジャイアントと戦う際には無くてはならないAA。 #endregion ***ダンジョン探索 -ダンジョン内は全てフルポリゴンで表現され、階によって石造りのダンジョンから墓場、中央に大瀑布のある吹き抜けなど景観に富み、美麗の一言。しかしモンスターはリアルタイムで徘徊しているため、探索中に気を抜く余裕はほとんどない。 --景観だけでなく、スイッチで開閉する仕掛け扉やワープゾーンの多い階、入る度に構造がランダム生成される階など仕掛けにも凝っている。また、仕掛けスイッチや扉や魔法陣により複数階飛ばせるショートカットが開通されることもある。 -シンボルエンカウントシステムを採用。視点は常に主人公の一人称視点で、背後はおろか側面の確認すらままならない。薄暗いダンジョン内で、背後から執拗に敵に迫られたり、角を曲がった瞬間に出会い頭に遭遇したりする。 --しかも背後から接触されるとバックアタックとなり、敵に先手を取られた上で前列後列が入れ替わるので非常に危険。逆にこちらが相手シンボルの背後から接触することで先手を取ることも出来る。 --敵シンボルは種族に合わせ、人型や飛行型や竜型や虫型のぼんやりとしたもやのようなもので表現されている。こちらを発見すると赤く発光し、猛スピードでこちらを執拗に追い回してくる。 -探索中のBGMは小さめで、環境音のような雰囲気になっている。しかしモンスターが扉を開ける音や足音やはばたきの音は響き渡っており、常に「何かがいる」気配に満ちあふれている。 -徘徊する恐怖「死神」 --「特定の階で長時間滞在する」または「特定地点を通過するときにランダム」のいずれかの条件で出現してパーティーを追ってくる。追いつくとパーティーメンバーに憑依してくる。 --憑依されたメンバーは「死神憑き」という状態になり、この状態でHPがゼロになる・即死攻撃を受ける・二重に死神に取りつかれると、死亡・灰化をすっ飛ばして''いきなりロスト''する。死神憑きは寺院でお祓いを受けることで解除できる。 ---ただし、死神憑きのキャラは素の状態で不死系の敵に対する攻撃能力を獲得し((このゲームでは、聖なる武器を使用するか呪文で武器に加護を与えた状態でないと、不死系の敵は物理攻撃でトドメをさせないようになっている。))、さらに「死神憑きのキャラがいないと開けられない扉がある」「全員が死神憑き状態の時のみ使用できる『死神アレイド』と呼ばれるAAがある」とリターンも存在している。 --死神はボス敵としても出現。剣を持った非常にカッコイイデザインで、乗り越えるべき壁としての威厳溢れる外見になっている。もちろん強さも折り紙付き。 ***その他 -「月齢」システム。リアルタイムで月の満ち欠けが変化し、魔法石合成の際に影響を与える。 --これにより合成時に「事故」が発生し、狙いの魔法石とは違うものができあがることも。特に満月時に低確率で生じる「紅月」の時は事故が起きやすい。 --それ以外にも一部イベントの発生に影響する。 -宝箱や道中に仕掛けられている罠の仕様が大幅に変更。制限時間内に表示されるコマンド(例…〇〇△□R1 コントローラーのボタンに対応)を入力することで解除するようになった。 --終盤の罠ほど解除コマンドが長くなる。 --宝箱の罠のみ、盗賊か忍者をメンバーに入れておくと解除に要するコマンド数が減少+制限時間増加(=解錠難易度低下)する。 ---なお本作では、戦闘終了後の宝箱には罠がかかっていないようになっている。 ---- **評価点 ***ストイックなシナリオ -「城塞都市ドゥーハンが荒廃した原因となる『閃光』の正体を探るべく、閃光の中心地に出現した迷宮を探る」というシナリオなのだが、登場人物の言動が非常にリアル。絶望的な状況下で荒んだ人物も多いのだが、その中にあって希望を見失わない人々の姿も描かれている。 --また、登場人物の中には人間に友好的なオーク達がいるのだが、彼らの関わるイベントは妙にコミカルで、一服の清涼剤となる。 --主人公が記憶喪失という設定も実によく活かされている。中盤、主人公は身に覚えのない(記憶がないので当然)罪で命を狙われることになるのだが、これはプレイヤー本人としてもいままで聞いたこともない話であり、互いの立場がしっかりリンクしている。 --最終盤の展開は非常に衝撃的で感動的。 ***本編クリアまでのゲームバランス -序盤から最終盤まで難敵が目白押しであり、雑魚戦でも油断すると死にかねない。しかし、AAを駆使すればなんとか戦えるようになっており、クリア前までのゲームバランスはWizシリーズ内でも一二を争うほど良い。~ 特に初見フロア探索時の戦闘の「濃さ」は特筆ものなので、初プレイ時は絶対に事前情報をシャットアウトしておくこと。でないとこのゲームを本当に楽しむことはできない。 --敵は大ダメージの範囲攻撃や、エナジードレイン、クリティカルヒットといった凶悪な攻撃を繰り出してくるため100%の安心は存在しないが、きちんと装備強化&レベル上げを行い、慢心を捨てて戦えば安定する。 #region(上記に従ってネタバレ注意)難敵の一例 --ボギーキャット…B1、つまり最序盤から出現。高い物理攻撃力を二連続で放つ上に気絶付与してくるため、慣れてきた初級冒険者でさえ油断すると一撃で殴り殺されることがある。 --忍者系の敵…回避が高い上に物理攻撃に即死が付与されているトラウマメーカー。出現場所もB2と早く、上位種になるにつれ攻撃回数が増えたり後列攻撃まで繰り出してくる。 --ポイズンジャイアント…シリーズ常連の敵。耐久力が非常に高く、代名詞でもある毒ブレスは散開していないと1発でパーティーが半壊するほどの威力。 --グレーターデーモン…こちらもシリーズ常連。増殖しなくなった代わりに戦闘力が恐ろしく強化されている。 #endregion ***グラフィック・演出面 -キャラクター・モンスターデザイン担当は寺田克也氏。絵画的な立ち絵は他の作品では見られない特異なものだが、ゲーム全体の雰囲気によく合っており、評価は高い。 -ダンジョンが美麗なのはすでに述べた通りだが、モンスターグラフィックもそれに負けず劣らず凝っている。 --寺田氏がデザインしたモンスターを忠実にポリゴンモデルに落とし込み、さらにアニメーションを追加。攻撃モーションはもちろん、末期の瞬間まで凝りに凝っている。 --いわゆる「色違い」の敵でも、持つ武器や入れ墨の文様など細かい差異がある。中には観賞モードでじっくり見ないと気付かない違いも。 -本作にキャラボイスはつけられていない。それどころかムービーはおろか立ち絵の差分すら一切なく、最初から最後まで演出は非常に淡々としている。演出だけなら明らかに時代に逆行した表現である。~ しかし、多くのプレイヤーが「だがそれがいい」と評している。むしろ、淡々とした演出にシナリオが噛み合い、いつの間にかどっぷりとのめり込める内容になっている。 ---- **賛否両論点 ***終盤のストーリー展開 -詳細は伏せるが、取りようによってはグッドエンドともバッドエンドとも取れ、あまりに救いがない。もちろん、「だがそれがいい」というプレイヤーが多いのも事実ではあるが。 --また、終盤の展開は、主人公が「人間の戦士系の男」であることを前提としているのではないかと思われる節がある(キャラクターメイキングに「性別」の項目は無いが)。あくまで個々の解釈次第ではあるが、イベント時にイメージギャップにとまどうかもしれない。プレイ面では固有キャラの人数バランスから主人公は後衛職にするのも大いにアリだが。 ***既存シリーズからの急激な変化 -ゲームシステムに大きな変更が入ったため、これまでのシリーズの常識はほぼ通用しない。もちろんそれらの変更は大半が「いい意味での変更」ではあるが、やはりこれまでの常連プレイヤーからは「こんなのWizじゃねぇ」と強い反発を受けた。 ***地味 -ある意味本作最大の問題点。ゲーム全体の雰囲気もやや鬱々としたネガティブなものであり、ストイックさを追求したがゆえにOPアニメやキャラボイス・萌えといった一般ユーザーにウケやすい要素など皆無。あまりにニッチすぎたが故に売り上げも振るわなかった…。 ---- **問題点 ***システム面 -ストーリーの都合でもあるが、主人公はメンバーから外せない。 -一部の演出が長いためテンポが悪いと感じることがある。 --戦闘時のアニメーションは確かに凝っているのだが、この演出をカットできないため戦闘には時間がかかる。戦闘前の読み込みも長い。 ---特に敵の直接攻撃は敵が画面前に向かってきて攻撃する演出が毎回入り、これをアレイド「牽制射撃」で妨害すると妨害された敵が悔しがる演出が入ってさらに時間がかかる。 ---「散開」を選択した状態で敵からブレスを受けると、一人づつダメージを受ける演出に変化し、通常時よりも時間がかかるようになってしまう。 --魔法石合成の演出も長い上にカットすることができない。 -ややUIに不備あり。 --待機中の仲間とのアイテム入れ替えが出来ず、メンバーチェンジして受け渡しする必要がある(これは旧作でもそうだが)。 --本作では他のゲームで言うところの「倉庫」の概念が無く、とりあえず保管しておきたいアイテムは待機中のメンバーに持たせるのが自然なため面倒に感じる。 -取り返しのつかない要素が多く、しかも条件に気付きにくいものが多い。 --特に固有キャラクターの加入に関するものに厄介なものが多く、寄り道して複数のフラグを立てる前に6Fへの階段を降りてしまうと仲間にならなくなるダニエルや、特定地点でのイベントを発生させる前にあるクエストをクリアしてしまうとフラグが消えてしまい仲間にならなくなるオルフェとアオバなどは注意が必要。特に後者はイベントの取り逃しを失くそうとマメにクエストを消化する人ほど引っかかってしまう。固有メンバーの加入によって解禁されるAAも一部あるため、そのメンバーを使う気が無い場合でも注意が必要になる。 --オルフェとアオバの加入に関するもの以外にも、クエストについては受ける前や達成する前にイベントを発生させないとフラグが消えてしまうものが多く、イベントを見逃したり有用なアイテムを入手できなくなる事態は発生しやすい。 -クエストの仕様。 --同時に3件までしか受けられない上に、一度受注した依頼を破棄すると二度と受けられなくなってしまう。受注できるようになる時点では達成困難な依頼も多く、それらで依頼を埋めてしまうと他の依頼をなかなか受けられなくなってしまう。 ***ゲームバランス面 -トラストシステムの関係上、セカンドメンバーの育成が非常に困難。レベルは下記の宝玉レベルアップで賄えるが、信頼度は一部の性格以外は地道に戦闘勝利を積み重ねないと上げられないため。 -ただし、絆ランクはパーティ全体の信頼度の平均で評価されるため、1人、2人を新に育てるにあたっては一気に絆ランクが激減することはない。また、中途加入の固定キャラクターについては加入時点である程度のレベルと魔法に加えて最初から信頼度が高く設定されているため、固定メンバーの入れ替えはしやすいように配慮されている。 -使いやすい性格と使いにくい性格の差が極端。 --「知性的(メンバーの誰かが魔法を習得&ランクアップするだけで信頼度上昇)」「虫嫌い(虫型の敵を倒すだけで信頼度大幅上昇)」など上がりやすくデメリットゼロの性格も多い反面、「孤独的(4人以上のパーティーで一定時間冒険するだけで信頼度が下がってゆく)」、「好戦的(レベルの高い敵を倒すと信頼度上昇にボーナスがかがるが、極端にレベルの低い敵を倒すと下がる)」といった扱いにくいものもある。 --そして性格は種族と属性で完全に固定されてしまうため、対処法は「その性格になる組合せを避ける」一択。属性については一部アイテムや装備品によって能動的に変更できるため、好みの種族と属性の性格パターンが扱い辛い場合はこの手法で回避できる。 -本編クリアまでのバランスは良い半面、クリア後のバランスにはアラが残っている。 --「宝玉レベルアップ((転職アイテムと各職業の「レベルアップに必要な経験値の差」の仕様を悪用した、Wizシリーズ常連の裏技。解禁すると倍々ゲームでレベルが上がってゆく。))」と呼ばれる即席レベルアップ法が存在しており、これに気付くと「クリアレベルに達するのに必要な時間>レベルキャップに達するのに必要な時間」となってしまう。 --レベルキャップが99、特性値の限界も99までしかないため、簡単に限界まで到達できてしまう。Wizフリークはレベル3ケタは当たり前、ひどいと4ケタに達する程の時間をかけて延々とハック&スラッシュを楽しむため、この仕様にガッカリしたプレイヤーは多い。 --AA「ワープアタック」と「マジックキャンセル」の組み合わせが強過ぎる。前衛への物理攻撃はワープアタックで無効化され、魔法はマジックキャンセルで1ターン中最大二回まで詠唱を阻止できる。ここまでくるとブレス持ちの敵以外に対しては「これだけやってりゃいいだろ」状態になってしまう。 ---ただし、最終盤のダンジョンの一部の敵については攻撃の強烈さと耐性の強さからこの手法を取らないとまともに戦えないものも登場するため、これを極端なインフレの中でバランスが取れていると判断するか、ワンパターンな対処法しか存在しないと判断するかは好みによるだろう。 -一部のトラップが強烈すぎる。 --終盤のダンジョンでは普通の通路でも稀にトラップが発動してくるようになるが、この中でこちらのキャラのレベルを下げてくる「マジックドレイン」が強烈。終盤になればなるほど減少値が大きくなり、最終盤では一気に全体のレベルを7つ分も落としてくるなどとんでもない性能になる。 --宝箱にしかけられているトラップと違い、事前の予告がないため焦って解除に失敗すると悲惨な結果になる。コマンド自体は簡単であることが多いのが救い。 -死神憑きにメリットがほぼない。 --死神扉はゲーム中に僅か2度しか登場せず地味。死神扉の先にある三種類の魔法石合成に必要なアイテム「羊皮紙」などを入手したい時にわざと憑けるくらいである。6層の死神扉を最後に一切登場しなくなるため、それ以降はこのメリットは無くなってしまう。 --死神アレイドは確かに強力な効果が揃っているのだが、そもそも全員死神憑きという状態が極めて危険な上、「大ダメージを受ける」「使うと誰かがロストする」などさらなるデメリットを被る。しかもこの状態では通常のAAが使えなくなってしまうため、実用性は殆どない。 --また、前述の通り死神の2重憑きは即死なので、死神パーティーで6人組むのは手間がかかる上運が絡む((2人パーティーなら確率2分の一でどちらかに憑いてくれるので、一人ずつ入れ替えて憑けるのが手間はかかるが確実。主人公が既に死神憑きなら2分の一で主人公ロスト=''ゲームオーバー''だが。))。 --余談ではあるが、本編最終盤である条件を満たすとそれ以降死神が一切登場しなくなる。こうなるとその時点で死神憑きのキャラが存在しない場合、そのデータでは死神アレイドを使えなくなるばかりか死神扉の先のアイテムを回収していない場合は二度と回収できなくなってしまう。 ---こう書くとデメリットの強烈さばかりが目立つが、あくまでも死神憑きは「ステータス異常」として扱われている存在であり、この調整は妥当な部分もある。 ***その他 -バグが多い。「特定の条件を満たすと装備品が別のものに変化してしまう」「商店での売り買いの金額に異常がある」など。ゲーム進行に致命的な影響を与えるものは少ないが、厄介なものもある。 -シリーズ常連の大悪魔「マイルフィック」がグレーターデーモンの色違いでしかなく、ファンを落胆させた。なお、続編では固有グラフィックと強烈な強さが与えられ、威厳を取り戻すことに成功している。 ---- **総評 日本人向けに絶妙にアレンジされたウィズ。本家の無味乾燥さを個性的な登場キャラで上手く中和しつつ、かといってストーリーやキャラクターがうるさすぎず、基本的には「ダンジョン探索」の一点のみに集中させる構成は非常にすばらしい。~ 主人公の立ち位置などまさにロールプレイ(役割を演じる)という本質的な意味でのRPGの原点に立ち返ったような作品であり、戦闘・謎解きともにシビア目ではあるが決して鬼畜ではなく、手応えのあるRPGを求めるプレイヤーにとっては間違いなく傑作と言っていい一本である。~ ウィザードリィに興味がなかった人も「Alternative(代替品)」ではなく「Alternative(新生)」として楽しんでもらいたい作品である。

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