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*MISTY BLUE 【みすてぃ ぶるー】 |ジャンル|ADV| |対応機種|PC-8801mkIISR以降、PC-9801VM/UV以降| |発売・開発元|エニックス| |発売日|1990年4月2日| |定価|8,800円| |分類|BGCOLOR(lightgreen):''良作''| **概要 -当時としては、ほとんど見なかったキャラクター心理に重点を置いたADV。流れとしてはミステリーだが、内容は青春恋愛劇となっている。 -演出に力が入っており、グラフィック、BGMのレベルが高い。 -スタッフとして外部から著名な人材を採用している。 -システムは会話に重点を置いたもの。 **ストーリー アメリカでの音楽漬けの生活も終わり、水上和哉は日本に戻ってきていた。~ 新居での引越しの片付けはまだなのに、彼は憂鬱そうにずっと座り込んでいた。その視線の先には日本のトップバンド、オルフェの解散コンサートのチケットがあった。~ 実はこのチケットは、人と合うために手に入れたものだった。~ 開演時間も迫り、和哉は意を決して会場へと向かう。そして会場での喧騒の中、目的の人物と合う。高校の先輩、松宮進。彼は今、音楽関係のプロデューサーをしている。オルフェも彼がプロデュースしたのだった。~ 和哉が彼と会う事になったのは、デビューの話を持ちかけられたからだった。だが話は物別れに終わり、最後は罵り合うように和哉は会場を後にする。~ 仕方なくバイクで帰ろうとすると、後ろから女性に声をかけられた。振り向くと懐かしい顔があった。藤木麻衣子。高校時代、付き合っていた和哉の彼女だった。~ 四年ぶりの再会に、二人は懐かしむように当時の行きつけの店に行く。そしていい機会だからと、高校時代の友人を呼び出した。夏井エリと森川祐太。ただ高見沢ミッキーだけは用で来れなかった。~ この五人は高校時代よくつるんで遊びに行った仲だった。久しぶりの顔合わせに言葉を弾ます彼ら。やがて時間も過ぎ、それぞれ帰路へと付く。~ 翌日、和哉はテレビの音で目を覚ます。画面にはニュースが流れていた。そこに聞き覚えのある名前が耳に届く。昨日会った先輩、松宮進。だがニュースは彼が殺された事を告げていた。~ しかも、重要参考人として会場で罵り合っていた若者を探しているという。和哉はそれが自分だとすぐに気づく。彼は疑いを晴らすため、行動を起こし始める。 **特徴とシステム -一応ミステリーの形態を取っているが、物語の中心は青春恋愛劇で登場人物達の心情描写に重きを置いている。また恋愛ゲームのようにヒロイン攻略が可能。しかも、ソフトな描写ではあるがアダルトゲームでないにもかかわらず、ベッドシーンがある((もっとも当時はソフ倫が設立されておらず、18禁という区分は存在しなかった。))。ただしEDそのものは、各キャラ別というものはない((但しベッドシーンを経験したか否かは、EDに大きく影響する。))。 --ゲーム中に登場する女性はすべて口説くことができ、もちろんすべてベッドシーンが存在する。 -システムはコマンド選択式。一方で会話を重視しているため、独特なシステムもある。全部で3つのシステムを併用している。 --一つは一般的なコマンド選択式。行動と目的を選択するもの。ただ選択できる行動はかなり少なく、またこのシステムを使うシーンは多くはない。 --もう一つは複数人で会話するシステム。相手を選択し会話する。4人の内、2人だけや全員と話すというような事ができる。 --そして本作の最も特徴的なのが二人で会話するシステム。相手の方に好感度ゲージが表示され、会話の内容によってそれが上下する。会話の際の選択システムも特徴的。話しかける台詞そのものを選択するようになっている。この選択枝で重要なのが話の流れ。選択するものが同じでも、話の流れを無視したような選択をすると、好感度ゲージが下がる事がある。ちなみにこの好感度ゲージは相手が男性でも二人で話していると表示される。もちろん攻略出来るわけではないが聞ける内容に影響する。この流れを重視する点は他のシステムにもあり、総当り感覚で適当に選択していると、状況が悪化する場合がある。 -スタッフに、1980年代のゲームBGMの作曲で知られた古代祐三、Zガンダムの作画監督をした恩田尚之が加わっている。 -バブル最高潮期のゲームらしく、この時代のどこか浮かれたような空気を感じさせる。登場人物はほとんどが音楽関係者かモデルなど、芸能に関わっている。そして高級住宅住まいも多い。主人公の水上和哉からして、アメリカでの音楽勉強を終えて日本に戻ってきたという設定。さらに作中に出てくるバンド、オルフェは当時のトップバンドで絶頂期に解散したBOφWY((スタッフからモデルとしたバンドは明言されていないが、バンドの人数、楽器の構成、ギタリストの名字が「恵比寿」(BOφWYは「布袋」)、ロフトからデビュー、8年間活動、突然の解散、さらにラストコンサート名が「farewell GIG'90」(BOφWYは「LAST GIG」)、など示唆する要素がいくつもある。))を彷彿とさせる。当時を象徴するような要素がいくつもある。 **評価点 -グラフィックとBGM、そしてアニメがうまくかみ合って作り出す演出効果は、当時他にはないもの。特にOPとEDはそれが高いレベルで融合しすばらしいものになっている。 --グラフィックは色彩の少なさを逆手に取ったような見事なもの。本作の対象機種は、同時発色数が少ない。このためどうしても色数が足らない事があった。従来はそれを中間色という複数の色を組合わせた方法で解決していた。ただこの方法は擬似的に色数を増やしてるだけで、実際には増えていない。このため中間色が多い画像はザラついた印象のものとなる。本作はそれを解決するため、可能な限り色数を減らして表現されている。それが逆にモダンアートのようなシンプルな印象を出しているのだ。また色自体も淡い色を中心にする事で、画面を引き締まったものにしている。 --アニメが当時としては多く、また使いどころも上手い。要所のアニメがシーンをさらに盛り上げている。 --BGMは本作の雰囲気にうまく合っている。曲もよく、シーンを印象強くするのに一役買っている。ただ一方で、作中の曲となっているものは、オルフェのモデルのBOφWYやユーロビート等を参考にしているものの、本職に及ぶべくも無いのは無理からぬ事か。 -シナリオの心情表現は当時他にはないほど深いもの。本作は脚本やプロデューサーが女性であり、女性側の心理から書かれたそれらは、明らかに男性が書いたものとは違う味わいがあり女性らしいアプローチとなっている。結末、特にバッドエンドはとても印象深いものとなっている。 --ただ、やや古い少女マンガを思わせる部分もある。 **問題点 -BGMも含め音の扱いが微妙。曲自体はいいが、演出としての扱いに疑問点が残る部分も。というのも無音のシーンが多く、BGMのあるシーンの方が少ない。あえて無音にする事で、BGMのあるシーンを強調しようとしたのかもしれないが、全体としてはプラスだったとは言いがたい。さらに効果音も少ない。このため、無音のシーンはやや無機質な感じを受ける。 --以前のADVは一部だけBGMを使っていたが、本作の頃になると常時BGMやSEが流れているものはかなり出ていた((本作以前ではリバーヒルソフトの『J.B.ハロルド』シリーズやマイクロキャビンの『うる星やつら』等、エニックスでは『バーニングポイント』、などがある。))。演出重視の本作としては、やや古いBGMの使い方は残念。 -フラグ管理も含め、会話のチェックが甘い。一部ではあるが、会話の繋ぎがおかしくなっているものがある。会話の選択のしかたによっては話が前後したりする。さらに一度出てきたやり取りが後からまた出てくる事も。また、ついさきほど話した内容なのに、後の会話ではじめて聞いたかのような返答が帰ってきたり、その逆で話していない事なのに、すでに聞いたかような返答が出るなどもある。 -ミステリーの形を取ってはいるが構成要素が弱く、ストーリーが進んでも事件の全貌へ近づいているような感じがせず、折角の設定を活かしきれていない。誤解から警察に追われている身の主人公にあまり切羽詰った感じがしないのも、それを増長させている一因。 -ラストは印象深いが、一方でいろいろと疑問の余地のあるものに。 --物語が終わっても、ミステリーとしての様々な伏線は回収されないまま。それどころか真犯人も分からずじまい。事件の全貌は明らかにされない状態で終わる。 ---一応、誰が犯人かの目星くらいはつくが、犯人の告白等は無い。 --麻衣子の心情が不明瞭のまま終わる。事件との関係もあるため、プレイヤーの解釈に任せたと取るか締めを放り投げたと取るかは、微妙な所。 **総評 当時としては卓越した演出のADV。また本作ほど心情描写を丁寧に書いているものは、それまでなかった。この表現は、後の恋愛ゲームに通じるものがある。ただ一方でミステリーとしては半端な出来。ラストも、その不明瞭さを演出の力押しでやり過ごした感がぬぐえない。&br物語として疑問の点があるものの、当時の演出技術を集め、他にはない絶妙な雰囲気を感じさせる青春恋愛ドラマである。
*MISTY BLUE 【みすてぃ ぶるー】 |ジャンル|ADV| |対応機種|PC-8801mkIISR以降&br()PC-9801VM/UV以降| |発売・開発元|エニックス| |発売日|1990年4月2日| |定価|8,800円| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -当時としては、ほとんど見なかったキャラクター心理に重点を置いたADV。流れとしてはミステリーだが、内容は青春恋愛劇となっている。 -演出に力が入っており、グラフィック、BGMのレベルが高い。 -スタッフとして外部から著名な人材を採用している。 -システムは会話に重点を置いたもの。 **ストーリー アメリカでの音楽漬けの生活も終わり、水上和哉は日本に戻ってきていた。~ 新居での引越しの片付けはまだなのに、彼は憂鬱そうにずっと座り込んでいた。その視線の先には日本のトップバンド、オルフェの解散コンサートのチケットがあった。~ 実はこのチケットは、人と会うために手に入れたものだった。~ 開演時間も迫り、和哉は意を決して会場へと向かう。そして会場での喧騒の中、目的の人物と合う。高校の先輩、松宮進。彼は今、音楽関係のプロデューサーをしている。オルフェも彼がプロデュースしたのだった。~ 和哉が彼と会う事になったのは、デビューの話を持ちかけられたからだった。だが話は物別れに終わり、最後は罵り合うように和哉は会場を後にする。~ 仕方なくバイクで帰ろうとすると、後ろから女性に声をかけられた。振り向くと懐かしい顔があった。藤木麻衣子。高校時代、付き合っていた和哉の彼女だった。~ 四年ぶりの再会に、二人は懐かしむように当時の行きつけの店に行く。そしていい機会だからと、高校時代の友人を呼び出した。夏井エリと森川祐太。ただ高見沢ミッキーだけは用で来れなかった。~ この五人は高校時代よくつるんで遊びに行った仲だった。久しぶりの顔合わせに言葉を弾ます彼ら。やがて時間も過ぎ、それぞれ帰路へと付く。~ 翌日、和哉はテレビの音で目を覚ます。画面にはニュースが流れていた。そこに聞き覚えのある名前が耳に届く。昨日会った先輩、松宮進。だがニュースは彼が殺された事を告げていた。~ しかも、重要参考人として会場で罵り合っていた若者を探しているという。和哉はそれが自分だとすぐに気づく。彼は疑いを晴らすため、行動を起こし始める。 **特徴とシステム -一応ミステリーの形態を取っているが、物語の中心は青春恋愛劇で登場人物達の心情描写に重きを置いている。また恋愛ゲームのようにヒロイン攻略が可能。しかも、ソフトな描写ではあるがアダルトゲームでないにもかかわらず、ベッドシーンがある((もっとも当時はソフ倫が設立されておらず、18禁という区分は存在しなかった。))。ただしEDそのものは、各キャラ別というものはない((但しベッドシーンを経験したか否かは、EDに大きく影響する。))。 --ゲーム中に登場する女性はすべて口説くことができ、もちろんすべてベッドシーンが存在する。 -システムはコマンド選択式。一方で会話を重視しているため、独特なシステムもある。全部で3つのシステムを併用している。 --一つは一般的なコマンド選択式。行動と目的を選択するもの。ただ選択できる行動はかなり少なく、またこのシステムを使うシーンは多くはない。 --もう一つは複数人で会話するシステム。相手を選択し会話する。4人の内、2人だけや全員と話すというような事ができる。 --そして本作の最も特徴的なのが二人で会話するシステム。相手の方に好感度ゲージが表示され、会話の内容によってそれが上下する。会話の際の選択システムも特徴的。話しかける台詞そのものを選択するようになっている。この選択肢で重要なのが話の流れ。選択するものが同じでも、話の流れを無視したような選択をすると、好感度ゲージが下がる事がある。ちなみにこの好感度ゲージは相手が男性でも二人で話していると表示される。もちろん攻略出来るわけではないが聞ける内容に影響する。この流れを重視する点は他のシステムにもあり、総当り感覚で適当に選択していると、状況が悪化する場合がある。 -スタッフに、1980年代のゲームBGMの作曲で知られた古代祐三氏、Ζガンダムの作画監督をした恩田尚之氏が加わっている。 -バブル最高潮期のゲームらしく、この時代のどこか浮かれたような空気を感じさせる。 --登場人物はほとんどが音楽関係者かモデルなど、芸能に関わっている。そして高級住宅住まいも多い。主人公の水上和哉からして、アメリカでの音楽勉強を終えて日本に戻ってきたという設定。 --さらに作中に出てくるバンド、オルフェは当時のトップバンドで絶頂期に解散したBOφWY((スタッフからモデルとしたバンドは明言されていないが、バンドの人数、楽器の構成、ギタリストの名字が「恵比寿」(BOφWYは「布袋」)、ロフトからデビュー、8年間活動、突然の解散、さらにラストコンサート名が「farewell GIG'90」(BOφWYは「LAST GIG」)、など示唆する要素がいくつもある。))を彷彿とさせる。 -など、当時を象徴するような要素・雰囲気を持つ箇所がいくつもあり、知る人が今見てみると懐かしさに浸れること間違いないだろう。 ---- **評価点 -グラフィックとBGM、そしてアニメがうまくかみ合って作り出す演出効果は、当時他にはないもの。 --特にOPとEDはそれが高いレベルで融合しすばらしいものになっている。 --グラフィックは色彩の少なさを逆手に取ったような見事なもの。本作の対象機種は、同時発色数が少ない。このためどうしても色数が足らない事があった。従来はそれを中間色という複数の色を組合わせた方法で解決していた。ただこの方法は擬似的に色数を増やしているだけで、実際には増えていない。このため中間色が多い画像はザラついた印象のものとなる。本作はそれを解決するため、可能な限り色数を減らして表現されている。それが逆にモダンアートのようなシンプルな印象を出しているのだ。また色自体も淡い色を中心にする事で、画面を引き締まったものにしている。 --アニメが当時としては多く、また使いどころも上手い。要所のアニメがシーンをさらに盛り上げている。 --BGMは本作の雰囲気にうまく合っている。曲もよく、シーンを印象強くするのに一役買っている。ただ一方で、作中の曲となっているものは、オルフェのモデルのBOφWYやユーロビート等を参考にしているものの、本職に及ぶべくも無いのは無理からぬ事か。 -シナリオの心情表現は当時他にはないほど深いもの。 --本作は脚本やプロデューサーが女性であり、女性側の心理から書かれたそれらは、明らかに男性が書いたものとは違う味わいがあり女性らしいアプローチとなっている。結末、特にバッドエンドはとても印象深いものとなっている。 ---ただ、やや古い少女マンガを思わせる部分もある。 ** 賛否両論点 -無音シーンの多さ --BGMの曲自体はいいが、無音のシーンが多く、BGMのあるシーンの方が少ない。多くの映画やテレビドラマがそうであるように、あえて無音のカットを多く用いる事で、BGMのあるシーンを強調しようとしたのかもしれないが、賛否が有りそうである。 ---効果音も少ないため、無音のシーンはやや無機質な感じを受けるかもしれない。 --以前のADVは一部だけBGMを使っていたが、本作の頃になると常時BGMやSEが流れている作品も複数出ていた((本作以前ではリバーヒルソフトの『J.B.ハロルド』シリーズやマイクロキャビンの『うる星やつら』等、エニックスでは『バーニングポイント』、などがある。))。 // この点は賛否両論が妥当でしょう。文章もやや無難に改めました。 **問題点 -フラグ管理も含め、会話のチェックが甘い。 --一部ではあるが、会話の繋ぎがおかしくなっているものがある。会話の選択のしかたによっては話が前後したりする。 ---一度出てきたやり取りが後からまた出てきたり、ついさきほど話した内容なのに後の会話ではじめて聞いたかのような返答が帰ってきたり、その逆で話していない事なのに、すでに聞いたかような返答が出るなどもある。 -ミステリーの形を取ってはいるが構成要素が弱い。 --ストーリーが進んでも事件の全貌へ近づいているような感じがせず、折角の設定を活かしきれていない。誤解から警察に追われている身の主人公にあまり切羽詰った感じがしないのも、それを増長させている一因。 -ラストは印象深いが、一方でいろいろと疑問の余地のあるものに。 --物語が終わっても、ミステリーとしての様々な伏線は回収されないまま。それどころか真犯人も分からずじまい。事件の全貌は明らかにされない状態で終わる。 ---一応、誰が犯人かの目星くらいはつくが、犯人の告白等は無い。 --麻衣子の心情が不明瞭のまま終わる。事件との関係もあるため、プレイヤーの解釈に任せたと取るか締めを放り投げたと取るかは、微妙な所。 ---- **総評 心情描写を丁寧に描いた当時としては卓越した演出のADV。~ 一方でミステリーとしては半端な出来。ラストも、その不明瞭さを演出の力押しでやり過ごした感がぬぐえない。~ 物語として疑問の点があるものの、当時の演出技術を集め、他にはない絶妙な雰囲気を感じさせる青春恋愛ドラマである。

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